JP3738612B2 - トナーおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はトナーおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の省エネルギー対応として、トナーの定着性を向上させることが種々検討されている。トナーの定着性を向上させるためには、当該トナーを構成する樹脂成分の溶融粘度を低くすることが好ましいが、樹脂成分の溶融温度が低すぎると保存性が損なわれる傾向がある。このため、定着性と保存性の両立を図ることのできるトナーの開発が望まれている。
【0003】
トナーの定着性を向上させる技術として、結晶性ポリエステル等の結晶性物質と無定形高分子とをミクロドメイン化することが知られており、特開昭63−57855号公報、特開昭63−27856号公報等には、無定形ビニル重合体と結晶性ポリエステルとを化学的にグラフトあるいはブロック化した重合体を樹脂成分とするトナーが紹介されている。しかしながら、そのような技術によっても、結晶性ポリエステルを使用することによる低溶融粘度化を図ることが困難であり、定着性を向上させることには限界がある。
【0004】
トナーの定着性を向上させるためには、結晶性物質を一定の割合で、かつ均一に、しかもある程度のドメイン構造を保持しながらトナー粒子中に存在することが必要である。しかしながら、このような状態(ドメイン構造)で結晶性物質をトナー粒子中に存在させる方法は知られていない。例えば混練法によって結晶性物質の導入を試みても、混練時の熱によって当該結晶性物質が溶融してしまい、ドメイン構造を形成することはできず、結晶性物質を導入することによる定着性の向上を図ることができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、定着可能温度域が広く、定着性の良好なトナー、およびそのようなトナーを製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のトナーは、ポリエステルよりなる結晶性物質と無定形高分子とを含有する、乳化重合によって得られた樹脂微粒子を水系媒体中で融着させて得られる体積平均粒径が3〜9μmの会合粒子よりなることを特徴とする。
また、前記結晶性物質の融点が60〜130℃、数平均分子量が1,500〜15,000、融点+20℃での溶融粘度が100dPa・s以下であることが好ましい。
【0007】
本発明のトナーの製造方法は、ポリエステルよりなる結晶性物質を溶解したラジカル重合性単量体溶液を乳化重合して樹脂微粒子を得、この樹脂微粒子を水系媒体中で融着させて体積平均粒径が3〜9μmの会合粒子よりなるトナー粒子を得ることを特徴とする。
また、前記結晶性物質の融点が60〜130℃、数平均分子量が1,500〜15,000、融点+20℃での溶融粘度が100dPa・s以下であることが好ましい。
【0008】
すなわち、本発明者らは、結晶性物質による効果(定着性の向上効果)をトナー中で発揮させるために鋭意検討した結果、特定の製造方法を使用して結晶性物質を導入して得られるトナーが、その効果を最大限に発揮することができることを見出し、かかる知見に基いて本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明では、あらかじめ樹脂微粒子中に結晶性物質を含有させ、その樹脂微粒子を融着させることで、その結晶性物質の存在状態をあるドメイン構造とすることができ、その結果、定着性を向上することができるものである。
本発明の製造方法は、樹脂微粒子として無定形ビニル重合体と結晶性物質からなり、その樹脂微粒子を水系媒体中で融着させることでトナー化する方法である。この方法を採用することで、樹脂微粒子自体をいわゆるミクロドメイン構造として機能させることができ、得られるトナーの定着性を向上することができる。また、樹脂微粒子中に結晶性物質を含有させるためには、無定形ビニル重合体を構成するラジカル重合性単量体中に結晶性物質を溶解させ、均一な溶液とする。ついで、この溶液を水系媒体中に乳化分散させ、その系で重合させることで樹脂微粒子を形成させる。その結果、重合が進行するにしたがって結晶性物質が樹脂微粒子内部に析出し、ドメイン化することができる。この手法を採用することによって、均一なドメイン構造とすることができ、さらに樹脂微粒子の粒径は重合法で調整されるためにある程度にそろった粒径分布のものとなり、融着で形成されたトナー中への結晶性物質の分散を均一化することができるものである。また、結晶性物質の導入に際して過度な熱エネルギーを付与することがないために、結晶性物質の溶融が発生せず、ドメインが大きくなったり、小さくなる(最悪の場合には樹脂に溶解しドメインがなくなる)こともない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
<トナーの製造方法>
本発明のトナーは、水系媒体中で樹脂微粒子を融着させることにより製造することができる。
水系媒体中で樹脂微粒子を融着させる方法として、例えば特開昭63−186253号公報、同63−282749号公報、特開平7−146583号公報等に記載されている方法を挙げることができる。また、特に好ましい融着法として水系媒体中で樹脂微粒子を塩析/融着させる方法が特に好ましい。
本発明において、「塩析/融着」とは、塩析(微粒子の凝集)と融着(微粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において微粒子(樹脂微粒子、着色剤微粒子)を凝集させる必要がある。
