JP3566058B2 - Fm多重放送受信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、異なる受信周波数を有する複数のFM多重放送を受信するFM多重放送受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両に対して渋滞や通行規制等の各種情報をFM多重放送で提供する道路交通情報通信システム(VICS)が実用化されており、利用者が所定のFM放送を受信することにより所望のVICSサービス画面を得ることができる。このVICS対応のFM多重放送受信機は、一般には表示装置を有するナビゲーション装置と組み合わせて使用されることが多い。
【0003】
また、最近では他のFM多重放送を利用して差動グローバルポジショニングシステム(以下、DGPSと称する)データを送信し、ナビゲーション装置に使用されるGPS受信機による測位位置を補正しようとする計画がある。このDGPSは、正確な位置が既知の場所においてGPS受信機によってGPS衛星電波を受信測位してその誤差を決定し、決定した誤差の補正係数等のデータをFM多重放送によって送信するものであり、これを受信したナビゲーション装置においてGPS受信機による測位位置に上述した誤差分の補正が加えられる。
【0004】
上述したナビゲーション装置においては、VICSデータに基づいて渋滞情報等の交通情報を取得し、DGPSデータに基づいて自車位置の補正を行おうとすると、VICSデータとDGPSデータの両方が必要となる。しかし、一般にVICSデータが多重化されたFM放送の受信周波数と、DGPSデータが多重化されたFM放送の受信周波数は異なっている。そこで、1台のFM多重放送受信機においてVICSデータが含まれるFM放送の受信周波数とDGPSデータが含まれるFM放送の受信周波数とを選択的に切り替えることによって、VICSデータとDGPSデータの両方を受信する場合が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、DGPSデータはFM多重放送データの一部に含ませて一定周期で配信されており、常に受信することができるわけではないことを考慮して、DGPSデータが受信されるタイミングでこのDGPSデータが含まれるFM放送を受信し、それ以外のタイミングではVICSデータが含まれるFM放送を受信していた。また、受信周波数の切り替えに要する時間を考慮して、DGPSデータの受信を開始する所定時間前には、受信周波数の切り替え動作を開始する必要がある。
【0006】
図10は、従来のFM多重放送受信機におけるDGPSデータの受信開始タイミングと受信周波数の切り替え動作の開始タイミングの一例を示す図である。同図に示すように、VICSデータの受信からDGPSデータの受信へ切り替えるタイミングは、DGPSデータの受信開始タイミングよりも一定時間Tだけ前に設定される。この一定時間Tは、選局回路に含まれるPLL回路のロックアップ時間の最大値(例えば20ms)に一定のマージンαmsを加えた値に設定されており、切り替え動作が終了して受信動作が安定した後にDGPSデータの受信を開始するようになっている。
【0007】
しかし、PLL回路のロックアップ時間の最大値を考慮して受信周波数の切り替え動作の開始タイミングを設定すると、切り替える前後の周波数差が少なくてPLL回路のロックアップ時間が短い場合には、不必要に早いタイミングで切り替え動作を開始することになる。したがって、受信周波数の切り替え動作を開始する前に受信していたVICSデータの受信を中断するタイミングがそれだけ早くなり、受信可能な周波数切り替え前のデータ(VICSデータ)が少なくなるという問題があった。また、これに伴って、受信データに欠落等が生じた場合に誤り訂正によって正常なデータを復元できる可能性が低くなる。