JP3742139B2 - 充填剤含有エチレン系重合体組成物およびそれを用いた成形品 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性、耐熱性、寸法安定性、印刷性、筆記性、易焼却性、ヒートシール性等を保持し、かつ機械的強度に優れた、充填剤含有エチレン系重合体組成物、該組成物から成形された成形品、特にフィルム、シート、容器、チューブ等の成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来高圧ラジカル法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレンに無機充填剤を配合して、機械的強度、寸法安定性、剛性、耐熱性を改良することが種々提案されている。しかし従来のポリエチレンは、分子量分布が広いため、高い強度を有するものは製造し難く、充填剤を配合した場合に強度が著しく低下し、成形品の薄肉化が難しいという欠点があった。またチーグラー触媒によるポリエチレンは活性点を複数有するために、組成分布が広く、低分子量成分が溶出し、成形時のロール汚れや発煙の原因となっている。更に無機充填剤を多量に配合した場合、溶融押出時に大きなトルクがかかるために樹脂が容易に劣化して長期連続運転がしにくい欠点があった。またある種の充填剤とフェノール系抗酸化防止剤を配合したものは、在庫したり、製品となって長時間使用していると色相が変化して、黄色くなることがある。
【0003】
一方、無機充填剤を配合したポリエチレン製のフィルム、紙状フィルム、レジ袋やゴミ袋、チューブ、ホースなどの成形品あるいは上記無機充填剤含有フィルムを延伸して得られる多孔質フィルムもよく知られている。これらの成形品や多孔質フィルムでも、印刷性、筆記性、焼却時の発熱性低下などの諸機能を有しながら、より機械的強度の向上が求められている。
【0004】
また、チューブ、特に歯磨きチューブや食品、乳液等の絞り出し用チューブには低密度ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル共重合体が使われているが、内容物を絞り出した後、容器の復元性のために空気が容器に戻る、いわゆるエアーバックのため内容物が変質する可能性があることから、復元性のない絞り出し容器が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の問題点を解消するものであって、特定の触媒を用いて得られる分子量分布が狭く、かつ広い組成分布を有するエチレン・α−オレフィン共重合体に充填剤と酸化防止剤を配合することによって、優れた機械的強度を維持し、耐熱性、寸法安定性、風合い、柔軟性、通気性に優れかつ半透明で易焼却性を有し、また成形条件の許容範囲が広い等の特性を損なわず加工時の熱劣化が少なくなおかつ長期保存後の色相の悪化をきたさない、エチレン・α−オレフィン共重合体組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、充填剤とエチレン・α−オレフィン共重合体またはその組成物との相溶性、分散性を向上させることにより、更に上記特性を向上させた組成物を提供することにある。さらに他の目的は前記組成物から成形した印刷性、筆記性、風合い、柔軟性、焼却時の発熱性低下などの諸機能を有しながら、より機械的強度の向上されたシート、フィルムを提供することにあり、さらに他の目的は、上記組成物の中空成形により得られる復元性が少なく、エアーバックのない絞り出しチューブを提供することにあり、さらに他の目的は、上記組成物からなるフィルムを延伸してなる風合い、柔軟性、通気性に優れ、機械強度の高い多孔質フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の触媒を用いて重合された分子量分布が狭く、組成分布が適度に広い特定のエチレン・α−オレフィン共重合体または該共重合体を含む樹脂成分に充填剤及び酸化防止剤を配合した組成物が剛性、耐熱性、寸法安定性、印刷性、筆記性、易焼却性、ヒートシール性等を保持し、かつ機械的強度に優れることを見出すと共に、該組成物中に特定の官能基を導入することにより、溶融加工時の熱劣化や変質を防止し、成形時のロール汚れや発煙がなく、さらに充填剤の分散性が向上し、機械的強度、風合い、柔軟性等により優れかつ易焼却性の樹脂組成物が得られること、さらにはそれらから得られるフィルム、シート、チューブ、多孔質フィルムなどが上記諸機能を保持し、特に機械的性質に優れたものとなることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本願第1発明は、(A)(a)密度0.86〜0.97g/cm3、(b)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10min.、(c)分子量分布パラメーターMw/Mn1.5〜4.5、(d)組成分布パラメーターCbが2.00以下、(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(重量%)と密度dおよびMFRが次の関係を満足する、イ)d−0.008×logMFR≧0.93の場合 X<2.0、ロ)d−0.008×logMFR<0.93の場合 X<9.8×103 ×(0.9300−d+0.008×logMFR)2 +2.0、(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在し且つ複数個存在するピークの高温側のピークが85℃〜100℃の間に存在するエチレン・α−オレフィン共重合体または(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体20重量%以上と(A’)他のエチレン(共)重合体80重量%以下からなる樹脂成分100重量部に対し
(B)充填剤10〜400重量部および(C)0.005〜2.0重量部の酸化防止剤を含むエチレン系重合体組成物である。
【0009】
本願第2発明は、(A)(a)密度0.86〜0.97g/cm3 、(b)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10min.、(c)分子量分布パラメーターMw/Mn1.5〜4.5、(d)組成分布パラメーターCbが2.00以下、(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(重量%)と密度dおよびMFRが次の関係を満足する、イ)d−0.008×logMFR≧0.93の場合 X<2.0、ロ)d−0.008×logMFR<0.93の場合 X<9.8×103 ×(0.9300−d+0.008×logMFR)2 +2.0、(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在存在し且つ複数個存在するピークの高温側のピークが85℃〜100℃の間に存在するエチレン・α−オレフィン共重合体、(A’)他のエチレン(共)重合体80重量%以下からなる樹脂成分100重量部に対し(B)充填剤10〜400重量部および(C)酸化防止剤0.01〜2.0重量部からなる樹脂組成物であって該樹脂成分中に、樹脂成分1g当り10-8〜10-3molのD1:カルボン酸基、カルボン酸エステル基または酸無水基含有モノマー、D2:エポキシ基含有モノマー、D3:ヒドロキシル基含有モノマー、D4:アミノ基含有モノマー、D5:アルケニル環状イミノエーテル誘導体含有モノマー、D6:多官能モノマーから選ばれた少なくとも1種の官能基含有モノマー量を有するエチレン系重合体組成物である。
【0010】
本願第3発明は、前記第1または第2の発明の組成物を押出、射出、中空、回転などの成形法で得たフィルム、シート、チューブなどの成形品を提供するものであり、本願第4発明は前記第1または第2の発明の組成物を用いた多孔質フィルムを提供するものである。
【0011】
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明における(A)エチレン・α−オレフィン共重合体はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンより選ばれた一種以上との共重合体である。この炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、好ましくは3〜12のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドテセンなどが挙げられる。。また、これらのα−オレフィン一種用いても二種以上用いてもよくその含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下の範囲で選択されることが望ましい。
