JP3980260B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマによる化学反応を利用して基材表面に単層もしくは複数層の薄膜を形成するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、基材表面に薄膜を形成する手段として、アークイオンプレーティングやスパッタリングが知られている。しかし、これらの方法は、成膜処理に要する時間が長く、しかも完全なバッチ処理となるため、効率の高い薄膜形成を行うことは困難である。
【0003】
そこで、近年、プラズマCVDを利用したプラズマ処理装置として、基材上に配置されるプラズマ発生用の電極を略円柱状とし、かつ、これを高速回転させるようにしたものが開発されるに至っている(例えば特開平9−104985号公報参照)。その装置の概要を図12に示す。
【0004】
同図において、密閉されたチャンバ10内には、基材搬送台12が設置され、その上に板状の基材である基板14が載置されるとともに、これら基材搬送台12及び基板14はアースに接続されている。そして、この基板14と僅かな隙間をもって対向するように回転電極18が配設されている。この回転電極18は、図の奥行き方向に延びる略円筒状の本体の中心部を回転軸16が貫いてなり、この回転軸16の両端が図略の支柱により回転可能に支持されている。回転軸16の端部は、導電性ワイヤ17を介してチャンバ外面の共振器19さらには図略の高周波電源に接続されている。
【0005】
この装置において、チャンバ10内を排気し、回転電極18を回転させながらこれに高周波電力(直流電力でもよい)を印加して当該回転電極18と基板14との間にプラズマ22を発生させるとともに、図略の反応ガス供給源から反応ガス(図例ではSiH4とH2との混合ガス)及び希釈ガス(例えばHe)をチャンバ10内に導入すると、これらのガスは回転電極18の回転によって当該回転電極18と基板14との間に巻き込まれてプラズマ22に導かれ、ここで前記反応ガスが化学反応を起こす。このような化学反応を起こさせながら基板14を基材搬送台12とともに所定方向(回転電極18の回転軸方向と直交する方向)に走査する結果、基板14上に薄膜23が形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この装置は、均一な薄膜23を大面積の領域に高速で連続的に形成することを可能にするとともに、従来では困難とされていた1気圧以上の圧力下でのグロー放電プラズマ発生を可能にする画期的な手段である。しかし、図12に示す装置は、基板14が搬送台12の上に載置され、この基板14の上面のみが回転電極18と対向する状態で成膜が進められるものであるため、1回の基材走査では基板14の片面にしか薄膜を形成することができない。従って、図示の基板14の両面に薄膜を形成したり、線状基材の表面全体に薄膜を形成したりするには、当該基材の走査を複数回繰り返して行わなければならず、効率が悪い。
【0007】
また、かかる不都合は、薄膜を形成する場合のみならず、他のプラズマ処理、例えば基材の表面をプラズマ反応によって除去加工するような場合にも同様に発生し得る。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、基材の表面を高速でかつ効率良くプラズマ処理することができる装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する手段として、本発明は、円筒状の外周面を有し、その中心軸同士が略平行でかつ外周面同士が所定の隙間をおいて対向するように配置された一対の回転電極と、これらの回転電極をその中心軸回りにかつ互いに反対の向きに回転させる回転駆動手段と、前記回転電極同士の隙間に基材を通過させる送り手段とを備え、前記両回転電極の外周面上において互いに対向する位置に電極周方向に連続する溝が形成され、これらの溝同士の間に前記基材を通過させるように前記送り手段が構成され、この送り手段により送られる基材の表面と各回転電極との間に発生したプラズマへ反応ガスが供給されることにより、この反応ガスが化学反応を起こして前記基材が表面処理されるように構成されているものである。
【0010】
この構成によれば、互いに対向する回転電極同士の隙間に基材が通されるので、この基材の表面に対して複数の方向から一度にプラズマ処理が行われることになる。従って、1回の基材走査によって、所望面のプラズマ処理を高速でかつ効率良く行うことができる。
