JP3739169B2 - 有機塩素化合物の分解装置 - Google Patents
有機塩素化合物の分解装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3739169B2 JP3739169B2 JP13504297A JP13504297A JP3739169B2 JP 3739169 B2 JP3739169 B2 JP 3739169B2 JP 13504297 A JP13504297 A JP 13504297A JP 13504297 A JP13504297 A JP 13504297A JP 3739169 B2 JP3739169 B2 JP 3739169B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- organic chlorine
- gas
- water
- decomposing
- chlorine compound
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Treating Waste Gases (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はガス中の有機塩素化合物を紫外線照射により分解して除去する装置に係り、詳しくは紫外線照射により生成した酸性成分を吸収除去するようにした有機塩素化合物の分解装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等の有機塩素化合物は比較的揮発しやすく、ガスとして大気中に容易に拡散する。このため、有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水等から有機塩素化合物を除去する場合、土壌からの真空抽出、或いは地下水のエアーストリッピングで有機塩素化合物を取り出し、これを活性炭等の吸着剤で回収して廃棄物として処理する方法が行われている。また、この有機塩素化合物を分解して無害化する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、有機ハロゲン化合物を含む排ガスを紫外線照射処理して酸性の分解ガスとした後、アルカリで洗浄して無害化処理する方法(特開昭62−191025号公報)、有機ハロゲン化合物を含有する排水を曝気処理し、排出されるガスを紫外線照射した後、アルカリ洗浄する装置(特開昭62−191095号公報)、ハロゲン化非環式炭化水素化合物とオゾンとを混合して紫外線を照射し、ハロゲン化非環式炭化水素化合物を分解する装置(特開平1−236925号公報)、有機ハロゲン化合物を含有する排水を紫外線照射しつつ曝気処理し、更に排出されるガスを紫外線照射した後、アルカリ洗浄する装置(特開平2−75391号公報)、揮発性有機化合物を曝気により抽出し、酸素存在下に紫外線を照射して酸化し、酸化生成物を含有するガスを水と接触させた後、好気性生物により分解する方法(特開平7−116467号公報)等が提案されている。
【0004】
これらの方法は、いずれも、紫外線照射による有機塩素化合物の酸化分解と、分解生成物のアルカリによる吸収との2工程を備える。
【0005】
即ち、有機塩素化合物を含有するガスに紫外線を照射し、光化学的に酸化分解すると、二酸化炭素、塩化水素、酸クロライド、ホスゲン、塩素等の酸性成分に変化する。これらの酸性成分には有害なものが多く含まれるので、酸性成分を環境中に放出しないように、アルカリ剤により吸収処理する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
有機塩素化合物の紫外線照射による光分解で生成した酸性成分をアルカリで吸収する従来の方法では、アルカリ剤として苛性ソーダ(NaOH)や苛性カリ(KOH)或いはアミン類を使用しているが、これらのアルカリ剤は取り扱いにかなりの注意を要する。また、これらのアルカリ剤は紫外線照射で生成する二酸化炭素によっても消費されるので、より安価なアルカリ剤を使用した有機塩素化合物の分解装置が望まれている。
【0007】
なお、土壌や地下水から有機塩素化合物を除去する作業は通常の場合、現場で行われるところから、分解装置の運転管理が容易であることが望まれる。
【0008】
本発明は上記従来技術に鑑みてなされたものであり、有機塩素化合物に紫外線を照射して酸化分解したときに生成する排ガス中の酸クロライド及び/又はホスゲンを取り扱いが容易で且つ安価なアルカリ剤により効率的に吸収除去することができ、しかも維持管理が容易な有機塩素化合物の分解装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機塩素化合物の分解装置は、有機塩素化合物を含有するガスに紫外線を照射して該有機塩素化合物を分解する紫外線照射による分解手段と、該紫外線照射による分解手段で紫外線照射されたガスが導入され、紫外線照射により生成した酸クロライド及び/又はホスゲンを吸収除去する吸収装置とを備える有機塩素化合物の分解装置において、該吸収装置は炭酸カルシウムを主成分とする固体充填材と、pH5以上の水を該固体充填材に間欠的に散水し、常に該固体充填材表面を湿潤状態に保つ散水手段とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
