以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る制御装置の第1実施形態を、それが適用された車載用エンジンの一例と共に示すシステム構成図である。
図示のエンジン200は、例えば4つの気筒#1、#2、#3、#4を有する多気筒エンジンであって、シリンダ201と、このシリンダ201の各気筒#1、#2、#3、#4内に摺動自在に嵌挿されたピストン222と、を有し、該ピストン222上方には燃焼室221が画成される。燃焼室221には、点火プラグ216が臨設されている。
燃料の燃焼に供せられる空気は、吸気通路202の始端部に設けられたエアクリーナ203から取り入れられ、エアフローセンサ206を通り、電制スロットル(絞り弁)207を通ってコレクタ204に入り、このコレクタ204から前記吸気通路202の下流端(吸気ポート)に配在された吸気弁231を介して各気筒#1、#2、#3、#4の燃焼室221に吸入される。前記スロットル(絞り弁)207の回転軸207aは、DCモータ等のモータ208(スロットルアクチュエータ)により回動せしめられ、これによってスロットル207の開度(スロットル開度)が調整され、それに伴い、吸気通路202におけるスロットル207部分を通過する空気量、及び、燃焼室221に吸入される空気量が調整される。スロットル207の近傍には、スロットル開度を検出するためのスロットル開度センサ209が配在されている。また、吸気通路202の下流部分(吸気マニホールド205)には、燃料噴射弁215が臨設されている。
燃焼室221に吸入された空気と燃料噴射弁215から噴射された燃料との混合気は、点火プラグ216により点火されて爆発燃焼せしめられ、その燃焼廃ガス(排気)は、燃焼室221から排気弁232を介して排気通路217の上流部分を形成する個別通路部に排出され、その個別通路部から排気集合部を通って三元触媒218に流入して浄化された後、外部に排出される。
また、排気通路217における触媒218より上流側の排気集合部にはA/Fセンサ219が配在されている。
前記A/Fセンサ219は、排気中に含まれる酸素の濃度に対して線形の出力特性を持つ。排気中の酸素濃度と空燃比の関係はほぼ線形になっており、したがって、酸素濃度を検出するA/Fセンサ219により、前記排気集合部における空燃比を求めることが可能となる。
そして、本実施形態の制御装置においては、エンジン200の種々の制御を行うため、マイクロコンピュータを内蔵するコントロールユニット100が備えられている。
コントロールユニット100は、基本的には、図2に示される如くに、CPU305、入力回路301、入出力ポート302、RAM303、ROM304等で構成される。
コントロールユニット100には、入力信号として、エアフローセンサ206により検出される吸入空気量に応じた信号、スロットルセンサ209により検出されるスロットル207の開度に応じた信号、クランク角センサ(エンジン回転数センサ)210から得られるクランクシャフト223の回転(エンジン回転数)・位相をあらわす信号、排気通路217に配在されたA/Fセンサ219により検出される酸素濃度(空燃比)に応じた信号、シリンダ201に配設された水温センサ213により検出されるエンジン冷却水温に応じた信号、アクセルセンサ211から得られるアクセルペダル212の踏み込み量(運転者の要求トルクを示す)に応じた信号等が供給される。
コントロールユニット100においては、スロットルセンサ209、エアフローセンサ206、クランク角センサ210、水温センサ213、アクセルセンサ211、A/Fセンサ219、等の各センサの出力が入力され、入力回路301にてノイズ除去等の信号処理を行った後、入出力ポート302に送られる。入力ポートの値はRAM303に保管され、CPU305内で演算処理される。演算処理の内容を記述した制御プログラムはROM304に予め書き込まれている。制御プログラムに従って演算された各アクチュエータ操作量を表す値はRAM303に保管された後、出力ポート302に送られる。
点火プラグ216に対する作動信号は点火出力回路308内の一次側コイルの通流時はONとなり、非通流時はOFFとなるON・OFF信号がセットされる。点火時期はONからOFFになる時点である。出力ポート302にセットされた点火プラグ216用の信号は点火出力回路308で点火に必要な十分なエネルギーに増幅され点火プラグ216に供給される。また、燃料噴射弁215の駆動信号は開弁時ON、閉弁時OFFとなるON・OFF信号がセットされ、燃料噴射弁駆動回路307で燃料噴射弁215を開弁するのに十分なエネルギーに増幅されて燃料噴射弁215に供給される。スロットル207の目標開度を実現する駆動信号は、電制スロットル弁駆動回路306を経て、スロットル207を駆動するモーター208に送られる。
コントロールユニット100では、A/Fセンサ219の出力を用いて三元触媒218の浄化効率が最適となるように燃料噴射量もしくは吸入空気量を逐次補正するF/B(フィードバック)制御を行う。
以下、本発明に係る制御装置の実施形態の特徴部分である、コントロールユニット100が実行する空気量制御について述べる。図3は、空気量制御を行う空気量制御手段100Aの機能ブロック図である。空気量制御手段100Aは、目標空気量演算手段101と、第1演算手段102と、補正項演算手段103と、第2演算手段104と、目標スロットル開度演算手段である第3演算手段105と、を備えており、制御対象106(ここではスロットル開度)を制御する。
目標空気量演算手段101は、アクセル開度センサ211により検出される、運転者が要求するトルク、クランク角センサ210により検出されるエンジン回転数、水温センサ213により検出される冷却水温等に基づいて算出される要求エンジントルクを発生させるために必要な目標空気量TGTPを演算する。
