JP3730779B2 - 油圧式可変バルブタイミング機構の制御装置 - Google Patents

油圧式可変バルブタイミング機構の制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は油圧式可変バルブタイミング機構の制御装置に関し、詳しくは、内燃機関において、油圧によってカム軸の回転位相を変化させてバルブタイミングを連続的に変化させる可変バルブタイミング機構において、回転位相制御の基準位置を学習する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、内燃機関において、カム軸の回転位相を変化させることで、吸気バルブ及び/又は排気バルブの開閉タイミングを早めたり遅らせたりする可変バルブタイミング機構が知られている(特開平7−233713号公報,特開平8−246820号公報等参照)。
【0003】
ところで、上記のようにカム軸の回転位相を変化させてバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構においては、目標位相へのフィードバック制御等のために実際のカム位相を検出することが必要になり、従来から、クランク角センサから出力されるリファレンス信号と、カム軸の回転に同期して出力されるカム角信号との発生間隔に基づいてカム位相(回転位相差)を検出することが行われていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記リファレンス信号やカム角信号の発生タイミングのずれやばらつきがあると、カム軸の回転位相の検出精度が悪化し、目標の回転位相に制御することができなくなってしまう。
ここで、カム軸の回転位相を機械的に規制するストッパを備える構成において、前記ストッパで規制される状態でのカム位相の検出結果を基準位置として学習し、このストッパ位置を基準として回転位相を検出させる構成とすれば、前記信号の発生タイミングのずれやばらつきがあっても、精度良く回転位相が検出できることになる。
【0005】
ところが、ストッパで規制される方向に回転位相を変化させるべく指令を出しても、実際にストッパ位置にまでカム位相が変化するまでには応答時間を要し、また、油圧をストッパで規制される位置に向けて作用させる場合に、油圧が低いとストッパ位置に安定しないことがあり、単に目標位相がストッパ位置であるとき学習させる構成では、ストッパで規制される位置で確実に学習させることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、ストッパ位置での学習を確実に行わせることができるようにした油圧式可変バルブタイミング機構の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明は、油圧によってカム軸の回転位相を変化させてバルブタイミングを連続的に変化させる構成であって、前記回転位相の変化を機械的に規制するストッパを備えた油圧式可変バルブタイミング機構において、前記カム軸の回転位相を検出する回転位相検出手段と、前記ストッパにより前記回転位相の変化が規制されるストッパ位置を目標の回転位相とする状態であって、かつ、前記ストッパ位置を目標の回転位相とする指令を発生してから所定時間以上経過していて、かつ、前記油圧式可変バルブタイミング機構に供給される油圧が所定圧以上であることを学習許可条件とし、該学習許可条件が成立しているときに、前記回転位相検出手段で検出された回転位相を基準値として学習する回転位相学習手段と、を含んで制御装置が構成されるものとした。
【0008】
かかる構成によると、ストッパ位置に回転位相を変化させる指令を発生しても、直ちに学習を行うのではなく、実際にストッパ位置にまで変化するのに要すると予測される時間だけ待ち、かつ、ストッパ位置に安定させることができる油圧が確保できているときに、回転位相の基準位置を学習させる。
尚、前記指令を出してから学習を行わせるまでの所定時間を、油温や目標回転位相のステップ変化量などに応じて変化させても良い。
【0009】
請求項2記載の発明では、前記可変バルブタイミング機構に対して油圧を供給する油圧ポンプが機関駆動される構成であって、前記回転位相学習手段が、前記油圧式可変バルブタイミング機構に供給される油圧が所定圧以上である条件を、機関回転速度が所定回転速度以上であるか否かに基づいて判別する構成とした。かかる構成によると、油圧ポンプが機関駆動され、その吐出量が略回転速度に比例する容積形ポンプであるときには、機関回転速度から油圧の状態を推定できるので、機関回転速度が所定回転速度以上であることをもって、供給油圧が所定圧以上であると判断する。
