JP3740408B2 - 車両用軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハブホイールに設けられる径方向外向きのフランジの車両アウタ側側面に対してディスクブレーキ装置のディスクロータが取り付けられる車両用軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は従来の車両用軸受装置の縦断面図、図6はブレーキ作動時におけるディスクロータとブレーキパッドの挙動の説明に用いる図である。図5において、1は車両用軸受装置の全体を示す。2は、ハブホイール、3は、転がり軸受、4は、ドライブシャフト、5は、ディスクロータ、7a,7bはブレーキパッド、8はボルト、9はナットである。
【0003】
ブレーキパッド7a、7bは、ディスクロータ5の両側面側領域に対して対向する姿勢でキャリパやナックルなどの車体側に取り付けられている。また、ハブホイール2の外周面に設けられた径方向外向きのフランジ13の円周数箇所に対して貫通孔14が設けられている。この貫通孔14には、ボルト8が嵌入固定されている。この場合ボルト8のセレーション8bが、貫通孔14の円形内周面に食い込まされている。
【0004】
ディスクロータ5は、フランジ13の車両アウタ側側面に密着するように宛がわれた状態でボルト8の貫通端部に螺装されたナット9の締め付けによりフランジ13に不動に固定される。
【0005】
そして、ブレーキ作動時には両ブレーキパッド7a、7bが回転中や回転開始時のディスクロータ5のディスク面に対して圧接させられてブレーキが作用する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の車両用軸受装置の場合、フランジ13の貫通孔14の円形内周面に対してハブボルト8のセレーション8bを食い込ませつつハブボルト8をその貫通孔14に嵌入するときにフランジ13におけるボルト貫通孔14の周縁領域に対してその嵌入方向に膨出させる向きの力が作用する。
【0007】
このような作用力は、円周数箇所のボルト貫通孔14それぞれの周縁領域それぞれ毎に多少異なる。そのため、フランジ13のディスクロータ装着面は微小ではあるがその平坦度が低下させられる。
【0008】
そうすると、フランジ13に対するディスクロータ5の密着性が低下し、ディスクロータ5が図6に誇張して示すように、ブレーキパッド7a、7bに対して傾いた姿勢になることがある。この場合、ブレーキ作動に伴ない両ブレーキパッド7a、7bが実線位置から仮想線位置に向けて移動すると、ブレーキパッド7a、7bがディスクロータ5に対して全面で当接せずに、いゆわる片当たり状態となるのでブレーキ鳴きを発生させたり、ブレーキ性能の低下をもたらす。
【0009】
このような課題を解決するため本願出願人は例えば特願2000−232874などでフランジ構造に改良を図ることによりディスクロータ5をブレーキパッド7a、7bに対して傾かせないようにした発明をいくつか既に出願している。
【0010】
本発明は、本願出願人の出願に係る発明とは異なり、仮にディスクロータ5がブレーキパッド7a、7bに対して傾いた姿勢になっていたとしても、ブレーキ作動に際してディスクロータ5のブレーキパッド当接面がブレーキパッド7a、7bの姿勢に倣わされるようにすることにより所期通りのブレーキ性能を発揮できるようにしたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハブホイールに設けられる径方向外向きのフランジの車両アウタ側側面に対してディスクブレーキ装置のディスクロータが取り付けられる車両用軸受装置であって、前記フランジの円周数箇所に、軸心方向に沿う貫通孔が設けられているとともに、この貫通孔に、前記ディスクロータに対するトルク伝達用のボルトが車両インナー側から車両アウタ側へ向けて貫通する状態で固定されており、前記フランジに対するディスクロータの取付部分に、前記ディスクロータに対するブレーキパッドの挟み荷重でもって、前記ディスクロータをブレーキパッドに倣わせて面当たりさせるよう姿勢変更を許容する姿勢変更許容手段が配設されており、前記姿勢変