また、第1演算手段102は、図4に示される如くに、目標空気量TGTPから、エアフローセンサ206で検出されるスロットル通過空気量(実空気量)TPを減算し、目標空気量TGTPと実空気量TPの差分である空気量偏差ΔTPを演算する。
補正項演算手段103は、図5に示される如くに、第1伝達特性演算手段501と、第2伝達特性演算手段502と、出力許可判定手段503と、で構成される。
第1伝達特性演算手段501は、図6に示される如くに、スロットル通過空気量推定手段601と、遅れ時間推定手段602と、第1応答特性演算手段603と、を備えている。
スロットル通過空気量推定手段601は、目標スロットル開度TGTVOやエンジン回転数等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOに対して、時間遅れが無いスロットル通過空気量TPd0を演算する。より具体的には、例えば、シミュレーション又は実験の結果より得られるマップもしくはモデルに基づいて、目標スロットル開度TGTVOよりスロットル通過空気量TPd0を求める(図7参照)。
また、遅れ時間推定手段602は、図8に示される如くに、スロットル分遅れ時間推定手段801と、空気分遅れ時間推定手段802と、を備えている。遅れ時間推定手段602は、スロットル分遅れ時間推定手段801により推定されるスロットル分遅れ時間D1Tに、空気分遅れ時間推定手段802により推定される空気分遅れ時間D1Aを加算して、遅れ時間D1を求める。
スロットル分遅れ時間推定手段801は、図9に示される如くに、目標スロットル開度TGTVO、スロットル開度TVO、エンジン回転数等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOの変化から、スロットル開度TVOの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間(スロットル分遅れ時間)D1Tを推定する。ここで、むだ時間以外の遅れ時間とは、例えば、目標スロットル開度TGTVOに対するスロットル開度TVOの応答特性を一次遅れ特性と近似した場合の時定数である。また、スロットル分遅れ時間D1Tは、予めシミュレーション又は実験の結果からマップもしくはモデルとして求めておく。
空気分遅れ時間推定手段802は、図10に示される如くに、エンジン回転数等に基づいて、スロットル開度TVOの変化からスロットル通過空気量(実空気量)TPの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間(空気分遅れ時間)D1Aを推定する。ここで、空気分遅れ時間D1Aは、予めシミュレーション又は実験の結果からテーブルもしくはモデルとして求めておく。
さらに、第1応答特性演算手段603は、時間遅れが無いスロットル通過空気量TPd0が遅れ時間D1に基づく伝達特性を通過した後のスロットル通過空気量TPd1を演算する。より具体的には、例えば、図11に示される如くに、遅れ時間D1に基づく伝達特性は一次遅れ伝達特性(一次遅れ伝達特性演算手段1101により演算)である。また、一次遅れ伝達特性は差分方程式により実現される(図12参照)。ここで、図12中のΔtは空気量制御手段100Aの制御周期であり、TPd1zはTPd1の前回値である。
上述の構成により、第1伝達特性演算手段501は、目標スロットル開度TGTVOの変化に対して、スロットル通過空気量TPが変化するまでに含まれる時間遅れのうちの、むだ時間以外の遅れ時間D1に基づき、目標スロットル開度TGTVOに対する遅れ時間D1の応答特性を有するスロットル通過空気量TPd1を演算する(図13参照)。
第2伝達特性演算手段502は、図14に示される如くに、スロットル通過空気量推定手段1401と、むだ時間推定手段1402と、遅れ時間推定手段1403と、第2応答特性演算手段1404と、を備えている。
スロットル通過空気量推定手段1401は、前記した第1伝達特性演算手段501が有するもの(601)と同様である(図6、図7参照)。
むだ時間推定手段1402は、図15に示される如くに、目標スロットル開度TGTVO、スロットル開度TVO、エンジン回転数等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOの変化から、スロットル開度TVOの変化までに含まれるむだ時間D2を推定する。ここで、むだ時間D2は、予めシミュレーション又は実験の結果からマップもしくはモデルとして求めておく。
遅れ時間推定手段1403は、前記した遅れ時間推定手段602(図8)と同様であり、目標スロットル開度TGTVOの変化からスロットル通過空気量TPの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間D1を演算する。
第2応答特性演算手段1404は、目標スロットル開度TGTVO(スロットル通過空気量TPd0)と、遅れ時間D1と、むだ時間D2とを入力とし、遅れ時間D1とむだ時間D2に基づく伝達特性に基づいて、時間遅れが無いスロットル開度TPd0に対して遅れ時間D1とむだ時間D2の応答特性を有するスロットル通過空気量TPd2を演算する。より具体的には、例えば、図16に示される如くに、むだ時間伝達特性演算手段1601と、一次遅れ伝達特性演算手段1602と、により構成される。むだ時間伝達特性演算手段1601は、以前の入力をRAM303に保存しておき、むだ時間D1に基づき、むだ時間D1だけ以前の入力値を出力する。また、一次遅れ伝達特性演算手段1602は、前記した第1応答特性演算手段603を構成する一次遅れ伝達特性演算手段1101(図11、図12)と同様であるため、詳細説明は省略する。
