JP3734953B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非磁性支持体の表面側に磁性層、背面側にバックコート層を備えた磁気テープなどの磁気記録媒体、特にバックコート層が特定の組成からなる配合物及び配合物の特定の混練処理により得られた磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より磁気記録媒体において、そのバックコート層を特定の組成のものとするものが種々提案されている。
例えば、「非磁性支持体の一方の磁気記録層を形成し、他方の面にバックコート層を形成してなる磁気記録媒体であって、前記バックコート層が、樹脂結合剤100重量部に対し吸油量が50〜70cc/100g、pH6.0〜12のカーボンブラックを40〜180重量部含有することを特徴とする磁気記録媒体。」(特開平4−44626号公報)、 「非磁性支持体の表面側に磁性層、背面側にバックコート層を備えてなる磁気記録媒体において、上記バックコート層中に、平均粒子径0.01〜0.035μmの微粒子状カーボンブラックと、平均粒子径0.08〜0.5μmの粗粒子状カーボンブラックと、グラファイト粒子および四フッ化エチレン樹脂粉末より選ばれる少なくとも1種の粉末とを含有することを特徴とする磁気記録媒体。」(特開昭64−50230号公報)、
「非磁性支持体の表面側に磁性層、背面側にバックコート層を備えてなる磁気記録媒体において、上記バックコート層中に、平均粒子径0.01〜0.035μmの微粒子状カーボンブラックと、平均粒子径0.1〜0.5μmのグラファイト化カーボンブラックとを含有することを特徴とする磁気記録媒体。」(特開平1−134717号公報)、
「非磁性支持体の一面に磁性層を有し、他面にカーボンブラックと結合剤及び必要により無機質粉末を含み、且つ厚さが2μm以上のバック層を有する磁気記録媒体において、該バック層は平均粒子サイズが10〜30mμの微粒子のカーボンブラックと150〜500mμの粗粒子のカーボンブラックの少なくとも2種を含み、且つ、前記2種のカーボンブラックと無機質粉末の総和(P)と結合剤(B)の比(P/B)が重量比で1/0.5〜1/3.5の範囲であることを特徴とする磁気記録媒体。」(特公平4−81256号公報)、
「非磁性支持体上に強磁性粉末とカーボンブラックとを結合剤中に分散させた磁性層を設けた磁気記録媒体であって、
前記結合剤はアミン変性ビニル単位及び酸性官能基含有ビニル単位とを有する共重合体を含有し、
前記カーボンブラックの比表面積が90〜330m2/gであり、DBP吸油量が45〜120ml/100gである磁気記録媒体。」(特開平7−153055号公報)等である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の磁気記録媒体では、種々の欠点がある。例えば前記特開平4−44624号公報記載の磁気記録媒体のバックコート層は、耐久走行性が良好で、ドロップアウトが少ないとしているが、吸油量50〜70cc/100gのカーボンブラックは、分散時のP/Bを2.5/1以上と、最終的なねらいとしているP/Bよりもかなり高い比率で行なわないと、凝集物が残り、充分な分散が行えない。
特開昭64−50230号公報記載の磁気記録媒体のバックコート層は表面平滑性が良好で、かつ金属、プラスチック製両ガイドピンに対する摩擦係数が低いとしているが、微粒子カーボンブラック/粗粒子カーボンブラックの重量比がこの範囲では、粗粒子カーボンブラックの重量比が高すぎて、バックコート層の粗大突起成分が多くなり、磁性層への裏写りによるS/Nの低下がおこる。
特開平1−134717号公報記載の磁気記録媒体のバックコート層は表面平滑性が良好で、かつ金属、プラスチック製両ガイドピンに対する摩擦係数が低いとしているが、微粒子カーボンブラック/粗粒子グラファイト化カーボンブラックの重量比がこの範囲では、粗粒子グラファイト化カーボンブラックの重量比が高すぎて、バックコート層の粗大突起成分が多くなり、磁性層への裏写りによるS/Nの低下がおこる。
前記特公平4−81256号公報記載の磁気記録媒体のバックコート層は効率的な塗料作成方法については詳しい記載がなされておらず、また実施例に記載されている結合剤では、現在要求されている高密度記録に対して、充分なS/N特性と耐久性を確保できない。
又、前記特開平7−153055号公報記載の磁気記録媒体では、比表面積が90〜330m2/gであり、DBP吸油量が45〜120ml/100gのカーボンブラックと強磁性粉末をアミン変性ビニル単位と、酸性官能基変性ビニル単位とを有する結合剤中に分散させた磁性層をもつ磁気記録媒体は、帯電防止効果と、電磁変換特性に優れるとあるが、塗料作成方法が本発明とは異なる。
そして、バックコート塗料の作成は、一般に、ボールミル、サンドグラインダーミル、アトライターミルなどのメディア攪拌型分散機により行なわれるが、短時間では均一な分散が行なわれないために、生産効率が悪い。そこで、加圧ニーダー等で組成成分の混練を行った後、サンドグラインダーミル等で分散を行うと効率の良い生産が行なえる様になる。但し、この場合サンドグラインダーミルでの分散時の分散適性粘度、分散に適した顔料(カーボンブラック)量と結合剤量との比(以下P/Bと略す)から、塗布を行うための塗布適性粘度、最終P/Bとするために、レットダウン(LD)をおこなうが、この際にLDショックを起こし易く、せっかく分散工程で充分な分散を行っても、LDショックによる光沢の低下、凝集の発生によりバックコート層の表面性を悪化させてしまうことが多く、塗料の安定性が充分であるとは言えない。表面性の悪いバックコート層では、バックコート層から磁性層への裏写りによるS/Nの低下が起こる。
