JP3737920B2 - 磁気抵抗効果素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば固定磁性層(ピン(Pinned)磁性層)の磁化の方向と外部磁界の影響を受けるフリー(Free)磁性層の磁化の方向との関係で電気抵抗が変化するいわゆるスピンバルブ型薄膜素子に係り、特に、多層膜に有効にセンス電流を流すことができる磁気抵抗効果素子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図33は、磁気抵抗効果素子の従来の構造をABS面から見た断面図である。図33に示す磁気抵抗効果素子は、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素子の1種であるスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれるものであり、ハードディスクなどの記録媒体からの記録磁界を検出するものである。
【0003】
このスピンバルブ型薄膜素子は、下から下地層6、反強磁性層1、固定磁性層(ピン(Pinned)磁性層)2、非磁性導電層3、フリー磁性層(Free)4、及び保護層7で構成された多層膜9と、この多層膜9の両側に形成された一対のハードバイアス層5,5と、このハードバイアス層5,5の上に形成された一対の電極層8,8とで構成されている。なお下地層6及び保護層7は、Ta(タンタル)膜などで形成されている。またこの多層膜9の上面の幅寸法によってトラック幅Twが決定される。
【0004】
前記反強磁性層1にはFe−Mn(鉄−マンガン)合金膜やNi−Mn(ニッケル−マンガン)合金膜、固定磁性層2及びフリー磁性層4にはNi−Fe(ニッケル−鉄)合金膜、非磁性導電層3にはCu(銅)膜、ハードバイアス層5,5にはCo−Pt(コバルト−白金)合金膜、また電極層8,8にはCr膜が一般的に使用される。
【0005】
図33に示すように、固定磁性層2の磁化は、反強磁性層1との交換異方性磁界によりY方向(記録媒体からの漏れ磁界方向;ハイト方向)に単磁区化され、フリー磁性層4の磁化は、前記ハードバイアス層5,5からのバイアス磁界の影響を受けてX方向に揃えられる。
【0006】
すなわち固定磁性層2の磁化と、フリー磁性層4の磁化とが、直交するように設定されている。
【0007】
このスピンバルブ型薄膜素子では、ハードバイアス層5,5上に形成された電極層8,8から、固定磁性層2、非磁性導電層3及びフリー磁性層4に検出電流(センス電流)が与えられる。ハードディスクなどの記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、フリー磁性層4の磁化がXからY方向へ向けて変化する。このフリー磁性層4内での磁化の方向の変動と、固定磁性層2の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し(これを磁気抵抗効果という)、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図33に示す従来の磁気抵抗効果素子では、以下のような問題点が発生する。
【0009】
固定磁性層2の磁化は、前述したように、図示Y方向に単磁区化され固定されているが、前記固定磁性層2の両側にはX方向に磁化されているハードバイアス層5,5が設けられている。そのために、特に、固定磁性層2の両端の磁化が、前記ハードバイアス層5,5からのバイアス磁界の影響を受け、図示Y方向に固定されなくなっている。
【0010】
すなわち、前記ハードバイアス層5,5のX方向の磁化を受けて、X方向に単磁区化されているフリー磁性層4の磁化と、固定磁性層2の磁化とは、特に多層膜9の側端部付近では、直交関係にない。フリー磁性層4の磁化と、固定磁性層2の磁化とを直交関係に設定しておく理由は、フリー磁性層4の磁化が小さな外部磁界でも容易に変動可能で、電気抵抗を大きく変化させることができ、再生感度を向上させることができるからである。さらに前記直交関係にあると、良好な対称性を有する出力波形を得ることが可能になるためである。
【0011】
しかもフリー磁性層4のうち、その側端部付近における磁化は、ハードバイアス層5,5からの強い磁化の影響を受けるため固定されやすく、外部磁界に対し磁化が変動しにくくなっており、図33に示すように、多層膜9の側端部付近には、再生感度の悪い不感領域が形成される。
【0012】
多層膜9のうち、不感領域を除いた中央部分の領域が、実質的に記録磁界の再生に寄与し、磁気抵抗効果を発揮する感度領域であり、この感度領域の幅は、多層膜9の形成時に設定されたトラック幅Twよりも不感領域の幅寸法分だけ短くなっている。
【0013】
このように磁気抵抗効果素子の多層膜9には、その両側付近に再生出力にほとんど寄与しない不感領域が形成され、この不感領域は、単に直流抵抗値(DCR)を上昇させる領域でしかなかった。
【0014】
また、図33の従来の磁気抵抗効果素子のように、多層膜9の両側にのみ電極層8,8が形成されている構造であると、前記電極層8,8からのセンス電流は、ハードバイアス層5,5に流れ易くなり、前記多層膜9に流れる割合が減り、また特に不感領域の存在により、さらに感度領域へ流れるセンス電流の量は激減する結果となる。このように、有効量の前記センス電流を感度領域に流すことができず、直流抵抗の上昇とともに再生出力の低下が問題となっていた。
【0015】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に多層膜の不感領域上に電極層をオーバーラップさせることにより、直流抵抗を低減させることができ、再生特性を向上させることが可能な磁気抵抗効果素を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、反強磁性層と、この反強磁性層上に形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層上に非磁性導電層を介して形成されたフリー磁性層とを有する多層膜と、この多層膜の両側に形成され、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃える一対のバイアス層と、このバイアス層上に形成され、固定磁性層と非磁性導電層とフリー磁性層に検出電流を与える一対の電極層とが設けられて成る磁気抵抗効果素子において、
前記多層膜は、再生感度に優れ、実質的に磁気抵抗効果を発揮し得る中央部分の感度領域と、前記感度領域の両側に形成され、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域とで構成されており、
前記反強磁性層は、その上に形成された前記各層の両側の領域に延びており、この両側領域の反強磁性層上に、金属膜を介して一対のバイアス層及び電極層が積層され、前記電極層は、多層膜の不感領域上に、0μmより大きく0.08μmの範囲内の幅寸法で延ばされており、
前記フリー磁性層上には、Taで形成された保護層と、前記保護層上に形成された絶縁層との積層体が形成され、前記積層体は、トラック幅方向における電極層間にのみ設けられ、
前記積層体のトラック幅方向の両側端面は、下側から上側に向けて、徐々に前記積層体の幅寸法が狭くなる傾斜面で形成され、前記電極層の前端面は、前記傾斜面上に接して形成されていることを特徴とするものである。
本発明では、酸化防止などを目的とした、Taからなる保護層がフリー磁性層上に形成されている。
ただし、前記保護層上に前記電極層が積層されると、電気抵抗が増加するなど、磁気抵抗効果素子の特性に悪影響を及ぼすことがあるので、前記保護層は、トラック幅方向における電極層間にのみ設けられている。
本発明では、前記多層膜上に延びて形成された部分の各電極層の幅寸法は、0.05μm以上であることが好ましい。
【0027】
また、前記固定磁性層は、磁気モーメントが異なる複数の軟磁性薄膜が、非磁性材料層を介して積層され、前非磁性材料層を介して隣接する前記軟磁性薄膜の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態であると、前記固定磁性層を構成する複数の軟磁性膜が、互いに他の軟磁性膜の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層の磁化方向を一定方向に安定させることができるので好ましい。
【0028】
ここでも、前記軟磁性薄膜の磁気モーメントの大きさは、前記軟磁性薄膜の飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。
【0029】
なお、前記非磁性材料層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されていることが好ましい。
【0030】
本発明では、前記反強磁性層は、PtMn合金により形成されていることが好ましい。または前記反強磁性層は、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成されていることが好ましい。
【0032】
前記多層膜と前記バイアス層との磁気的接続面の上縁部及び/又は下縁部の媒体走行方向の高さ位置が、前記フリー磁性層の上面及び/又は下面の媒体走行方向の高さ位置と等しいことが好ましい。
【0033】
前記バイアス層は、前記多層膜のトラック幅方向の側面に、直接または下地層などの他の層を介して磁気的に接続されている。前記バイアス層は、前記多層膜の中の、前記フリー磁性層の磁化方向を一定方向に揃えるためのものである。従って、前記バイアス層は、前記フリー磁性層とのみ磁気的に接続されていればよい。特に、前記バイアス層が、前記固定磁性層と磁気的に接続されていなければ、前記バイアス層から発生する磁界が前記固定磁性層の磁化方向に影響を与えることを抑えることができるのでより好ましい。
【0036】
なお本発明では、前記多層膜の感度領域は、電極層が多層膜の両側にのみ形成された磁気抵抗効果素子を、ある信号が記録された微小トラック上にトラック幅方向で走査させた場合に、得られた再生出力のうち最大出力の50%以上の出力が得られた領域として定義され、また前記多層膜の不感領域は、前記感度領域の両側であって、出力が最大出力の50%以下となる領域として定義されるものである。
【0037】
また本発明では、前記多層膜の感度領域は、光学的トラック幅寸法O−Twと同じ幅寸法で形成されることが好ましい。
【0043】
さらに、前記多層膜上に延びて形成された部分の各電極層の幅寸法は、前記多層膜の不感領域の幅寸法にほぼ等しく形成されていることが好ましい。
【0060】
例えば反強磁性層、固定磁性層、非磁性導電層、及びフリー磁性層を積層して形成された多層膜の上面の幅寸法を、トラック幅Twとして設定しても、実際には、この多層膜全体が磁気抵抗効果を発揮するのではなく、その中央領域のみが再生感度に優れ、実質的にこの中央領域のみが、磁気抵抗効果を発揮し得る領域である。この再生感度に優れた多層膜の領域を感度領域と呼び、前記感度領域の両側であって、再生感度の悪い領域を不感領域と呼ぶが、多層膜に占める感度領域及び不感領域は、マイクロトラックプロファイル法によって測定される。以下、マイクロトラックプロファイル法について図31を参照しながら説明する。
【0061】
図31に示すように磁気抵抗効果を発揮する多層膜と、その両側に形成されたハードバイアス層と、このハードバイアス層上に形成された電極層とを有する、従来の磁気抵抗効果素子(図33参照)を基板上に形成する。前記電極層は、多層膜の両側にのみ形成された構造となっている。
【0062】
次に光学顕微鏡によって、電極層が覆い被さっていない多層膜の上面の幅寸法Aを測定する。この幅寸法Aは、光学的方法によって測定されたトラック幅Tw(以下、光学的トラック幅寸法O−Twという)として定義される。
【0063】
そして、記録媒体上に微小トラックで、ある信号を記録しておき、磁気抵抗効果素子を、微小トラック上でトラック幅方向に走査させて、多層膜の幅寸法Aと、再生出力との関係を測定する。あるいは、微小トラックが形成された記録媒体側を、磁気抵抗効果素子上にトラック幅方向に走査させて、多層膜の幅寸法Aと、再生出力との関係を測定してもよい。その測定結果は、図31の下側に示されている。
【0064】
この測定結果を見ると、多層膜の中央付近では、再生出力が高くなり、前記多層膜の側部付近では、再生出力は低くなることがわかる。この結果から、多層膜の中央付近では、良好に磁気抵抗効果が発揮され、再生機能に関与するが、その側部付近では、磁気抵抗効果が悪化して再生出力が低く、再生機能が低下しているといえる。
【0065】
本発明では、最大再生出力に対し50%以上の再生出力が発生する多層膜上面の幅寸法Bで形成された領域を、感度領域と定義し、最大再生出力に対し50%以下の再生出力しか発生し得ない多層膜上面の幅寸法Cを有して形成された領域を不感領域を定義した。
【0066】
この不感領域では、再生機能が有効に働かず、単に直流抵抗(DCR)を上昇させる領域でしかなかったことから、本発明では、電極層を前記不感領域上にまで延ばして形成することにより、多層膜と、前記多層膜の両側に形成されているハードバイアス層及び電極層との接合面積を大きくでき、しかも前記電極層からのセンス電流はハードバイアス層を介さず、多層膜に流れやすくなるので、直流抵抗値の低下を図り、再生特性を向上させることが可能である。
【0067】
【発明の実施の形態】
図1は、気抵抗効果素子の構造をABS面側から見た断面図である。なお、図1ではX方向に延びる素子の中央部分のみを破断して示している。
【0068】
この磁気抵抗効果素子は、スピンバルブ型薄膜素子と呼ばれるものであり、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(giant magnetoresistive)素子の一種である。このスピンバルブ型薄膜素子は、ハードディスク装置に設けられた浮上式スライダのトレーリング側端部などに設けられて、ハードディスクなどの記録磁界を検出するものである。なお、ハードディスクなどの磁気記録媒体の移動方向はZ方向であり、磁気記録媒体からの洩れ磁界の方向はY方向である。
【0069】
図1の最も下に形成されているのはTa(タンタル)などの非磁性材料で形成された下地層10である。この下地層10の上に反強磁性層11、固定磁性層12、非磁性導電層13、およびフリー磁性層14が積層されている。そして、前記フリー磁性層14の上にTa(タンタル)などの保護層15が形成されている。前記下地層10から保護層15までの各層によって、多層膜16が構成されている。図1に示すように前記多層膜16の上面の幅寸法はT30で形成されている。
【0070】
前記固定磁性層12は反強磁性層11と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、前記反強磁性層11と固定磁性層12との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、前記固定磁性層12の磁化が図示Y方向に固定される。
【0071】
記反強磁性層11がPt−Mn(白金−マンガン)合金膜により形成されている。Pt−Mn合金膜は、従来から反強磁性層として使用されているFe−Mn合金膜、Ni−Mn合金膜などに比べて耐食性に優れており、またブロッキング温度も高く、さらに交換異方性磁界(Hex)が大きいなど反強磁性材料として優れた特性を有している。
【0072】
また、前記Pt−Mn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。
【0073】
前記固定磁性層12およびフリー磁性層14は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金、Co(コバルト)、Fe−Co(鉄−コバルト)合金、Fe−Co−Ni合金などで形成されており、前記非磁性導電層13は、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電材料で形成されている。
【0074】
図1に示すように、下地層10から保護層15までの多層膜16の両側には、ハードバイアス層17,17が形成されており、このハードバイアス層17,17は例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されている。
【0075】
前記ハードバイアス層17,17は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、前記ハードバイアス層17,17からのX方向へのバイアス磁界により、前記フリー磁性層14の磁化は図示X方向に揃えられている。
【0076】
ところで図1に示すように多層膜16の中央に位置する幅寸法T2の領域は、感度領域Eであり、その両側であって、幅寸法T1の領域は、不感領域D,Dである。
【0077】
前記感度領域Eでは、固定磁性層11の磁化が、適正に図示Y方向に固定され、しかもフリー磁性層14の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層11とフリー磁性層14の磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層14の磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層12の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0078】
すなわち多層膜16の感度領域Eは、実質的に磁気抵抗効果が発揮される部分であり、この部分で良好に再生機能が働く。
【0079】
これに対し、前記感度領域Eの両側に位置する不感領域D,Dでは、固定磁性層12及びフリー磁性層14の磁化が、ハードバイアス層17からの磁化の影響を強く受け、前記フリー磁性層14の磁化は、外部磁界に対し変動しにくくなっている。すなわち不感領域Dは、磁気抵抗効果が弱く、再生機能が低下した領域である。
【0080】
本発明では、多層膜16における感度領域Eの幅寸法T2、及び不感領域D,Dの幅寸法を、上述したマイクロトラックプロファイル法(図31参照)によって測定している。
【0081】
1に示すように、多層膜16の両側であって、ハードバイアス層17上に形成される電極層18が、前記多層膜16の不感領域D上にまでT3の幅寸法で延ばされて形成されている。なお前記電極層18は、例えばCr、Au、Ta、W膜などで形成されている。また前記電極層18に覆われていない多層膜16の上面の幅寸法は、光学的方法で測定された光学的トラック幅寸法O−Tw(Optical read track width)として定義される。
【0082】
また上面が電極層18に覆われてない感度領域Eの幅寸法が、実質的に実質的にトラック幅として機能し、この幅寸法は磁気的トラック幅寸法M−Tw(Magnetic read track width)として定義される。
【0083】
図1は、光学的トラック幅寸法O−Tw、磁気的トラック幅寸法M−Tw、及び感度領域Eの幅寸法T2がすべてほぼ同じ寸法値となっている。
【0084】
これにより電極層18,18からのセンス電流が、ハードバイアス層17,17に流れにくくなり、前記ハードバイアス層17,17を介さずに、直接多層膜16に、前記センス電流を流す割合を多くでき、しかも前記電極層18を不感領域D,D上にまで延ばして形成することにより、多層膜16と、ハードバイアス層17及び電極層18との接合面積も大きくなるため直流抵抗値(DCR)を下げることができ、再生特性を向上させることが可能である。
【0085】
また、電極層18,18が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0086】
特に光学的トラック幅寸法O−Twと感度領域Eの幅寸法T2(=磁気的トラック幅寸法M−Tw)を同じ幅寸法で形成した場合にあっては、センス電流を感度領域Eに適切に流しやすくなり、再生特性の向上をより一層図ることができる。
【0087】
なお電極層18が、不感領域D上を完全に覆って形成されているが、前記電極層18は、完全に不感領域D,Dを覆っていなくてもよく、前記不感領域Dの一部が露出していてもよい。この場合、光学的トラック幅O−Twの幅は、磁気的トラック幅M−Twよりも大きくなる。ただし多層膜16上に延ばされて形成された電極層18の幅寸法T3は、具体的には、0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T3は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0088】