上述の構成により、第2伝達特性演算手段502は、目標スロットル開度TGTVOの変化に対して、スロットル通過空気量TPの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間D1とむだ時間D2とに基づき、目標スロットル開度TGTVOに対して遅れ時間D1とむだ時間D2の応答特性を有するスロットル通過空気量TPd2を演算する(図17参照)。
また、補正項演算手段103は、第1伝達特性演算手段501により求められたスロットル通過空気量TPd1(図6)から、第2伝達特性演算手段502により求められたスロットル通過空気量TPd2(図14)を減算して、スロットル通過空気量の偏差ΔTPdを求め、それを出力許可判定手段503に送る(図5参照)。
出力許可判定手段503は、システムが異常と判定された場合に、補正項演算手段103の出力を禁止するものである。より具体的には、例えば、スロットル207故障時もしくはエアフローセンサ206故障時、もしくは補正項Cが所定値以上である場合に、補正項演算手段103の出力を禁止する(図18参照)が、判定条件はこれだけではない。出力が許可された場合に補正項演算手段503は、スロットル通過空気量TPd1とスロットル通過空気量TPd2との偏差ΔTPdを補正項Cとして第2演算手段104に送る(図3参照)。
第2演算手段104は、図19に示される如くに、空気量偏差(目標空気量と実空気量との差分)ΔTPから補正項演算手段103により演算された補正項Cである偏差(TPd1とTPd2との差分)ΔTPdを減算して、最終目標空気量偏差TGTPFBを求める。
上記した如くのむだ時間補償手段(補正項演算手段103)は、目標スロットル開度TGTVOの変化に対してむだ時間遅れ特性が無い場合のスロットル通過空気量TPd1の変化と、むだ時間遅れ特性がある場合のスロットル通過空気量TPd2との偏差ΔTPdを補正項Cとし、この補正項Cに基づいて空気量偏差ΔTPを補正する。これにより、むだ時間による過度のF/B補正を防止し得、適切なむだ時間補償が可能である。
図3中の第3演算手段105は、第2演算手段104により演算された最終目標空気量偏差TGTPFBに基づき、目標空気量TGTPと実空気量TPを一致させるような目標スロットル開度TGTVOを演算する。より具体的には、例えば、比例、積分、微分要素より構成されるPID制御手段が挙げられる(図20参照)。ただし、図20中のKp、Kd、及びKiは、それぞれ比例ゲイン、微分ゲイン、及び積分ゲインであり、Δtは制御周期である。前記3つのゲインは、全運転状態で一定値であってもよいし、または、エンジン回転数等の運転状態により決定される値であってもよい。また、上記ゲインは予めシミュレーション又は実験の結果から求めておく。
図3中の制御対象106(スロットル207)では、目標スロットル開度TGTVOに基づいてスロットル207(モータ208)が駆動され、この駆動操作に応じてスロットル開度が調整される。これにより、スロットル通過空気量が変化し、エアフローセンサ206によりスロットル通過空気量(実空気量)TPが検出される。
図21は、本第1実施形態のコントロールユニット100(空気量制御手段100A)が前記した如くの空気量制御に際して実行するプログラム(空気量制御ルーチン)の一例を示すフローチャートである。
この空気量制御ルーチンでは、スタート後、ステップ2101で、各種センサにより検出されるアクセル開度、エンジン回転数、冷却水温等の運転状態に基づいて、目標空気量TGTPを演算する。ステップ2102では、エアフローセンサ206からの出力信号に基づいて、スロットル207を通過する実空気量TPを演算し、ステップ2103に進む。
ステップ2103では、目標空気量TGTPから実空気量TPを減算し、空気量偏差ΔTPを演算する。ステップ2104では、ステップ2109の前回の処理で演算された目標スロットル開度TGTVOとエンジン回転数等に基づいて、スロットル開度TVOの変化から実空気量TPの変化までに含まれるむだ時間を補償する補正項C(ΔTPd)を演算し、ステップ2105に進む。
ステップ2105では、スロットル207が正常であるか否かを判断し、スロットルが正常であると判断された場合にはステップ2106に進み、スロットル207が正常ではないと判断された場合には元に戻る。
ステップ2106では、エアフローセンサ206が正常であるか否かを判断し、エアフローセンサ206が正常であると判断された場合にはステップ2107に進み。エアフローセンサ206が正常ではないと判断された場合には元に戻る。
ステップ2107では、ステップ2104で求められた補正項Cの値が所定値以下であるか否かを判断し、補正項Cが所定値以下であると判断された場合にはステップ2108に進み、補正項Cが所定値を越えていると判断された場合には元に戻る。
ステップ2108では、空気量偏差ΔTPから補正項C(ΔTPd)を減算して最終目標空気量偏差TGTPFBを演算し、ステップ2109に進む。ステップ2109では、最終目標空気量偏差TGTPFBとエンジン回転数等に基づいて、目標空気量を実現する目標スロットル開度TGTVOを演算し、この目標スロットル開度TGTVOを実現するための制御信号を制御対象であるスロットル207(モータ208)に出力して元に戻る。
図22は、前記した如くの空気量制御を実行した際のアクセル開度、目標エンジントルク、スロットル開度、スロットル207を通過する実空気量を時系列で示したものである。図上方に向かって、アクセル開度大、目標エンジントルク大、スロットル開度大、空気量増量を示す。
