JP3742365B2 - プラズマcvd装置及び方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマによる化学反応を利用して、基材表面に微結晶シリコン等の機能性膜やハードコーティングを形成するためのプラズマCVD装置及び方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラズマCVDにより成膜を行う装置として、基材と対向配置されるプラズマ発生用の電極を略円柱状とし、かつ、これを高速回転させるようにしたものが開発されるに至っている(例えば特開平9−104985号公報参照)。その装置の概要を図5及び図6に示す。
【0003】
図示のプラズマCVD装置は、内部が密閉された反応容器10を備え、この反応容器10内に成膜用の回転電極REが収容されている。
【0004】
前記回転電極REは、略円筒状をなす電極本体18と、これを軸方向に貫通する回転軸16とを有し、電極本体18の表面にはアーク防止用の絶縁被膜15が施されている。回転軸16の両端は、反応容器10内に設けられた一対の軸受台13によって回転可能に支持され、その一方の端部は反応容器10に固定された回転駆動手段(図例ではモータ73)の出力軸にカップリング74を介して連結されている。このモータ73の作動により回転電極RE全体が高速で回転駆動される。
【0005】
前記回転軸16には、電気接続部材17及び反応容器外側の共振器19を介してプラズマ発生用の高周波電源20が接続されている。そして、この高周波電源20から前記共振器19及び電気接続部材17を通じて回転電極REに成膜用の高周波電圧が印加されるようになっている。
【0006】
なお、プラズマ発生用電源には直流電源を使用することも可能である。
【0007】
一方、反応容器10の底部にはテーブル11が設置され、このテーブル11上に基材搬送台12が設けられており、この基材搬送台12は後述の回転電極REの回転中心軸と直交する方向(図1では左右方向)にスライド駆動されるようになっている。この基材搬送台12は、例えばガラス基板からなる基材14を上方に露出させた状態で前記回転電極REの直下方の位置に保持し、かつその保持状態のままスライド駆動されるものであり、前記テーブル11とともに、前記基材14と回転電極REの外周面との隙間を維持しながら当該基材14を移動させる基材移送手段を構成している。
【0008】
なお、前記回転電極REの周面と基材14との隙間は、プラズマCVDを実行するのに適した隙間(例えば0.1mm〜2mm)に設定されている。
【0009】
この装置において、反応容器10内を排気し、回転電極REを回転させながらこれに高周波電力(直流電力でもよい)を印加して当該回転電極REと基材14との間にプラズマを発生させるとともに、図略の反応ガス供給源から反応ガス(図例ではSiH4とH2との混合ガス)及び希釈ガス(例えばHe)を反応容器10内に導入すると、これらのガスは回転電極REの回転によって当該回転電極REと基材14との間に形成されたプラズマ領域22に巻き込まれ、このプラズマ領域22において前記反応ガスが化学反応を起こしながら基材14が基材搬送台12とともに所定方向(回転電極REの回転軸方向と直交する方向)に走査される結果、基材14上に薄膜が形成されることとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような回転電極を用いたプラズマCVD装置は、広範囲にわたって短時間で薄膜を形成することができる利点があるが、均質な膜が得られにくいという課題が生じている。
【0011】
例えば、前記回転電極を用いたプラズマCVD装置により前記微結晶シリコン薄膜を作製しようとした場合、その薄膜中にアモルファスシリコン膜が混在してしまうという不都合が判明しており、その対策が急務となっている。このような膜の不均一性に関する課題は、回転電極を用いて前記シリコン膜以外の膜を形成する場合、例えばカーボン膜やシリコン酸化膜を形成する場合にも同様に発生し得るものである。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑み、回転電極を用いて高品質の膜を高速形成することができる方法及び装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、詳細な検討と精密な実験を行った結果、回転電極を用いてプラズマCVDを行ったときに次のような現象が生じることを確認した。すなわち、反応ガスがプラズマ領域内に入るとその電離や解離によって反応種が発生するのであるが、同じプラズマ領域内でも回転電極回転方向の上流側と下流側とでは反応種の密度が異なり、その結果、薄膜の下層と上層で膜が異なってしまうことを突き止めた。
