JP3666544B2 - 導電回路基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた精細度の高導電回路をオルガノポリシラン膜を利用して形成した導電回路基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
オルガノポリシランは、炭素に比べてそのケイ素の持つ金属性と電子非局在性、高い耐熱性と柔軟性、良好な薄膜形成特性から非常に興味深いポリマーであり、アミノ基を側鎖に持つオルガノポリシランをヨウ素で酸化する方法や、塩化第二鉄蒸気で酸化する方法により、高導電性の材料が得られている。また、様々な極微細なパターンを高精度で形成するフォトレジストの開発を目的として、オルガノポリシランを用いた研究も活発に行われており(例えば、特開平6−291273号、同7−114188号公報)、中でも、特開平5−72694号公報においては、半導体集積回路の製造方法として、導電層にオルガノポリシランやヨウ素等でドーピングしたオルガノポリシランを用い、絶縁層に光照射によりオルガノポリシランから変換したシロキサン層を用いる提案がなされている。
【0003】
しかし、腐食性のあるヨウ素等を用いることは、電子材料へ応用するときの大きな障害になっていた。しかも、大気中の酸素等により容易にシロキサンに変化しうるオルガノポリシランそのものを導電材料として用いることは、特に信頼性を必要とする電子材料に応用することに非常な困難が伴っていた。
【0004】
また、特開昭57−11339号公報においては、Si−Si結合を有する化合物を露光後、金属塩溶液と接触させることによる金属画像の形成方法を報告している。この方法は、Si−Si結合を有する化合物と金属塩溶液を接触させることで金属塩が金属まで還元される必要があり、ポジ型の金属画像の形成方法であるが、超微細な画像の形成が可能なネガ型を行おうとしても、光照射部のポリマーでは銀塩の還元がすみやかには進まず、精密な微細回路形成はできなかった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、安価で簡便な工程により、ネガパターンで優れた精細度の高導電回路を形成した導電回路基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記式(1)で示されるH−Si結合を持つオルガノポリシランが紫外線のような光の照射により架橋反応が起こり、光照射部分が溶剤不溶となること、また、この光架橋部分は、銀塩を非常に容易に還元して銀粒子を生成させ、これにより安定な電気的導電性が発現することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は、
(1)基板上に形成した下記式(1)
(H m R 1 n X p Si) q (1)
(式中、R 1 は炭素数1〜12の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、XはR 1 又はアルコキシ基もしくはハロゲン原子を示し、mは0.1≦m≦1、nは0.1≦n≦2、pは0≦p≦0.5であり、かつ1≦m+n+p≦2.2を満足する数、qは10≦q≦100,000の整数である。)
で示されるH−Si結合を有するオルガノポリシラン膜を選択的に光照射することにより形成された光架橋層に銀導電層を形成させてなる回路パターンを有することを特徴とする導電回路基板、及び、
(2)基板上に上記式(1)で示されるH−Si結合を有するオルガノポリシラン膜を形成し、これを選択的に光照射して露光部に溶剤不溶の光架橋層を形成させる工程と、上記オルガノポリシラン膜の未露光部を溶剤で除去した後、上記光架橋層に銀塩を接触させて、銀導電層を形成させる工程とを有する導電回路基板の製造方法
を提供する。
【0008】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明の導電回路基板は、基板上に形成されたH−Si結合を有するオルガノポリシラン膜を選択的に露光して光架橋層を形成し、これに銀塩を接触、還元し、銀導電層を形成したものである。
【0009】
ここで、基板としては、ガラス、セラミック、プラスチック等の絶縁体、シリコン等の半導体、アルミニウム等の導体が挙げられ、導電回路の使用目的などに応じて適宜選定される。
【0010】
また、上記基板上に形成されるオルガノポリシラン膜としては、H−Si結合を有するオルガノポリシラン、特にH−Si結合を分子中に2個以上有するオルガノポリシランであって、有機溶剤に可溶なものを使用することができるが、下記式(1)
(HmR1 nXpSi)q (1)
で示されるオルガノポリシランが用いられる。