図22に示される如くに、本実施形態の空気量制御では、運転者の要求を示すアクセル開度やエンジン回転数等の運転状態に従い、目標エンジントルクが演算され、さらに、演算された目標エンジントルクを実現するような、目標空気量(図中の破線)が演算され、目標空気量を実現するようにスロットル開度が制御される。
従来技術では、目標空気量とスロットル207を通過する実空気量を一致させるためにF/Bゲインを高く設定すると、エンジンの吸気系に含まれるむだ時間の影響により過度のF/B補正が実施されてしまうため、スロットル開度のハンチングが発生し、制御系のロバスト性が低下する(図中の鎖線)。従って、むだ時間の影響を考慮した場合には、F/Bゲインを低く設定せざるを得ず、結果としてスロットル207を通過する実空気量の応答性を向上させることができない。
これに対し、本発明第1実施形態では、むだ時間による過度のF/B補正を防止できるため、スロットル207を通過する実空気量の応答性を向上させることができる(図中の実線)。
空気量制御手段100Aを上記構成とすることにより、目標空気量TGTPからスロットル通過空気量TPまでの応答特性に含まれるむだ時間を補償できる。従って、目標空気量TGTPに対するスロットル通過空気量の応答性を向上させることが可能であり、結果として、燃焼室221に実際に吸入される空気量の応答性を向上させることが可能となる。さらに、目標スロットル開度TGTVOを演算する手段(第3演算手段105)に対してむだ時間補償手段(補正項演算手段103)が並列に配置される(並列に処理される)ことから、むだ時間補償手段の制御精度悪化時にはその出力を禁止する(補正項Cを用いない処理を行う)ことが可能となり、制御系全体のロバスト性を向上させることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明に係る制御装置の第2実施形態を説明する。本第2実施形態のシステム構成は、第1実施形態のもの(図1、図2)と基本的には同じであるのでその説明は省略する。
以下においては、第1実施形態のもの(図3に示される空気量制御手段100A)とその構成が異なる空気量制御手段100Bについて説明する。
本実施形態の空気量制御手段100Bは、図23に示される如くに、目標空気量演算手段2301と、第1実施形態には備えられていない空気量推定手段2302と、第1演算手段2303と、補正項演算手段2304と、第2演算手段2305と、第3演算手段2306と、から構成され、制御対象2307(ここではスロットル開度)を制御する。
目標空気量演算手段2301は、第1実施形態の目標空気量演算手段101と同様に、アクセル開度センサ212により検出される、ドライバーが要求するトルク、クランク角センサ210により検出されるエンジン回転数、水温センサ213により検出される冷却水温等に基づいて算出される要求エンジントルクを発生させるために必要な目標空気量TGTPを演算する。
空気量推定手段2302は、図24に示される如くに、遅れ時間推定手段2401と、むだ時間推定手段2402と、第3応答特性演算手段2403とを備えており、エアフローセンサ206により検出されるスロットル207を通過する実空気量TPに基づいて、燃焼室221に実際に吸入される空気量(実吸入空気量)TP2を演算(推定)する。
遅れ時間推定手段2401は、実空気量TPの変化から、実吸入空気量TP2の変化に含まれる遅れ時間(実空気量分遅れ時間)D3を推定する。より具体的には、例えば、実空気量TPから実吸入空気量TP2の時間遅れ特性を一次遅れ特性とむだ時間特性により構成されると近似した場合には、実空気量分遅れ時間D3は一次遅れ特性の時定数である。ここで、実空気量分遅れ時間D3は、予めシミュレーション又は実験の結果よりテーブルまたはモデルとして求めておく(図25参照)。
むだ時間推定手段2402は、実空気量TPの変化から、実吸入空気量TP2の変化に含まれるむだ時間(実空気量分むだ時間)D4を推定する。ここで、実空気量分むだ時間D4は、予めシミュレーション又は実験の結果よりテーブルまたはモデルとして求めておく(図26参照)。
第3応答特性演算手段2403は、実空気量TPから実吸入空気量TP2を演算するものである。より具体的には、例えば、第1実施形態のもの(第2応答特性演算手段1404)と同様に(図16参照)、実空気量TPの変化に対する実吸入空気量TP2の変化の応答特性を一次遅れ伝達特性とむだ時間特性により構成されるものと近似した場合には、むだ時間伝達特性演算手段1601と一次遅れ伝達特性演算手段(1101)により構成される。
第1演算手段2303は、第1実施形態の第1演算手段102(図4)と同様に、目標空気量TGTPから実吸入空気量TP2を減算して空気量偏差ΔTPを求める。
補正項演算手段2304は、第1実施形態の補正項演算手段103(図5)と同様に、第1伝達特性演算手段501’と、第2伝達特性演算手段502’と、出力許可判定手段503と、を備えている。
本第2実施形態の第1伝達特性演算手段501’は、図27に示される如くに、燃焼室吸入空気量推定手段2601と、遅れ時間推定手段2602と、第3応答特性演算手段2603と、を備えている。
燃焼室吸入空気量推定手段2601は、図28に示される如くに、目標スロットル開度TGTVOやエンジン回転数等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOに対して時間遅れが無い場合の燃焼室吸入空気量TPd0を推定する。ここで、目標スロットル開度TGTVOと時間遅れが無い場合の燃焼室吸入空気量TPd0の関係は、予めシミュレーション又は実験の結果よりマップ或いはモデルとして求めておく。
