JP3736823B2 - 機能性物質とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、製造工程が簡単である機能性物質とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、2色以上のパターンからなる染色物は、ゼラチン染色法、顔料分散法などで製造されている。
【0003】
ゼラチン染色法とは、次のような方法である。すなわち、ゼラチンを基板上に設け、光照射・現像により、所望のパターンを作り、これを染色する。これらの工程を必要とする色の数だけ繰り返し、目的とするパターンを形成する。
【0004】
また、顔料分散法とは、次のような方法である。すなわち、光硬化性樹脂に染色顔料を分散させてインキを用意し、これを基体上に塗布し乾燥する。そして、所望のパターンに光照射・現像する。これらの工程を必要とする色の数だけ繰り返し、目的とするパターンを形成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ゼラチン染色法の場合でも顔料分散法の場合でも、2色のパターンを得るためには1色ごとに染色したりインキを塗布したりする必要があり、製造工程が繁雑になるという問題があった。
【0006】
また、これは染色物についてのみ生じる問題ではなく、二種類の系外物質が薄膜などの内部に選択的に取り込まれているその他の機能性物質の場合においても生じると考えられる。
【0007】
したがって、本発明は、上記のような問題を解決することにあり、製造工程が簡単である機能性物質とその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の機能性物質は、以上の目的を達成するために、光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する機能性物質であって、その一部分で光照射によりアミノ基または有機酸基の一方が優先的に生成され且つこの優先的に生成された基と親和性を持つ染料が優先的に機能性物質内に取り込まれており、別の一部分で光照射によりアミノ基および有機酸基の両方が生成され且つアミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方が機能性物質内に取り込まれているように構成した。
【0009】
また、本発明の機能性物質は、光光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する機能性物質であって、その一部分で光照射によりアミノ基が優先的に生成され且つアミノ基と親和性を持つ染料が優先的に機能性物質内に取り込まれており、別の一部分で光照射により有機酸基が優先的に生成され且つ有機酸基と親和性を持つ染料が優先的に機能性物質内に取り込まれているように構成した。
【0010】
上記構成において、光照射によりアミノ基が生成する官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基を共に有する高分子物質の代わりに、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質と光照射により有機酸基が生成する官能基を有する高分子物質との混合物を用いるようにしてもよい。
【0014】
また、上記構成において、機能性物質の形態が薄膜であってもよい。
【0015】
また、上記構成において、機能性物質の形態が繊維であってもよい。
【0016】
本発明の機能性物質の製造方法は、光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する出発物質について、その一部分をアミノ基または有機酸基の一方が優先的に生成するように光照射し、別の一部分をアミノ基および有機酸基の両方が生成するように光照射して光照射後物質を得た後、アミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方を含む溶液と接触させることにより、光照射によりアミノ基または有機酸基の一方が優先的に生成された部分では優先的に生成された基と親和性を持つ染料を優先的に光照射後物質内に取り込み、光照射によりアミノ基および有機酸基の両方が生成された部分ではアミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方を光照射後物質内に取り込んで機能性物質を得るように構成した。
【0017】
また、本発明の機能性物質の製造方法は、光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する出発物質について、その一部分をアミノ基が優先的に生成するように光照射し、別の一部分を有機酸基が優先的に生成するように光照射して光照射後物質を得た後、アミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方を含む溶液と接触させることにより、光照射によりアミノ基が優先的に生成された部分ではアミノ基と親和性を持つ染料を優先的に光照射後物質内に取り込み、光照射により有機酸基が優先的に生成された部分では有機酸基と親和性を持つ染料を優先的に光照射後物質内に取り込んで機能性物質を得るように構成した。
【0018】