【0012】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の密度(a)は、0.86〜0.97g/cm3 、好ましくは0.88〜0.95g/cm3 、より好ましくは0.88〜0.94g/cm3 の範囲である。この範囲では充填剤の受容性に優れ、多量に配合しても強度が低下しないため、最も好ましく用いられる。密度が0.86g/cm3 未満では剛性、耐熱性が劣り、0.97g/cm3 を超えると耐衝撃性、透明性が十分でない。
【0013】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体のMFR(b)は0.01〜50g/10min、好ましくは0.1〜20g/10min、さらに好ましくは0.5〜10g/10minの範囲にあることが望ましい。MFRが0.01g/10min未満では成形加工性が劣り、50g/10minを超えると耐衝撃性、機械的強度などが低下する。
【0014】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の分子量分布Mw/Mn(c)の算出方法は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、この比Mw/Mnを求めるものである。
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnは1.5〜4.5であり、好ましくは2.0〜4.0、さらに好ましくは2.2〜3.0の範囲にあることが望ましい。Mw/Mnが1.8未満では成形加工性が劣り、4.5を超えると耐衝撃性が劣る。
【0015】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布パラメーターCb(d)は2.00以下、好ましくは1.10〜1.80、さらに好ましくは1.12〜1.70の範囲にあることが望ましい。1.10未満では成形温度の低下による流動性が悪化しやすく外観不良を起こし易く、2.00を超えるものは、透明性、耐衝撃性、耐環境応力劣化性の悪化や、成形品のべたつき、熱収縮が大となったり、成形条件の許容範囲が狭くなるなどの問題がある。
【0016】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布パラメーターCbの測定法は下記の通りである。
試料に耐熱安定剤を加え、ODCBに試料濃度が0.2重量%となるように135℃で加熱溶解する。この加熱溶液を、けい藻土(セライト545)を充填したカラムに移送し充満後0.1℃/minで25℃まで冷却し、試料をセライト表面に析出沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を5℃きざみに120℃まで段階的に昇温しながら、各温度において、試料を溶解した溶液を採取する。この溶液を冷却後メタノールで試料を再沈後、濾過、乾燥し、各溶出温度における試料を得る。この分別された試料の重量分率および分岐度(炭素数1000個あたりの分岐数)を測定する。分岐度の測定は13C−NMRにより求める。
【0017】
このような方法で30℃から90℃で採取した各フラクションについては次のような、分岐度の補正を行う。すなわち、溶出温度に対して測定した分岐度をプロットし、相関関係を最小自乗法で直線に近似し、検量線を作成する。この近似の相関係数は十分大きい。この検量線により求めた値を各フラクションの分岐度とする。なお、溶出温度95℃以上で採取したフラクションについては溶出温度と分岐度に必ずしも直線関係が成立しないのでこの補正は行わない。
【0018】
次にそれぞれのフラクションの重量分率wiを、溶出温度5℃当たりの分岐度biの変化量(bi −bi-1 )で割って相対濃度ci を求め、分岐度に対して相対濃度をプロットし、組成分布曲線を得る。この組成分布曲線を一定の幅で分割し、次式より組成分布パラメーターCbを算出する。
【0019】
【数1】
【0020】
ここでcj とbj はそれぞれj番目の区分の相対濃度と分岐度である。組成分布パラメーターCbは試料の組成が均一である場合に1.0となり、組成分布が広がるに従って値が大きくなる。
【0021】
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体の組成分布を記述する方法は多くの提案がなされている。例えば特開昭60−88016号では、試料を溶剤分別して得た各分別試料の分岐数に対して、累積重量分率が特定の分布(対数正規分布)をすると仮定して数値処理を行い、重量平均分岐度(Cw)と数平均分岐度(Cn)の比を求めている。この近似計算は、試料の分岐数と累積重量分率が対数正規分布からずれると精度が下がり、市販のLLDPEについて測定を行うと相関係数R2はかなり低く、値の精度は充分でない。このCw/Cnと本発明のCbとは、定義および測定方法が異なる。
【0022】
本発明の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体の、25℃におけるODCB可溶分の量X(e)は、エチレン・α−オレフィン共重合体に含まれる高分岐度成分および低分子量成分の割合を示すものであり、耐熱性の低下や成形品表面のベタツキの原因をなるため少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および平均分子量、すなわち密度とMFRに影響される。従って、前記ODCB可溶分の量X(重量%)は密度dとMFRの関係が、d−0.008×logMFR≧0.93を満たす場合は2重量%未満、好ましくは1重量%未満、さらに好ましくは0.5重量%未満である。
【0023】
また、dとMFRの関係が、d−0.008×logMFR<0.93を満たす場合はX<9.8×103 ×(0.9300−d+0.008×logMFR)2 +2.0の関係を満足し、好ましくはX<7.4×103 ×(0.9300−d+0.008×logMFR)2 +1.0、さらに好ましくはX<5.6×103 ×(0.9300−d+0.008×logMFR)2 +0.5の範囲である。
密度、MFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれているα−オレフィンが遍在していないことを示している。
【0024】
なお、前記の25℃におけるODCB可溶分量Xは、下記の方法により測定する。
すなわち試料0.5gを20mlのODCBに加え135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン製フィルターで濾過して濾液を採取する。試料溶液である濾液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1付近の吸収ピーク強度を測定し、あらかじめ作成した検量線により濾液中の試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分を求める。
【0025】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、(f)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個あり、さらにその高温側のピークが85℃から100℃の間に存在する。このピークが存在することにより、融点が高くなりまた結晶化度が上昇し成形体の耐熱性および剛性が向上する。図1に本発明の共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示した。図2は一般のメタロセン触媒による共重合体の溶出温度−溶出量曲線であり両者は顕著に異なる。
【0026】
本発明にかかわるTREFの測定方法は下記の通りである。試料に耐熱安定剤を加え、ODCBに試料濃度0.05重量%となるように135℃で加熱溶解する。この加熱溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入した後、0.1℃/minの冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温し、各温度において溶液に溶解可能な試料を順次溶出させる。この際、溶剤中の試料濃度はメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検知器で連続的に検出される。この濃度から、溶出温度−溶出量曲線を得ることができる。
TREF分析は極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0027】
