JP3733624B2 - 可変バルブタイミング装置付きエンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バルブオーバーラップを変化させるべく吸気バルブあるいは排気バルブの少なくとも一方の開閉タイミングを可変にするために油圧により駆動される可変バルブタイミング装置(VTC)を備えるエンジンの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車用エンジンにおいては、例えば吸気バルブの開閉タイミングを可変にする可変バルブタイミング装置(VTC)を備え、エンジン運転状態(主にエンジン負荷)に応じて、低負荷時には排気バルブとのバルブオーバーラップを小の状態、高負荷時にはバルブオーバーラップを大の状態に切換えている。
【0003】
ここで、油圧駆動方式の可変バルブタイミング装置の場合は、冷間時の応答性(オイル粘度の増大による応答遅れ)が問題となり、特に高負荷から低負荷に移行する減速時に、バルブオーバーラップ大の状態から小の状態に切換える際は、冷間時の応答遅れに起因して、失火やエンストに至ることがあるので、これを改善する必要がある。
【0004】
そこで、特開平5−99006号公報に記載の装置では、油圧駆動方式の可変バルブタイミング装置によりバルブオーバーラップ大の状態から小の状態へ切換える際に、冷却水温に応じて、低温時ほど、アイドル回転数制御用の補助空気バルブの開度を増大側に補正するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記公報に記載の装置にあっては、油温の代わりに、水温を見て、油圧駆動方式の可変バルブタイミング装置の応答遅れを推定しているが、オイルの粘度は、温度だけでなく、オイルの種類、使用状態によっても異なるため、油温(水温)が同じでも、様々な応答遅れが生じることがあり、完全には失火やエンストを防止できないのみならず、減速時の回転落ちが遅れて減速感が得られないこともあるという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、油圧駆動方式の可変バルブタイミング装置の応答遅れを確実に検知して、冷間・減速時などの運転性を向上できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に係る発明では、図1に示すように、バルブオーバーラップを変化させるべく吸気バルブあるいは排気バルブの少なくとも一方の開閉タイミングを可変にするために油圧により駆動される可変バルブタイミング装置と、スロットルバルブをバイパスする補助空気通路に設けられて補助空気量を制御する補助空気バルブと、を備えるエンジンにおいて、可変バルブタイミング装置によるバルブオーバーラップ角度を検出するオーバーラップ角度検出手段と、可変バルブタイミング装置によりバルブオーバーラップ大の状態から小の状態へ切換える際に、少なくともバルブオーバーラップ角度に応じて、バルブオーバーラップ角度が大きい程、大きく、補助空気バルブの開度を増大側に補正する補助空気増量手段と、を設けて、可変バルブタイミング装置付きエンジンの制御装置を構成する。
【0008】
すなわち、油圧駆動方式の可変バルブタイミング装置によりバルブオーバーラップを大→小に切換える際に、実際のバルブオーバーラップ角度を検出し、これに応じた量、補助空気バルブの開度を増大側に補正することで、失火やエンストを防止し、また常に適度な減速感を得るのである。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記補助空気増量手段は、バルブオーバーラップ角度とエンジン回転数とに応じて、バルブオーバーラップ角度が大きい程、またエンジン回転数が高い程、大きく、補助空気バルブの開度を増大側に補正するものであることを特徴とする。エンジン回転数を考慮することで、より高精度な制御が可能となる。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記補助空気量増量手段は、バルブオーバラップ角度とエンジン回転数とに応じて補助空気バルブの開度の増分を定めたマップを参照して、補助空気バルブの開度の増分を設定するものであり、燃料カット時には、エンジン回転数を所定のリカバー回転数とみなして、前記マップを参照するものであることを特徴とする。これにより、燃料カット時にも最適な制御が可能となる。