前記電極層18の幅寸法T3を0.08μm以上にすると、再生出力にノイズ信号が発生することが実験により確認されている。0.08μmという数値は不感領域Dの上面の最大幅寸法であり、電極層18の幅寸法T3を0.08μm以上にすれば、すなわち前記電極層18を部分的に感度領域E上にも形成することになる。
【0089】
しかしながら多層膜16上に延ばされて形成される電極層18,18は、感度領域D上にまで延ばされて形成されてはいけない。
【0090】
多層膜16の上面に延ばされて形成された電極層18からは、その先端から主にセンス電流が流れるため、上記のように、実質的に磁気抵抗効果を発揮し得る感度領域E上にまでも電極層18が形成された場合には、電極層18が覆い被さった部分の感度領域Eにセンス電流は流れにくく、折角、磁気抵抗効果を良好に発揮し得る感度領域Eの一部を殺してしまうことになり、再生出力の低下に繋がり好ましくない。また電極層18が覆い被さった部分の感度領域Eは、多少感度を有するために、磁気的トラック幅M−Twの両端で、磁気抵抗変化が生じるためノイズを発生してしまい好ましくない。
【0091】
また、前記電極層18の幅寸法T3を0.05μm以上にすると、前記電極層18は、フリー磁性層14の磁化方向が乱れている領域上を覆って磁気抵抗効果素子の再生特性を向上させることができることがマイクロマグネティックシミュレーションの結果から導かれた。
【0092】
また、前記保護層15表面15aと、前記多層膜16の不感領域上に延ばされた前記電極層18の前端面18aとがなす角度θ1が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0093】
ただし、前記表面15aと、前記前端面18aとがなす角度θ1があまり大きすぎると、保護層15及び電極層18上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層18と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面18aとがなす角度θ1は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0094】
図2に示すスピンバルブ型薄膜素子においても、下地層10、反強磁性層11、固定磁性層12、非磁性導電層13、フリー磁性層14、及び保護層15で構成される多層膜20と、その両側に形成されるハードバイアス層17,17と電極層18,18とで構成される。前記電極層18は、多層膜20上にまでT5の幅寸法で延ばされて形成されており、例えば前記多層膜20上に延ばされた電極層18は、不感領域D上を完全に覆っている。この場合、電極層18,18に覆われていない多層膜20の上面の幅寸法で決定される光学的トラック幅O−Twと、上面が前記電極層18に覆われていない部分の感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)はほぼ同じ幅寸法となる。
【0095】
あるいは前記電極層18は完全に不感領域D上を覆っていなくてもよく、多層膜20上に延ばされた電極層18の幅寸法T5は、不感領域Dよりも短く形成されてもよい。この場合、光学的トラック幅O−Twは、磁気的トラック幅M−Twよりも大きくなる。前記電極層18の幅寸法T5は、具体的には0μmより大きく0.08μmの範囲内であることが好ましい。また、前記幅寸法T5は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。この範囲内であれば、良好に直流抵抗を低減させることが可能であり、また再生出力にノイズが発生しないようにすることができる。
【0096】
層膜20の上面の幅寸法が、図1に示す多層膜16の幅寸法T30よりも大きな幅寸法T31で形成されている。そして図1に示す多層膜16に比べて実質的に磁気抵抗効果を発揮し得る感度領域Eの幅寸法が大きくなっている。図2に示す感度領域Eの幅寸法は、例えば図1に示す多層膜16の上面の幅寸法T30とほぼ同じ程度の幅寸法で形成される。
【0097】
このように多層膜20の幅寸法を延ばすことにより、前記ハードバイアス層17の影響が小さく、実質的に磁気抵抗効果を発揮し得る領域である感度領域Eの幅寸法を図1の場合に比べて大きくできる。これは不感領域Dの幅寸法は、多層膜20の上面の幅寸法T31に関係なくほぼ一定の範囲内の幅寸法で形成されるからである。このため図2に示すように、多層膜20の幅寸法を任意に設定することにより、感度領域Eの幅寸法、すなわち磁気的トラック幅寸法M−Twの幅を任意に設定することが可能である。
【0098】
さらに詳述すると、図1に示すように、磁気抵抗効果素子の多層膜16の上面の幅寸法がT30で形成されても、実質的に磁気抵抗効果を発揮し得る部分は、感度領域Eの幅寸法T2でしかない。図2は、前記感度領域Eの幅寸法を図1に示す感度領域Eの幅寸法T2に比べ長く延ばすことを主目的としたものであり、そのために多層膜20の上面の幅寸法をT31に延ばしたのである。
【0099】
また、前記保護層15の表面15aと、前記多層膜20の不感領域上に延ばされた前記電極層18の前端面18aとがなす角度θ2が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0100】
ただし、前記表面15aと、前記前端面18aとがなす角度θ2があまり大きすぎると、保護層15及び電極層18上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層18と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面18aとがなす角度θ2は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0101】
図3に示すスピンバルブ型薄膜素子の多層膜21は、図2に示すスピンバルブ型薄膜素子の多層膜20の積層の順番を逆にしたものである。つまり、図3では、下地層10の上にフリー磁性層14、非磁性導電層13、固定磁性層12、及び反強磁性層11が連続して積層されている。
【0102】
3に示す多層膜21のフリー磁性層14は、反強磁性層11よりも下方に形成されているために、ハードバイアス層17,17の膜厚の厚い部分と隣接しており、従って前記フリー磁性層14の磁化は容易にX方向に揃えられる。これにより、バルクハウゼンノイズの発生を低減させることができる。
【0103】
また、図3では、前記多層膜21と前記ハードバイアス層17,17との磁気的接続面Mの上縁部の媒体走行方向(図示Z方向)の高さ位置が、前記フリー磁性層14の上面の媒体走行方向の高さ位置と等しくなっている。
【0104】
前記ハードバイアス層17,17は、前記フリー磁性層14とのみ磁気的に接続されていればよい。特に、図3では、前記ハードバイアス層17,17が、前記固定磁性層12と磁気的に接続されないので、前記ハードバイアス層17,17から発生する磁界が前記固定磁性層12の磁化方向に影響を与えることを抑えることができる。
【0105】
そして多層膜21の上面の幅寸法は、図1に示す実施例の多層膜16の上面の幅寸法T30よりも延ばされて形成されており、感度領域Eの幅寸法が、図1に示す感度領域Eの幅寸法T2に比べて長くなっている。
【0106】
また図3に示すように、前記多層膜21の両側に形成されている電極層18,18は、前記多層膜21上に幅寸法T7で延ばされて、多層膜21の不感領域D上が、前記電極層18によって覆われた状態になっている。前記電極層18の幅寸法T7は、0μmより大きく0.08μmの範囲内であることが好ましい。また、前記幅寸法T7は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0107】
層膜21上に形成される電極層18は、完全に不感領域Dを覆わない状態で形成されている。すなわち図3では、前記電極層18,18に覆われていない多層膜21上面の幅寸法で決定される光学的トラック幅寸法O−Twが、上面が電極層18,18に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twよりも長く形成されている。なおこの実施例においても、多層膜20上で電極層18が不感領域D上を完全に覆い、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されていてもよい。
【0108】
また、前記保護層15の表面15aと、前記多層膜21の不感領域上に延ばされた前記電極層18の前端面18aとがなす角度θ3が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0109】
ただし、前記表面15aと、前記前端面18aとがなす角度θ3があまり大きすぎると、保護層15及び電極層18上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層18と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面18aとがなす角度θ3は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0110】
図4は、他の磁気抵抗効果素子の構造をABS面から見た断面図である。
【0111】
図4に示すスピンバルブ型薄膜素子は、下地層10の上に形成される反強磁性層30が、図示X方向に長く形成され、X方向の中心では前記反強磁性層30が高さ寸法d1だけ突出して形成されている。そしてこの突出した反強磁性層30上に、固定磁性層31、非磁性導電層32、フリー磁性層33、及び保護層15が形成され、下地層10から保護層15までの積層体が多層膜35として構成されている。
【0112】
強磁性層30がPt−Mn(白金−マンガン)合金膜により形成されている。あるいは前記Pt−Mn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。
【0113】
前記固定磁性層31およびフリー磁性層33は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金、Co(コバルト)、Fe−Co(鉄−コバルト)合金、Fe−Co−Ni合金などで形成されており、前記非磁性導電層32は、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電材料で形成されている。
【0114】
そして図4に示すように、図示X方向に延ばされて形成された反強磁性層30の幅寸法T8上から、固定磁性層31、非磁性導電層32、及びフリー磁性層33の側面にかけて、Crなどで形成された緩衝膜及び配向膜となる金属膜36が形成されており、この金属膜36の形成によって、後述するハードバイアス層37から発生するバイアス磁界を増大させることができる。
【0115】
さらに前記金属膜36の上には、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されたハードバイアス層37が形成されている。
【0116】
前記ハードバイアス層37は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、前記ハードバイアス層37からのX方向へのバイアス磁界により、前記フリー磁性層33の磁化は図示X方向に揃えられている。
【0117】
図4では、前記反強磁性層30が前記ハードバイアス層37,37の下層にまで延びているので、前記ハードバイアス層37,37の膜厚を薄くできる。従って、前記ハードバイアス層37,37をスパッタ法などによって形成することが容易になる。
【0118】
また前記ハードバイアス層37,37上には、Taなどの非磁性材料で形成された中間層38,38が形成され、この中間層38,38の上に、Cr、Au、Ta、Wなどで形成された電極層39,39が形成されている。
【0119】
記多層膜35の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図4に示すように、幅寸法T9の多層膜35の領域が感度領域Eであり、幅寸法T10の領域が不感領域Dである。
【0120】
前記感度領域Eでは、固定磁性層31の磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層33の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層31とフリー磁性層33の磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層33の磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層31の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0121】
そして前記多層膜35の両側に形成された電極層39,39は、前記多層膜35上にまで延ばされて形成され、前記電極層39が形成されていない多層膜35の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0122】
また上面が電極層39に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T9である。
【0123】
層膜35上に形成される電極層39が、完全に不感領域Dを覆っておらずそれよりも短いので、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きくなっている。なお多層膜35上に形成される電極層39が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されていてもよい。
【0124】
これによりハードバイアス層37を介さずに、多層膜35内に前記電極層39からのセンス電流を流す割合を多くすることができ、しかも前記電極層39を不感領域D上にまで延ばして形成することにより、多層膜34と、ハードバイアス層37及び電極層39との接合面積も大きくなるため直流抵抗値(DCR)を下げることができ、再生特性を向上させることが可能である。
【0125】
また、電極層39,39が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0126】
なお図4に示すように、多層膜35の不感領域D上に延ばされて形成された電極層39の幅寸法T11は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T11は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0127】
また、前記保護層15の表面15aと、前記多層膜35の不感領域上に延ばされた前記電極層39の前端面39aとがなす角度θ4が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0128】
ただし、前記表面15aと、前記前端面39aとがなす角度θ4があまり大きすぎると、保護層15及び電極層39上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層39と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面39aとがなす角度θ4は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0129】
図5のスピンバルブ型薄膜素子は、図4のスピンバルブ型薄膜素子とその構成自体は同じであるが、図5では、スピンバルブ型薄膜素子の多層膜40の上面の幅寸法を、図4に示すスピンバルブ型薄膜素子の多層膜35の上面の幅寸法よりも図示X方向に延ばして形成している。
【0130】
これにより図5に示す多層膜40では、感度領域Eの幅寸法が、図4に示す多層膜40の感度領域Eの幅寸法T9よりも延ばされて形成されている。
【0131】
そして前記多層膜40の両側に形成されている電極層39が多層膜40上にまで延ばされて形成されており、前記電極層39が形成されていない多層膜40の上面の幅寸法が磁気的トラック幅寸法O−Twとして定義されている。
【0132】
図5に示すように、多層膜40の上面に形成される電極層39は、不感領域D上をほぼ覆った状態になっているので、前記磁気的トラック幅寸法O−Twと、上面が前記電極層39に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。なお前記電極層39は不感領域D上を完全に覆っていなくてもよく、この場合、前記光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。なお多層膜40の不感領域D上に延ばされて形成された電極層39の幅寸法T13は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T13は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0133】
また、前記保護層15の表面15aと、前記多層膜40の不感領域上に延ばされた前記電極層39の前端面39aとがなす角度θ5が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0134】
ただし、前記表面15aと、前記前端面39aとがなす角度θ5があまり大きすぎると、保護層15及び電極層39上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層39と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面39aとがなす角度θ5は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0135】
図6は、他磁気抵抗効果素子の構造をABS面から見た断面図である。
【0136】
このスピンバルブ型薄膜素子は、フリー磁性層44を中心として、その上下に非磁性導電層43,45、固定磁性層42,46、及び反強磁性層41,47が形成された、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれるものであり、図1ないし図5に示すスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれる)よりも高い再生出力を得ることが可能である。なお最も下側に形成されている層が下地層10で、最も上側に形成されている層が保護層15であり、下地層10から保護層15までの積層体によって多層膜48が構成されている。
【0137】
強磁性層41,47がPt−Mn(白金−マンガン)合金膜により形成されている。あるいは前記Pt−Mn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。
【0138】
前記固定磁性層42,46およびフリー磁性層44は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金、Co(コバルト)、Fe−Co(鉄−コバルト)合金、Fe−Co−Ni合金などで形成されており、前記非磁性導電層43,45は、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電材料で形成されている。
【0139】
図6に示すように、多層膜48の両側には、ハードバイアス層49,49が形成されており、このハードバイアス層49,49は例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されている。
【0140】
前記ハードバイアス層49,49は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、前記ハードバイアス層49,49からのX方向へのバイアス磁界により、前記フリー磁性層44の磁化は図示X方向に揃えられている。
【0141】
記多層膜48の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定しているが、図6に示すように多層膜48の中央に位置する幅寸法T15の領域は、感度領域Eであり、その両側であって、幅寸法T14の領域は、不感領域Dである。
【0142】
前記感度領域Eでは、固定磁性層42,46の磁化が、適正に図示Y方向に固定され、しかもフリー磁性層44の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層42,46とフリー磁性層44の磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層44の磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層42,46の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0143】