本発明の特定の(A)エチレン・α−オレフィン共重合体は、以下のE1〜E5からなる触媒を用いて重合して得られたものであることが望ましい。
すなわち、E1:一般式Me1 R1 p (OR2 )q X1 4-p-qで表される化合物(式中Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1 およびR2 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X1 はハロゲン原子を示し、pおよびqは各々0≦p≦4、0≦p+q≦4の範囲を満たす整数である)、E2:一般式Me2 R3 m (OR4 )n X2 z-m-n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III族元素、R3 およびR4 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X2 はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)、C3:共役二重結合を持つ有機環状化合物、およびC4:有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物、E5:無機担体および/または粒子状ポリマー担体を相互に接触させて得られる触媒である。
【0028】
上記触媒成分(E1)の一般式Me1 R1 p (OR2 )q X1 4-p-qで表される化合物の式中Me1 はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示す。これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1 およびR2 は各々炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示し、pおよびqはそれぞれ0≦p<4、0≦q<4、0≦p+q≦4の範囲を満たし、好ましくは0≦p+q≦4の範囲である。
【0029】
上記触媒成分(E1)一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、ジプロポキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシモノクロロジルコニウム、ジブトキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。
【0030】
上記触媒成分(E2)の一般式Me2 R3 m (OR4 )n X2 z-m-n で表される化合物の式中Me2 は周期律表第I〜III族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R3 およびR4 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフィル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0031】
上記触媒成分(E2)の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0032】
上記触媒成分(E3)の共役二重結合を持つ有機環状化合物とは、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0033】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0034】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
AL SiR4-L
【0035】
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0036】
上記成分(E3)の有機環状炭化水素化合物の具体例は、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシラン等が挙げられる。
【0037】
触媒成分(E4)の有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムが得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウム化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0038】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0039】
触媒成分(E5)の無機物担体および/または粒子状ポリマー担体とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0040】
具体的にはSiO2 、Al2 O3 、MgO、ZrO2 、TiO2 、B2 O3 、CaO、ZnO、BaO、ThO2 等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2 −Al2 O3 、SiO2 −V2 O5 、SiO2 −TiO2 、SiO2 −V2 O5 、SiO2 −MgO、SiO2 −Cr2 O3 等が挙げられる。これらの中でもSiO2 およびAl2 O3 からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、粒子状ポリマー担体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0041】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分(E5)として用いることもできる。
【0042】
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体は、気相法、スラリー法、溶液法等で製造され、一段重合法、多段重合法など特に限定されるものではない。
【0043】
本発明の(A’)成分である他のエチレン(共)重合体の第1(A’1)は、従来のチタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の遷移金属化合物を含有する固体触媒成分と有機アルミニウム等の助触媒とからなる。イオン重合法によるチグラー系触媒またはフイリップス系触媒、他のメタロセン系触媒等(総称してチグラー型触媒等という)で重合されて得られる密度が0.86〜0.97g/cm3 のエチレン・α−オレフィン共重合体であって、具体的には線状高・中密度ポリエチレン(HDPE、MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。
【0044】
本発明のチグラー型触媒等で重合されて得られる線状高・中・低密度ポリエチレン(HDPE、MDPE、LLDPE)とは、密度が0.91〜0.97g/cm3 、好ましくは0.91〜0.94g/cm3 (LLDPE)の範囲であり、MFRが0.1〜20g/10分、好ましくは0.5〜15g/10分、さらに好ましくは0.7〜10g/10分の範囲で選択される。溶融張力は0.3〜15.0g、好ましくは0.4〜7.0g、さらに好ましくは0.5〜5.0gである。Mw/Mnは2.5〜6、好ましくは3〜5.5である。
【0045】
本発明のチグラー型触媒等で重合されて得られる線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)とは、密度が0.86〜0.91g/cm3 未満、好ましくは0.88〜0.905g/cm3 、MFRは0.1〜20g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分の範囲で選択される。
【0046】
該線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)との中間の性状を示すポリエチレンを有しており、好ましくは密度0.86〜0.91g/cm3 、示差走査熱量測定法(DSC)による最大ピーク温度(Tm)が60℃以上、かつ、好ましくは沸騰n−ヘキサン不溶分10重量%以上の性状を有する特定のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、例えば少なくともチタンおよび/またはバナジウムを含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合され、線状低密度ポリエチレンが示す高結晶部分とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムが示し非晶部分とを合わせ持つ樹脂であって、前者の特徴である機械的強度、耐熱性などと、後者の特徴であるゴム状弾性、耐低温衝撃性などがバランスよく共存している。