かかる本発明装置においては、有機塩素化合物の光分解で生成した酸クロライド及び/又はホスゲンを吸収する吸収装置は、炭酸カルシウムを主成分とする固体充填材と、この固体充填材に対しpH5以上の水を間欠的に散水し、常に該固体充填材表面を湿潤状態に保つ散水手段とを有したものである。この固体充填材は取り扱いがきわめて容易である。なお、この固体充填材に対しpH5以上の水を散水することにより、紫外線照射後のガス中の酸性成分(酸クロライド、ホスゲン)が加水分解反応あるいは中和反応し、ガス中から効率良く除去される。なお、この散水により、加水分解又は中和反応生成物が固体充填材の表面から溶解除去されるようになり、固体充填材と酸性成分との接触効率(反応効率)が高いものとなる。
【0011】
この散水のpHが5以上であるため、炭酸カルシウム系充填材の溶解が少ない。なお、この散水のpHは5〜9であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、散水手段による散水は間欠的に行う。また、散水排水を回収し、循環手段により再度散水に使用しても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1(a)、(b)は本発明の有機塩素化合物の分解装置の実施の形態を示す系統図であり、図中、1は紫外線反応塔、2は吸収塔、3は循環水タンクである。
【0015】
被処理ガスである有機塩素化合物を含有するガスは、まず、紫外線反応塔1に導入され、紫外線が照射される。紫外線が照射された有機塩素化合物は励起して脱塩素反応を起こし、自らは空気中の酸素分子と反応して含酸素(含塩素)中間体を生成する。放出された塩素原子は2原子が会合すると塩素分子になるが、一部は元の有機塩素化合物と反応して炭素中心ラジカルを生成する。このようなラジカル反応の結果、光分解生成物として最終的に二酸化炭素、塩化水素、酸クロライド、ホスゲン、塩素等を生成する。反応は連鎖的に進行するので、この反応の量子収率は一般的に高く、効率良く元の有機塩素化合物の濃度を低下させることができる。
【0016】
本発明において、紫外線の照射に用いることができる光源としては、例えば低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。これらの中で、紫外線照射効率の高い低圧水銀ランプを特に好適に使用することができる。光源を保護するために保護筒を設ける場合は、石英ガラス、透明フッ素樹脂製のものがよく、パイレックスガラスは300nm以下の波長をカットするので適当ではない。
【0017】
この紫外線反応塔1のガス流量は、紫外線出力や原ガス中の有機塩素化合物濃度から、有機塩素化合物を十分に分解し得る滞留時間が確保されるように適宜決定される。
【0018】
紫外線反応塔1の流出ガスは次いで、炭酸カルシウムを主成分とする固体充填材(以下「炭酸カルシウム系充填材」と称す。)が充填され、この炭酸カルシウム系充填材の上部からpH5以上、好ましくは5〜9の水が間欠的に散水される吸収塔2に導入される。
【0019】
吸収塔2において、紫外線照射後のガス中の紫外線分解生成物が加水分解反応及び中和反応によりガス中から除去される。
【0020】
なお、炭酸カルシウムと紫外線照射により生成した各種酸性物質との反応は次の通りである。
塩化水素の場合:
2HCl+CaCO3→CaCl2+H2O+CO2
酸クロライド(ジクロロアセチルクロライドを例示)の場合:
2CHCl2COCl+2CaCO3→Ca(CHCl2COO)2+CaCl2+2CO2
ホスゲンの場合:
COCl2+CaCO3→CaCl2+2CO2
塩素の場合:
2Cl2+2CaCO3→CaCl2+Ca(ClO)2+2CO2
【0021】
上記反応式に見られるように、塩化水素の場合は2モルの塩化水素から1モルの水が生成する。しかし、他の物質の場合、水の生成はないので炭酸カルシウム表面に生成物が蓄積し、反応効率は時間と共に急速に低下する。そこで、本発明ではpH5〜9の水を供給して常に炭酸カルシウム系充填材表面を湿潤状態に保つ。これにより、生成した物質はいずれも大きな溶解度を持つ水易溶性のものであるため、これらを簡単に炭酸カルシウム系充填材表面から水に溶解させて除去することができる。
【0022】
本発明では、この散水する水のpHを5以上とする。このpHが5未満の場合、紫外線分解生成物の除去性能が低下するばかりでなく、充填材の炭酸カルシウムの溶解による消費量が多くなるので好ましくない。
【0023】
なお、供給する水のpHが9を超える場合、紫外線分解生成物の除去性能上はむしろ好ましいが、このようなpHに調整するには、通常、水へのアルカリ剤の添加が必要となるところから、通常の場合、散水のpHは9以下とするのが好ましい。
【0024】
吸収塔2に充填する炭酸カルシウム系充填材としては、石灰石、方解石、大理石、サンゴ等が好適に使用される。この充填材の粒径は、反応効率及び取り扱い性等の面から1〜50mm程度であることが好ましい。
【0025】