更許容手段が、前記フランジとディスクロータとの間に当該両者を離隔配置させる状態で介装され、かつ前記フランジの貫通孔の車両アウタ側に設けられる拡径部に対して軸心方向で圧縮されるとともに一部が突出する状態で嵌入される弾性リングからなる第1部材と、小径部および大径部を有する弾性円筒体からなり前記大径部が車両アウタ側に突出する状態で前記小径部が前記ディスクロータの貫通孔と前記ボルトとの隙間に対して嵌入される第2部材と、前記ボルトの突出端側に螺合されることにより前記両部材を軸心方向に圧縮させて、前記ディスクロータを前記フランジに対して離隔させた状態で結合するナットとを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明によると、フランジに対してディスクロータが剛的に固定されるのではなく、姿勢変更許容手段により姿勢変更可能に配置されることになる。これにより、仮にフランジに対するディスクロータの取り付け姿勢がブレーキパッドの姿勢に対して傾いていたとしても、ブレーキ作動時にブレーキパッドがディスクロータの両側から挟み付けられると、ブレーキパッドによる挟み荷重によりディスクロータがブレーキパッドと全面当たりする姿勢に倣わされることになる。これによって、いわゆるブレーキ鳴きやブレーキ性能の低下を防止することができる。
【0014】
この場合、姿勢変更許容手段の第1部材を、前記フランジとディスクロータとの間に当該両者を離隔配置させる状態で介装される弾性リングで構成しているから、フランジからディスクロータへの振動が、弾性リングで減衰され、車両用軸受装置全体における固有振動数をいわゆるブレーキ鳴きする周波数領域外に低減できる。さらに、ボルトやナットの加工精度を低くしてもブレーキ性能を所要状態に維持できるから、その加工コストの低減が可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。この実施形態の車両用軸受装置は、車両用に適用される。
【0017】
図1ないし図4に、本発明の実施形態を示している。図1は、実施形態の車両用軸受装置の縦断面図、図2は、図1に示されるハブボルトとそれに組み付けけられる部品を分解し拡大して示す斜視図、図3は、図1に示されるハブボルト周辺における要部の拡大図、図4は、ブレーキ作動時におけるディスクロータとブレーキパッドの挙動の説明に用いる図である。なお、図1で右側が車両インナー側、左側が車両アウタ側となる。
【0018】
まず、図1ないし図3を参照して、1は、車両用軸受装置、2は、ハブホイール、3は、複列転がり軸受、4は、ドライブシャフト、5は、ディスクロータ、6は、ナックル、7a、7bは、ブレーキパッド、8は、ハブボルト、9は、ナット、10は、車輪ホイールを示す。
【0019】
車両用軸受装置1は、ハブホイール2と、このハブホイール2に外嵌される複列転がり軸受3とを備える。ハブホイール2の中心孔2aに対してドライブシャフト4が周方向一体回転可能に挿入結合されている。
【0020】
複列転がり軸受3は、ハブホイール2の小径外周面に外嵌固定されて単一軌道を有した一方の内輪3aと、二列の軌道溝を有する単一の外輪3bと、二列で配設される複数の玉3c,3cと、二つの冠形保持器3d,3dとを備えて、ハブホイール2の大径外周面を他方内輪とする構成である。また、複列転がり軸受3の外輪3bの外周面に対して径方向外向きのフランジ12が設けられ、このフランジ12に対して車体の一部となるナックル6が取り付けられる。
【0021】
ハブホイール2の大径外周面の車両アウタ側端部にはディスクロータ5および車輪ホイール10を取り付けるための径方向外向きのフランジ13が設けられている。
【0022】
このフランジ13の円周数箇所には、軸心方向に沿うボルト貫通孔14が設けられている。また、ディスクロータ5の内径側における円周数箇所にも、前記ボルト貫通孔14に対応して軸心方向に沿うボルト挿通孔15が設けられている。さらに、車輪ホイール10における円周数箇所にも、前記両各孔14、15に対応して軸心方向に沿うボルト挿通孔16が設けられている。
【0023】