このように、従来は切り替え前後の受信周波数の差やその他の各種の要因(例えば温度)にかかわらず、切り替え動作用に一定時間を確保していたため、特に受信周波数の差が少ない場合に無駄が多くなり、データ受信の効率が悪かった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、受信周波数を切り替えてデータ受信を行う際に、切り替え前のデータを効率よく受信することができるFM多重放送受信機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明のFM多重放送受信機は、異なる受信周波数に対応した複数のFM多重放送を受信し、これらに含まれる多重化データを復調する場合に、FM多重放送の受信周波数を切り替える際に実際の切り替え動作に必要な所要時間を求め、この求めた所要時間を考慮して受信周波数の切り替え動作の開始タイミングを設定し、この開始タイミングが到来したときにFM多重放送の受信周波数を切り替えている。したがって、切り替え動作用に確保する時間を必要最小限に抑えることができ、受信周波数を切り替える前に受信していたFM多重放送に含まれる多重化データを効率よく受信することができる。
【0010】
特に、実際に切り替え動作に必要な所要時間は、少なくとも切り替え前後のFM多重放送の受信周波数の差を考慮に入れて求めることが好ましい。一般には、受信周波数の差が大きなFM多重放送の切り替え動作には比較的長い時間が必要であり、反対に受信周波数の差が小さなFM多重放送の切り替え動作には比較的短い時間が必要となる。したがって、切り替え前後の受信周波数の差を考慮に入れることにより、切り替え動作に必要な所要時間を実状に適合した値として求めることが可能になる。
【0011】
また、受信周波数の切り替え先となるFM多重放送には、配信タイミングが既知の多重化データが含まれていることが好ましい。この配信タイミングを基準として、これより切り替え動作に必要な所要時間分先行するタイミングを切り替え動作の開始タイミングとして設定した場合に、切り替え元となるFM多重放送に含まれる多重化データを最も効率よく、少ない欠落状態で受信することができる。このような多重化データの代表的なものとしては、一定時間間隔で配信される差動グローバルポジショニングシステムデータが適している。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明を適用した一実施形態のFM多重放送受信機は、DARC(Data Radio Channel)方式を用いたVICS用のFM多重放送とDGPS用のFM多重放送とを相互に切り替えて受信する際に、切り替え動作用に確保する時間を実際に必要となる時間を考慮して可変に設定することに特徴がある。以下、一実施形態のFM多重放送受信機について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用した一実施形態のFM多重放送受信機の構成を示す図である。同図に示すFM多重放送受信機1は、アンテナ10で受信したFM放送信号からFM多重データを復調して格納するために、フロントエンド(F/E)12、中間周波増幅/FM検波回路(IF/DET)14、フィルタ回路16、LMSK(Level controlled Minimum Shift Keying )復調回路18、同期回路20、誤り検出訂正回路22、CPU24、メモリ26および選局回路30を含んで構成されている。また、このFM多重放送受信機1は、外部に接続されたナビゲーション装置2との間で各種のデータ通信を行うために入出力インタフェース(IF)部28を備えている。
【0014】
フロントエンド12は、アンテナ同調回路や高周波増幅回路、局部発振回路、混合回路等を含んでおり、アンテナ10から入力されるFM放送信号に対して高周波増幅を行うとともに所定の周波数変換を行う。例えば、受信したい所望の周波数のFM放送信号がフロントエンド12に入力されたときに10.7MHzの中間周波信号に変換される。中間周波増幅/FM検波回路14は、フロントエンド12から出力される中間周波信号を増幅するとともに同調動作を行い、その同調結果に対してFM検波処理を行うものである。フィルタ回路16は、FM検波後の信号に含まれる多重信号を分離するためのものである。DARC方式を用いたFM多重放送を考えた場合には、図2に示すように、FM検波後の信号には76kHz前後の多重信号が含まれており、フィルタ回路16によってこの信号成分のみが抽出される。
【0015】