【0010】
本発明のトナーを得るために使用される樹脂微粒子の重量平均粒径は50〜2000nmが好ましい。かかる樹脂微粒子は、乳化重合法によって得られる。
【0011】
<結晶性物質>
樹脂微粒子中に含有される結晶性物質は、当該樹脂微粒子を融着させて得られるトナーに良好な定着性(画像支持体に対する接着性)を付与する物質である。
【0012】
〔結晶性物質の物性〕
かかる結晶性物質の融点は60〜130℃であることが好ましく、更に好ましくは60〜120℃とされる。
60〜130℃の範囲に融点を有する結晶性物質によれば、得られるトナーにおいて、その全体の溶融粘度を下げることが可能となり、紙等に対する接着性の向上を図ることができる。しかも、当該結晶性物質が存在しても、高温側の弾性率が好ましい範囲に維持されるため、良好な耐オフセット性が発揮される。結晶性物質の融点が60℃未満の場合には、定着性自体は向上するものの、保存性が低下し実用性に問題を生じる。一方、融点が130℃を超える場合には、溶融開始温度が高くなるために、定着性の向上に対する寄与が低く、定着性改良の効果発揮が少なくなる。
ここに、結晶性物質の融点とは、示差熱量分析装置(DSC)にて測定された値をいう。具体的には、0℃から200℃まで10℃/minの条件で昇温(第1昇温過程)したときに測定される吸熱ピークの最大ピークを示す温度を融点とする。具体的な測定装置としては、パーキンエルマー社製のDSC−7等を挙げることができる。
【0013】
結晶性物質の数平均分子量は1,500〜15,000であることが好ましく、更に好ましくは2,000〜10,000とされる。
1,500〜15,000の範囲に数平均分子量を有する結晶性物質によれば、得られるトナーにおいて、その全体の溶融粘度低下を発揮させるための無定形高分子との溶融状態での相溶性が向上され、より低温側での定着性が向上する。この数平均分子量が1,500未満の場合では、結晶性物質の溶融粘度が過度に低くなり、却って相溶状態が不均一になりやすく、定着性を向上することができにくくなる。一方、数平均分子量が15,000を超える場合には、結晶性物質の溶融に時間がかかり、この場合でも相溶状態が不均一になるために、定着性の向上効果が低くなってしまう。
ここに、結晶性物質の数平均分子量とは、下記の条件に従って測定された分子量から求められる値をいう。
【0014】
(条件)
・使用機種:「LC−6A」(島津製作所社製)
・カラム :「ウルトラスタイラジェルPlus」
・分析温度:60℃
・溶媒 : =m−クレゾール/クロロベンゼン=3/1(体積比)
・検量線 :標準ポリスチレン検量線
【0015】
結晶性物質の溶融粘度(融点+20℃での溶融粘度)は100dPa・s以下であることが好ましく、更に好ましくは60dPa・s以下とされる。
溶融粘度が100dPa・s以下である結晶性物質によれば、得られるトナーにおいて、無定形高分子を含めた全体の溶融粘度を下げることが可能になり、定着性が向上する。この溶融粘度が100dPa・sを超える場合には、全体の溶融粘度が高くなるために、定着性の向上効果が低くなってしまう。
ここに、結晶性物質の溶融粘度(融点+20℃での溶融粘度)とは、コーンプレート粘度計で測定された値をいう。
結晶性物質のGPCでのピーク分子量は6,000〜50,000とされる。
【0016】
〔結晶性物質を構成する化合物〕
結晶性物質を構成する化合物としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドを挙げることができ、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物および酸塩化物を含む)とを反応させて得られるポリエステル;脂肪族ジアミンと、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物および酸塩化物を含む)とを反応させて得られるポリアミドが好ましい。
【0017】
結晶性ポリエステルを得るために使用されるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4,ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等を挙げることができる。
【0018】
結晶性ポリアミドを得るために使用されるジアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,4,ブテンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジメタチルアミン等を挙げることができる。
【0019】
結晶性ポリエステルおよび結晶性ポリアミドを得るために使用されるジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、これらの酸無水物あるいは酸塩化物を挙げることができる。
【0020】
特に好ましい結晶性物質としては、シクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステル、1,6ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとコハク酸とを反応して得られるポリエステル、エチレングリコールとセバシン酸とを反応して得られるポリエステル、1,4−ブタンジオールとコハク酸とを反応して得られるポリエステルを挙げることができ、これらのうち、シクロヘキサンジオールとアジピン酸とを反応して得られるポリエステルが最も好ましい。
【0021】
<無定形高分子>
〔無定形高分子の物性〕
