JP3984540B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマによる化学反応を利用して、基材表面に微結晶シリコン等の機能性膜やハードコーティングを形成するためのプラズマ処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラズマCVDにより成膜等の処理を行う手段として、基材と対向配置されるプラズマ発生用の電極を略円柱状とし、かつ、これを高速回転させるようにしたものが開発されるに至っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−104985号公報(第10〜11頁、図3〜図5)
この文献のプラズマ処理装置では、内部が密閉された反応容器内に回転電極が収容されるとともに、同容器の底部に設置されたテーブル上に基材搬送台が設けられている。そして、この基材搬送台上に基材をセットした状態で前記反応容器内を排気し、前記回転電極を回転させながらこれに高周波電力(直流電力でもよい)を印加して当該回転電極と基材との間にプラズマを発生させるとともに、当該反応容器内に反応ガス(図例ではSiH4とH2との混合ガス)及び希釈ガス(例えばHe)を反応容器10内に導入することにより、これらのガスが回転電極の回転によって当該回転電極と基材との間のプラズマに巻き込まれ、このプラズマにおいて前記反応ガスが化学反応を起こしながら基材が基材搬送台とともに所定方向に走査される結果、基材表面に薄膜が形成されるようになっている。
さらに、特許文献2には、チャンバ内の反応ガス残存量を低減されるべく、前記回転電極を囲むように反応ガス流路形成部材が配置されたものが開示されている。この反応ガス流路形成部材内には、反応ガス導入路と反応ガス排気路とが形成されており、これらの流路の密閉性を高めるべく、前記反応ガス流路形成部材は基材表面に対し極力近接して配置された構成となっている。
【特許文献2】
特開2002−294362号公報(第3〜5頁、図1〜図7)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図4は、前記特許文献1のチャンバ内におけるガスの流れをシュミレーション解析した結果を示した図である。同図矢印A1に示されるように、回転電極20の外周面近傍の反応ガスは当該回転電極20の回転に巻き込まれてプラズマ42の形成領域に送られるが、当該プラズマ形成領域での回転電極20の外周面と基材28の上面との間隙はきわめて小さいため(特許文献1の記載では0.01〜1mm)、供給される反応ガスの多くは同図矢印A2に示されるように前記プラズマ形成領域からガス供給方向と反対の方向にはじき出され、その中には前記プラズマ形成領域に一旦到達したガスも含まれる。
【0005】
このようにプラズマ形成領域に一旦到達したガスは、前記プラズマ形成領域内で一部反応して別のガスに変化しているおそれがあり、また、同ガス中には前記プラズマ形成領域付近で発生しているパーティクルが含まれる可能性が高い。従って、このようなガスがプラズマ形成領域から回転電極の回転方向上流側に逆流して新しい反応ガスと混じることにより、当該反応ガスの純度が低下し、また当該反応ガス中のパーティクル含有量が増えることとなり、その結果、得られる薄膜等の品質が低下するおそれがある。
【0006】
さらに、前記特許文献2に記載される装置に至っては、反応ガス流路形成部材を基材に極力近接させて反応ガス供給路をほぼ密閉した構成となっているため、プラズマ形成領域から逆流したガスが新しい反応ガスに混入する割合はきわめて高くなり、前記の不都合はさらに深刻なものとなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、プラズマ形成領域から逆流するガスが新しい反応ガスに混じるのを有効に抑止して質の高いプラズマ処理を実現できる装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような特性に鑑みてなされたものであり、プラズマに反応ガスを供給することにより化学反応を起こさせて基材表面をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、円筒状の外周面を有し、その中心軸回りに回転駆動される回転電極と、この回転電極の外周面に隙間をおいて前記基材の表面を対向させ、かつ、その隙間を維持しながら当該基材を前記回転電極の回転中心軸を横切る方向に移送する基材移送手段と、前記回転電極に電圧を印加