【0014】
具体的には、図7に示すように基材14を静止させた状態で回転電極REを回転させながら微結晶シリコン薄膜の形成を試みた結果、ある点を境に前記回転電極REの上流側にアモルファスシリコン膜が、下流側に微結晶シリコン膜がそれぞれ形成されることが判明した。これは、回転電極REの回転方向上流側では反応ガスであるシランの分解程度が未だ低く、そのため微結晶シリコンが成膜されにくい状態にある一方、回転電極REの回転方向下流側では当該回転方向上流側でシランが十分に消費されて枯渇した状態にあり、水素ラジカルの多い雰囲気が形成されているので、微結晶シリコン膜の形成が促進されるためであると考えられる。
【0015】
従って、前記反応ガスを十分にプラズマ反応させてから前記基材14等の基材の表面に供給するようにすれば、当該基材表面には厚み方向について均質な薄膜を形成することが可能になる。本発明は、このような観点からなされたものであり、接地された基材の表面にプラズマCVDによって成膜を形成するためのプラズマCVD装置であって、互いに対向して配置される電極からなり、その少なくとも一方の電極が他方の電極に対向する面を有するのに加えて前記基材の表面に対向する面も有する形状をもつ基材対向電極とされたプラズマ電極対と、この基材対向電極に投入されることにより前記プラズマ電極対の相互対向部分に第1のプラズマ領域を形成するとともに前記基材対向電極と接地された前記基材表面との隙間に前記第1のプラズマ領域と連続する第2のプラズマ領域を形成するプラズマ発生用電源と、前記プラズマ電極対の電極同士の隙間に反応ガスを給送する反応ガス給送手段とを備え、その給送されたガスが前記第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域を順に通ることにより化学反応を起こして前記基材表面に薄膜を形成するものである。また本発明は、接地された基材の表面にプラズマCVDによって成膜を形成するための方法であって、互いに対向して配置されるプラズマ電極対の少なくとも一方を他方の電極に対向する面を有するのに加えて前記基材の表面に対向する面も有する形状をもつ基材対向電極とし、この基材対向電極にプラズマ発生用電源を投入することにより前記プラズマ電極対の相互対向部分に第1のプラズマ領域を形成するとともに前記基材対向電極と接地された前記基材の表面との隙間に前記第1のプラズマ領域と連続する第2のプラズマ領域を形成し、前記プラズマ電極対の電極同士の隙間に反応ガスを給送してこの反応ガスを前記第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域を順に通すことにより化学反応を起こさせて前記基材表面に薄膜を形成するものである。
【0016】
この構成によれば、反応ガスはまずプラズマ電極対の相互対向部分に給送され、この部分に形成された第1のプラズマ領域で反応を開始した後に基材表面の第2のプラズマ領域に送られる。従って、この第2のプラズマ領域では十分な反応種密度が確保されており、その結果、基材表面には均質な膜が形成されることになる。例えば、反応ガスとしてシランガスを用いることにより、アモルファスシリコンの非常に少ない安定した微結晶シリコン膜を基材表面に形成することが可能である。
【0017】
本発明では、前記プラズマ電極対及び反応ガス給送手段として種々の態様をとることが可能である。例えば、前記プラズマ電極対が、その双方の電極が円筒状の外周面を有してその中心軸回りに回転駆動される回転電極であり、両回転電極が共通の基材表面に対向するように配置されるとともに、これらの回転電極がそれぞれ相互対向部分から前記基材表面に向かう方向に回転駆動されることにより、回転電極周囲の反応ガスが前記相互対向部分に吸い込まれてこれらの回転電極と基材表面との隙間に導かれるように構成されているものとすれば、両回転電極がプラズマ電極対とその相互対向部分に反応ガスを導く反応ガス給送手段とを兼ねることとなり、より簡素な構成で均質な膜を形成することが可能になる。
【0018】
また、前記プラズマ電極対を、その双方の電極が共通の基材表面に対向する位置に固定される固定電極とし、これとは別に反応ガス給送手段を装備するようにしてもよい。この反応ガス給送手段としては、例えば、両固定電極の相互対向部分の近傍位置に設けられ、互いに対向する円筒状の外周面を有し、その回転周方向が前記両固定電極の相互対向部分に向かう向きに回転駆動されることにより周囲の反応ガスを前記相互対向部分へ給送する回転体を含むものが好適であり、この構成によれば、両回転体を相互逆向きに回転駆動するだけの簡単な構成で各プラズマ領域に反応ガスを給送することができる。
