JP3736115B2 - Fm多重放送受信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、FM多重放送を行っている第1及び第2放送局を交互に選局して受信するFM多重放送受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
FM多重放送は、通常のラジオ放送を行うと同時に、同一の搬送波によってデジタルデータからなる複数のデータパケットをFM多重データとして同時に送信(放送)するものであり、NHK他民放各局で既に実用化されている。FM多重データの内容は、各放送局によって異なり、VICSなどの交通情報や各種の文字情報からなる様々な番組などがある。
【0003】
ところで、FM多重放送においては、カーナビゲーションなどに利用されるGPS(Global Positioning System) において、衛星軌道上から送信される複数のGPS衛星からの電波信号に基づく測位データを補正するためのDGPS補正データを、FM多重データのデータパケットの一部として送信しているものがある。ここで、例えば、自動車の運転中において1つの放送局(A局)を選局し受信している状態で、もう1つの放送局(B局)からはDGPS補正データを得てカーナビゲーションに利用する、という状態を想定する。
【0004】
この場合、DGPS補正データは多数のデータパケットのほんの一部分に含まれているだけであるから、B局の受信は必要なデータのみを得るように最低限にして、A局の受信効率をできるだけ高めるようにすれば、ユーザにとっては、A局,B局夫々からの必要な情報の取得効率が向上する。
【0005】
このような要求を満たす技術として、発明者が、先の出願(特願平10−25687号)において提案したものがある。この出願では、上記のように2つのFM多重放送局を交互に受信するもので、その内の一方から取得したいFM多重データが特定の一部分のみである場合に対応して、その特定の取得希望データが含まれている第2放送局(B局)については取得希望データが得られる時間内において受信するように選局を行い、それ以外の時間については第1放送局(A局)を受信するように選局を切り替える構成としたFM多重放送受信機を提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車は、走行することによってそのFM放送波の受信位置が変化する。そこで、このような車載用のFM多重放送受信機には、自動車の走行により前記受信位置が変化しても放送波の受信状態をできるだけ良好に維持するために、同じ放送局について常に最良の送信局を代替局として選局して追従する(即ち、各地域毎の送信エリアに応じた送信局を選局する)自動追従機能が付与されている場合がある。
【0007】
このような自動追従機能では、選局切替えを行うために受信劣化判定を行うようにしている。例えば、現在選局中であるA局の受信状態が一定以上劣化した(例えば、FM多重データにおけるデータパケットの正受信率が所定値を下回った)と判断されると、次の候補として設定されている代替局に選局を切り替えるようにする。
【0008】
そして、上記従来のFM多重放送受信機では、A局からB局への選局切替え頻度(受信割合)は固定されていたため特に問題はなかった。しかし、各放送局の送信データの内容によっては、例えば、最初はA局からの送信データを優先的に得るようにしていても、その後B局からの送信データをより優先的に得るようにしたいという要求が生じることも考えられる。
【0009】
そのような場合に対応するために、特願平10−25687号において提案した構成を前提として、ユーザがA局からB局への選局切替え頻度を変更できるように構成した場合を想定すると、以下のような不具合が生じることが予想される。例えば、A局からはVICSのような交通情報を得て、B局からはその他の情報を得るように設定する。
【0010】
そして、図8に示すように、A局からB局への選局切替え頻度が比較的低く設定された状態で、ユーザが頻繁に利用する交通ルート上において、A局の送信エリアW→エリアEへの追従切替えは、地点▲1▼で正受信率が所定値Xを下回ることで生じるようになっているとする。
【0011】
即ち、通常は地点▲1▼において、交通情報の内容もエリアW→エリアEへと切り替わるようになっており、ユーザは、いつもこのタイミングで切り替わる交通情報を利用して、自動車を運転しているものとする。尚、各エリアにおける送信電界強度は一定とする。
【0012】
このような前提で、ユーザが、A局からB局への選局切替え頻度を比較的高く設定し直すと、その分A局の正受信率は低下することになる。すると、以前は地点▲1▼で正受信率が所定値Xを下回っていたものが、より手前の地点▲2▼において所定値Xを下回るようになり、その結果、地点▲2▼で交通情報がエリアSに切り替わってしまう場合が生じる。即ち、ユーザにとって望ましい代替局への追従タイミングにずれが生じるという問題がある。
【0013】
また、例えば、上記従来技術のようにB局の受信時間が極めて短い場合には、B局について同様の自動追従動作を行おうとしても、正受信率を求めて受信劣化判定を行うことができないという問題があった。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、2つのFM多重放送局を交互に受信する場合で、一方の局に対する受信割合をユーザが変更しても、他方の局から必要な情報を得るタイミングを維持することができるFM多重放送受信機を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のFM多重放送受信機によれば、選局切替え手段は、FM多重データの中に取得希望データが含まれている第2放送局については、その取得希望データが得られる所定時間内において受信するように選局を行い、それ以外の時間については第1放送局を受信するように選局を切替える。そして、選局追従手段は、判定手段が現在の第1放送局について受信状態が劣化したと判定すると、代替局選択手段により選択された代替送信局を選局して追従する。この場合、受信割合変更手段によって選局切替え手段による第2放送局の受信割合が上昇するように変更されると、判定基準値変更手段は、変更された受信割合に応じて判定手段の判定基準値を低下させる。
【0016】
例えば、FM多重放送受信機が搭載された自動車がある同じルート上を移動する場合に、第2放送局の受信割合をある値から上昇させたことによって第1放送局の受信状態が相対的に劣化したとしても、その受信割合の上昇度合いに応じて判定手段における判定基準値を低下させることで、第2放送局の受信割合をある値から上昇させる前と略同じタイミングに調整することができる。従って、ユーザが同一ルート上を移動する場合にいつも利用している情報を、同じ代替送信局から略同じタイミングで得ることができる。