上記製造方法の構成において、光照射によりアミノ基が生成する官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基を共に有する高分子物質の代わりに、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質と光照射により有機酸基が生成する官能基を有する高分子物質とを混合した物を用いてもよい。
【0022】
また、上記製造方法の構成において、機能性物質の形態が薄膜であってもよい。
【0023】
また、上記製造方法の構成において、機能性物質の形態が繊維であってもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0025】
図1は本発明の機能性物質の製造方法の一実施例を示す断面図、図2および図3は本発明の機能性物質の製造方法の他の実施例を示す断面図である。
【0026】
図中、1は高分子薄膜、2は基材、3は光照射、4はフォトマスク、5はアミノ基が優先的に生成した部分、6はアミノ基および有機酸基の両方が生成した部分、7は光照射後薄膜、8はA・B染料混合染色液、9は主にA染料による染色部分、10はAおよびB染料による染色部分、11は有機酸基が優先的に生成した部分、12は主にB染料による染色部分をそれぞれ示す。
【0027】
図1に示す機能性物質の製造方法は、光照射によりアミノ基が生成する官能基(以下、「光塩基発生基」という。)と光照射により有機酸基が生成する官能基(以下、「光酸発生基」という。)を共に有する高分子物質を有効成分として含有する薄膜(以下、「高分子薄膜1」という。)を出発物質とし、その一部分をアミノ基が優先的に生成した部分5が形成されるように光照射3し(図1A,B参照)、別の一部分をアミノ基および有機酸基の両方が生成した部分6が形成されるように光照射3して光照射後物質、すなわち光照射後薄膜7を得た後(図1C,D参照)、アミノ基と親和性を持つA染料および有機酸基と親和性を持つB染料の両方を含むA・B染料混合染色液8と接触させることにより(図1E参照)、光照射によりアミノ基が優先的に生成された部分ではA染料を優先的に光照射後薄膜7内に取り込み主にA染料による染色部分9を形成し、光照射によりアミノ基および有機酸基の両方が生成された部分ではAおよびB染料を光照射後薄膜7内に取り込みAおよびB染料による染色部分10を形成するものである(図1F参照)。
【0028】
本発明は、光塩基発生基と光酸発生基の組み合わせ、各光源波長とその照射量を機能性物質を製造するパラメータとして選定することにより、アミノ基や有機酸基について目的の生成状態を作りだす。図1に示す機能性物質の製造方法についていえば、以下のようになる。つまり、高分子薄膜1中の光塩基発生基と光酸発生基については、光照射3によって光酸発生基に吸収された光エネルギーがそのまま自らの化学変換に用いられず、光塩基発生基にエネルギー移動を起こし優先的に光塩基発生基の化学変換が進むような組み合せがある。この場合、ある波長および照射量の光照射3ではアミノ基が優先的に生成され、さらに照射量が増えると有機酸基とアミノ基の両方が生成されるようになる。したがって、このような組合せの光塩基発生基と光酸発生基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する薄膜について部分的に差をつけるように照射量を選定すると、アミノ基が優先的に生成した部分5とアミノ基および有機酸基の両方が生成した部分6とを有する光照射後薄膜7が得られる。そのアミノ基と親和性を持つA染料および有機酸基と親和性を持つB染料の両方を含むA・B染料混合染色液8と光照射後薄膜7とを一度接触させるだけで、主にA染料による染色部分9とAおよびB染料による染色部分10とを有する機能性物質を得ることができるのである。
【0029】
本発明において、有機酸基とは、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、リン酸基の少なくとも1種以上が高分子物質の主鎖または側鎖に化学結合されたものを指す。
【0030】
光塩基発生基の一例としては、−COO−N=CR1R2で表されるものがある。側鎖に−COO−N=CR1R2を持つ高分子物質に対して光照射すると、脱炭酸後、主鎖ラジカルとイミノラジカルが再結合して、−N=CR1R2に変換される。この化合物は、空気中の水分により容易に加水分解し、−NH2に変換される。加水分解を酸性水溶液中で行うとアンモニオ基(−NH4 +X-(Xはハロゲン基))となる。ここで、R1はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R2はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が特に望ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が特に望ましい。R1とR2とは同じであっても異なってもよい。なお、−COO−N=CR1R2で表される光塩基発生基の場合、光照射後にそのまま放置しておくだけでも空気中の水分で加水分解が行なわれるが、光照射後に希酸や水中へ浸漬したりあるいは飽和した酸の気体や水蒸気で充たされた密閉容器内に載置したりして故意に加水分解させることもできる。
【0031】