LMSK復調回路18は、フィルタ回路16から出力されるLMSK変調信号に対して遅延検波を施し、ビットクロックの再生とビットデータ列の復調を行う。同期回路20は、LMSK復調回路18から出力されるビットデータ列に対してブロック同期とフレーム同期の検出を行うものであり、誤り検出訂正回路22は、この同期がとられたビットデータ列に対して、CRC(Cyclic Redundancy Check )コードによる誤り検出を行うとともに誤りがあった場合にはその訂正を行う。例えば、誤り訂正は(272,190)短縮化差集合巡回符号を縦横二重に用いた積符号によって行われ、高い確率で誤り訂正が行われる。
【0016】
CPU24は、このFM多重放送受信機1の受信周波数をVICS用あるいはDGPS用のいずれかに設定し、それぞれに対応して誤り検出訂正回路22から出力されるデータ(データパケット)を編集して、それより上位階層の各種データを作成する。メモリ26は、一部がCPU24の作業領域として使用され、他の一部がCPU24によって作成された各種データの格納領域として使用される。
【0017】
選局回路30は、FM多重放送受信機1の受信周波数を設定するためのものであり、フロントエンド12内の局部発振回路とともにPLL(位相同期ループ)を構成する。例えば、プログラマブルカウンタからなる分周回路を有しており、この分周比をCPU24からの指示によって変更することによりフロントエンド12内の局部発振回路の発振周波数を変えて、受信周波数の切り替えを行う。
【0018】
次に、DARC方式を用いたFM多重放送の階層構造の一部について簡単に説明する。上述したFM多重放送受信機1による処理の対象となるDARCの階層構造には、伝送路についての階層1、誤り訂正についての階層2、データパケットについての階層3等が含まれており、これらは各種の交通情報が含まれるVICSデータとGPSの測位位置に対する補正係数が含まれるDGPSデータとで基本的に共通している。
【0019】
伝送路についての階層1は、上述した中間周波増幅/FM検波回路14から出力されるFM検波後の信号(ベースバンド信号)に対応している。図2に示すように、FM検波後の信号には76kHz前後のFM多重信号が含まれており、このFM多重信号のみがフィルタ回路16によって分離され、LMSK復調回路18を通すことによりこのFM多重放送信号に対応したFM多重データが得られる。
【0020】
誤り訂正についての階層2は、誤り検出や誤り訂正を行う際のフレーム構造を示している。図3は、階層2に対応したフレーム構造を示す図である。同図に示すように、LMSK復調回路18から出力されるFM多重放送データは1フレームあたり合計で272ブロックからなり、この内190ブロックはデータパケットを含むブロックであり、残りの82ブロックはパリティパケットを含むブロックである。この82ブロックは、データパケットを含むブロックの間に分散して配置されている。
【0021】
同期回路20は、各ブロックの先頭部分に含まれるブロック識別符号BIC(Block Identify Code )を検出することによりブロック同期およびフレーム同期をとっている。また、誤り検出訂正回路22は、各ブロックに含まれるCRCに基づいて、データパケットを構成する各ビットデータの誤りを検出し、誤りを検出した場合にはパリティパケットあるいはパリティを用いてその訂正を行う。
【0022】
VICSデータは、図3に示した1フレーム内の190ブロックに含まれるデータパケットを用いて伝送される。また、DGPSデータは、この190ブロック内の先頭に位置する2つのデータパケットを用いて伝送される。
【0023】
階層3は、データパケットの構造を示しており、その詳細が図4に示されている。同図に示す各データパケットは、32ビットあるいは16ビットのプリフィックスと、残りの144ビットあるいは160ビットのデータブロックを含んで構成される。先頭のプリフィックスは、情報内容であるデータブロックの識別を行うために付加されており、サービス識別SI、復号識別フラグ、情報終了フラグ、更新フラグ、データグループ番号、データパケット番号からなっている。
【0024】
交通情報を含むVICSデータの場合には、上述したデータパケットに含まれるデータブロックが複数個集まって表示画面の各ページに対応する階層4のデータグループが形成される。また、DGPSデータの場合には、図5に示すように、2つのデータパケットに含まれるデータブロックが2個集まって、GPS測位位置の補正に必要なDGPSデータが含まれる階層4のデータグループが形成される。
【0025】
上述したCPU24およびメモリ26が所要時間設定手段、開始タイミング設定手段に、フロントエンド12および選局回路30が受信周波数切り替え手段にそれぞれ対応する。