【0011】
上記式(1)において、R1は置換もしくは非置換の脂肪族、脂環式又は芳香族1価炭化水素基であり、脂肪族又は脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8のものが好適であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基やシクロアルキル基などが挙げられる。また、芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素数6〜14、より好ましくは6〜10のものが好適であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基等のアリール基やアラルキル基などが挙げられる。なお、置換炭化水素基としては、上記に例示した非置換の炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基などで置換したもの、例えばp−ジメチルアミノフェニル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0012】
XはR1と同様の基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のもの、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、通常塩素原子、メトキシ基、エトキシ基が用いられる。このXは、オルガノポリシラン膜の基板に対する剥離を防止し、密着性を改善するためのものである。
【0013】
mは0.1≦m≦1、特に0.5≦m≦1、nは0.1≦n≦2、特に0.5≦n≦1.5、pは0≦p≦0.5、特に0≦p≦0.2であり、かつ1≦m+n+p≦2.2、特に1.5≦m+n+p≦2.2を満足する数であり、qは10≦q≦100,000、特に10≦q≦10,000の範囲の整数である。
【0014】
本発明の導電回路基板を得る場合は、まず図1に示したように基板1上に上記オルガノポリシラン膜2を形成する。
【0015】
この場合、オルガノポリシラン膜の膜厚は0.01〜100μm、特に0.1〜20μmとすることが好ましい。
【0016】
オルガノポリシラン膜の形成方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディッピング法、キャスト法、真空蒸着法、LB法(ラングミュアー・ブロジット法)などの通常のポリシラン薄膜形成法が採用できる。特に、オルガノポリシランの溶液を高速で回転させながら成形するスピンコート法が好適に用いられる。オルガノポリシランを溶解させる溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤が好適に用いられる。この後、しばらく乾燥雰囲気下で静置したり、或いは減圧下で40〜60℃程度の温度に放置し乾燥することが効果的である。オルガノポリシラン溶液の濃度は、1〜20重量%が好適に用いられ、これにより0.01〜100μmの範囲の膜厚のオルガノポリシラン薄膜を形成することができる。
【0017】
こうしたH−Si結合を持つオルガノポリシランは、紫外線のような光の照射により、架橋反応が起こり、溶剤に不溶となること、また、このポリマーは架橋した光照射後のものであっても、接触させた銀塩、特に1価の銀塩に対しては非常に容易に還元して銀粒子を生成させ、これにより安定な電気的導電性が発現する。
【0018】
従って、図2に示すように、このオルガノポリシラン膜2を形成させた基板1の上から、パターンが形成されたマスク3を通して光を照射する。この場合、500nm以下の波長を有する光、特に紫外光源からの光を用いることが好ましい。これにより、光が当たった部分のみは、架橋が起こり溶剤不溶に変換せしめられる。光源としては、水素放電管、希ガス放電管、タングステンランプ、ハロゲンランプのような連続スペクトル光源でも、各種レーザー、水銀灯のような不連続スペクトル光源でもよいが、安価で取り扱いが容易な水銀灯が好適に用いられ、オルガノポリシランの厚さ1μm当たり0.01〜100J/cm2の光量が好適に用いられる。
【0019】
以上のように、光照射により露光部に光架橋層2aを形成した後、図3に示したように、マスク3を取りさり、オルガノポリシラン膜2に有機溶剤4を接触させ、光未照射部2bのオルガノポリシランを除去する。即ち、このオルガノポリシランは光の未照射時でも化学的還元性を持ち、銀塩を容易に還元して銀粒子を生成させ、電気的導電性を示すため、導電回路形成のためには、光照射後に未照射部2bのオルガノポリシラン膜を溶剤等で除去する必要がある。