光塩基発生基を有する高分子物質を得る方法としては、光塩基発生基を分子の一部に有するモノマーを合成し重合する方法がある。重合方法は、ラジカル重合、イオン重合、プラズマ重合、縮重合など一般的な方法が適用可能である。また、その他のモノマーと共重合することにより、強度、耐熱性、加工性をさらに向上させることができる。
【0032】
光塩基発生基を有する高分子物質を得るためのモノマーとしては、光塩基発生基を分子たとえばR3−COO−N=CR1R2がある。ここで、R3はビニル基、置換ビニル基を示す。その具体例としては、O−アクリロイルアセトフェノンオキシム、O−アクリロイルアセトナフトンオキシムなどがある。
【0033】
また、光塩基発生基を有する高分子物質を得る他の方法としては、光塩基発生基を高分子物質に化学修飾する方法がある。
【0034】
光酸発生基の一例としては、−Ar1−SO2−CH2CO−Ar2で表わされるものがある。側鎖に−Ar1−SO2−CH2CO−Ar2を持つ高分子に対して光照射すると、−SO2−CH2の結合が開裂しスルフィン酸またはスルフォン酸となる。ここでAr1はアリールまたは置換アリールを、Ar2はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。具体的には、アリール基としては、フェニル基が特に望ましい。Ar1とAr2とは同じであっても異なってもよい。
【0035】
光酸発生基を有する高分子物質を得る方法としては、光酸発生基を分子の一部に有するモノマーを合成し重合する方法がある。重合方法は、ラジカル重合、イオン重合、プラズマ重合、縮重合など一般的な方法が適用可能である。また、その他のモノマーと共重合することにより、強度、耐熱性、加工性をさらに向上させることができる。
【0036】
光酸発生基を有する高分子物質を得るためのモノマーとしては、たとえばp−フェナシルスルホニルスチレンなどがある。
【0037】
また、光酸発生基を有する高分子物質を得る他の方法としては、光酸発生基を高分子物質に化学修飾する方法がある。
【0038】
高分子薄膜1は、上記の方法でつくった高分子物質を溶剤に溶解させ、スピンコーティング法、デイップコーティング法、印刷法、スパッタリング法や真空蒸着法で形成するとよい。高分子薄膜1の厚みとしては、0.1〜50μmが好ましい。0.1μmに満たないと、染色しても色濃度が低すぎ、また、50μmを越えると、光照射時に光が表面部分だけで吸収され、高分子薄膜1内部にアミノ基や有機酸基が生成しないからである。
【0039】
また、高分子薄膜1は、ガラス、高分子、金属、セラミック、あるいはこれらの複合材などの基材2上に形成するとよい。基材2の条件としては、特に限定されず、形状が平面のものだけでなく、三次元的な凹凸を有するものであってもよい。なお、形状が平面でない場合は、光照射の方法も三次元的に行う必要がある。また、基材2の上に高分子薄膜1を形成するのではなく、基材2が高分子薄膜1を兼ねるようにするために、基材2として高分子物質からなるものを用いてもよい。
【0040】
光照射3に用いる光源は、官能基の吸収波長域などから決められ、高圧水銀灯や超高圧水銀灯、エキシマレーザーなどを用いるとよい。光照射3の雰囲気は、空気下、不活性ガス雰囲気下、減圧下のいずれか適当なものを選ぶとよい。また、光照射3を部分的に行うには、所望のパターン形状を有するフォトマスク4を介して露光すればよい。このフォトマスク4の使用には、1種類のフォトマスク4を介して部分的に露光した後にフォトマスク4無しで再び全面的に露光する場合、あるいはその逆、1種類のフォトマスク4を介して部分的に露光した後にフォトマスク4の位置をずらして別の部分を露光する場合、フォトマスク4を介して部分的に露光した後に別のフォトマスク4を介して別の部分を露光する場合などがある。また、レーザーを光源として用いる場合には、直接パターンを描画してもよい。また、光照射の際の感度不足を補うために、増感剤を高分子薄膜1に添加してもよい。
【0041】
染料の親和性については、たとえば、アミノ基には酸性染料が高く、有機酸基にはカチオン染料が高い。また、光照射後薄膜7を染色液と接触させる方法としては、図1Eに示す浸漬法のほか、噴霧法、塗布法などがある。また、染色液は、染料、溶媒からなり、必要に応じて界面活性剤やPH調整剤などの染色助剤を加える。
【0042】
なお、図1は本発明の機能性物質の製造方法の一実施例を示したもので、本発明はこれに限定されない。たとえば、高分子薄膜1中の光塩基発生基と光酸発生基については、光照射3によって光塩基発生基に吸収された光エネルギーがそのまま自らの化学変換に用いられず、光酸発生基にエネルギー移動を起こし優先的に光酸発生基の化学変換が進むような組合せがある。この場合、ある波長および照射量の光照射3では有機酸基が優先的に生成され、さらに照射量が増えると有機酸基とアミノ基の両方が生成されるようになる。したがって、このような組合せの光塩基発生基と光酸発生基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する薄膜について部分的に差をつけるように照射量を選定し、有機酸基が優先的に生成した部分11とアミノ基および有機酸基の両方が生成した部分6とを有する光照射後薄膜7を得るようにしてもよい(図2A〜D参照)。この後、アミノ基と親和性を持つA染料および有機酸基と親和性を持つB染料の両方を含むA・B染料混合染色液8と接触させることにより(図2E参照)、光照射により有機酸基が優先的に生成された部分ではB染料を優先的に光照射後薄膜7内に取り込み主にB染料による染色部分12を形成し、光照射によりアミノ基および有機酸基の両方が生成された部分ではAおよびB染料を光照射後薄膜7内に取り込みAおよびB染料による染色部分10を形成することができる(図2F参照)。