【0019】
この場合、両回転体の相互対向部分から両固定電極の相互対向部分に至る反応ガス通路を形成するとともに各回転体の周面に近接して前記反応ガス通路外への反応ガスの漏れを抑制する通路形成部材を備えるようにすれば、両回転体の相互対向部分に吸い込んだ反応ガスをより効率良く各プラズマ領域に導入することができる。
【0020】
また、前記プラズマ電極対が、その一方の電極が円筒状の外周面を有してその中心軸回りに回転駆動される回転電極であり、この回転電極が前記基材表面に対向するように配置されるとともに、他方の電極が前記回転電極の外周面に沿う内周面を有して基材表面の近傍位置に固定される固定電極であり、少なくとも前記回転電極にプラズマ発生用電源が投入され、かつ、当該回転電極が前記固定電極から基材表面へ向かう方向に回転駆動されることにより、回転電極周囲の反応ガスが当該回転電極と前記固定電極との隙間に形成された第1のプラズマ領域を通って前記回転電極と基材表面との隙間に形成された第2のプラズマ領域に導かれるように構成してもよい。
【0021】
この構成においても、前記回転電極の回転に伴い、その周囲の反応ガスが回転電極−固定電極間の第1のプラズマ領域を通って回転電極−基材表面間の第2のプラズマ領域へ送られるため、前記回転電極を反応ガス給送手段として兼用することにより、簡素な構成で良好な成膜を行うことができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。なお、以下に示すプラズマCVD装置において、回転電極REの具体的構造、その支持構造、回転駆動手段、及び成膜室の具体的構成は前記図5及び図6に示したものと同等であり、ここではその説明を省略する。
【0023】
1)第1の実施の形態(図1,図2)
この実施の形態にかかる装置は、プラズマ電極対として一対の回転電極REを備えている。これらの回転電極REは、前記図5及び図6に示した回転電極REと同様、円筒状の外周面を有するとともに、両回転電極REの中心軸同士が平行でかつ外周面同士が近接する状態で左右に並べられ、しかも、電極外周面下部が基材14の上面(基材表面)に対向するように配置されている。すなわち、前記各回転電極REは、互いに対向する面を有するのに加えて基材14の表面に対向する面も有する形状の基材対向電極となっている。各回転電極REにはプラズマ発生用の高周波電源20が接続され、両回転電極REはその相互対向部分から基材14へ向かう方向(図の矢印方向)に回転駆動されるようになっている。
【0024】
なお、回転電極RE同士の隙間の寸法や回転電極REと基材14との隙間の寸法は運転条件に応じて適宜設定可能である。例えば両回転電極REの回転数を100〜1000rpmとすると、前記両隙間はともに0.1〜2mm程度に設定するのが好ましい。
【0025】
次に、この装置の作用を説明する。
【0026】
まず、両回転電極REよりも基材搬送方向上流側の位置で基材搬送台12上に基材14を載せ、当該基材14を基材搬送台12とともに接地する。また、反応容器内を排気してから同容器内に成膜用ガス(ここでは微結晶シリコン成膜用の反応ガスであるSiH4及びH2と不活性ガスであるHe)を導入する。
【0027】
なお、この回転電極反応室内にジボランやフォスフィンに代表されるドーピングガスを添加してp型またはn型の半導体層を形成したり、バンドギャップ制御のために炭素源となるガスを添加したりすることは自由であり、仕様に応じて適宜行えばよい。
【0028】
前記各回転電極REに各々高周波電源20から高周波電力(これは直流電力でもよい)を印加し、かつ、両回転電極REを図の矢印方向に高速で回転駆動する一方、基材搬送台12をスライドさせて基材14の上面と回転電極REの外周面との間に微小隙間を維持しながら基材14を前記基材搬送方向に搬送する。このとき、両回転電極REの相互対向部分に第1のプラズマ領域24が形成されるとともに、各回転電極REと基材14の表面との間に前記第1のプラズマ領域24と連続する第2のプラズマ領域26が形成される一方、両回転電極REの周囲の反応ガス及び不活性ガスが当該回転電極REの回転に巻き込まれて前記第1のプラズマ領域24さらには第2のプラズマ領域26に送られる。
【0029】
従って、前記反応ガスは前記第1のプラズマ領域24でプラズマ反応を開始してから基材14上の第2のプラズマ領域26に送られることとなり、これによって第2のプラズマ領域26では十分な反応種密度が確保される。その結果、この第2のプラズマ領域26において均質な膜(この実施の形態ではアモルファスシリコンシリコン含有率の非常に少ない良質の微結晶シリコン膜)が基材14の上面に高速形成されることになる。