また、吸収塔2の散水量は、流入ガス中の紫外線分解生成物濃度やガス流量等によっても異なるが、通常の場合、炭酸カルシウム系充填材1kgに対して0.01〜10L/Hr程度とするのが好ましい。
【0026】
なお、散水は間欠的に行う。これにより排水量の低減を図ることができる。この場合、0.1〜10分の散水毎に1〜30分散水を停止する間欠運転とするのが好ましい。
【0027】
また、吸収塔2の排水は、図1(a)に示す如く、一過式で系外へ排出しても良いが、図1(b)に示す如く、適当なタンク3に受けて循環使用しても良い。この場合、適宜、新たな水を補給し、タンク3のオーバーフロー水を排水として系外へ排出する。このように、排水を循環使用することにより、排水量の低減を図ることができる。
【0028】
吸収塔2からの排水は、通常の場合、物理化学的な酸化分解や蒸発による濃縮、微生物処理等により処理される。
【0029】
また、吸収塔2の処理ガスは系外へ排出される。
【0030】
本発明の有機塩素化合物の分解装置は、各種の有機塩素化合物を処理することができるが、特に、脂肪族塩素化合物の分解に適しており、とりわけトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを効率良く処理することができる。対象とする有機塩素化合物を含有するガスとしては、塗装工場の排ガス、ドライクリーニング工場の排ガス、汚染された土壌からの真空抽出ガス、地下水のエアーストリッピングガス等が例示される。なお、地下水や土壌の有機塩素化合物汚染は主にトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンによる場合が多い。汚染が土壌の場合は主に真空抽出法によって有機塩素化合物が取り出される。地下水の場合はいったん揚水し曝気法によって空気と混合した状態で有機塩素化合物が取り出される。この取り出されたガス中の有機塩素化合物濃度は、真空抽出法の場合、数千〜1万ppmに達する場合もある。本発明の有機塩素化合物の分解装置は、このような土壌又は地下水から有機塩素化合物を抽出したガスの処理に好適である。
【0031】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0032】
実施例1、参考例2〜4、比較例1
内部に直径2cmの石英管を備え、ガスの入口及び出口を上下に設けたパイレックスガラス製内部照射型円筒状反応塔(直径10cm、高さ20cm)を作製し、石英管内には東芝社製殺菌ランプGL 6(6W)を挿入した。この反応塔と直径6cm、高さ30cmの吸収塔を直列に接続した。この吸収塔には平均直径約5mmに篩い分けした大理石を充填した。また、吸収塔には上部から水を供給できるようにした。
【0033】
次に、被処理ガスとしてトリクロロエチレン約500ppmを含む空気を反応塔下部から1L/minの流量で供給し、殺菌ランプを点燈させ、紫外線照射後のガスを吸収塔に導いた。吸収塔で散水する水のpH及び散水量を表1に示す通りとし、紫外線分解生成物であるジクロロアセチルクロライド(DCAC)及びホスゲンの濃度を吸収塔の前後で測定し、結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1より、本発明装置によれば有機塩素化合物の紫外線照射分解により生成した酸性成分を効率的に除去できることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の有機塩素化合物の分解装置では、有機塩素化合物を含有するガスを紫外線照射により分解し、この分解ガス中の酸クロライド及び/又はホスゲンを効率的に吸収除去できる。なお、散水を間欠に行い、更に散水排水を循環使用することにより、排水量を低減することができる。
【0037】
本発明の有機塩素化合物の分解装置は、有機塩素化合物により汚染された地下水や土壌を浄化する場合に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機塩素化合物の分解装置の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 紫外線反応塔
2 吸収塔
3 循環水タンク
【発明の属する技術分野】
本発明はガス中の有機塩素化合物を紫外線照射により分解して除去する装置に係り、詳しくは紫外線照射により生成した酸性成分を吸収除去するようにした有機塩素化合物の分解装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トリクロロエチレンやテトラクロロエチレン等の有機塩素化合物は比較的揮発しやすく、ガスとして大気中に容易に拡散する。このため、有機塩素化合物で汚染された土壌、地下水等から有機塩素化合物を除去する場合、土壌からの真空抽出、或いは地下水のエアーストリッピングで有機塩素化合物を取り出し、これを活性炭等の吸着剤で回収して廃棄物として処理する方法が行われている。