【0017】
請求項2記載のFM多重放送受信機によれば、判定手段は、受信中のFM多重データに含まれるデータパケットの正受信率が判定基準値を下回った場合に受信状態が劣化したと判定するので、データパケットのデータ内容が正確に受信できれているか否かに基づいて、受信状態の劣化判定を確実に行うことができる。
【0018】
請求項3記載のFM多重放送受信機によれば、判定手段は、正受信率を複数回求める毎に判定基準値との比較を行い、正受信率が所定回数連続で判定基準値を下回った場合に受信状態が劣化したと判定するので、一時的に正受信率が低下しただけの場合には劣化したと判定することがなく、受信状態の劣化判定を一層確実に行うことができる。
【0019】
請求項4記載のFM多重放送受信機によれば、代替局選択手段は、複数の代替送信局候補を予め選択し、その複数の候補についてデータパケットの正受信率を求めて正受信率が最も高いものを代替送信局として選択するので、代替送信局として適当な送信局を確実に選択することができる。
【0020】
請求項5記載のFM多重放送受信機によれば、代替局選択手段は、放送波の受信電界強度を複数回測定して平均値を算出し、その平均値に基づいて代替送信局候補を選択するので、マルチパスやフェージングの影響で受信電界強度のレベルが安定しない場合でも、代替送信局候補としてより相応しいものを選択することができる。
【0021】
請求項6記載のFM多重放送受信機によれば、代替局選択手段は、1つの送信局に対する受信電界強度の複数回の測定を所定時間をおいて複数回行い、その結果得られる複数の平均値の内の最高値に基づいて代替送信局候補を選択するので、例えば自動車などで移動中に受信する場合でも、周囲の受信環境の影響などをより低減することができる。
【0022】
請求項7記載のFM多重放送受信機によれば、代替局選択手段は、代替送信局候補の数が一定値に達すると代替送信局の選択を中止するので、処理時間の増加を抑制することができる。
【0023】
請求項8記載のFM多重放送受信機によれば、演算手段は、最初に第2放送局が選局された場合に、取得希望データが得られた時点から次回に取得希望データを取得するための取得予想時間を演算し、その取得予想時間に基づいて選局切替え時間を演算する。そして、選局切替え手段は、第2放送局より取得希望データが得られると第1放送局に選局を切替え、選局切替え時間に達すると第1放送局から第2放送局に選局を切替えるようにして交互に選局切替えを行う。従って、第2放送局の受信時間を極力短くした場合でも、選局切替え時間に基づいて、取得希望データを確実に得ることができる。
【0024】
請求項9記載のFM多重放送受信機によれば、演算手段は、選局切替え時間を1度演算して求めると、その選局切替え時間を起点として、次の選局切替え時間をFM多重データの1フレーム周期の整数倍に設定する。従って、2回目以降の選局切替え時間の演算を容易にすることができる。
【0025】
請求項10記載のFM多重放送受信機によれば、第1放送局を、FM多重データとしてVICS情報を含むデータを送信する放送局とし、第2放送局を、FM多重データとして取得希望データたるDGPS補正データを含むデータを送信する放送局とするので、これらの情報をナビゲーション装置などに出力することによって、通常は第1放送局からVICSによる各種の交通情報を得てナビゲーション装置に反映させながら、選局切替えにより第2放送局からはDGPS補正データのみを得て、GPSを利用して行う測位計算の補正も平行して行うことができる。
【0026】
請求項11記載のFM多重放送受信機によれば、選局切替え手段は、ビーコン受信装置がVICSのビーコンより送信される信号を受信すると、第2放送局への選局切替えを一定時間停止する。即ち、交通ルートに設置されているVICSのビーコンからは精度の高い位置データが得られるので、当該位置データが得られた場合には、DGPS補正データによる前記測位計算の補正を一定時間行わずとも、ナビゲーションなどに支障を来すことはない。従って、第1放送局の受信効率を一層高めることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車のナビゲーション装置を含むシステムに適用した一実施例について図面を参照して説明する。図6は、電気的構成を示す機能ブロック図である。FM多重放送受信機たる交通情報受信機1は、FM多重放送を行っている放送局の放送波を受信して復調するFM多重受信部2と、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System;以下、VICSと称す) のサブシステムである電波・光ビーコンが送信する情報を受信するためのビーコン送受信部(ビーコン受信装置)3とで構成されている。
【0028】
FM多重受信部2及びビーコン送受信部3から出力される信号は、ナビゲーション装置4に与えられるようになっている。ナビゲーション装置4には、衛星軌道上にある複数個のGPS(Global Positioning System) 衛星から送信される電波信号を受信・復調するGPS受信機5からの復調信号が与えられるようになっている。
【0029】
ナビゲーション装置4は、具体的には図示しないが、CPU,ROM,RAM,ハードディスク及びCD−ROMなどを含んで構成されており、GPS受信機5からの復調信号に基づいて自動車の絶対位置を計算するGPS航法と、車輪速センサや方位センサなどからの出力信号に基づいて自動車の移動方向及び距離を算出する自律航法とを併用するシステムになっている。
【0030】
そして、ナビゲーション装置4は、GPS衛星からの電波信号を受信できる間はGPS航法を行い、電波信号を受信できない間は自律航法を行って自動車の現在位置を算出して、内部のCD−ROMに記憶されている地図データベースから所定の地図データを読み出すと、その地図データの表示信号を表示・操作装置(受信割合変更手段)6に出力して表示パネルに表示させると共に、算出した自動車の現在位置に応じて地図データ上における走行経路を案内表示するようになっている。
【0031】
尚、表示・操作装置6は、例えば表示パネル上にタッチスイッチを備えた構成となっており、ユーザがタッチスイッチを操作することによって、後述するように、設定入力操作を行うことができるようになっている。
【0032】
FM多重受信部2は、以下のように構成されている。即ち、アンテナ7は、FM放送波の受信信号を選局受信部(選局切替え手段)8に与えるようになっている。選局受信部8は、FM多重データにVICSセンターから供給されるVICS情報が含まれているFM多重放送局をA局(例えば、NHK局,第1放送局)とし、FM多重データに取得希望データたるDGPS(Differential GPS)補正データが含まれているFM多重放送局をB局(例えば、特定の民放局,第2放送局)として、これらA局とB局とを、後述するように制御部10からの指示に応じて交互に選局するようになっている。