【0011】
前記両回転電極の外周面が完全な円筒面である場合には、基材と回転電極とが対向する方向は2方向のみとなる。これに対し、本発明のように外周面上において互いに対向する位置に電極周方向に連続する溝が形成され、これらの溝同士の間に前記基材を通過させるように前記送り手段が構成されているものでは、回転電極が多方向から基材を包囲する状態となるため、より均一なプラズマ処理が可能になる。
【0012】
さらに、前記溝が各回転電極の軸方向に並ぶ複数の位置に形成されているものでは、複数の基材へのプラズマ処理を同時に行うことができ、成膜効率がさらに高まる。
【0013】
本発明では、基材の具体的な形状を問わず、例えば前記図12に示した基板14の両面をプラズマ処理する場合にも良好に適用することが可能であるが、本発明は、長尺状基材の表面に薄膜を連続形成する場合に特に著しい効果を発揮するものである。例えば、前記送り手段を、長尺状基材を繰り出す基材繰出し部と、繰り出された長尺状基材を巻き取る基材巻取り部とを備え、これら基材繰出し部と基材巻取り部との間で前記長尺状基材が両回転電極同士の隙間を通過するように前記基材繰出し部及び基材巻取り部が配置されているものとすれば、長尺状基材の表面に対してプラズマ処理を連続的に施すことが可能であり、アークイオンプレーティングやスパッタリングのように完全なバッチ処理となる方法に比べ、処理効率が飛躍的に高まる。
【0016】
また本発明は、円筒状の外周面を有し、その中心軸同士が略平行でかつ外周面同士が所定の隙間をおいて対向するように配置された一対の回転電極と、これらの回転電極をその中心軸回りにかつ互いに反対の向きに回転させる回転駆動手段と、前記回転電極同士の隙間に基材を通過させる送り手段とを備え、この送り手段により送られる基材の表面と各回転電極との間に発生したプラズマへ反応ガスが供給されることにより、この反応ガスが化学反応を起こして前記基材が表面処理されるように構成され、両回転電極の軸方向の一部であって両回転電極が前記基材と対向しない部分の少なくとも一部が絶縁体で構成されているものである。
【0017】
前記回転電極がその軸方向全域にわたって放電を行うものである場合、回転電極間への十分なガスの吸い込みを行うためには、回転電極の軸方向寸法(幅寸法)をある程度大きく確保しなければならないので、この回転電極の幅寸法よりも基材の幅寸法が著しく小さいと、その差分だけ電極が無駄に放電を行う部分が大きくなってしまうことになるが、前記のように両回転電極の軸方向の一部であって両回転電極が前記基材と対向しない部分(例えば両回転電極の軸方向両端部)が絶縁体で構成されているものであれば、薄膜形成に直接的に寄与する部分に放電を集中させることができ、少ない電力で効率の高いプラズマ処理を実現できる。
【0018】
本発明は、プラズマ反応により基材表面を除去加工する場合にも適用し得るが、前記プラズマに供給された反応ガスが化学反応を起こすことにより前記基材表面に薄膜を形成する薄膜形成装置として特に好適である。
【0019】
この場合、基材表面をプラズマCVDによる薄膜形成に適した温度にするには、前記回転電極よりも基材送り方向手前側の位置で当該基材の表面を加熱する加熱手段を備えることが、好ましい。
【0020】
また、複数の成膜室を備え、各成膜室に回転電極対が設けられるとともに、基材を各成膜室における回転電極同士の隙間に順次通過させるように前記送り手段が構成されているものでは、一度の基材走査によって当該基材の表面に複数種の薄膜を積層させることが可能になる。
【0021】
特に、前記のような基材繰出し部及び基材巻取り部を備えた装置において、所定方向に直列に並べられた複数の成膜室にそれぞれ回転電極対が設けられるとともに、前記基材繰出し部と基材巻取り部との間で前記長尺状基材が各成膜室における回転電極同士の隙間を通過するように前記基材繰出し部及び基材巻取り部が配置される構成とすれば、長尺状基材の表面に複数種の薄膜を積層状態で連続形成することが可能となり、製造効率が飛躍的に高められる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態では、基材24の表面に耐食及び耐摩耗を目的としたSiN4薄膜を形成する例を示すが、本発明はその他の薄膜、例えばSi薄膜などの半導体薄膜や、SiC薄膜、DLC(ダイヤモンドライク・カーボン)薄膜、TiC薄膜、TiN薄膜などの耐食、耐摩耗、あるいは潤滑などを目的とした種々の薄膜の形成や、その他のプラズマ処理、例えば特開平9−31620号公報に示されるようなプラズマ反応を利用した基材表面の除去加工などにも適用できる。また、基材24の材質も、金属材料(例えばステンレス鋼やアルミニウム、チタン)、合成樹脂材料(例えば高分子フィルム)の別を問わない。
