JP3736887B2 - プラズマエッチング用電極板 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスの製造工程において、ウエハ面のシリコン酸化膜をプラズマエッチング加工する際に用いられる電極板、特に8インチ以上の大型ウエハの処理に有効なガラス状カーボン板で構成されたプラズマエッチング用電極板に関する。
【0002】
プラズマエッチング加工は、一対の並行平面電極を設置したエッチング装置内に反応性ガス(CF4,Ar,O2等) を導入しながら電極間に高周波電力を印加して放電させ、生じたガスプラズマを用いてフォトレジストされていない部分をエッチングすることにより高精度で微細な回路パターンを形成する工程である。このプラズマエッチング加工に用いられる平面電極には、優れた導電性の他、ウエハを汚染しない高純度性ならびに容易にエッチングされない化学的安定性が必要とされており、現状ではこれらの材質要件を満たすものとしてガラス状カーボン材で形成された電極板が有用されている。
【0003】
ガラス状カーボン材は、熱硬化性樹脂を炭化して得られる巨視的に無孔組織の硬質炭素物質で、高強度、低化学反応性、ガス不透過性、自己潤滑性、堅牢性などに優れ、不純物が少ない等の特性を有しているが、特にプラズマエッチング処理中にウエハーを汚損する原因となる微細パーティクルが組織から離脱し難い利点がある。
【0004】
【従来の技術】
しかしながら、半導体集積度が増大するに伴ってプラズマエッチング用の電極材にも厳しい材質要求が課せられており、ウエハ面に付着するパーティクルレベルや消耗度合の低減化が厳しく要求されている。このため、プラズマエッチング用のガラス状カーボン電極を対象とする材質的改良の試みが数多く提案されている。
【0005】
例えば、純度、気孔率、気孔径、結晶構造などの性状を改良対象とするものとして、気孔率が0.0002〜0.0020%で結晶子がX線回析で検出されず、かつ不純物含有量が5ppm 以下のガラス状カーボン材料からなるプラズマ装置用カーボン部材(特開平3−33007 号公報)、最大気孔径1μm 以下、平均気孔径0.7μm 以下で気孔率が1%以下の組織特性を有する高純度ガラス状カーボンからなるプラズマエッチング用電極板(特開平3−119723号公報)、高純度のガラス状カーボンからなる厚さ2mm以上の板状体であり、表面および内部組織に粒界が実質的に存在せず、最大気孔径が1μm 以下のプラズマエッチング用電極板(特開平3−285086号公報)、純度特性が総灰分5ppm 以下、金属不純物2ppm 以下、総硫黄分30ppm 以下で、結晶特性が結晶面間隔(002) 0.375nm以下、結晶子(002) の大きさが1.3nm以上で、かつ材質特性が比重1.50以上、曲げ強度が1100kg/cm2以上のガラス状カーボンからなるプラズマエッチング用電極板(特開平5−320955号公報)、格子定数C0 が6.990オングストローム以下の結晶を有するガラス状炭素からなるプラズマエッチング用電極板(特開平6−128761号公報)等が提案されている。
【0006】
このほか、表面性状を対象とするものとして、プラズマにより消耗する部位の表面平滑度がRmax 6μm 以下であるガラス状炭素からなるプラズマエッチング用電極板(特開平6−128762号公報)が、またガラス状炭素の原料系を特定する技術としてはフェノール樹脂およびポリカルボジイミド樹脂を原料として製造したガラス状炭素材からなるプラズマエッチング用電極板(特開平5−347276号公報)や、ポリカルボジイミド樹脂を原料として製造したガラス状炭素材からなるプラズマエッチング用電極板(特開平5−347278号公報)等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
プラズマエッチング加工において重要な技術的要素の一つにエッチングレート(速度)があり、加工精度を高めるためにはこのエッチングレートの均一性を確保する必要がある。エッチングレートの均一化は反応部の温度、とくに電極板表面の温度分布に著しく支配され、この表面温度に変動があると均一かつ安定なエッチングレートを得ることができなくなる。このため、従来、プラズマ照射により発熱する電極板の温度を均一に保持するために電極板の裏面に金属製の冷却板を密着した積層状態で使用されている。
【0008】