しかしまたその一方で、バックコート層の表面を平滑化することにより、VHSカセットなどに組み込まれているテープガイドに対する走行開始時のトルクが上昇し、リワインド不良等の問題が発生する可能性が高くなる。
よって本発明では、塗料作成時の生産効率が良く、塗料安定性も良好で、かつ、VHSカセット等のガイドに対する摩擦性も良好な磁気記録媒体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記の課題を解決すべく鋭意研究の結果、結合剤が特定の樹脂結合剤であり、カーボンブラックを特定量含有する組成配合物であって、且つ該組成配合物の混練を特定の条件下で行なうことにより前記の課題が解決できることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、(1)非磁性支持体の表面側に磁性層、背面側にバックコート層を備えてなる磁気記録媒体において、該バックコート層が、樹脂結合剤(B)100重量部に対して、平均粒子径が18〜25nm、DBP吸油量が90〜125cc/100gであるカーボンブラック(P)を50〜120重量部(P/B=0.5/1〜1.2/1)含有し、かつ平均粒子径150〜500nmの大粒径カーボンブラックまたはカーボングラファイトを前記カーボンブラック100重量部に対して0.3〜2.5重量部含有し、樹脂結合剤の配合成分として少なくとも、アミン変性ビニル単位及び酸性官能基含有ビニル単位とを同時に有する塩化ビニル系共重合体を含有する組成配合物を不揮発分濃度=45〜60%、P/B=1.5/1〜3.5/1を満足するように混練を行った後、希釈分散を行うことによって形成された、ことを特徴とする磁気記録媒体、(2)塩化ビニル系共重合体のアミン変性ビニル単位の含有量が0.03〜2.3wt%である前記(1)記載の磁気記録媒体、(3)塩化ビニル系共重合体の酸性官能基含有ビニル単位の含有量が0.05〜1.8wt%である前記(1)記載の磁気記録媒体、に関する。
本発明のバックコート層に用いるカーボンブラック(P)は平均粒子径が18〜25nm、DBP吸油量が90〜125cc/100gのものであり、これを樹脂結合剤(B)100重量部に対して、50〜120重量部(P/B=0.5/1〜1.2/1)含有するものである。更に本発明では平均粒子径150〜500nmの大粒径カーボンブラックまたはカーボングラファイトを前記カーボンブラック100重量部に対して0.3〜2.5重量部含有するものである。
微粒子カーボンブラックの平均粒子径が18nm未満では分散性(光沢)が上がらないし、25nmを超えるものでは表面平滑性が悪化し、磁性層のS/Nが低下する。
本発明の微粒子カーボンブラックのDBP吸油量は90〜125cc/100gである。DBP吸油量が90cc/100g未満では混練工程で、できた凝集物が解砕されにくいために、分散工程を高P/Bで行なわないと分散できない。しかし、希釈工程でP/Bと不揮発分濃度(以下本発明において、配合物の合計重量に溶剤の重量を加えた配合処方の全重量と配合物の合計重量との割合を不揮発分濃度とし、NVと略記する)を下げることとなるが、この際に最終P/Bとの差が大きくなるため、粘度調整(レットダウン)(LD)時に、LDショックを起こし易い。
125cc/100g超えるものではLDショックを起こしにくいが、分散光沢が上がり難く、表面粗さも悪化傾向にある。
この微粒子カーボンブラックの含有量は結合剤100重量部に対して50重量部未満では結合剤の割合が高くなり、摩擦係数が高くなり、磁性層とのブロッキングが起こりやすい。又120重量部を越えるものでは結合剤の割合が少なくなり、バックコート層が脆くなり、削れ性が悪くなる。
よってカーボンブラックの含有量としては、結合剤100重量部に対して50〜120重量部の範囲(以下本発明において、微粒子カーボンブラックと結合剤との重量比を、結合材料を基準にして示し、これをP/Bと略記する。)P/B=0.5/1〜1.2/1が適当である。
バックコート塗料の作成は、分散工程を経た後、粘度調整(レットダウン)工程を経て作成される。カーボンブラックの分散性を高めるためには、分散工程で、分散の最適粘度、最適P/Bとなるように調整されなければならず、その後の塗布性に適した粘度への粘度調整工程で、溶剤、樹脂添加によるレットダウン(LD)が行なわれる。分散工程では、最終塗料よりも、粘性は高めに、P/Bも高めに設定した方が効率の良い分散が行なわれる。
しかし、分散時のP/Bと最終P/Bの差が大きいと、LD時にレットダウンショックを起こし易く、せっかく分散工程で充分な分散を行っても、LD後は光沢の低下、凝集が発生してバックコート層の表面性を悪化させてしまう。
よって、表面平滑性が良好で、LDショックが少なく、分散工程で均一に分散された状態を維持しながら、最終P/Bにレットダウンできるカーボンブラックに関しては、カーボンブラックの平均粒子径が18〜25nmで、かつDBP吸油量が90〜125cc/100gがよい。
