JP3739823B2 - 気泡モルタル空洞充填材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、各種埋め戻し工事材料に広範に使用される気泡モルタル空洞充填材料に関し、特にトンネル、橋台、擁壁、下水道管等の裏込め注入材料に好適な気泡モルタル空洞充填材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シールド工法による各種トンネル工事では、掘削された地山とランニングの外径との隙間を埋める為、裏込め材料を注入するのが通常である。この裏込め材料として、従来より豆砂利、砂、コンクリート、セメントモルタル、セメントエアーモルタル、或いはセメントミルク等が使用されてきた。しかし、これらの材料のうち、豆砂利や砂は、純然たる空隙充填材料であり、この材料のみでは十分な強度は得られない。
そこで、セメントモルタルやセメントミルク等のセメント系スラリー材料が、裏込め材料として一般的に使用されている。しかし、一部のトンネル工事、或いは橋台、擁壁、下水道管等の裏込め・埋め戻し材料では、通常のトンネル工事用に比べて空隙充填材料に対する要求強度が低いこともある。その為、このような場合には、セメントにフライアッシュや粘土等を混ぜて、材料費の低減を図った裏込め材料が多く使用されている。特に、フライアッシュは火力発電所から廃棄物として大量に排出されており、その処理問題を解決する観点からも好ましい材料である。
【0003】
また最近では、気泡モルタル、即ち気泡剤を混入することによって多量の空気量を含有しているモルタルの使用が盛んになってきている。
これは、気泡モルタルが、普通のモルタルに比べ、1)大幅に材料費を安くできる事は勿論であるが、さらに、2)流動性が大きく低圧注入が可能である事、3)充填性が高く施工能力が大きい事、4)再度掘削する場合でも、強度が小さいので、通常の土砂掘削と同様の作業ができる事等の優れた特性を有することに起因する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一方において気泡モルタルは、一般のモルタルに比べて断熱温度上昇値が著しく高いために、例えば、耐熱温度の低いFRP管等の埋設の埋め戻しに適用した場合には、充填時にFRP管等が熱劣化を起こす事があった。
そこで、気泡モルタルにフライアッシュ等を混入して断熱温度上昇値を抑える方法も検討されている。しかし、このフライアッシュは、気泡モルタルとして混合して使用するには特殊な気泡剤を使用しない限り、気泡剤の発泡性が低下してモルタル配合材料間に材料分離が起こるため、良好な裏込め・埋め戻し材料とならない場合が多かった。
更に、この欠点を解決するために各種増粘剤を併用することも検討されているが、この方法では、気泡モルタル本来の流動性が損なわれるばかりか、材料費もセメント単体を使用する場合と比較して高くなってしまう。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、即ち、前記した従来の各種埋め戻し工事材料や裏込め・埋め戻し材料の欠点を解消し、フライアッシュを使用しているにも係わらず、特殊な発泡剤でなくとも発泡性が低下せず、また増粘剤を使用しなくても材料分離が起きず、良好な特性を示す気泡モルタル空洞充填材料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、フライアッシュとセメントとを混合してなる混合硬化材に水を加えてスラリー液を作成するとともに、このスラリー液とは別に水で所定濃度に希釈した発泡剤液を作成し、適用に際して前記スラリー液と前記発泡剤液とを混練するいわゆる事前発泡方式を採り、しかも前記スラリー液の構成成分であるセメント、フライアッシュおよび補助硬化材についてその種類、組成および粒径を変えて実験を積み重ねたところ、フライアッシュとセメントとの混合割合、フライアッシュあるいは混合硬化材の粒径、水量との間に好適な相関があることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
上記目的は、本発明に係る気泡モルタル空洞充填材料、即ち、