【0043】
また、光塩基発生基と光酸発生基の組み合わせ、高分子薄膜1の一部分を照射する光源波長とその照射量、別の一部分を照射する光源波長とその照射量を選定することにより、高分子薄膜1の一部分をアミノ基が優先的に生成するように光照射し、別の一部分を有機酸基が優先的に生成するように光照射してもよい。すなわち、光塩基発生基と光酸発生基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜1について、その一部分をアミノ基が優先的に生成した部分5が形成されるように光照射3し(図3A,B参照)、別の一部分を有機酸基が優先的に生成した部分11が形成されるように光照射3して光照射後薄膜7を得た後(図3C,D参照)、アミノ基と親和性を持つA染料および有機酸基と親和性を持つB染料の両方を含むA・B染料混合染色液8と接触させることにより(図3E参照)、光照射によりアミノ基が優先的に生成された部分ではA染料を優先的に光照射後薄膜7内に取り込み主にA染料による染色部分9を形成し、光照射により有機酸基が優先的に生成された部分ではB染料を優先的に光照射後薄膜7内に取り込み主にB染料による染色部分12を形成する(図3F参照)。
【0044】
また、光塩基発生基と光酸発生基を共に有する高分子物質の代わりに、光塩基発生基を有する高分子物質と光酸発生基を有する高分子物質とを混合した物を用いてもよい。
【0046】
また、機能性物質の形態は上記のような薄膜に限定されず、繊維であってもよい。たとえば、光塩基発生基と光酸発生基を共に有する高分子物質、あるいは光塩基発生基を有する高分子物質と光酸発生基を有する高分子物質とを混合した物を有効成分として含有する高分子繊維を出発物質として用いる。また、繊維状の基材2の周囲を高分子薄膜1でコートしてもよい。
【0047】
【実施例】
O−アクリロイルアセトフェノンオキシム(APPO)とフェナシルスルホニルスチレン(PSSt)、メチルメタクリレート(MMA)を脱気下ベンゼン中でラジカル重合し、再沈殿により精製することによって、平均分子量45000の高分子物質を得た。高分子中の各モノマーの比率は1H−NMRスペクトル積分比により、APPO:PSSt:MMA=25:46:29であった。この高分子物質をジエチレングレコールジメチルエーテルに溶解し、スピンコーターでガラス基板上に塗布してオーブン中にて85℃で20分乾燥し、膜厚0.22μmの高分子薄膜を得た。
【0048】
次に、空気下で高圧水銀灯によって高分子薄膜を光照射した。照射する光は、強度が254nmにおいて2.72mw/cm2、366nmにおいて4.15mw/cm2となるものであった。
【0049】
次に、水蒸気飽和密封容器に室温で10分置いた後、この基板を染色液に室温で3分間浸漬して機能性物質を得た。染色液は、C.I.Acid.Blue 40とC.I.Basic Yellow 2をそれぞれ0.11M含む混合溶媒(テトラヒドロフラン:メタノール:水=3:3:4)であった。
【0050】
図4は得られた機能性物質について各染料の最大吸収波長である441nmと631nmの吸光度を測定した結果と照射時間との関係を示したものである。この図から照射時間が10分間までの場合はC.I.Acid.Blue 40による631nmの吸収のみが大きく、照射時間が15分以上の場合はC.I.Basic Yellow 2による441nmの吸収も増えてくることがわかる。
【0051】
図4に示す特性に基づき、上記したようにガラス基板上に高分子薄膜を塗布形成した後、ストライプパターンのメタルマスクで覆い、空気下で高圧水銀灯によって高分子薄膜を部分的に10分光照射し、続いてメタルマスクをずらせて、25分高分子薄膜全体に光照射してみたところ、染色後に得られた機能性物質は、照射時間が10分であった部分は青に近く、照射時間が25分であった部分は黄色がかった緑色を呈し、二色パターンに綺麗に染色されていた。
【0052】
【発明の効果】
本発明の機能性物質とその製造方法は、以上のとおりの構成を有するので、次のような優れた効果を有する。
【0053】
すなわち、出発物質に光照射して光照射後物質を得た後、二種類の系外物質を含む溶液に一度接触させるだけで系外物質を光照射後物質内に選択的に取り込むことができるので、機能性物質の製造工程が簡単である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機能性物質の製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の機能性物質の製造方法の他の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の機能性物質の製造方法の他の実施例を示す断面図である。
【図4】機能性物質中に取り込まれた染料の最大吸収波長の吸光度と照射時間との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 高分子薄膜
2 基材
3 光照射
