JP3817000B2 - パターン染色物の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜に高解像度の染色パターンが設けられたパターン染色物の製造方法に関する。本発明は、高解像度を有する一般的な単色パターン染色物のほか、特に高解像度を有する多色パターン染色物であるカラーフィルターの製造方法として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高解像度の染色パターンが設けられたパターン染色物の製造方法としては、種々の方法がある。たとえば、特開平8-35184号公報に開示されているように、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をしてアミノ基を生成させ、高分子薄膜を染色液に浸漬することにより、光照射部のみを選択的に染色する方法があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に記載された方法で製造される高分子薄膜は、染色性をあげるために即ち親水性が大きくなるように、高分子物質の組成を調整すると、光照射部の膜形状が染色後には変形しているという問題があった。たとえば、光照射部の表面にしわが発生したり、あるいは光照射部の表面が粗くなったり、極端な場合には光照射部が染色液に溶解して膜厚が減少したりした。
【0004】
したがって、本発明は、上記のような問題を解決することにあり、高解像度で光照射部の膜形状が染色後にも変形していないパターン染色物の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的を達成するために、パターン染色物の製造方法を、キノンと光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質とを有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をした後、該高分子薄膜を染色液と接触させることにより、光照射部のみを選択的に染色するように構成した。
【0006】
また、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をした後、該高分子薄膜にキノンを注入してから染色液と接触させることにより、光照射部のみを選択的に染色するように構成してもよい。
【0007】
また、上記のパターン染色物の製造方法において、光照射によりアミノ基が生成する官能基が−COO−N=CR1R2(R1はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R2はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R1とR2とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基であるように構成してもよい。
【0008】
また、上記のパターン染色物の製造方法において、高分子薄膜が基材上に形成されているように構成してもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0010】
図1は、本発明のパターン染色物の製造方法の一実施例を示す断面図である。1は高分子薄膜、2は基材、3はフォトマスク、4はアミノ基が生成した部分、5は染色部分をそれぞれ示す。
【0011】
高分子薄膜1は、キノンと、光照射によりアミノ基が生成する官能基(以下、単に「官能基」という。)を有する高分子物質とを有効成分として含有する。この高分子薄膜1に部分的な光照射をすることにより、光照射部にアミノ基を生成させる。また、光照射をすることにより、光照射部の高分子物質の主鎖間は架橋されるものと考えられる。その後、高分子薄膜1を染色液と接触させると、光照射部のみが選択的に染色される。
【0012】
官能基の一例としては、−COO−N=CR1R2で表されるものがある。側鎖に−COO−N=CR1R2を持つ高分子物質に対して光照射すると、脱炭酸後、主鎖ラジカルとイミノラジカルが再結合して、−N=CR1R2に変換される。この化合物は、空気中の水分により容易に加水分解し、−NH2に変換される。加水分解を酸性水溶液中で行うとアンモニオ基(−NH4 +X-(Xはハロゲン基))となる。ここで、R1はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R2はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が特に望ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が特に望ましい。R1とR2とは同じであっても異なってもよい。
【0013】