このようなカーボンブラックとしては、三菱化学(株)社製の#990B、#650B、#40B、などのカーボンブラックが挙げられる。
バックコート層の表面性は、磁性層への裏写りを考慮すると、平滑性が要求される。また一方で、平滑化されることにより、VHSカセットなどに組み込まれているテープガイドに対する走行開始時のトルクが上昇し、リワインド不良等の問題が発生する。
このため、前述のカーボンブラック塗料に、平均粒子径150〜500nmの大粒径カーボンブラックもしくはカーボングラファイトを、微粒子カーボンブラック100重量部に対し、0.3〜2.5重量部含有させると、S/N特性に対しても、テープガイドに対する摩擦特性もどちらも良好な磁気記録媒体を得ることができる。
大粒径カーボンブラックまたはカーボングラファイトの粒子径が150nm未満では金属、プラスチック等のガイドに対する摩擦係数が高くなる。500nmを超えるものでは粗大突起による磁性層への裏写りにより、S/Nが低下する。
大粒径カーボンブラック、カーボングラファイトの添加量は前記本発明の微粒子径のカーボンブラックの0.3〜2.5重量部である。該添加量が0.3重量部未満では金属、プラスチック等のガイドに対する摩擦低下の効果が見られない。又2.5重量部を超えるものでは裏写りによるS/Nの低下がおこる。
それ故、バックコート層に添加する、大粒径カーボンブラック、カーボングラファイトは粒子径150〜500nmで、その添加量は、微粒子カーボンブラック100重量部に対し、0.3〜2.5重量部が良い。
このような大粒径カーボンブラックまたはカーボングラファイトはコロンビヤン・カーボン日本(株)社製のSevacarb MT-CI, Huber社製 MT N990などのカーボンブラックまたは三菱化学(株)社製の#4100Bなどのカーボングラファイトが挙げられる。
また、近年テープガイドはクロムメッキ等が施された金属ガイドと、ポリアセタール等のプラスチックガイドの2つの材質仕様のものがあり、双方の材質のガイドに対して低トルクを実現させるためには、カーボングラファイトの方がより好ましい。
バックコート塗料は、一般に、ボールミル、サンドグラインダーミル、アトライターミルなどのメディア攪拌型分散機を用いて、混練を行なわずに作成されるが、短時間では均一な分散が行なわれないために、生産効率が悪い。このようなメディア攪拌型分散機の処理(生産効率)を向上させるための前処理として、加圧ニーダー等で組成成分の混練を行った後、分散を行なうと効率の良い生産が行なえる様になる。
このような混練は、P/Bが1.5/1〜3.5/1、不揮発分濃度(NV)45〜60%の範囲で行なわれる。カーボンブラックに対して結合剤と溶剤が多すぎると(P/Bが低い及び/又はNVが低い場合)混練時の粘土状の高粘性塗料が柔らかくなるために、混練時のシェアがかからずに光沢が上がらない。カーボンブラックに対して結合剤と溶剤が少なすぎると(P/Bが高い及び/又はNVが高い場合)混練時の粘土状の高粘性塗料が硬くなり過ぎて、十分な混練が行なえず光沢が上がらない。いずれの場合も、上記の範囲を外れると、カーボンブラックに結合剤を十分になじませることができないため、分散機に投入して、要求される光沢(分散度)を得るためには長時間を要したり、また長時間の分散を行っても分散不良となり、S/Nが低下することとなる。
このような混練は、加圧ニーダー、オープンニーダー、連続ニーダー、エクストルーダー、二本ロールミル、などで行なえばよいが、混練後の希釈がし易く溶剤組成の変化などが起きにくい密閉構造を採ることの可能な混練機が好ましい。
この後の分散は、上記の混練物を、分散機で分散可能になるように、P/BやNVを混練機またはタンクで調整した後に行なわれる。このような分散に適したP/BやNVは、以下のようにすれば良く、P/Bについては、できるだけ高くすることによって分散効率が向上し、とくに0.8/1〜3.5/1が好ましく、またNVは塗料の組成や、分散機の種類によっても最適点は異なるが、5〜35%の間で行なうことが好ましく、15〜30%の間で行なうと最も効率が高くできるためにとくに好ましい。
このような分散に使用される分散機は、サンドグラインダーミル、ボールミル、アトライターミルのようなメディア攪拌型分散機であれば、いずれも使用可能であるが、連続生産が可能であるためにサンドグラインダーミルが好ましい。また、このような分散機に用いられる分散メディアとしては、各種のガラスビーズ、各種のセラミックビーズ、金属ビーズなどがあるが、塗料への不純物混入の少ないことから無ソーダガラス系のガラスビーズが好ましく、さらに不純物混入を減少させることからジルコニアビーズが最も好ましい。
なお、この発明においては、バックコート層中に、前記各成分と共に必要に応じて補強剤として、非磁性の無機化合物粉末や、潤滑剤を添加することができる。
上記無機化合物粉末としては、従来より磁気記録媒体のバックコート層に配合されている種々の非磁性粉末の何れも使用可能であり、その具体例としてAl2O3、Cr2O3、TiO2、α−Fe2O3、BaSO4、CaCO3、BaCO3、MgCO3、SiCなどが挙げられ、これらのうちCaCO3および/又はα−Fe2O3が特に有効であり、かつ平均粒子径0.05〜0.5μm程度のものがさらに好ましく、これらは2種以上を使用することも可能である。また、これらの無機化合物粉末の配合量は、前記微粒子カーボンブラックに対して、0.3〜20重量%程度とするのが良い。