(1)平均粒径10μm以下の分級フライアッシュとセメントとを、重量混合比で8:2〜2:8の割合で混合した平均粒径15μm以下の混合硬化材に水を添加して「水/混合硬化材量」比50%〜70%としたスラリーと、所定量の発泡剤とからなることを特徴とする気泡モルタル空洞充填材料、
(2)平均粒径10μm以下の分級フライアッシュと原粉のフライアッシュとを、重量混合比で2:8〜8:2の割合で混合したフライアッシュと、セメントとを、重量混合比で6:4〜2:8の割合で混合した平均粒径15μm以下の混合硬化材に水を添加して「水/混合硬化材量」比50%〜70%としたスラリーと、所定量の発泡剤とからなることを特徴とする気泡モルタル空洞充填材料により達成される。
【0008】
【作 用】
本発明に係る気泡モルタル空洞充填材料は、硬化材としてセメントとフライアッシュとの混合硬化材としたことを特徴とする。これは、セメントにはその早期強度発現性によって材料分離のない均一な充填材とする作用があるためであり、一方フライアッシュには、その形状が微細な球状粒子であり、そのベアリング効果によってモルタル空洞充填材料全体としての流動性が向上して適用部位への注入が容易となるばかりでなく、緩慢なポゾラン活性を有するために長期強度発現性に優れる等の作用があることによる。更に、断熱温度上昇値を低減する目的のためにも、フライアッシュが適量、配合される。
【0009】
また、気泡モルタルは、一般に気泡剤により微小泡を発生させ、硬化材等の材料粒子を泡で包み込む事によって材料粒子の分離を防止している。しかし、この泡は材料粒子が大きくなる程包み込み難くなり、消泡作用も速まる。
従って、気泡剤を用いて材料粒子の分離を防止する場合、材料粒子形状が小さくなればなる程好ましく、特に本発明の気泡モルタル空洞充填材料では、混合硬化材のセメントとフライアッシュとの混合割合において、フライアッシュの粒径を10μm以下とすることにより、フライアッシュ原粉の好適な使用、更にはフライアッシュの配合割合を高めることが可能となり、コストをより低減することができる。また、混合硬化材の平均粒径を15μm以下とすることにより、フライアッシュに代えて他の補助硬化材を使用することもでき、製品並びに適用部位の多様化を図ることもできる。
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明において原粉のフライアッシュとは、火力発電所等から排出された状態のフライアッシュを意味し、また分級フライアッシュとは篩分により所定の粒径群(本発明においては10μm以下)に粒度調整されたフライアッシュを意味する。
本発明において、混合硬化材として原粉のフライアッシュを使用する場合には、フライアッシュとセメントとを重量混合比で4:6〜2:8の割合で混合し、平均粒径10μm以下の分級フライアッシュを使用する場合には、フライアッシュとセメントとを重量混合比で8:2〜2:8の割合で混合する。また、混合硬化材として分級フライアッシュと原粉フライアッシュとを混合して使用する場合には、分級フライアッシュと原粉フライアッシュとを重量混合比で2:8〜8:2の割合で混合した混合フライアッシュと、セメントとを、重量混合比で6:4〜2:8の割合で混合する。
セメントと原粉フライアッシュ若しくは分級フライアッシュとをこのような割合で混合して得られる空洞充填材料は、材料分離が起きず、良好な気泡モルタル特性を示す。
【0011】
原粉のフライアッシュは、分級作業が不要であるため安価ではあるが、フライアッシュとセメントとを重量混合比4:6よりフライアッシュ量を多く配合すると、気泡モルタル中の泡が消泡し、泡、水、硬化材の3層に分離し易い傾向にある。
一方、分級フライアッシュを単独で使用する場合には、フライアッシュとセメントとの重量混合比を8:2まで高めることが可能となり、セメント使用量を低減してより低コストとすることができる。また、分級フライアッシュと原粉フライアッシュとを混合して使用する場合にも、原粉フライアッシュ単独使用の場合に比べてフライアッシュの重量混合比を高めることができる。
【0012】
但し、上記のいずれの条件でも、フライアッシュとセメントの混合比は、重量混合比で8:2〜2:8の範囲の中にある。これは、フライアッシュとセメントとをその重量混合比で8:2よりフライアッシュ量を増加させると、強度発現性が少なくなるためであり、また重量混合比で2:8よりセメント量を増加させると、断熱温度上昇値が高く、しかも流動性にも劣るようになり、それぞれ好ましくないからである。