官能基を有する高分子物質を得る方法としては、光照射によりアミノ基が生成する官能基を分子の一部に有するモノマーを合成し重合する方法がある。重合方法は、ラジカル重合、イオン重合、プラズマ重合、縮重合など一般的な方法が適用可能である。また、その他のモノマーと共重合することにより、強度、耐熱性、加工性をさらに向上させることができる。
【0014】
官能基を有する高分子物質を得るためのモノマーとしては、たとえばR3−COO−N=CR1R2がある。ここで、R3はビニル基、置換ビニル基を示す。その具体例としては、O−アクリロイルアセトフェノンオキシム、O−アクリロイルアセトナフトンオキシムなどがある。
【0015】
また、官能基を有する高分子物質を得る他の方法としては、官能基を高分子物質に化学修飾する方法がある。
【0016】
高分子薄膜1は、スピンコーティング法、デイップコーティング法、印刷法、スパッタリング法や真空蒸着法で形成するとよい。高分子薄膜1の厚みとしては、0.1〜50μmが好ましい。0.1μmに満たないと、染色しても色濃度が低すぎ、また、50μmを越えると、光照射時に光が表面部分だけで吸収され、高分子薄膜1内部にアミノ基が生成しないからである。
【0017】
高分子薄膜1は、ガラス、高分子、金属、セラミック、あるいはこれらの複合材などの基材2上に形成してもよい。基材2の条件としては、特に限定されず、形状が平面のものだけでなく、三次元的な凹凸を有するものであってもよい。なお、形状が平面でない場合は、光照射の方法も三次元的に行う必要がある。また、基材2の上に高分子薄膜1を形成するのではなく、基材2が高分子薄膜1を兼ねるようにするために、基材2として高分子物質からなるものを用いてもよい。
【0018】
次に、高分子薄膜1に光照射することについて説明する。光照射は、高解像度のパターンを得るために、通常はフォトマスク3を介して行なう(図1A・D参照)。光源は、解像度と官能基の吸収波長域などから決められ、高圧水銀灯や超高圧水銀灯、エキシマレーザーなどを用いるとよい。光照射の雰囲気は、空気下、不活性ガス雰囲気下、減圧下のいずれか適当なものを選ぶとよい。また、光照射を部分的に行うには、所望のパターン形状を有するフォトマスク3を介して露光すればよい。レーザーを光源として用いる場合には、直接パターンを描画してもよい。また、光照射の際の感度不足を補うために、増感剤を高分子薄膜1に添加してもよい。 このように光照射することにより、高分子薄膜1中にアミノ基が生成する(図1B・E参照)。
【0019】
架橋は、キノンによってなされる。高分子薄膜1にあらかじめ含有されたキノンは、光照射により生成したアミノ基と反応し主鎖を架橋する。あるいは、アミノ基の生成過程において発生したラジカルの一部と反応し主鎖を架橋する。
【0020】
また、高分子薄膜1に部分的な光照射をして部分的にアミノ基を生成させ、次いで高分子薄膜1にキノンを注入し主鎖間を架橋してもよい。注入する方法としては、適当な溶媒にキノンを溶解した溶液と高分子薄膜1とを接触させてキノンを膜中に含浸させる方法がある。また、キノン存在下で高分子薄膜1を減圧にし気化したキノンを膜中に含浸させる方法などがある。前者では膜自身が溶解せず、キノンを溶解するような溶媒組成にする必要があり、メタノール・エタノール等のアルコール又ははこれらにテトラヒドロフラン・ベンゼン・ジメチルホルムアミド等のポリマーの良溶媒を少量添加するものが使用できる。また、後者の方法においては、加熱下において行うと更に効率がよい。
【0021】
膜中のキノンとアミノ基の反応は加熱により促進されるので、加熱処理を追加することにより架橋をさらに促進することができる。加熱処理は、高分子のガラス転移温度の程度かさらに高温にすると効率よく進行する。
【0022】
以上の工程で得られた薄膜は、光照射部がアミノ基を生成しているので親水性を有する。その結果、染色液と接触させることで光照射部のみを選択的に染色できる(図1C・F参照)。高分子薄膜1を染色液と接触させる方法としては、浸漬物法、噴霧法、塗布法などがある。染色液は、染料、溶媒からなり、必要に応じて界面活性剤やPH調整剤などの染色助剤を加える。
【0023】
このようにして、パターン染色物を得ることができる。また、上記した高分子薄膜1の光照射部のみを選択的に染色する工程を複数回繰り返すことにより、多色のパターン染色物を得ることができる(図1D〜F参照)。
【0024】
【実施例】
実施例1
O-アクリロイルアセトフェノンオキシムとメタクリル酸メチルを脱気下ベンゼン中でラジカル重合し、再沈殿により精製することによって、O-アクリロイルアセトフェノンオキシムを39mol%含む平均分子量143000の高分子物質を得た。
【0025】
この高分子物質100重量部とベンゾフェノン10重量部、1,4-ベンゾキノン20重量部をテトラヒドロフランに溶解し、ガラス基板上にキャストし、膜厚約2μmの高分子薄膜を得た。
【0026】
次に、高圧水銀灯によって高分子薄膜を部分的に光照射した。ATR法で1760cm-1のピークが消滅したことから、光照射によりアミノ基が生成する官能基がほぼ分解したことを確認した。