樹脂微粒子中に含有される無定形高分子(無定形ビニル重合体)のガラス転移温度(Tg)は10〜75℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは40〜65℃である。
また、無定形高分子の軟化点は80〜220℃の範囲にあることが好ましい。
また、無定形高分子の分子量は、重量平均分子量(Mw)で5,000〜1,000,000であることが好ましく、更に好ましくは8,000〜500,000であり、数平均分子量(Mn)は2,000〜200,000であることが好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)は2.0〜100であることが好ましく、更に好ましくは5.0〜80である。
【0022】
ここで、無定形高分子の軟化点は、高化式フローテスター(島津製作所製)を使用して測定された値を示す。具体的には、高化式フローテスター「CFT−500」(島津製作所製)を用い、ダイスの細孔の径1mm、長さ1mm、荷重20kg/cm2 、昇温速度6℃/minの条件下で1cm3 の試料を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点の高さの1/2に相当する温度を軟化点として示す。
【0023】
また、無定形高分子のガラス転移点とはDSCにて測定された値で、ベースラインと吸熱ピークの傾きとの交点をガラス転移点とする。具体的には、示差走査熱量計を用い、100℃まで昇温しその温度にて3min間放置した後に降下温度10℃/minで室温まで冷却する。ついで、このサンプルを昇温速度10℃/minで測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインの延長線と、ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点として示す。
測定装置としては、パーキンエルマー社製のDSC−7等を使用することができる。
【0024】
無定形高分子の分子量はGPCにて測定されたスチレン換算分子量を示す。
GPCによる樹脂の分子量測定方法は、THFを溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定である。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1cc加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1ccの流速で流し、1mg/ccの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801,802,803,804,805,806,807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H,G3000H,G4000H,G5000H,G6000H,G7000H,TSKguardcolumnの組合せなどをあげることができる。また、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0025】
〔無定形高分子を構成する重合体〕
無定形高分子を得るために使用する重合性単量体としては、ラジカル重合性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋剤を使用することができる。また、以下の酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体を少なくとも1種類含有することが好ましい。
【0026】
(1)ラジカル重合性単量体
ラジカル重合性単量体成分としては、特に限定されるものではなく従来公知のラジカル重合性単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
具体的には、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等が挙げられる。
【0027】
(2)架橋剤
架橋剤としては、トナーの特性を改良するためにラジカル重合性架橋剤を添加しても良い。ラジカル重合性架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0028】
(3)酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体
酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、例えば、カルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等のアミン系の化合物を用いることができる。
酸性基を有するラジカル重合性単量体としては、カルボン酸基含有単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル等が挙げられる。
スルホン酸基含有単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル等が挙げられる。
これらは、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩あるいはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩の構造であってもよい。
【0029】