4 フォトマスク
5 アミノ基が優先的に生成した部分
6 アミノ基および有機酸基の両方が生成した部分
7 光照射後薄膜
8 A・B染料混合染色液
9 主にA染料による染色部分
10 AおよびB染料による染色部分
11 有機酸基が優先的に生成した部分
12 主にB染料による染色部分
Claims (10)
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する機能性物質であって、その一部分で光照射によりアミノ基または有機酸基の一方が優先的に生成され且つこの優先的に生成された基と親和性を持つ染料が優先的に機能性物質内に取り込まれており、別の一部分で光照射によりアミノ基および有機酸基の両方が生成され且つアミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方が機能性物質内に取り込まれていることを特徴とする機能性物質。
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する機能性物質であって、その一部分で光照射によりアミノ基が優先的に生成され且つアミノ基と親和性を持つ染料が優先的に機能性物質内に取り込まれており、別の一部分で光照射により有機酸基が優先的に生成され且つ有機酸基と親和性を持つ染料が優先的に機能性物質内に取り込まれていることを特徴とする機能性物質。
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基を共に有する高分子物質の代わりに、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質と光照射により有機酸基が生成する官能基を有する高分子物質との混合物を用いる請求項1または請求項2のいずれかに記載の機能性物質。
- 機能性物質の形態が、薄膜である請求項1〜3のいずれかに記載の機能性物質。
- 機能性物質の形態が、繊維である請求項1〜3のいずれかに記載の機能性物質。
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する出発物質について、その一部分をアミノ基または有機酸基の一方が優先的に生成するように光照射し、別の一部分をアミノ基および有機酸基の両方が生成するように光照射して光照射後物質を得た後、アミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方を含む溶液と接触させることにより、光照射によりアミノ基または有機酸基の一方が優先的に生成された部分では優先的に生成された基と親和性を持つ染料を優先的に光照射後物質内に取り込み、光照射によりアミノ基および有機酸基の両方が生成された部分ではアミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方を光照射後物質内に取り込んで機能性物質を得ることを特徴とする機能性物質の製造方法。
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基である−COO−N=CR 1 R 2 (R 1 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R 2 はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R 1 とR 2 とは 同じであっても異なってもよい。)で表される官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基である−Ar 1 −SO 2 −CH 2 CO−Ar 2 (Ar 1 はアリールまたは置換アリールを、Ar 2 はアリールまたは置換アリールをそれぞれ示す。Ar 1 とAr 2 とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基を共に有する高分子物質を有効成分として含有する出発物質について、その一部分をアミノ基が優先的に生成するように光照射し、別の一部分を有機酸基が優先的に生成するように光照射して光照射後物質を得た後、アミノ基と親和性を持つ染料および有機酸基と親和性を持つ染料の両方を含む溶液と接触させることにより、光照射によりアミノ基が優先的に生成された部分ではアミノ基と親和性を持つ染料を優先的に光照射後物質内に取り込み、光照射により有機酸基が優先的に生成された部分では有機酸基と親和性を持つ染料を優先的に光照射後物質内に取り込んで機能性物質を得ることを特徴とする機能性物質の製造方法。
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基と光照射により有機酸基が生成する官能基を共に有する高分子物質の代わりに、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質と光照射により有機酸基が生成する官能基を有する高分子物質とを混合した物を用いる請求項6または請求項7のいずれかに記載の機能性物質の製造方法。
- 機能性物質の形態が、薄膜である請求項6〜8のいずれかに記載の機能性物質の製造方法。
- 機能性物質の形態が、繊維である請求項6〜8のいずれかに記載の機能性物質の製造方法。
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