【0027】
この基板を1.2Nの塩酸水溶液に室温で3分浸漬して加水分解後、オーブン中で100℃で10分加熱した。
【0028】
この基板をC.I. Acid Blue 40の1.0重量%含まれたメタノール:THF:水=2:2:3(容量比)の混合溶剤中に室温で10分浸積したところ、表面が平滑で膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青く染色された。
【0029】
比較例
実施例1においてキノンを添加しない薄膜を光照射および染色すると、光照射時間が長くなるにつれて染色後の膜厚が減少し、ついには膜が完全に溶解してしまった。この膜厚と照射時間の関係を実施例1のデータとともに図2に示す。
【0030】
実施例2
実施例1で得られた高分子物質100重量部をベンゾフェノン10重量部とともにテトラヒドロフランに溶解し、ガラス基板上にキャストし、膜厚約1.4μmの高分子薄膜を得た。
【0031】
次に、実施例1と同様に光照射をした後、この基板を水の入った小容器ともに1つの密閉室に室温で10分入れて加水分解した。
【0032】
次いで、この基板を1,4-ベンゾキノンとともに1つの密閉室に入れて60℃で1日加熱をした後、取り出してオーブン中で100℃で10分追加の加熱をした。
【0033】
この基板をC.I. Acid Blue 40の1.0重量%含まれるメタノール:THF:水=2:2:3(容量比)の混合溶剤中に室温で10分浸積したところ、膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青く染色された。
【0034】
実施例3
実施例1と同様にして高分子薄膜を得た。
【0035】
次に、高圧水銀灯によって1760cm-1のピークがほぼ消滅するまで30μm幅の格子状に光照射した。
【0036】
この基板をC.I. Reactive Blue 4の1.0重量%水溶液中に60℃で10分浸積したところ、膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青に染色された。
【0037】
この基板の非露光部の一部に上記と同様にして光照射し、C.I. Acid Green 9で染色したところ、1回目に染色した青はそのまま残り、2回目に露光した部分は緑に染色された。
【0038】
実施例4
実施例1で得られた高分子物質100重量部をベンゾフェノン10重量部とともにエチルセロソルブアセテートに溶解し、ガラス基板上にスピンコートし、膜厚約0.5μmの高分子薄膜を得た。
【0039】
次に、高圧水銀灯によって1760cm-1のピークがほぼ消滅するまで高分子薄膜を部分的に光照射した。
【0040】
この基板を濃塩酸の入った小容器ともに1つの密閉室に室温で10分入れて加水分解した。
【0041】
次いで、この基板をp-ベンゾキノンとともに容器に入れ100℃で1時間加熱をした後、取り出してオーブン中で100℃で10分追加の加熱をした。
【0042】
この基板をC.I. Acid Blue 40の1.0重量%含まれたメタノール:THF:水=2:2:3(容量比)の混合溶剤中に室温で10分浸積したところ、膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青く染色された。
【0043】
【発明の効果】
本発明のパターン染色物の製造方法は、以上のとおりの構成を有するので、次のような優れた効果を有する。
【0044】
すなわち、高分子薄膜中にキノンを含有させることにより、光照射部の膜形状が染色後にも変形していないパターン染色物を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパターン染色物の製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図2】キノンのある場合とない場合の照射時間と膜厚の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 高分子薄膜
2 基材
3 フォトマスク
4 アミノ基が生成した部分
5 染色部分
【発明の属する技術の分野】