【0047】
上記チグラー型触媒等で重合されて得られるエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、炭素数3〜12、好ましくは3〜10の範囲であって、具体的にはプロピレン、ブテン1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等を挙げることができる。これらα−オレフィンの含有量は3〜40モル%の範囲で選択されることが好ましい。
【0048】
本発明の、他のエチレン(共)重合体の第2(A’2)は、高圧ラジカル重合による分岐状低密度ポリエチレン、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体である。
【0049】
上記低密度ポリエチレン(LDPE)は、MFRは0.1〜20g/10分、好ましくは0.5〜15g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。この範囲内であれば組成物の溶融張力が適切な範囲となりフィルム成形がし易い。また密度は0.91〜0.94g/cm3 、好ましくは0.912〜0.935g/cm3 、さらに好ましくは0.912〜0.930g/cm3 であり、溶融張力は1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。溶融張力は樹脂の弾性項目であり、上記の範囲であれば中空成形、フィルム成形などの場合では成形し易い。
また、Mw/Mnは3.0〜10、好ましくは4.0〜8.0である。
【0050】
本発明のエチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも特に好ましいものとしては、酢酸ビニル(EVA)を挙げることができる。すなわち、エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。特にビニルエステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。
これら共重合体のMFRは、0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、溶融張力は2.0〜25g、好ましくは3〜20gである。
【0051】
本発明のエチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして(メタ)アクリル酸のメチル、エチル(EEA)等のアルキルエステルを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%の範囲である。
これら共重合体のMFRは、0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、溶融張力は2.0〜25g、好ましくは3〜20gである。
【0052】
上記(A’)成分の配合割合は(A)成分20重量%以上、(A’)成分80重量%までを配合するものであり、衝撃強度を重視する場合は、(A)成分を主成分とすることが望ましいが、強度、低温ヒートシール特性をある程度保有し、かつ加工性、柔軟性、風合いを考慮した場合には(A’)成分を適度に配合することが望ましい。押出成形によって成形品を得る場合は、(A)成分の溶融張力が小さいため、ダイスウェルが小さくなってパリソンや溶融時のパイプが不安定となる傾向にあり(A’)成分の配合が望ましく、特に(A’2)成分を5〜10重量%添加するのが望ましい。またT−ダイ成形や押出ラミネートではネックインによるフィルム両端耳部の肉厚不均一が発生して、歩留りが悪くなったり、ドローレゾナンスによって偏肉が起きたりするためやはり10〜50重量%程度の添加が望ましい。
【0053】
本発明の成分(B)の充填剤としては無機充填剤と有機充填剤のいずれも使用できる。無機系の充填剤としては炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カオリン、アルミナ、マグネシア、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、マイカ、ガラスフレーク、ゼオライト、珪藻土、パーライト、パーモキュライト、ガラスバルーン、シラスバルーン等が挙げられる。
有機充填剤としては木粉、パルプ粉、フェノール樹脂、アクリル樹脂やその他の合成樹脂の粉末が挙げられる。
これら充填剤のうち好ましいものは、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム等である。これらの中でも最も好ましいのは炭酸カルシウムである。
充填剤の平均粒径は20μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。粒径が大きいと押出成形時や延伸時に、フィルム切れの原因になり、また多孔質フィルムの場合には得られたフィルムの孔系が大きくなり多孔質膜としての機能が劣ったものとなる。
【0054】
本発明においては前記充填剤とエチレン・α−オレフィン共重合体との相溶性を良くするために、脂肪酸、金属石鹸、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などで充填剤の表面処理を行うと好ましい結果が得られることが多い。
前記各種の充填剤は単独で使用しても、また併用して使用してもいずれでも差し支えない。充填剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対し10〜400重量部であり、好ましくは20〜300重量部、更に好ましくは30〜250重量部である。配合量10重量部未満では、樹脂の半透明性、通気性、対エアーバック性が不足するばかりでなく、焼却時に燃焼エネルギーが大きすぎるため、焼却炉を痛める原因となる。配合量が400重量部を超えると、成形加工が困難となり、強度も極端に弱くなる。
【0055】
本発明に使用される(C)成分である酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤でもよいが、中でも好ましく用いられるものはヒンダードフェノール化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物などである。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシ−フェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−エチリデン−ビス(2,4−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(4−t−ブチル−2,6−ジ−メチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル)−4’−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート〕メタン、3,9−ビス〔1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキザスピロ〔5,5〕ウンデカンなどがある。特に3,9−ビス〔1,1−ジ−メチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキザスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンは充填剤へ吸着もなく、高温時の酸化防止性能も優れているため、好ましく使用される。これらはエチレン・α−オレフィン共重合体(A)またはその組成物(A+A’)100重量部に対して0.01〜2.0重量部、好ましくは0.02〜1.0重量部添加され使用される。0.01重量部未満であると酸化防止効果がなく樹脂が熱劣化しやすく、2.0重量部を超えても効果は頭打ちとなり不経済であるのみか色相悪化の原因となる。
【0056】
有機ホスファイト化合物としては、下記一般式(I)または(II)で表される有機亜りん酸エステル化合物等が挙げられる。
【0057】
【化1】
【0058】
(R1 、R2 、R3 はお互いに同一または異なる水素またはアルキル基、アリール基、アルカリール基、アラルキル基またはアルキルチオ基を表す)
【0059】
【化2】
【0060】
(R4 、R5 はお互いに同一または異なるアリール基またはアルカリール基を示す)