6に示すように、多層膜48の両側であって、ハードバイアス層49,49上に非磁性材料製の中間層50,50を介して形成される電極層51,51が、前記多層膜48の不感領域D上にまで延ばされて形成されている。なお前記電極層51,51は、例えばCr、Au、Ta、W膜などで形成されている。
【0144】
前記電極層51,51に覆われていない多層膜48の上面の幅寸法が光学的トラック幅寸法O−Twとして定義されており、上面が前記電極層51に覆われていない感度領域Eの幅寸法T15が、磁気的トラック幅寸法M−Twとして定義されている。えば前記多層膜48上に延ばされた電極層51は、不感領域D上を完全に覆っている。この場合、光学的トラック幅O−Twと、磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)はほぼ同じ幅寸法となる。
【0145】
あるいは前記電極層51は完全に不感領域D上を覆っていなくてもよく、多層膜48上に延ばされた電極層51の幅寸法T5は、不感領域Dよりも短く形成されてもよい。この場合、光学的トラック幅O−Twは、磁気的トラック幅M−Twよりも大きくなる。
【0146】
これにより前記電極層51からのセンス電流はハードバイアス層49を介さず、直接、多層膜48に流れやすくなり、しかも前記電極層51,51を不感領域D上にまで延ばして形成することにより、多層膜48と、ハードバイアス層49及び電極層51との接合面積も大きくなるため直流抵抗値(DCR)を下げることができ、再生特性を向上させることが可能である。
【0147】
また、電極層51,51が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0148】
図6に示すように、多層膜48の不感領域D上に延ばされて形成された電極層51の幅寸法T16は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T16は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0149】
また、前記保護層15の表面15aと、前記多層膜48の不感領域上に延ばされた前記電極層51の前端面51aとがなす角度θ6が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0150】
ただし、前記表面15aと、前記前端面51aとがなす角度θ6があまり大きすぎると、保護層15及び電極層51上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層51と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面51aとがなす角度θ6は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0151】
図7に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子は、図6に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子の構成と同じであるが、図7に示す多層膜60の幅寸法は、図6に示す多層膜48の幅寸法よりも図示X方向に長く形成されている。
【0152】
図7に示すように、前記多層膜60は、図6に示す多層膜48に比べ図示X方向に延ばされて形成されており、これにより前記多層膜60における感度領域Eの幅寸法は、前記多層膜48の感度領域Eの幅寸法よりも大きくなっている。
【0153】
前記多層膜60の両側に形成されている電極層51は、前記多層膜60上にまで延ばされて形成されており、前記多層膜60のうち不感領域D上が、前記電極層51によって覆われている。
【0154】
なお、前記多層膜60の不感領域D上に延ばされて形成された電極層51の幅寸法T18は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T18は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。 また、前記保護層15の表面15aと、前記多層膜60の不感領域上に延ばされた前記電極層51の前端面51aとがなす角度θ7が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0155】
ただし、前記表面15aと、前記前端面51aとがなす角度θ7があまり大きすぎると、保護層15及び電極層51上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層51と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面51aとがなす角度θ7は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0156】
図8は、他磁気抵抗効果素子をABS面側から見た断面図である。
【0157】
図8に示す磁気抵抗効果素子は、AMR(amisotropic magnetoresisitive)素子と呼ばれるものであり、下から軟磁性層(SAL層)52、非磁性層(SHUNT層)53、磁気抵抗層54(MR層)54及び保護層55の順に積層され、この積層体が多層膜61である。この多層膜61の両側には、ハードバイアス層56,56が形成されている。前記軟磁性層52には、NiFeNb合金膜、非磁性層53にはTa膜、磁気抵抗層54にはNiFe合金膜、ハードバイアス層56にはCoPt合金膜が、一般的に使用される。
【0158】
記多層膜61の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、前記多層膜61の中央に位置する幅寸法T19の領域が感度領域Eであり、その両側に位置する幅寸法T20の領域が不感領域Dである。
【0159】
多層膜61の両側に形成されているハードバイアス層56,56の上には、非磁性材料製の中間層57,57が形成され、この中間層57,57の上には、Cr、Au、Ta、Wなどで形成された電極層58,58が形成されている。
【0160】
図8に示すように前記電極層58,58は、多層膜61の上面にも延ばされて形成されており、前記多層膜61の上に電極層58が形成されていない前記多層膜61の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twであり、上面が電極層58で覆われていない感度領域Eの幅寸法で磁気的トラック幅寸法M−Twが決定される。例えば前記多層膜61上に延ばされた電極層58は、不感領域D上を完全に覆っている。この場合、光学的トラック幅O−Twと、磁気的トラック幅寸法M−Twはほぼ同じ幅寸法となる。
【0161】
あるいは前記電極層58は完全に不感領域D上を覆っていなくてもよく、多層膜61上に延ばされた電極層58の幅寸法T21は、不感領域Dよりも短く形成されてもよい。この場合、光学的トラック幅O−Twは、磁気的トラック幅M−Twよりも大きくなる。
【0162】
これにより前記電極層51からのセンス電流はハードバイアス層49を介さず、直接、多層膜48に流れやすくなり、しかも前記電極層58,58を不感領域D上にまで延ばして形成することにより、多層膜61と、ハードバイアス層56及び電極層58との接合面積も大きくなるため直流抵抗値(DCR)を下げることができ、再生特性を向上させることが可能である。
【0163】
また、電極層58が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0164】
なお、前記多層膜61の不感領域D上に延ばされて形成された電極層58の幅寸法T21は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T21は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0165】
このAMR素子では、ハードバイアス層56が図示X方向に磁化されており、このハードバイアス層56により磁気抵抗層54にX方向のバイアス磁界が与えられる。さらに軟磁性層52から磁気抵抗層54に図示Y方向のバイアス磁界が与えられる。磁気抵抗層54にX方向とY方向のバイアス磁界が与えられることにより、磁気抵抗層54の磁界変化に対する磁化変化が直線性を有する状態に設定される。
【0166】
電極層58からのセンス電流は、感度領域Eの磁気抵抗層54に直接与えられる。記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、磁気抵抗層54の磁化方向が変化することにより、抵抗値が変化し、これが電圧変化として検出される。
【0167】
また、前記保護層55の表面55aと、前記多層膜61の不感領域上に延ばされた前記電極層58の前端面58aとがなす角度θ8が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0168】
ただし、前記表面55aと、前記前端面58aとがなす角度θ8があまり大きすぎると、保護層55及び電極層58上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層58と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面55aと、前記前端面58aとがなす角度θ8は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0169】
図9に示すAMR素子は、図8に示すAMR素子の構成と同じであるが、図9に示す多層膜62の幅寸法は、図8に示す多層膜61の幅寸法よりも図示X方向に長く形成されている。よって図9に示す多層膜62の感度領域Eの幅寸法は、図8に示す多層膜61の感度領域Eの幅寸法に比べて大きく形成されている。
【0170】
前記多層膜62の両側に形成されている電極層58は、前記多層膜62上にまで延ばされて形成されており、前記多層膜62のうち不感領域D上が、前記電極層58によって覆われている。
【0171】
なお、前記多層膜62の不感領域D上に延ばされて形成された電極層58の幅寸法T23は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T23は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0172】
また、前記保護層55の表面55aと、前記多層膜62の不感領域上に延ばされた前記電極層58の前端面58aとがなす角度θ9が20度以上、より好ましくは25度以上、また、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0173】
図10は、他磁気抵抗効果素子の構造をABS面から見た断面図である。
【0174】
図10に示すスピンバルブ型薄膜素子は、下地層10の上に形成される反強磁性層70が、図示X方向に長く形成され、X方向の中心では前記反強磁性層70が突出して形成されている。そしてこの突出した反強磁性層70上に、固定磁性層71、非磁性導電層72、第1フリー磁性層73、非磁性材料層74、第2フリー磁性層75及び保護層15が形成され、下地層10から保護層15までの積層体が多層膜200として構成されている。
【0175】
前記固定磁性層71は、前記反強磁性層70と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、前記固定磁性層71と前記反強磁性層70との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、前記固定磁性層71の磁化方向が図示Y方向に固定される。
【0176】
記反強磁性層70がPt−Mn(白金−マンガン)合金膜により形成されている。あるいは前記Pt−Mn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。
【0177】
前記固定磁性層71および第1フリー磁性層73及び第2フリー磁性層75は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金、Co(コバルト)、Fe−Co(鉄−コバルト)合金、Fe−Co−Ni合金などで形成されている。
【0178】
前記非磁性導電層72は、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電材料で形成されている。
【0179】
そして図10に示すように、図示X方向に延ばされて形成された前記反強磁性層70の幅寸法T40上から、固定磁性層71、非磁性導電層72、第1フリー磁性層73、非磁性材料層74、及び第2フリー磁性層75の側面にかけて、Crなどで形成された緩衝膜及び配向膜となる金属膜76,76が形成されており、この金属膜76,76の形成によって、後述するハードバイアス層77,77から発生するバイアス磁界を増大させることができる。
【0180】
さらに前記金属膜76,76の上には、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されたハードバイアス層77,77が形成されている。
【0181】
また前記ハードバイアス層77,77上には、Taなどの非磁性材料で形成された中間層78,78が形成され、この中間層78,78の上に、Cr、Au、Ta、Wなどで形成された電極層79,79が形成されている。
【0182】
図10では、前記反強磁性層70が前記ハードバイアス層77,77の下層にまで延びているので、前記ハードバイアス層77,77の膜厚を薄くできる。従って、前記ハードバイアス層77,77をスパッタ法などによって形成することが容易になる。
【0183】
なお、前記第1フリー磁性層73及び前記第2フリー磁性層75は、それぞれの磁気モーメントが異なるように形成されている。磁気モーメントは、飽和磁化(Ms)と膜厚(t)の積で表される。従って、例えば、前記第1フリー磁性層73及び前記第2フリー磁性層75を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、前記第1フリー磁性層73及び前記第2フリー磁性層75の磁気モーメントを異ならせることができる。
【0184】
さらに、前記第1フリー磁性層73と前記第2フリー磁性層75の間の非磁性材料層74は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている。
【0185】
図10では、磁気モーメントが異なる前記第1フリー磁性層73と前記第2フリー磁性層75が、前記非磁性材料層74を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能する。
【0186】
前記第1フリー磁性層73と前記第2フリー磁性層75の磁化方向は180度異なる反平行のフェリ磁性状態になっている。このとき、磁気モーメントが大きい方、例えば、前記第1フリー磁性層73の磁化方向が、前記ハードバイアス層77,77から発生する磁界の方向に向き、前記第2フリー磁性層75の磁化方向が、180度反対方向に向いた状態になる。
【0187】
前記第1フリー磁性層73と前記第2フリー磁性層75の磁化方向が180度異なる反平行のフェリ磁性状態になると、フリー磁性層Fの膜厚を薄くすることと同等の効果が得られ、飽和磁化が小さくなり、フリー磁性層Fの磁化が変動しやすくなって、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。
【0188】
前記第1フリー磁性層73の磁気モーメントと前記第2フリー磁性層75の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記フリー磁性層Fの磁化方向となる。
【0189】
ただし、固定磁性層71の磁化方向との関係で出力に寄与するのは前記第1フリー磁性層73の磁化方向のみである。
【0190】
前記ハードバイアス層77,77は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、前記ハードバイアス層77,77からのX方向へのバイアス磁界により、前記フリー磁性層Fの磁化方向は図示X方向になっている。
【0191】
しかし、磁化方向が前記ハードバイアス層77,77から発生する磁界の方向に対して180度反対方向に向いている前記第2フリー磁性層75は、前記ハードバイアス層77,77と磁気的に接続している両側端部付近において磁化方向が乱れてしまう。このとき、前記第1フリー磁性層73の両側端部付近の磁化方向もつられて乱れる。
【0192】
前記フリー磁性層Fの、両側端部付近の磁化方向が乱れている領域は、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0193】
記多層膜200の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図10に示すように、幅寸法T41の多層膜200の領域が感度領域Eであり、幅寸法T42の領域が不感領域Dである。
【0194】
前記感度領域Eでは、固定磁性層71の磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層71とフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層71の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは固定磁性層71の磁化方向と第1フリー磁性層73の磁化方向の相対角であり、これが検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が与えられていない状態で直交していることが好ましい。
【0195】
そして前記多層膜200の両側に形成された電極層79,79は、前記多層膜200上にまで延ばされて形成され、前記電極層79,79が形成されていない多層膜200の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0196】
また上面が電極層79,79に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T41である。
【0197】
層膜200上に形成される電極層79,79が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0198】
ただし、多層膜200上に形成される電極層79,79が、完全に不感領域Dを覆わずにそれよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0199】
これによりハードバイアス層77,77を介さずに、多層膜200内に前記電極層79からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
【0200】
また、電極層79,79が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0201】
なお図10に示すように、多層膜200の不感領域D上に延ばされて形成された電極層79の幅寸法T43は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層79の幅寸法T43は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0202】
また、前記保護層15の表面15aと、前記多層膜200の不感領域上に延ばされた前記電極層79の前端面79aとがなす角度θ10が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0203】
ただし、前記表面15aと、前記前端面79aとがなす角度θ10があまり大きすぎると、保護層15及び電極層79上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層79と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面15aと、前記前端面79aとがなす角度θ10は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0204】