【0033】
そして、選局受信部8は、A局とB局とのFM放送波(76M〜90MHz程度)を交互に受信すると、そのFM放送波の副搬送波(ベースバンドに対して76KHz)をMSK(Minimum Shift Keying)変調することにより重畳されているFM多重データを復調するようになっている。また、選局受信部8は、計時動作を行うためのリアルタイムクロック(RTC,図示せず)を内蔵している。
【0034】
ここで、DGPSとは、以下のようなシステムである。即ち、GPS衛星から送信される電波信号を地上の固定局であるDGPS基準局が受信すると、DGPS基準局は、予め取得している自身が位置する緯度,軽度及び高度のデータと、複数個のGPS衛星から受信した電波信号に基づいて計算した疑似距離データとを比較することによって、GPS衛星から受信する電波信号に基づく測位データの計算を補正するためのDGPS補正データを作成する。
【0035】
作成されたDGPS補正データは、DGPSデータ送信局たるFM多重放送局に送出され、FM多重放送局においては、DGPS補正データは文字情報などと同様にFM多重データのデータパケットの一種として扱われて多重化され、FM放送波として送信されるようになっている。
【0036】
そして、DGPS対応のナビゲーション装置を搭載している自動車等においては、前記FM多重放送局からのFM放送波を受信・復調してDGPS補正データを取り出し、GPS衛星からの電波信号に基く自身の測位データの計算を補正することにより、極めて正確な測位データを得ることができるようになっている。
【0037】
再び、図6を参照して、選局受信部8は、受信・復調したFM多重データを、デコード部9に出力するようになっており、デコード部9は、復調されたFM多重データをデコードすると制御部10に出力するようになっている。尚、制御部10は、選局切替え手段,代替局選択手段,判定手段,選局追従手段,判定基準値変更手段及び演算手段に対応する。
【0038】
制御部10は、マイクロコンピュータを中心とする構成であり、デコードされたFM多重データが与えられると、そのFM多重データを、データ伝送部11を介してナビゲーション装置4に送信するようになっている。データ伝送部11は、制御部10とナビゲーション装置4との間のデータ伝送を、パラレル/シリアル変換して行うようになっている。また、制御部10は、選局受信部8に対して制御信号を与えることにより、後述のように選局切替えの制御を行うようになっている。
【0039】
一方、ビーコン送受信部3は、以下のように構成されている。即ち、センサ部12は、電波ビーコンから送信される2.5GHzの電波信号または光ビーコンから送信される光信号(赤外線)を受信して、送受信部13に与えるようになっている。電波ビーコンは、主として高速道路の路側に、光ビーコンは、主として一般道の各車線上に設置されており、その設置ポイントを通過中の自動車に対してVICSセンターから送信されるVICS情報を含む電波信号または光信号を送信するようになっている。尚、以降で電波ビーコンと光ビーコンとの区別を特にしない場合は、単に“ビーコン”と表記する。
【0040】
送受信部13は、電波ビーコンの場合は、GMSK(Gaussian MSK)変調された電波信号を復調して、また、光ビーコンの場合はPAM(Pulse Amplitude Modulation)変調された光信号を復調して、デコード部14にVICS情報を出力するようになっている。そして、デコード部14は復調されたVICS情報をデコードして、制御部15に出力するようになっている。
【0041】
制御部15は、制御部10と同様にマイクロコンピュータを中心として構成されており、例えばデュアルポートメモリ(図示せず)などを介して制御部10との間で通信を行うようになっている。そして、デコード部14から制御部15に与えられたVICS情報は制御部10に送信され、その制御部10及びデータ伝送部11を介してナビゲーション装置4に送信されるようになっている。
【0042】
また、ビーコン送受信部3は、ナビゲーション装置4側から入力された目的地情報などを、データ伝送部11,制御部15及び10,送受信部13並びにセンサ部12を介して、光ビーコン側に送信することもできるように構成されている。この様に、目的地情報が自動車側から光ビーコン側に送信されると、同じ光ビーコンを介して目的地に関したVICS情報を与えるようになっている。
【0043】
尚、ナビゲーション装置4は、GPS受信機5から与えられるGPS情報と、交通情報受信機1から与えられるVICS情報とを併用可能に構成されており、何れの情報をも利用して、マップマッチング及び走行経路の案内表示などを行うようになっている。
【0044】
また、図7は、FM多重受信部2の主に選局受信部8のより詳細な構成を示す機能ブロック図である。フロントエンド16は、受信を希望する放送局の周波数に同調を行い、受信した放送波の周波数を中間周波数(IF)に変換するようになっている。フロントエンド16により中間周波数に変換された信号(IF信号)は、IFアンプ17によって増幅されて、検波回路18,ステーションディテクタ19及びシグナルメータ20に夫々与えられるようになっている。
【0045】
検波回路18は、IF信号をベースバンド信号に変換してバンドパスフィルタ(BPF)21に出力する。BPF21は、MSK変調されている76KHzの副搬送波を帯域通過させるようになっており、その出力信号は、サブキャリアディテクタ22及びデコード部9に夫々与えられている。
【0046】
ステーションディテクタ19は、後述するように代替送信局をサーチする場合に、受信電界強度が所定値以上となった送信局を検出するようになっており、シグナルメータ20は、IFアンプ17より与えられるIF信号の信号レベルに応じた電圧信号を出力するようになっている。また、サブキャリアディテクタ22は、BPF21を通過したベースバンド信号から、信号強度が設定値以上である副搬送波を検出するようになっている。尚、サブキャリアディテクタ22は、必ずしも必要な構成ではない。
【0047】
これらのステーションディテクタ19,シグナルメータ20及びサブキャリアディテクタ22の出力信号は、制御部10に夫々与えられている。また、制御部10は、フロントエンド16に対して可変周波数信号を出力するPLL周波数シンセサイザ(PLL)23に周波数制御信号を与えるようになっている。尚、フロントエンド16,IFアンプ17,検波回路18,ステーションディテクタ19,シグナルメータ20,BPF21,サブキャリアディテクタ22及びPLL23が選局受信部8に対応している。
【0048】
次に、本実施例の作用について、図1乃至図5をも参照して説明する。図4は、FM多重受信部2の制御部10の制御内容を示すフローチャートであり、図5は、その制御内容に応じてA局,B局が交互に選局受信される場合のタイムチャートである。
