JP3730274B2 - 手術支援システム - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、X線断層像撮影装置によるリアルタイム再構成を利用した手術(バイオプシー、カテーテル挿入など)のナビゲーションを行うための手術支援システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
被検体を固定し、その被検体内にカテーテル、穿刺針などの挿入物(以下、単に「挿入物」と称する)を挿入して、被検体内に存在する腫瘍等の異物に挿入物を到達させるために、その挿入物のガイドを行う手術支援システムがある。この手術支援システムとして、例えば、CT誘導定位脳手術用座標計算システムがあり、このCT誘導定位脳手術用座標計算システムによれば、被検体の断層像撮影を行うことにより、被検体内の存在する異物の位置計測を行い、その異物の位置に向けて挿入物を挿入することができる。
【0003】
また、上記のCT誘導定位脳手術用座標計算システムでは、計測した異物の位置に到達した時点で被検体をスキャンして、挿入物が正しく挿入されたことが確認できる。更に、挿入物が異物に到達する前に被検体をスキャンして、挿入物と異物との位置関係などを確認することはできる。
【0004】
しかし、従来のCT誘導定位脳手術用座標計算システムは、時間分解能が低いという問題を有する。すなわち、従来のシステムは時間分解能が低いので、挿入物の操作中に挿入物が正しい位置に入っているかどうかをリアルタイムに観察することができない。更に、挿入物の現時点における挿入位置と断層像撮影装置による撮影画像との時間のずれがあるので、厳密には挿入物が正しい位置に挿入されているとは限らない。
【0005】
加えて、従来のCT誘導定位脳手術用座標計算システムは、被検体の断層像を得る場合のスライス位置及びスライス幅を外部から表示する投光器が固定されているので、スライス位置及びスライス幅は投光器によって外部から確認できるが、挿入物を挿入しながら断層像撮影装置で被検体を透視する場合には、挿入物の位置等は投光器によって外部から確認することができず、モニタ等の画面上でしか確認することができない。
【0006】
また、挿入物の進行方向が断層像撮影装置のスライス面に垂直に近い場合には、異物の大きさが最も大きい断面に断層像を表示して、挿入物を挿入するようにしているので、挿入物の被検体内の進行する様子が観察できない。
【0007】
上記は、CT誘導定位脳手術座標計算システムについて記載したが、被検体の断層像を撮影して、その断層像に従ってカテーテル等の挿入物を進行させるシステムにも同様の問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の手術支援システムは、時間分解能が低く、挿入物が被検体内を進行する様子を観察できない等の問題がある。
【0009】
本発明の目的は、時間分解能が高く挿入物の進行状況、すなわち挿入状態を容易に確認することができる手術支援システムを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するために次のような手段を講じた。本発明の手術支援システムは、寝台の天板に搭載された被検体の断層像を取得し、前記被検体内に挿入される挿入物のナビゲーションを行うためのX線断層像撮影装置を有する手術支援システムにおいて、前記挿入物の位置情報を取得する手段と、前記位置情報に基づいて、前記挿入物の前記被検体内における進行を監視する監視手段とを具備し、前記監視手段は、前記挿入物の進行方向が所望の方向か否かを報知する手段を有することを特徴とする
【0011】
また、前記X線断層像撮影装置は、ヘリカルスキャン及びボリュームスキャンのいずれかのスキャンにより前記被検体のMPR像及び3次元画像のいずれかの画像を得る手段を含み、前記位置情報に基づいて、前記挿入物の進行状況を前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかの画像上に表示する表示手段を更に具備することを特徴とする。そして、前記表示手段は、前記断層像と共に、前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかの画像を同時に表示することを特徴とし、前記X線断層像撮影装置は、前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかで表示された画像の一部を、スキャンによる最新データで置き換えることを特徴とする。