して前記隙間にプラズマを発生させるプラズマ生成手段と、前記反応ガスを収容し、前記回転電極の外周面のうち当該回転電極が前記基材の表面と対向する対向位置よりも当該回転電極の回転方向上流側の外周面の少なくとも一部を覆うように配置される覆い部材とを備え、この覆い部材は、その収容した反応ガスが前記回転電極の外周面に引き連れられて前記プラズマ生成手段により生成されるプラズマへ供給される位置であって、かつ、当該覆い部材と前記基材との間の距離が前記対向位置における回転電極と基材との間の距離よりも大きくなる位置に配置され、前記覆い部材と前記基材との間の距離が前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向上流側における当該回転電極の外周面と前記覆い部材との間の距離よりも大きくなる位置に配置されているものである。
【0009】
この装置によれば、回転電極の外周面を覆うように配置された覆い部材の内部に収容された反応ガスが前記回転電極の外周面に引き連れられて当該回転電極と基材との間のプラズマ形成領域に送り込まれ、ここで化学反応を起こしてプラズマ処理に寄与する。
【0010】
従って、従来のように基材を反応容器内に密閉しなくてもプラズマへの反応ガスの供給が可能であり、当該反応容器を省略した場合には、ゲートバルブ等が不要になるとともに、基材の連続処理や、大面積基材・長尺基材の処理も容易に行うことができるという利点が得られる。
【0011】
そして、プラズマ処理は反応ガスが収容される覆い部材の外側で行われることとなり、しかも、当該覆い部材と前記基材との間の距離が前記対向位置における回転電極と基材との間の距離よりも大きくなるように覆い部材が配置されているため、前記プラズマ形成領域から回転電極回転方向上流側に逆流したガス(反応ガスの余剰分)は前記覆い部材と基材との間隙を通じて円滑に逃がされる。従って、この逆流ガスが前記覆い部材内の新しい反応ガスと混じることが有効に抑止され、これにより高品質のプラズマ処理が可能になる。
【0012】
特に、前記覆い部材と前記基材との間の距離が前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向上流側における当該回転電極の外周面と前記覆い部材との間の距離よりも大きくなるように覆い部材を配置されることから、前記逆流ガスが前記覆い部材内の新しい反応ガスに混入するのをより確実に抑止できることになる。
【0013】
さらに、前記覆い部材と基材との間隙を通じて逃がされた逆流ガスを前記覆い部材の外側から回収するための逆流ガス回収部を備えれば、当該逆流ガスと新しい反応ガスとの混合をより有効に防ぐことができるとともに、逆流ガスが外部へ無秩序に放散されるのを抑止することが可能になる。
【0014】
なお、前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向上流側の領域における前記基材と前記覆い部材との間の具体的な距離については、適宜設定すればよいが、前記逆流ガスをより円滑に逃がすには前記距離を前記対向位置における基材と回転電極外周面との距離の2倍以上とするのがよい。
【0015】
一方、前記覆い部材内の反応ガスが前記回転電極の外周面に引き連れられて前記プラズマに供給されるようにするためには、前記距離は当該基材と前記回転電極の回転中心軸との距離よりも小さいことが好ましい。
【0016】
前記覆い部材は、前記回転電極の回転方向上流側部分のみを覆うものでもよいが、前記基材移送手段が前記回転電極の下端部と前記基材とを対向させながら当該基材を移送するものである場合、前記覆い部材は前記回転電極の少なくとも上半部分の外周面を覆うように配置され、前記覆い部材の内側には、前記反応ガスが導入され、この反応ガスを前記回転電極が前記基材と対向する位置よりもその回転方向上流側の位置で当該回転電極の外周面に供給する反応ガス供給室と、前記回転電極が前記基材と対向する位置よりもその回転方向下流側の位置で当該回転電極の外周面に引き連れられたガスを受け入れ、このガスを特定箇所に導出するためのガス導出室とが形成されている構成とするのが、より好ましい。
【0017】
この構成によれば、覆い部材の内側に形成された反応ガス供給室内で回転電極外周面に供給された反応ガスがプラズマ形成領域に引き連れられて化学反応を起こした後、このプラズマ形成領域から回転電極外周面に引き連れられて前記覆い部材内のガス導出室に入り込み、特定個所に導出される。すなわち、プラズマ形成領域で発生したガスは前記ガス導出室を通じて特定領域に導かれることとなり、当該ガスが無秩序に外部に放散されることが抑止される。