【0026】
次に、本実施形態のFM多重放送受信機の動作を説明する。図6は、本実施形態のFM多重放送受信機の動作手順を示す流れ図である。図1に示すFM多重放送受信機1は、通常はVICSデータを受信しており、所定のタイミングで一定周期毎にDGPSデータの受信動作を行うようになっている。
【0027】
まず、CPU24は、選局回路30に指示を送って、受信周波数をVICSデータが多重化されているFM放送の周波数に設定する(ステップ100)。次に、CPU24は、切り替え所要時間テーブルに基づいて、VICSデータ受信からDGPSデータ受信への切り替え動作に必要な切り替え所要時間を求める(ステップ101)。
【0028】
図7は、切り替え前後の受信周波数差と切り替え動作に必要な切り替え所要時間との関係を示す図である。同図に示す点線は、受信周波数差を変えながら選局回路30に含まれるPLL回路のロックアップ時間を実測した結果を示している。また、実線は、この実測結果に基づいて回帰直線を求め、この回帰直線に対して一定の余裕度を加算したものである。切り替え所要時間テーブルは、この実線で示される受信周波数差と切り替え所要時間との関係を含んでおり、予めメモリ26に格納されている。
【0029】
CPU24は、VICSデータが多重化されているFM放送の受信周波数とDGPSデータが多重化されているFM放送の受信周波数との差を計算し、これに対応する切り替え所要時間を切り替え所要時間テーブルに基づいて求める。例えば、VICSデータが多重化されたFM放送の受信周波数が82.5MHzであり、DGPSデータが多重化されたFM放送の受信周波数が80.0MHzである場合には、受信周波数差は2.5MHzであり、これに対応する切り替え所要時間として約4.6msが求められる。
【0030】
次に、CPU24は、DGPSデータを受信するために受信周波数の切り替え動作を開始するタイミングに達したか否かを判定する(ステップ102)。この開始タイミングの判定方法については後述する。受信周波数の切り替え動作の開始タイミングに達していない場合には、現在の受信状態を維持してVICSデータの受信を継続し(ステップ103)、この受信したVICSデータをメモリ26に格納する(ステップ104)。
【0031】
具体的には、VICSデータが受信されて、誤り検出訂正回路22からこの受信したVICSデータに対応するデータパケットが出力されると、CPU24は、そのデータパケットをメモリ26内の作業領域に一時保存しながらデータの編集を行う。例えば、図4に示すサービス識別が4〜6のいずれかの交通情報が含まれるデータグループ(階層4)が作成され、メモリ26に格納される。このメモリ26に格納された編集後のデータは、必要に応じて入出力インタフェース部28を介してナビゲーション装置2に送られる。
【0032】
なお、実際には上述したステップ102〜104の各動作(DGPSデータの受信タイミングの監視、VICSデータの受信および格納)は、順番に行われるのではなく、並行して行われる。
【0033】
また、DGPSデータを受信するために受信周波数を切り替える動作を開始するタイミングに達すると、CPU24は、選局回路30に受信周波数の切り替え指示を送って、受信周波数の切り替え動作を開始する(ステップ105)。
【0034】
図8は、DGPSデータを受信するために受信周波数の切り替え動作を開始するタイミングを示す図である。DGPSデータは一定時間間隔で(現時点では4.896秒毎に)配信されており、受信周波数の切り替え動作を開始するタイミングは、この一定時間間隔で到来するDGPSデータの受信タイミングよりも、実際の切り替え動作に要する時間等を考慮して所定時間早い時間に設定されている。このDGPSデータの受信開始タイミングと切り替え動作の開始タイミングとの差である所定時間が上述したステップ101で求められた切り替え所要時間であり、DGPSデータの受信開始タイミングから切り替え所要時間だけ遡って受信周波数の切り替え動作の開始タイミングが設定される。
【0035】
受信周波数の切り替え動作が開始されると、CPU24は、選局回路30に指示を送って、受信周波数をDGPSデータが多重化されているFM放送の周波数に設定して、受信周波数の切り替えを行う(ステップ106)。切り替え動作終了後に、DGPSデータを受信し(ステップ107)、この受信したDGPSデータをメモリ26に格納する(ステップ108)。