本発明は、高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜に高解像度の染色パターンが設けられたパターン染色物の製造方法に関する。本発明は、高解像度を有する一般的な単色パターン染色物のほか、特に高解像度を有する多色パターン染色物であるカラーフィルターの製造方法として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、高解像度の染色パターンが設けられたパターン染色物の製造方法としては、種々の方法がある。たとえば、特開平8-35184号公報に開示されているように、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をしてアミノ基を生成させ、高分子薄膜を染色液に浸漬することにより、光照射部のみを選択的に染色する方法があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に記載された方法で製造される高分子薄膜は、染色性をあげるために即ち親水性が大きくなるように、高分子物質の組成を調整すると、光照射部の膜形状が染色後には変形しているという問題があった。たとえば、光照射部の表面にしわが発生したり、あるいは光照射部の表面が粗くなったり、極端な場合には光照射部が染色液に溶解して膜厚が減少したりした。
【0004】
したがって、本発明は、上記のような問題を解決することにあり、高解像度で光照射部の膜形状が染色後にも変形していないパターン染色物の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的を達成するために、パターン染色物の製造方法を、キノンと光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質とを有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をした後、該高分子薄膜を染色液と接触させることにより、光照射部のみを選択的に染色するように構成した。
【0006】
また、光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をした後、該高分子薄膜にキノンを注入してから染色液と接触させることにより、光照射部のみを選択的に染色するように構成してもよい。
【0007】
また、上記のパターン染色物の製造方法において、光照射によりアミノ基が生成する官能基が−COO−N=CR1R2(R1はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R2はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R1とR2とは同じであっても異なってもよい。)で表される官能基であるように構成してもよい。
【0008】
また、上記のパターン染色物の製造方法において、高分子薄膜が基材上に形成されているように構成してもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0010】
図1は、本発明のパターン染色物の製造方法の一実施例を示す断面図である。1は高分子薄膜、2は基材、3はフォトマスク、4はアミノ基が生成した部分、5は染色部分をそれぞれ示す。
【0011】
高分子薄膜1は、キノンと、光照射によりアミノ基が生成する官能基(以下、単に「官能基」という。)を有する高分子物質とを有効成分として含有する。この高分子薄膜1に部分的な光照射をすることにより、光照射部にアミノ基を生成させる。また、光照射をすることにより、光照射部の高分子物質の主鎖間は架橋されるものと考えられる。その後、高分子薄膜1を染色液と接触させると、光照射部のみが選択的に染色される。
【0012】
官能基の一例としては、−COO−N=CR1R2で表されるものがある。側鎖に−COO−N=CR1R2を持つ高分子物質に対して光照射すると、脱炭酸後、主鎖ラジカルとイミノラジカルが再結合して、−N=CR1R2に変換される。この化合物は、空気中の水分により容易に加水分解し、−NH2に変換される。加水分解を酸性水溶液中で行うとアンモニオ基(−NH4 +X-(Xはハロゲン基))となる。ここで、R1はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R2はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が特に望ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が特に望ましい。R1とR2とは同じであっても異なってもよい。
【0013】
官能基を有する高分子物質を得る方法としては、光照射によりアミノ基が生成する官能基を分子の一部に有するモノマーを合成し重合する方法がある。重合方法は、ラジカル重合、イオン重合、プラズマ重合、縮重合など一般的な方法が適用可能である。また、その他のモノマーと共重合することにより、強度、耐熱性、加工性をさらに向上させることができる。
【0014】
官能基を有する高分子物質を得るためのモノマーとしては、たとえばR3−COO−N=CR1R2がある。ここで、R3はビニル基、置換ビニル基を示す。その具体例としては、O−アクリロイルアセトフェノンオキシム、O−アクリロイルアセトナフトンオキシムなどがある。
【0015】
また、官能基を有する高分子物質を得る他の方法としては、官能基を高分子物質に化学修飾する方法がある。
【0016】