塩基性基を有するラジカル重合性単量体としては、アミン系の化合物があげられ、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、および上記4化合物の4級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルピロリドン;ビニルN−メチルピリジニウムクロリド、ビニルN- エチルピリジニウムクロリド、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0030】
本発明に用いられるラジカル重合性単量体としては、酸性基を有するラジカル重合性単量体または塩基性基を有するラジカル重合性単量体が単量体全体の0.1〜15重量%使用することが好ましく、ラジカル重合性架橋剤はその特性にもよるが、全ラジカル重合性単量体に対して0.1〜10重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0031】
〔連鎖移動剤〕
無定形高分子の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが可能である。
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、およびスチレンダイマー等が使用される。
【0032】
〔重合開始剤〕
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。
更に上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0033】
本発明においては、上記のラジカル重合性単量体に結晶性物質を溶解させて、結晶性物質のラジカル重合性単量体溶液を調製し、これを、後述する界面活性剤等の分散剤を用いて水中に乳化させた後に重合処理することが好ましい。かかる重合処理の具体的方法については後述する。
【0034】
〔界面活性剤〕
前述のラジカル重合性単量体を使用して乳化重合を行うためには、界面活性剤を使用して乳化重合を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等をあげることができる。
本発明において、これらは、主に乳化重合時の乳化剤として使用されるが、他の工程または使用目的で使用してもよい。
【0035】
<結晶性物質と無定形高分子との含有割合>
樹脂微粒子中における結晶性物質と無定形高分子との含有割合としては、無定形高分子100重量部に対して、結晶性物質が1〜200重量部であることが好ましく、更に好ましくは2〜100重量部、特に好ましくは3〜50重量部とされる。結晶性物質の割合が過小である場合には、得られるトナーが十分な定着性を有するものとならない。一方、この割合が過大である場合には、過剰な結晶性物質の存在による過度な溶融が進み、溶融粘度の低下が起こるためにオフセットが発生し易くなる問題がある。
【0036】
<着色剤>
本発明のトナーを構成する着色剤としては無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20重量%であり、好ましくは3〜15重量%が選択される。
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60重量%添加することが好ましい。
【0037】
有機顔料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの有機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20重量%であり、好ましくは3〜15重量%が選択される。
【0038】
着色剤は表面改質して使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が好ましく用いることができる。
【0039】
<外添剤>
本発明のトナーには、流動性、帯電性の改良およびクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタン、アルミナ微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては疎水性のものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。このものとしては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
滑剤には、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
これら外添剤の添加量は、トナーに対して0.1〜5重量%程度が好ましい。
【0040】
<トナーの製造工程>
本発明の製造方法の一例としては、
(1)結晶性物質をラジカル重合性単量体に溶解する溶解工程、
(2)樹脂微粒子の分散液を調製するための重合工程、
(3)水系媒体中で樹脂微粒子を融着させてトナー粒子(会合粒子)を得る融着工程、
(4)トナー粒子の分散液から当該トナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程、
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程から構成され、
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程が含まれていてもよい。
【0041】
以下、各工程について説明する。
〔溶解工程〕
この工程は、ラジカル重合性単量体に結晶性物質を溶解させて、結晶性物質のラジカル重合性単量体溶液を調製する工程である。