【0061】
一般式(I)で表されるホスファイトを例示すると、トリスイソデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(ミックスドモノ、ジノニルフェニル)ホスファイト、トリスビフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、トリス(オクチルチオプロピル)ホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト等が挙げられる。
【0062】
一般式(II)で表されるホスファイトを例示すると、ビストリデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0063】
一般式(I)、(II)以外のホスファイトとしては、4,4’−イソプロピリデン−ジフェノールアルキルホスファイト、テトラトリデシル4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサトリデシル1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタントリホスファイト等が挙げられる。
【0064】
有機ホスフォナイト化合物としては、下記一般式(III)又は(IV)で表されるホスフォナイト化合物が例示される。
【0065】
【化3】
【0066】
〔式中R6 、R7 はそれぞれ同一かまたは異なる炭素数1〜4の炭化水素である。〕
【0067】
【化4】
【0068】
〔式中R8 、R9 、R10はそれぞれ同一かまたは異なる炭素数1〜4の炭化水素である。〕
【0069】
前記一般式(IV)で表される代表的な化合物として、テトラキス(2,4−ジ−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイトが挙げられる。
【0070】
本発明に使用する上記成分(C)の配合割合は、エチレン・α−オレフィン共重合体またはその組成物100重量部に対して0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。0.005重量部未満であると酸化防止効果がなく樹脂が熱劣化しやすく、2重量部を超えても効果は頭打ちとなり不経済であるだけでなく色相悪化の原因となる。
【0071】
前記の有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物は単独で用いても良いが、フェノール系酸化防止剤と併用することにより、相乗効果により組成物の熱に対する安定性、特に高温成形時の耐熱性が著しく向上する。またフェノール系酸化防止剤は、充填剤と併用すると経時変化によって黄変する場合があるが、これら有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物を併用することによって、色安定性が著しく改良される。それ故これらを併用して添加することが望ましい。
【0072】
本願第2発明は充填剤とエチレン・α−オレフィン共重合体組成物に特定の官能基モノマーを含有させた組成物である。該特定の官能基モノマーとしては、D1:カルボン酸基、カルボン酸エステル基または酸無水基含有モノマー、D2:エポキシ基含有モノマー、D3:ヒドロキシル基含有モノマー、D4:アミノ基含有モノマー、D5:アルケニル環状イミノエーテル誘導体含有モノマー、D6:多官能モノマーから選ばれた少なくとも1種の官能基を有するモノマーである。該官能基モノマーは、オレフィンと該官能基とのランダム共重合体、グラフト共重合体などの形態で包含されてもよい。該官能基はエチレン・α−オレフィン共重合体と充填剤の双方に親和性を有するため、両者の界面での親和性を高め、もって組成物の強度低下を防ぐ作用効果を有する。
【0073】
上記官能基含有モノマーのD1:カルボン酸基、カルボン酸誘導体または酸無水基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸またはそれらの無水物が例示され、そのうち特にマレイン酸または無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸の誘導体としては、上記カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステルなどが挙げられる。
【0074】
D2:エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とはアクリレートとメタアクリレートを意味する。
【0075】
D3:ヒドロキシル基含有モノマーとしては、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
D4:アミノ基含有モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
D5:アルケニル環状イミノエーテル誘導体含有モノマーとしては、以下の構造式(V)で表されるものが挙げられる。
【0078】
【化5】
【0079】
ここでnは1、2、および3であり、好ましくは2及び3、更に好ましくは2である。またR11、R12、R13およひR14はそれぞれC1 〜C12の不活性なアルキル基及び/または水素を示し、アルキル基にはそれぞれ不活性な置換基があってもよい。ここでいう不活性とはグラフト反応やその生成物の機能に悪影響を及ぼさないことを意味する。またRはすべて同一である必要はない。好ましくはR1 =R2 =HあるいはMe、R=Hすなわち2−ビニル及び/または2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニルおよび/または2−イソプロペニル−5、6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンである。これらは単独でも混合物でもよい。
【0080】
D6:多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等に代表される多官能性メタクリレートモノマー類、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ビニルブチラート等に代表される多官能性ビニルモノマー類、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−エチレンビスマレイミドに代表されるビスマレイミド類、p−キノンジオキシム等のジオキシム類などが挙げられる。
【0081】
上記モノマーの少なくとも1種をポリオレフィン樹脂にグラフト変性するときには、架橋剤の存在下で行うことが望ましい。用いられる架橋剤としては、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ケトンペルオキシド等の有機過酸化物、ジヒドロ芳香族化合物、硫黄などの加硫剤から選ばれた少なくとも1種が例示される。エチレン・α−オレフィン共重合体、官能基含有モノマー、架橋剤の反応は、押出機内で樹脂の溶融下で行ったり、加熱された有機溶媒内で行われる。押出機内で反応させる場合は、溶媒の除去工程がないため、好ましく行われる。
【0082】
該グラフト共重合体のグラフト量は、オレフィン重合体に対して0.01〜30重量%であり、好ましくは0、1〜20重量%、更に好ましくは0.2〜15重量%である。該グラフト量が0.01重量%未満では親和力が不十分で強度、柔軟性、通気性が充分改良されず、30重量%を超えると変性時にゲルが発生したり、樹脂の変色の原因となる。
【0083】
本発明の樹脂成分中の官能基含有モノマー量は、樹脂成分1g当り10-8〜10-3molになるように調整されることが望ましい。該官能基含有モノマー量が10-8mol未満では親和性は充分に発揮されず、10-3molを超える量を配合しても、機械的強度などの向上効果がそれ以上望めない。
【0084】
本願第3発明は、前記の組成物を押し出し成形、射出成形、中空成形、回転成形などの成形法により成形してなるフィルム・シート、チューブ、ボトル、異形押出成形物、蓋、ダクト等の型物等の成形品である。特に該フィルム・シート類は特定のエチレン・α−オレフィン共重合体と充填剤との組成物からなることから印刷性、筆記性、易焼却性、耐熱性、剛性を維持しながら、かつ機械特性の優れるものとなる。
【0085】