高分子薄膜1は、スピンコーティング法、デイップコーティング法、印刷法、スパッタリング法や真空蒸着法で形成するとよい。高分子薄膜1の厚みとしては、0.1〜50μmが好ましい。0.1μmに満たないと、染色しても色濃度が低すぎ、また、50μmを越えると、光照射時に光が表面部分だけで吸収され、高分子薄膜1内部にアミノ基が生成しないからである。
【0017】
高分子薄膜1は、ガラス、高分子、金属、セラミック、あるいはこれらの複合材などの基材2上に形成してもよい。基材2の条件としては、特に限定されず、形状が平面のものだけでなく、三次元的な凹凸を有するものであってもよい。なお、形状が平面でない場合は、光照射の方法も三次元的に行う必要がある。また、基材2の上に高分子薄膜1を形成するのではなく、基材2が高分子薄膜1を兼ねるようにするために、基材2として高分子物質からなるものを用いてもよい。
【0018】
次に、高分子薄膜1に光照射することについて説明する。光照射は、高解像度のパターンを得るために、通常はフォトマスク3を介して行なう(図1A・D参照)。光源は、解像度と官能基の吸収波長域などから決められ、高圧水銀灯や超高圧水銀灯、エキシマレーザーなどを用いるとよい。光照射の雰囲気は、空気下、不活性ガス雰囲気下、減圧下のいずれか適当なものを選ぶとよい。また、光照射を部分的に行うには、所望のパターン形状を有するフォトマスク3を介して露光すればよい。レーザーを光源として用いる場合には、直接パターンを描画してもよい。また、光照射の際の感度不足を補うために、増感剤を高分子薄膜1に添加してもよい。 このように光照射することにより、高分子薄膜1中にアミノ基が生成する(図1B・E参照)。
【0019】
架橋は、キノンによってなされる。高分子薄膜1にあらかじめ含有されたキノンは、光照射により生成したアミノ基と反応し主鎖を架橋する。あるいは、アミノ基の生成過程において発生したラジカルの一部と反応し主鎖を架橋する。
【0020】
また、高分子薄膜1に部分的な光照射をして部分的にアミノ基を生成させ、次いで高分子薄膜1にキノンを注入し主鎖間を架橋してもよい。注入する方法としては、適当な溶媒にキノンを溶解した溶液と高分子薄膜1とを接触させてキノンを膜中に含浸させる方法がある。また、キノン存在下で高分子薄膜1を減圧にし気化したキノンを膜中に含浸させる方法などがある。前者では膜自身が溶解せず、キノンを溶解するような溶媒組成にする必要があり、メタノール・エタノール等のアルコール又ははこれらにテトラヒドロフラン・ベンゼン・ジメチルホルムアミド等のポリマーの良溶媒を少量添加するものが使用できる。また、後者の方法においては、加熱下において行うと更に効率がよい。
【0021】
膜中のキノンとアミノ基の反応は加熱により促進されるので、加熱処理を追加することにより架橋をさらに促進することができる。加熱処理は、高分子のガラス転移温度の程度かさらに高温にすると効率よく進行する。
【0022】
以上の工程で得られた薄膜は、光照射部がアミノ基を生成しているので親水性を有する。その結果、染色液と接触させることで光照射部のみを選択的に染色できる(図1C・F参照)。高分子薄膜1を染色液と接触させる方法としては、浸漬物法、噴霧法、塗布法などがある。染色液は、染料、溶媒からなり、必要に応じて界面活性剤やPH調整剤などの染色助剤を加える。
【0023】
このようにして、パターン染色物を得ることができる。また、上記した高分子薄膜1の光照射部のみを選択的に染色する工程を複数回繰り返すことにより、多色のパターン染色物を得ることができる(図1D〜F参照)。
【0024】
【実施例】
実施例1
O-アクリロイルアセトフェノンオキシムとメタクリル酸メチルを脱気下ベンゼン中でラジカル重合し、再沈殿により精製することによって、O-アクリロイルアセトフェノンオキシムを39mol%含む平均分子量143000の高分子物質を得た。
【0025】
この高分子物質100重量部とベンゾフェノン10重量部、1,4-ベンゾキノン20重量部をテトラヒドロフランに溶解し、ガラス基板上にキャストし、膜厚約2μmの高分子薄膜を得た。
【0026】
次に、高圧水銀灯によって高分子薄膜を部分的に光照射した。ATR法で1760cm-1のピークが消滅したことから、光照射によりアミノ基が生成する官能基がほぼ分解したことを確認した。
【0027】
この基板を1.2Nの塩酸水溶液に室温で3分浸漬して加水分解後、オーブン中で100℃で10分加熱した。
【0028】
この基板をC.I. Acid Blue 40の1.0重量%含まれたメタノール:THF:水=2:2:3(容量比)の混合溶剤中に室温で10分浸積したところ、表面が平滑で膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青く染色された。
【0029】
比較例
実施例1においてキノンを添加しない薄膜を光照射および染色すると、光照射時間が長くなるにつれて染色後の膜厚が減少し、ついには膜が完全に溶解してしまった。この膜厚と照射時間の関係を実施例1のデータとともに図2に示す。