【0010】
請求項3記載の発明では、前記回転位相学習手段が、前記学習許可条件を脱する直前に検出された回転位相を基準値として学習する構成とした。
かかる構成によると、学習許可条件を脱する直前の値、即ち、最も学習許可条件に長くいたときの安定状態での検出値に基づいて基準値が学習される。
【0011】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によると、ストッパで規制される回転位相に確実に変化していてかつその状態に安定的に保持される状態で、カム軸の回転位相の基準値を学習させることができ、以て、前記基準値の学習精度を高く維持できるという効果がある。
【0012】
請求項2記載の発明によると、ストッパ位置に保持させる油圧が確保できているか否かを、機関回転速度に基づいて容易に判断できるという効果がある。
請求項3記載の発明によると、最もストッパ位置に安定した状態であると見做されるときの回転位相の検出結果を学習させることができるという効果がある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、実施の形態における内燃機関のシステム構成を示す図である。
この図1において、内燃機関1には、スロットルバルブ2で計量された空気が吸気バルブ3を介してシリンダ内に供給され、燃焼排気は、排気バルブ4を介して排出される。前記吸気バルブ3,排気バルブ4は、吸気側カム軸,排気側カム軸にそれぞれ設けられたカムによって開閉駆動される。
【0014】
吸気側カム軸5には、カム軸の回転位相を変化させることで、吸気バルブ3の開閉タイミングを連続的に早めたり遅くしたりする可変バルブタイミング機構6が備えられている。前記可変バルブタイミング機構6は、機関駆動される容積形油圧ポンプによって供給される油圧によって前記回転位相を連続的に変化させる油圧式の機構であり、例えば、回転位相の進角方向へ作用する油圧と遅角方向へ作用する油圧とをそれぞれに制御して、カム軸の回転位相を目標の回転位相に制御するものであり、前記油圧はコントロールユニット7からの油圧制御信号によって調整される構成となっている。
【0015】
また、前記可変バルブタイミング機構6には、回転位相の遅角方向と進角方向との双方に、回転位相の変化を規制する機械的なストッパが設けられており、このストッパ位置によって最進角位置及び最遅角位置が規定されるようになっている。更に、前記最遅角位置に向けて付勢するリターンスプリングが設けられている。カム軸5の回転位相の遅角方向とは、排気バルブと吸気バルブとのオーバーラップ量が減少する方向である。
【0016】
尚、本実施の形態では、可変バルブタイミング機構6が、吸気バルブ3の開閉タイミングを変化させる構成としたが、吸気バルブ3に代えて排気バルブ4の開閉タイミングを変化させる構成であっても良いし、吸気バルブ3と排気バルブ4との両方の開閉タイミングを変化させる構成であっても良い。
マイクロコンピュータを内蔵するコントロールユニット7には、クランク軸の回転信号を出力するクランク角センサ8、吸気側カム軸5の回転信号を出力するカム角センサ9、機関1の吸入空気量を検出するエアフローメータ10等からの検出信号が入力される。
【0017】
ここで、コントロールユニット7は、図2のフローチャートに示すようにして、本発明に係るカム軸の回転位置の学習を行いつつ、該学習結果を用いて図3のフローチャートに示すようにして前記可変バルブタイミング機構6によって調整される吸気バルブ3の開閉タイミングを制御する。
尚、本実施の形態において、回転位相学習手段としての機能は、前記図2のフローチャートに示すように、コントロールユニット7がソフトウェア的に備えている。また、回転位相検出手段は、クランク角センサ8,カム角センサ9と前記コントロールユニット7による演算処理機能とによって構成される。
【0018】
本発明に係るカム軸の回転位置の学習を示す図2のフローチャートは、一定周期毎に実行されるものであり、S1では、クランク軸とカム軸との回転位相差の目標値(目標角度)TAが、ストッパで規制される最遅角であるか否かを判別する。