【0049】
図4において、制御部10は、先ず「B局選局」の処理ステップS1において、選局受信部8にB局を選局させる。すると、選局受信部8は、B局の周波数に合わせて選局を行う(図5,時点▲1▼参照)。そして、次の「DGPSデータ取得?」の判断ステップS2において、制御部10は、デコード部9がデコードしたFM多重データを参照して、DGPS補正データが得られたか否かを判断する。DGPS補正データが得られなければ「NO」と判断してステップS1に移行して、B局の選局を続けさせる。尚、図5に示すように、B局から送信されるFM多重データの1フレームにおいて、先頭から2ブロック(パケット)がDGPS補正データのパケットである。
【0050】
判断ステップS2においてDGPS補正データが得られると、制御部10は「YES」と判断して「TMdtop取得」の処理ステップS3に移行する。処理ステップS3において、制御部10は、内部のRTCを参照して、判断ステップS2においてDGPS補正データが得られた時刻TMdtopを基準時刻として取得すると、DGPS補正データのパケットと次フレームのDGPS補正データのパケットとの受信時刻差から実際のフレーム周期Tdfrmを取得する(図5,時点▲2▼参照)。そして、次の「TMdtop′演算」の処理ステップS4に移行する。
【0051】
また、取得されたDGPS補正データは、デコード部9から制御部10,データ伝送部11を介してナビゲーション装置4に与えられ、ナビゲーション装置4は、そのDGPS補正データによって、GPS受信機5から得られたGPS信号に基づいて計算した疑似距離データの補正を行う。
【0052】
処理ステップS4において、制御部10は、次回にDGPS補正データが取得できる予想時刻TMdtop′を、(1)式のように演算する。
TMdtop′=TMdtop+α・Tdfrm …(1)
ここで、Tdfrmは、ステップS3で取得したFM多重データの1フレームの周期であり、例えば約5秒に相当する。その周期Tdfrmに係数“α”(αは自然数)を乗じているのは、DGPS補正データに基づく補正間隔を適当に設定するためであり、図5には、α=1である場合の例を示す。次に、「TMchg 演算」の処理ステップS5に移行する。
【0053】
尚、係数αは、後述する図1に示すフローチャートのステップA1において、ユーザにより選択された動作モードに応じて設定されるようになっており、ステップA4は、受信割合変更手段に対応する。
【0054】
処理ステップS5において、制御部10は、予想時刻TMdtop′において、次のDGPS補正データを取得するために、A局からB局への選局切替えを行うべき時刻TMchg を(2)式のように演算する。
TMchg =TMdtop′−Tdblk−Tdsm …(2)
ここで、Tdblkは、B局の選局を開始してから、FM多重データを受信するために同期を取るまでに要する期間(ブロック同期間)であり、Tdsm は、そのブロック同期間Tdblkについてのマージンである。そして、「A局選局」の処理ステップS6に移行する。
【0055】
処理ステップS6において、制御部10は、選局受信部8に、B局を選局している状態から受信周波数をA局の周波数に変更してA局に選局を切替えるように指示を与える。すると、次の「TMchg 経過?」の判断ステップS7において、ステップS5で演算した時刻TMchg が経過して「YES」と判断するまでは、以下のように、ステップS6→S7→S12→S6→…のループを繰返し、A局の選局,受信及び復調を続行させる。
【0056】
即ち、判断ステップS7において時刻TMchg が経過せず「NO」と判断すると「ビーコン受信あり?」の判断ステップS12に移行して、制御部10は、ビーコン送受信部3がビーコンからの信号を受信したか否かを判断する。そして、ビーコン送受信部3がビーコンからの信号を受信しておらず「NO」と判断すると、ステップS6に移行する。
【0057】
この様に、選局受信部8がA局を選局している間は、制御部10は、デコード部9を介してFM多重データからVICS情報を得ており、そのVICS情報は、データ伝送部11を介してナビゲーション装置4に与えられる。そして、ナビゲーション装置4は、ユーザの操作に応じて、必要なレベル(1,2,3)のVICS情報を表示・操作装置6に表示させる。
【0058】
この状態から、判断ステップS7において、時刻TMchg が経過して制御部10が「YES」と判断すると、「B局選局」の処理ステップS8に移行する。処理ステップS8において、制御部10は、選局受信部8にA局を選局している状態からB局に選局を切替えさせると(図5,時点▲3▼参照)、次の「DGPSデータ取得?」の判断ステップS9において、ステップS2と同様に、DGPS補正データが得られたか否かを判断する。DGPS補正データが得られなければ「NO」と判断して、「タイムアウト?」の判断ステップS10に移行する。
【0059】
判断ステップS10において、制御部10は、ステップS8においてB局に選局を切替えた時点から、(3)式で表されるタイムアウト時刻TMdoutが経過した否かを判断する。
TMdout=TMdtop′+Tdrcv+Tdrm …(3)
ここで、Tdrcvは、DGPS補正データパケットの受信に要する時間であり、Tdrm は、その受信に要する時間についてのマージンである。そして、判断ステップS10において「NO」と判断すると、ステップS8に移行する。
【0060】
即ち、ステップS9及びS10の何れかにおいて、制御部10が「YES」と判断するまでは、ステップS8→S9→S10→S8…のループを繰り返す。そして、B局の受信状態が良好であれば、ステップS8においてB局に選局を切替えた時点TMchg から、時間“Tdblk+Tdsm +Tdrcv”が経過して時刻“TMdtop′+Tdrcv”に達すると、DGPS補正データパケットの受信が完了する。すると、制御部10は、ステップS9において「YES」と判断し、「TMchg 更新」の処理ステップS11に移行する。
【0061】
処理ステップS11において、制御部10は、新たに計測されたフレーム周期Tdfrm′を取得すると、次回にA局からB局への選局切替えを行うべき時刻TMchg を、(4)式のように更新する。
TMchg =TMchg +α・Tdfrm′ …(4)
即ち、今回の選局切替え時刻TMchg に、フレーム周期Tdfrm′のα倍の時間を加えたものが、次回の選局切替え時刻TMchg として更新される。そして、制御部10は、ステップS6に移行して選局を再びA局に切替えさせる(図5,時点▲4▼参照)。
【0062】
また、B局の受信状態が悪く、ステップS8→S9→S10→S8…のループを繰返している間にタイムアウト時刻TMdoutが経過すると、制御部10は、その回のDGPS補正データの取得を諦め、ステップS9で「YES」と判断して同様にステップS11→S6へと移行する。