【0013】
更に、混合硬化材の平均粒径が15μm以下である場合には、混合硬化材をセメントとフライアッシュとの混合物に限定されることなく、フライアッシュに代えて他の物質を補助硬化材として使用できることを見い出した。
この補助硬化材としては、高炉スラグ、シリカヒュームおよびペーパースラッジ等を挙げることができ、これらを単独であるいは適宜組み合わせて使用することができる。前記補助硬化材として挙げられた物質は何れも製品に伴い発生する廃棄成分であり、安価であるとともに、環境面からも好ましい。
また、補助硬化材は、補助硬化材を用いて製造した気泡モルタル空洞充填材を硬化して得られた試験体の7日後の一軸圧縮強度が、3kgf/cm2 以上の強度を有することが望ましく、この値を満足するようにセメントとの混合比を調整して使用される。更に、前記フライアッシュと混合してセメントとの3成分系の混合硬化材とすることも可能である。
【0014】
一方、本発明に係る気泡モルタル空洞充填材料として混合される水の量は、前記混合硬化材の種類に関わらず共通であり、即ち、混合硬化材に水を添加してスラリーとした時、このスラリー中の水の割合が「水/混合硬化材量」比で50%〜70%の範囲内であるように混合される。
これは、前記の比が50%より低い場合には、流動性が著しく悪化して均一な充填がされ難いためである。また、前記の比が70%より多い場合には、硬化時に気泡モルタルと水との2層に分離するため、それぞれ好ましくないからである。
【0015】
本発明に使用される発泡剤は特に限定されず、界面活性剤系やタンパク質系等の各種発泡剤が使用できる。また、発泡剤の使用量も、各発泡剤の種類によって発泡挙動が大きく異なるために特に限定されない。従って、発泡剤は各発泡剤の発泡挙動を把握したうえで要求空気量に応じて使用量を決定する事が望ましい。
尚、発泡剤を水溶液として添加した場合、気泡モルタル空洞充填材料における水の混合割合を前記の値よりも多くすることになるが、発泡剤の使用量は僅かであり、気泡モルタルの安定性に及ぼす影響は少ない。
また、発泡剤または発泡剤液は、適用に際して前記混合硬化材を含むスラリーと混練する所謂事前発泡方式をもって使用される。
【0016】
上記で説明した、本発明に係る気泡モルタル空洞充填材料は、トンネル等の裏込め注入材料に限らず、広く各種埋め戻し工事材料に使用できる。
【0017】
【実施例】
以下の実施例に基づき、本発明をより明確にすることができる。但し、以下に示す実施例は本発明の構成や効果をより具体的に示すためのものであり、本発明を制限するものでないことはいうまでもない。
本実験例で使用した材料の一覧表を第1表に、また各種使用材料の粒径としてレーザー回折式粒径測定値を第2表に示す。尚、原粉フライアッシュとして、JISフライアッシュを使用した。
【0018】
実験に使用した気泡モルタル空洞充填材料は、前記各材料を第3表に示す割合で調整したスラリーと、水道水で50倍希釈した一般の発泡剤(界面活性剤系)である(株)小野田社製OFA−2(商品名)を発泡装置によって発泡させ、比重0.04の泡としたものとを、比重が0.8となるように配合し、10分間ミキサーで混練して作成したものである。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
そして、各種気泡モルタル空洞充填材料を使用して直径5cm、高さ10cmの供試体を成形し、20℃の部屋で湿空養生、7日材令後に、土質工学会 JSF T511に準じて一軸圧縮強度を測定した。また同時に、道路公団法によるフロー値や断熱温度上昇値も測定した。更に、試供体の外観を観察し、それぞれ図1〜図5に示す外観に分類した。この外観試験においては、外観(1)が最も好ましい状態である。
これらの測定結果を第3表に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
実験番号1〜3の結果によれば、水/混合硬化材比が60%である実験番号2の条件で良好な結果が得られている。しかし、水/混合硬化材比が40%である実験番号1の条件では、粘性が高いために、また水/混合硬化材比が80%である実験番号3の条件では、水と泡モルタルとの2層に分離しており、それぞれ好ましくないことがわかる。