【0023】
図1(a)(b)に示すプラズマ処理装置は、一対の回転電極18を備え、これらが前記図12に示したチャンバ10と同等の成膜室内に設置されている。両回転電極18は、中空で略円筒状の本体と、その中心部を貫通する金属製の回転軸16とを有し、これらの回転軸16が互いに略平行となり、かつ、両回転電極18の外周面同士が相互対向するように、両回転電極18が配置されている。
【0024】
各回転電極18の回転軸16の両端は、図略の軸受台によって回転可能に支持され、各回転軸16の一端にモータ(回転駆動手段)25が図略のカップリングを介して連結されている。そして、これらのモータ25が同期して作動することにより、両回転電極18が回転軸16を中心として互いに反対の向きに回転駆動されるようになっている。
【0025】
なお、前記モータ25をはじめとする回転駆動源は必ずしも両回転軸16に個別に接続しなくてもよく、共通の駆動源から各回転軸16に動力伝達機構を介して駆動力を分配するようにしてもよい。
【0026】
各回転電極18の本体のうち、その軸方向両端部20は例えばアルミナやSiCなどの絶縁材料で構成され、これら両端部20で挟まれた中央部分のみが電極部分、すなわち導体で構成された部分とされている。そして、この電極部分が図略の内部導体によって前記回転軸16に接続されている。
【0027】
なお、この電極部分においても、その表面に異常放電防止用の絶縁被膜(例えばアルミナやSiC)を施すことが好ましい。
【0028】
前記回転軸16は、前記図12に示した電気接続部材17及びチャンバ外側の共振器19を介して高周波電源(直流電源でも可)28に接続されている。そして、この高周波電源28から前記共振器19及び電気接続部材17を通じて回転軸16さらには本体中央の電極部分に成膜用の高周波電圧が印加されるようになっている。なお、この電源には直流電源を使用することも可能である。
【0029】
さらに、この実施の形態にかかる装置では、両回転電極18の電極部分(軸方向中央部分)において、互いに対向する位置に、周方向に連続する断面略円弧状の溝26が形成されている。そして、両溝26の内側に、それよりも一回り小さい断面形状(図例では断面円状)の線状基材24が通過できるようになっている(この基材24を送るための手段については後述する。)。
【0030】
なお、回転電極18同士の隙間、及び、基材24と溝26の底面との隙間の寸法は、回転電極18と基板14との間でプラズマCVDを実行するのに適した寸法に設定されている(例えば0.1mm〜1mm)。換言すれば、かかる隙間寸法が得られるように、基材24の断面形状に合わせて溝26の形状が設定されている。
【0031】
次に、この装置の作用を説明する。
【0032】
両回転電極18が収容される成膜室内を排気し、モータ25の作動によって両回転電極18を相互逆の向きに回転させる。両回転電極18に高周波電力(直流電力でもよい)を印加する一方、基材24をアースに接続しながら、この基材24を両回転電極18の溝26同士の間に対して両回転電極18の回転の向きに沿う向き(図1(b)では右向き)に通すようにしてその軸方向に搬送し、かつ、成膜室内には反応ガス(この実施の形態ではSiH4とN2との混合ガス)及び希釈ガス(例えばHe)を導入する。これにより、当該基材24と回転電極18との間にプラズマ22が発生するとともに、前記導入ガスが両回転電極18の高速回転によって両回転電極18同士の隙間に巻き込まれ、前記プラズマ22に導かれて化学反応を起こす。これにより、溝26内を通過する基材24の表面に薄膜(この実施の形態ではSiN4からなる薄膜)が形成される。
【0033】
この装置は、一対の回転電極18同士の隙間に基材24が送られるものであるため、一回の基材24の走査で当該基材24の全表面に好適な薄膜が形成される。従って、前記図12に示した従来装置のように基板14の片面にしか薄膜が形成されないものに比べ、薄膜形成の効率は飛躍的に高まる。
【0034】
本発明では、前記各構成要素について種々の設定が可能である。
【0035】