【0012】
更に、前記監視手段は、前記挿入物の先端の位置を出力する手段や、前記挿入物と前記被検体内の目的部位との距離を出力する手段を有することを特徴とする。
また、前記X線断層像撮影装置は、前記X線断層像の少なくともスライス位置及びスライス幅の一方を前記被検体の体表面に表示する手段を具備することを特徴とする。
前記X線断層撮影装置は、前記被検体を載置した天板を移動させることで前記スライス位置の移動を行うことを特徴とする。
前記X線断層撮影装置は、前記X線を曝射するX線管と前記被検体との間に設けられたコリメータを移動させることで前記スライス位置の移動を行うことを特徴とする。
前記X線断層撮影装置は、前記X線を曝射するX線管と前記被検体との間に設けられたコリメータを移動させることで前記スライス幅を変更することを特徴とする。
【0013】
前記X線断層撮影装置は、前記被検体内の目的部位に対して前記挿入物が進行した場合に正しい位置に到達するかどうかチェックする手段と、チェックの結果危険であれば警告を発する手段と、を備えたことを特徴とする。
ここで、前記X線断層撮影装置は、前記目的部位と前記挿入物との距離、前記挿入物先端の座標を表示することを特徴とする。
【0014】
【作用】
上記手段を講じた結果、次のような作用が生じる。
本発明によれば、挿入物(例えば、穿刺針、カテーテル等)の位置情報を得る手段を備えたので、挿入物の挿入状態をリアルタイムに確認することができ、それにより、挿入操作が正しく行うことができるように支援することができる。従って、挿入操作が正しく行えるようになり、被検体に対する侵襲を少なくすることができる。
【0015】
更に、挿入物の進行を監視する監視手段を備えたので、正しく確実に挿入物を腫瘍等の目的物に到着するように導くことができる。
また、前記X線断層像撮影装置は、ヘリカルスキャン及びボリュームスキャンのいずれかのスキャンにより前記被検体のMPR像及び3次元画像のいずれかの画像を得る手段を含み、挿入物の位置情報に基づいて、前記挿入物の進行状況を前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかの画像上に表示する表示手段を更に備えたので、目的の断面までの挿入物の移動過程を立体的にかつ容易に観察することができる。この表示手段は、前記断層像と共に、前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかの画像を同時に表示するようにしたので、挿入物の進行状況と共に現時点での表示断面が被検体のどの部分の断面に相当するか容易に判断できるので、操作性が向上する。また、前記X線断層像撮影装置は、前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかで表示された画像の一部を、スキャンによる最新データで置き換えるようにしたので、リアルタイムで常に最新の画像が得られる。
【0016】
更に、前記監視手段は、前記挿入物の先端の位置を出力する手段、前記挿入物と前記被検体内の目的部位との距離を出力する手段、前記挿入物の進行方向が所望の方向か否かを報知する手段有するようにしたので、挿入物が誤って他の部位に侵襲することがなくなる。
【0017】
前記X線断層像撮影装置は、スライス幅及びスライス位置を変更しながら前記被検体をスキャンする手段を有しているので、挿入物の位置を画像上で容易に確認することができる。
【0018】
加えて、前記X線断層像の少なくともスライス位置及びスライス幅の一方を前記被検体の体表面に表示する手段を備えたので、挿入物の位置が被検体の外部から容易に観察できる。
【0019】
上記より、本発明によれば、穿刺針等の挿入物の位置設定の精度を高めることができると共に、その進行状況がリアルタイムに観察されるので、容易にかつ安全に目的部位まで挿入物を進行させることができる。また、腫瘍部等の目的部位のCT値を造影剤で高くできるような場合には、例えば、穿刺による腫瘍部の体積の変化をリアルタイムで確認できる。
【0020】
【実施例】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る手術支援システムの概略構成を示すブロック図である。以下の実施例においては、定位脳手術支援システムについて説明する。
【0021】