実験番号4〜7の結果によれば、普通セメントと分級フライアッシュとの重量混合比が3:7〜7:3である実験番号5、6の条件では、良好な結果が得られている。しかし、普通セメントと分級フライアッシュとの重量混合比が1:9である実験番号4の条件では、供試体上部に体積の減少が見られ(外観(3))、また硬化材として普通セメントのみである実験番号7の条件では、断熱温度上昇値が高すぎ、それぞれ好ましくない。
【0024】
実験番号8〜10の結果によれば、フライアッシュとして原粉(ここではJIS品)を使用する場合、普通セメントと原粉フライアッシュとの重量混合比が7:3である実験番号10の条件で、良好な結果が得られている。しかし、普通セメントと原粉フライアッシュとの重量混合比が5:5や3:7である実験番号8、9の条件では、供試体にむらが生じたり、泡、水、硬化材の3層に分離したりして(外観(4)、(5))、好ましくないのがわかる。
【0025】
そこで、実験番号11〜13では、フライアッシュとして分級品と原粉とを混合して使用した結果を示しているが、これら分級品と原粉との重量混合比が3:7〜7:3の範囲にあり、しかも混合硬化材におけるセメントとフライアッシュとの混合重量比が5:5であり、本発明で規定した範囲内にあることから、何れも良好な結果が得られていることがわかる。
【0026】
また、実験番号14では、セメントとして平均粒径の小さい早強セメントを用い、更に分級フライアッシュを用いることで、良好な結果が得られた。
更に、実験番号15、16では、フライアッシュに代えて高炉スラグまたはシリカフュームを使用した場合の例を示しているが、高炉スラグおよびシリカフュームをセメントと混合してなる混合硬化材の平均粒径(50%粒径)が15μm以下であり、本発明で規定した範囲内であることから、何れも良好な結果が得られている。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の気泡モルタル空洞充填材料は、硬化材としてセメントにフライアッシュを混合して使用しているにも係わらず、発泡剤に特別のものを使用せず一般の発泡剤を用いて発泡させても発泡性は低下しない。また、増粘剤を使用しなくても、材料分離が起きず、良好な気泡モルタルが得られる。また、本発明の気泡モルタル空洞充填材料は、混合硬化材のセメントとフライアッシュとの混合割合において、フライアッシュの粒径を10μm以下とすることにより、安価なフライアッシュの配合割合を高めることが可能となり、コストをより低減することができる。更に、混合硬化材の平均粒径を15μm以下とすることにより、フライアッシュに代えて他の補助硬化材を使用することもでき、製品並びに適用部位の多様化を図ることもできる。
しかも、本発明の気泡モルタル空洞充填材料は、流動性が大きく低圧注入が可能で、充填性が高く施工能力が大きく、また再度掘削する場合、通常の土砂掘削と同様の作業ができる等の優れた特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】均一に成形された気泡モルタル供試体の外観を示す図である。
【図2】2層に分離した気泡モルタル供試体の外観を示す図である。
【図3】上部に沈降部分がある気泡モルタル供試体の外観を示す図である。
【図4】所々に消泡部分がある気泡モルタル供試体の外観を示す図である。
【図5】3層に分離した気泡モルタル供試体の外観を示す図である。
Claims (2)
- 平均粒径10μm以下の分級フライアッシュとセメントとを、重量混合比で8:2〜2:8の割合で混合した平均粒径15μm以下の混合硬化材に水を添加して「水/混合硬化材量」比50%〜70%としたスラリーと、所定量の発泡剤とからなることを特徴とする気泡モルタル空洞充填材料。
- 平均粒径10μm以下の分級フライアッシュと原粉のフライアッシュとを、重量混合比で2:8〜8:2の割合で混合したフライアッシュと、セメントとを、重量混合比で6:4〜2:8の割合で混合した平均粒径15μm以下の混合硬化材に水を添加して「水/混合硬化材量」比50%〜70%としたスラリーと、所定量の発泡剤とからなることを特徴とする気泡モルタル空洞充填材料。
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