前記潤滑剤としては、やはり従来より磁気記録媒体のバックコート層に使用されている、高級脂肪酸、脂肪酸エステル類、シリコーンオイルの何れも使用可能である。また、界面活性剤等の分散剤、その他の公知の種々の添加剤を必要に応じて使用することができる。
本発明の結合剤は、アミン変性ビニル単位と酸性官能基含有ビニル単位とを同一の分子中に含有する塩化ビニル系共重合体を用いることで、優れた分散性と塗料安定性とをもつバックコート塗料を作成することが出来、バックコートの表面平滑性を得て、優れた電磁変換特性を得ることが出来る。
本発明の結合剤に含有される前記塩化ビニル系共重合体に含まれるアミン変性ビニル単位の含有量は0.03〜2.3wt%が好ましく、より好ましくは、0.05〜2.0wt%、特に0.5〜1.5wt%が好ましい。アミン変性ビニル単位の含有量が多すぎると塗料の安定化が悪化しやすくなり、少なすぎるとカーボンブラックの分散性が悪化しやすくなる。また、酸性官能基含有ビニル単位の含有量は0.05〜1.8wt%が好ましく、より好ましくは、0.1〜1.5wt%、特に0.5〜1.5wt%が好ましい。酸性官能基含有ビニル単位の含有量が多すぎると、バックコート塗料のチクソトロピー性が増加しやすくなり、塗布したバックコート層の表面平滑性が低下しやすい。また、少なすぎるとバックコート塗料の安定性が悪化して凝集物が生じやすく、バックコート層の表面性が悪化してしまう。
本発明に用いる塩化ビニル共重合体に含まれるアミン変性ビニル単位は、アミノ基を含む。アミノ基としては非置換アミノ、置換アミノのいずれであっても良く、例えば前記酸性官能基含有ビニル単位を含む塩化ビニル系共重合体と、後述するアミン化合物とともに処理することで導入することが出来る。なお、アミン変性ビニル単位には、さらに下記酸性官能基含有ビニル単位に含まれる官能基として例示した種々の官能基が含まれても良い。
酸性官能基含有ビニル単位含まれる官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基等を挙げることができ、これらの官能基を少なくとも一種以上含有しているビニル単位である。これらのビニル単位としては、上記の官能基をもつものであればどのようなものであってもよい。例えばカルボキシル基を有するものとしては、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、およびメタクリル酸等が挙げられ、スルホン酸基を有するものとしては、スチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、メタクリルスルホン酸ソーダ、スルホエチルアクリレート等を挙げることができる。これらのうちでは、カルボキシル基を有するマレイン酸、フマル酸、スルホン酸基を有するスルホエチルアクリレートやメタクリルスルホン酸ソーダ、リン酸基を有する2−アシッドホスホオキシエチルメタクリレート等が特に好ましい。
本発明の磁気記録媒体に用いる結合剤に含有する共重合体は、前記アミン変性ビニル単位および酸性官能基変性ビニル単位を有する塩化ビニル系の共重合体で、塩化ビニル、アルキルカルボン酸ビニルエステル、さらに必要に応じてビニルアルコールを含む。
これらの構成単位のうち、アルキルカルボン酸ビニルエステルとしては、原料価格等の関係から、酢酸ビニル等を用いることが好ましいが、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等を用いることもできる。また、ビニルアルコールは前記アルキルカルボン酸ビニルエステルのアルキルカルボン酸部分をケン化することで得られる。アルキルカルボン酸ビニルエステルの含有量は、0.5〜10wt%,より好ましくは1.0〜5.0wt%である。また必要に応じて含有しても良い成分としてビニルアルコールの含有量は、0〜8.0wt%、より好ましくは3.0〜6.0wt%である。これらを除く残部は実質的に塩化ビニルであることが好ましい。アルキルカルボン酸ビニルエステルの含有量が多すぎると、バックコート塗料としたときカーボンブラックとの親和性が低下しやすくなり、分散性が悪化しやすい。また少なすぎると、樹脂の溶解性が悪化しやすくなる。必要に応じて添加してもよいビニルアルコールの含有量が多すぎると、ケン化率が高いことになり、共重合体の熱安定性が低下しやすく、保存特性が悪化しやすくなる。
共重合体の平均重合度は、好ましくは200〜800、より好ましくは300〜500である。平均重合度が高すぎると共重合体の溶解性、分散性が悪化しやすく、低すぎるとバックコート層強度が低下しやすくなり、バックコート層のケズレなどが発生し、ドロップアウト等の増加につながる。
なお、このような共重合体にはさらに0.5wt%程度以下の範囲で他の単量体成分、例えばアリルグリシジルエーテルや2−ヒドロキシメチルメタクリレート等が含まれてもよい。
本発明で用いる共重合体は、どのように製造されたものであってもよい。例えば、塩化ビニル、アルキルカルボン酸ビニルエステル、さらに例えばマレイン酸やフマル酸等、前記例示した酸性官能基含有ビニル単位に含まれる官能基を有する単量体を懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法等を用いて共重合させる。得られた中間生成物の共重合体を、アルコール等の有機溶剤とともにKOH,NaOH等のアルカリあるいは塩酸、硫酸等の酸を触媒としてケン化を行なう。この際、後述するアミン化合物を添加し、一定時間所望のケン化度が得られるまで適当な温度で攪拌することで得られる。なお、このようにして得られた共重合体には、ビニルアルコールが含まれる。また、前記得られた中間生成物の共重合体をアルコール等の適当な溶剤および後述するアミン化合物を添加して適当な温度で反応させることで、ビニルアルコールを含まない共重合体を得ることができる。