また、この有機塩素化合物を分解して無害化する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、有機ハロゲン化合物を含む排ガスを紫外線照射処理して酸性の分解ガスとした後、アルカリで洗浄して無害化処理する方法(特開昭62−191025号公報)、有機ハロゲン化合物を含有する排水を曝気処理し、排出されるガスを紫外線照射した後、アルカリ洗浄する装置(特開昭62−191095号公報)、ハロゲン化非環式炭化水素化合物とオゾンとを混合して紫外線を照射し、ハロゲン化非環式炭化水素化合物を分解する装置(特開平1−236925号公報)、有機ハロゲン化合物を含有する排水を紫外線照射しつつ曝気処理し、更に排出されるガスを紫外線照射した後、アルカリ洗浄する装置(特開平2−75391号公報)、揮発性有機化合物を曝気により抽出し、酸素存在下に紫外線を照射して酸化し、酸化生成物を含有するガスを水と接触させた後、好気性生物により分解する方法(特開平7−116467号公報)等が提案されている。
【0004】
これらの方法は、いずれも、紫外線照射による有機塩素化合物の酸化分解と、分解生成物のアルカリによる吸収との2工程を備える。
【0005】
即ち、有機塩素化合物を含有するガスに紫外線を照射し、光化学的に酸化分解すると、二酸化炭素、塩化水素、酸クロライド、ホスゲン、塩素等の酸性成分に変化する。これらの酸性成分には有害なものが多く含まれるので、酸性成分を環境中に放出しないように、アルカリ剤により吸収処理する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
有機塩素化合物の紫外線照射による光分解で生成した酸性成分をアルカリで吸収する従来の方法では、アルカリ剤として苛性ソーダ(NaOH)や苛性カリ(KOH)或いはアミン類を使用しているが、これらのアルカリ剤は取り扱いにかなりの注意を要する。また、これらのアルカリ剤は紫外線照射で生成する二酸化炭素によっても消費されるので、より安価なアルカリ剤を使用した有機塩素化合物の分解装置が望まれている。
【0007】
なお、土壌や地下水から有機塩素化合物を除去する作業は通常の場合、現場で行われるところから、分解装置の運転管理が容易であることが望まれる。
【0008】
本発明は上記従来技術に鑑みてなされたものであり、有機塩素化合物に紫外線を照射して酸化分解したときに生成する排ガス中の酸クロライド及び/又はホスゲンを取り扱いが容易で且つ安価なアルカリ剤により効率的に吸収除去することができ、しかも維持管理が容易な有機塩素化合物の分解装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機塩素化合物の分解装置は、有機塩素化合物を含有するガスに紫外線を照射して該有機塩素化合物を分解する紫外線照射による分解手段と、該紫外線照射による分解手段で紫外線照射されたガスが導入され、紫外線照射により生成した酸クロライド及び/又はホスゲンを吸収除去する吸収装置とを備える有機塩素化合物の分解装置において、該吸収装置は炭酸カルシウムを主成分とする固体充填材と、pH5以上の水を該固体充填材に間欠的に散水し、常に該固体充填材表面を湿潤状態に保つ散水手段とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
かかる本発明装置においては、有機塩素化合物の光分解で生成した酸クロライド及び/又はホスゲンを吸収する吸収装置は、炭酸カルシウムを主成分とする固体充填材と、この固体充填材に対しpH5以上の水を間欠的に散水し、常に該固体充填材表面を湿潤状態に保つ散水手段とを有したものである。この固体充填材は取り扱いがきわめて容易である。なお、この固体充填材に対しpH5以上の水を散水することにより、紫外線照射後のガス中の酸性成分(酸クロライド、ホスゲン)が加水分解反応あるいは中和反応し、ガス中から効率良く除去される。なお、この散水により、加水分解又は中和反応生成物が固体充填材の表面から溶解除去されるようになり、固体充填材と酸性成分との接触効率(反応効率)が高いものとなる。
【0011】
この散水のpHが5以上であるため、炭酸カルシウム系充填材の溶解が少ない。なお、この散水のpHは5〜9であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、散水手段による散水は間欠的に行う。また、散水排水を回収し、循環手段により再度散水に使用しても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
図1(a)、(b)は本発明の有機塩素化合物の分解装置の実施の形態を示す系統図であり、図中、1は紫外線反応塔、2は吸収塔、3は循環水タンクである。
【0015】
被処理ガスである有機塩素化合物を含有するガスは、まず、紫外線反応塔1に導入され、紫外線が照射される。紫外線が照射された有機塩素化合物は励起して脱塩素反応を起こし、自らは空気中の酸素分子と反応して含酸素(含塩素)中間体を生成する。放出された塩素原子は2原子が会合すると塩素分子になるが、一部は元の有機塩素化合物と反応して炭素中心ラジカルを生成する。このようなラジカル反応の結果、光分解生成物として最終的に二酸化炭素、塩化水素、酸クロライド、ホスゲン、塩素等を生成する。反応は連鎖的に進行するので、この反応の量子収率は一般的に高く、効率良く元の有機塩素化合物の濃度を低下させることができる。
【0016】