図11は、他磁気抵抗効果素子の構造をABS面から見た断面図である。
【0205】
図11に示すスピンバルブ型薄膜素子は、下地層10の上に形成される反強磁性層80が、図示X方向に長く形成され、X方向の中心では前記反強磁性層80が突出して形成されている。そしてこの突出した反強磁性層80上に、第1固定磁性層81、非磁性材料層82、第2固定磁性層83、非磁性導電層84、第1フリー磁性層85、非磁性材料層86、第2フリー磁性層87及び保護層15が形成され、下地層10から保護層15までの積層体が多層膜201として構成されている。
【0206】
強磁性層80がPt−Mn(白金−マンガン)合金膜により形成されている。あるいは前記Pt−Mn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。
【0207】
第1固定磁性層81、第2固定磁性層83、第1フリー磁性層85及び第2フリー磁性層87は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金、Co(コバルト)、Fe−Co(鉄−コバルト)合金、Fe−Co−Ni合金などで形成されている。
【0208】
前記非磁性導電層84は、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電材料で形成されている。
【0209】
そして図11に示すように、図示X方向に延ばされて形成された反強磁性層80の幅寸法T44上から、第1固定磁性層81、非磁性材料層82、第2固定磁性層83、非磁性導電層84、及び第1フリー磁性層85の側面にかけて、Crなどで形成された緩衝膜及び配向膜となる金属膜88,88が形成されており、この金属膜88,88の形成によって、後述するハードバイアス層89,89から発生するバイアス磁界を増大させることができる。
【0210】
さらに前記金属膜88,88の上には、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されたハードバイアス層89,89が形成されている。
【0211】
また前記ハードバイアス層89,89上には、Taなどの非磁性材料で形成された中間層90,90が形成され、この中間層90,90の上に、Cr、Au、Ta、Wなどで形成された電極層91,91が形成されている。
【0212】
図11では、前記反強磁性層80が前記ハードバイアス層89,89の下層にまで延びているので、前記ハードバイアス層89,89の膜厚を薄くできる。従って、前記ハードバイアス層89,89をスパッタ法などによって形成することが容易になる。
【0213】
また、図11では、磁気モーメントが異なる前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83が、前記非磁性材料層82を介して積層されたものが、一つの固定磁性層Pとして機能する。
【0214】
前記第1固定磁性層81は反強磁性層80と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、前記第1固定磁性層81と反強磁性層80との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、前記第1固定磁性層81の磁化方向が図示Y方向に固定される。前記第1固定磁性層81の磁化方向が図示Y方向に固定されると、前記非磁性材料層82を介して対向する第2固定磁性層83の磁化方向が、前記第1固定磁性層81の磁化方向と反平行の状態で固定される。
【0215】
なお、前記第1固定磁性層81の磁気モーメントと前記第2固定磁性層83の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記固定磁性層Pの磁化方向となる。
【0216】
このように、前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83の磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83とが互いに他方の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層Pの磁化方向を一定方向に安定させることができるので好ましい。
【0217】
図11では、前記第1固定磁性層81及び前記第2固定磁性層83を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの磁気モーメントを異ならせている。
【0218】
さらに、前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83の間の前記非磁性材料層82は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている。
【0219】
また、前記第1フリー磁性層85及び前記第2フリー磁性層87は、それぞれの磁気モーメントが異なるように形成されている。ここでも、前記第1フリー磁性層85及び前記第2フリー磁性層87を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、前記第1フリー磁性層85及び前記第2フリー磁性層87の磁気モーメントを異ならせている。
【0220】
さらに、非磁性材料層86は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている。
【0221】
図11では、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87が、前記非磁性材料層86を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能する。
【0222】
前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の磁化方向は、180度異なる反平行のフェリ磁性状態になっており、フリー磁性層Fの膜厚を薄くすることと同等の効果が得られ、フリー磁性層F全体の飽和磁化が小さくなって磁化が変動しやすくなり、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。
【0223】
前記第1フリー磁性層85の磁気モーメントと前記第2フリー磁性層87の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記フリー磁性層Fの磁化方向となる。ただし、出力に寄与するのは第2固定磁性層83の磁化方向と第1フリー磁性層85の磁化方向の相対角度である。
【0224】
前記ハードバイアス層89,89は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、前記ハードバイアス層89,89からのX方向へのバイアス磁界により、前記フリー磁性層Fの磁化方向は図示X方向になっている。
【0225】
しかし、フリー磁性層Fの、両側端部付近の領域は磁化方向が乱れており、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0226】
記多層膜201の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図11に示すように、幅寸法T45の多層膜201の領域が感度領域Eであり、幅寸法T46の領域が不感領域Dである。
【0227】
前記感度領域Eでは、固定磁性層Pの磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層Pとフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層Pの固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは第2固定磁性層83の磁化方向と第1フリー磁性層85の磁化方向の相対角であり、これが検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0228】
そして前記多層膜201の両側に形成された電極層91,91は、前記多層膜201上にまで延ばされて形成され、前記電極層91,91が形成されていない多層膜201の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0229】
また上面が電極層91,91に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T45である。
【0230】
層膜201上に形成される電極層91,91が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0231】
ただし、多層膜201上に形成される電極層91,91が、完全に不感領域Dを覆わずにそれよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0232】
これによりハードバイアス層89を介さずに、多層膜201内に前記電極層91,91からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
【0233】
また、電極層91,91が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0234】
なお図11に示すように、多層膜201の不感領域D上に延ばされて形成された電極層91,91の幅寸法T47は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層91,91の幅寸法T47は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0235】
また、前記保護層15を除いた多層膜201の表面、図11では第2フリー磁性層87の表面87aと、前記多層膜201の不感領域上に延ばされた前記電極層91の前端面91aとがなす角度θ11が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0236】
ただし、前記表面87aと、前記前端面91aとがなす角度θ11があまり大きすぎると、保護層15及び電極層91,91上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層91,91と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面87aと、前記前端面91aとがなす角度θ11は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0237】
また、図11では、前記多層膜201と前記ハードバイアス層89,89との磁気的接続面M,Mが、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の側面のうち、前記第1フリー磁性層85の側面とのみ重なり合っている。
【0238】
前記ハードバイアス層89,89は、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87のいずれかの磁化方向を揃えるだけでよい。いずれかのフリー磁性層の磁化方向が一定方向に揃えられると、隣接するフリー磁性層は磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となり、第1および第2フリー磁性層を合わせた合成磁気モーメントの方向が一定方向、図11の場合はトラック幅方向に揃えられる。
【0239】
前記ハードバイアス層89,89が、前記第1フリー磁性層85及び第2フリー磁性層87の双方と磁気的に接続されていると、前記第1フリー磁性層85及び第2フリー磁性層87の両側端部において磁化方向の乱れが大きくなるが、図11の構成であれば、前記両フリー磁性層の両側端部の磁化方向の乱れを抑えて、感度領域Eの幅寸法T45を大きくすることができる。
【0240】
また、図11では、前記多層膜201上の前記電極層91,91と接合していない部分に前記保護層15が形成されており、前記電極層91,91が前記保護層15を介さずに直接前記第2フリー磁性層87と接合している。
【0241】
従って、前記保護層15上に前記電極層91,91が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0242】
図12に示すスピンバルブ型薄膜素子の多層膜202は、図11に示すスピンバルブ型薄膜素子の多層膜201の積層の順番を逆にしたものである。つまり、図12では、下地層10の上に第2フリー磁性層87、非磁性材料層86、第1フリー磁性層85、非磁性導電層84、第2固定磁性層83、非磁性材料層82、第1固定磁性層81、反強磁性層80、及び保護層15が連続して積層されている。
【0243】
図12では、前記ハードバイアス層89,89は、第1固定磁性層81及び第2固定磁性層83の側面と磁気的に接続していない。従って、前記ハードバイアス層89,89によって印加される磁界によって、図示Y方向に平行な方向に揃えられている第1固定磁性層81及び第2固定磁性層83の磁化方向が変動することを抑えることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0244】
また、図12でも、磁気モーメントが異なる前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83が、前記非磁性材料層82を介して積層されたものが、一つの固定磁性層Pとして機能する。図12では、前記第1固定磁性層81及び前記第2固定磁性層83を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの磁気モーメントを異ならせている。
【0245】
図12でも、前記第1固定磁性層81は、反強磁性層80と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、前記第1固定磁性層81と反強磁性層80との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、前記第1固定磁性層81の磁化方向が図示Y方向に固定される。前記第1固定磁性層81の磁化方向が図示Y方向に固定されると、前記非磁性材料層82を介して対向する第2固定磁性層83の磁化方向が、前記第1固定磁性層81の磁化方向と反平行の状態で固定される。なお前記第1固定磁性層81の磁気モーメントと前記第2固定磁性層83の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記固定磁性層Pの磁化方向となる。
【0246】
また、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87が、前記非磁性材料層86を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能する。
【0247】
ここでも、前記第1フリー磁性層85及び前記第2フリー磁性層87を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、前記第1フリー磁性層85及び前記第2フリー磁性層87の磁気モーメントを異ならせている。
【0248】
図12のスピンバルブ型薄膜素子においても、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の磁化方向は、180度異なる反平行のフェリ磁性状態になっており、フリー磁性層Fの膜厚を薄くすることと同等の効果が得られ、フリー磁性層F全体の飽和磁化が小さくなって磁化が変動しやすくなり、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。
【0249】
前記第1フリー磁性層85の磁気モーメントと前記第2フリー磁性層87の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記フリー磁性層Fの磁化方向となる。
【0250】
前記ハードバイアス層89,89は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、前記ハードバイアス層89,89からのX方向へのバイアス磁界により、前記フリー磁性層Fの磁化方向は図示X方向になっている。
【0251】
しかし、前記フリー磁性層Fの、両側端部付近の領域は磁化方向が乱れており、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0252】
記多層膜202の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図12に示すように、幅寸法T48の多層膜202の領域が感度領域Eであり、幅寸法T49の領域が不感領域Dである。
【0253】
前記感度領域Eでは、固定磁性層Pの磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層Pとフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層Pの固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは第2固定磁性層83の磁化方向と第1フリー磁性層85の磁化方向の相対角であり、これが検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0254】
そして前記多層膜202の両側に形成された電極層91,91は、前記多層膜202上にまで延ばされて形成され、前記電極層91,91が形成されていない多層膜202の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0255】
また上面が電極層91,91に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T48である。
【0256】
層膜202上に形成される電極層91,91が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0257】
ただし、多層膜202上に形成される電極層91,91が、完全に不感領域Dを覆わずにそれよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0258】
これによりハードバイアス層89を介さずに、多層膜202内に前記電極層91,91からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
【0259】
また、電極層91,91が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0260】
なお、多層膜202の不感領域D上に延ばされて形成された電極層91の幅寸法T50は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層91の幅寸法T50は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0261】
また、前記保護層15を除いた多層膜202の表面、図12では反強磁性層80の表面80aと、前記多層膜202の不感領域上に延ばされた前記電極層91の前端面91aとがなす角度θ12が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0262】
ただし、保護層15及び電極層91上に、上部シールド層を積層したときに、電極層91と前記上部シールド層との短絡を防ぐために、前記表面80aと、前記前端面91aとがなす角度θ12は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0263】
また、図12では、前記多層膜202と前記ハードバイアス層89,89との磁気的接続面M,Mが、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の側面のうち、前記第2フリー磁性層87の側面とのみ重なり合っており、前記両フリー磁性層の両側端部の磁化方向の乱れを抑えて、感度領域Eの幅寸法T48を大きくしている。
【0264】
また、図12では、前記多層膜202上の前記電極層91,91と接合していない部分に前記保護層15が形成されており、前記電極層91,91が前記保護層15を介さずに直接前記反強磁性層80と接合している。
【0265】
従って、前記保護層15上に前記電極層91,91が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0266】