【0011】
請求項4に係る発明では、前記補助空気増量手段は、大気圧検出手段を有し、少なくともバルブオーバーラップ角度に応じて設定される補助空気バルブ開度の増分を、大気圧に応じて補正するものであることを特徴とする。これにより、高地でも十分な空気量が確保できて失火やエンストをより完全に防止できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図2〜図6により説明する。
図2はシステム構成を示している。
エンジン1の吸気通路2にはアクセルに連動するスロットルバルブ3が介装されている。そして、スロットルバルブ3をバイパスする補助空気通路4が設けられ、この補助空気通路4には主にアイドル回転数制御(ISC)のために補助空気量を制御する補助空気バルブ(以下「ISCバルブ」という)5が介装されている。よって、エンジン1にはスロットルバルブ3及びISCバルブ5により制御された空気が吸気バルブ6を介して吸入される。
【0013】
また、吸気バルブ6の直前にインジェクタ7が設けられていて、これにより燃料が噴射供給されて、エンジン1の燃焼室内に混合気が生成される。エンジン1の燃焼室内で混合気は点火プラグ8により点火されて燃焼し、排気は排気バルブ9を介して排気通路10へ排出される。
ここにおいて、吸気バルブ6の駆動機構には、油圧駆動方式の可変バルブタイミング装置(以下「VTC」という)11が設けられていて、そのON/OFF制御により、吸気バルブ4の開閉タイミング(排気バルブ9とのバルブオーバーラップ)を変化させることができる。
【0014】
コントロールユニット12は、マイクロコンピュータを内蔵し、各種センサからの信号に基づいて演算処理を行い、インジェクタ7、ISCバルブ5及びVTC11の作動を制御する。
前記各種のセンサとしては、クランク角センサ13、エアフローメータ14、スロットルセンサ15、水温センサ16などが設けられている。
【0015】
クランク角センサ13は、基準クランク角(4気筒の場合 180°)毎の基準信号REFと単位クランク角(1〜2°)毎の単位信号POSとを出力し、これらによりクランク角を検出し得ると共に、エンジン回転数NEを検出可能である。
エアフローメータ14は、例えば熱線式で、吸気通路2における吸入空気流量QAを検出可能である。
【0016】
スロットルセンサ15は、ポテンショメータによりスロットルバルブ3の開度TVOを検出可能であると共に、スロットルバルブ3の全閉位置でONとなるアイドルスイッチを内蔵している。
水温センサ16は、例えばサーミスタ式で、エンジン1の冷却水温TWを検出可能である。
【0017】
更に、VTC11におけるカムに対し電磁ピックアップ式のVTCポジションセンサ17が設けられていて、カムの所定位相(例えばカムトップ位置)を検出してVTCポジション信号を出力するようになっている。
また、必要により、大気圧センサ18が設けられていて、大気圧Paを検出可能である。
【0018】
ここにおいて、コントロールユニット12は、吸入空気流量QAとエンジン回転数NEとに基づいて基本燃料噴射量TP=K0 ・QA/NE(K0 は定数)を演算し、これに各種補正を施して最終的な燃料噴射量TI=TP・COEF(COFFは各種補正係数)を定め、このTIに相当するパルス幅の駆動パルス信号をエンジン回転に同期した所定のタイミングでインジェクタ7に出力して、燃料噴射を行わせる。
【0019】
但し、エンジン回転数NEが所定値以上で、スロットルバルブ3が全閉(アイドルスイッチON)となったときは、これをトリガとして、燃料カットを行い、その後、エンジン回転数NEが所定のリカバー回転数NRまで低下するか、スロットルバルブ3が開かれると、燃料リカバーする。
また、コントロールユニット12は、アイドル回転数フィードバック制御条件にて、目標アイドル回転数を定め、実際のエンジン回転数NEを目標アイドル回転数と比較して、その結果に応じ、ISCバルブ5の開度を増減制御することにより、目標アイドル回転数が得られるようにフィードバック制御する。アイドル回転数フィードバック制御条件以外のときは、ISCバルブ5の開度を前回値又は所定値に保持するようになっている。