【0030】
以上の説明から明らかなように、この第1の実施の形態では、両回転電極REの回転によってその相互対向部分に反応ガスが巻き込まれ、そのまま各回転電極REと基材14の上面との隙間に導かれるため、反応ガス給送手段を特設する必要がなく、簡素な構成で良質の成膜を行うことが可能となっている。
【0031】
2)第2の実施の形態(図3)
この実施の形態にかかる装置は、プラズマ電極対として一対の固定電極FEを備えている。各固定電極FEは、図例では矩形状の断面を有し、その側面が互いに対向するとともに下面が基材14の上面と対向する位置に固定された基材対向電極となっており、各固定電極FEにプラズマ発生用の高周波電源20が接続されている。
【0032】
なお、両固定電極FEにより挟まれる通路の形状は、図3(a)に示すように上下方向にストレートに延びる形状でもよいが、基材14の搬送方向が決まっている場合には、同図(b)に示すように下方に向かうに従って前記基材14の搬送方向に偏る形状とするのが、より好ましい。
【0033】
両固定電極FEは、通路形成部材を兼ねる左右一対の電極保持部材30にそれぞれ保持され、その上方に反応ガス給送手段である一対の回転体32が設けられている。
【0034】
各回転体32は、前記第1の実施の形態で示した回転電極REと同様に円筒状の外周面を有し、その中心軸同士が平行な状態で設けられ、両回転体32同士の相互対向部分34には所定の間隙が確保されている。
【0035】
前記両電極保持部材30の間には、前記両回転体32の相互対向部分34から両固定電極FEの相互対向部分に対して上方から反応ガスを送るための反応ガス通路36が形成されている。また、両電極保持部材30の上面31は、前記回転体32の外周面に沿う曲面状をなし、かつ、当該回転体32の外周面に近接している。
【0036】
この装置においても、各部位の寸法は適宜設定可能である。一般には、両固定電極FEの縦寸法は5〜20mm程度、両固定電極FE間の隙間寸法は2mm程度、両固定電極FEと基材14の上面との隙間は0.1〜2mm程度に設定するのが、好ましい。また、通路形成部材30の上面31と回転体32の外周面との隙間は極力狭めるのが有効である。
【0037】
次に、この装置の作用を説明する。
【0038】
前記第1の実施の形態と同様に基材搬送台12上に基材14を載せて接地するとともに、反応容器内を排気してから同容器内に成膜用ガスを導入する。
【0039】
前記各固定電極FEに各々高周波電源20から高周波電力(これは直流電力でもよい)を印加し、かつ、両回転体32を図の矢印方向、すなわち、両回転体32の相互対向部分34から反応ガス通路36に向かう方向に高速で回転駆動する一方、基材搬送台12をスライドさせて基材14の上面と両固定電極FEの下面との間に微小隙間を維持しながら基材14を前記基材搬送方向に搬送する。このとき、両固定電極FEの相互対向部分に第1のプラズマ領域24が形成されるとともに、各固定電極FEと基材14の表面との間に前記第1のプラズマ領域24と連続する第2のプラズマ領域26が形成される一方、両回転体32の周囲の反応ガス及び不活性ガスが当該回転体32の回転に巻き込まれて両回転体32の相互対向部分34から反応ガス通路36に導入され、さらにはその下方の第1のプラズマ領域24及び第2のプラズマ領域26に順に送られる。
【0040】
従って、前記反応ガスは、第1の実施の形態と同様、前記第1のプラズマ領域24でプラズマ反応を開始してから基材14上の第2のプラズマ領域26に送られることとなり、これによって第2のプラズマ領域26では十分な反応種密度が確保される。その結果、この第2のプラズマ領域26において均質な膜(この実施の形態ではアモルファスシリコンシリコン含有率の非常に少ない良質の微結晶シリコン膜)が基材14の上面に高速形成されることになる。
【0041】
特に、図3(b)に示すように両固定電極FEの間に形成される通路が下方に向かうに従って基材14の搬送方向に偏る形状をなす場合には、反応ガスが基材14上に円滑に給送されることとなり、さらに安定した成膜が期待できる。
【0042】
また、図3(a)(b)に示す構造では、通路形成部材30の上面31が各回転体32の外周面に近接しているので、両回転体32の回転によって下方に押し込まれる反応ガスが反応ガス通路34の外側に漏れることが抑制され、これによって成膜効率がより高められる。
【0043】
3)第3の実施の形態(図4)
この実施の形態にかかる装置では、プラズマ電極対が回転電極REと固定電極FEとの組み合わせによって構成されている。回転電極REは前記第1の実施の形態で示したものと同等のもので、その円筒状外周面が基材14の上面に対向する位置に配置されている。