結晶性物質の使用割合は、ラジカル重合性単量体100重量部に対して、1〜200重量部であることが好ましく、更に好ましくは2〜100重量部、特に好ましくは3〜50重量部とされる。
【0042】
〔重合工程〕
この重合工程の好適な一例においては、水系媒体(界面活性剤およびラジカル重合開始剤の水溶液)中に、前記結晶性物質のラジカル重合性単量体溶液の液滴を形成させ、前記ラジカル重合開始剤からのラジカルにより当該液滴中において重合反応を進行させる。なお、前記液滴中に油溶性重合開始剤が含有されていてもよい。このような重合工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い攪拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0043】
この重合工程により、結晶性物質と無定形高分子とを含有する樹脂微粒子が得られる。かかる樹脂微粒子は、着色された微粒子であってもよく、着色されていない微粒子であってもよい。着色された樹脂微粒子は、着色剤を含有する単量体組成物を重合処理することにより得られる。
また、着色されていない樹脂微粒子を使用する場合には、後述する融着工程において、樹脂微粒子の分散液に、着色剤微粒子の分散液を添加し、樹脂微粒子と着色剤微粒子とを融着させることでトナー粒子とすることができる。
【0044】
〔融着工程〕
前記融着工程における融着の方法としては、重合工程により得られた樹脂微粒子(着色または非着色の樹脂微粒子)を用いた塩析/融着法が好ましい。
また、当該融着工程においては、樹脂微粒子や着色剤微粒子とともに、離型剤微粒子や荷電制御剤などの内添剤微粒子なども融着させることができる。
【0045】
前記融着工程における「水系媒体」とは、主成分(50重量%以上)が水からなるものをいう。ここに、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶媒を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶媒が特に好ましい。
【0046】
着色剤微粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。
着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。また、使用される界面活性剤としては、前述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。
なお、着色剤(微粒子)は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分子量液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄ろ過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
【0047】
好ましい融着方法である塩析/融着法は、樹脂微粒子と着色剤微粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂微粒子のガラス転移点以上に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。この工程では、水に無限溶解する有機溶媒を添加し、樹脂微粒子のガラス転移温度を実質的に下げることで融着を効果的に行う手法を採用してもよい。
ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。また塩を構成するものとしては、塩素塩、臭素塩、沃素塩、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
さらに、前記水に無限溶解する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、アセトン等があげられるが、炭素数が3以下のメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのアルコールが好ましく、特に、2−プロパノールが好ましい。
【0048】
本発明の融着を塩析/融着で行う場合、塩析剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くすることが好ましい。この理由として明確では無いが、塩析した後の放置時間によって、粒子の凝集状態が変動し、粒径分布が不安定になったり、融着させたトナーの表面性が変動したりする問題が発生する。また、塩析剤を添加する温度としては少なくとも樹脂微粒子のガラス転移温度以下であることが必要である。この理由としては、塩析剤を添加する温度が樹脂微粒子のガラス転移温度以上であると樹脂微粒子の塩析/融着は速やかに進行するものの、粒径の制御を行うことができず、大粒径の粒子が発生したりする問題が発生する。この添加温度の範囲としては樹脂のガラス転移温度以下であればよいが、一般的には5〜55℃、好ましくは10〜45℃である。
また、本発明では、塩析剤を樹脂微粒子のガラス転移温度以下で加え、その後にできるだけ速やかに昇温し、樹脂微粒子のガラス転移温度以上に加熱する方法を使用することが好ましい。この昇温までの時間としては1時間未満が好ましい。さらに、昇温を速やかに行う必要があるが、昇温速度としては、0.25℃/分以上が好ましい。上限としては特に明確では無いが、瞬時に温度を上げると塩析が急激に進行するため、粒径制御がやりにくいという問題があり、5℃/分以下が好ましい。
【0049】