本発明の手術支援システムは、各部の全体の動作を制御する中央処理装置10と、ユーザからの指示を入力する入力部20と、被検体の断層像等を表示する表示部30と、詳細は後述する架台40と、被検体を固定する寝台50と、からなる。寝台50には、被検体の頭部を固定するための定位脳支援装置60が設けられている。また、寝台50の天板51は、図中矢印A方向に駆動可能であり、架台40の開口部に挿入されて被検体の所望の断層像を得るようになっている。なお、中央処理装置10は、図示しない画像再構成部、画像メモリ、及び、ハードディスク或いは光ディスク等の記憶装置を含んでいる。
【0022】
図2は、架台40の詳細を示す図である。図2において、(a)は正面図であり、(b)は、(a)の2B−2B断面図である。
図2において、架台40は、X線を被検体に照射するX線管41と、被検体を透過したX線を検出する検出器42と、X線の照射野を設定するコリメータ43と、被検体の挿入された挿入物の先端を外部から表示する投光器44とを搭載している。なお、架台の中心には開口部45があり、架台40に搭載されたX線管41等は被検体が挿入される開口部45の中心点aを中心に相対位置を保持しながら回転可能であり、このX線管41等が回転することによって、被検体の断層像を得ることができようになっている。また、天板51を移動させながら検出器等を回転させることにより、被検体をらせん状にスキャンすることができ(ヘリカルスキャン)、連続的に被検体の断層像を得ることができる。
【0023】
上記のように構成された本発明の手術支援システムの動作を説明する。
図示しない被検体は天板51上に搭載されて定位脳支援装置60に被検体の頭部が固定される。被検体が固定された天板は、図中矢印A方向に駆動し、架台部40に挿入されて、被検体にX線管41からX線が照射される。X線管41から照射されたX線はコリメータで照射野を設定し、被検体に照射される。被検体を透過したX線は、コリメータにより、散乱線を除去するためにコリメートされて、検出器42に入力する。また、この時の、X線断層像撮影装置による被検体のスライス幅及びスライス位置は、天板51の駆動方向と同じ方向に駆動可能な投光器44により外部から確認できるようになっている。このようにして、得られた被検体の断層像は、表示部30により表示される。
【0024】
図3は、本発明の手術支援システムの第1実施例を説明するための図である。図3は、天板51を移動させて、挿入物70の位置を追跡する場合を示す。図3において、(a)は、挿入物70を被検体52に挿入した時点を示し、(b)は挿入物70が異物53に到達した時点を示す。
【0025】
図3において、破線で挟まされた部分がスキャン幅であり、矢印はスキャン方向(又は体軸方向)を示す。
図3の(a)から(b)に至るまでの追跡を行っている最中に、本発明装置は以下のような動作を行う。
【0026】
X線断層像撮影装置による現時点での被検体のスキャン位置及びスキャン幅を投光器44で被検体の体表面に表示する。この場合において、面検出器を使用する場合には、天板51を移動させて断層像の再構成位置を変化させて、必要に応じて投光器44を被検体又はコリメータの移動方向に移動させてスライス位置を体表面に表示する。
【0027】
そして、従来と同様に、スキャノ像、或いはMPR(Multiple-Planar Reconstruction)のサイド像、又はトップ像などの上へ現時点のスキャン位置及びスライス幅を表示部30に表示する。更に、スキャンした画像を表示部30に表示する。
【0028】
上記に加え、本発明は挿入物70の先端の座標を表示部30に表示すると共に、挿入物70と異物53との距離を、後述するように、表示部30に表示する機能を有する。
【0029】
更に、アラーム機能として、次の機能を有する。
挿入物70が正しく異物53に向かっていない場合には、音声、画面のフラッシュなどの表示による警告を発してユーザにその旨を報知する。逆に、挿入物が異物53に近づいた場合には、ユーザに音声等で挿入物70と異物53との距離を報知する。
【0030】
図4は、ユーザへの報知(アラーム機能)を行うフローチャートである。
予め被検体の走査を行い、所望の範囲のCT画像を得る(ステップA1)。
ユーザはCT画像上でターゲット及び許容誤差Dpを指定する(ステップA2)。
【0031】
中央処理装置はステップA2で指定されたターゲット座標及び許容誤差を記憶する(ステップA3)。
CT透視を開始すると(ステップA4)、走査を開始し、寝台位置、画像上の穿刺針等の位置から先端の3次元座標を得て、記憶する(ステップA5)。
【0032】
過去の先端の軌跡の直線を最小自乗法などで求め、ターゲットと直線との距離及びターゲットと先端との距離Dを求める(ステップA6)。
ターゲットと先端との距離Dを表示及び発声する(ステップA7)。