【0063】
また、ステップS6→S7→S12→S6→…のループを繰返してA局の受信を続けている間に、自動車がビーコンの側を通過することにより、ビーコン送受信部3がビーコンからの信号を受信すると、VICS情報がデコード部14においてデコードされる。そのVICS情報は、制御部15からFM多重受信部2側の制御部10に渡され、制御部10は、ナビゲーション装置4側にVICS情報を送信する。ビーコンからのVICS情報を得たナビゲーション装置4は、そのVICS情報に含まれている当該ビーコンの位置情報に基づいて、自動車の現在の位置データを修正する。
【0064】
また、この時、制御部10は、ステップS12において「YES」と判断し、「TMchg 延長」の処理ステップS13に移行する。処理ステップS13において、制御部10は、次回にA局からB局への選局切替えを行うべき時刻TMchg を(5)式のように演算することにより延長する。
TMchg =TMchg +100・Tdfrm …(5)
即ち、今回の選局切替え時刻TMchg に、例えばα=100として、フレーム周期Tdfrmの100倍の時間(500秒,即ち、8分20秒;一定時間)を加えたものが、次回の選局切替え時刻TMchg として更新される。そして、ステップS6に移行して、選局受信部8にA局の受信を続けさせる。
【0065】
以上のように、B局が送信するFM多重データからは、DGPS補正データのみを得るようにし、それ以外の時間は、A局を選局し続けてVICS情報を得るようにして、A,B局を交互に受信するように選局を切替えるようにする。
【0066】
ここで、ビーコンから検出した位置情報は、DGPS補正データにより補正したものと同等の精度が期待できる。従って、一旦ビーコンから検出した位置情報に基づいて、ナビーゲーション装置4が位置データの補正を行えば、以降は5分〜10分程度の間、DGPS補正データによる測位データの補正を行わずとも、ナビーゲーションに支障を来すことはない。故に、この場合は、選局切替え時刻TMchg を一定時間延長して、A局の受信効率を高めるようにしている。
【0067】
また、以上の例では、ビーコンから送信されるVICS情報をビーコン送受信部3が受信しない限りは、A局から送信されるFM多重データについては、αフレーム毎に1回A局を受信しない期間があるため、データパケットの欠落部分が必ず生じることになる。
【0068】
しかし、DGPS補正データは2パケットであり、A局を受信しない期間は非常に短いことに加えて、以下の理由により、実用上はほとんど問題がないと考えられる。
▲1▼A局が送信するFM多重データは、1フレーム中において、VICS情報とその他の一般情報とを19パケットずつ交互に送信するようにしている。
▲2▼そして、VICS情報は、2.5分間単位で一連となっている同じ情報が、2回繰返されて送信される。
【0069】
▲3▼更に、VICS情報は、レベル1(渋滞などの情報を表示する文字情報),レベル2(簡易図形表示),レベル3(地図情報)の3つがあり、ユーザは、ナビゲーション装置4において、これら3レベルの情報を必要に応じて切替えて表示・操作装置6に表示させる。従って、レベル1〜3の情報を全て同時に必要とするわけではない。
【0070】
以上のように、VICS情報の送信形態には多様性があることから、αを例えば“4”程度に設定した場合、4フレーム毎に1回A局を受信しない期間があったとしても、VICS情報の同一レベルの同一部分のデータパケットが欠落する可能性はそれ程高くはなく、また、VICS情報のユーザの利用形態にも多様性があるので、実用上はほとんど問題がない。
【0071】
ところで、このように図4に示すフローチャートに基づいてA局,B局間の選局切替え処理がなされるが、その間に自動車は走行し移動している。即ち、A局,B局の夫々については、常に特定の送信局から放送波を受信している訳ではなく、自動車(受信機)が比較的広範囲に移動する場合には、それに伴い特定の送信局がカバーしている送信エリアから外れて、他の送信局がカバーしている送信エリアに移行することがある。
【0072】
従って、上記フローチャートによる処理中に、A局,B局夫々の放送波の受信電界強度は変化するので、最適な送信局を選択するために図1に示すフローチャートに基づく自動追従処理が並行して実行され、A局,B局夫々の受信状態が常に最良となるようにしている。以下、図1に示す処理について説明する。
【0073】
先ず、ユーザは、A局,B局間の選局切替え動作モードを選択する(ステップA1)。ここで、動作モードは、例えば以下の4つである。
【0074】
ユーザは、これら▲1▼〜▲4▼の中から所望の動作モードを選択し、表示・操作装置6により選択した動作モードを入力して設定する。入力された動作モードは、ナビゲーション装置4及びデータ伝送部11を介して制御部10に送信される。尚、動作モード▲1▼,▲2▼が選択された場合はA,B局間の選局切替えは行わないので、図4に示すフローチャートは実行しない。
【0075】
次に、制御部10は、ユーザが選択した動作モードに応じて、A局の受信劣化判定値(判定基準値)Pn(n=1〜3)を以下のように設定する(ステップA2,判定基準値変更手段)。尚、括弧内の数値は一例である。
▲1▼VICS専用モード:P1(30%)
▲2▼DGPS専用モード:P1(30%)
▲3▼VICS優先モード:P2(25%)
▲4▼DGPS優先モード:P3(20%)
ここで、受信劣化判定値とは、詳細は後述するが、所定時間内に、送信されたFM多重データ中のデータパケットを正確に受信できた割合(正受信率)である。また、劣化判定値を上記のように設定するのは、B局の選局頻度が高まるに連れて、A局に対する正受信率は自ずと低下するからである。
【0076】
そして、次のステップA3(判定手段)において、制御部10は、A局の受信状態が劣化したか否かを判断する。ここで、ステップA3における処理の詳細について、図2を参照して説明する。先ず、制御部10は、A局より受信したFM多重データのパケット数をカウントするためのカウンタをインクリメントする(ステップA301)。
【0077】
からなり、受信した各データパケットについては、デコード部9において誤り訂正処理を行った後、CRCにより最終的にデータが正常であるか否かがチェックされる(ステップA302)。そして、データが正常であれば、正常データ数をカウントするためのカウンタをインクリメントしてステップA304に移行し、データが正常でなければ、そのままステップA304に移行する。
【0078】