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散液から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0050】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2重量%以下とされる。
なお、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0051】
〔外添剤の添加工程〕
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0052】
トナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を加えてもよい。具体的には荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は樹脂微粒子を重合する段階でその分散液を添加する方法、前述の塩析/融着段階で樹脂微粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂微粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。好ましい方法としては、前述の樹脂微粒子を重合する段階で荷電制御剤粒子及び/又は離型剤粒子を分散液の状態で添加する方法及び前述の塩析/融着工程で樹脂微粒子及び着色剤粒子と同時に荷電制御剤粒子及び/又は離型剤粒子を分散液の状態で添加し、塩析/融着させる方法が挙げられる。
尚、離型剤としては、種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することが好ましい。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックスや、これらの変性物、カルナウバワックスやライスワックス等の天然ワックス、脂肪酸ビスアミドなどのアミド系ワックスなどをあげることができる。これらは離型剤粒子として加えられ、樹脂や着色剤と共に塩析/融着させることができる。
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
これら離型剤や荷電制御剤の粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
【0053】
<トナーの粒径>
本発明のトナーの体積平均粒径は3〜9μmであり、好ましくは4〜8μmとされる。
ここで、トナーの体積平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コルターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所製レーザー回折式粒径測定装置)等を用いて測定された値である。コールターカウンターTAIIおよびコールターマルチサイザーではアパーチャー径=100μmのアパーチャーを用いて2.0〜40μmの範囲における粒径分布を用いて測定された値を示す。
【0054】
<現像剤>
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよいが、好ましくは二成分現像剤としてである。
【0055】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤として前記トナーをそのまま用いる方法もあるが、通常はトナー粒子中に0.1〜5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤として用いる。その含有方法としては、着色剤と同様にして非球形粒子中に含有させるのが普通である。
【0056】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いる。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜60μmのものがよい。
【0057】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0058】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0059】
<熱ロール定着方式>
本発明のトナーを使用して行われる画像形成方法において、好適な定着方式としては熱ロール定着方式を挙げることができる。
図1は、熱ロール定着方式による定着装置の一例を示す説明用断面図である。
この定着装置は、線状ヒーターからなる熱源3を内部にを有する上ローラー1と、シリコーンゴム等で形成された下ローラー2とから構成されている。4は画像支持体(転写紙)である。
上ローラー1は、金属シリンダーの表面に樹脂被覆層が形成されてなる。金属シリンダーの構成材料としては鉄やアルミニウムを挙げることができ、樹脂被覆層の構成材料としては、テトラフロオロエチレンやポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体類等を挙げることができる。
熱源3により、上ローラー1の表面温度は120〜200℃程度に加熱される。定着部においては、上ローラー1と下ローラー2との間に圧力を加えて、当該下ローラー2を変形させることによりニップを形成する。ニップ幅としては通常1〜10mmであり、好ましくは1.5〜7mmである。ニップ幅が狭すぎる場合には熱を均一にトナーに付与することができなくなり、定着のムラを発生する。一方、ニップ幅が広すぎる場合には樹脂の溶融が促進され、定着オフセットが過多となる問題を発生する。