プラズマエッチング電極板は、使用過程でプラズマ照射により表面から漸次消耗するが、電極材がガラス状カーボン板である場合には表面消耗の進行に伴って板面に反りが発生する。この電極板の反り量は、電極消耗が進むに従って変化し、電極板と冷却板との間の密着性が損なわれて電極板の発熱温度分布が変動する。このような現象が生じると、エッチングレートが不均一となって、精密なエッチング加工ができなくなる。
【0009】
近時、半導体デバイスの高集積度化とともに回路パターンがますます微細となり、またウエハサイズが8インチ以上、更には12インチを越えるようになっているため、エッチングレートの均一化は大型ウエハを高精度でエッチング加工する上で重要な技術的課題とされている。ところが、電極を構成するガラス状カーボンの材質面からエッチングレートの均一性を改善する試みはこれまでなされていない。
【0010】
本発明者らは、プラズマエッチング加工中にガラス状カーボン製の電極板が消耗過程で反りが発生する原因をガラス状カーボンの材質組織面から検討を加えた結果、ガラス状カーボン板の断面組織の不均一性、とくに表層部と断面中心部の黒鉛結晶度合の差が大きく影響すること、そしてこの結晶性状差を特定範囲内に抑制すると電極板の反り発生を効果的に消去することができ、常に冷却板との密着性を保持した状態で均一なエッチングレートの加工ができる事実を解明した。
【0011】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたもので、その目的とする課題は、半導体デバイスの高集積度化を優れた製品歩留りで達成するとともに、8インチを越える大型ウエハにも十分対応可能なプラズマエッチング用電極板を提供することにある。更に具体的な本発明の目的は、電極表面の温度分布を均等化させてエッチングレートの均一性を改善し、長期間に亘って安定した半導体ウエハのエッチング加工を行うことができるガラス状カーボン板からなるプラズマエッチング用電極板を提供しようとするところにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための第1の本発明によるプラズマエッチング用電極板は、黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 が、板材の表層部と断面中心部において0.01nm以内の差である、厚さが4.5mm以上のガラス状カーボン板からなることを構成上の特徴とする。
【0013】
第2の本発明によるプラズマエッチング用電極板は、結晶子の大きさLc(002)が、板材の表層部と断面中心部において1.5nm以内の差である、厚さが4.5mm以上のガラス状カーボン板からなるなることを構成上の特徴とする。
【0014】
本発明において、黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 および結晶子の大きさLc(002)は日本学術振興会第117委員会作成の「人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさの測定法」に準拠するX線回折法で測定され、板状の試片を用いて低角部のベースライン上昇を加味して直線のベースラインを引き、35〜15deg 付近の測定で得られるプロードなC(002) 回折線から算出した値とする。
【0015】
また、本発明において板状の表層部とは電極板の表面(ウエハと相対する面)または裏側の表面を指し、断面中心部とは前記表面から板厚の1/2まで片面研磨した位置の断層面を指すものとする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のプラズマエッチング用電極板は、熱硬化性樹脂を焼成炭化して得られる均一組織を有するガラス状カーボン板からなることを前提とするが、純度特性として総灰分5ppm 以下、金属不純物2ppm 以下、総硫黄分30ppm 以下の高純度材質を有し、可及的に表面平滑度の高い平面板であることが好ましい。
【0017】
上記のガラス状カーボン材において、黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 が板材の表層部と断面中心部において0.01nm以内の差であるか、もしくは結晶子の大きさLc(002)が板材の表層部と断面中心部において1.5nm以内の差であることが、本発明の重要な物性的要件となる。板材の表層部と断面中心部における黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 の差が0.01nmを越え、また結晶子の大きさLc(002)の差が1.5nmを上回ると、内外構造差が大きくなって電極板の表面消耗に伴う反りが顕著になる結果、金属冷却板との密着性が損なわれてエッチングレートの均一性が減退する。