判断ステップA304において、制御部10は、受信データパケット数が“2280”に達したか否かを判断する。パケット数“2280”とは、1フレーム5秒当たり190個のデータパケットを、所定時間として例えば1分間受信し続けた場合の数(190×12)に相当する。パケット数が“2280”に達していない場合は、ステップA301に戻って受信を続ける。また、パケット数が“2280”に達している場合、制御部10は、受信パケット数のカウンタをリセットした後に(ステップA305)、ステップA306において正受信率Rの判定を行う。
【0079】
正受信率Rは、
R=(正常データ数)/2280
で求められ、ステップA306では、その正受信率Rが受信劣化判定値Pnを下回っているか否かが判定される。正受信率Rが受信劣化判定値Pnを下回っていなければ、連続劣化カウンタをゼロクリアしてから(ステップA306a)ステップA301に移行して、再び1個目からデータパケットの受信を行う。
【0080】
正受信率Rが受信劣化判定値Pnを下回っている場合は、受信状態が劣化したものと判断して、連続劣化回数をカウントするカウンタをインクリメントする(ステップA307)。そして、連続劣化回数が“3”に達しているか否かを判断して、“3”に達していなければステップA301へ、“3”に達していれば「A局の代替局決定」の処理ステップA4へ移行する。
【0081】
ここで、図3は、制御部10が図1に示すフローチャートの処理に並行して、例えば5分〜10分程度間隔で定期的に実行する代替送信局候補の選択処理であり、代替局選局手段に対応するものである。
【0082】
先ず、制御部10は選局受信部8のフロントエンド16の受信周波数fを、FM放送帯の下限である76.1MHzに設定するように、PLL23に周波数設定信号を出力する(ステップB1)。そして、ステーションディテクタ19によって受信波の有無を判断し(ステップB2)、受信波がある場合は、シグナルメータ20により受信信号レベルを測定する(ステップB3)。
【0083】
ステップB3における測定は、マルチパスやフェージングの影響をできるだけ除去するため、制御部10は、例えば、0.5mS毎に、連続5回受信信号レベルをA/D変換して取り込み、これらの平均値S1を算出する。加えて、自動車が移動しながら受信を行っていることを考慮し、Δt(例えば、50mS)の間隔をおいた後(ステップB4)、再び0.5mS毎に、連続5回受信信号レベルをA/D変換して取り込み、これらの平均値S2を算出する(ステップB5)。
【0084】
そして、平均値S1,S2を比較して、レベルの高い方をその送信局の受信信号レベル(Sメータ値)として決定する(ステップB6)。それから、制御部10は、フロントエンド16の受信周波数fを0.1MHz増加させて(ステップB7)、その受信周波数fが、FM放送帯の上限である90MHzに達したか否かを判断する(ステップB8)。90MHzに達していなければステップB2に移行して次の送信局をサーチする。
【0085】
受信周波数fが90MHzに達していれば、制御部10は、受信した各送信局について受信信号レベルの高い順にソートを行い(ステップB9)、そのレベルの高い順に選局受信部8に選局させる。そして、1局当たり例えば5秒間受信して夫々のFM多重データを受信し、ステップA3と同様にして、順次正受信率を測定する(ステップB10)。また、同時に、ネットワーク(放送局)の種類やサービス識別符号SIをも認識する。
【0086】
ここで、ステップB10における測定結果の一例を以下に示す。
【0087】
また、サービス識別符号SIは、その符号値に応じてパケットデータの内容が以下のものであることを示すように定められている。
SI データ内容
1 一般情報:逐次処理データ
2 一般情報:記録処理用文字データ
3 一般情報:記録処理用図形データ
4 交通情報:記録処理用文字データ
5 交通情報:記録処理用図形データ
6 交通情報:記録処理用リンクデータ(ナビゲーション地図用)
【0088】
以上のようにして各送信局の正受信率を求めると、制御部10は、送信局をネットワーク毎に分類する。ネットワークには、NHKネット,JFNネット,その他の独立系ネットがある。それから、正受信率の高い順にソートして、以下のような代替局候補リストを作成する(ステップB11)。
【0089】
以上のようにして、5分〜10分間隔毎に新たな代替局候補リストが作成されて更新される。
【0090】
再び、図1を参照する。制御部10は、ステップA4において、A局として選択されているNHKの送信局のうち、最も正受信率が高いものを代替局として選択する。即ち、上記リストでは、周波数85.1MHzのNHKを代替局A′局として選択決定する。
【0091】
次のステップA5では、A局=A′局であるか否かによって、現在受信中の送信局を代替局に切り替えて変更するか否かを判断する。即ち、両者の周波数が同一であるか否かによって、両者が同一である場合は変更する意味がないので選局切替えを行わずに処理を終了する。また、両者が異なる場合は、A局をA′局(85.1MHz)に切り替える(ステップA6)。
【0092】
それと同時に、B局についても、上記候補リストの内で最も正受信率が高いものを代替局B′局として、そのB′局(80.0MHz)に切り替えてから(ステップA7)、処理を終了する。
【0093】
以上の処理に従うと、ステップA1においてユーザにより動作モードが選択されて、例えば、DGPSによる補正精度をより高めるため、VICS優先モードからDGPS優先モードに変更してB局の選局切替え頻度を“3〜4フレームに1回”から“1フレームに1回”に高めると、それに伴って、ステップA306における受信劣化判定値Pnは25%から20%に変更される。
【0094】
従って、図8を参照して説明したように、ユーザが頻繁に利用する交通ルート上における、A局の送信エリアW→エリアEへの追従切替えは、受信劣化判定値Pnを20%に低下させたことによって、地点▲2▼で生じることなく動作モードの変更前の地点▲1▼の付近で生じるようになる。よって、A局から得られるVICS情報の内容(エリア)も以前と同様のタイミングで切り替わる。
【0095】
また、A局について代替送信局A′局に選局切り替えを行う場合は、B局についても同時に代替送信局B′局に選局切り替えを行うのは、B局は受信時間が非常に短いため、正受信率の測定を行うことができない。そして、ネットワークが異なる場合であっても、一般に、各地域夫々における送信局は同じ地点に存在するため、送信エリアの境界も、略一致することが多い。従って、A局の選局切替えと同時にB局も選局切替えすれば、受信状態を良好に維持することができると考えられる。
【0096】
以上のように本実施例によれば、FM多重受信部2の制御部10は、ユーザによる動作モードの設定に応じて、VICS情報を送信するA局とFM多重データの中にDGPS補正データが含まれているB局とを交互に受信する場合に、A局についての受信状態が劣化したと判定すると予め選択した代替送信局候補の中から最も正受信率の高いものを代替送信局として選局して追従するようにして、ユーザが表示・操作装置6を操作することでB局の受信切替え頻度が変更されると、その変更された切替え頻度に応じて受信劣化の判定基準値を変更するようにした。