なお、定着線速は40〜600mm/secが好ましい。
【0060】
本発明において使用する定着装置には、必要に応じて定着部のクリーニング機構を付与してもよい。この場合には、シリコーンオイルを定着部の上ローラーに供給する方式として、シリコーンオイルを含浸したパッド、ローラー、ウェッブ等で供給し、クリーニングする方法が使用できる。
シリコーンオイルとしては耐熱性の高いものが使用され、ポリジメチルシリコーン、ポリフェニルメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン等が使用される。粘度の低いものは使用時に流出量が大きくなることから、20℃における粘度が1,000〜100,000cpのものが好適に使用される。
特に、本発明はシリコーンオイルを一定量使用する方式で顕著に効果が発揮される。その理由としては、シリコーンオイルは絶縁性であることから、そのオイルが表面に存在している加熱ローラー(上記説明では上ローラー)は、加圧ローラー(同じく下ローラー)との回転による摩擦により摩擦帯電での電荷蓄積がより多くなり、結果としてハジキが発生しやすくなるが、本発明によりこれが有効に防止されるからである。シリコーンオイルの塗布量は、0.1〜10μg/cm2 が好ましい。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。なお、以下において「部」は「重量部」を意味する。
【0062】
〔着色粒子製造例1〕
(1)着色剤分散液の調製:
n−ドデシル硫酸ナトリウム=0.90kgと純水10.0Lを入れ攪拌溶解した。この液に、攪拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、ついで、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。分散後、大塚電子社製・電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、重量平均径で122nmであった。また、静置乾燥による重量法で測定した上記分散液の固形分濃度は16.6重量%であった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
【0063】
(2)ラテックスA1の調製:
スチレン=567g、n−ブチルアクリレート=98g、メタクリル酸=35g、t−ドデシルメルカプタン=24.1gに、下記表1に示す処方に従って下記表2に示す結晶性物質(結晶性物質1)を加え、攪拌しつつ85℃まで昇温し結晶性物質を溶解させてモノマー溶液(結晶性物質を溶解したラジカル重合性単量体溶液)を調製した。
ついで、純水2700mLにドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム1gを溶解させた水溶液をいれた温度計、冷却管、攪拌装置を有する四つ口フラスコを85℃に加熱し、その温度条件下に前記モノマー溶液を滴下し、85℃に維持したまま超音波振動を付与し、前記モノマー溶液を界面活性剤を含有する水溶液中に完全に分散させた。
その後、70℃に温度を下げ、過硫酸アンモニウム8.3gを純水500mLに溶解させた水溶性重合開始剤溶液を滴下し、窒素気流下70℃にて4時間反応させた。その後、冷却し、ポールフィルターで異物を除去し、ラテックスA1を得た。
【0064】
(3)ラテックスB1の調製:
スチレン=497g、n−ブチルアクリレート=168g、メタクリル酸=35g、t−ドデシルメルカプタン=0.66gに、下記表1に示す処方に従って下記表2に示す結晶性物質(結晶性物質1)を加え、攪拌しつつ85℃まで昇温し結晶性物質を溶解させてモノマー溶液(結晶性物質を溶解したラジカル重合性単量体溶液)を調製した。
ついで、純水2700mLにドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム1.34gを溶解させた水溶液をいれた温度計、冷却管、攪拌装置を有する四つ口フラスコを85℃に加熱し、その温度条件下に前記モノマー溶液を滴下し、85℃に維持したまま超音波振動を付与し、前記モノマー溶液を界面活性剤を含有する水溶液中に完全に分散させた。
その後、70℃に温度を下げ、過硫酸アンモニウム1.48gを純水500mLに溶解させた水溶性重合開始剤溶液を滴下し、窒素気流下70℃にて4時間反応させた。その後、冷却し、ポールフィルターで異物を除去し、ラテックスB1を得た。
【0065】
(4)塩析/融着工程:
塩析剤としての塩化ナトリウム=1.07kgとイオン交換水5.0Lを入れ、攪拌溶解した。これを、塩化ナトリウム溶液Aとする。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置、櫛形バッフルを付けた反応釜に、上記で作製したラテックスA1=5.0kgとラテックスB1=5.0kgと着色剤分散液1=0.4kgとイオン交換水20.0kgとを入れ攪拌した。ついで、35℃に加温し、塩化ナトリウム溶液Aを添加した。その後、5分間放置した後に、昇温を開始し、液温度85℃まで5分で昇温した(昇温速度=10℃/分)。液温度85℃±2℃にて、6時間加熱攪拌し、塩析/融着させた。その後、30℃以下に冷却し攪拌を停止した。目開き45μmの篩いで濾過し、この濾液を会合液▲1▼とする。ついで、遠心分離機を使用し、会合液▲1▼よりウェットケーキ状の着色粒子を濾取した。その後、イオン交換水により洗浄した。