【0033】
ターゲットと軌跡との距離Dが許容誤差範囲Dp内(すなわち、D=<Dp)かどうか判断する(ステップA8)。
ステップA8において、ターゲットと先端との距離が許容誤差範囲内であれば、ステップA5に戻り、走査を継続し、そうでなければ、画面及び音声等により警告する(ステップA9)。その後、ステップA5からの動作を継続する。
【0034】
上記のようにして、警告が発せられる。
図5は、図3の変形例を示す図であり、図3と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図5において、(a)は挿入物70を被検体52に挿入した時点を示し、(b)は挿入物70が異物53に到達した時点を示す。
【0035】
図3は、挿入物70の先端を追跡するのに天板51を移動させることによって、行ったが、図5の場合には、挿入物70の先端を追跡するのにコリメータ43を移動させて行っている。この場合には、コリメータ43を挿入物70の先端の移動に従って移動させているので、被検体52が図3の場合と異なり移動しない。従って、本実施例によれば、被検体52が移動しないので、天板51を移動させた場合よりも被検体52に対する影響が少なくなると共に手術に対する影響も小さくなる。
【0036】
上記のように第1実施例では、リアルタイムに被検体の断層像が表示されるので、時間分解能が高く、スライス位置を変化させる場合に、投光器によってスライス位置を体表面に表示させるようにし、スライス幅も投光器によって把握できるようにしたので、外部からスライス位置及びスライス幅を容易に確認することができる。また、挿入物の先端の座標及び挿入物の先端と異物との距離を表示し、加えて、挿入物が異物に正しく進行しているかどうかの警告を発するようにしているので、挿入物の挿入状態及び被検体内の位置の確認を容易にし、挿入物を正しく挿入することができる。
【0037】
図6は、本発明の手術支援システムの第2実施例を説明するための図である。図6において、第5と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、図6において、(a)は挿入物70を被検体52に挿入した場合を示す図、(b)は(a)の状態でスライス幅を広げたばあいを示す図、(c)は挿入物70が異物53に到達した様子を示す図、(d)は挿入物70が異物53から突き抜けていないかどうか確認する場合を示す図である。
【0038】
図6(a)は、図5(a)と同様であり、ここでは、コリメータ43の移動或いは天板51の移動により、挿入物70の先端を捉える。予めマークされた異物53との距離、方向を測定し、そのまま挿入物70が進行した場合に正しい位置に到達するかどうかチェックする。チェックの結果、危険であれば、警告する。良ければ、そのまま挿入物70を進行する。
【0039】
次に、図6(b)に示すように、適宜、スライス幅を広げて、挿入物70がターゲットに近づいたことを知る。そして、図6(a)、図6(b)に示すようなスライス幅の変更等を行いながら、図6(c)に示すように、挿入物70が異物53に到達したら、スライス幅を狭くして、挿入物70の先端が異物53内の正しい位置に入っていることを確認する。
【0040】
更に、必要に応じて、図6(d)に示すように、スキャン位置を移動させたり、スライス幅を広げる等して、挿入物70が異物53を突き抜けていないことを確認する。この場合において、異物53付近におけるスライス位置の移動は、寝台を動かさないように、なるべくコリメータ43の移動のみで行うようにすることが望ましい。
【0041】
上記のような追跡を行っている最中に、第1実施例とほぼ同様であるが、以下のような動作を行う。
X線断層像撮影装置による現時点での被検体のスキャン位置及びスキャン幅を投光器44で被検体の体表面に表示する。すなわち、スキャン位置及びスキャン幅に応じて、例えば、図6(b)の場合には投光器44による表示幅を広くするように、投光器44によってスキャン位置及びスキャン幅を表示する。この場合において、面検出器を使用する場合には、天板51を移動させて断層像の再構成位置を変化させて、必要に応じて投光器44を被検体又はコリメータの移動方向に移動させてスライス位置を体表面に表示する。
【0042】
そして、従来と同様に、スキャノ像、或いはMPR(Multiple-Planar Reconstruction)のサイド像、又はトップ像などの上へ現時点のスキャン位置及びスライス幅を表示部30に表示する。更に、スキャンした画像を表示部30に表示する。
【0043】
上記に加え、本発明は挿入物70の先端の座標を表示部30に表示すると共に、挿入物70と異物53との距離を表示部30に表示する機能を有する。
更に、アラーム機能として、次の機能を有する。
【0044】
挿入物70が正しく異物53に向かっていない場合には、音声、画面のフラッシュなどの表示による警告を発してユーザにその旨を報知する。逆に、挿入物が異物53に近づいた場合には、ユーザに音声等で挿入物70と異物53との距離を報知する。
【0045】
上記のように、本発明の第2実施例によれば、第1実施例と同様の効果が得られる。加えて、第2実施例では、スライス幅を可変としたので、任意のスライス幅に設定して挿入物70の先端と異物53との位置関係をより明確に把握することができる。また、スライス幅の変化も投光器の表示により被検体の外部に表示可能であるので、現在のスライス位置に加えてスライス幅も容易に確認できる。
【0046】
図7は、第2実施例において、コリメータを移動制御する制御パネルの一例を示す図である。図7において、制御パネル22には、4種類のスイッチが設けられていて、(a)及び(b)は左右のコリメータ43をそれぞれ独立して移動させるスイッチであり、(a)は左側のコリメータ43を移動し、(b)は右側のコリメータ43を移動するためのスイッチである。なお、(c)はコリメータ43の幅は変えずに(すなわちスライス幅を一定にして)、スライス位置を変更するスイッチである。(d)はスライス位置を変更せずに、スライス幅を変更するスイッチである。
【0047】
上記の構成において、挿入物の追跡を行う手順を図8〜図9(d)を参照して説明する。
図8は、挿入物の追跡を行う場合の手順を示すフローチャートである。図9は、実際の挿入物の追跡を行う様子を示す図である。
【0048】
図9(a)に示すように、異物の位置及び挿入物の初期移動方向を指定する(ステップB1)。この場合において、再構成画像上で、異物の位置及び挿入物をマークすると、CPUが、異物の位置と現在の挿入物の位置とCT値を記憶する。挿入物の初期移動の方向は、挿入物が被検体の内部に向かって進行する方向を初期方向としても良い。
【0049】
ステップB1で指定された挿入物の移動方向にスライス位置を移動させる(ステップB2、図9(b))。この場合、スライス方向の移動は寝台又はコリメータのいずれかを移動させることにより行う。
【0050】
再構成画像中に挿入物があれば(ステップB3)、図9(c)に示すように、更に、同じ方向にスライス位置を移動させる(ステップB2)。
ステップB3において、再構成画像中に挿入物がない場合には、図9(d)に示すように、スライス位置が移動しすぎたと判断して、挿入物が見つかるまで逆方向に移動する(ステップB4)。
【0051】
その後、挿入物が進行方向に進行すれば、初期移動方向にスライス位置を移動させ、挿入物が進行方向と逆方向に進行すれば、初期移動方向と逆方向にスライス位置を移動させる。
【0052】
図10は、本発明によって挿入物70を実際に追跡する場合の表示部30に表示される画像例を示す。図10において、(a)は操作の計画画面であり、(b)〜(c)は操作中の画面を示す。
【0053】
まず、例えば、ヘリカルスキャンにより、被検体の断層像が得られ、その断層像から異物53を特定し、特定された異物53の位置を図10(a)に示すように被検体52の断層像中に表示(マーク)する。表示と同時に異物53の中心位置の座標も併せて表示する。なお、図10(a)中の被検体の両側には定位脳支援装置60が表示されている。
【0054】
図10(b)では、操作中のX線断層像撮影装置によるスライス幅及びスライス位置が適宜表示される。
挿入物70が挿入されると、図10(c)に示すように、異物53と挿入物70の先端との距離及び挿入物70の先端の座標が表示され、図10(d)に示すように断面図には挿入物70の先端の位置が表示される。この場合において、図10(c)における挿入物70の表示は、スキャンした画像から構成するか、又は、挿入物70の先端の座標から計算して、線分を合成表示することによって行われる。
【0055】
上記の表示において、針が危険な方向、位置へ向かう場合は、先の実施例と同様に音声、警告メッセージ、画面フラッシュ等で操作者に報知する。
正常時は、画面のバックを青、異常時は赤(点滅するとより効果的)等とすることもでき、その場合には、操作者が画面を注視する必要がなく、画面が操作者の視野に入っていれば画面の状態を知らせることができる。
【0056】
図11は、挿入物70の先端の座標を取得する方法を説明する図である。図11において、(a)は被検体52内の異物53に対して、挿入物70を進める場合の模式図を示し、(b)は挿入物70のトレース画面の一例を示す図であり、(c)は挿入物70のマーク位置から異物53に達するまでの挿入物70の移動について模式的に示した図である。
【0057】
まず、図11(a)に示すように、腫瘍などの異物53に対して予め方向を指定した挿入物70を被検体に挿入する。そして、挿入物70の所定位置を0とし、異物53位置を40とする。
【0058】
そして、図11(b−1)及び図11(c−1)に示すように、所定位置にある挿入物70をマークする。スキャンを開始すると、図11(c−2)に示すように、マークされた物体(この場合は挿入物70)を指定方向に対してサーチする。挿入物70が見つからなかった場合には、指定方向と反対側にスキャンする部分を移動する。挿入物70が見つかったら、挿入物70のトレースを開始する。
【0059】
図11(b−2)に示すように、トレースをリアルタイムに行い、最終的に、図11(b−3)及び図11(c−3)に示すように、異物53に挿入物70が到達した時点で、トレースを終了する。
【0060】
上記のように、本実施例によれば挿入物の先端の座標が正確に得られるので、挿入物の進行の監視を容易に行うことができる。
図12は、挿入物70の先端の座標を取得する他の方法を示す図である。
【0061】
図12によれば、定位脳支援装置60に図示しない位置検出装置をつけて、挿入物70の一部を挿入物の進行方向に可動になるように固定具62で固定し、既知の長さの挿入物70を使用して挿入物70の先端の座標を得るようにしている。本実施例によっても先の実施例と同様に正確な挿入物70の先端の位置座標を得ることができる。
【0062】
上記の実施例では、被検体の断層像の表示が断面になっているので、被検体に挿入された挿入物は点でしか確認することができない。
図13は、MPR像によって挿入物の移動する様子を表示する例を示す図である。
【0063】
図13に示すように、本実施例においては、被検体を横切って挿入された挿入物の移動の履歴をMPR像で表示することにより、目視することができる。この場合において、MPR像は最新のスキャンで得られたデータに基づいて、その部分の画像が置き換えられる。これにより、常に最新の画像情報が表示される。
【0064】
また、このMPR像は3次元画像であっても良い。
更に、図14に示すように、所望の断層像をメイン表示して、MPR像又は3次元画像を、例えば右下に表示させて挿入物の挿入の様子を表示するようにしても構わない。
【0065】
本発明は、上記実施例に限定されない。
例えば、X線断層像撮影装置による被検体のスキャンを面検出器を用いて、1度に多くの断層像を得る(ボリューム・スキャン)ようにしても良い。
【0066】
図13及び図14において、表示例をMPR像としたが、3次元立体画像表示としても良い。
上記の実施例において、被検体に挿入する挿入物を穿刺針、或いはカテーテル等として説明したが、本発明は、例えば、被検体に造影剤を注入した際の造影剤の進行状況を監視するのにも適用可能である。
【0067】
上記の実施例において、断層像撮影装置をX線断層像撮影装置として説明したがこれに限らず断層像を得られるような構成であれば良い。
更に、上記実施例において、例えば、異物を造影剤などでCT値を高く表示できる場合には、例えば、穿刺による腫瘍部の体積の変化をリアルタイムに確認できるようになり、操作性が更に増す。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変形して実施できるのは勿論である。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、穿刺針等の挿入物の位置設定の精度を高めることができるので、容易にかつ安全に目的部位まで挿入物を進行させることができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る手術支援システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】 架台の詳細を示す図。
【図3】 本発明の手術支援システムの第1実施例を説明するための図。
【図4】 ユーザへの報知を行うフローチャート。
【図5】 図3の変形例を示す図。
【図6】 本発明の手術支援システムの第2実施例を説明するための図。
【図7】 第2実施例において、コリメータを移動制御する制御パネルの一例を示す図。
【図8】 挿入物の追跡を行う場合の手順を示すフローチャート。