前述のアミン変性に用いられるアミン化合物としては、脂肪族アミン、脂環状アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン、アルコキシアルキルアミン、等の第1級、第2級もしくは第3級アミンがあり具体的にはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ナフチルアミン、アニリン、o−トルイジン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ジイソブチルアミン、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2−メトキシエチルアミン、N−メチルアニリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソブチルアミン、トリデシルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルジフェニルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、2,4−ルチジン、キノリン、モルホリン、タウリン酸ナトリウム、スルファニル酸カリウム、セチルアミンスルホン酸、ジアミノプロパンおよびヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
このような共重合体を結合剤中に含有することで、すぐれた分散性と塗料安定性とをもつバックコート塗料を得ることができる。なお、上記共重合体にかえて、アミン変性ビニル単位を有する共重合体と、酸性官能基含有ビニル単位を有する共重合体とを用い、それぞれ混合して用いても、本発明で用いるアミン変性ビニル単位と酸性官能基含有ビニル単位とを同一の共重合体中に含有するものを用いた場合と同等の効果は得られない。
本発明に用いられる結合剤は、前記共重合体を結合剤総重量の20〜80wt%含有し、さらに必要に応じて他の樹脂を1種以上併用することが好ましい。併用する樹脂として好ましいのは、一層の分散性向上やバックコート層の削れ等の物理的特性の向上を目的として添加するポリウレタン樹脂が挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては通常このような磁気記録媒体に用いられるものはいずれも使用できるが、カーボンブラック等の分散性をさらに向上させる点からは極性基を有するものを用いることが好ましい。極性基をもたないポリウレタンを用いるとカーボンブラック等の分散性が低下し、Ra等で示される表面性が悪化して磁性層に影響し、電磁変換特性を低下させる原因となる。
極性基としては、イオウを含有するスルホン酸基、硫酸基またはそれらのエステルもしくは塩、リンを含有するホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基またはそれらのエステルもしくは塩、あるいはカルボン酸基等を一種以上含むものが好ましく、特に好ましいのはスルホン酸基(−SO3Y)、カルボン酸基(−COOY)、ホスホン酸基(−PO3Y)等である。ただし、YはH、アルカリ金属のいずれであってもよい。これらの極性基はポリマー1分子あたり0.1〜5ケ程度含まれていることが好ましい。
ポリウレタン樹脂の含有量は樹脂の総計に対して20〜80重量%が好ましい。含有量が多すぎるとブロッキングしやすく、走行耐久性が悪化する傾向をもつ。一方少なすぎるとバックコート塗膜が硬くてもろくなりやすく、バックコート削れ等の原因になりやすい。
結合剤を硬化する架橋剤としては、各種ポリイソシアナート、特にジイソシアナート等を用いることが好ましい。特に、トリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、メチレンジイソシアナートの1種以上が好ましい。このような、架橋剤を用いることで、前記共重合体の窒素原子、水酸基、活性水素基等と反応し、またポリウレタンやポリエステルの活性水素基等と架橋反応してバックコート層の硬化が行なわれる。架橋剤の含有量は結合剤樹脂100重量部に対して、10〜30重量部とすることが好ましい。
用いる支持体に特に制限はなく、目的に応じて各種の可撓性樹脂の中から選択した材料を、各種規格に応じてテープ状などの所定形状および寸法とすればよい。例えば可撓性樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステルやポリアミドなどのフィルム状材料が挙げられる。 用いられる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、トルエン等の芳香族系、などの溶剤の1種、または2種以上を目的に応じて選択すればよい。
バックコート層の塗設に際し、公知の方法で塗料を塗設、乾燥した後、通常は表面平滑処理を行ない、その後、硬化を行なえばよい。バックコート層の乾燥後の膜厚は、0.2〜2.0μmとすることが望ましい。