上記構成において本実施の形態は、フランジ13の円周数箇所に設けられたボルト貫通孔14に、ディスクロータ5に対するトルク伝達用のボルト8が車両インナー側から車両アウタ側へ向けて貫通する状態で固定され、フランジ13に対するディスクロータ5の取付部分に、ディスクロータ5に対するブレーキパッドの挟み荷重でもって、ディスクロータ5をブレーキパッド7a、7bに倣わせて面当たりさせるよう姿勢変更を許容する姿勢変更許容手段として弾性リング17が配設されていることを特徴とする
その特徴について以下において詳しく説明する。
【0024】
すなわち、フランジ13のボルト貫通孔14は、車両アウタ側側面13aの開口において拡径されて拡径部13bが形成されている。この拡径部13bにおけるフランジ13部分はディスクロータ取付部分となり、この拡径部13bに対して軸心方向で圧縮された状態でその一部が車両アウタ側方向に突出した状態でゴムや樹脂などからなる弾性リング17が嵌め込まれている。この弾性リング17は、姿勢変更許容手段を構成する第1部材としてボルト8の外径に対応したボルト貫通孔17aを有する。
【0025】
そして、ディスクロータ5は、その内径側における車両インナー側側面5aがフランジ13の車両アウタ側側面13aに対して前記弾性リング17を介して弾性リング17の突出厚み分だけ離されていることで前記フランジ13のディスクロータ取り付け部分に対して浮動状態で配置される。
【0026】
弾性リング17は、ハブボルト8の車両アウタ側突出部分8aに螺装されたナット9の締め付けにより、ディスクロータ5の車両インナー側側面5aとフランジ13のディスクロータ取り付け部分との間で所要の弾性圧縮状態にされている。この場合、ナット9は、姿勢変更許容手段の一部を構成する部材となる。
【0027】
また、ナット9の内端面9aとディスクロータ5の内径側における車両アウタ側側面5bとの間のハブボルト部分に対して円筒形フロートカラー18が挿入されている。
【0028】
この円筒形フロートカラー18には、姿勢変更許容手段を構成する第2部材としての弾性円筒体19が取り付けられている。この弾性円筒体19は、車両アウタ側大径部19aと車両インナー側小径部19bとからなる。
【0029】
弾性円筒体19の車両アウタ側大径部19aは、ナット9の締め付け前の自然状態においてその一端側がフロートカラー18に挿入嵌合されて取り付けられた状態でその他端側が該フロートカラー18から車両インナー側方向に車輪ホイール10の肉厚より長い状態で突出されている。なお、この車両アウタ側大径部19aの前記突出状態は、図示されていない。
【0030】
また、弾性円筒体19の車両インナー側小径部19bは、ナット9の締め付け前の自然状態においてディスクロータ5のボルト挿通孔15の孔長さより軸方向に長くされている。なお、この車両インナー側小径部19bの自然状態は、図示されていない。
【0031】
したがって、ナット9の内端面9aとディスクロータの内径側における車両アウタ側側面5bとの間にフロートカラー18が挿入されている状態でナット9が締め付けられると、車輪ホイール10は、フロートカラー18とディスクロータ5の車両アウタ側側面5bとの間で保持されるとともに、弾性円筒体19の車両アウタ側大径部19aは、圧縮状態とされる。
【0032】
そして、弾性円筒体19の車両インナー側小径部19bは、ディスクロータ5のボルト挿通孔15に嵌入されるとともに、前記弾性リング17に圧接状態で圧縮されることになる。
【0033】
以上の構成を有する本実施の形態の場合、ナット9が締め付けられた状態でもって弾性リング17は、フランジ13の車両アウタ側側面13aとディスクロータ5の車両インナー側側面5aとの間においてディスクロータ5のブレーキパッド当接面に加えられる所要の外力に応じて弾性変形し得る状態に圧縮されている。
【0034】