【0020】
この場合、オルガノポリシラン膜の未照射部2bを除去する溶剤としては、このオルガノポリシランをよく溶解させ、架橋させた部分のパターンを壊さない溶媒が用いられる。このようなものとして、ベンゼン、トルエンのような芳香族炭化水素、或いはジエチルエーテル、THFのようなエーテル類、酢酸エチルのようなエステル類等が挙げられる。特に、フェニルハイドロジェンポリシランの場合、芳香族炭化水素類が好適に用いられる。
【0021】
次に、銀塩を上記光架橋した光架橋層2aに接触させて、図4に示したように銀導電層5を形成する。
【0022】
銀塩としては、1価の銀イオンAg+を含むものが好ましく、通常Ag−Zの形で表し得る。Zとしては、パークロレート、テトラメチルボレート、ペンタフルオロホスフェート、トリフルオロメタンスルフォネート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、硝酸基等が用いられる。銀塩の例としては、AgBF4,AgClO4,AgPF6,AgBPh4,Ag(CF3SO3),AgNO3等が好適に用いられる。
【0023】
接触方法として、銀塩の蒸気雰囲気下にこの光架橋層をさらす所謂気相法及び銀塩を溶解させた溶液をこの光架橋層に接触させる溶液法が用いられる。
【0024】
気相法では、一般に温度は50〜300℃の範囲で行われる。50℃未満では接触速度が遅く、また300℃を超えると接触時にポリマーの劣化を招くおそれがある。圧力は、通常0.001mmHg〜1気圧の範囲で行われる。0.001mmHgより低くすることは、その圧力に達するまでに長時間かかり経済的ではなく、また1気圧を超えると接触速度は非常に遅い。
【0025】
溶液法では、銀塩をよく溶解させ、架橋させた部分のパターンを壊さない溶媒が用いられる。このようなものとしては、ポリマー側鎖基の種類により溶解性が異なるため一概には言えないが、水、或いはアセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、メタノール、エタノールのようなアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドのような非プロトン性極性溶媒、その他、ニトロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。特に、フェニルハイドロジェンポリシランの場合、アルコール類が好適に用いられる。
【0026】
この銀塩を含む溶液を膜基板上に展開、或いはこの溶液に膜基板を浸漬し、その後乾燥することで、光で架橋した部分は銀塩が銀粒子に還元され、パターニングされた導電回路基板を得ることができる。
【0027】
次いで、乾燥を行うことが好ましいが、乾燥温度は、通常0〜150℃、常圧又は減圧で行うのが好ましい。また必要に応じて50〜600℃の温度で好ましくは窒素、アルゴン等の非酸化性雰囲気下で熱処理することにより、光架橋層では銀塩から銀への還元が促進され導電性のより向上が見られ、露光部と未露光部の導電率値の差がより大きくなり、導電回路としてより好ましくなる。
【0028】
【発明の効果】
本発明により、安価で簡便な工程により、高い導電率の導電層を持ち、導電性の経時変化が少なく、ネガ型パターンで優れた精細度の高導電回路を得ることができる。これにより、各種フレキシブルスイッチ、バッテリー電極、太陽電池、センサー、帯電防止用保護膜、電磁シールド用筐体、集積回路、モーター用筐体等に応用可能な有用な導電回路基板の形成方法として、電気、電子、通信分野に広く用いることができる。
【0029】
【実施例】
以下、合成例と実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
〔合成例〕
アルゴン置換したフラスコ内において、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコノセンにメチルリチウムのジエチルエーテル溶液を添加し、系内で触媒のビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコノセンを調製し、これにフェニルトリヒドロシランを該触媒の50倍モル添加し、100℃で24時間加熱撹拌を行った。その後、フロリジルを添加し、濾過することにより触媒を除去した。これによって、ほぼ定量的に重量平均分子量2600のフェニルハイドロジェンポリシランの固体を得た。
【0031】
〔実施例〕
上で製造したフェニルハイドロジェンポリシランをトルエンに溶解して10重量%のオルガノポリシラン溶液を調製した。ガラス板上にこのオルガノポリシラン溶液を3000rpm,10秒でスピンコートし、2mmHg/50℃で乾燥させて、厚さ0.5μmの薄膜を形成し、これをパターン形成用基板とした(図1)。