バックコート層の面とは反対側に形成される磁性層に、特に制限はなく、強磁性粉末として、例えばγ−Fe2O3、Co含有γ−Fe2O3、Fe3O4、Co含有Fe3O4、CrO2等の酸化物粉末や、Fe、Co、Ni或いはこれらの合金微粉末等を磁性層中に結合剤と一緒に含有させた、いわゆる塗布型の磁性層、或いは真空蒸着、スパッタリング等により形成される連続薄膜型の磁性層をいずれも用いることができる。磁性層とバックコート層はいずれを先に非磁性支持体上に形成しても良い。この一方で、磁性層を連続薄膜型の磁性層とする場合には通常、磁性層を形成した後にバックコート層を形成する。
【0005】
【実施例】
バックコート層の塗料の作成
(バインダー溶液調製)
・塩化ビニル系共重合体(表より選択) … 45重量部
・ポリエステルポリウレタン樹脂(−SO3Na基含有) … 45重量部
・MEK …100重量部
・トルエン … 80重量部
・シクロヘキサノン …100重量部
上記組成物をハイパーミキサーにて4時間攪拌し、溶解した。
(混練混合処理〜分散処理)
・微粒子カーボンブラック(表のAの中から選択されたもの)…100重量部
・粗大粒子(表のBの中から選択されたもの) …1.5重量部
・α−Fe2O3(戸田工業社製TF100) …0.8重量部
・バインダー溶液 …150重量部
上記組成物を加圧ニーダーに投入し、2時間の混練後、下記組成物を投入し、分散処理に最適の粘度に調整した。
・バインダー溶液 …200重量部
・MEK …135重量部
・トルエン …120重量部
・シクロヘキサノン …135重量部
上記溶液と混練物とを混合処理後、サンドグラインダーミルにて分散処理を行った。
(粘度調整工程)
・バインダー溶液 … 66重量部
・ステアリン酸 … 1重量部
・ミリスチン酸 … 1重量部
・ステアリン酸ブチル … 1重量部
・MEK …235重量部
・トルエン …285重量部
・シクロヘキサノン …235重量部
上記組成物をハイパーミキサーに投入し、1時間混合攪拌を行い粘度調整溶液とした。
粘度調整溶液と、分散処理後のスラリーを混合後、サンドグラインダーミルにて分散を行った後、循環濾過を行い、この塗料100重量部に対し、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製コロネートL)1.0重量部を加え、攪拌混合し、バックコート層形成のための塗料とした。
このようなバックコート層形成のための作成手法を準じて、結合剤、微粒子カーボンブラックA、粗大粒子Bの種類や混合比率を変えて塗料を作成した。
なお、溶剤種の比率は各工程において同一となるようにした。
磁性層の塗料の作成
(バインダー溶液調製)
・塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン社製MR110) … 10重量部
・ポリエステルポリウレタン樹脂 … 5重量部
(東洋紡社製 TS5004,−SO3Na基含有)
・MEK … 21重量部
・トルエン … 21重量部
・シクロヘキサノン … 21重量部
上記組成物をハイパーミキサーにて6時間攪拌し、溶解した。
(混練混合処理〜分散処理)
・Co被着γ酸化鉄磁性粉(BET35m2/g) …100重量部
・α−Al2O3(住友化学工業社製HIT−50) … 5重量部
・Cr2O3(日本化学工業社製U−1) … 5重量部
・バインダー溶液 … 40重量部
上記組成物を加圧ニーダーに投入し、2時間の混練後下記組成物を投入し、分散処理に最適の粘度に調整した。
・バインダー溶液 … 40重量部
・MEK … 15重量部
・トルエン … 15重量部
・シクロヘキサノン … 15重量部
混合処理後、サンドグラインダーミルにて分散処理を行った。
(粘度調整工程)
・ステアリン酸 …0.5重量部
・ミリスチン酸 …0.5重量部
・ステアリン酸ブチル …0.5重量部
・MEK … 65重量部
・トルエン … 65重量部
・シクロヘキサノン … 65重量部
上記組成物をハイパーミキサーに投入し、1時間混合攪拌を行い粘度調整溶液とした。粘度調整溶液と、分散処理後のスラリーを混合後、サンドグラインダーミルにて分散を行った後、循環濾過を行い、この塗料100重量部に対し、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製コロネートL)0.8重量部を加え混合攪拌し、磁性層形成のための塗料とした。
【0006】
評価方法
(光沢度)
村上色彩技術研究所製デジタル光沢度計GM−3D型を用いて、バックコート層形成用塗料の希釈前後の塗料の光沢度(%)を測定し、この値を分散性の評価値とした。なお、光沢度の測定に際し、光学条件はJIS−Z−8741記載の方法に準じて行い、測定角度=60゜における光沢度を測定した。
(塗料の安定性)
分散時の光沢度をaとし、そのバックコート層形成用塗料を、塗布適性粘度まで希釈(レットダウン)した後の光沢をbとし、これらの差であるb−a値を、そのバックコート層形成用塗料のレットダウンショックに対する安定性として評価した。
b−aが+又は変化しなければ、安定性は良いが、−の値が大きいほど希釈により凝集物が発生(顕微鏡にて確認済み)し、塗布後の表面性が悪く、バックコート層から磁性層への裏写りにより、磁性面の表面性も悪化するため、電磁変換特性に悪影響を及ぼす。