本発明において、紫外線の照射に用いることができる光源としては、例えば低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。これらの中で、紫外線照射効率の高い低圧水銀ランプを特に好適に使用することができる。光源を保護するために保護筒を設ける場合は、石英ガラス、透明フッ素樹脂製のものがよく、パイレックスガラスは300nm以下の波長をカットするので適当ではない。
【0017】
この紫外線反応塔1のガス流量は、紫外線出力や原ガス中の有機塩素化合物濃度から、有機塩素化合物を十分に分解し得る滞留時間が確保されるように適宜決定される。
【0018】
紫外線反応塔1の流出ガスは次いで、炭酸カルシウムを主成分とする固体充填材(以下「炭酸カルシウム系充填材」と称す。)が充填され、この炭酸カルシウム系充填材の上部からpH5以上、好ましくは5〜9の水が間欠的に散水される吸収塔2に導入される。
【0019】
吸収塔2において、紫外線照射後のガス中の紫外線分解生成物が加水分解反応及び中和反応によりガス中から除去される。
【0020】
なお、炭酸カルシウムと紫外線照射により生成した各種酸性物質との反応は次の通りである。
塩化水素の場合:
2HCl+CaCO3→CaCl2+H2O+CO2
酸クロライド(ジクロロアセチルクロライドを例示)の場合:
2CHCl2COCl+2CaCO3→Ca(CHCl2COO)2+CaCl2+2CO2
ホスゲンの場合:
COCl2+CaCO3→CaCl2+2CO2
塩素の場合:
2Cl2+2CaCO3→CaCl2+Ca(ClO)2+2CO2
【0021】
上記反応式に見られるように、塩化水素の場合は2モルの塩化水素から1モルの水が生成する。しかし、他の物質の場合、水の生成はないので炭酸カルシウム表面に生成物が蓄積し、反応効率は時間と共に急速に低下する。そこで、本発明ではpH5〜9の水を供給して常に炭酸カルシウム系充填材表面を湿潤状態に保つ。これにより、生成した物質はいずれも大きな溶解度を持つ水易溶性のものであるため、これらを簡単に炭酸カルシウム系充填材表面から水に溶解させて除去することができる。
【0022】
本発明では、この散水する水のpHを5以上とする。このpHが5未満の場合、紫外線分解生成物の除去性能が低下するばかりでなく、充填材の炭酸カルシウムの溶解による消費量が多くなるので好ましくない。
【0023】
なお、供給する水のpHが9を超える場合、紫外線分解生成物の除去性能上はむしろ好ましいが、このようなpHに調整するには、通常、水へのアルカリ剤の添加が必要となるところから、通常の場合、散水のpHは9以下とするのが好ましい。
【0024】
吸収塔2に充填する炭酸カルシウム系充填材としては、石灰石、方解石、大理石、サンゴ等が好適に使用される。この充填材の粒径は、反応効率及び取り扱い性等の面から1〜50mm程度であることが好ましい。
【0025】
また、吸収塔2の散水量は、流入ガス中の紫外線分解生成物濃度やガス流量等によっても異なるが、通常の場合、炭酸カルシウム系充填材1kgに対して0.01〜10L/Hr程度とするのが好ましい。
【0026】
なお、散水は間欠的に行う。これにより排水量の低減を図ることができる。この場合、0.1〜10分の散水毎に1〜30分散水を停止する間欠運転とするのが好ましい。
【0027】
また、吸収塔2の排水は、図1(a)に示す如く、一過式で系外へ排出しても良いが、図1(b)に示す如く、適当なタンク3に受けて循環使用しても良い。この場合、適宜、新たな水を補給し、タンク3のオーバーフロー水を排水として系外へ排出する。このように、排水を循環使用することにより、排水量の低減を図ることができる。
【0028】
吸収塔2からの排水は、通常の場合、物理化学的な酸化分解や蒸発による濃縮、微生物処理等により処理される。
【0029】
また、吸収塔2の処理ガスは系外へ排出される。
【0030】
本発明の有機塩素化合物の分解装置は、各種の有機塩素化合物を処理することができるが、特に、脂肪族塩素化合物の分解に適しており、とりわけトリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンを効率良く処理することができる。対象とする有機塩素化合物を含有するガスとしては、塗装工場の排ガス、ドライクリーニング工場の排ガス、汚染された土壌からの真空抽出ガス、地下水のエアーストリッピングガス等が例示される。なお、地下水や土壌の有機塩素化合物汚染は主にトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンによる場合が多い。汚染が土壌の場合は主に真空抽出法によって有機塩素化合物が取り出される。地下水の場合はいったん揚水し曝気法によって空気と混合した状態で有機塩素化合物が取り出される。この取り出されたガス中の有機塩素化合物濃度は、真空抽出法の場合、数千〜1万ppmに達する場合もある。本発明の有機塩素化合物の分解装置は、このような土壌又は地下水から有機塩素化合物を抽出したガスの処理に好適である。
【0031】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0032】
実施例1、参考例2〜4、比較例1