【0097】
従って、B局の受信切替え頻度を上昇させたことでA局の受信状態が相対的に劣化しても、同時に判定基準値を低下させることで、A局の選局が代替送信局に切り替わるタイミングを切替え頻度を上昇させる前と略同じタイミングに調整することができる。
【0098】
即ち、ユーザが自動車で同じルート上を移動する場合にいつも利用しているVICS情報を、同じ代替送信局から略同じタイミングで得ることができるので、動作モードを変更した途端に突然異なるエリアのVICS情報を受信して戸惑うことなどがなく、通常通りに自動車を走行させることができる。
【0099】
また、本実施例によれば、制御部10は、受信中のFM多重データに含まれるデータパケットの正受信率を複数回求める毎に判定基準値との比較を行い、正受信率が所定回数連続で判定基準値を下回った場合に受信状態が劣化したと判定するので、一時的に正受信率が低下しただけの場合には劣化したと判定することがなく、受信状態の劣化判定を一層確実に行うことができる。
【0100】
更に、制御部10は、1つの送信局に対する受信電界強度の複数回の測定を所定時間をおいて複数回行い、その結果得られる複数の平均値の内の最高値に基づいて代替送信局候補を選択するので、マルチパスやフェージングの影響で受信電界強度のレベルが安定しない場合や、自動車で移動中に受信する場合でも、それらの影響をできるだけ排除して、代替送信局候補としてより相応しいものを選択することができる。
【0101】
そして、制御部10は、複数の代替送信局候補についてデータパケットの正受信率を求めて正受信率が最も高いものを代替送信局として選択するので、代替送信局として適当な送信局を確実に選択することができる。
【0102】
また、本実施例によれば、制御部10は、最初にB局が選局された場合に、DGPS補正データが得られた時点TMdtopから次回にDGPS補正データを取得するための予想時間TMdtop′を演算し、その予想時間TMdtop′に基づいて選局切替え時間TMchg を演算し、B局よりDGPS補正データが得られるとA局に選局を切替え、選局切替え時間TMchg に達するとA局からB局に選局を切替えて、交互に選局切替えを行うようにした。
【0103】
従って、B局の受信時間を極力短くした場合でも、選局切替え時間TMchg に基づいて、DGPS補正データを確実に得ることができる。また、選局受信部8側のRTCの精度が放送局側の時計の精度よりも劣る場合であっても、RTCにより実際に計測したフレーム周期Tdfrmに基づいて選局切替え時間TMchg を演算することにより、例えば、ビーコンから送信される信号を受信してTMchg を延長する場合のように、αを100等の大きな値に設定する場合でも、次回のB局の選局を確実に行うことができる。
【0104】
更に、本実施例によれば、制御部10は、選局切替え時間TMchg を1度演算して求めると、その選局切替え時間TMchg を起点として、次回の選局切替え時間をFM多重データの1フレーム周期Tdfrm′の整数(α)倍に設定するようにしたので、2回目以降の選局切替え時間の演算を容易にすることができる。
【0105】
加えて、本実施例によれば、制御部10は、ビーコン送受信部3がVICSのビーコンより送信される信号を受信すると、B局への選局切替えを一定時間停止するようにしたので、A局の受信効率を一層高めることができる。
【0106】
本発明は上記し且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
代替局選局手段を、代替送信局候補の数が一定値に達した場合は、サーチがFM放送帯の途中までであってもその時点で代替送信局の選択を中止するように構成しても良く、その場合は、処理時間の増加を抑制することができる。
選局切替え頻度を受信割合とするものに限らず、選局切替え頻度が一定の場合で1回の選局における受信時間の長さを受信割合としても良い。
代替局選局手段としては、必ずしも図3に示すフローチャートのステップB3〜B6のように構成するものに限らない。例えば、ステップB4〜B6を削除して、ステップB3における平均値S1を、そのまま当該送信局の受信信号レベルとして採用しても良い。
【0107】
また、ステップB3においても、必ずしも複数回測定した受信信号レベルを平均する必要はなく、例えば、複数回測定した受信信号レベルの最高値,若しくは最低値を当該送信局の受信信号レベルとして採用しても良い。更に、受信信号レベルの測定は、1回だけでも良い。
判定手段としても、必ずしも図2に示すフローチャートのように構成するものに限らない。例えば、判定基準値Pnを比較的低めに設定することによって、正受信率Rが一度でも受信劣化判定値Pnを下回った場合には、選局切替えを行うようにしても良い。また、必ずしもデータパケットの正受信率Rに基づいて受信状態の劣化判定を行うものに限らず、例えば、一定時間内における受信信号レベルの積分値などに基づいて判定を行っても良い。
図3のステップB10及びB11についても同様であり、前記積分値に応じて代替局候補リストを作成しても良い。
【0108】
ビーコン受信装置として、ビーコン送受信部3に代えて、受信機能だけを有するビーコン受信部を設けても良い。
選局受信部8は、A局,B局を自動選局するものに限らず、ユーザによって各受信周波数が設定されたA局,B局を、交互に選局するようにしても良い。
図1に示すフローチャートのステップS11を削除して、ステップS9またはS10において「YES」と判断するとステップS3に移行するようにし、新たに基準時刻TMdtopを取得して、TMdtop′及びTMchg を演算するようにしても良い。斯様に構成すれば、放送局の送信エリアが変わって、A局からA局′へ、または、B局からB局′へと選局対象が変化することにより、FM多重データの送信基準タイミングが変化した場合でも、対応することができる。
また、この場合、ステップS3においては、RTCに代わるタイマをゼロクリアすることにより、時刻ではなく、タイマをゼロクリアした時点からの相対時間によって以降の制御を行っても良い。この場合は、以降のステップにおける演算においては、TMdtop=0,とすることができる。
【0109】
更に、ステップS10において「YES」と判断した場合は、新たな基準時刻TMdtopを得ることができないのでステップS11に移行するようにし、ステップS9において「YES」と判断した場合は、ステップS3に移行して新たな基準時刻TMdtopに基づいてTMchg を演算するようにしても良い。
また、ビーコン送受信部3は必要に応じて設ければ良く、ビーコン送受信部3を削除した場合は、図1に示すフローチャートのステップS12及びS13を削除して良い。