これらフィルムあるいはシートは従来公知のいずれの方法でも成形できるが、ショッピング袋、規格袋、包装袋など、特にごみ袋として好適に使用される。また、低カロリーフィルム、マット性フィルム、壁紙などにも好ましく使用される。これらフィルム・シートは、低カロリーで、厚さ約5〜200μmであり、空冷式あるいは水冷式のインフレーション成形法で成形される。また成分Aのみで成形する場合には分子量分布が狭いので成形時に大きなトルクがかかるため、線状低密度ポリエチレン専用の押出機を用い、ダイリップのギャップを2〜3mmと広げて成形することが望ましい。
さらに成形温度が200℃前後と高くなるため、冷却が充分に行えるエアーリングを取り付けて成形することが望ましい。特に一般的なゴミ袋の場合は20〜100μm、大型ゴミ袋としては50〜200μmの範囲である。その引張強度はJISK−6781の方法により測定して長さ方向(MD)で250Kg/cm2 以上、横方向(MD)で150Kg/cm2 以上である。広幅の厚さ50〜500μm程度のフィルムあるいはシート成形の場合にはT−ダイによるキャストフィルム成形法が好ましく用いられる。
【0086】
またチューブ類は押出成形または中空成形により成形され、ホース、絞り出し容器に使用される。とくに絞り出し容器は、一般には中空成形によって成形される。肉厚を均一にするためにダイスとマンドレルの隙間を成形品の肉厚分布に合わせてコントロールするパリソンコントローラーを備えた成形機にて成形するのが望ましい。一般には本発明の樹脂または組成物を用いた単層の容器で使われるが、充填剤が内容物に影響を与える場合には、内層に低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンの層を設けた多層容器も好ましく用いられる。
【0087】
本願第4発明は、多孔質フィルムである。従来の多孔質フィルムは主に線状低密度ポリエチレンに充填剤を配合し、溶融成形されたフィルムを延伸することにより製造されている。これら多孔質フィルムの特性として、引張強度などの機械的強度と透湿性のバランスに優れるフィルムが要求され、昨今においては、これら多孔質フィルムのより薄肉化が要望されている。
【0088】
上記に鑑み、本発明は機械的強度と透湿性のバランスに優れる多孔質フィルムを提供するものであって、前記第1発明または第2発明の特定のエチレン・α−オレフィン共重合体を含む樹脂成分に充填剤を配合し、成形されたフィルム・シートを延伸倍率1.2〜10倍の範囲で一軸及び/または二軸に延伸した多孔質フィルムである。特に多孔質フィルムの機械的強度を保持し、加工性、溶融張力などを考慮した場合には、樹脂成分の樹脂組成を前記(A)成分90〜50重量%、(A’)成分10〜50重量%、好ましくは(A)成分80〜60重量%、(A’)成分20〜40重量%の割合で配合することが望ましい。またフィルムの柔軟性、風合いなどを考慮した場合には、上記配合割合の範囲で、(A’)成分として超低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体などのα、β不飽和カルボン酸またはその誘導体が好ましく用いられる。また、上記樹脂成分に更に前述の官能基を導入することにより、より充填剤との分散性が良くなり、機械的強度などの特性が向上する。
【0089】
また充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ等が使用される。特にこれらの中でも炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、硫酸バリウムなどが好適である。上記充填剤の平均粒径は、30μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは0.8〜5μmの範囲のものが選択される。
粒径が過大のものは、延伸フィルムの気孔のち密性が悪くなり、粒径の過小のものは、樹脂への分散性、成形性の劣るものとなる。
なお、充填剤を脂肪酸またはその金属塩などで表面処理や液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、ワックスなどの炭化水素重合体などを配合することは、樹脂への分散性及びフィルムの延伸性の点で望ましい。
【0090】
本発明の充填剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して10〜400重量部、好ましくは30〜300重量部、更に好ましくは50〜200重量部である。上記範囲より少ない場合には得られる多孔質フィルムの気孔が充分に形成されず、範囲を超える場合にはフィルムの強度、加工性などが悪化する虞を生じる。
【0091】
本発明の延伸温度は、樹脂組成物の融点より100℃低い温度から融点より10℃低い温度の範囲、特に樹脂組成物の融点より90℃低い温度から融点より30℃低い温度の範囲で行うことが望ましい。この範囲より低い温度では延伸むらが生じやすく、またこの範囲を超える場合にはフィルムの多孔性が低下する虞がある。
【0092】
本発明のフィルム・シートを延伸倍率1.2〜10倍、好ましくは1.5〜8倍、更に好ましくは2.0〜7倍の範囲で一軸および/または2軸に延伸にした多孔質フィルムである。
なお、本発明の組成物に延伸倍率が1.2倍未満では延伸による効果が不十分であり、フィルムの多孔性、引張強度などの機械的強度が充分でない。また延伸倍率が10倍を超えると一方向にフィルムの分子配向が配向するためフィルム強度が低下するので好ましくない。
【0093】
本発明の延伸方法としては、ロール延伸法、インフレーション法、テンター法などの通例の方法で差し支えない。またフィルムにはコロナ処理等の表面処理等を施してもよい。
また、チオエーテル系の酸化防止剤を添加することによって、成形時の熱劣化によるフィッシュアイ生成、着色などを防止できる。また紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物などの光安定剤を添加することによって、その耐候性を改善することができる。要に応じて重金属不活性剤、造核剤、金属石鹸、酸吸収剤、顔料、充填剤、可塑剤、エポキシ化合物、発泡剤、難燃剤、加工助剤、極性基含有ポリオレフィン等を包含させることができる。特にゴミ袋特有の添加剤として猫、鳥などの動物の忌避剤、防・消臭剤、香料などを添加してもよい。
【0094】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(樹脂成分)
【0095】
(エチレン・ブテン−1共重合体Aの重合)
固体触媒の調製
窒素下で電磁誘導攪拌機付き触媒調製器(No.1)に精製トルエンを加え、ついでジプロポキシジクロロジルコニウム(Zr(OPr)2 Cl2 )28gおよびメチルシクロペンタジエン48gを加え、0℃に系を保持しながらトリデシルアルミニウム45gを滴下し、滴下終了後、反応系を50℃に保持して16時間攪拌した。この溶液をA液とする。次に窒素下で別の攪拌器付き触媒調製器(No.2)に精製トルエンを加え、前記A溶液と、ついでメチルアルミノキサン6.4molのトルエン溶液を添加し反応させた。これをB液とする。
次に窒素下で攪拌器付き調製器(No.1)に精製トルエンを加え、ついであらかじめ400℃で所定時間焼成処理したシリカ(富士デビソン社製、グレード#952、表面積300m2 /g)1400gを加えた後、前記B溶液の全量を添加し、室温で攪拌した。ついで窒素ブローにて溶媒を除去して流動性の良い固体触媒粉末を得た。これを触媒Cとする。
【0096】
(試料の重合)
連続式の流動床気相法重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ブテンの共重合を行った。前記触媒Cを連続的に供給して重合を行い、系内のガス組成を一定に保つため、各ガスを連続的に供給しながら重合を行った。
なお、生成した共重合体の物性は以下に示した。
【0097】
実施例および比較例で使用した試料および添加剤を次に示す。
成分(A) :前記A1、A2
成分(A’)
A’1-1 :チグラー触媒によるエチレン−αオレフィン共重合体
(密度=0.900g/cm3 、MFR=1.0g/10分、
商品名:ジェイレクスD9010、日本ポリオレフィン(株)製)
A’1-2 :チグラー触媒によるエチレン−αオレフィン共重合体
(密度=0.923g/cm3 、MFR=0.9g/10分、
商品名:ジェイレクスBF2382、
日本ポリオレフィン(株)製)
A’2 :エチレン酢酸ビニル共重合体
(酢酸ビニル含有量=15重量%、MFR=1.5g/10分、
商品名:ジェイレクスV270、日本ポリオレフィン(株)製)
【0098】
成分(B)
B1:炭酸カルシウム
平均粒径 1.7μm、飽和脂肪酸で表面処理したもの、
商品名:BKS−5、同和カルファイン(株)製
B2:タルク
平均粒径 4μm、商品名ミクロンホワイト5000S、
林化成(株)製
B3:酸化チタン
平均粒径 0.4μm、商品名タイペークR−550、