・電極幅寸法と電極における絶縁部分の形成について
両回転電極18同士の隙間への反応ガスの吸込みを十分に行うためには、両回転電極18の軸方向寸法(幅寸法)をある程度大きく確保しなければならない。従って、図示のような線状基材24に薄膜を形成する場合には、回転電極18の軸方向両端側に、薄膜形成に寄与しない領域がかなり存在することになる。しかし、図示のように回転電極18の本体の軸方向両端部20を絶縁材料で構成し、真に成膜に寄与する軸方向中央部分のみを電極部分とすれば、この電極部分に放電を集中させることができ、少ない電力で効率の高いプラズマ生成を行うことが可能となる。勿論、電極幅寸法と基材幅寸法とに大差がない場合には、前記絶縁部分の形成は適宜省略が可能である。
【0036】
・回転電極の姿勢について
本発明では、両回転電極18の回転軸16の向きを問わない。例えば、図2に示すように両回転電極18の回転軸16を垂直にして両回転電極18を水平方向に並べるようにしてもよい。
【0037】
・電極表面の溝について
図1に示した溝26は適宜省略が可能である。すなわち、図3に示すように回転電極18の外周面を完全な円筒状にし、その円筒面と基材24とを対向させるようにしてもよい。ただし、同図に示す構造の場合には、両回転電極18の外周面同士の隙間を基材24の厚さよりも小さくすることができず、しかも、回転電極18が基材24を上下からしか包囲しないので、当該基材24に対するプラズマ処理の度合いに偏りが生じる(例えば成膜の場合には薄膜の厚さが上下に偏りやすくなる)傾向が生じるが、前記図1に示したように基材24の断面形状に応じて電極外周面に適当な周溝26を形成すれば、回転電極18同士の隙間及び基材24と回転電極18との隙間を好適な寸法にし、かつ、両回転電極18により基材24を多方向から包囲することが可能となり、その結果、より精度の高い均一なプラズマ処理が実現される。
【0038】
さらに、図4に示すように電極外周面にその軸方向に並ぶ複数の溝26を形成することにより、複数の基材24へのプラズマ処理を一度に行うことが可能となり、成膜効率がさらに向上する。
【0039】
・基材の送り手段
本発明において、両回転電極18同士の間に基材24を送る手段については、基材24の形状等に応じて適宜設定すればよい。例えば、前記図12に示した基板(板状の基材)14の両面をプラズマ処理する場合には、図5に示すように基板14の例えば四隅をクランプ15によって把持し、そのままの姿勢で基板14を回転電極18同士の間に通過させるようにすればよい。
【0040】
また、図6(a)に示すように2枚の基材24A,24Bを背中合わせにして回転電極18同士の隙間に同時に通したり、同図(b)に示すように単一枚の板状搬送体36の両面にそれぞれ基材24A,24Bを固定してこれら搬送体36及び基材24A,24Bを一体に回転電極18同士の隙間に通すようにすれば、1回の走査で2枚の基材24A,24Bのプラズマ処理を同時に行うことが可能になり、前記と同様に処理効率が高められる。
【0041】
具体的には、例えば図7に示すように前記搬送体36の上下両端を送り装置38に連結することにより、この搬送体36ごと両基材24A,24Bを難なく搬送することが可能であり、さらに、前記搬送体36を導電材料で構成することにより、この搬送体36を通じて両基材24A,24Bを同時に接地することも可能になる。あるいは、図8に示すように基材24A,24Bを導電性材料からなるクランプ39を介して送り装置38側に把持し、これらクランプ39を通じて基材24A,24Bのアース接続を行うようにしてもよい。
【0042】
また、図9に示すように搬送体36の上下端近傍に固定接地板42を対向配置してキャパシタンスを形成し、このキャパシタンスの静電容量が回転電極−基材間に形成される静電容量よりも十分大きくなるようにすれば、そのシールド作用によってプラズマ生成をより安定化させることができる。
【0043】
このような板状の基材24の他、本発明は、長尺状の基材24に対して連続薄膜を形成する場合に、特に著しい効果を発揮するものである。その一例を図10に示す。
【0044】
同図に示すチャンバ10内には、基材繰出しローラ30及び基材巻取りローラ32が設けられ、その間にヒータ(加熱手段)33、一対の回転電極18、及び、基材24の移動路を設定するための複数のガイドローラ34が設けられている。そして、基材繰出しローラ30から繰り出された長尺状基材24が、前記ヒータ33を通過して加熱された後に回転電極18同士の隙間を通って成膜を受け、基材巻取りローラ32に順次巻き取られるように構成されている。