ブロック同期時間のマージンTdsm についても、必要に応じて設ければ良い。(1)式により演算される予想時刻TMdtop′は、ナビゲーション装置4におけるGPS信号に基づく測位データについて要求される補正精度に応じて、FM多重データの1フレームの周期Tdfrmに乗じる係数αを適宜変更して良い。
【0110】
FM多重受信機に搭載されるRTCやタイマが十分高精度である場合には、処理ステップS11において(4)式によりTMchg を更新する場合に、新たに計測したフレーム周期Tdfrm′を用いるのに代えて、ステップS2で計測したフレーム周期Tdfrmを用いても良い。更に、ステップS3においても、フレーム周期Tdfrmを計測することなく、フレーム周期Tdfrmを予め一定値(例えば5秒)に定めておき、(1)式によりTMdtop′を演算しても良い。
VICS情報とDGPS補正データとを交互に受信するものに限らず、要は、一方の放送局が送信するFM多重データについてはその内のデータの一部のみを取得したい場合で、且つ、他方の放送局の受信効率をできるだけ向上させたい場合であって、仕様上、その取得希望データの送信タイミングが予想できるものについては適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における、動作モードの設定及び代替送信局への切替え処理にかかる制御部の制御内容を示すフローチャート
【図2】A局の受信状態の劣化判定を行う部分のフローチャート
【図3】代替送信局候補の選択処理の制御内容を示すフローチャート
【図4】A局,B局の受信切替え処理の制御内容を示すフローチャート
【図5】A局,B局を交互に受信する場合の一例を示すタイムチャート
【図6】全体の電気的構成を示す機能ブロック図
【図7】主に選局受信部の詳細な電気的構成を示す図7相当図
【図8】A局からB局への選局切替え頻度を上昇させた場合に、送信エリアの境界付近における受信状態の変化を説明する図
【符号の説明】
1は交通情報受信機(FM多重放送受信機)、2はFM多重受信部、3はビーコン送受信部(ビーコン受信装置)、6は表示・操作装置(受信割合変更手段)、8は選局受信部(選局切替え手段)、10は制御部(選局切替え手段,代替局選択手段,判定手段,選局追従手段,判定基準値変更手段,演算手段)を示す。
Claims (11)
- FM多重放送を行っている第1及び第2放送局を交互に選局して受信するものであって、
FM多重データの中に特定の取得希望データが含まれている前記第2放送局については、前記取得希望データが得られる所定時間内において受信するように選局を行い、それ以外の時間については、前記第1放送局を受信するように選局を切替える選局切替え手段と、
前記第1及び第2放送局の夫々について、現在の受信状態が劣化した場合に次に選局すべき代替送信局の候補を予め選択する代替局選択手段と、
前記第1放送局について、現在の受信状態が劣化したか否かを判定基準値に基づいて判定する判定手段と、
この判定手段により現在の受信状態が劣化したと判定された場合は、前記代替局選択手段により選択された代替送信局を選局して追従する選局追従手段とを備えたFM多重放送受信機において、
前記選局切替え手段による前記第2放送局の受信割合を変更するように構成された受信割合変更手段と、
この受信割合変更手段により変更された受信割合の上昇度合いに応じて、前記判定手段における前記判定基準値を低下させるように構成された判定基準値変更手段とを備えたことを特徴とするFM多重放送受信機。 - 前記判定手段は、受信中のFM多重データに含まれるデータパケットの正受信率を求め、その正受信率が前記判定基準値を下回った場合に受信状態が劣化したと判定することを特徴とする請求項1記載のFM多重放送受信機。
- 前記判定手段は、前記正受信率を複数回求め、その正受信率を求める毎に前記判定基準値との比較を行い、前記正受信率が所定回数連続で前記判定基準値を下回った場合に受信状態が劣化したと判定することを特徴とする請求項2記載のFM多重放送受信機。
- 前記代替局選択手段は、複数の代替送信局候補を予め選択すると共に、前記複数の候補について受信中のFM多重データに含まれるデータパケットの正受信率を求め、前記複数の候補の内で前記正受信率が最も高いものを代替送信局として選択することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のFM多重放送受信機。
- 前記代替局選択手段は、各送信局から送信される放送波の受信電界強度を複数回測定すると共にそれらの平均値を算出し、当該平均値に基づいて前記複数の代替送信局候補を選択することを特徴とする請求項4記載のFM多重放送受信機。
- 前記代替局選択手段は、1つの送信局に対する受信電界強度の前記複数回の測定を所定時間をおいて複数回行うと共に、その結果得られる複数の平均値の内の最高値に基づいて前記複数の代替送信局候補を選択することを特徴とする請求項5記載のFM多重放送受信機。
- 前記代替局選択手段は、前記複数の代替送信局候補の数が一定値に達すると、代替送信局の選択を中止することを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載のFM多重放送受信機。
- 最初に前記第2放送局が選局された場合に、当該第2放送局より前記取得希望データが得られた時点から次回に前記取得希望データを取得するための取得予想時間を演算し、その取得予想時間に基いて次回に前記第2放送局に選局を切替えるための選局切替え時間を演算する演算手段を備え、
前記選局切替え手段は、前記第2放送局より前記取得希望データが得られると前記第1放送局に選局を切替え、前記演算手段が演算した前記選局切替え時間に達すると、当該第1放送局から前記第2放送局に選局を切替えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のFM多重放送受信機。 - 前記演算手段は、前記選局切替え時間を1度演算して求めると、前記選局切替え時間を起点として、その次の選局切替え時間をFM多重データの1フレーム周期の整数倍に設定することを特徴とする請求項8記載のFM多重放送受信機。
- 前記第1放送局は、前記FM多重データとしてVICS情報を含むデータを送信する放送局であり、
前記第2放送局は、前記FM多重データとして、前記取得希望データたるDGPS補正データを含むデータを送信する放送局であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のFM多重放送受信機。 - VICSのビーコンより送信される信号を受信するためのビーコン受信装置を備え、
前記選局切替え手段は、前記ビーコン受信装置が前記ビーコンからの送信信号を受信すると、前記第2放送局への選局切替えを一定時間停止することを特徴とする請求項10記載のFM多重放送受信機。
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