【0018】
さらに、前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向下流側の領域における前記基材と前記覆い部材との間の距離も当該対向位置における前記基材と前記回転電極との間の距離より大きくなるように当該覆い部材を配置し、この覆い部材と前記基材との間隙を通じて前記対向位置に向けて遮断用ガスを供給するための下流側遮断用ガス供給部を備えるようにすることにより、前記プラズマ形成領域で発生したガスの放散をより確実に抑止できる。
【0019】
具体的には、前記覆い部材及び基材搬送手段を囲むハウジングを備え、このハウジングに、前記下流側遮断用ガス供給部と、当該ハウジングの基材入口近傍に遮断用ガスを供給することにより前記覆い部材と基材との間隙から逃がされる逆流ガスをハウジング内方へ押し戻すための上流側遮断用ガス供給部が設けられている構成とするのが、より好ましい。この構成によれば、プラズマ形成領域に供給される反応ガスや同領域で発生したガスがハウジング外部に放散されるのを防ぎながら、当該ハウジング内で基材表面のプラズマ処理を効率良く行うことができる。
【0020】
より具体的に、前記下流側遮断用ガス供給部及び上流側遮断用ガス供給部としては、前記基材の移送路に対して前記覆い部材と同じ側から遮断用ガスを供給するようにハウジング内に形成された遮断用ガス供給通路を含むものが、好適である。この装置によれば、基本的に基材入口及び基材出口は開放した状態のまま基材を移送させることができ、簡単な構成でより効率の高いプラズマ処理ができる。
【0021】
さらに、前記ハウジングに、前記上流側遮断用ガス供給部により供給される上流側遮断用ガスと前記逆流ガスとの混合ガスを前記上流側遮断用ガス供給部と当該回転電極との間の位置からハウジング外部の特定個所へ導出するための混合ガス導出部が設けられている構成とすれば、当該混合ガスがハウジング内で充満するのを回避して前記上流側遮断用ガスや逆流ガスの良好な流れを促進することができる。
【0022】
この場合、前記下流側遮断用ガス供給部及び上流側遮断用ガス供給部は、前記基材の移送路に対して前記覆い部材と同じ側から遮断用ガスを供給するようにハウジング内に形成された遮断用ガス供給通路を含み、前記混合ガス導出部は、前記遮断用ガス供給通路と略平行に延び、当該遮断用ガス供給通路と前記覆い部材との間の位置に形成される混合ガス導出通路を含むものが、好適である。
【0023】
この構成によれば、基材移送路を確保しながら前記混合ガスの導出を円滑に行うことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は、本発明の実施の形態にかかるプラズマ処理装置を示したものである。なお、この実施の形態では、板状の基材28の表面に薄膜を形成する処理を行う成膜装置について説明するが、本発明はこれに限らず、例えばエッチングなど、他のプラズマ処理を行う場合にも適用が可能である。
【0025】
図示の装置は、ハウジング10を有し、このハウジング10の底部に基材移送通路18が形成されるとともに、その上方に回転電極20を覆う覆い部材14が設けられている。
【0026】
覆い部材14は、回転電極20の外周面のうち下端部(基材28と対向する部分)を残してその他の外周面、すなわち上半部分の外周面を含む外周面を覆う形状を有し、その内部空間16が、前記回転電極20が前記基材28と対向する位置よりも当該回転電極20の回転方向上流側の反応ガス供給室16aと回転方向下流側のガス導出室16bとに区画されている。換言すれば、覆い部材14の底壁14bに開口14aが形成され、この開口14aから下向きに回転電極20の下端部のみが突出した状態となっている。
【0027】
従って、この実施の形態では、覆い部材14の底壁14bと基材28との間の距離D(図3)が、回転電極20と基材28とが対向する対向位置における当該回転電極20の外周面と基材28との間の距離dよりも大きくなる(図例では回転電極−基材間距離dの2倍以上の距離)となるように、覆い部材14が配置されている。
【0028】
さらに、この実施の形態では、前記底壁−基材間距離Dが、前記対向位置よりも前記回転電極回転方向上流側(図1では左側)における前記開口14aの隙間寸法(すなわち回転電極20の外周面と覆い部材14の底壁14bとの間の距離)よりも大きくなるように、覆い部材14が配置されている。
【0029】