(電磁変換特性)
・Y−S/N:ローデアンドシュワルツ社製ノイズメーターUPSF2と日本ビクター社製VTR BR7000Aとを用い、50%ホワイト信号を記録、再生し、VHS標準テープ(VRT−2)との差を測定し、dBで表示した。
・C−S/N:ローデアンドシュワルツ社製ノイズメーターUPSF2と日本ビクター社製VTR BR7000Aとを用い、クロマ信号を記録、再生し、VHS標準テープ(VRT−2)との差を測定しdB表示した。
Y−S/N、C−S/Nともに比較例16を基準(0dB)として表示した。
(バックコート層削れ)
低温(0℃)、常温常湿(20℃、60%RH),高温高湿(40℃、80%RH)の3つの環境下にて、それぞれ100回往復走行を行った後、バックコート層面の削れ、傷の状態を目視及び光学顕微鏡にて観察し、傷が発生した物をNGとした。1環境下、各試料について36巻のテープを準備し、前記条件で走行の後、NG発生巻数を集計して下記基準にて評価した。
◎:NG発生巻数=0巻
○:NG発生巻数=1〜2巻
△:NG発生巻数=3〜5巻
×:NG発生巻数=6巻以上
(金属ガイドに対するトルク)
VHSカセットにクロムメッキされた真鍮ガイドを装着し、上記各テープサンプル(160分用、テープ長さ330m)を組み込み、日本ビクター社製VTRBR−S605を使用して、巻頭より1分間走行後、巻き戻しに要するトルクを測定した。トルク測定は、直流電圧を用いてVTRの巻き戻し時に使用するモーターの電圧を変えることによりサンプルが完全に巻き戻るときの値を測定し、換算することによって金属ガイドに対するリワインドトルクとした。トルク値が260gf・cmを超えるとVTRでの走行停止の発生率が高くなる。評価基準は以下の通り。
◎:240gf・cm未満
○:240以上〜250gf・cm未満
△:250以上〜260gf・cm未満
×:260gf・cm以上
(プラスチックガイドに対するトルク)
VHSカセットにカーボンを含んだポリアセタール製ガイドを装着し、上記各テープサンプル(160分用、テープ長さ330m)を組み込み、日本ビクター社製VTR BR−S605を使用して、巻頭より1分間走行後、巻き戻しに要するトルクを測定した。トルク測定は、直流電圧を用いてVTRの巻き戻し時に使用するモーターの電圧を変えることによりサンプルが完全に巻き戻るときの値を測定し、換算することによってプラスチックガイドに対するリワインドトルクとした。トルク値が260gf・cmを超えるとVTRでの走行停止の発生率が高くなる。評価基準は上記金属製ガイドの場合と同様とした。
(ブロッキングテスト)
直径3.5cmのガラス管と、長さ1mの上記テープサンプルを準備し、テープの片端をバックコート側が、ガラス管に接触するように配置し、セロテープで固定する。テープのもう一端に、500gの分銅をつけ、エッジをそろえて巻き付けた後、終端をセロテープで止める。40℃、80%RHの環境へ24時間放置した後、20℃60%の環境へ6時間放置する。テープの先端に5gの分銅を付け、ガラス管を回し、テープを解いて行ったときの粘着状態を調べた。判定基準は以下の通りとした。
○:ブロッキング無し
×:ブロッキング有り
(表面粗さRa)
ランク・テーラ・ホブソン社製表面粗さ測定装置タリステップを用い、倍率1万倍、測定波長λ=3.3〜167μmで行ない、JIS B 0601(1982)に準拠して求めた。なお測定サンプル長は0.5mm、n=5の平均値とし、単位はnmに換算した。
【0007】
【表1】
【0008】
【表2】
【0009】
【表3】
【0010】
実験例1
(塩化ビニル種の検討)
上記バックコート層の塗料の作成方法に準じて、塩化ビニル種の検討を行った。塩化ビニル種は上記の表に従い、バックコート生産条件は下記のようにした。カーボンはA8を使用した。
・混練条件:P/B=2.7/1、NV=55%にて加圧ニーダーを使用して行った。
・分散条件:P/B=1.2/1、NV=22%でサンドグラインダーミルにてガラスビーズを用いて分散した。
・希釈条件:P/B=1/1、NV=12%になるように希釈した。
【0011】
【表4】
【0012】
塩化ビニル系共重合体にアミン変性ビニル単位と酸性官能基含有ビニル単位とを両方有する塩化ビニル系共重合体Aは、分散工程での希釈後の塗料安定性が極めて良好で、塗布後の塗膜の表面性にも優れ、良好な電磁変換特性が得られる。
一方、アミン変性ビニル単位だけを有する塩化ビニル系共重合体Dは、希釈工程における塗料安定性が悪く、二次凝集を起こすため塗布後の塗膜の表面性が悪化し、結果として電磁変換特性が悪化する。また、酸性官能基含有ビニル単位だけを有する塩化ビニル系共重合体Cは希釈工程での塗料安定性に問題は生じないが、良好な分散が得られていないため、電磁変換特性は悪化する。さらに、塩化ビニル系共重合体Cと塩化ビニル系共重合体Dとを等量混合した場合においても、単一の共重合体に複数の基を有する場合には及ばない。
さらに、いずれの官能基も有しない塩化ビニル系共重合体Bは分散光沢が最も低く実用性がなく、塩ビをニトロセルロースに変更しても分散光沢、電磁変換特性が悪化するとともにバックコート削れも発生する。
実験例2
(混練条件の検討1)
上記バックコート層の塗料の作成方法に準じて、以下の塗料を混練条件、分散条件、希釈条件を下記のように設定して作成した。カーボンはA8を使用した。