【0045】
この構成によれば、長尺状基材24の全表面に対して薄膜を連続的に形成することができる。従って、完全なバッチ処理となるアークイオンプレーティングやスパッタリングに比し、成膜効率を飛躍的に高めることが可能になる。この装置は、線状の基材24に限らず、例えばフィルム材のような偏平な基材の両面に薄膜を形成する場合にも良好に適用することができる。
【0046】
・積層膜の形成について
前記の実施形態では、単層膜を形成する場合について説明したが、本発明では、複数対の回転電極を装備することにより、複数種の薄膜を効率良く積層形成できる。そのための装置の一例を図11に示す。
【0047】
図示の装置では、基材繰出しローラ30を収納する基材繰出し室10A、ヒータ33を収容する加熱室10B、一対の回転電極18を収容する第1成膜室10C、同じく一対の回転電極18を収容する第2成膜室10D、同じ一対の回転電極18を収容する第3成膜室10E、及び、基材巻取りローラ32を収容する基材巻取り室10Fが直列に配されており、各室が互いに隔離された状態となっている。
【0048】
この装置では、前記基材繰出しローラ30から繰り出された基材24が、加熱室10Bのヒータ33で加熱された後、まず、第1成膜室10C内の回転電極18同士の隙間を通過してここで基材表面に第1の薄膜が形成される。次に、前記基材24は第2成膜室10D内の回転電極18同士の隙間を通過し、ここで前記第1の薄膜上に重ねて第2の薄膜が形成される。そして、最後に前記基材24が第3成膜室10E内の回転電極18同士の隙間を通過し、ここで前記第2の薄膜に重ねて第3の薄膜が形成された後、当該基材24が基材巻取りローラ32に巻き取られる。
【0049】
この装置によれば、複数層の薄膜も難なく連続形成することができ、積層効率が飛躍的に高められる。すなわち、単一の成膜室で複数種の薄膜を積層しようとする場合には、各薄膜の形成が終了するたびに成膜室内のガスを入れ替える必要があり、そのインターバルにかなりの時間が費やされることになるが、図11に示す装置によれば、基材繰出しローラ30から繰り出した基材24を第1成膜室10C、第2成膜室10D、及び第3成膜室10Eの順に通過させて基材巻取りローラ32に巻き取るだけの1回の基材走査で、複数層に重ねられた薄膜を短時間で効率良く完成させることができるのである。しかも、各成膜室10C,10D,10E同士は互いに隔離されているので、その反応ガスが他の成膜室における薄膜に悪影響を及ぼすことが防がれる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように本発明は、一対の回転電極が互いに対向するように配置され、これらの回転電極が互いに反対の向きに回転駆動されながら、その回転電極同士の隙間に基材が送られるものであるので、基材表面のプラズマ処理を高速でしかも効率良く行うことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態にかかるプラズマ処理装置の要部を示す一部断面正面図、(b)はその側面図である。
【図2】前記プラズマ処理装置における回転電極が左右に並べて配置された例を示す一部断面正面図である。
【図3】前記回転電極における周溝が省略された例を示す一部断面正面図である。
【図4】前記回転電極に複数の周溝が形成された例を示す一部断面正面図である。
【図5】回転電極に対して基板をクランプで把持しながら搬送する例を示す平面図である。
【図6】(a)(b)は前記プラズマ処理装置での基材搬送形態の別例を示す側面図である。
【図7】前記プラズマ処理装置での基材搬送形態の別例を示す断面正面図である。
【図8】前記プラズマ処理装置での基材搬送形態の別例を示す断面正面図である。
【図9】前記プラズマ処理装置での基材搬送形態の別例を示す断面正面図である。
【図10】長尺状基材を繰り出す基材繰出しローラ及び同基材を巻き取る基材巻取りローラを備えたプラズマ処理装置を示す正面図である。
【図11】複数の成膜室が直列に配置されたプラズマ処理装置を示す正面図である。
【図12】従来のプラズマ処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10 チャンバ(成膜室)
10C 第1成膜室
10D 第2成膜室
10E 第3成膜室
14 基板(基材)