なお、本発明において覆い部材14の具体的な材質は問わないが、電気絶縁を考慮すると、壁面を例えばステンレス鋼にする一方で基材28と対向する底面すなわち底壁14bの外側面を例えばセラミックスとするのがよい。
【0030】
前記覆い部材14の天壁には、前記反応ガス供給室16a内に反応ガスを供給するための反応ガス供給口15が設けられるとともに、当該天壁を貫通するようにガス導出管(ガス導出通路形成部)17が固定されている。このガス導出管17は、前記反応ガス供給室16aに面する側の壁が前記反応ガス供給室16aとガス導出室16bとを区画する隔壁17bとなっており、かつ、当該導出管17内にガス導出室16b側に連通する上下方向のガス導出通路17aを形成しており、このガス導出管17の下端部には案内部材とクリーニング部材とを兼ねるブラシローラ21が設けられている。このブラシローラ21は、例えば金属材料や高分子材料で形成されたブラシを有して回転電極20の外周面に軽く接触しながら同期回転し、当該回転電極20に引き連れられているガスを上方のガス導出通路17aに案内するとともに、回転電極20の外周面に付着した膜を掻き取る役目を行う。
【0031】
前記回転電極20の外周面は円筒状をなし、その回転中心軸22回りに回転駆動されるようになっている。具体的には、前記回転中心軸22にカップリング23を介して回転駆動用モータ24が連結されている。また、前記回転中心軸22には、前記回転電極20に電圧を印加して基材28との隙間にプラズマ42を発生させるための高周波電源(直流電源でもよい)26が接続されている。
【0032】
ハウジング10の下部の基材移送通路18は、前記回転中心軸22を横切る方向(図1では左右方向)に形成されており、この基材移送通路18に沿って基材移送手段である多数の搬送コロ30が設けられている。
【0033】
これらの搬送コロ30は、ハウジング10の側壁下部に形成された基材入口10aと基材出口10bとを結ぶ直線に沿って多数配列され、その上に載せられた基材28を基材入口10aからハウジング10内に侵入させて前記回転電極20の下端部に微小隙間をおいて対向させ、かつ、基材出口10bを通じてハウジング10の外部に導出するように構成されている。
【0034】
具体的には、各搬送コロ30に図3に示すようなプーリ32が連結され、このプーリ32がベルト34を介して図略の回転駆動手段に連結されており、この回転駆動手段による各搬送コロ30の回転駆動によって前記基材28の水平方向の搬送が行われる。
【0035】
さらに、前記搬送コロ30に混じって接地用ローラ40が設けられている。この接地用ローラ40は、前記回転電極20の下端部と対向する位置に配され、接地されている。また、この接地用ローラ40の両隣に位置する複数の搬送コロ30は連結部材36によって相互に連結され、この連結部材36は昇降装置38に連結されている。この昇降装置38は、前記連結部材36及びこれに連結される複数の搬送コロ30を一体に昇降させることにより、当該搬送コロ30により搬送される基材28と前記回転電極20の外周面との間隔を調整する。
【0036】
前記ハウジング10には、その基材入口10aの近傍及び基材出口10bの近傍で基材移送通路18に対して上から遮断用ガスを供給する上流側遮断用ガス供給部及び下流側遮断用ガス供給部が設けられている。
【0037】
具体的には、ハウジング10内において、前記覆い部材14よりも回転電極回転方向上流側(図1では左側)及び下流側(同図右側)に、それぞれ、上下方向に延びる上流側遮断用ガス供給通路44及び下流側遮断用ガス供給通路45が形成され、各供給通路44,45の上端に遮断用ガス供給口48,49がそれぞれ設けられており、各遮断用ガス供給口48,49には図略の遮断用ガス供給源が接続されている。また、上流側遮断用ガス供給通路44と覆い部材14との間の位置には上下方向に延びる混合混合ガス導出通路46が形成され、その上端にガス導出口50が設けられている。
【0038】
なお、本発明において「遮断用ガス」には、プラズマ領域での化学反応に影響を与えないガスを任意選択することが可能であり、一般には、窒素、ヘリウム、アルゴン、その他の不活性ガス等が好適である。
【0039】
前記ハウジング10よりも基材搬送方向上流側の位置には、処理すべき基材28を予熱するための予熱装置12が設けられている。この予熱装置12は、搬送コロ30により形成される基材移送通路を囲むヒータハウジング54と、このヒータハウジング54内に格納されるヒータ56とを備えている。そして、ヒータハウジング54に設けられた基材入口54aからヒータハウジング54内に搬入された基材28がヒータ56によって上側から加熱され、その後に前記ヒータハウジング54の基材出口54からそのまま前記ハウジング10の基材入口10aに移送されるようになっている。