・混練条件:下表のP/B、NVにて加圧ニーダーを使用して行った。
・分散条件:P/B=1.2/1、NV=22%でサンドグラインダーミルにてガラスビーズを用いて分散した。
・希釈条件:P/B=1/1、NV=12%になるように希釈した。
【0013】
【表5】
【0014】
実験例3
(混練条件の検討2)
上記のバックコート層の塗料の作成方法に準じて、以下の塗料を混練の有無を検討した。混練は加圧ニーダーを使用し、分散条件はP/B=1.2/1、NV=22%にて行い、希釈条件はP/B=1/1、NV=12%とした。カーボンはA8を使用した。
【0015】
【表6】
【0016】
P/B=1.5/1〜3.5/1、NV=45〜60%の範囲をはずれると、粘土状の高粘性塗料にならなかったり、粘土状になってもその状態が柔らかすぎたり、硬すぎたりして、十分な混練が行えず、また、混練を行わずに塗料を分散機だけで作成すると、塗料の生産効率が悪い(2日を越える)。さらに、結合剤樹脂にニトロセルロースを用いた場合には、混練後に分散を行っても、アミン変性ビニル単位と酸性官能基含有ビニル単位とを有する塩化ビニル系共重合体を用いて、塗料を作成した場合に比べて生産効率が悪い。
実験例4
(大粒径カーボンブラック・カーボングラファイト(以下粗大粒子)の検討)前述した、バックコート層の塗料の作成方法に準じて、粗大粒子Bの種類と添加量を変更して塗料を作成した。塩化ビニルは表3のAを使用した。
・混練条件:P/B=2.4/1、NV=55%にて加圧ニーダーを使用して行った。
・分散条件:P/B=1.2/1、NV=22%でサンドグラインダーミルにてガラスビーズを用いて分散した。
・希釈条件:P/B=1/1、NV=12%になるように希釈した。
【0017】
【表7】
【0018】
粗大粒子の粒子径に関しては、150nm未満では金属、プラスチックガイドともに摩擦係数が高く、500nmを超えると粗大突起による磁性層への裏写りにより、S/Nが低下する。
粗大粒子の添加量に関しては、0.5重量部未満では金属、プラスチックガイドともに摩擦係数低減の効果が見られず、2.5重量部を超えると裏写りによりS/Nが低下する。よって、バックコート層に添加する大粒径カーボンまたはカーボングラファイトは粒子径150〜500nmで、添加量0.5〜2.5重量部がよい。
実験例5
(微粒子カーボンブラックの検討)
前述した、バックコート層の塗料の作成方法に準じて、微粒子カーボンブラックAの種類を変更して塗料を作成した。塩化ビニルは表3のAを使用した。
・混練条件:P/B=2.7/1、NV=55%にて加圧ニーダーを使用して行った。
・分散条件:P/Bは下表に従い、NV=22%でサンドグラインダーミルにてガラスビーズを用いて分散した。
・希釈条件:P/Bは下表に従い、NV=12%になるように希釈した。
微粒子カーボンブラックの平均粒子径に関しては、18nm未満であったり、25nmを超えると分散光沢が上がらないために、表面平滑性が悪化し磁性層の電磁変換特性が低下する。
微粒子カーボンブラックのDBP吸油量との関係では90cc/100g未満では、高P/B(例えばP/Bが2.0/1を越えるようにした場合)で分散を行わないと分散が充分でなく、光沢が上がらない。
一方、125cc/100gを超えるカーボンブラックは、レットダウンショックは起こしにくいものの、分散光沢が上がりにくく、表面粗さも悪化する傾向となり、電磁変換特性が悪化する。
したがって、本発明の吸油量90〜125cc/100gの微粒子カーボンの分散は希釈後のP/Bよりもやや高いところで行うのが良く、P/B=0.8/1〜3.5/1の範囲で行うのが好ましい。
希釈後のP/Bに関しては、P/B=0.5/1未満では、磁性層とのブロッキングが起こりやすく、またP/B=1.2/1を超えるとバックコート層が脆くなるため削れが生じ易くなる。
よってバックコート層に添加する微粒子カーボンブラックは平均粒子径が18〜25nm、DBP吸油量90〜125cc/100gがよく、希釈後のP/Bは0.5/1〜1.2/1がよい。
【0019】
【発明の効果】
本発明の構成によって得られる磁気記録媒体は、塗料の安定性がよく、バックコート削れがなく、金属及びプラスチックガイドに対するリワインドトルク値が低く、電磁変換特性に悪影響を与えることなく走行性と耐久性を向上できる。
【0020】
【表8】
Claims (1)
- 非磁性支持体の表面側に磁性層、背面側にバックコート層を備えてなる磁気記録媒体において、該バックコート層が、樹脂結合剤(B)100重量部に対して、平均粒子径が18〜25nm、DBP吸油量が90〜125cc/100gであるカーボンブラック(P)を50〜120重量部(P/B=0.5/1〜1.2/1)含有し、かつ平均粒子径150〜500nmの大粒径カーボンブラックまたはカーボングラファイトを前記カーボンブラック100重量部に対して0.3〜2.5重量部含有し、樹脂結合剤の配合成分として少なくとも、アミン変性ビニル単位及び酸性官能基含有ビニル単位とを同時に有する塩化ビニル系共重合体を含有する組成配合物であり、混練時には不揮発分濃度=45〜60%、P/B=1.5/1〜3.5/1を満足する条件で混練を行った後、希釈分散を行い、希釈後のP/Bが0.5/1〜1.2/1を満足するようにして形成された、ことを特徴とする磁気記録媒体。
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