【0032】
この基板上に所用のパターンが形成されたフォトマスクを重ね、空気中で20Wの低圧水銀灯を用いて254nmの紫外線を10J/cm2の光量で照射し、オルガノポリシランの未露光層と架橋された露光層(光架橋層)というパターン形成された膜を持つガラス基板を作成した(図2)。
【0033】
次に、この基板上にトルエンを3000rpm,2秒でスピンコートし、2mmHg/50℃で乾燥させた。これにより、オルガノポリシランの未露光層が除去された(図3)。
【0034】
次いで、この基板を銀テトラフルオロボレートの10重量%エタノール溶液に10秒浸漬後、溶液から取り出し、2mmHg/50℃で乾燥させた。これにより、上記光架橋層の部分のみ上記銀塩が還元されて、光架橋層に対応する銀の回路が形成された。その後、エタノールに2秒浸漬し、エタノールから取り出して2mmHg/50℃で乾燥させたところ、上記未露光層が除去されて顕出されていたガラス板表面(非回路部分)に付着していた上記銀塩が完全に除去された(図4)。
【0035】
これを200℃で30分加熱し、放冷により室温まで温度を下げた後、上記銀回路部分と非回路部分の導電率を導電回路作成直後及び1か月後にそれぞれ測定したところ、下記の結果が得られ、電気特性は1か月後でも変化しない安定なものであった。
導電回路作成直後の電気特性
銀回路部分の導電率:1×10S/cm
非回路部分の導電率:1×10-12S/cm
銀回路部分と非回路部分との導電率の比:1013
導電回路作成1か月後の電気特性
銀回路部分の導電率:1×10S/cm
非回路部分の導電率:1×10-12S/cm
銀回路部分と非回路部分との導電率の比:1013
【0036】
比較のため、還元性を持つフェニルメチルポリシラン、メチルハイドロジェンポリシロキサンについて上記と同様の操作を行ったところ、トルエンを3000rpm,2秒でスピンコートした時、未露光部も露光部も全ての層が除去され、導電回路の形成はできなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】基板上にオルガノポリシラン膜を形成した状態を示す断面図である。
【図2】該オルガノポリシラン膜に選択的光照射を行う状態を説明する断面図である。
【図3】溶剤により未露光部を除去する状態を説明する断面図である。
【図4】銀塩の接触を行って銀導電層を形成した本発明の一実施例を示す導電回路基板の断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 オルガノポリシラン膜
2a 光架橋層
2b 未露光部
3 マスク
4 溶剤
5 銀導電層
Claims (2)
- 基板上に形成した下記式(1)
(H m R 1 n X p Si) q (1)
(式中、R 1 は炭素数1〜12の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、XはR 1 又はアルコキシ基もしくはハロゲン原子を示し、mは0.1≦m≦1、nは0.1≦n≦2、pは0≦p≦0.5であり、かつ1≦m+n+p≦2.2を満足する数、qは10≦q≦100,000の整数である。)
で示されるH−Si結合を有するオルガノポリシラン膜を選択的に光照射することにより形成された光架橋層に銀導電層を形成させてなる回路パターンを有することを特徴とする導電回路基板。 - 基板上に下記式(1)
(HmR1 nXpSi)q (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基又は炭素数6〜14の芳香族炭化水素基であり、XはR1又はアルコキシ基もしくはハロゲン原子を示し、mは0.1≦m≦1、nは0.1≦n≦2、pは0≦p≦0.5であり、かつ1≦m+n+p≦2.2を満足する数、qは10≦q≦100,000の整数である。)
で示されるH−Si結合を有するオルガノポリシラン膜を形成し、これを選択的に光照射して露光部に溶剤不溶の光架橋層を形成させる工程と、上記オルガノポリシラン膜の未露光部を溶剤で除去した後、上記光架橋層に銀塩を接触させて、銀導電層を形成させる工程とを有する導電回路基板の製造方法。
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JP2008047793A (ja) * | 2006-08-21 | 2008-02-28 | Konica Minolta Holdings Inc | 金属パターンの形成方法 |
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