【0040】
次に、この装置の作用を説明する。
【0041】
搬送コロ30に載せられた基材28は、まず予熱装置12を通過して予熱された後、ハウジング10の基材入口10aから同ハウジング10内に導入される。そして、接地用ローラ40に達した時点で確実に接地されるとともに、この接地された基材28と適当な電圧が印加された回転電極20との隙間にプラズマ42が生成される。
【0042】
一方、回転電極20が図1の矢印方向(同図反時計回り方向)に高速回転駆動されるとともに、これを覆う覆い部材14の反応ガス供給室16a内に反応ガス供給口15を通じて反応ガス等(例えばシリコン成膜を行う場合には反応ガスであるSiH4及びH2と不活性ガスであるHe)が流量制御器の制御の下、供給されている。
【0043】
この反応ガス等は、回転電極20と基材28との対向位置よりも回転電極20の回転方向上流側における当該回転電極20の外周面に供給され、同外周面に引き連れられて覆い部材14の開口14aからプラズマ42に供給され、ここで化学反応を起こして基材表面上に薄膜を形成する。そして、薄膜が形成された基材28は、そのまま基材出口10bを通じてハウジング10の外部に排出される。
【0044】
このとき、基材28は覆い部材14の下方を通過するだけでよく、従来のように反応容器内に基材28を閉じ込める必要がないので、ゲートバルブ等を要しない簡素な構成で、基材28の連続処理や、大面積基材・長尺基材の処理などが可能になる。
【0045】
ところで、前記回転電極20と基材28との対向位置における当該回転電極20と基材28との間の距離dはきわめて小さいので、当該対向位置に供給される反応ガスの多くがプラズマ形成領域から回転電極20の回転方向上流側(図1では左側)に逆流する可能性があり、この逆流ガスが新しい反応ガスと混じると成膜の品質を低下させるおそれがある。しかしながら、図示の装置では、当該回転電極20の回転方向上流側における覆い部材底壁14bと基材28との間の距離Dが、前記対向位置における回転電極20の外周面と基材28との距離dよりも大きくなる位置に覆い部材14が配置されているので、その底壁14bと基材28との間隙29A(図1)を通じて、前記プラズマ形成領域から回転電極回転方向上流側(図1では左側)に逆流した逆流ガスが覆い部材14の外側へ円滑に逃がされ、当該逆流ガスと新しい反応ガスとの混合が有効に抑止されることになる。
【0046】
特に、この実施の形態では、前記距離Dが、回転電極回転方向上流側における当該回転電極20と覆い部材14の底壁14bとの距離よりも大きくなっているので、前記逆流ガスが覆い部材14内の新しい反応ガスに混入することがより確実に抑止されることとなる。
【0047】
さらに、前記逆流ガスは、上流側遮断用ガス供給通路44を通じてハウジング10内に供給される上流側遮断用ガスによってハウジング内方に押し返され、当該逆流ガスがハウジング10の外部に無秩序に放散されることが防がれるとともに、当該逆流ガス及び遮断用ガスの混合ガスが混合ガス導出通路46を通じてハウジング10の外部の特定個所に回収されることにより、前記上流側遮断用ガス及び逆流ガスの円滑な流れが促進される。この混合ガス導出通路46や前記ガス導出通路17を通じてのガスの回収は、例えば排気用ポンプを駆動することにより行うことが可能である。
【0048】
一方、前記プラズマ42の生成領域で発生したガスは、そのまま回転電極20の外周面に引き連れられてガス導出室16b内に入り込み、同外周面からブラシローラ21によってガス導出通路17aに案内され、ハウジング10外部の特定部位(ガス処理部)に導出される。すなわち、プラズマ形成領域で発生したガスは秩序をもって特定箇所に回収される。
【0049】
特にこの実施の形態では、前記対向位置よりも回転電極回転方向下流側(図1では右側)における覆い部材底壁14bと基材28との間の距離Dが、前記対向位置における回転電極20の外周面と基材28との距離dよりも大きく確保され、かつ、その底壁−基材間に確保された間隙29B(図1)を通じて、下流側遮断用ガス供給通路45からハウジング10内に導入された下流側遮断用ガスが前記プラズマ42へ供給され、このプラズマ42で生成されたガスを基材出口10b側から内方へ押し込むため、当該プラズマ42で生成されたガスはより確実にガス導出室16bに導かれることとなり、当該ガスが基材出口10bを通じて無秩序にハウジング10の外部に放散されることがより有効に抑止される。