石原産業(株)製
【0099】
成分(C)
C1:1,3,5−トリメチル−2,4−トリス(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
(商品名イルガノックス1330)チバガイギー(株)製)
C2:テトラキス(2,4−ジ−ブチル−5−メチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト
(商品名:GSY−101)吉富製薬(株)製)
【0100】
成分(D)
D1:押出機法によりチーグラー触媒によるエチレン−ブテン−1共重合体(密度 =0.920、MFR=1.0)をマレイン酸変性したもの(マレイン酸含有量=0.5重量%、0.005mol%)
【0101】
〔実施例1〜12および比較例1〜7〕
表1に示した各成分と酸吸収剤として協和化学製ハイドロタルサイトを0.3重量部加えペレット化し前記の条件でインフレーション成形を行いフィルムを得た。その結果を表1に示した。
(フィルム成形)
(インフレーションフィルム成形)
装置 :モダンマシナリー(株)製
押出機スクリュー径 :50mmφ
ダイ :直径100mmφ
ブローアップ比 :2.5
ダイリップギャップ :3mm
成形樹脂温度 :200℃
フィルム厚み :30μm
スクリーンメッシュ :80メッシュ/120メッシュ/80メッシュ
【0102】
(評価結果)
実施例1〜3には充填剤(成分B1)と、酸化防止剤(成分C1、C2およびC1、C2を併用)を配合した例を示した。いずれも機械的強度が高く、低温ヒートシール性に優れ、連続運転性がよいことがわかる。比較例1には成分(C)を使用しない例を示し、実施例1〜3に較べ、劣化による目脂が発生し連続運転ができないばかりでなく、強度が低下し、ヒートシール性も劣る。また比較例2〜4は従来のA成分を使用した例を示したもので、実施例に較べいずれも強度、ヒートシール性とも劣っている。
【0103】
実施例4には、他の充填剤(成分B2)を使用した例を示したが、実施例1と同様に長時間連続運転が可能で強度も優れたものが得られた。
【0104】
実施例5〜6には成分(A)と(A’1-1 、A’2)を併用し、成分(B)(C)を配合した例を示し、比較例5〜6には成分(A’1)と成分(A’1-2 )を用いた他は実施例5、6と同じ配合をした例を示した。比較例のものは、実施例に較べいずれも強度が劣っている。
【0105】
実施例7〜9は、実施例1、5、6に更に変性(官能基含有)樹脂成分(D)配合した例を示し、いずれも成分(D)を配合した組成物が強度、引張弾性率、ヒートシール性のいずれも改良されていることがわかる。
【0106】
実施例10〜11は、樹脂成分(A1)100重量部に対して充填剤(成分B1)の配合量を100重量部、300重量部、かつ官能基を配合した例を示したものであり、充填剤を比較的多量に添加しても引張強度、引張弾性率などの機械的強度が保持されていることがわかる。一方比較例7は樹脂成分(A1)100重量部に充填剤(成分B1)を500重量部と官能基を配合した例を示したものであり、良好なフィルムができないものであった。実施例12は、実施例1の樹脂成分(A1)を(A2)に代えた以外は同様に評価し、その結果を示したものであって、実施例1とほぼ同等の結果を得た。
【0107】
なお行った試験法を以下に示す。
(物性試験方法)
密度 : JIS K6760に準拠した。
メルトフローレート : JIS K6760に準拠した。
引張試験 : JIS K6781に準拠した。
ダート強度 : JIS K7124準拠
酸化防止性能 : フィルム成形時に熱劣化樹脂による目脂によって成形不能になるまでの連続運転時間で評価した。
低温ヒートシール性 : ヒートシール試験機(テスター産業(株)製)を用い、シールバー幅1mm、圧力2kg/cm2 でシール温度を5℃刻みで1秒間シール後放冷する。シール部を15mm幅に短冊状に切りだし、引張試験機にて300mm/分でシール部を剥離し、その際の荷重が500gとなる温度を内挿により求める。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
〔実施例13〜21および比較例8〜9〕
表2に示した成分および酸吸収剤としてハイドロタルサイト0.3重量部(協和化学工業製)を加えペレット化し、下記条件で中空成形を行い、絞り出しチューブを作成し、耐エアーバック性、色味等を評価し、その結果を表2に示した。
【0112】
【0113】
(絞り出し容器の評価)
耐エアーバック性:容器の底から全長の1/3の距離だけ手で押しつぶした後、空気の戻りによって元の姿に復元するまでに要する時間で評価した。長いほどよい。
【0114】
(評価結果)
実施例13〜16には充填剤(成分B1)と酸化防止剤(成分C1、C2およびC1、C2を併用)を配合した例を示し、実施例17〜18はA1とA’1またはA’2を併用して例を示し、実施例19〜21は、上記実施例に更に変性(官能基含有)樹脂成分(D)を配合したものを示し、いずれも耐エアーバック性に優れ、連続運転性がよいことが判る。
比較例8は(C)成分を配合しない例を示し、実施例13に比べ、連続運転性が悪く、比較例9は、充填剤を配合しないものであり、耐エアーバック性に劣るものである。
【0115】
【表4】
【0116】
【表5】
【0117】
〔実施例22〜30及び比較例10〜15〕
表3に示した成分および酸吸収剤としてハイドロタルサイト0.3重量部(協和化学工業製)を加えペレット化し、下記条件で多孔質フィルムの製造を行い、評価した結果を表3に示した。
【0118】
(多孔質フィルム成形条件)
ブロー比を1.7、肉厚を60μmにした以外は、上記インフレーションフィルム成形条件で延伸用原反を得た。このフィルムを近接1軸延伸装置を用い延伸温度80℃、延伸倍率3にて、1軸延伸を行い多孔質フィルムを得た。
(フィルム評価法)
引張強度 : ASTM D882準拠
引張弾性率 : 同上
透湿度 : 直径85mmのガラス製カップに純水50cm3 を入れ、試験用フィルムをのせて周りを完全にシールし温度23℃、相対湿度50%に調整した部屋に10日間静置し重量減を測定し透湿度とする。結果は1日当り1m2 当りの透湿度で示す。
【0119】
(評価結果)
実施例22〜24には成分Bと、成分C1、C2およびC1、C2を併用した例を示し、実施例25は、充填剤(B2)を用いた例を示し、実施例26〜27は成分(A)と(A’1またはA’2)を併用し、成分(B)(C)を配合した例を示したもので、いずれも連続運転性、延伸むらもなく、柔軟な感触の多孔質フィルムであった。比較例10は成分(C)を使用しない例を示し、劣化による延伸むらが発生し、連続運転ができないばかりでなく、得られたフィルムが不均一となり延伸時に均一な孔とならず実用的な多孔質フィルムが得られなかった。
【0120】
比較例11〜13は、従来のエチレン系重合体(成分A’1、成分A’2、成分A’3)を用いたもので、比較例14、15はこれらの混合物の例を示したものであるが、実施例26、27に比べ、延伸性が悪く多孔質フィルムが得られなかった。
【0121】
実施例28〜30は、マレイン酸変性(官能基含有)樹脂成分(D)を更に配合したものを示し、実施例20、24、25と比較すると、いずれもより禁いるな多孔質フィルムが得られ、柔軟な感触のフィルムであった。
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
【発明の効果】
本発明は、特定の触媒で重合された分子量分布が狭く、適度な広さの組成分布を有するエチレン・α−オレフィン共重合体に、充填剤と酸化防止剤を添加することにより、成形時の熱劣化、変質がなく、成形ロールの汚れ、発煙が起きにくく、かつ機械的強度が高い組成物が得られる。また該組成物を用い、半透明で強度を有し、燃焼熱の発生の少ないフィルムや、フィルム成形後に更に延伸を施すことによって柔軟性に優れた多孔質フィルムが得られる。更に変性ポリオレフィンを配合することにより更に機械的強度の向上した組成物、成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の(A)エチレン・α‐オレフィン共重合体のTREF曲線を示すグラフである。
【図2】 典型的なメタロセン共重合体のTREF曲線を示すグラフである。
Claims (12)
- (A)下記(a)〜(f)を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体100重量部
(a)密度0.86〜0.97g/cm3
(b)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10min.