上記で洗浄を完了したウエットケーキ状の着色粒子を、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。この着色粒子を「着色粒子1」とする。この着色粒子1は、体積平均粒子径が6.3μmであり、樹脂の分子量は数平均分子量が6100、重量平均分子量が53000であった。
【0066】
〔着色粒子製造例2〜15〕
ラテックスA1およびラテックスB1を調製する際に、下記表1に示す処方に従って下記表2に示す結晶性物質を使用したこと以外は着色粒子製造例1と同様にして着色粒子2〜着色粒子15を得た。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
*CHD:1,4−シクロヘキサンジオール
*EG:エチレングリコール
*1,4BD:1,4−ブタンジオール
*1,6HD:1,6−ヘキサンジオール
【0070】
この着色粒子1〜15の各々に疎水性シリカ(疎水化度=65、数平均一次粒子径=12nm)を1.0重量%添加してトナーを得た。これらを「トナー1」〜「トナー15」とする。
トナー1〜15の各々と、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアとを混合してトナー濃度が6%の現像剤を調製した。これらをトナーに対応して、「現像剤1」〜「現像剤15」とする。
【0071】
<実施例1〜14および比較例1>
〔実写テスト〕
現像剤1〜15の各々を使用し、コニカ社製デジタル複写機Konica7060を用いた実写テストを実施することにより、耐オフセット性(定着オフセット発生温度)および定着性(ハーフトーン定着率)を評価した。結果を下記表3に示す。なお、現像条件は下記のとおりである。
【0072】
(現像条件)
・感光体;積層型有機感光体
・DCバイアス ;−500V
・Dsd(感光体と現像スリーブ間距離);600μm
・現像剤層規制 ;磁性H−Cut方式
・現像剤層厚 ;700μm
・現像スリーブ径;40mm
【0073】
定着装置は、圧接方式の加熱定着装置を採用した。定着装置の構成および定着条件は下記のとおりである。
【0074】
(定着装置)
テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で表面を被覆した直径30mmφのヒーターを中央部に内蔵した円柱状の鉄を上ローラーとして有し、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエーテル共重合体で表面を被覆したシリコンゴムで構成された直径30mmφの下ローラーを有している。線圧は0.8kg/cmに設定され、ニップの幅は4.3mmとした。
【0075】
(定着条件)
この定着装置を使用して、印字の線速を250mm/secに設定した。なお、定着装置のクリーニング機構としてポリジフェニルシリコーン(20℃の粘度が10,000cpのもの)を含浸したウェッブ方式の供給方式を使用した。定着の温度は上ロールの表面温度で制御し、185℃の設定温度とした。なお、シリコーンオイルの塗布量は、0.8μg/cm2 とした。
【0076】
〔評価方法〕
(1)定着オフセット発生温度:
加熱ローラーの表面温度(センター値)を150〜210℃の範囲で5℃刻みで変化させ、それぞれの表面温度の際に、搬送方向に対して垂直方向に5mm幅のベタ黒帯状画像を有するA4画像を縦送りで搬送定着した後に、搬送方向に対して垂直に5mm幅のベタ黒帯状画像と20mm幅のハーフトーン画像を有するA4画像を横送りで搬送し、定着オフセットに起因するる画像汚れが発生したときの温度を測定した。結果を下記表3に示す。
【0077】
(2)ハーフトーン定着率:
加熱ローラーの表面温度(センター値)を170℃に固定したときの、上記ハーフトーン画像の定着率を測定した。定着率は、定着画像を「サラシ布」を巻いた1kgのおもりで擦った前後の画像濃度から、下記式によって算出した。結果を下記表3に示す。
【0078】
【数1】
定着率=〔(擦り後の画像濃度)/(擦り前の画像濃度)〕×100
【0079】
【表3】
【0080】
【発明の効果】
本発明に係るトナーは、耐オフセット性が良好で定着可能温度域が広く、かつ定着性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱ロール定着方式による定着装置の一例を示す説明用断面図である。
【符号の説明】
1 上ローラー
2 下ローラー
3 熱源
4 画像支持体
Claims (4)
- ポリエステルよりなる結晶性物質と無定形高分子とを含有する、乳化重合によって得られた樹脂微粒子を水系媒体中で融着させて得られる体積平均粒径が3〜9μmの会合粒子よりなるトナー。
- 結晶性物質の融点が60〜130℃、数平均分子量が1,500〜15,000、融点+20℃での溶融粘度が100dPa・s以下であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- ポリエステルよりなる結晶性物質を溶解したラジカル重合性単量体溶液を乳化重合して樹脂微粒子を得、この樹脂微粒子を水系媒体中で融着させて体積平均粒径が3〜9μmの会合粒子よりなるトナー粒子を得ることを特徴とするトナーの製造方法。
- 結晶性物質の融点が60〜130℃、数平均分子量が1,500〜15,000、融点+20℃での溶融粘度が100dPa・s以下であることを特徴とする請求項3記載のトナーの製造方法。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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