また、遅れ時間推定手段2602は、第1実施形態の遅れ時間推定手段602(図8)と同様に、スロットル分遅れ時間推定手段801’と、空気分遅れ時間推定手段802’と、を備えており、スロットル分遅れ時間推定手段801’により推定されるスロットル分遅れ時間D1Tと、空気分遅れ時間推定手段802’により推定される空気分遅れ時間D1Aを加算して、遅れ時間D1を求める。
本第2実施形態のスロットル分遅れ時間推定手段801’は、第1実施形態と同様に(図9参照)、目標スロットル開度TGTVO、スロットル開度TVO、エンジン回転数等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOの変化から、スロットル開度TVOの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間(スロットル分遅れ時間)D1Tを推定する。
本第2実施形態の空気量分遅れ時間推定手段802’は、第1実施形態と同様に(図10参照)、エンジン回転数等に基づいて、スロットル開度TVOの変化から燃焼室吸入空気量(実吸入空気量)TP2の変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間(空気分遅れ時間)D1Aを推定する。ここで、空気分遅れ時間D1Aは、予めシミュレーション又は実験の結果からテーブルまたはモデルとして求めておく。
第1応答特性演算手段2603は、第1実施形態の第1応答特性演算手段603と同様に(図11参照)、燃焼室吸入空気量推定手段2601により推定された時間遅れが無い燃焼室吸入空気量TPd0と遅れ時間推定手段2602により推定された遅れ時間D1に基づいて燃焼室吸入空気量TPd1を演算する。
上記構成により、本第2実施形態の第1伝達特性演算手段501’は、目標スロットル開度TGTVOの変化に対して、燃焼室吸入空気量TP2が変化するまでに含まれる時間遅れのうちの、むだ時間以外の遅れ時間D1に基づき、目標スロットル開度TGTVOに対して遅れ時間D1の応答特性を有する吸入空気量TPd1を演算する。
本第2実施形態の第2伝達特性演算手段502’は、図29に示される如くに、燃焼室吸入空気量推定手段2801と、むだ時間推定手段2802と、遅れ時間推定手段2803と、第2応答特性演算手段2804と、を備えている。
燃焼室吸入空気量推定手段2801は、燃焼室吸入空気量推定手段2601と同様である。
むだ時間推定手段2802は、図30に示される如くに、スロットル分むだ時間推定手段2901と、空気分むだ時間推定手段2902と、を備えている。むだ時間推定手段2902は、スロットル分むだ時間推定手段2901により推定されるスロットル分むだ時間D2Tと、空気分遅れ時間推定手段2902により推定される空気分むだ時間D2Aを加算して、むだ時間D2を求める。
スロットル分むだ時間推定手段2901は、図31に示される如くに、目標スロットル開度TGTVO、スロットル開度TVO、エンジン回転数等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOの変化から、スロットル開度TVOの変化までに含まれるむだ時間D2Tを推定する。ここで、むだ時間D2Tは、予めシミュレーション又は実験の結果からマップ或いはモデルとして求めておく。
空気分むだ時間推定手段2902は、図32に示される如くに、エンジン回転数に基づいて、スロットル開度TVOの変化から燃焼室吸入空気量TP2の変化までに含まれるむだ時間(空気分むだ時間)D2Aを推定する。ここで、空気分むだ時間D2Aは、予めシミュレーション又は実験の結果からテーブル又はモデルとして求めておく。
第2応答特性演算手段2804は、第1実施形態の第2応答特性演算手段1404と同様であり(図15、図16参照)、目標スロットル開度TGTVOと、遅れ時間D1と、むだ時間D2とを入力とし、遅れ時間D1とむだ時間D2とを用いて演算される伝達特性に基づいて、時間遅れが無い燃焼室吸入空気量TPd0から時間遅れ後の燃焼室吸入空気量TPd2を演算する。
上記構成により、第2伝達特性演算手段502’は、目標スロットル開度TGTVOの変化に対して、燃焼室吸入空気量TP2が変化するまでに含まれる時間遅れの中の、むだ時間以外の遅れ時間D1とむだ時間D2に基づき、目標スロットル開度TGTVOに対して遅れ時間D1及びむだ時間D2の応答特性を有する燃焼室吸入空気量TPd2を演算する。
また、補正項演算手段2304は、第1伝達特性演算手段501により演算された燃焼室吸入空気量TPd1から、第2伝達特性演算手段により演算された燃焼室吸入空気量TPd2を減算して、燃焼室吸入空気量の偏差ΔTPdを求め、それを出力許可判定手段503に送る。
本第2実施形態の出力許可判定手段503(図5)は、第1実施形態のものと同様(図18参照)であるため、詳細説明は省略する。
また、第2演算手段2305、第3演算手段2306も、第1実施形態の第2演算手段104、第3演算手段105と同様(図19、図20参照)であるため、詳細説明は省略する。ただし、第2演算手段2305には、第1実施形態ではエアフローセンサ206により検出されるスロットル通過空気量が入力されるが、第2実施形態では、吸気量推定手段2302により演算(推定)された実(燃焼室)吸入空気量が入力される。
図33は、本第2実施形態のコントロールユニット100(空気量制御手段100B)が前記した如くの空気量制御に際して実行するプログラム(空気量制御ルーチン)の一例を示すフローチャートである。
この空気量制御ルーチンにおいては、スタート後、ステップ3201で、各種センサにより検出されるアクセル開度、エンジン回転数、冷却水温等の運転状態に基づいて、目標空気量TGTPを演算する。続くステップ3202では、エアフローセンサ206の出力信号に基づいてスロットル207を通過する実空気量TPを演算し、ステップ3203に進む。ステップ3203では、実空気量TPに基づいて、燃焼室220に吸入される実吸入空気量TP2を演算する。