図13は、他磁気抵抗効果素子の構造をABS面から見た断面図である。
【0267】
このスピンバルブ型薄膜素子は、非磁性材料層106を中心として、その上下に第1フリー磁性層105、第2フリー磁性層107、非磁性導電層104,108、第1固定磁性層103,第3固定磁性層109、非磁性材料層102,110、第2固定磁性層101,第4固定磁性層111及び反強磁性層100,112が形成された、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれるものであり、図10ないし図13に示すスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれる)よりも高い再生出力を得ることが可能である。なお最も下側に形成されている層が下地層10で、最も上側に形成されている層が保護層15であり、下地層10から保護層15までの積層体によって多層膜203が構成されている。
【0268】
なお、図13では、下地層10の上に形成される反強磁性層100が、図示X方向に長く形成され、X方向の中心では前記反強磁性層100が突出して形成されている。
【0269】
強磁性層100,112がPt−Mn(白金−マンガン)合金膜により形成されている。あるいは前記Pt−Mn合金に代えて、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成されていてもよい。
【0270】
前記第1フリー磁性層105、前記第2フリー磁性層107、前記第1固定磁性層103、前記第2固定磁性層101、前記第3固定磁性層109、前記第4固定磁性層111は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金、Co(コバルト)、Fe−Co(鉄−コバルト)合金、Fe−Co−Ni合金などで形成されており、前記非磁性導電層104,108は、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電材料で形成されている。
【0271】
そして図13に示すように、図示X方向に延ばされて形成された反強磁性層100の幅寸法T51上から、第2固定磁性層101、非磁性材料層102、第1固定磁性層103、非磁性導電層104、第1フリー磁性層105の側面にかけて、Crなどで形成された緩衝膜及び配向膜となる金属膜113,113が形成されており、この金属膜113,113の形成によって、後述するハードバイアス層114,114から発生するバイアス磁界を増大させることができる。
【0272】
さらに前記金属膜113,113の上には、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されたハードバイアス層114,114が形成されている。
【0273】
また前記ハードバイアス層114,114上には、Taなどの非磁性材料で形成された中間層115,115が形成され、この中間層115,115の上に、Cr、Au、Ta、Wなどで形成された電極層116,116が形成されている。
【0274】
図13では、前記反強磁性層100が前記ハードバイアス層114,114の下層にまで延びているので、前記ハードバイアス層114,114の膜厚を薄くできる。従って、前記ハードバイアス層114,114をスパッタ法などによって形成することが容易になる。
【0275】
また、図13では、磁気モーメントが異なる前記第1固定磁性層103と前記第2固定磁性層101が、前記非磁性材料層102を介して積層されたものが、一つの固定磁性層P1として機能する。また、磁気モーメントが異なる前記第3固定磁性層109と前記第4固定磁性層111が、前記非磁性材料層110を介して積層されたものが、一つの固定磁性層P2として機能する。
【0276】
前記第1固定磁性層103と前記第2固定磁性層101の磁化方向は、180度異なる反平行のフェリ磁性状態になっており、前記第1固定磁性層103と前記第2固定磁性層101とが互いに他方の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層P1の磁化方向を一定方向に安定させることができる。
【0277】
図13では、前記第1固定磁性層103及び前記第2固定磁性層101を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの磁気モーメントを異ならせている。
【0278】
また、前記第3固定磁性層109と前記第4固定磁性層111の磁化方向も、180度異なる反平行のフェリ磁性状態になっており、前記第3固定磁性層109と前記第4固定磁性層111とが互いに他方の磁化方向を固定しあっている。
【0279】
なお、前記非磁性材料層102、110は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている。
【0280】
前記第2固定磁性層101及び第4固定磁性層111は、それぞれ反強磁性層100及び112と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、前記第2固定磁性層101及び反強磁性層100との界面並びに前記第4固定磁性層111及び反強磁性層112との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じる。
【0281】
前記第2固定磁性層101の磁化方向は、図示Y方向に固定される。前記第2固定磁性層101の磁化方向が図示Y方向に固定されると、前記非磁性材料層102を介して対向する第1固定磁性層103の磁化方向が、前記第2固定磁性層101の磁化方向と反平行の状態で固定される。なお前記第2固定磁性層101の磁気モーメントと前記第1固定磁性層103の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記固定磁性層P1の磁化方向となる。
【0282】
前記第2固定磁性層101の磁化方向が図示Y方向に固定されるとき、前記第4固定磁性層111の磁化方向は、図示Y方向と反平行方向に固定されることが好ましい。このとき、前記非磁性材料層110を介して対向する第3固定磁性層109の磁化方向が、前記第4固定磁性層111の磁化方向と反平行方向に、すなわち、Y方向に固定される。なお前記第4固定磁性層111の磁気モーメントと前記第3固定磁性層109の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記固定磁性層P2の磁化方向となる。
【0283】
すると、前記第1フリー磁性層105、前記非磁性材料層106、前記第2フリー磁性層107を介して対向する、前記第1固定磁性層103と前記第3固定磁性層109の磁化方向は、互いに180度異なる反平行状態になる。
【0284】
図13では、後述するように、フリー磁性層Fが前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107が、前記非磁性材料層106を介して積層されたものとして形成され、前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態になっている。
【0285】
前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107は、外部磁界の影響を受けて、フェリ磁性状態を保ったまま磁化方向を変化させる。このとき、前記第1固定磁性層103と前記第3固定磁性層109の磁化方向が、互いに180度異なる反平行状態になっていると、フリー磁性層Fより上層部分の抵抗変化率とフリー磁性層Fより下層部分の抵抗変化率が等しくなる。
【0286】
さらに、前記固定磁性層P1の磁化方向と前記固定磁性層P2の磁化方向が、反平行方向であることが好ましい。
【0287】
例えば、磁化方向が図示Y方向に固定されている前記第2固定磁性層101の磁気モーメントの大きさを前記第1固定磁性層103の磁気モーメントの大きさよりも大きくし、固定磁性層P1の磁化方向を図示Y方向にする。一方、磁化方向が図示Y方向に固定されている前記第3固定磁性層109の磁気モーメントの大きさを前記第4固定磁性層111の磁気モーメントの大きさよりも小さくし、固定磁性層P2の磁化方向を図示Y方向と反平行方向にする。
【0288】
すると、センス電流を図示X方向に流したときに発生するセンス電流磁界の方向と、固定磁性層P1の磁化方向及び固定磁性層P2の磁化方向が一致し、前記第1固定磁性層103と前記第2固定磁性層101のフェリ磁性状態、及び前記第3固定磁性層109と前記第4固定磁性層111のフェリ磁性状態が安定する。
【0289】
また、前記第1フリー磁性層105及び前記第2フリー磁性層107は、それぞれの磁気モーメントが異なるように形成されている。ここでも、前記第1フリー磁性層105及び前記第2フリー磁性層107を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、前記第1フリー磁性層105及び前記第2フリー磁性層107の磁気モーメントを異ならせている。
【0290】
さらに、非磁性材料層102,106,116は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている。
【0291】
図13では、前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107が、前記非磁性材料層106を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能する。
【0292】
前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107の磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、フリー磁性層Fの膜厚を薄くすることと同等の効果が得られ、フリー磁性層F全体の飽和磁化が小さくなって磁化が変動しやすくなり、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。
【0293】
前記第1フリー磁性層105の磁気モーメントと前記第2フリー磁性層107の磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記フリー磁性層Fの磁化方向となる。
【0294】
前記ハードバイアス層114,114は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、前記ハードバイアス層114,114からのX方向へのバイアス磁界により、前記フリー磁性層Fの磁化方向は図示X方向になっている。
【0295】
しかし、前記第1フリー磁性層105及び前記第2フリー磁性層107の、両側端部付近の領域は磁化方向が乱れており、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0296】
記多層膜203の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定しているが、図13に示すように多層膜203の中央に位置する幅寸法T52の領域は、感度領域Eであり、その両側であって、幅寸法T53の領域は、不感領域Dである。
【0297】
前記感度領域Eでは、固定磁性層P1、P2の磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層P1、P2とフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層P1、P2の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは第1固定磁性層103の磁化方向と第1フリー磁性層105の磁化方向の相対角、及び第3固定磁性層109の磁化方向と第2フリー磁性層107の磁化方向の相対角であり、これらの相対角が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0298】
13に示すように、多層膜203の両側であって、ハードバイアス層114,114上に非磁性材料製の中間層115,115を介して形成される電極層116,116が、前記多層膜203の不感領域D上にまで延ばされて形成されている。なお前記電極層116,116は、例えばCr、Au、Ta、W膜などで形成されている。
【0299】
前記電極層116,116に覆われていない多層膜203の上面の幅寸法が光学的トラック幅寸法O−Twとして定義されており、上面が前記電極層116,116に覆われていない感度領域Eの幅寸法T52が、磁気的トラック幅寸法M−Twとして定義されている。えば前記多層膜203上に延ばされた電極層116,116は、不感領域D上を完全に覆っている。この場合、光学的トラック幅O−Twと、磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)はほぼ同じ幅寸法となる。
【0300】
あるいは前記電極層116,116は完全に不感領域D上を覆っていなくてもよく、多層膜203上に延ばされた電極層116,116の幅寸法T54は、不感領域Dよりも短く形成されてもよい。この場合、光学的トラック幅O−Twは、磁気的トラック幅M−Twよりも大きくなる。
【0301】
これにより前記電極層116,116からのセンス電流はハードバイアス層114,114を介さず、直接、多層膜203に流れやすくなり、しかも前記電極層116,116を不感領域D上にまで延ばして形成することにより、多層膜203と電極層116,116との接合面積も大きくなるため直流抵抗値(DCR)を下げることができ、再生特性を向上させることが可能である。
【0302】
また、電極層116,116が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0303】
図13に示すように、多層膜203の不感領域D上に延ばされて形成された電極層116の幅寸法T54は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T54は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0304】
また、前記保護層15を除いた多層膜203の表面、図13では反強磁性層112の表面112aと、前記多層膜203の不感領域上に延ばされた前記電極層116の前端面116aとがなす角度θ13が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0305】
ただし、保護層15及び電極層116,116上に、上部シールド層を積層したときに、電極層116,116と前記上部シールド層との短絡を防ぐために、前記表面112aと、前記前端面116aとがなす角度θ13は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0306】
また、図13では、前記多層膜203と前記ハードバイアス層114,114との磁気的接続面M,Mが、前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107の側面のうち、前記第1フリー磁性層105の側面とのみ重なり合っており、前記両フリー磁性層の両側端部の磁化方向の乱れを抑えて、感度領域Eの幅寸法T52を大きくしている。
【0307】
また、図13では、前記多層膜203上の前記電極層116,116と接合していない部分に前記保護層15が形成されており、前記電極層116,116が前記保護層15を介さずに直接前記反強磁性層112と接合している。
【0308】
従って、前記保護層15上に前記電極層116,116が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0309】
図14は、他磁気抵抗効果素子をABS面側から見た断面図である。
【0310】
図14に示す磁気抵抗効果素子は、AMR(amisotropic magnetoresisitive)素子と呼ばれるものであり、素子の膜構成は図8に示されたAMR素子と同じである。
【0311】
記多層膜61の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、前記多層膜61の中央に位置する幅寸法T19の領域が感度領域Eであり、その両側に位置する幅寸法T20の領域が不感領域Dである。
【0312】
図14のAMR素子は、図8のAMR素子と、前記多層膜61上の前記電極層120,120と接合していない部分に前記保護層55が形成されており、前記電極層120,120が前記保護層55を介さずに直接前記磁気抵抗層54と接合している点でのみ異なっている。
【0313】
従って、前記保護層55上に前記電極層120,120が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0314】
図14に示すように前記電極層120,120は、多層膜61の上面にも延ばされて形成されており、前記多層膜61の上に電極層58が形成されていない前記多層膜61の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twであり、上面が電極層120で覆われていない感度領域Eの幅寸法で磁気的トラック幅寸法M−Twが決定される。えば前記多層膜61上に延ばされた電極層120は、不感領域D上を完全に覆っている。この場合、光学的トラック幅O−Twと、磁気的トラック幅寸法M−Twはほぼ同じ幅寸法となる。
【0315】
あるいは前記電極層120は完全に不感領域D上を覆っていなくてもよく、多層膜61上に延ばされた電極層120の幅寸法T55は、不感領域Dよりも短く形成されてもよい。この場合、光学的トラック幅O−Twは、磁気的トラック幅M−Twよりも大きくなる。
【0316】
なお、前記多層膜61の不感領域D上に延ばされて形成された電極層120の幅寸法T55は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、前記幅寸法T55は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0317】
また、前記磁気抵抗層の表面54aと、前記多層膜61の不感領域上に延ばされた前記電極層120の前端面120aとがなす角度θ14が20度以上、より好ましくは25度以上であると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0318】
ただし、前記表面54aと、前記前端面120aとがなす角度θ14があまり大きすぎると、保護層55及び電極層120,120上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層120,120と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面54aと、前記前端面120aとがなす角度θ14は、60度以下より好ましくは45度以下であることが好ましい。
【0319】
このAMR素子では、ハードバイアス層56,56が図示X方向に磁化されており、このハードバイアス層56,56により磁気抵抗層54にX方向のバイアス磁界が与えられる。さらに軟磁性層52から磁気抵抗層54に図示Y方向のバイアス磁界が与えられる。磁気抵抗層54にX方向とY方向のバイアス磁界が与えられることにより、磁気抵抗層54の磁界変化に対する磁化変化が直線性を有する状態に設定される。
【0320】
電極層120,120からのセンス電流は、感度領域Eの磁気抵抗層54に直接与えられる。記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、磁気抵抗層54の磁化方向が変化することにより、抵抗値が変化し、これが電圧変化として検出される。
【0321】
なお、後述する磁気抵抗効果素子の製造方法を用いることにより、図1から図14に示された磁気抵抗効果素子は、ハードバイアス層の多層膜と接する面付近は膜厚が薄く形成され、ハードバイアス層の上面が、多層膜付近で、図示下方方向に傾斜あるいは湾曲する。
【0322】
図33に示された従来の磁気抵抗効果素子のように、ハードバイアス層の上面が、多層膜付近で図示上方方向に突出していると、この突出部において、漏れ磁界やループ磁界が発生しフリー磁性層の磁化方向が安定しにくくなっていた。
【0323】
図1から図14のように、ハードバイアス層の上面が、多層膜付近で、図示下方方向に傾斜あるいは湾曲していると、漏れ磁界やループ磁界の発生を防ぐことができ、フリー磁性層の磁化方向を安定させることができる。
【0324】