【0050】
なお、本発明は以上の実施の形態に限られず、例えば次のような形態をとることも可能である。
【0051】
・本発明において、遮断用ガスの供給の有無は反応ガスやプラズマ生成により生ずるガスの特性等に応じて適宜選択すればよい。反応ガスの特性によっては、覆い部材14の内部を反応ガス供給室とガス導出室とに区画せずに単純に同部材14内に反応ガスを適量収容しておくようにしてもプラズマ処理を行うことが可能であり、例えばハウジング10を設置しなくても、逆流ガスと新しい反応ガスとの混合の抑止効果や、回転電極20の回転方向下流側で既反応ガスを覆い部材14内に回収する効果を得ることは可能である。
【0052】
・前記覆い部材14は、回転電極20の外周面のうち少なくとも回転電極回転方向上流側の部分を覆うものであればよく、その覆う部位も適宜設定可能である。ただし、覆い部材14に収容された反応ガスが回転電極外周面に引き連れられてプラズマ形成領域に供給されるには、当該覆い部材14がある程度は基材28に近い位置にあることが必要であり、具体的には、覆い部材14の底壁14bから基材28までの距離Dが当該基材28から回転電極20の回転中心軸22までの距離よりも小さいことが好ましい。
【0053】
・前記実施形態では、回転電極20の回転の向きと基材28の移送の向きとが合致しているものを示したが、回転電極20の回転の向きと逆向きに基材28を移送する(図1では右向きに基材28を移送する)場合にも本発明の適用が可能である。この場合、回転電極の回転方向上流側は基材移送方向下流側となり、回転電極の回転方向下流側は基材移送方向上流側となる。
【0054】
【発明の効果】
以上のように本発明は、回転電極が基材の表面と対向する部分を残してその他の当該回転電極の部分を覆い部材で覆い、この覆い部材内に収容された反応ガスが前記回転電極の外周面に引き連れられて前記プラズマ生成手段により生成されるプラズマへ供給されるようにし、かつ、回転電極回転方向上流側における覆い部材と基材との距離を回転電極と基材との距離よりも大きくして当該覆い部材と基材との間にプラズマ形成領域から逆流するガスを逃がすための空間を確保したものであるので、当該逆流ガスが新しい反応ガスに混じるのを有効に抑止して質の高いプラズマ処理を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかるプラズマ処理装置の断面正面図である。
【図2】前記プラズマ処理装置の断面平面図である。
【図3】前記プラズマ処理装置の側面図である。
【図4】従来のプラズマ処理装置における回転電極周囲のガスの流れを示す正面図である。
【符号の説明】
10 ハウジング
14 覆い部材
16a 反応ガス供給室
16b ガス導出室
17 ガス導出管(ガス導出通路形成部)
20 回転電極
24 回転駆動モータ
26 高周波電源(プラズマ生成手段)
28 基材
30 搬送コロ(基材移送手段)
44 上流側遮断用ガス供給通路
45 下流側遮断用ガス供給通路
46 混合ガス導出通路
D 覆い部材の底壁と基材との間の距離
d 回転電極の外周面と基材との間の距離
Claims (11)
- プラズマに反応ガスを供給することにより化学反応を起こさせて基材表面をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、円筒状の外周面を有し、その中心軸回りに回転駆動される回転電極と、この回転電極の外周面に隙間をおいて前記基材の表面を対向させ、かつ、その隙間を維持しながら当該基材を前記回転電極の回転中心軸を横切る方向に移送する基材移送手段と、前記回転電極に電圧を印加して前記隙間にプラズマを発生させるプラズマ生成手段と、前記反応ガスを収容し、前記回転電極の外周面のうち当該回転電極が前記基材の表面と対向する対向位置よりも当該回転電極の回転方向上流側の外周面の少なくとも一部を覆うように配置される覆い部材とを備え、この覆い部材は、その収容した反応ガスが前記回転電極の外周面に引き連れられて前記プラズマ生成手段により生成されるプラズマへ供給される位置であって、かつ、当該覆い部材と前記基材との間の距離が前記対向位置における回転電極と基材との間の距離よりも大きくなる位置に配置され、前記覆い部材と前記基材との間の距離が前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向上流側における当該回転電極の外周面と前記覆い部材との間の距離よりも大きくなる位置に配