目標角度TAが最遅角であるときには、S2へ進み、目標角度TAが最遅角に切り換わった初回であるか否かを判別する。
【0019】
そして、初回であれば、S3へ進んで、目標角度TAが最遅角に切り換わってからの経過時間を計測するためのタイマーtをスタートさせ、初回でない場合には、S3を迂回してS4へ進む。
S4では、前記タイマーtで計測される目標角度TAが最遅角に切り換わってからの経過時間tが、所定時間t1以上であるか否かを判別する。
【0020】
前記所定時間t1は、目標角度TAが最遅角に切り換わってから実際の回転位相が最遅角にまで変化するのに要すると推定される時間である(図4参照)。尚、前記所定時間t1は、固定値としても良いが、油の粘性を変化させることになる油温などによって回転位相変化の速度が変化するので、油温等の応答速度に影響を与えるパラメータに応じて変更しても良い。また、目標角度TAのステップ変化量に応じて所定時間t1を変化させても良い。
【0021】
目標角度TAが最遅角に切り換わってからの経過時間tが所定時間t1以上になるまでは、S4からS8へ進むが、後述するようにS8で判別されるフラグには0がセットされているので、そのまま本ルーチンを終了し、次の実行サイクルにおいても、目標角度TAが最遅角であれば、S4の判定を繰り返し行うことになる。
【0022】
そして、目標角度TAが最遅角に切り換わってからの経過時間tが所定時間t1以上になると、S5へ進み、そのときの機関回転速度Neが所定速度Ne1以上であるか否かを判別する。
本実施形態の可変バルブタイミング機構6は油圧式であって、油圧を供給する油圧ポンプが前述のように機関駆動される構成であるから、機関回転速度Neは油圧ポンプの回転速度に比例することになり、また、油圧ポンプの吐出量は回転速度に略比例するので、機関回転速度Neが所定速度Ne1以上であるか否かは、間接的に、前記油圧ポンプの吐出量が所定量以上であるか否かを判別することになる。ここで、前記所定速度Ne1として可変バルブタイミング機構6が目標の回転位相を安定的に保持できる油圧の最小値が確保できる回転速度に設定してあり、結果、前記S5の機関回転速度Neが所定速度Ne1以上であるか否かの判断は、回転位相を安定的に保持できる油圧が確保されているか否かを判断することになる。
【0023】
S5で機関回転速度Neが所定速度Ne1未満である判別されたときには、経過時間tが所定時間t1未満であると判別されたときと同様にして、S8へ進み、経過時間tが所定時間t1以上になっても、機関回転速度Neが所定速度Ne1未満であるときには学習は行われない(図4参照)。
一方、S5で機関回転速度Neが所定速度Ne1以上である判別されたときには、学習許可条件が成立したものと判断して、S6へ進み、クランク角センサ8及びカム角センサ9からの検出信号に基づいてクランク軸とカム軸との実際の回転位相差RAを検出し、検出結果を順次更新して記憶する。尚、前記回転位相差RAの検出は、クランク角センサ8で検出される基準クランク角位置からカム角センサ9で検出される基準カム角位置までの角度として検出される。
【0024】
経過時間tが所定時間t1以上であれば、目標角度TAが最遅角に切り換わってから実際に回転位相がストッパで規制される最遅角に変化しているものと推定でき、また、目標の回転位相を保持できる油圧が確保できる回転条件であれば、ストッパで規制される最遅角に変化した実際の回転位相が、その位置で確実に保持されるものと推定でき、かかる条件で学習を行わせるものである。
【0025】
そして、学習許可条件が成立したことを示すべく、次のS7では、前記フラグに1をセットする。このように、学習許可条件が成立して初めてフラグに1がセットされるので、前述のように、S4,S5からS8へ進んだときには、フラグが0であるとして、S9以降へは進まないことになる。
前記学習許可条件が継続して成立しているときには、S6での回転位相差RAの検出及び更新記憶が繰り返されることになるが、目標角度TAが最遅角から異なる回転位相に変化したり、機関回転速度Neが所定速度Ne1未満になってS8に進むと、直前まで学習許可条件が成立していてフラグに1がセットされていたので、フラグが1であると判別されて、S9へ進む。
【0026】
S9では、前記S6における検出及び更新記憶の結果として記憶されている回転位相RA、即ち、ストッパで規制される最遅角に回転位相を制御したときであって、学習許可条件を脱する直前の最も回転位相が安定した状態で検出された実際の回転位相差RAと、予め前記最遅角に対応して記憶されている基準回転位相差RA0との偏差DDA(DDA=RA0−RA)を演算する。