【0030】
実施例2
実施例1で得られた高分子物質100重量部をベンゾフェノン10重量部とともにテトラヒドロフランに溶解し、ガラス基板上にキャストし、膜厚約1.4μmの高分子薄膜を得た。
【0031】
次に、実施例1と同様に光照射をした後、この基板を水の入った小容器ともに1つの密閉室に室温で10分入れて加水分解した。
【0032】
次いで、この基板を1,4-ベンゾキノンとともに1つの密閉室に入れて60℃で1日加熱をした後、取り出してオーブン中で100℃で10分追加の加熱をした。
【0033】
この基板をC.I. Acid Blue 40の1.0重量%含まれるメタノール:THF:水=2:2:3(容量比)の混合溶剤中に室温で10分浸積したところ、膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青く染色された。
【0034】
実施例3
実施例1と同様にして高分子薄膜を得た。
【0035】
次に、高圧水銀灯によって1760cm-1のピークがほぼ消滅するまで30μm幅の格子状に光照射した。
【0036】
この基板をC.I. Reactive Blue 4の1.0重量%水溶液中に60℃で10分浸積したところ、膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青に染色された。
【0037】
この基板の非露光部の一部に上記と同様にして光照射し、C.I. Acid Green 9で染色したところ、1回目に染色した青はそのまま残り、2回目に露光した部分は緑に染色された。
【0038】
実施例4
実施例1で得られた高分子物質100重量部をベンゾフェノン10重量部とともにエチルセロソルブアセテートに溶解し、ガラス基板上にスピンコートし、膜厚約0.5μmの高分子薄膜を得た。
【0039】
次に、高圧水銀灯によって1760cm-1のピークがほぼ消滅するまで高分子薄膜を部分的に光照射した。
【0040】
この基板を濃塩酸の入った小容器ともに1つの密閉室に室温で10分入れて加水分解した。
【0041】
次いで、この基板をp-ベンゾキノンとともに容器に入れ100℃で1時間加熱をした後、取り出してオーブン中で100℃で10分追加の加熱をした。
【0042】
この基板をC.I. Acid Blue 40の1.0重量%含まれたメタノール:THF:水=2:2:3(容量比)の混合溶剤中に室温で10分浸積したところ、膜減りすることなく高分子薄膜の光照射した部分のみが青く染色された。
【0043】
【発明の効果】
本発明のパターン染色物の製造方法は、以上のとおりの構成を有するので、次のような優れた効果を有する。
【0044】
すなわち、高分子薄膜中にキノンを含有させることにより、光照射部の膜形状が染色後にも変形していないパターン染色物を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパターン染色物の製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図2】キノンのある場合とない場合の照射時間と膜厚の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 高分子薄膜
2 基材
3 フォトマスク
4 アミノ基が生成した部分
5 染色部分
Claims (4)
- キノンと光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質とを有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をした後、該高分子薄膜を染色液と接触させることにより、光照射部のみを選択的に染色することを特徴とするパターン染色物の製造方法。
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基を有する高分子物質を有効成分として含有する高分子薄膜に部分的な光照射をした後、該高分子薄膜にキノンを注入してから染色液と接触させることにより、光照射部のみを選択的に染色することを特徴とするパターン染色物の製造方法。
- 光照射によりアミノ基が生成する官能基が
−COO−N=CR1R2
(R1はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールを、R2はアルキル、アリール、水素原子、置換アルキル、置換アリールをそれぞれ示す。R1とR2とは同じであっても異なってもよい。)
で表される官能基である請求項1または請求項2のいずれかに記載のパターン染色物の製造方法。 - 高分子薄膜が基材上に形成されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載のパターン染色物の製造方法。
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