【0020】
また、コントロールユニット12は、図3に示すVTC制御ルーチンに従って、エンジン運転状態に応じ、VTC11をON/OFF制御する。尚、VTC11からはポジション信号がコントロールユニット12に入力されている。
図3のVTC制御ルーチンについて説明する。
ステップ1(図にはS1と記してある。以下同様)では、エンジン運転状態(具体的にはスロットル開度TVOやエンジン回転数NE)を検出する。
【0021】
ステップ2では、エンジン運転状態に応じて予め定めたVTC−ON領域(主に高負荷領域)か否かを判定する。
YESの場合、すなわち、VTC−ON領域(主に高負荷領域)の場合は、ステップ3へ進み、VTC11をON状態にして、バルブオーバーラップ大の状態に、吸気バルブ6の開閉タイミングを制御する。
【0022】
NOの場合、すなわち、VTC−OFF領域(主に低負荷領域)の場合は、ステップ4へ進み、VTC11をOFF状態にして、バルブオーバーラップ小の状態に、吸気バルブ6の開閉タイミングを制御する。
また、コントロールユニット12は、図4に示すISCバルブ開度補正ルーチンに従って、バルブオーバーラップ大の状態から小の状態への切換時に、ISCバルブ5の開度を補正する。
【0023】
図4のISCバルブ開度補正ルーチンについて説明する。
ステップ11では、水温TWが所定値以下か否かを判定し、TW≦所定値(低温時)の場合にのみステップ12へ進む。
ステップ12では、VTC11がOFFか否かを判定し、VTC−OFFの場合にのみステップ13へ進む。
【0024】
ステップ13では、アイドルスイッチがONか否かを判定し、ONの場合にのみステップ14へ進む。
ステップ14では、アイドル回転数フィードバック制御(ISC−F/B制御)中か否かを判定し、制御中でない場合にのみステップ15へ進む。
ステップ15では、クランク角センサ13からの基準信号(REF信号)と、VTCポジションセンサ17からのVTCポジション信号とから、これらの位相差(クランク角の差)に基づいて、実際のバルブオーバーラップ角度θoを算出する。
【0025】
ステップ16では、燃料カット(F/C)中か否かを判定し、燃料カット中でない場合はステップ17へ進む。
ステップ17では、図5のマップを参照し、バルブオーバーラップ角度θoとエンジン回転数NEとから、ISCバルブ開度の増分DISCを算出する。ここで、バルブオーバーラップ角度θoが大きい程、またエンジン回転数NEが高い程、ISCバルブ開度の増分DISCを大きく設定し、減速時にバルブオーバーラップ小の状態になるに従って、ISCバルブ開度の増分DISCが小さくなり、最終的には0となるようになっている。
【0026】
一方、燃料カット中の場合は、ステップ18で、バルブオーバーラップ角度θoとリカバー回転数NRとから、ISCバルブ開度の増分DISCを算出する。すなわち、エンジン回転数NE=リカバー回転数NRとして、図5のマップを参照する。
ステップ19では、図6のテーブルを参照し、大気圧Paより補正係数Kを算出する。具体的には、大気圧Paが低い程、補正係数Kを増大させる。
【0027】
そして、ステップ20では、ISCバルブ開度の増分DISCに補正係数Kを乗じて、ISCバルブ開度の増分DISCを補正する。これにより、大気圧Paが低い程、ISCバルブ開度の増分DISCを増大させる。
ステップ21では、ISCバルブ開度をDISC分増大させて、本ルーチンを終了する。
ここで、ステップ15の部分がVTCポジションセンサ17と共にオーバーラップ角度検出手段に相当し、ステップ11〜14,16〜21の部分が補助空気増量手段に相当する。
【0028】