(c)分子量分布(Mw/Mn)1.5〜4.5
(d)組成分布パラメーターCb2.00以下
(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(重量%)と密度dおよびMFRが次の関係を満足する
イ)d−0.008×logMFR≧0.93の場合
X<2.0
ロ)d−0.008×logMFR<0.93の場合
X<9.8×103 ×(0.9300 −d+0.008 ×logMFR)2+2.0
(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在し、かつ該複数個存在するピークの高温側のピークが85℃〜100℃の間に存在すること。
(B)充填剤10〜400重量部および
(C)酸化防止剤0.005〜2.0重量部
を含む充填剤含有エチレン系重合体組成物。 - 前記エチレン - α・オレフィン共重合体(A)が下記E1〜E5の触媒形成化合物からなる触媒の存在下でエチレンと炭素数3〜20のα - オレフィンを共重合してなることを特徴とする請求項1に記載の充填剤含有エチレン系重合体組成物。
<触媒形成化合物>
E1:一般式Me 1 R 1 p (OR 2 ) q X 1 4−p−q で表される化合物
(式中Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR2は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X1はハロゲン原子を示し、pおよびqは各々0≦p<4,0≦p+q≦4の範囲を満たす整数である)、
E2:一般式Me 2 R 3 m (OR 4 ) n X 2 z−m−n で表される化合物
(式中Me 2 は周期律表第I〜 III 族元素、R 3 およびR 4 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X 2 はハロゲン原子または水素原子(ただし、X 2 が水素原子の場合はMe 2 は周期律表第 III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe 2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ0≦m+n≦zである)、
E3:共役二重結合を持つ有機環状化合物、および
E4:有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物、
E5:無機担体および/または粒子状ポリマー担体を相互に接触させて得られる触媒である。 - (A)下記(a)〜(f)を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体20重量%以上、
(a)密度0.86〜0.97g/cm 3
(b)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10min.
(c)分子量分布(Mw/Mn)1.5〜4.5
(d)組成分布パラメーターCb2.00以下
(e)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(重量%)と密度dおよびMFRが次の関係を満足する
イ)d−0.008×logMFR≧0.93の場合
X<2.0
ロ)d−0.008×logMFR<0.93の場合
X<9.8×10 3 × (0.9300 −d+ 0.008 × logMFR) 2 +2.0
(f)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個 存在し、かつ該複数個存在するピークの高温側のピークが85℃〜100℃の間に存在すること。
(A’)他のエチレン(共)重合体80重量%以下からなる樹脂成分100重量部、
(B)充填剤10〜400重量部および
(C)酸化防止剤0.005〜2.0重量部
を含む充填剤含有エチレン系重合体組成物。 - 前記(A’)他のエチレン(共)重合体が、下記のエチレン(共)重合体から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のエチレン系重合体組成物。
〔エチレン(共)重合体〕
(A’1)密度0.86〜0.97g/cm 3 のエチレン・α−オレフィン共重合体
(A’2)高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体 - 前記樹脂成分中に下記D1〜D6から選ばれた少なくとも1種の官能基含有モノマーを樹脂成分1g当り10-8〜10-3mol含有させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充填剤含有エレチン系重合体組成物。
D1:不飽和脂肪族カルボン酸、その無水物、金属塩、アミドおよびエステルから選択されるモノマー
D2:グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルから選択されるモノマー
D3:1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択されるモノマー
D4:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジブチルエチル(メタ)アクリレートから選択されるモノマー
D5:2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサゾリンおよび2−イソプロペニル−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサゾリンから選択されるモノマー
D6:トリメチロールプロパントリメタアクリレート、エチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ビニルブチラート、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、N,N−エチレンビスマレイミドおよびp−キノンジオキシムから選択されるモノマー - 前記(C)酸化防止剤が、ヒンダードフェノール化合物、有機ホスファイト化合物および有機ホスフォナイト化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の充填剤含有エチレン系重合体組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の充填剤含有エチレン系重合体組成物を、押出成形、射出成形、中空成形および回転成形のいずれかで成形してなる成形品。
- 前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の充填剤含有エチレン系重合体組成物を押出成形してなるフィルムまたはシートである請求項7に記載の成形品。
- 前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の充填剤含有エチレン系重合体組成物からなるチューブである請求項7に記載の成形品。
- 前記請求項8に記載のフィルムまたはシートを製袋してなる袋。
- 前記請求項9に記載のチューブからなる絞り出し容器。
- 前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の充填剤含有エチレン・α−オレフィン共重合体組成物をフィルムまたはシート成形した後、延伸倍率1.2〜10倍に延伸してなることを特徴とする多孔質フィルム。
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