内部に直径2cmの石英管を備え、ガスの入口及び出口を上下に設けたパイレックスガラス製内部照射型円筒状反応塔(直径10cm、高さ20cm)を作製し、石英管内には東芝社製殺菌ランプGL 6(6W)を挿入した。この反応塔と直径6cm、高さ30cmの吸収塔を直列に接続した。この吸収塔には平均直径約5mmに篩い分けした大理石を充填した。また、吸収塔には上部から水を供給できるようにした。
【0033】
次に、被処理ガスとしてトリクロロエチレン約500ppmを含む空気を反応塔下部から1L/minの流量で供給し、殺菌ランプを点燈させ、紫外線照射後のガスを吸収塔に導いた。吸収塔で散水する水のpH及び散水量を表1に示す通りとし、紫外線分解生成物であるジクロロアセチルクロライド(DCAC)及びホスゲンの濃度を吸収塔の前後で測定し、結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1より、本発明装置によれば有機塩素化合物の紫外線照射分解により生成した酸性成分を効率的に除去できることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の有機塩素化合物の分解装置では、有機塩素化合物を含有するガスを紫外線照射により分解し、この分解ガス中の酸クロライド及び/又はホスゲンを効率的に吸収除去できる。なお、散水を間欠に行い、更に散水排水を循環使用することにより、排水量を低減することができる。
【0037】
本発明の有機塩素化合物の分解装置は、有機塩素化合物により汚染された地下水や土壌を浄化する場合に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機塩素化合物の分解装置の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 紫外線反応塔
2 吸収塔
3 循環水タンク
Claims (3)
- 有機塩素化合物を含有するガスに紫外線を照射して該有機塩素化合物を分解する紫外線照射による分解手段と、該紫外線照射による分解手段で紫外線照射されたガスが導入され、紫外線照射により生成した酸クロライド及び/又はホスゲンを吸収除去する吸収装置とを備える有機塩素化合物の分解装置において、
該吸収装置は炭酸カルシウムを主成分とする固体充填材と、pH5以上の水を該固体充填材に間欠的に散水し、常に該固体充填材表面を湿潤状態に保つ散水手段とが設けられていることを特徴とする有機塩素化合物の分解装置。 - 請求項1において、該固体充填材が、石灰岩、方解石、大理石及びサンゴよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする有機塩素化合物の分解装置。
- 請求項1又は2において、該吸収装置の散水排水を回収し、再度散水として用いる循環手段が設けられていることを特徴とする有機塩素化合物の分解装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13504297A JP3739169B2 (ja) | 1997-05-26 | 1997-05-26 | 有機塩素化合物の分解装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP13504297A JP3739169B2 (ja) | 1997-05-26 | 1997-05-26 | 有機塩素化合物の分解装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10323536A JPH10323536A (ja) | 1998-12-08 |
JP3739169B2 true JP3739169B2 (ja) | 2006-01-25 |
Family
ID=15142591
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP13504297A Expired - Fee Related JP3739169B2 (ja) | 1997-05-26 | 1997-05-26 | 有機塩素化合物の分解装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3739169B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103316572A (zh) * | 2013-07-07 | 2013-09-25 | 合肥工业大学 | 一种多相催化净化气体中有机污染物的装置及方法 |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109939501A (zh) * | 2019-04-03 | 2019-06-28 | 西安飞机工业(集团)有限责任公司 | 一种含有四氯乙烯的化铣胶喷涂废气处理方法 |
Family Cites Families (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS62191095A (ja) * | 1986-02-14 | 1987-08-21 | Nec Corp | 排水処理装置 |