15 クランプ(送り手段)
16 回転軸
18 回転電極
20 回転電極本体の軸方向両端部
22 プラズマ
24 基材
25 モータ(回転駆動手段)
26 溝
28 高周波電源
30 基材繰出しローラ(基材繰出し部)
32 基材巻取りローラ(基材繰出し部)
33 ヒータ(加熱手段)
36 搬送体
Claims (9)
- 円筒状の外周面を有し、その中心軸同士が略平行でかつ外周面同士が所定の隙間をおいて対向するように配置された一対の回転電極と、これらの回転電極をその中心軸回りにかつ互いに反対の向きに回転させる回転駆動手段と、前記回転電極同士の隙間に基材を通過させる送り手段とを備え、前記両回転電極の外周面上において互いに対向する位置に電極周方向に連続する溝が形成され、これらの溝同士の間に前記基材を通過させるように前記送り手段が構成され、この送り手段により送られる基材の表面と各回転電極との間に発生したプラズマへ反応ガスが供給されることにより、この反応ガスが化学反応を起こして前記基材が表面処理されるように構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記溝が各回転電極の軸方向に並ぶ複数の位置に形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1または2記載のプラズマ処理装置において、前記送り手段は、長尺状基材を繰り出す基材繰出し部と、繰り出された長尺状基材を巻き取る基材巻取り部とを備え、これら基材繰出し部と基材巻取り部との間で前記長尺状基材が両回転電極同士の隙間を通過するように前記基材繰出し部及び基材巻取り部が配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 円筒状の外周面を有し、その中心軸同士が略平行でかつ外周面同士が所定の隙間をおいて対向するように配置された一対の回転電極と、これらの回転電極をその中心軸回りにかつ互いに反対の向きに回転させる回転駆動手段と、前記回転電極同士の隙間に基材を通過させる送り手段とを備え、この送り手段により送られる基材の表面と各回転電極との間に発生したプラズマへ反応ガスが供給されることにより、この反応ガスが化学反応を起こして前記基材が表面処理されるように構成され、両回転電極の軸方向の一部であって両回転電極が前記基材と対向しない部分の少なくとも一部が絶縁体で構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項4記載のプラズマ処理装置において、両回転電極の軸方向両端部が絶縁体で構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ処理装置において、前記プラズマに供給された反応ガスが化学反応を起こすことにより前記基材表面に薄膜を形成することを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項6記載のプラズマ処理装置において、前記回転電極よりも基材送り方向手前側の位置で当該基材の表面を加熱する加熱手段を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項6または7記載のプラズマ処理装置において、複数の成膜室を備え、各成膜室に回転電極対が設けられるとともに、基材を各成膜室における回転電極同士の隙間に順次通過させるように前記送り手段が構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項3記載のプラズマ処理装置において、所定方向に直列に並べられた複数の成膜室を備え、各成膜室に回転電極対が設けられるとともに、前記基材繰出し部と基材巻取り部との間で前記長尺状基材が各成膜室における回転電極同士の隙間を通過するように前記基材繰出し部及び基材巻取り部が配置され、各成膜室において前記プラズマに供給された反応ガスが化学反応を起こすことにより前記基材表面に薄膜が形成されることを特徴とするプラズマ処理装置。
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---|---|---|---|
JP2000310099A JP3980260B2 (ja) | 2000-10-11 | 2000-10-11 | プラズマ処理装置 |
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