【0044】
固定電極FEは、前記回転電極REの外周面に沿う曲面状の内周面40を有している。そして、この内周面40と前記回転電極REの外周面との間に適当な隙間(例えば0.1〜2mm程度の隙間)が確保される位置であって、前記基材14の直上方の位置に、当該固定電極FEが電極保持部材30によって保持されるとともに、この固定電極FE及び前記回転電極REにプラズマ発生用の高周波電源20が接続されている。すなわち、これら固定電極FE及び回転電極REはともに、相手方の電極に対向する面を有するのに加えて基材14の表面に対向する面も有する形状をもつ基材対向電極となっている。
【0045】
この装置においても、電極RE,FE同士の隙間や回転電極REと基材14との隙間の寸法は適宜設定可能であり、一般には0.1〜2mm程度に設定するのが、好ましい。
【0046】
次に、この装置の作用を説明する。
【0047】
前記第1の実施の形態と同様、基材搬送台12上に基材14を載せて接地するとともに、反応容器内を排気してから同容器内に成膜用ガスを導入する。
【0048】
前記各電極RE,FEに各々高周波電源20から高周波電力(これは直流電力でもよい)を印加し、かつ、両回転体32を図の矢印方向、すなわち、両回転体32の相互対向部分34から反応ガス通路36に向かう方向に高速で回転駆動する。一方、基材搬送台12をスライドさせて基材14の上面と回転電極REの外周面との間に微小隙間を維持しながら基材14を前記基材搬送方向に搬送する。このとき、両電極RE,FEの相互対向部分に第1のプラズマ領域24が形成されるとともに、回転電極REと基材14の表面との間に前記第1のプラズマ領域24と連続する第2のプラズマ領域26が形成される一方、回転電極REの周囲の反応ガス及び不活性ガスが当該回転電極REの回転に巻き込まれて両電極RE,FE間の第1のプラズマ領域24に導入され、さらには回転電極REと基材14の上面との間の第2のプラズマ領域26に送られる。
【0049】
従って、前記反応ガスは、第1の実施の形態と同様、前記第1のプラズマ領域24でプラズマ反応を開始してから基材14上の第2のプラズマ領域26に送られることとなり、これによって第2のプラズマ領域26では十分な反応種密度が確保される。その結果、この第2のプラズマ領域26において均質な膜(この実施の形態ではアモルファスシリコンシリコン含有率の非常に少ない良質の微結晶シリコン膜)が基材14の上面に高速形成されることになる。
【0050】
また、この実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様、回転電極REの回転によってその周囲の反応ガスが第1のプラズマ領域24から第2のプラズマ領域26に導入されるので、プラズマ電極対とは別に反応ガス給送手段を特設する必要がなく、簡素な構造で良好な成膜を行うことが可能となっている。
【0051】
なお、以上の実施の形態ではプラズマ電極対の両電極にプラズマ発生用電源を投入しているが、本発明では一方の電極(ただし基材表面に対向するように配置されている電極)にのみ電源を投入して他方の電極は基材と同じく接地するようにしても、第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域を形成することが可能である。
【0052】
【発明の効果】
以上のように本発明は、互いに対向して配置されるとともに少なくとも一方が基材対向電極であるプラズマ電極対と、このプラズマ電極対の相互対向部分へ反応ガスを給送する反応ガス給送手段とを備え、前記基材対向電極にプラズマ発生用電源を投入することにより、プラズマ前記プラズマ電極対の相互対向部分に第1のプラズマ領域を形成するとともに、接地された基材の表面と前記基材対向電極との隙間に前記第1のプラズマ領域と連続する第2のプラズマ領域を形成し、そのプラズマ電極対の電極同士の隙間に給送された反応ガスが前記第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域を順に通ることにより化学反応を起こして前記基材表面に薄膜を形成するようにしたものであるので、基材表面での反応種の密度を十分に高めて高品質の薄膜を高速形成することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるプラズマCVD装置の斜視図である。
【図2】前記プラズマCVD装置の正面図である。
【図3】(a)(b)は本発明の第2の実施の形態にかかるプラズマCVD装置の一部断面正面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態にかかるプラズマCVD装置の一部断面正面図である。