【0036】
DGPSデータが受信されて、誤り検出訂正回路22からこの受信したDGPSデータに対応するデータパケットが出力されると、CPU24は、そのデータパケットをメモリ26内の作業領域に一時保存しながらデータの編集を行う。DGPSデータの場合には、図5に示したように、2つのデータパケットが一つのデータグループを形成しており、このデータグループに含まれるDGPSデータが抽出されメモリ26に格納される。このメモリ26に格納されたDGPSデータは、必要に応じて入出力インタフェース部28を介してナビゲーション装置2に送られる。
【0037】
このように、本実施形態のFM多重放送受信機1は、受信周波数を切り替えてVICSデータとDGPSデータとを受信する場合に、VICSデータが多重化されたFM放送の受信周波数からDGPSデータが多重化されたFM放送の受信周波数に切り替えるときに、これら2つの受信周波数の差に基づいて実際に切り替え動作に必要な最小限の時間を求めて受信周波数の切り替え動作の開始タイミングを設定することにより、切り替え動作用に確保する時間を必要最小限に抑えて切り替え前のFM放送に含まれるVICSデータを最大限有効に受信することができる。
【0038】
例えば、従来は、切替周波数差に関係なく一律に、切り替え動作に要する時間の最大値(例えば20ms)に所定のマージン(αms)を加算した時間を切り替え動作用に確保していたが、本発明では、上述したように切替周波数差が2.5MHzの場合には、切り替え動作用に確保する時間は約4.6msでよく、従来に比べると約15ms以上短縮できることになる。1ブロックの受信に要する時間は18msであるため、約1ブロック分多くVICSデータを受信することができ、DGPSデータ受信時に欠落したVICSデータを誤り検出訂正回路22によって復元できる可能性を高めることができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、受信周波数の切り替え前後の周波数差に基づいて切り替え所要時間テーブルを参照して実際の切り替え動作に要する最小限の所要時間を求めるようにしたが、他の要因を考慮して切り替え動作の所要時間を求めるようにしてもよい。
【0040】
図9は、切り替え方向を考慮した場合の切り替え前後の受信周波数差と切り替え所要時間の関係を示す図である。同図において、実線は受信周波数を低い方から高い方に切り替える場合を、点線は受信周波数を高い方から低い方に切り替える場合をそれぞれ示している。選局回路30に含まれるPLL回路の構成によっては、受信周波数を切り替える方向によって切り替え動作の所要時間が異なる場合があり、このような場合には図9に示す内容を切り替え所要時間テーブルとしてメモリ26に格納しておいて、このテーブルに基づいて実際の切り替え動作に必要な最小限の時間を求め、これにより切り替え動作の開始タイミングを設定すればよい。
【0041】
また、フロントエンド12や選局回路30の構成によっては温度によって切り替え動作に要する時間が変動する場合も考えられるが、この場合には温度と切り替え所要時間の関係をテーブルとしてメモリ26に格納しておいて、実際に測定した温度に基づいてこのテーブルを参照して実際の切り替え所要時間を求め、これにより切り替え動作の開始タイミングを設定すればよい。また、これ以外に、切り替え所要時間が変動する要因があれば、その要因をパラメータとして実際の切り替え動作に必要な最小限の所要時間を求めるようにすればよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、図7に示した受信周波数差と切り替え所要時間との差をテーブルとして格納しておいて、このテーブルに基づいて実際に必要な切り替え所要時間を求めるようにしたが、受信周波数差やその他のパラメータと切り替え所要時間との関係が比較的単純な関数で表されるような場合には、テーブルの代わりに所定の関係式を格納しておいて、切り替え所要時間を求めるようにしてもよい。
【0043】