ステップ3204では、目標空気量TGTPから実吸入空気量TP2を減算し、空気量偏差ΔTPを求める。ステップ3205では、ステップ3210の前回の処理で演算された目標スロットル開度TGTVOやエンジン回転数等に基づいて、スロットル開度TVOの変化から実吸入空気量TP2の変化までに含まれるむだ時間を補償するような補正項C(ΔTPd)を演算し、ステップ3206に進む。
ステップ3206では、スロットル207が正常であるか否かを判断し、スロットル207が正常であると判断された場合にはステップ3207に進み、スロットル207が正常ではないと判断された場合には元に戻る。
ステップ3207では、エアフローセンサ206が正常であるか否かを判断し、エアフローセンサ206が正常であると判断された場合にはステップ3208に進み、エアフローセンサ206が正常ではないと判断された場合には元に戻る。
ステップ3208では、ステップ3205で演算された補正項Cの値が所定値以下であるか否かを判断し、補正項Cが所定値以下であると判断された場合には、ステップ3209に進み、補正項Cが所定値を越えていると判断された場合には元に戻る。
ステップ3209では、空気量偏差ΔTPから補正項Cを減算して最終目標空気量偏差TGTPFBを演算し、ステップ3210に進む。ステップ3210では、最終目標空気量偏差TGTPFBとエンジン回転数等に基づいて、目標空気量を実現するための目標スロットル開度TGTVOを演算し、この目標スロットル開度TGTVOに応じた制御信号を制御対象であるスロットル207(モータ208)に出力して元に戻る。
本第2実施形態において、前記の如くの空気量制御を実行した際には、アクセル開度、目標エンジントルク、スロットル開度、燃焼室221に吸入される実空気量を時系列で示すと、図22に示される第1実施形態のもの略同様となる。
本第2実施形態でも、運転者が要求するトルクを示すアクセル開度やエンジン回転数等の運転状態に従い、目標エンジントルクが演算され、さらに、演算された目標エンジントルクを実現するような、目標空気量が演算され、この目標空気量を実現するようにスロットル開度が制御される。
従来技術においては、目標空気量と燃焼室221に吸入される実空気量を一致させるためにF/Bゲインを高く設定すると、エンジンの吸気系に含まれるむだ時間の影響により過度のF/B補正が実施されてしまうため、スロットル開度のハンチングが発生し、制御系のロバスト性が低下する。従って、むだ時間の影響を考慮した場合には、F/Bゲインを低く設定せざるを得ず、結果としてエンジンに吸入される実空気量の応答性を向上させることができない。
これに対し、本第2実施形態では、むだ時間による過度のF/B補正は行われないため、燃焼室221に吸入される実空気量の応答性を向上させることができる。
空気量制御手段100Bを上記構成とすることにより、目標空気量TGTPから燃焼室吸入空気量TP2の変化までに含まれるむだ時間を補償することができ、目標スロットル開度TGTVOに対する燃焼室吸入空気量TP2の応答性を向上させることが可能である。さらに、目標スロットル開度TGTVOを演算する手段(第3演算手段2306)に対してむだ時間補償手段(補正項演算手段2304)が並列に配置される(並列に処理される)ことから、むだ時間補償手段の制御精度悪化時にはその出力を禁止する(補正項Cを用いない処理を行う)ことが可能となり、制御系全体のロバスト性を向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明に係る制御装置の第3実施形態を説明する。本第3実施形態のシステム構成は、第1実施形態のもの(図1、図2)と基本的には同じであるのでその説明は省略する。
以下においては、第1実施形態のもの(図3に示される空気量制御手段100A)とその構成が異なる空気量制御手段100Cについて説明する。
本実施形態の空気量制御手段100Cは、図34に示される如くに、目標空気量演算手段3301と、第1演算手段3302と、補正項演算手段3303と、第2演算手段3304と、第3演算手段3305と、から構成され、制御対象3307(ここではスロットル開度)を制御する。
目標空気量演算手段3301、第1演算手段3302、第2演算手段3304、第3演算手段3305は、それぞれ第1実施形態の目標空気量演算手段101、第1演算手段102、第2演算手段104、第3演算手段105と同様であるので、詳細説明は省略する。
補正項演算手段3303は、図35に示される如くに、第1伝達特性演算手段3401と、第2伝達特性演算手段3402と、出力許可判定手段3403と、を備えている。
第1伝達特性演算3401は、図36に示される如くに、スロットル通過空気量推定手段3501と、遅れ時間推定手段3502と、第1応答特性演算手段3503を備えており,目標スロットル開度TGTVOの変化からスロットル通過空気量(実空気量)TPの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間に基づき、目標スロットル開度TGTVOに対して該遅れ時間の応答特性を有するスロットル通過空気量TPd1を演算する。