尚、VTC11は、排気バルブ9とのバルブオーバーラップを変化させるべく吸気バルブ4の開閉タイミングを可変にするものとして説明したが、吸気バルブ4とのバルブオーバーラップを変化させるべく排気バルブ9の開閉タイミングを可変にするものであってもよく、更には吸気バルブ4と排気バルブ9との両方の開閉タイミングを可変にするものであってもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、油圧駆動方式の可変バルブタイミング装置によりバルブオーバーラップを大→小に切換える際に、実際のバルブオーバーラップ角度を検出し、バルブオーバーラップ角度が大きい程、大きく、補助空気バルブの開度を増大側に補正することで、失火やエンストを防止し、また常に適度な減速感を得ることができ、排気性能も向上するという効果が得られる。
【0030】
請求項2に係る発明によれば、バルブオーバーラップ角度とエンジン回転数とに応じて、バルブオーバーラップ角度が大きい程、またエンジン回転数が高い程、大きく、補助空気バルブの開度を増大側に補正することで、より高精度な制御が可能となる。
請求項3に係る発明によれば、燃料カット時にも最適な制御が可能となる。
請求項4に係る発明によれば、大気圧に応じて補正することで、高地でも十分な空気量が確保できて失火やエンストをより完全に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の構成を示す機能ブロック図
【図2】 本発明の一実施形態を示すシステム図
【図3】 VTC制御ルーチンのフローチャート
【図4】 ISCバルブ開度補正ルーチンのフローチャート
【図5】 ISC開度増分設定用マップを示す図
【図6】 大気圧補正係数設定用テーブルを示す図
【符号の説明】
1 エンジン
2 吸気通路
3 スロットルバルブ
4 補助空気通路
5 補助空気バルブ(ISCバルブ)
6 吸気バルブ
11 可変バルブタイミング装置(VTC)
12 コントロールユニット
13 クランク角センサ
14 エアフローメータ
15 スロットルセンサ
16 水温センサ
17 VTCポジションセンサ
18 大気圧センサ
Claims (4)
- バルブオーバーラップを変化させるべく吸気バルブあるいは排気バルブの少なくとも一方の開閉タイミングを可変にするために油圧により駆動される可変バルブタイミング装置と、スロットルバルブをバイパスする補助空気通路に設けられて補助空気量を制御する補助空気バルブと、を備えるエンジンにおいて、
可変バルブタイミング装置によるバルブオーバーラップ角度を検出するオーバーラップ角度検出手段と、
可変バルブタイミング装置によりバルブオーバーラップ大の状態から小の状態へ切換える際に、少なくともバルブオーバーラップ角度に応じて、バルブオーバーラップ角度が大きい程、大きく、補助空気バルブの開度を増大側に補正する補助空気増量手段と、
を設けたことを特徴とする可変バルブタイミング装置付きエンジンの制御装置。 - 前記補助空気増量手段は、バルブオーバーラップ角度とエンジン回転数とに応じて、バルブオーバーラップ角度が大きい程、またエンジン回転数が高い程、大きく、補助空気バルブの開度を増大側に補正するものであることを特徴とする請求項1記載の可変バルブタイミング装置付きエンジンの制御装置。
- 前記補助空気量増量手段は、バルブオーバラップ角度とエンジン回転数とに応じて補助空気バルブの開度の増分を定めたマップを参照して、補助空気バルブの開度の増分を設定するものであり、燃料カット時には、エンジン回転数を所定のリカバー回転数とみなして、前記マップを参照するものであることを特徴とする請求項2記載の可変バルブタイミング装置付きエンジンの制御装置。
- 前記補助空気増量手段は、大気圧検出手段を有し、少なくともバルブオーバーラップ角度に応じて設定される補助空気バルブ開度の増分を、大気圧に応じて補正するものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の可変バルブタイミング装置。
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Cited By (1)
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1995
- 1995-11-14 JP JP29563395A patent/JP3733624B2/ja not_active Expired - Fee Related
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