次に図1から図14に示された磁気抵抗効果素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0325】
まず図15に示すように、基板160上に、磁気抵抗効果素子の多層膜161を成膜する。なおこの多層膜161は、図1、図2、図3、図4、図5、図10、図11、及び図12に示すシングルスピンバルブ型薄膜素子の多層膜、図6、図7、及び図13に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子の多層膜、あるいは図8、図9、及び図14に示すAMR素子の多層膜のいずれであってもよい。
【0326】
また図4、図5、図10、図11、及び図13に示す磁気抵抗効果素子のように、反強磁性層30、70、80、100を図示X方向に長く形成するには、図15に示す多層膜161の側面をエッチングで削り取る段階で、反強磁性層30、70、80、100の側面を削り取らず残るようにエッチングレート及びエッチング時間を制御すればよい。
【0327】
なお前記多層膜161を、シングルスピンバルブ型薄膜素子あるいはデュアルスピンバルブ型薄膜素子の多層膜で形成する場合、前記多層膜161を構成する反強磁性層を、PtMn合金により形成することが好ましく、またはX―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成してもよい。前記反強磁性層を上述した材質で形成する場合、固定磁性層との界面で交換結合磁界を発生させるには熱処理を施す必要がある。
【0328】
そして予め、図31に示すように、多層膜の両側にのみハードバイアス層と電極層が形成された従来型(例えば図33参照)の磁気抵抗効果素子を用い、この磁気抵抗効果素子の多層膜の上面の幅寸法Aを光学顕微鏡にて測定する。次に、前記磁気抵抗効果素子を、ある信号が記録された微小トラック上でトラック幅方向にて走査させ、再生出力を検出し、この再生出力のうち、最大出力の50%以上の再生出力を発する上面の幅寸法がBの領域を感度領域Eと、最大出力の50%以下の再生出力を発する上面の幅寸法がCの領域を不感領域Dと定義する。
【0329】
この測定結果に基づき、マイクロトラックプロファイル法によって予めわかっている不感領域Dの幅寸法Cを考慮しながら、多層膜161上にリフトオフ用のレジスト層162を形成する。図15に示すように、前記レジスト層162には、その下面に切り込み部162a,162aが形成されているが、この切り込み部162a,162aは、多層膜161のうち、不感領域D上に形成されるようにし、多層膜161のうち感度領域Eの上は、前記レジスト層162によって完全に覆われた状態にしておく。
【0330】
次に図16に示す工程では、エッチングにより多層膜161の両側を削り込む。
【0331】
なお、図11から図14に示された磁気抵抗効果素子を製造する場合には、前記多層膜161の最上層に保護層を形成しておき、この保護層上にレジスト層162を積層する。さらに、前記レジスト層162の切り込み部162a,162aの下になる前記保護層の部分、すなわち、前記保護層と前記レジスト層162とが直接接合していない保護層の部分を斜め方向から入射するイオンミリングによって除去して、前記保護層の下層を露出させておく。
【0332】
さらに図17に示す工程では、前記多層膜161の両側にハードバイアス層163,163を成膜する。のハードバイアス層163,163の成膜及び次の工程で行われる電極層165の成膜の際に使用されるスパッタ法は、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、あるいはコリメーションスパッタ法のいずれか1種以上であることが好ましい。
【0333】
図17に示すように多層膜161の形成された基板160を、ハードバイアス層163,163の組成で形成されたターゲット164に対し垂直方向に置き、これにより例えばイオンビームスパッタ法を用いることで、前記多層膜161に対し垂直方向からハードバイアス層163,163を成膜することができるから、多層膜161上に形成されたレジスト層162の切り込み部162a,162a内に、ハードバイアス層163,163が入り込んで形成されることがない。また、ハードバイアス層163,163の多層膜161と接する面付近は、レジスト層162の両端部によって覆われているので、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、ハードバイアス層163,163の多層膜161と接する面付近は膜厚が薄く形成され、ハードバイアス層163,163の上面は、多層膜161付近で、図示下方方向に傾斜あるいは湾曲している。なお図17に示すように、レジスト層162上にも前記ハードバイアス層163,163と同じ組成の層163aが形成される。
【0334】
なお、図17の工程において、前記多層膜161と前記バイアス層163,163との磁気的接続面の上縁部及び/又は下縁部の媒体走行方向(図示Z方向)の高さ位置が、前記フリー磁性層又は前記磁気抵抗効果層の上面及び/又は下面の媒体走行方向の高さ位置と等しくなるように、ハードバイアス層163、163を形成することが好ましい。
【0335】
前記ハードバイアス層163,163は、前記フリー磁性層又は前記磁気抵抗効果層とのみ磁気的に接続されていればよい。特に、前記ハードバイアス層163,163が、前記固定磁性層と磁気的に接続されていなければ、前記バイアス層から発生する磁界が前記固定磁性層の磁化方向に影響を与えることを抑えることができる。
【0336】
さらに、前記多層膜161が、図10から図13に示された薄膜素子の多層膜のように、前記フリー磁性層が、磁気モーメントが異なる複数の軟磁性薄膜が非磁性材料層を介して積層されたものであるときには、前記多層膜161と前記ハードバイアス層163,163との磁気的接続面が前記フリー磁性層を構成する複数の軟磁性薄膜の側面のうち、一つの軟磁性薄膜の側面とのみ重なり合うように、前記ハードバイアス層163,163を形成することが好ましい。
【0337】
前記多層膜161と前記ハードバイアス層163,163との磁気的接続面が前記フリー磁性層を構成する複数の軟磁性薄膜の側面のうち、一つの軟磁性薄膜の側面とのみ重なりあっていると、前記軟磁性薄膜の両端部において磁化方向が乱れることを防ぐことができる。
【0338】
次に図18に示す工程では、前記多層膜161に対し斜め方向から前記ハードバイアス層163,163上に電極層165,165を成膜し、この際、前記電極層165,165を、多層膜161上に設けられた前記レジスト層162の下面に形成された切り込み部162a,162a内にまで成膜する。
【0339】
例えば図18に示すように、多層膜161が形成された基板160に対し、電極層165の組成で形成されたターゲット166を斜めに傾けて、前記ターゲット166を前記基板160上で移動させながら、イオンビームスパッタ法により前記電極層165,165をハードバイアス層163,163上に成膜する。このとき、斜め方向からスパッタされる電極層165,165は、ハードバイアス層163,163上のみならず、多層膜161の上に形成されたレジスト層162の切り込み部162a,162a内にも侵入し成膜される。すなわち、前記切り込み部162a,162a内に成膜された電極層165,165は、多層膜161の不感領域D上を覆う位置に成膜される。
【0340】
なお図18では、基板160を固定し、ターゲット166側を前記基板160に対し斜め方向に移動させているが、ターゲット166を固定して基板160側を、前記ターゲット166に対し斜め方向に移動させてもよい。また図18に示すように、レジスト層162の上に形成された層163a上には、電極層165,165と同じ組成の層165aが成膜される。
【0341】
なお、前記多層膜161の最上層に形成された前記保護層の前記レジスト層162とが直接接合していない部分を除去して、前記保護層の下層を露出させておいた場合には、図11から図14に示される磁気抵抗効果素子のように、前記電極層165,165は前記保護層の下層のフリー磁性層、反強磁性層、または磁気抵抗効果層と直接接合するように形成される。
【0342】
そして図19に示す工程では、図18に示すレジスト層162を、レジスト剥離液を用いながらリフトオフによって除去し、これによって多層膜161のうち不感領域D上にまで電極層165,165が成膜された磁気抵抗効果素子が完成する。
【0343】
なお、前記電極層165,165を成膜する工程において、前記多層膜表面161aと、前記電極層の前記切り込み部162a内に入り込んで形成される前端面165bとがなす角度θを20度以上、より好ましくは25度以上に形成すると、センス電流が分流して不感領域に流れ込み、ノイズを発生させることを抑えることができる。
【0344】
しかし、図15から図19に示された製造方法では、前記表面161aと前記前端面165bとがなす角度θを大きく形成することが困難である。また、前記表面161aと前記前端面165bとがなす角度θがあまり大きすぎると、多層膜161及び電極層165,165上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、電極層165,165と前記上部シールド層との短絡が生じ易くなる。従って、前記表面161aと前記前端面165bとがなす角度θは、60度以下より好ましくは45度以下に形成することが好ましい。
【0345】
図20は、他磁気抵抗効果素子をABS面側から見た断面図である。
【0346】
図20の磁気抵抗効果素子は、図10に示された磁気抵抗効果素子と同じ構成の多層膜200上に、Al23などからなる絶縁層131が積層され、前記絶縁層131の両側面部に、電極層130,130の前端面130a,130aが接しているものである。
【0347】
前記多層膜200の膜構成および材料は、全て図10に示された磁気抵抗効果素子と同一である。
【0348】
また、図示X方向に延ばされて形成された反強磁性層70の幅寸法T56上に積層された金属膜76,76、ハードバイアス層77,77、中間層78,78の膜構成及び材料も図10の磁気抵抗効果素子と同一である。
【0349】
すなわち図20の磁気抵抗効果素子は、磁気モーメントが異なる前記第1フリー磁性層73と前記第2フリー磁性層75の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態になっており、また、前記第1フリー磁性層73と前記第2フリー磁性層75が、前記非磁性材料層74を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能している。
【0350】
前記フリー磁性層Fの、両側端部付近の磁化方向が乱れている領域は、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0351】
記多層膜200の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図20に示すように、幅寸法T57の多層膜200の領域が感度領域Eであり、幅寸法T58の領域が不感領域Dである。
【0352】
前記感度領域Eでは、固定磁性層Pの磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層Pとフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層Pの固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは固定磁性層71の磁化方向と第1フリー磁性層73の磁化方向の相対角であり、この相対角が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加されていない状態で直交していることが好ましい。すなわち、電気抵抗値の変化は非磁性導電層72を介して隣接するフリー磁性層と固定磁性層の磁化方向の相対角によって決定される。
【0353】
そして前記多層膜200の両側に形成された電極層130,130は、前記多層膜200上にまで延ばされて形成され、前記電極層130,130が形成されていない多層膜200の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0354】
また上面が電極層130,130に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T57である。
【0355】
層膜200上に形成される電極層130が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0356】
ただし、多層膜200上に形成される電極層130,130が、完全に不感領域Dを覆わずにそれよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラッ幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0357】
これによりハードバイアス層77を介さずに、多層膜200内に前記電極層130,130からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
また、電極層130,130が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0358】
また、電極層130,130が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0359】
図20の磁気抵抗効果素子を、後述する製造方法を用いて形成すると、前記多層膜200の不感領域上に延ばされた前記電極層130の前記絶縁層131の両側面部に接している前端面130aと、前記保護層15の表面15aとがなす角度θ20を60度以上、さらには、90度以上にすることができる。したがって、電極層130の先端部まで、常に一定量のセンス電流を流すことができる。つまり、センス電流が分流して不感領域に流れ込みノイズを発生させることを、図10に示された磁気抵抗効果素子よりも効果的に、抑えることができる。
【0360】
また、図1から図14に示された磁気抵抗効果素子のように、電極層の先端部が先細り形状になっているものを、図15から図19に示された製造方法によって形成すると、電極層の不感領域上に延ばされた部分の幅寸法を一定にして形成することが難しく、電極層の先端が感度領域上にまで延びてしまう磁気抵抗効果素子が形成されてしまう可能性もあった。
【0361】
電極層の先端部が感度領域上にまで延びると、センス電流が流れる領域の幅寸法が前記感度領域の幅寸法よりも短くなり、磁気抵抗効果素子が実際に磁界を検出できる領域が狭くなる。
【0362】
一方、図20の磁気抵抗効果素子では、後述する製造方法を用いることにより、前記絶縁層131の前記多層膜200上での位置を正確に設定することができるので、前記電極層130が不感領域を越えて延びてしまうことを防ぐことができる。
【0363】
なお図20に示すように、多層膜200の不感領域D上に延ばされて形成された電極層130の幅寸法T59は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層130の幅寸法T59は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0364】
なお、図20の磁気抵抗効果素子を後述する製造方法を用いて形成することにより、図20の磁気抵抗効果素子の前記多層膜200の側面と前記絶縁層131の側面は平行になっている。
【0365】
図21は、発明における磁気抵抗効果素子をABS面側から見た断面図である。
【0366】
図21の磁気抵抗効果素子は、図11に示された磁気抵抗効果素子と同じ構成の多層膜201上に、Al23などからなる絶縁層133が積層され、前記絶縁層133の両側面部に、電極層132,132の前端面132a,132aが接しているものである。
【0367】
前記多層膜201の膜構成および材料は、全て図11に示された磁気抵抗効果素子と同一である。
【0368】
また、図示X方向に延ばされて形成された反強磁性層80の幅寸法T60上に積層された金属膜88,88、ハードバイアス層89,89、中間層90,90の膜構成及び材料も図11の磁気抵抗効果素子と同一である。
【0369】
また、前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83の磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83とが互いに他方の磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層Pの磁化方向を一定方向に安定させている。
【0370】
また、図21の磁気抵抗効果素子は、磁気モーメントが異なる前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態になっており、また、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層8が、前記非磁性材料層86を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能している。
【0371】
前記フリー磁性層Fの、両側端部付近の磁化方向が乱れている領域は、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0372】
この実施例においても、前記多層膜201の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図21に示すように、幅寸法T61の多層膜201の領域が感度領域Eであり、幅寸法T62の領域が不感領域Dである。
【0373】
前記感度領域Eでは、固定磁性層Pの磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層Pとフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層Pの固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0374】
そして前記多層膜201の両側に形成された電極層132,132は、前記多層膜201上にまで延ばされて形成され、前記電極層132,132が形成されていない多層膜201の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0375】
また上面が電極層132,132に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T61である。
【0376】
この実施例では、多層膜201上に形成される電極層132,132が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0377】
ただし、多層膜201上に形成される電極層132,132が、完全に不感領域Dを覆わずにそれよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0378】
これにより本発明では、ハードバイアス層89,89を介さずに、多層膜201内に前記電極層132,132からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
【0379】
また、電極層132,132が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0380】
また、図21では、前記多層膜201上の前記電極層132,132と接合していない部分に前記保護層15が形成され、前記保護層15上に前記絶縁層133が形成されている。前記電極層132,132は、前記保護層15を介さずに直接前記第2フリー磁性層87と接合している。
【0381】
従って、前記保護層15上に前記電極層132,132が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0382】
図21の磁気抵抗効果素子を、後述する製造方法を用いて形成すると、前記多層膜201の不感領域上に延ばされた前記電極層132の前記絶縁層133の両側面部に接している前端面132aと、前記第2フリー磁性層87の表面87aとがなす角度θ20を60度以上、さらには、90度以上にすることができる。したがって、電極層132の先端部まで、常に一定量のセンス電流を流すことができる。つまり、センス電流が分流して不感領域に流れ込みノイズを発生させることを、図11に示された磁気抵抗効果素子よりも効果的に、抑えることができる。