例えば、図7において点線で示した実測値の回帰直線を最小二乗法を用いて求めると、切り替え所要時間をy、受信周波数差をxとすると、y=0.4988x+1.9575となる。したがって、このようにして求めた切り替え所要時間yに一定のマージン(例えば約1.5ms)を加算した値を実際に求めようとする切り替え所要時間y′とすると、y′=0.4988x+3.5の関係が導かれる。この関係式を用いて受信周波数差xが2.5MHzの場合の切り替え所要時間yを求めると約4.7msとなる。
【0044】
また、上述した実施形態では、VICSデータとDGPSデータとを受信するためにFM放送の受信周波数を切り替えるようにしたが、VICSデータ以外の文字放送を受信中にVICSデータを定期的に受信するためにFM放送の受信周波数を切り替える場合等に適用することができる。
【0045】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、FM多重放送の受信周波数を切り替える際に実際の切り替え動作に必要な所要時間を求め、この求めた所要時間を考慮して受信周波数の切り替え動作の開始タイミングを設定し、この開始タイミングが到来したときにFM多重放送の受信周波数を切り替えているため、切り替え動作用に確保する時間を必要最小限に抑えることができ、受信周波数を切り替える前に受信していたFM多重放送に含まれる多重化データを効率よく受信することができる。特に、少なくとも切り替え前後のFM多重放送の受信周波数の差を考慮に入れることにより、実際に切り替え動作に必要な所要時間を実状に適合した値として求めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態のFM多重放送受信機の構成を示す図である。
【図2】階層1の伝送路信号を示す図である。
【図3】階層2に対応したフレーム構造を示す図である。
【図4】階層3のデータパケットの構造を示す図である。
【図5】2つのデータパケットに含まれるDGPSデータの構造を示す図である。
【図6】本実施形態のFM多重放送受信機の動作手順を示す流れ図である。
【図7】切り替え前後の受信周波数差と切り替え動作に必要な切り替え所要時間との関係を示す図である。
【図8】DGPSデータを受信するために受信周波数の切り替え動作を開始するタイミングを示す図である。
【図9】切り替え方向を考慮した場合の切り替え前後の受信周波数差と切り替え所要時間の関係を示す図である。
【図10】従来のFM多重放送受信機におけるDGPSデータの受信開始タイミングと受信周波数の切り替え動作の開始タイミングの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 FM多重放送受信機
2 ナビゲーション装置
12 フロントエンド(F/E)
14 中間周波増幅/FM検波回路(IF/DET)
16 フィルタ回路
18 LMSK復調回路
20 同期回路
22 誤り検出訂正回路
24 CPU
26 メモリ
28 入出力インタフェース(IF)部
30 選局回路
Claims (3)
- 異なる受信周波数に対応した複数のFM多重放送のそれぞれに含まれる多重化データを受信するFM多重放送受信機であって、
前記複数のFM多重放送の中の一方の受信動作中に他方の受信動作に移行する際に実際に切り替え動作に必要な所要時間を、少なくとも切り替え前後の前記FM多重放送の受信周波数の差を考慮に入れて求める所要時間設定手段と、
前記所要時間設定手段によって求められた所要時間を考慮して、受信周波数の切り替え動作の開始タイミングを設定する開始タイミング設定手段と、
前記開始タイミング設定手段によって設定された切り替え動作の開始タイミングが到来したときに、前記FM多重放送の受信周波数を切り替える受信周波数切り替え手段と、
を備えることを特徴とするFM多重放送受信機。 - 請求項1において、
前記受信周波数切り替え手段による受信周波数の切り替え先となる前記FM多重放送には、配信タイミングが既知の多重化データが含まれており、
前記開始タイミング設定手段は、前記配信タイミングより前記所要時間設定手段によって求められた所要時間だけ前のタイミングを受信周波数の切り替え動作の開始タイミングとして設定することを特徴とするFM多重放送受信機。 - 請求項2において、
前記配信タイミングが既知の多重化データは差動グローバルポジショニングシステムデータであることを特徴とするFM多重放送受信機。
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