【0018】
更に、本発明のプラズマエッチング用電極板は上記の物性的要件を満たした うえで、ガラス状カーボン板の板厚が厚いほど熱容量が大きくなって表面温度分布が均一となる。したがって、電極を構成するガラス状カーボン板は可及的に厚肉とすることが好ましく、特に4.5mm以上の場合にエッチングレートの均一化に有効に機能する。また、厚肉の電極板は大型ウエハ処理用としてハンドリング性に優れ、消耗に対する電極寿命が長くなる等の派生的効果もある。
【0019】
5mm以上の板厚を備える厚肉のガラス状カーボン板は、例えば分子量100以上、ゲル化時間5〜60分のフェノール樹脂にフランあるいはその誘導体化合物を混合して粘度1〜100ポイズ、樹脂分50重量%以上の樹脂組成物を形成し、該樹脂組成物を成形、硬化したのち非酸化性雰囲気中で焼成炭化する方法により製造することができる。通常、厚肉のガラス状カーボン板は内外構造差が大きくなる傾向を示すが、前記の製造プロセスにおいて、樹脂組成物の硬化昇温速度、最終硬化温度、焼成炭化時の昇温速度、最終焼成温度等を厳密に制御することによって本発明の物性的要件を満たすガラス状カーボン板を製造することが可能となる。
【0020】
具体的な製造工程は次のようになる。まず、精製したフェノールおよびホルマリンを原料として縮合反応させて得られた分子量100以上、ゲル化時間5〜60分のフェノール樹脂初期縮合物に、フランあるいはその誘導体化合物を混合して炭化収率が65〜75%の2成分系樹脂組成物を形成する。この際、用いるフラン誘導体化合物としては、フルフリルアルコール、フルフラール、フランカルボン酸メチルエステルなどフェノール樹脂と相溶性のあるものが単独もしくは2種以上混合して使用に供される。フェノール樹脂に対するフラン系成分の混合比率は樹脂性状に応じて適宜に設定され、粘度1〜100ポイズ、樹脂分50%以上の性状を整える。
【0021】
ついで、樹脂組成物を最終的に得られるガラス状カーボン板の肉厚が5mm以上になるように注型成形して板状に成形し、加熱硬化する。この段階の硬化成形体に組織構造上の内外差があると最終的に得られるガラス状カーボン板にも同様に炭素結晶の発達度合に内外差が発現することから、硬化の条件を厳密に制御する必要がある。一般に熱硬化性樹脂の硬化は発熱反応であって、厚肉になるほど内部蓄熱が増す関係で、表層部に比べ蓄熱度の高い内部の方が硬化が進行し易い。このような硬化の不均一性を避けるために、加熱硬化時の昇温速度を10℃/hr以下、好ましくは5℃/hr以下、更に好ましくは2℃/hr以下に調整する。ついで、加熱温度を硬化反応が終了する温度まで上昇し、十分な時間保持して完全に硬化させる。硬化温度は、樹脂の組成、硬化剤の種類、配合等によって異なるが、通常140〜200℃の温度範囲に保持される。最終硬化温度が低い場合には長時間の保持が必要であり、高温硬化温度であっても3時間以上の温度維持が好ましい。
【0022】
硬化後の樹脂成形体は、非酸化性雰囲気に保持された加熱炉に詰め、800℃以上の温度域で焼成炭化処理してガラス状カーボン板に転化する。樹脂硬化物は熱伝導率が低いので、厚肉となると焼成炭化の過程で表層部近傍に対して内部組織の分解炭化反応に遅れが生じる。このため、表層部近傍における炭化の先行に伴って内部が緊張を受けた状態で炭化が進行する結果、表層部と内部とで結晶構造に差が発生する。このような現象を緩和するためには焼成炭化の昇温速度を4℃/hr以下に設定し、緩徐に温度上昇させることにより内外層は均等な速度で炭化が進行するようになる。同時に昇温の過程で、炭化分解の激しい温度域、ガス発生の激しい温度域、炭化が終了して構造変化が起きる温度域の各段階において温度保持を行うことが内外構造差の低減化に有効である。具体的には、300〜400℃、400〜500℃および500〜600℃の各温度段階においてそれぞれ5時間以上保持する。更に、均熱処理を達成するためには、樹脂成形体を黒鉛板の間に挟んだ状態で黒鉛ルツボに詰めて焼成炭化する方法も効果がある。
【0023】