【0027】
S10では、前記偏差DDAを回転位相差の検出値RAの補正値(基準値)として記憶する。
尚、前記S6における検出及び更新記憶の結果として記憶されている回転位相差RAをそのまま基準値として記憶させるようにしても良い。
S11では、前記フラグを0にリセットして、その後、再度学習許可条件が成立するまでフラグが0に保持されるようにする。
【0028】
次に、前記偏差DDAを用いて行われる吸気バルブ3の開閉タイミングの制御を、図3のフローチャートに従って説明する。
S21では、吸気バルブ3の開閉タイミングをフィードバック(F/B)制御する条件が成立しているか否かを判定し、非成立時は、S22へ進んで、カム軸の回転位相をストッパで規制される最遅角側に制御する。
【0029】
S21でフィードバック制御条件が成立していると判定されたときは、S23へ進み、予め機関負荷と機関回転速度Neとによって区分される運転領域毎に回転位相差の目標値(目標角度)TAを記憶したマップを参照し、現在の機関負荷,機関回転速度Neに対応する目標値(目標角度)TAを検索する。
S24では、クランク角センサ8及びカム角センサ9からの検出信号に基づいて実際の回転位相差RAを検出する。
【0030】
S25では、前記検出された回転位相差RAに前記図2のフローチャートで学習した偏差DDAを加算して補正し、RAH(=RA+DDA) とする。
S26では、前記目標値TAと補正された実際値RAHとに基づいて、フィードバック補正値を算出し、前記目標値TAから求めた基本値に前記フィードバック補正値を加算するなどして油圧の制御値を算出する。
【0031】
S27では、前記制御値に応じた制御信号を可変バルブタイミング機構6に出力する。これにより、可変バルブタイミング機構6の制御を介して吸気バルブ3の開閉タイミングが制御される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における内燃機関のシステム構成図。
【図2】実施の形態における回転位相の学習の様子を示すフローチャート。
【図3】実施の形態におけるバルブタイミング制御の様子を示すフローチャート。
【図4】実施の形態における学習制御の特性を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 スロットルバルブ
3 吸気バルブ
4 排気バルブ
5 吸気側カム軸
6 可変バルブタイミング機構
7 コントロールユニット
8 クランク角センサ
9 カム角センサ
10 エアフローメータ

Claims (3)

  1. 油圧によってカム軸の回転位相を変化させてバルブタイミングを連続的に変化させる構成であって、前記回転位相の変化を機械的に規制するストッパを備えた油圧式可変バルブタイミング機構において、
    前記カム軸の回転位相を検出する回転位相検出手段と、
    前記ストッパにより前記回転位相の変化が規制されるストッパ位置を目標の回転位相とする状態であって、かつ、前記ストッパ位置を目標の回転位相とする指令を発生してから所定時間以上経過していて、かつ、前記油圧式可変バルブタイミング機構に供給される油圧が所定圧以上であることを学習許可条件とし、該学習許可条件が成立しているときに、前記回転位相検出手段で検出された回転位相を基準値として学習する回転位相学習手段と、
    を含んで構成されたことを特徴とする油圧式可変バルブタイミング機構の制御装置。
  2. 前記可変バルブタイミング機構に対して油圧を供給する油圧ポンプが機関駆動される構成であって、
    前記回転位相学習手段が、前記油圧式可変バルブタイミング機構に供給される油圧が所定圧以上である条件を、機関回転速度が所定回転速度以上であるか否かに基づいて判別することを特徴とする請求項1記載の油圧式可変バルブタイミング機構の制御装置。
  3. 前記回転位相学習手段が、前記学習許可条件を脱する直前に検出された回転位相を基準値として学習することを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧式可変バルブタイミング機構の制御装置。
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