JPH03278814A (ja) * | 1990-03-28 | 1991-12-10 | F K K Giken Kk | 酸性ガス処理装置 |
JPH06182144A (ja) * | 1992-12-16 | 1994-07-05 | Kooken:Kk | 乾式ガス処理方法 |
JP3352200B2 (ja) * | 1993-09-01 | 2002-12-03 | アタカ工業株式会社 | 揮発性有機塩素化合物の処理方法 |
JP3563758B2 (ja) * | 1994-02-09 | 2004-09-08 | 住友精化株式会社 | 塩素含有ガスの処理方法 |
JPH09253447A (ja) * | 1996-03-26 | 1997-09-30 | Kurita Water Ind Ltd | 有機塩素化合物の光分解方法 |
-
1997
- 1997-05-26 JP JP13504297A patent/JP3739169B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103316572A (zh) * | 2013-07-07 | 2013-09-25 | 合肥工业大学 | 一种多相催化净化气体中有机污染物的装置及方法 |
CN103316572B (zh) * | 2013-07-07 | 2015-09-02 | 合肥工业大学 | 一种多相催化净化气体中有机污染物的装置及方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10323536A (ja) | 1998-12-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2008049305A (ja) | 揮発性有機塩素化合物分解システム及び揮発性有機塩素化合物の分解方法 | |
US7163615B2 (en) | Method of treating substance to be degraded and its apparatus | |
JP3739169B2 (ja) | 有機塩素化合物の分解装置 | |
EP0242941B1 (en) | Process and apparatus for the deodorization of air | |
JPH09234338A (ja) | 有機塩素化合物の光分解法 | |
JPH08243351A (ja) | 有機塩素化合物の分解方法 | |
JP3384464B2 (ja) | 揮発性有機塩素化合物の処理方法 | |
JP2000005562A (ja) | 有機塩素化合物の処理方法 | |
JP2613586B2 (ja) | 排水処理装置と排水処理方法 | |
JPH09299753A (ja) | 有機塩素化合物の光分解装置 | |
US7018514B2 (en) | Method and apparatus for processing substances to be decomposed | |
JP3501764B2 (ja) | 汚染物質を含む土壌の修復装置及び修復方法 | |
JP2005103519A (ja) | 汚染物質分解方法及びその装置 | |
JP3958126B2 (ja) | 汚染物質の分解方法及びそれに用いる装置 | |
JP3854898B2 (ja) | 分解生成物の分解方法及びその装置 | |
JP3825992B2 (ja) | 汚染水及び地下水浄化装置及びその方法 | |
JPH09122441A (ja) | 有機塩素化合物の分解方法 | |
JP2001170666A (ja) | 有機塩素化合物の分解方法及びそれに用いる分解装置 | |
JP3566143B2 (ja) | 汚水中のダイオキシン類除去方法 | |
JP2004188396A (ja) | 分解対象物の分解方法及びそれに用いる分解装置 | |
JPH09253447A (ja) | 有機塩素化合物の光分解方法 | |
JP2000079322A (ja) | 有機溶剤を含む気体の無害化処理装置及び方法 | |
JP2006256974A (ja) | 有機物の分解方法および装置 | |
JP2006130476A (ja) | 汚染物質の分解方法 | |
JP2004321917A (ja) | 分解方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20051101 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081111 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091111 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (prs date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101111 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |