JP3918219B2 - 内燃機関用バルブタイミング制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸気バルブまたは排気バルブの少なくともいずれか一方の開閉タイミングを運転状態に応じて変更自在な内燃機関用バルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブや排気バルブの開閉タイミングを可変制御する機構として、クランクシャフトに同期して回転するカムプーリに対するカムシャフトの回転位相を変更するようにした内燃機関用バルブタイミング制御装置に関連する先行技術文献としては、特開平7−247869号公報にて開示されたものが知られている。
【0003】
このものには、アクセルペダルの踏込みによるスロットル開度の変化に応じて急加速または緩加速を検出し、制御マップを切替えてバルブタイミングを変更することにより加速感を得るようにした技術が示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のものでは、急加速または緩加速を検出し制御マップを切替えるため、複数の制御マップを予め格納しておく必要がある。また、急加速または緩加速を検出し切替えられる制御マップのパラメータが異なっており、バルブタイミングを変更する制御量を実際の内燃機関の運転状態に適合させ難いという不具合があった。
【0005】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、内燃機関の運転状態に応じた適切な制御量により所望の加速感を得ることができる内燃機関用バルブタイミング制御装置の提供を課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の内燃機関用バルブタイミング制御装置によれば、目標相対回転角演算手段で、内燃機関の運転状態に応じて算出された駆動軸の回転角と従動軸の回転角との目標相対回転角に対応して過渡補正回転角演算手段で過渡時における過渡補正回転角が算出される。この過渡補正回転角に基づき、制御回転角補正手段により相対回転角制御手段で算出された制御回転角が補正される。このように、目標相対回転角の大小に応じて算出された過渡補正回転角を用い、バルブタイミング制御機構の制御過渡時における制御回転角が適切に補正されるためバルブタイミング制御機構の制御応答性を向上することができる。
【0007】
しかも、前記目標相対回転角演算手段は、内燃機関の運転状態に応じて算出された目標相対回転角とそれが平滑化されたなまし目標相対回転角とを用いて目標相対回転角偏差に基づく過渡補正回転角を算出するものであるから、バルブタイミング制御機構の制御過渡の開始時と収束時とで小さく、その途中で大きくされるから、過渡時におけるバルブタイミング制御機構の制御応答性が向上され、かつ定常時の制御安定性も確保することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関用バルブタイミング制御装置を適用したダブルオーバヘッドカム式内燃機関とその周辺機器を示す概略構成図である。
【0011】
図1において、10は内燃機関であり、内燃機関10の駆動軸としてのクランクシャフト11からチェーン12を介して一対のチェーンスプロケット13,14に駆動力が伝達される。このクランクシャフト11と同期して回転される一対のチェーンスプロケット13,14には従動軸としての一対のカムシャフト15,16が配設され、これらのカムシャフト15,16によって図示しない吸気バルブ及び排気バルブが開閉駆動される。
【0012】
クランクシャフト11にはクランクポジションセンサ21、カムシャフト15にはカムポジションセンサ22がそれぞれ配設されている。このクランクポジションセンサ21から出力されるパルス信号θ1 及びカムポジションセンサ22から出力されるパルス信号θ2 はECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)30に入力される。
【0013】
なお、ECU30は、周知の中央処理装置としてのCPU、制御プログラムを格納したROM、各種データを格納するRAM、入出力回路及びそれらを接続するバスライン等からなる論理演算回路として構成されている。
【0014】
ECU30には、これらの信号の他に内燃機関10の運転状態を表す機関回転数Ne 、単位機関回転数当たりの吸気量(吸入空気量)GN、冷却水温、スロットル開度等の各種信号が入力されており、後述のクランクシャフト11に対するカムシャフト15の相対回転角AC及び目標相対回転角TACが算出される。そして、ECU30からの駆動信号によりスプールバルブ40のリニアソレノイド41がDuty(デューティ比)制御され、油タンク45内の油がポンプ46により供給油通路47を通って一方のカムシャフト15に設けられたバルブタイミング制御機構50(図1の斜線部)に圧送される。このバルブタイミング制御機構50に供給される油の油量が調整されることで、カムシャフト15がチェーンスプロケット13、即ち、クランクシャフト11に対し所定の位相差を有して回転自在であり、カムシャフト15が目標相対回転角TACに設定可能である。なお、バルブタイミング制御機構50からの油は排出油通路48を通って油タンク45内に戻される。
【0015】
ここで、クランクシャフト11が1回転してクランクポジションセンサ21からのパルス数がN個発生するとき、カムシャフト15の1回転でカムポジションセンサ22からのパルス数がN個発生するようにする。また、カムシャフト15のタイミング変換角最大値をθmax °CA(クランク角)とすると、N<(360/θmax )となるようにパルス数Nを設定する。これによって、相対回転角ACの算出時、クランクポジションセンサ21のパルス信号θ1 と、このパルス信号θ1 の次に続いて発生するカムポジションセンサ22のパルス信号θ2 とを使用することができる。
【0016】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関用バルブタイミング制御装置で使用されているECU30の処理手順を示す図2のフローチャートに基づき、図3及び図4を参照して説明する。なお、図2のフローチャートは所定時間毎に繰返し実行される。また、図3は機関回転数Ne と吸気量GNとから目標相対回転角TACを求めるマップであり、図4は目標相対回転角TACとその目標相対回転角TACを平滑化したなまし値としてのなまし目標相対回転角TACSMとの遷移状態を示すタイムチャートである。
【0017】
図2において、まず、ステップS101で、各種センサ信号としてクランクポジションセンサ21の出力信号θ1 及びカムポジションセンサ22の出力信号θ2 、内燃機関10の運転状態を表す機関回転数Ne 及び吸気量GN等が読込まれる。次にステップS102に移行して、ステップS101で読込まれたクランクポジションセンサ21の出力信号θ1 及びカムポジションセンサ22の出力信号θ2 からクランクシャフト11に対するカムシャフト15の現在の位相差である相対回転角AC(=θ1 −θ2 )が算出される。
【0018】
次にステップS103に移行して、ステップS101で読込まれた機関回転数Ne 及び吸気量GNに基づき、図3に示すマップから現在の目標位相差である目標相対回転角TACが算出される。次にステップS104に移行して、ステップS102で算出された相対回転角ACとステップS103で算出された目標相対回転角TACとに基づきフィードバック補正される制御回転角としてのフィードバック補正デューティDVFBが次式(1)により算出される。ここで、K1 は補正ゲインである。
【0019】
【数1】
DVFB=(TAC−AC)*K1 ・・・(1)
次にステップS105に移行して、目標相対回転角TACを平滑化した現在のなまし目標相対回転角TACSMi が次式(2)により算出される。ここで、TACSMi-1 は前回のなまし目標相対回転角、K2 はなましゲインである。
【0020】
【数2】
TACSMi =TACSMi-1 *(1−K2 )+TAC*K2 ・・・(2)
次にステップS106に移行して、ステップS103で算出された目標相対回転角TACとステップS105で算出されたなまし目標相対回転角TACSMi とに基づき目標相対回転角偏差DELTACが次式(3)により算出される(図4参照)。
【0021】
【数3】
DELTAC=TAC−TACSMi ・・・(3)
次にステップS107に移行して、ステップS106で算出された目標相対回転角偏差DELTACに基づき過渡補正回転角としての過渡補正デューティDVTCが次式(4)により算出される。ここで、K3 は補正ゲインである。
【0022】
【数4】
DVTC=DELTAC*K3 ・・・(4)
次にステップS108に移行して、ステップS104で算出されたフィードバック補正デューティDVFBがステップS107で算出された過渡補正デューティDVTCに基づき補正され、リニアソレノイド41に出力する制御Duty (デューティ比)DVが次式(5)により算出され、本ルーチンを終了する。
【0023】
【数5】
DV=DVFB+DVTC ・・・(5)
このように、本実施例の内燃機関用バルブタイミング制御装置は、内燃機関10の駆動軸としてのクランクシャフト11から吸気バルブを開閉する従動軸としてのカムシャフト15に駆動力を伝達するチェーン12等からなる駆動力伝達系に設けられ、カムシャフト15を所定角度範囲内で相対回転自在なバルブタイミング制御機構50と、クランクシャフト11の回転角θ1 を検出する駆動軸回転角検出手段としてのクランクポジションセンサ21と、カムシャフト15の回転角θ2 を検出する従動軸回転角検出手段としてのカムポジションセンサ22と、クランクポジションセンサ21で検出されたクランクシャフト11の回転角θ1 とカムポジションセンサ22で検出されたカムシャフト15の回転角θ2 との位相差である相対回転角ACを算出するECU30にて達成される相対回転角演算手段と、内燃機関10の運転状態に応じてクランクシャフト11の回転角θ1 とカムシャフト15の回転角θ2 との目標とする位相差である目標相対回転角TACを算出するECU30にて達成される目標相対回転角演算手段と、前記相対回転角演算手段で算出された相対回転角ACと前記目標相対回転角演算手段で算出された目標相対回転角TACとの偏差に応じてフィードバック補正されるフィードバック補正デューティDVFBを算出し、バルブタイミング制御機構50によりカムシャフト15を相対回転するECU30にて達成される相対回転角制御手段と、前記目標相対回転角演算手段で算出された目標相対回転角TACに対応して過渡時における過渡補正デューティDVTCを算出するECU30にて達成される過渡補正回転角演算手段と、前記過渡補正回転角演算手段で算出された過渡補正デューティDVTCに基づき前記相対回転角制御手段で算出されたフィードバック補正デューティDVFBを補正するECU30にて達成される制御回転角補正手段とを具備するものである。
【0024】
したがって、目標相対回転角演算手段を達成するECU30で、内燃機関10の運転状態に応じて算出されたクランクシャフト11の回転角θ1 とカムシャフト15の回転角θ2 との目標相対回転角TACに対応して過渡補正回転角演算手段を達成するECU30で過渡時における過渡補正デューティDVTCが算出される。この過渡補正デューティDVTCに基づき、制御回転角補正手段を達成するECU30により相対回転角制御手段を達成するECU30で算出されたフィードバック補正デューティDVFBが補正される。このように、目標相対回転角TACの大小に応じて算出された過渡補正デューティDVTCを用い、過渡時におけるフィードバック補正デューティDVFBが適切に補正されるためバルブタイミング制御機構50の制御応答性が向上される。
【0025】
また、本実施例の内燃機関用バルブタイミング制御装置は、ECU30にて達成される過渡補正回転角演算手段が目標相対回転角TACと目標相対回転角TACを平滑化したなまし目標相対回転角TACSMとの偏差である目標相対回転角偏差DELTACに応じて過渡補正デューティDVTCを算出するものである。つまり、過渡補正回転角演算手段を達成するECU30で、目標相対回転角TACから所定のなましゲインによって目標相対回転角TACを平滑化したなまし目標相対回転角TACSMを減算して求められる目標相対回転角偏差DELTACの大きさに対応して過渡時における過渡補正デューティDVTCが算出される。したがって、内燃機関の運転状態に応じて算出された目標相対回転角TACとそれが平滑化されたなまし目標相対回転角TACSMとを用いて算出された目標相対回転角偏差DELTACに基づく過渡補正デューティDVTCは、過渡の開始時と収束時とで小さく、その途中で大きくされる。このため、過渡時におけるバルブタイミング制御機構50の制御応答性が向上され、かつ定常時の制御安定性も確保することができる。
【0026】
ところで、上記実施例では、過渡補正回転角演算手段を達成するECU30で、目標相対回転角TACを所定のなましゲインにて平滑化したなまし目標相対回転角TACSMを用い、目標相対回転角TACとの偏差である目標相対回転角偏差DELTACに応じて過渡補正デューティDVTCを算出しているが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、この他、内燃機関10の運転状態に応じて図3に示すマップにて算出される目標相対回転角TACの変化量に基づき過渡補正デューティDVTCを算出してもよい。
【0027】
また、目標相対回転角TACの所定周期(例えば、360°CA)毎の変化量に応じた補正回転角と目標相対回転角偏差DELTAC(=目標相対回転角TAC−なまし目標相対回転角TACSM)に応じた補正回転角との総和によりフィードバック補正デューティDVFBを補正してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関用バルブタイミング制御装置を適用したダブルオーバヘッドカム式内燃機関とその周辺機器を示す概略構成図である。
【図2】 図2は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関用バルブタイミング制御装置で使用されているECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】 図3は図2における目標相対回転角を求めるマップである。
【図4】 図4は本発明の実施の形態の一実施例にかかる内燃機関用バルブタイミング制御装置における目標相対回転角となまし目標相対回転角との遷移状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
11 クランクシャフト(駆動軸)
12 チェーン
13 チェーンスプロケット
15 カムシャフト(従動軸)
21 クランクポジションセンサ
22 カムポジションセンサ
30 ECU(電子制御装置)
40 スプールバルブ
41 リニアソレノイド
50 バルブタイミング制御機構
Claims (1)
- 内燃機関の駆動軸から吸気バルブまたは排気バルブの少なくともいずれか一方を開閉する従動軸に駆動力を伝達する駆動力伝達系に設けられ、前記駆動軸または前記従動軸のいずれか一方を所定角度範囲内で相対回転自在なバルブタイミング制御機構と、
前記駆動軸の回転角を検出する駆動軸回転角検出手段と、
前記従動軸の回転角を検出する従動軸回転角検出手段と、前記駆動軸回転角検出手段で検出された前記駆動軸の回転角と前記従動軸回転角検出手段で検出された前記従動軸の回転角との位相差である相対回転角を算出する相対回転角演算手段と、
前記内燃機関の運転状態に応じて前記駆動軸の回転角と前記従動軸の回転角との目標とする位相差である目標相対回転角を算出する目標相対回転角演算手段と、
前記相対回転角演算手段で算出された前記相対回転角と前記目標相対回転角演算手段で算出された前記目標相対回転角との偏差に応じて制御回転角を算出し、前記バルブタイミング制御機構により前記駆動軸または前記従動軸を相対回転する相対回転角制御手段と、
前記目標相対回転角演算手段で算出された前記目標相対回転角と前記目標相対回転角を平滑化したなまし値との偏差に応じて前記バルブタイミング制御機構の制御過渡時における過渡補正回転角を算出する過渡補正回転角演算手段と、
前記過渡補正回転角演算手段で算出された前記過渡補正回転角に基づき前記相対回転角制御手段で算出された前記制御回転角を補正する制御回転角補正手段と
を具備することを特徴とする内燃機関用バルブタイミング制御装置。
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---|---|---|---|
JP2244497A JP3918219B2 (ja) | 1997-02-05 | 1997-02-05 | 内燃機関用バルブタイミング制御装置 |
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ID=12082887
Family Applications (1)
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JP2244497A Expired - Fee Related JP3918219B2 (ja) | 1997-02-05 | 1997-02-05 | 内燃機関用バルブタイミング制御装置 |
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Families Citing this family (2)
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1997
- 1997-02-05 JP JP2244497A patent/JP3918219B2/ja not_active Expired - Fee Related
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