【図9】 実際の挿入物の追跡を行う様子を示す図。
【図10】 本発明によって挿入物を実際に追跡する場合の表示部に表示される画像例。
【図11】 挿入物の先端の座標を取得する方法を説明する図。
【図12】 挿入物の先端の座標を取得する他の方法を示す図。
【図13】 MPR像によって挿入物の移動する様子を表示する例を示す図。
【図14】 断層像の表示の一部にMPR像を表示させた例を示す図。
【符号の説明】
10…中央処理装置、20…入力部、22…制御パネル、30…表示部、
40…架台、41…X線管、42…検出器、43…コリメータ、
44…投光器、45…開口部、50…寝台、51…天板、52…被検体、
53…異物、60…定位脳支援装置、62…固定具、70…挿入物。

Claims (13)

  1. 寝台の天板に搭載された被検体の断層像を取得し、前記被検体内に挿入される挿入物のナビゲーションを行うためのX線断層像撮影装置を有する手術支援システムにおいて、
    前記挿入物の位置情報を取得する手段と、
    前記位置情報に基づいて、前記挿入物の前記被検体内における進行を監視する監視手段とを具備し、
    前記監視手段は、前記挿入物の進行方向が所望の方向か否かを報知する手段を有することを特徴とする請求項1記載の手術支援システム。
  2. 前記X線断層像撮影装置は、ヘリカルスキャン及びボリュームスキャンのいずれかのスキャンにより前記被検体のMPR像及び3次元画像のいずれかの画像を得る手段を含み、
    前記位置情報に基づいて、前記挿入物の進行状況を前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかの画像上に表示する表示手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載の手術支援システム。
  3. 前記表示手段は、前記断層像と共に、前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかの画像を同時に表示することを特徴とする請求項2記載の手術支援システム。
  4. 前記X線断層像撮影装置は、前記MPR像及び前記3次元画像のいずれかで表示された画像の一部を、スキャンによる最新データで置き換えることを特徴とする請求項2記載の手術支援システム。
  5. 前記監視手段は、前記挿入物の先端の位置を出力する手段を有することを特徴とする請求項1記載の手術支援システム。
  6. 前記監視手段は、前記挿入物と前記被検体内の目的部位との距離を出力する手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項5記載の手術支援システム。
  7. 前記X線断層像撮影装置は、スライス幅及びスライス位置を変更しながら前記被検体をスキャンする手段を有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4のいずれか1項記載の手術支援システム。
  8. 前記X線断層像撮影装置は、前記X線断層像の少なくともスライス位置及びスライス幅の一方を前記被検体の体表面に表示する手段を具備することを特徴とする請求項1,請求項2,請求項4、請求項7のいずれか1項記載の手術支援システム。
  9. 前記X線断層撮影装置は、前記被検体を載置した天板を移動させることで前記スライス位置の移動を行うことを特徴とする請求項7記載の手術支援システム。
  10. 前記X線断層撮影装置は、前記X線を曝射するX線管と前記被検体との間に設けられたコリメータを移動させることで前記スライス位置の移動を行うことを特徴とする請求項7記載の手術支援システム。
  11. 前記X線断層撮影装置は、前記X線を曝射するX線管と前記被検体との間に設けられたコリメータを移動させることで前記スライス幅を変更することを特徴とする請求項7記載の手術支援システム。
  12. 前記X線断層撮影装置は、前記被検体内の目的部位に対して前記挿入物が進行した場合に正しい位置に到達するかどうかチェックする手段と、チェックの結果危険であれば警告を発する手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の手術支援システム。
  13. 前記X線断層撮影装置は、前記目的部位と前記挿入物との距離、前記挿入物先端の座標を表示することを特徴とする請求項12記載の手術支援システム。
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