スロットル通過空気量推定手段3501は、目標スロットル開度TGTVO等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOに対して時間遅れが無い場合のスロットル通過空気量TPd0を演算する。また、詳細は後述するが、学習制御手段3306の出力である学習結果に基づいて、内部パラメータを調整する。より具体的には、例えば、エンジンが定常回転時に、エアフローセンサ206により検出される実空気量TPから、調整前のスロットル通過空気量演算手段3501の出力である時間遅れの無いスロットル通過空気量TPd0を減算した偏差(空気量偏差2)を学習結果とし、該空気量偏差2を調整前の時間遅れの無いスロットル通過空気量TPd0に加算する。学習結果に基づく調整により、製造ばらつきや経時変化等に対するロバスト性を向上させることが可能となる。
遅れ時間推定手段3502は、図37に示される如くに、スロットル分遅れ時間推定手段3601と、空気分遅れ時間推定手段3602と、を備えており、スロットル分遅れ時間推定手段3601の出力であるスロットル分遅れ時間D1Tと、空気分遅れ時間推定手段3602の出力である空気分遅れ時間D1Aを加算して、遅れ時間D1を出力する。
スロットル分遅れ時間推定手段3601は、第1実施形態と同様(図9参照)に、目標スロットル開度TGTVO、スロットル開度TVO、エンジン回転数等に基づいて、目標スロットル開度TGTVOの変化から、スロットル開度TVOの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間(スロットル分遅れ時間)D1Tを推定する。ここで、むだ時間以外の遅れ時間とは、例えば、目標スロットル開度TGTVOの変化からスロットル開度TVOの変化までの伝達特性を、一次遅れ特性と近似した場合の時定数である。スロットル分遅れ時間D1Tは、予めシミュレーション又は実験の結果からマップもしくはモデルとして求めておく。
また、スロットル分遅れ時間推定手段3601は、後述する学習制御手段3306の出力である学習結果に基づいて、スロットル分遅れ時間D1Tを調整する。より具体的には、例えば、目標スロットル開度TGTVOとスロットル開度センサ209により検出されるスロットル開度TVOから推定される推定スロットル分遅れ時間から、調整前のスロットル分遅れ時間を減算したスロットル分遅れ時間偏差を学習結果とし、該スロットル分遅れ時間偏差を調整前のスロットル分遅れ時間に加算する。学習結果に基づく調整により、製造ばらつきや経時変化等に対するロバスト性を向上できる。
空気分遅れ時間推定手段3602は、第1実施形態と同様(図10参照)に、エンジン回転数等に基づいて、スロットル開度TVOの変化からスロットル通過空気量(実空気量)TPの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間(空気分遅れ時間)D1Aを推定する。ここで、空気分遅れ時間D1Aは、予めシミュレーション又は実験の結果からテーブルもしくはモデルとして求めておく。
また、空気分遅れ時間推定手段3602は、後述する学習制御手段3306の出力である学習結果に基づいて、空気分遅れ時間D1Aを調整する。より具体的には、例えば、スロットル開度センサ209の出力信号から演算されるスロットル開度TVOとエアフローセンサ206の出力信号から演算されるスロットル通過空気量(実空気量)TPから推定される推定空気分遅れ時間から、調整前の空気分遅れ時間を減算した空気分遅れ時間偏差を学習結果とし、該空気分遅れ時間偏差を調整前の空気分遅れ時間に加算する。学習結果に基づく調整により、製造ばらつきや経時変化等に対するロバスト性を向上できる。
第1応答特性演算手段3503は、第1実施形態と同様に、時間遅れが無いスロットル通過空気量TPd0と、遅れ時間D1に基づいて、目標スロットル開度TGTVOの変化から遅れ時間D1に基づく伝達特性(一次遅れ特性)を通過したスロットル通過空気量TPd1を演算する(図11参照)。
一方、第2伝達特性演算手段3402は、図38に示される如くに、スロットル通過空気量推定手段3701と、むだ時間推定手段3702と、遅れ時間推定手段3703と、第2応答特性演算手段3704と、を備え、目標スロットル開度TGTVOの変化からスロットル通過空気量(実空気量)TPの変化までに含まれるむだ時間以外の遅れ時間とむだ時間に基づいて、目標スロットル開度TGTVOから該遅れ時間と該むだ時間に基づいた伝達特性(むだ時間遅れ特性+一次遅れ特性)を通過したスロットル通過空気量TPd2を演算する。
スロットル通過空気量推定手段3701は、第1伝達特性演算手段3401が備えるスロットル通過空気量推定手段3501と同様であるため、詳細説明は省略する。
むだ時間推定手段3702は、第1実施形態と同様(図15参照)に、目標スロットル開度TGTVO、スロットル開度TVO、エンジン回転数に基づいて、目標スロットル開度TGTVOの変化から、スロットル開度TVOの変化までに含まれるむだ時間D2を推定する。また、むだ時間推定手段3702は、後述する学習制御手段3306の出力である学習結果に基づき、内部のパラメータを調整する。より具体的には、例えば、目標スロットル開度TGTVOとスロットル開度センサ209より推定される推定むだ時間から、調整前のむだ時間を減算したむだ時間偏差を学習結果とし、該むだ時間偏差を調整前のむだ時間に加算する。学習結果に基づく調整により、製造ばらつきや経時変化等に対するロバスト性を向上することができる。
遅れ時間推定手段3703は、前記した遅れ時間推定手段3502と同様であるため、詳細説明は省略する(図36参照)。
第2応答特性演算手段3704は、第1実施形態と同様(図16参照)に、目標スロットル開度TGTVOが、時間遅れがないスロットル開度TPd0から遅れ時間D1とむだ時間D2に基づく伝達特性を通過した後のスロットル通過空気量TPd2を演算する。
また、補正項演算手段3303は、第1伝達特性演算手段3401により演算されたTPd1から、第2伝達特性演算手段3402により演算されたTPd2を減算して、スロットル通過空気量偏差ΔTPdを求め、出力許可判定部3403におくる。