【0383】
図21の磁気抵抗効果素子では、後述する製造方法を用いることにより、前記絶縁層133の前記多層膜201上での位置を正確に設定することができるので、前記電極層132,132が不感領域を越えて延びてしまうことを防ぐことができ、磁気抵抗効果素子が実際に磁界を検出できる領域が狭くなることを防ぐことができる。
【0384】
なお図21に示すように、多層膜201の不感領域D上に延ばされて形成された電極層132の幅寸法T63は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層132の幅寸法T63は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0385】
また、図21では、前記多層膜201と前記ハードバイアス層89,89との磁気的接続面M,Mが、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の側面のうち、前記第1フリー磁性層85の側面とのみ重なり合っている。
【0386】
なお、図21の磁気抵抗効果素子を後述する製造方法を用いて形成することにより、図2の磁気抵抗効果素子の前記多層膜201の側面と前記絶縁層133の側面は平行になっている。
【0387】
図22は、他磁気抵抗効果素子をABS面側から見た断面図である。
【0388】
図22の磁気抵抗効果素子は、図12に示された磁気抵抗効果素子と同じ構成の多層膜202上に、Al23などからなる絶縁層135が積層され、前記絶縁層135の両側面部に、電極層134,134の前端面134a,134aが接しているものである。
【0389】
前記多層膜202の膜構成および材料は、図12に示された磁気抵抗効果素子と同一である。ただし、図22では、多層膜202の最上層に保護層15が形成されていない。
【0390】
また、下地膜10上に積層された金属膜88,88、ハードバイアス層89,89、中間層90,90の膜構成及び材料も図12の磁気抵抗効果素子と同一である。
【0391】
また、前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83の磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、前記第1固定磁性層81と前記第2固定磁性層83とが互いに他方の磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層Pの磁化方向を一定方向に安定させている。
【0392】
また、図21の磁気抵抗効果素子は、磁気モーメントが異なる前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態になっており、また、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層8が、前記非磁性材料層86を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能している。
【0393】
前記フリー磁性層Fの、両側端部付近の磁化方向が乱れている領域は、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0394】
記多層膜202の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図22に示すように、幅寸法T64の多層膜202の領域が感度領域Eであり、幅寸法T65の領域が不感領域Dである。
【0395】
前記感度領域Eでは、固定磁性層Pの磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層Pとフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層Pの固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0396】
そして前記多層膜202の両側に形成された電極層134,134は、前記多層膜202上にまで延ばされて形成され、前記電極層134,134が形成されていない多層膜202の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0397】
また上面が電極層134,134に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T64である。
【0398】
層膜202上に形成される電極層134,134が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0399】
ただし、多層膜202上に形成される電極層134,134が、完全に不感領域Dを覆わずにそれよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0400】
これによりハードバイアス層89,89を介さずに、多層膜202内に前記電極層134,134からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
【0401】
また、電極層134,134が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0402】
また、図22では、前記多層膜202の最上層に前記保護層15は形成されず、前記反強磁性層80上に直接前記絶縁層133が形成され、この前記絶縁層133が酸化防止用の保護層の役割も果たしている。また、前記電極層134,134は、直接前記反強磁性層80と接合している。
【0403】
従って、前記保護層15上に前記電極層134,134が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0404】
図22の磁気抵抗効果素子を、後述する製造方法を用いて形成すると、前記多層膜202の不感領域上に延ばされた前記電極層134の前記絶縁層135の両側面部に接している前端面134aと、前記反強磁性層80の表面80aとがなす角度θ22を60度以上、さらには、90度以上にすることができる。したがって、電極層134の先端部まで、常に一定量のセンス電流を流すことができる。つまり、センス電流が分流して不感領域に流れ込みノイズを発生させることを、図12に示された磁気抵抗効果素子よりも効果的に、抑えることができる。
【0405】
また、図22の磁気抵抗効果素子では、後述する製造方法を用いることにより、前記絶縁層135の前記多層膜202上での位置を正確に設定することができるので、前記電極層134が不感領域を越えて延びてしまうことを防ぐことができ、磁気抵抗効果素子が実際に磁界を検出できる領域が狭くなることを防ぐことができる。
【0406】
なお図22に示すように、多層膜202の不感領域D上に延ばされて形成された電極層134の幅寸法T66は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層134の幅寸法T66は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0407】
また、図22では、前記多層膜202と前記ハードバイアス層89,89との磁気的接続面M,Mが、前記第1フリー磁性層85と前記第2フリー磁性層87の側面のうち、前記第2フリー磁性層87の側面とのみ重なり合っている。
【0408】
なお、図22の磁気抵抗効果素子を後述する製造方法を用いて形成することにより、図22の磁気抵抗効果素子の前記多層膜202の側面と前記絶縁層135の側面は平行になっている。
【0409】
図23は、他磁気抵抗効果素子をABS面側から見た断面図である。
【0410】
図23の磁気抵抗効果素子は、図13に示された磁気抵抗効果素子と同じ構成の多層膜203上に、Al23などからなる絶縁層137が積層され、前記絶縁層137の両側面部に、電極層136,136の前端面136a,136aが接しているものである。
【0411】
前記多層膜203の膜構成および材料は、図13に示された磁気抵抗効果素子と同一である。ただし、図23では、多層膜の最上層に保護層15が形成されていない。
【0412】
また、図示X方向に延ばされて形成された反強磁性層100の幅寸法T67上に積層された金属膜113,113、ハードバイアス層114,114、中間層115,115の膜構成及び材料も図13の磁気抵抗効果素子と同一である。
【0413】
また、前記第1固定磁性層103と前記第2固定磁性層101の磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、前記第1固定磁性層103と前記第2固定磁性層101とが互いに他方の磁化方向を固定しあい、全体として固定磁性層P1の磁化方向を一定方向に安定させている。さらに、前記第3固定磁性層109と前記第4固定磁性層111の磁化方向も、反平行となるフェリ磁性状態になっている。
【0414】
また、図23の磁気抵抗効果素子は、磁気モーメントが異なる前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態になっており、また、前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107が、前記非磁性材料層106を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能している。
【0415】
前記フリー磁性層Fの、両側端部付近の磁化方向が乱れている領域は、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域となっている。
【0416】
記多層膜203の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図23に示すように、幅寸法T68の多層膜203の領域が感度領域Eであり、幅寸法T69の領域が不感領域Dである。
【0417】
前記感度領域Eでは、固定磁性層P1、P2の磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層P1、P2とフリー磁性層Fの磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、前記フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層P1、P2の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0418】
そして前記多層膜203の両側に形成された電極層136,136は、前記多層膜203上にまで延ばされて形成され、前記電極層136,136が形成されていない多層膜203の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0419】
また上面が電極層136,136に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T68である。
【0420】
層膜203上に形成される電極層136,136が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0421】
ただし、多層膜203上に形成される電極層136,136が、完全に不感領域Dを覆わずにそれよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0422】
これによりハードバイアス層114を介さずに、多層膜203内に前記電極層136,136からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
【0423】
また、電極層136,136が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0424】
また、図23では、前記多層膜203の最上層に前記保護層15は形成されず、前記反強磁性層112上に直接前記絶縁層137が形成され、この前記絶縁層137が酸化防止用の保護層の役割も果たしている。また、前記電極層136,136は、直接前記反強磁性層112と接合している。
【0425】
従って、前記保護層15上に前記電極層136,136が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0426】
図23の磁気抵抗効果素子を、後述する製造方法を用いて形成すると、前記多層膜203の不感領域上に延ばされた前記電極層136の前記絶縁層137の両側面部に接している前端面136aと、前記反強磁性層112の表面112aとがなす角度θ23を60度以上、さらには、90度以上にすることができる。したがって、電極層136の先端部まで、常に一定量のセンス電流を流すことができる。つまり、センス電流が分流して不感領域に流れ込みノイズを発生させることを、図13に示された磁気抵抗効果素子よりも効果的に、抑えることができる。
【0427】
一方、図23の磁気抵抗効果素子では、後述する製造方法を用いることにより、前記絶縁層137の前記多層膜203上での位置を正確に設定することができるので、前記電極層136,136が不感領域を越えて延びてしまうことを防ぐことができ、磁気抵抗効果素子が実際に磁界を検出できる領域が狭くなることを防ぐことができる。
【0428】
なお図23に示すように、多層膜203の不感領域D上に延ばされて形成された電極層136の幅寸法T70は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層136の幅寸法T70は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0429】
また、図23では、前記多層膜203と前記ハードバイアス層114,114との磁気的接続面M,Mが、前記第1フリー磁性層105と前記第2フリー磁性層107の側面のうち、前記第1フリー磁性層105の側面とのみ重なり合っている。
【0430】
なお、図23の磁気抵抗効果素子を後述する製造方法を用いて形成することにより、図23の磁気抵抗効果素子の前記多層膜203の側面と前記絶縁層137の側面は平行になっている。
【0431】
図24は、他磁気抵抗効果素子をABS面側から見た断面図である。
【0432】
図24の磁気抵抗効果素子は、図14に示された磁気抵抗効果素子と同じ構成の多層膜61上に、Al23などからなる絶縁層141が積層され、前記絶縁層141の両側面部に、電極層140,140の前端面140a,140aが接しているものである。
【0433】
前記多層膜61の膜構成および材料は、図14に示された磁気抵抗効果素子と同一である。ただし、図24では、多層膜の最上層に保護層55が形成されていない。
【0434】
また、ハードバイアス層56,56、中間層57,57の膜構成及び材料も図14の磁気抵抗効果素子と同一である。
【0435】
記多層膜61の感度領域Eと不感領域Dを、マイクロトラックプロファイル法によって測定し、図24に示すように、幅寸法T19の多層膜61の領域が感度領域Eであり、幅寸法T20の領域が不感領域Dである。
【0436】
そして前記多層膜61の両側に形成された電極層140,140は、前記多層膜61上にまで延ばされて形成され、前記電極層140,140が形成されていない多層膜61の上面の幅寸法が、光学的トラック幅寸法O−Twである。
【0437】
また上面が電極層140,140に覆われていない感度領域Eの幅寸法で決定される磁気的トラック幅寸法M−Twは、前記感度領域Eと同じ幅寸法T19である。
【0438】
層膜61上に形成される電極層140,140が、完全に不感領域Dを覆って、光学的トラック幅寸法O−Twと磁気的トラック幅寸法M−Tw(=感度領域Eの幅寸法)とがほぼ同じ幅寸法で形成されている。
【0439】
ただし、多層膜61上に形成される電極層140,140が、完全に不感領域Dを覆わずに、それよりも短く形成されてもよい。このとき、光学的トラック幅寸法O−Twは、磁気的トラック幅寸法M−Twよりも大きく形成される。
【0440】
これによりハードバイアス層56,56を介さずに、多層膜61内に前記電極層140,140からのセンス電流を流す割合を多くすることができる。
【0441】
また、電極層140,140が不感領域D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0442】
また、図24では、前記多層膜61の最上層に前記保護層55は形成されず、前記磁気抵抗層54上に直接前記絶縁層141が形成され、この前記絶縁層141が酸化防止用の保護層の役割も果たしている。また、前記電極層140,140は、直接前記磁気抵抗層54と接合している。
【0443】
従って、前記保護層55上に前記電極層140,140が積層される場合よりも、電気抵抗を低下させることができ、磁気抵抗効果素子の特性を向上させることができる。
【0444】
図24の磁気抵抗効果素子を、後述する製造方法を用いて形成すると、前記多層膜61の不感領域上に延ばされた前記電極層140の前記絶縁層141の両側面部に接している前端面140aと、前記磁気抵抗層54の表面54aとがなす角度θ24を60度以上、さらには、90度以上にすることができる。したがって、電極層140の先端部まで、常に一定量のセンス電流を流すことができる。つまり、センス電流が分流して不感領域に流れ込みノイズを発生させることを、図14に示された磁気抵抗効果素子よりも効果的に、抑えることができる。
【0445】
また、図24の磁気抵抗効果素子では、後述する製造方法を用いることにより、前記絶縁層141の前記多層膜61上での位置を正確に設定することができるので、前記電極層140が不感領域を越えて延びてしまうことを防ぐことができ、磁気抵抗効果素子が実際に磁界を検出できる領域が狭くなることを防ぐことができる。
【0446】
なお図24に示すように、多層膜61の不感領域D上に延ばされて形成された電極層140の幅寸法T71は、具体的には0μmより大きく0.08μm以下であることが好ましい。また、電極層140の幅寸法T71は、0.05μm以上0.08μm以下であることがより好ましい。
【0447】
このAMR素子では、ハードバイアス層56,56が図示X方向に磁化されており、このハードバイアス層56,56により磁気抵抗層54にX方向のバイアス磁界が与えられる。さらに軟磁性層52から磁気抵抗層54に図示Y方向のバイアス磁界が与えられる。磁気抵抗層54にX方向とY方向のバイアス磁界が与えられることにより、磁気抵抗層54の磁界変化に対する磁化変化が直線性を有する状態に設定される。
【0448】
電極層140,140からのセンス電流は、感度領域Eの磁気抵抗層54に直接与えられる。記録媒体の走行方向はZ方向であり、記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、磁気抵抗層54の磁化方向が変化することにより、抵抗値が変化し、これが電圧変化として検出される。
【0449】
なお、図24の磁気抵抗効果素子を後述する製造方法を用いて形成することにより、図24の磁気抵抗効果素子の前記多層膜61の側面と前記絶縁層141の側面は平行になっている。
【0450】
また、図20から図24に示された磁気抵抗効果素子は、電極層間に絶縁層が形成されているので上面がなだらかになり、前記保護層、フリー磁性層、または反強磁性層の表面と前記電極層の前端面とがなす角度が大きくなっても、前記多層膜及び前記電極層上に、軟磁性材料からなる上部シールド層を積層したときに、前記電極層と前記上部シールド層との短絡が生じにくくなる。
【0451】
次に図20から図24に示された磁気抵抗効果素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0452】
まず図25に示すように、基板150上に、磁気抵抗効果素子の多層膜151を成膜し、この多層膜151上にAl23などを用いて、絶縁層152を成膜する。なおこの多層膜151は、図20、図21、図22に示すシングルスピンバルブ型薄膜素子の多層膜、図23に示すデュアルスピンバルブ型薄膜素子の多層膜、あるいは図24に示すAMR素子の多層膜のいずれであってもよい。
【0453】
また図20、図21、図23に示すスピンバルブ型薄膜素子のように、反強磁性層70、80、または100を図示X方向に長く形成するには、図26に示す多層膜151及び絶縁層152の側面をエッチングで削り取る段階で、反強磁性層70、80、又は100の側面を削り取らず残るようにエッチングレート及びエッチング時間を制御すればよい。
【0454】