焼成炭化後は、必要に応じて炉内に塩素のようなハロゲンガスを導入しながら高温処理することによりガラス状カーボン板を高純度化する。また、電極板に設けるガス流通用の貫通小孔は、樹脂成形段階の硬化樹脂板に予め炭化時の寸法収縮率を見込んで穿設するか、焼成後の樹脂板に放電加工により穿設するかのいずれかの方法で行う。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1〜5、比較例1〜3
(1)プラズマエッチング用電極板の製造
減圧蒸留により精製したフェノールおよびホルマリンをアンモニアの存在下で縮合反応させ、分子量132、ゲル化時間14分のフェノール樹脂初期縮合物を調製した。このフェノール樹脂100重量部に対しフルフリルアルコール30重量部を添加混合して粘度40ポイズ、樹脂分55%の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をポリエチレン製のバットに流し込み、真空デシケータに入れて10Torrの減圧下で脱泡処理を行ったのち、電気オーブンに移し、表1に示す昇温速度および最終硬化条件により硬化処理を施して縦横400mm、肉厚7mmの板状成形体に成形した。
【0026】
ついで、各板状成形体の両側面を厚さ10mmの黒鉛板〔東海カーボン(株)製、G347〕で挟み付けて黒鉛ルツボに入れ、これを電気炉中に詰めて周囲を黒鉛粉で充填被包した状態で焼成炭化処理を行った。焼成炭化の条件は、表1に示すように昇温速度を1〜10℃/hrの範囲で変動させ、焼成途中の350℃、450℃および550℃の各温度段階でそれぞれ5時間保持し、最終的に所定の温度まで昇温した。更に、塩素ガスを炉内に流通させながら2200℃の温度で高純度処理を施して肉厚が6mmで表面が平滑なガラス状カーボン板を製造した。得られたガラス状カーボン板の中央部に、2mmの等間隔で直径0.5mmの貫通孔を放電加工により穿設して8インチウエハ処理用のプラズマエッチング用電極板を得た。
【0027】
各条件(表1)で得られたガラス状カーボン板の表層部および断面中心部に於ける黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 および結晶子Lc(002)を測定し、それぞれの内外差とともに表2に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
(2)電極板の性能評価
表1の物性を有するガラス状カーボン板からなる各電極板をプラズマエッチング装置にセットし、処理時間が100時間および200時間経過後における電極の消耗量、反り量、エッチングレートの均一性を測定し、その結果を表3に示した。エッチング処理は、反応ガス;トリクロロメタン、キャリアーガス;アルゴン、反応チャンバー内のガス圧;1Torr、電源周波数;13.5MHz の条件で8インチのシリコンウエハー酸化膜について行った。なお、電極の消耗量は処理後の電極板の肉厚減少量、反り量は処理後に取り外した電極板を表面を下にして定盤上に置いたときの中央部の高さと使用前の厚みの差、エッチングレートの均一性(E/R 均一性) はウエハ中心を含む9点のエッチングレートから下式により算出した。
【0031】
【表3】
【0032】
表3の結果から、実施例によるガラス状カーボン製電極板は本発明の物性要件を外れる比較例の電極板に比べて、材質の均質性により長時間処理しても電極表面の消耗に伴う反りが少なく、エンチングレートの均一性に優れていることが認められる。
【0033】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 または結晶子の大きさLc(002)が表層部と断面中心部において特定差以内にある均質組織構造のガラス状カーボン板を選択することにより、電極表面の消耗に伴う反りが少なく、大型半導体ウエハの均一なエッチングレートをもたらすプラズマエッチング用電極板を提供することが可能となる。したがって、長期間の使用に当たって常に安定したエッチング加工が保証されるうえ、電極板の耐久寿命を大幅に改善することができる。
Claims (2)
- 黒鉛六角網面層の平均格子面間隔d002 が、板材の表層部と断面中心部において0.01nm以内の差である、厚さが4.5mm以上のガラス状カーボン板からなることを特徴とするプラズマエッチング用電極板。
- 結晶子の大きさLc(002)が、板材の表層部と断面中心部において1.5nm以内の差である、厚さが4.5mm以上のガラス状カーボン板からなるなることを特徴とするプラズマエッチング用電極板。
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