【図5】従来の回転電極式プラズマCVD装置の一例を示す一部断面正面図である。
【図6】前記プラズマCVD装置の断面側面図である。
【図7】回転電極を用いて基材上にシリコン膜を形成したときのアモルファス領域と微結晶領域とを示す図である。
【符号の説明】
RE 回転電極
FE 固定電極
14 基材
20 高周波電源(プラズマ発生用電源)
22 プラズマ領域
24 第1のプラズマ領域
26 第2のプラズマ領域
30 電極保持部材(通路形成部材)
32 回転体
34 回転体の相互対向部分
36 反応ガス通路

Claims (6)

  1. 接地された基材の表面にプラズマCVDによって成膜を形成するためのプラズマCVD装置であって、互いに対向して配置される電極からなり、その少なくとも一方の電極が他方の電極に対向する面を有するのに加えて前記基材の表面に対向する面も有する形状をもつ基材対向電極とされたプラズマ電極対と、この基材対向電極に投入されることにより前記プラズマ電極対の相互対向部分に第1のプラズマ領域を形成するとともに前記基材対向電極と接地された前記基材表面との隙間に前記第1のプラズマ領域と連続する第2のプラズマ領域を形成するプラズマ発生用電源と、前記プラズマ電極対の電極同士の隙間に反応ガスを給送する反応ガス給送手段とを備え、その給送されたガスが前記第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域を順に通ることにより化学反応を起こして前記基材表面に薄膜を形成することを特徴とするプラズマCVD装置。
  2. 請求項1記載のプラズマCVD装置において、前記プラズマ電極対は、その双方の電極が円筒状の外周面を有してその中心軸回りに回転駆動される回転電極であり、両回転電極が共通の基材表面に対向するように配置されるとともに、これらの回転電極がそれぞれ相互対向部分から前記基材表面に向かう方向に回転駆動されることにより、回転電極周囲の反応ガスが前記相互対向部分に吸い込まれてこれらの回転電極と基材表面との隙間に導かれるように構成されていることを特徴とするプラズマCVD装置。
  3. 請求項1記載のプラズマCVD装置において、前記プラズマ電極対は、その双方の電極が共通の基材表面に対向する位置に固定される固定電極であり、前記反応ガス給送手段は、両固定電極の相互対向部分の近傍位置に設けられ、互いに対向する円筒状の外周面を有し、その回転周方向が前記両固定電極の相互対向部分に向かう向きに回転駆動されることにより周囲の反応ガスを前記相互対向部分へ給送する回転体を含むことを特徴とするプラズマCVD装置。
  4. 請求項3記載のプラズマCVD装置において、両回転体の相互対向部分から両固定電極の相互対向部分に至る反応ガス通路を形成するとともに各回転体の周面に近接して前記反応ガス通路外への反応ガスの漏れを抑制する通路形成部材を備えたことを特徴とするプラズマCVD装置。
  5. 請求項1記載のプラズマCVD装置において、前記プラズマ電極対は、その一方の電極が円筒状の外周面を有してその中心軸回りに回転駆動される回転電極であり、この回転電極が前記基材表面に対向するように配置されるとともに、他方の電極が前記回転電極の外周面に沿う内周面を有して基材表面の近傍位置に固定される固定電極であり、少なくとも前記回転電極にプラズマ発生用電源が投入され、かつ、当該回転電極が前記固定電極から基材表面へ向かう方向に回転駆動されることにより、回転電極周囲の反応ガスが当該回転電極と前記固定電極との隙間に形成された第1のプラズマ領域を通って前記回転電極と基材表面との隙間に形成された第2のプラズマ領域に導かれるように構成されていることを特徴とするプラズマCVD装置。
  6. 接地された基材の表面にプラズマCVDによって成膜を形成するための方法であって、互いに対向して配置されるプラズマ電極対の少なくとも一方を他方の電極に対向する面を有するのに加えて前記基材の表面に対向する面も有する形状をもつ基材対向電極とし、この基材対向電極にプラズマ発生用電源を投入することにより前記プラズマ電極対の相互対向部分に第1のプラズマ領域を形成するとともに前記基材対向電極と接地された前記基材の表面との隙間に前記第1のプラズマ領域と連続する第2のプラズマ領域を形成し、前記プラズマ電極対の電極同士の隙間に反応ガスを給送してこの反応ガスを前記第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域を順に通すことにより化学反応を起こさせて前記基材表面に薄膜を形成することを特徴とするプラズマCVD方法。
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