なお前記多層膜151を、シングルスピンバルブ型薄膜素子あるいはデュアルスピンバルブ型薄膜素子の多層膜で形成する場合、前記多層膜151を構成する反強磁性層を、PtMn合金により形成することが好ましく、またはX―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)で形成してもよい。前記反強磁性層を上述した材質で形成する場合、固定磁性層との界面で交換結合磁界を発生させるには熱処理を施す必要がある。
【0455】
そして予め、図31に示すように、多層膜の両側にのみハードバイアス層と電極層が形成された従来型(例えば図33参照)の磁気抵抗効果素子を用い、この磁気抵抗効果素子の多層膜の上面の幅寸法Aを光学顕微鏡にて測定する。次に、前記磁気抵抗効果素子を、ある信号が記録された微小トラック上でトラック幅方向にて走査させ、再生出力を検出し、この再生出力のうち、最大出力の50%以上の再生出力を発する上面の幅寸法がBの領域を感度領域Eと、最大出力の50%以下の再生出力を発する上面の幅寸法がCの領域を不感領域Dと定義する。
【0456】
この測定結果に基づき、マイクロトラックプロファイル法によって予めわかっている不感領域Dの幅寸法Cを考慮しながら、絶縁層152上にリフトオフ用のレジスト層153を形成する。
【0457】
図25に示すように、前記レジスト層153には、その下面に切り込み部153a,153aが形成されている。レジスト層153は、後の工程で絶縁層152をエッチングするときのマスクとなる。絶縁層152がエッチングされた後に、この絶縁層152の底面が多層膜151の感度領域E上を完全に覆うことができるように、レジスト層153を調節して積層する。切り込み部153a,153aは、多層膜151のうち主に不感領域D上に形成されるが、エッチング後にレジスト層153の側面が傾斜面となるときには、この傾斜面を考慮して切り込み部153a,153aを若干感度領域E上にまで延長してもよい。
【0458】
次に図26に示す工程では、エッチングにより多層膜151及び絶縁層152の両側を削り込む。
【0459】
次に図27に示す工程では、アルカリ溶液によってAl23からなる絶縁層152のみをエッチングすることにより、多層膜151の不感領域D上を露出させる。このとき、多層膜151を構成する各層はアルカリ溶液によって溶出しない。図27の状態では、この絶縁層152の底面が多層膜151の感度領域E上を完全に覆っている。
【0460】
アルカリ溶液によってAl23からなる絶縁層152をエッチングすると、絶縁層152の側面は前記多層膜151の側面と平行にされた状態を維持してエッチングされるので、エッチング後の絶縁層152の側面と多層膜151の側面は平行になる。
【0461】
なお、図21に示された磁気抵抗効果素子を製造する場合には、前記多層膜151の最上層に保護層を形成しておき、この保護層上に絶縁層152、レジスト層153を順次積層する。さらに、図27の工程の後で、前記レジスト層153の切り込み部153a,153aの下になり前記絶縁層152によって覆われていない前記保護層の部分を斜め方向から入射するイオンミリングによって除去して、前記保護層の下層を露出させておく。
【0462】
さらに図28に示す工程では、前記多層膜151の両側にハードバイアス層154,154を成膜する。のハードバイアス層154,154の成膜及び次の工程で行われる電極層156の成膜の際に使用されるスパッタ法は、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、あるいはコリメーションスパッタ法のいずれか1種以上であることが好ましい。
【0463】
図28に示すように多層膜151の形成された基板150を、ハードバイアス層154,154の組成で形成されたターゲット155に対し垂直方向に置き、これにより例えばイオンビームスパッタ法を用いることで、前記多層膜151に対し垂直方向からハードバイアス層154,154を成膜することができる。ハードバイアス層154,154が多層膜151と接する面付近は、レジスト層153の両端部によって覆われているので、スパッタ粒子が積層されにくい。従って、ハードバイアス層154,154の多層膜151と接する面付近は膜厚が薄く形成され、ハードバイアス層154,154の上面は、多層膜151付近で、図示下方方向に傾斜あるいは湾曲している。なお図28に示すように、レジスト層153上にも前記ハードバイアス層154と同じ組成の層154aが形成される。
【0464】
なお、図28の工程において、前記多層膜151と前記バイアス層154,154との磁気的接続面の上縁部及び/又は下縁部の媒体走行方向(図示Z方向)の高さ位置が、前記フリー磁性層又は前記磁気抵抗効果層の上面及び/又は下面の媒体走行方向の高さ位置と等しくなるように、ハードバイアス層154、154を形成することが好ましい。
【0465】
前記ハードバイアス層154,154は、前記フリー磁性層又は前記磁気抵抗効果層とのみ磁気的に接続されていればよい。特に、前記ハードバイアス層154,154が、前記固定磁性層と磁気的に接続されていなければ、前記バイアス層から発生する磁界が前記固定磁性層の磁化方向に影響を与えることを抑えることができる。
【0466】
さらに、前記多層膜151が、図20から図23に示された薄膜素子の多層膜のように、前記フリー磁性層が、磁気モーメントが異なる複数の軟磁性薄膜が非磁性材料層を介して積層されたものであるときには、前記多層膜151と前記ハードバイアス層154,154との磁気的接続面が前記フリー磁性層を構成する複数の軟磁性薄膜の側面のうち、一つの軟磁性薄膜の側面とのみ重なり合うように、前記ハードバイアス層154,154を形成することが好ましい。
【0467】
前記多層膜151と前記ハードバイアス層154,154との磁気的接続面が前記フリー磁性層を構成する複数の軟磁性薄膜の側面のうち、一つの軟磁性薄膜の側面とのみ重なりあっていると、前記軟磁性薄膜の両端部において磁化方向が乱れることを防ぐことができる。
【0468】
次に図29に示す工程では、前記多層膜151に対し斜め方向から前記ハードバイアス層154,154上に電極層156,156を成膜し、この際、前記電極層156,156を、多層膜151上に設けられた前記レジスト層153の下面に形成された切り込み部153a,153a内にまで成膜する。
【0469】
例えば図29に示すように、多層膜151が形成された基板150に対し、電極層156の組成で形成されたターゲット157を斜めに傾けて、前記ターゲット157を前記基板150上で移動させながら、イオンビームスパッタ法により前記電極層156,156をハードバイアス層154,154上に成膜する。このとき、斜め方向からスパッタされる電極層156は、ハードバイアス層154,154上のみならず、絶縁層152の上に形成されたレジスト層153の切り込み部153a内にも侵入し成膜される。
【0470】
すなわち、前記切り込み部153a,153a内に成膜された電極層156,156は、多層膜151の不感領域D上を覆う位置に成膜される。
【0471】
さらに、前記電極層156,156の前端面156bは前記絶縁層152の両側面部に接する。
【0472】
なお図29では、基板150を固定し、ターゲット157側を前記基板150に対し斜め方向に移動させているが、ターゲット157を固定して基板150側を、前記ターゲット157に対し斜め方向に移動させてもよい。また図29に示すように、レジスト層153の上に形成された層154a上には、電極層156と同じ組成の層156aが成膜される。
【0473】
なお、前記多層膜151の最上層に形成された前記保護層の下層を露出させておいた場合には、図21に示される薄膜磁気素子のように、前記電極層156,156は前記保護層の下層のフリー磁性層上に形成される。
【0474】
そして図30に示す工程では、図29に示すレジスト層153を、レジスト剥離液を用いながらリフトオフによって除去し、これによって多層膜151のうち不感領域D上にまで電極層156,156が成膜され、前記電極層156,156間に絶縁層152が形成された磁気抵抗効果素子が完成する。
【0475】
なお、前記電極層156,156を成膜する工程において、前記多層膜151の不感領域D上に延ばされた前記電極層156の前記絶縁層152の両側面部に接している前端面156bと、前記多層膜151の表面151aとがなす角度θを60度以上、さらには、90度以上にすることができる。したがって、電極層156の先端部まで、常に一定量のセンス電流を流すことができる。つまり、センス電流が分流して不感領域に流れ込みノイズを発生させることを、図1から図14に示された磁気抵抗効果素子よりも効果的に、抑えることのできる磁気抵抗効果素子を製造できる。
【0476】
また、前記絶縁層152の前記多層膜151上での位置を正確に設定することができるので、前記電極層156,156が不感領域を越えて延びてしまうことを防ぐことができ、磁気抵抗効果素子が実際に磁界を検出できる領域が狭くなることを防ぐことができる。
【0477】
【実施例】
本発明では、磁気抵抗効果素子を構成する多層膜上にまで延ばして形成された部分の各電極層の幅寸法と、直流抵抗(DCR)及びノイズ発生率との関係について測定した。
【0478】
実験に使用した磁気抵抗効果素子は、図5に示すスピンバルブ型薄膜素子であり、前記磁気抵抗効果素子を構成する多層膜の上面の幅寸法を1.4μmで形成した。
【0479】
そして、前記多層膜の両側に形成される電極層を、前記多層膜上にまで延ばして形成するが、このとき、多層膜上に延ばされて形成される電極層の幅寸法を0.00μmから0.12μmまで0.01μmずつ大きくして形成された複数の磁気抵抗効果素子を製造し、各磁気抵抗効果素子における電極層の多層膜上に延ばされた幅寸法と直流抵抗及びノイズ発生率との関係について測定した。その実験結果を図32に示す。
【0480】
図32に示すように、多層膜上に延ばされて形成された各電極層の幅寸法が長くなれば、直流抵抗値は小さくなっていくことがわかる。これは、多層膜上に電極層を形成し、その幅寸法を前記多層膜上で延ばして形成すれば、前記多層膜の側部付近に形成される不感領域D上を前記電極層で覆うことができ、前記電極層からのセンス電流を、より有効に感度領域Eに流すことができること、及び、多層膜との接合面積を大きくできることから、直接抵抗値を低減できるものと考えられる。
【0481】
特に図32に示すように、多層膜上に延ばして形成される電極層の幅寸法を0.08μm以下にすれば、多層膜上に全く電極層を形成しない場合の直流抵抗値(電極層の幅寸法=0μmの際の直流抵抗値)に比べて直流抵抗値を低減でき、且つ再生出力にノイズが発生しないことがわかる。
【0482】
ただし、前記多層膜上に形成される電極層の幅寸法をあまり長くしすぎると、再生出力にノイズが発生することがわかる。
【0483】
図32に示すように、多層膜上に延ばされて形成される電極層の幅寸法が0.08μm以上になると、ノイズの発生率が大きくなっているが、これは多層膜の縁部から0.08μmの領域までが不感領域Dであり、前記多層膜上に0.08μm以上の幅寸法の有する電極層が形成されると、この電極部が、感度領域E上にまでも形成されることになるからである。すなわち感度領域Eは有効に磁気抵抗効果を発揮し得るにも係らず、前記感度領域Eのうち、上面に電極層が形成された部分の感度領域Eは、磁気的トラック幅寸法M−Twから外れた位置に存するために、この部分で再生された出力はノイズとなって発生しまうのである。この実験結果から、多層膜上に延ばして形成される電極層は、不感領域D上までで感度領域E上にまで形成されないことが好ましいとわかる。
【0484】
以上により本発明では、多層膜上に形成される電極層の幅寸法を0μmより大きく0.08μm以下の範囲内で形成することが好ましいとした。
【0485】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、多層膜の両側に形成される電極層を、前記多層膜のうち、磁気抵抗効果が悪く実質的に再生機能を有しない、多層膜の両側付近に形成される感度領域上にまで延ばして形成することにより、電極層からのセンス電流を、ハードバイアス層を介さずに、多層膜に流しやすくなり、しかも多層膜との接合面積を大きくできるから、直流抵抗を低減でき、再生特性を向上させることができる。
【0486】
また本発明では、リフトオフ用のレジスト層を用い、イオンビームスパッタ法等によって、前記多層膜の不感領域上に確実にしかも容易に電極層を延ばして形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図2】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図3】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図4】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図5】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図6】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図7】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図8】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図9】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図10】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図11】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図12】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図13】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図14】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図15】気抵抗効果素子の製造方法を示す一工程図、
【図16】図15の工程の次に行われる一工程図、
【図17】図16の工程の次に行われる一工程図、
【図18】図17の工程の次に行われる一工程図、
【図19】図18の工程の次に行われる一工程図、
【図20】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図21】本発明実施形態の磁気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図22】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図23】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図24】気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、
【図25】気抵抗効果素子の製造方法を示す一工程図、
【図26】図25の工程の次に行われる一工程図、
【図27】図26の工程の次に行われる一工程図、
【図28】図27の工程の次に行われる一工程図、
【図29】図28の工程の次に行われる一工程図、
【図30】図29の工程の次に行われる一工程図、
【図31】磁気抵抗効果素子の多層膜に占める感度領域と不感領域Dの測定方法を示す測定図、
【図32】多層膜の上に形成された電極層の幅寸法と直流抵抗値及びノイズ発生率との関係を示すグラフ、
【図33】従来の磁気抵抗効果素子の構造を示す部分断面図、

Claims (11)

  1. 反強磁性層と、この反強磁性層上に形成され、前記反強磁性層との交換異方性磁界により磁化方向が固定される固定磁性層と、前記固定磁性層上に非磁性導電層を介して形成されたフリー磁性層とを有する多層膜と、この多層膜の両側に形成され、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃える一対のバイアス層と、このバイアス層上に形成され、固定磁性層と非磁性導電層とフリー磁性層に検出電流を与える一対の電極層とが設けられて成る磁気抵抗効果素子において、
    前記多層膜は、再生感度に優れ、実質的に磁気抵抗効果を発揮し得る中央部分の感度領域と、前記感度領域の両側に形成され、再生感度が悪く実質的に磁気抵抗効果を発揮し得ない不感領域とで構成されており、
    前記反強磁性層は、その上に形成された前記各層の両側の領域に延びており、この両側領域の反強磁性層上に、金属膜を介して一対のバイアス層及び電極層が積層され、前記電極層は、多層膜の不感領域上に、0μmより大きく0.08μmの範囲内の幅寸法で延ばされており、
    前記フリー磁性層上には、Taで形成された保護層と、前記保護層上に形成された絶縁層との積層体が形成され、前記積層体は、トラック幅方向における電極層間にのみ設けられ、
    前記積層体のトラック幅方向の両側端面は、下側から上側に向けて、徐々に前記積層体の幅寸法が狭くなる傾斜面で形成され、前記電極層の前端面は、前記傾斜面上に接して形成されていることを特徴とする磁気抵抗効果素子。
  2. 前記多層膜上に延びて形成された部分の各電極層の幅寸法は、0.05μm以上である請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
  3. 前記固定磁性層は、磁気モーメントの大きさが異なる複数の軟磁性薄膜が、非磁性材料層を介して積層され、前記非磁性材料層を介して隣接する前記軟磁性薄膜の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態である請求項1または2に記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記非磁性材料層は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている請求項3に記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 前記反強磁性層は、PtMn合金により形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
  6. 前記反強磁性層は、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ruのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成されている請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気抵抗効素子。
  7. 前記反強磁性層は、Pt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Agのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で形成されている請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
  8. 前記多層膜と前記バイアス層との磁気的接続面の上縁部及び/又は下縁部の媒体走行方向の高さ位置が、前記フリー磁性層の上面及び/又は下面の媒体走行方向の高さ位置と等しい請求項1ないし7のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
  9. 前記多層膜の感度領域は、電極層が多層膜の両側にのみ形成された磁気抵抗効果素子を、ある信号が記録された微小トラック上にトラック幅方向で走査させた場合に、得られた再生出力のうち最大出力の50%以上の出力が得られた領域として定義され、また前記多層膜の不感領域は、前記感度領域の両側であって、出力が最大出力の50%以下となる領域として定義される請求項1ないし8のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
  10. 前記多層膜の感度領域は、光学的トラック幅寸法O−Twと同じ幅寸法で形成される請求項1ないし9のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
  11. 前記多層膜上に延びて形成された部分の各電極層の幅寸法は、前記多層膜の不感領域の幅寸法に等しく形成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の磁気抵抗効果素子。
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