次に、フランジ13の車両アウタ側側面13aに対するディスクロータ5の取り付け状態により、ディスクロータ5のブレーキパッド当接面が例えば図4の実線で示すようにブレーキパッド7a、7bに対して例えば左側に傾いている姿勢にあるとする。そして、ブレーキ作動において両ブレーキパッド7a、7bが図中矢印Pa、Pbで示す方向に移動させらると、ディスクロータ5は両ブレーキパッド7a、7bから挟み込まれて両ブレーキパッド7a、7bから挟み荷重を受ける。このとき、ディスクロータ5は、弾性リング17によりその姿勢変更が許容されるから、一点鎖線および二点鎖線で示すように順次にその方向に向けて姿勢を変更され、ディスクロータ5のブレーキパッド7a、7bに倣わされ、それらに面当たりする状態にその姿勢が矯正される。その結果、両ブレーキパッド7a、7bは、ディスクロータ5に対して共に等しい圧接力で当たることができ、所要のブレーキ性能が発揮できるようになる。
【0035】
したがって、本実施の形態によれば、ボルト8のセレーション8bが、ボルト貫通孔14の円形内周面に食い込まされるなどして、従来技術において述べた理由で、ディスクロータ5がブレーキパッド7a、7bに対して傾いた姿勢になっていたとしても、ブレーキ作動に際してディスクロータ5のブレーキパッド当接面がブレーキパッド7a、7bの姿勢に倣わされるようになり、所期通りのブレーキ性能を発揮できる。
【0036】
なお、本発明の車両用軸受装置は、上述した車両用に限定されるものではなく、他の機械や装置類において、ハブホイールに設けられる径方向外向きのフランジの車両アウタ側側面に対してディスクブレーキ装置のディスクロータが取り付けられる車両用軸受装置全般に適用することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ハブホイールに設けられる径方向外向きのフランジに対するディスクロータの取り付け部分に、ブレーキパッドによる挟み荷重でもってディスクロータをブレーキパッドに倣わせて面当たりさせる姿勢変更許容手段が配設されているから、ディスクロータは、ブレーキパッドに対して傾いた姿勢になっていたとしても、ブレーキパッドに倣わされて面当たりさせられ、所期通りのブレーキ性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用軸受装置の縦断面図
【図2】図1の要部を構成する各部品の分解斜視図
【図3】図1の要部の拡大図
【図4】図1において、ディスクロータとブレーキパッドとの挙動の説明に用いる図
【図5】従来の車両用軸受装置の縦断面図
【図6】図5において、ディスクロータとブレーキパッドとの挙動の説明に用いる図
【符号の説明】
1 車両用軸受装置
2 ハブホイール
3 複列転がり軸受
4 ドライブシャフト
5 ディスクロータ
7a,7b ブレーキパッド
8 ボルト
8b セレーション
9 ナット
10 車輪ホイール
14 ボルト貫通孔
15 ボルト挿通孔
17 弾性リング
18 フロートカラー
19 弾性円筒体

Claims (1)

  1. ハブホイールに設けられる径方向外向きのフランジの車両アウタ側側面に対してディスクブレーキ装置のディスクロータが取り付けられる車両用軸受装置であって、
    前記フランジの円周数箇所に、軸心方向に沿う貫通孔が設けられているとともに、この貫通孔に、前記ディスクロータに対するトルク伝達用のボルトが車両インナー側から車両アウタ側へ向けて貫通する状態で固定されており、
    前記フランジに対するディスクロータの取付部分に、前記ディスクロータに対するブレーキパッドの挟み荷重でもって、前記ディスクロータをブレーキパッドに倣わせて面当たりさせるよう姿勢変更を許容する姿勢変更許容手段が配設されており、
    前記姿勢変更許容手段が、前記フランジとディスクロータとの間に当該両者を離隔配置させる状態で介装され、かつ前記フランジの貫通孔の車両アウタ側に設けられる拡径部に対して軸心方向で圧縮されるとともに一部が突出する状態で嵌入される弾性リングからなる第1部材と、小径部および大径部を有する弾性円筒体からなり前記大径部が車両アウタ側に突出する状態で前記小径部が前記ディスクロータの貫通孔と前記ボルトとの隙間に対して嵌入される第2部材と、前記ボルトの突出端側に螺合されることにより前記両部材を軸心方向に圧縮させて、前記ディスクロータを前記フランジに対して離隔させた状態で結合するナットとを含む、ことを特徴とする車両用軸受装置。
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