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記プラズマの形成領域から逆流して前記覆い部材と基材との間隙を通じて逃がされた逆流ガスを前記覆い部材の外側から回収するための逆流ガス回収部を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向上流側の領域における前記基材と前記覆い部材との間の距離が当該基材と前記回転電極の回転中心軸との距離よりも小さくなる位置に当該覆い部材が配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項3記載のプラズマ処理装置において、前記基材移送手段は前記回転電極の下端部と前記基材とを対向させながら当該基材を移送するものであり、前記覆い部材は前記回転電極の少なくとも上半部分の外周面を覆うように配置され、この覆い部材の内側には、前記反応ガスを収容してこの反応ガスを前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向上流側の位置で当該回転電極の外周面に供給する反応ガス供給室と、前記回転電極が前記基材と対向する位置よりもその回転方向下流側の位置で当該回転電極の外周面に引き連れられたガスを受け入れ、このガスを特定箇所に導出するためのガス導出室とが形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項4記載のプラズマ処理装置において、前記ガス導出室内に連通するガス導出通路を形成するガス導出通路形成部と、前記ガス導出室内で前記回転電極の外周面近傍の位置に設けられ、当該回転電極の外周面に引き連れられたガスを前記ガス導出通路に案内する案内部材とを備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項5記載のプラズマ処理装置において、前記案内部材は、前記回転電極の外周面に付着した膜を除去するクリーニング部材を兼ねることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項4〜6のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記対向位置よりも前記回転電極の回転方向下流側の領域における前記基材と前記覆い部材との間の距離が当該対向位置における前記基材と前記回転電極との間の距離よりも大きくなるように当該覆い部材が配置されるとともに、この覆い部材と前記基材との間隙を通じて前記対向位置に向けて遮断用ガスを供給するための下流側遮断用ガス供給部を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項7記載のプラズマ処理装置において、前記覆い部材及び基材搬送手段を囲むハウジングとを備え、このハウジングに、前記下流側遮断用ガス供給部と、当該ハウジングの基材入口近傍に遮断用ガスを供給することにより前記覆い部材と基材との間隙から逃がされる逆流ガスをハウジング内方へ押し戻すための上流側遮断用ガス供給部が設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項8記載のプラズマ処理装置において、前記下流側遮断用ガス供給部及び上流側遮断用ガス供給部は、前記基材の移送路に対して前記覆い部材と同じ側から遮断用ガスを供給するようにハウジング内に形成された遮断用ガス供給通路を含むことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項9記載のプラズマ処理装置において、前記ハウジングに、前記上流側遮断用ガス供給部により供給される上流側遮断用ガスと前記逆流ガスとの混合ガスを前記上流側遮断用ガス供給部と当該回転電極との間の位置からハウジング外部の特定個所へ導出するための混合ガス導出部が設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項10記載のプラズマ処理装置において、前記遮断用ガス供給部は、前記基材の移送路に対して前記覆い部材と同じ側から遮断用ガスを供給するようにハウジング内に形成された遮断用ガス供給通路を含み、前記混合ガス導出部は、前記遮断用ガス供給通路と略平行に延び、当該遮断用ガス供給通路と前記覆い部材との間の位置に形成される混合ガス導出通路を含むことを特徴とするプラズマ処理装置。
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