出力許可判定手段3403は、第1実施形態と同様に、補正項Cの出力許可を判定する(図18参照)。
学習制御手段3306は、各種センサ信号に基づいて推定される実測値と初期設定値とを減算して偏差を演算し、偏差が所定値以上である場合に、その偏差を学習結果として出力する。より具体的には、例えば、目標空気量TGTPをステップ変化させ、目標スロットル開度TGTVOとスロットル開度センサ209の出力信号から演算されるスロットル開度TVOに基づいて推定される実むだ時間と、初期設定マップより推定されるむだ時間を減算してむだ時間偏差を演算し、該むだ時間偏差が所定値以上である場合に、該むだ時間偏差を学習し、学習結果として出力する。
また、同様に、目標空気量TGTPをステップ変化させ、目標スロットル開度TGTVOとスロットル開度TVOに基づくスロットル開度に基づく実スロットル分遅れ時間と、初期設定マップから推定されるスロットル分遅れ時間を減算したスロットル分遅れ時間偏差や、スロットル開度TVOとエアフローセンサ206の出力信号から演算されるスロットル通過空気量(実空気量)TPに基づく実空気分遅れ時間と、初期設定テーブルにより推定される空気分遅れ時間を減算して空気分遅れ時間偏差を学習し、学習結果として出力する。
さらに、各手段は演算された学習結果に基づき、自身を調整する。
図39は、本第3実施形態のコントロールユニット100(空気量制御手段100C)が前記した如くの空気量制御に際して実行するプログラム(空気量制御ルーチン)の一例を示すフローチャートである。
この空気量制御ルーチンでは、スタート後、ステップ3801で、各種センサにより検出されるアクセル開度、エンジン回転数、冷却水温等の運転状態に基づいて、目標空気量TGTPを演算する。ステップ3802では、エアフローセンサ206からの出力信号に基づいて、スロットル207を通過する実空気量TPを演算し、ステップ3803に進む。
ステップ3803では、目標空気量TGTPから実空気量TPを減算し、空気量偏差ΔTPを演算する。ステップ3804では、ステップ3809の前回の処理で演算された目標スロットル開度TGTVOとエンジン回転数等に基づいて、スロットル開度TVOの変化から実空気量TPの変化までに含まれるむだ時間を補償する補正項C(ΔTPd)を演算し、ステップ3805に進む。
ステップ3805では、スロットル207が正常であるか否かを判断し、スロットルが正常であると判断された場合にはステップ3806に進み、スロットル207が正常ではないと判断された場合には元に戻る。
ステップ3806では、エアフローセンサ206が正常であるか否かを判断し、エアフローセンサ206が正常であると判断された場合にはステップ3807に進み。エアフローセンサ206が正常ではないと判断された場合には元に戻る。
ステップ3807では、ステップ3804で求められた補正項Cの値が所定値以下であるか否かを判断し、補正項Cが所定値以下であると判断された場合にはステップ3808に進み、補正項Cが所定値を越えていると判断された場合には元に戻る。
ステップ3808では、空気量偏差ΔTPから補正項C(ΔTPd)を減算して最終目標空気量偏差TGTPFBを演算し、ステップ3809に進む。ステップ3809では、最終目標空気量偏差TGTPFBとエンジン回転数等に基づいて、目標空気量を実現する目標スロットル開度TGTVOを演算し、この目標スロットル開度TGTVOを実現するための制御信号を制御対象であるスロットル207(モータ208)に出力して元に戻る。
続くステップ3810では、各種センサの出力信号に基づいて推定される空気量制御(補正項演算手段3303)のパラメータと補正項Cによる調整前のパラメータとの偏差を演算して学習結果とし、該学習結果に基づいて空気量制御(補正項演算手段3303)の各パラメータを調整して、元に戻る。
図40は、第3実施形態の空気量制御手段100Cによる制御を実行した際のアクセル開度、目標エンジントルク、スロットル、空気量を時系列で示したものである。図上方に向かって、アクセル開度大、目標エンジントルク大、スロットル開度大、空気量増量を示す。
本実施形態の空気量制御手段100Cによる制御では、運転者が要求するトルクを示すアクセル開度やエンジン回転数等の運転状態に従い、目標エンジントルクが演算される。さらに、演算された目標エンジントルクを実現するような、目標空気量(図中の破線)が演算され、目標空気量を実現するようにスロットルが制御される。
製造ばらつきや経時変化等が発生した場合には、目標空気量を実現するようにスロットルを制御したにも関わらず、F/Bゲインが適切でないことから、空気量の応答性の低下や定常偏差が発生する場合がある(図中の鎖線)。
これに対し、本実施形態では、制御中に各種センサの出力信号に基づき、制御系の内部パラメータを学習するため、空気量の応答性と制御系のロバスト性を向上させることができる。
空気量制御手段100Cを上記構成とすることにより、目標空気量TGTPからスロットル通過空気量TPまでの応答特性に含まれるむだ時間を補償でき、目標空気量TGTPに対するスロットル通過空気量TPの応答性を向上させることができる。結果として、エンジンの燃焼室内に吸入する空気量の応答性を向上させることができる。また、目標スロットル開度TGTVOを演算する手段に対してむだ時間補償手段が並列に配置される(並列に処理される)ことから、むだ時間補償手段の制御精度悪化時には出力を禁止するため、制御系全体のロバスト性を向上させることができる。さらに、むだ時間による過度のF/B補正を防止するとともに、各種センサの出力信号に基づいて、制御装置の内部パラメータを調整するため、製造ばらつきや経時変化等に対する制御系のロバスト性を向上させることが可能である。