以下、図面を参照して、実施形態に係る管理装置及びX線診断装置を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るリスク管理システム100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るリスク管理システム100は、X線診断装置200aと、X線診断装置200bと、X線診断装置200cと、リスク管理装置300とを備える。なお、X線診断装置200aとX線診断装置200bとX線診断装置200cとを区別しない場合にはX線診断装置200と称する。
このようなリスク管理システム100では、X線診断装置200aと、X線診断装置200bと、X線診断装置200cと、リスク管理装置300とが、例えば院内LAN(Local Area Network)などのネットワークによって互いに通信可能に接続される。更に、リスク管理システム100には、例えば、図示しないX線CT装置、在庫管理システム、自動造影剤注入器、注射器、全身麻酔装置などが含まれてもよい。そして、リスク管理装置300は、X線CT装置、在庫管理システム、自動造影剤注入器、注射器、全身麻酔装置などとのインターフェースを有し、X線CT装置、在庫管理システム、自動造影剤注入器、注射器、全身麻酔装置などから各種情報を収集してもよい。
このようなリスク管理システム100では、例えば、医師等の術者は、X線診断装置200によるX線照射を伴う手技を行う。ここで言う手技とは、検査や手術・治療が含まれる。例えば、術者は、X線診断装置200により撮影される狭窄部位のX線画像(透視画像)を参照しながら、カテーテルによる血管内インターベンション治療を行う。
ところで、X線診断装置200によるX線照射を伴う検査や治療では、疾患部位を把握することが可能である反面、X線被曝というリスクを伴う。このため、被曝障害のリスクを把握して、患者の被曝線量を極力低減することが望まれる。例えば、X線診断装置によるX線画像撮影時に、被検体の表面が被曝するX線量を皮膚被曝線量として管理するDTS(Dose Tracking System)がある。このDTSは、X線診断装置による照射条件から被検体の被曝量を算出し、被検体の身体情報に基づいて生成した擬似的な人体モデルに算出した被曝量を関連付けてモニタに表示する。これにより例えば、術者は、障害が起こりそうな被曝を極力避けることが可能になる。
また、複数回の放射線照射によって蓄積する被曝線量を管理するDMS(Dose Management System)もある。このDMSでは、例えば、X線CT装置による診断、X線診断装置を用いた治療、及びX線CT装置による術後確認等といった複数回の工程に対する皮膚被曝線量や臓器被曝線量を表示する。これにより例えば、術者は、障害が起こりそうな被曝を避けたり、障害が起こりそうな場合には外科手術のようなX線被曝のない治療方法を選択したり、あるいは事前に注意事項を患者に説明し、患者に治療方法の選択を委ねることが可能になる。
しかしながら、DTSやDMSを備えたX線診断装置では、手技の進行を評価することが困難となる場合があった。例えば、このようなDTSやDMSを備えたX線診断装置は、あくまで被曝量を管理するものであり、問題が起こりそうな検査や治療を把握するものではない。より具体的には、術者が適切なカテーテルの選択を誤り、目的の治療部位までカテーテルをナビゲーションできずに、時間が経過してしまっているような場合、DTSやDMSを備えたX線診断装置では、対策を講じることが困難である。
そこで、第1の実施形態に係るリスク管理装置300は、X線診断装置200を用いて実行される手技の進捗状況を示す進捗情報を収集し、収集した進捗情報に基づいて、手技の進行を評価する評価情報を生成する。そして、リスク管理装置300は、このようにして生成した評価情報を所定の出力部に出力させる。ここで、リスク管理装置300の操作者が、例えば、術者を指導したり監督したりする立場にある管理者であるものとする。リスク管理装置300の操作者は、評価情報を参照することで、問題が起こりそうな検査や治療を把握し、問題が起こる前に対策を講じることが可能となる。例えば、操作者は、術者をスキルの高い血管内治療医に交代させたり、術者に直接指導や助言を与えたりする。
なお、以下の説明では、X線診断装置200aと、X線診断装置200bと、X線診断装置200cとがそれぞれ異なる場所(検査室や治療室)に設定されているものとする。そして、リスク管理装置300は、複数の検査室や治療室の進捗情報を収集して評価情報を生成する。そして、リスク管理装置300の操作者は、例えば、評価情報を参照し、いずれかの場所において進行中の手技に問題が起こりそうな場合に、この場所の術者をスキルの高い血管内治療医に交代させたり、術者に直接指導や助言を与えたりする。次に、図2を用いて、第1の実施形態に係るX線診断装置200の構成例について説明する。
図2は、第1の実施形態に係るX線診断装置200の構成例を示す図である。図2に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置200は、高電圧発生器211、X線管212、X線絞り装置213、天板214、X線検出器215、Cアーム216、Cアーム回転・移動機構217、天板移動機構218、Cアーム・天板機構制御部219、絞り制御部220、画像データ生成部221、画像データ記憶部222、画像処理部223、入力部224、表示部225、及びシステム制御部226を有する。なお、以下では、第1の実施形態に係るX線診断装置200が、DTS機能を有するものとして説明する。
高電圧発生器211は、高電圧を発生し、発生した高電圧をX線管212に供給する装置である。また、X線管212は、高電圧発生器211から供給される高電圧を用いてX線を発生するX線源である。ここで、高電圧発生器211は、X線管212に供給する電圧を調整することで、被検体Eに対して照射されるX線量の調整や、被検体EへのX線照射のON/OFFの制御を行なう。
X線絞り装置213は、X線管212が発生したX線を被検体Eの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込む装置である。例えば、X線絞り装置213は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管212が発生したX線を絞り込んで被検体Eに照射させる。
天板214は、被検体Eが載置されるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。
X線検出器215は、被検体Eを透過したX線を検出するための複数のX線検出素子がマトリックス状に配列された装置である。このX線検出器215が有する各X線検出素子は、被検体Eを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述する画像データ生成部221に送信する。
Cアーム216は、X線管212、X線絞り装置213およびX線検出器215を保持するC字状のアームである。このCアーム216は、被検体Eを挟むように、X線管212およびX線絞り装置213とX線検出器215とを対向させて保持する。なお、Cアーム216と、X線管212と、X線絞り装置213と、X線検出器215とからなる機構を撮影ユニットと呼ぶ。また、以下では、X線診断装置200が、Cアーム216を1つ有するシングルプレーン型のX線診断装置であるものとして説明する。
Cアーム回転・移動機構217は、Cアーム216を回転及び移動させる装置である。このCアーム回転・移動機構217は、X線管212とX線検出器215との間を通る回転軸を中心に、Cアーム216を回転させる。
天板移動機構218は、天板214を移動させる装置である。Cアーム・天板機構制御部219は、Cアーム回転・移動機構217および天板移動機構218を制御することで、Cアーム216の回転調整および移動調整と、天板214の移動調整とを行なう処理部である。
絞り制御部220は、X線絞り装置213が有する絞り羽根の開度を調整することで、X線の照射範囲を制御する処理部である。
画像データ生成部221は、X線検出器215によって被検体Eを透過したX線から変換された電気信号を用いてX線画像を生成し、生成したX線画像を画像データ記憶部222に格納する処理部である。具体的には、画像データ生成部221は、X線検出器215から受信した電気信号に対して、電流・電圧変換、A/D変換およびパラレル・シリアル変換を行なってX線画像を生成する。
画像データ記憶部222は、画像データ生成部221によって生成されたX線画像を記憶する記憶装置である。例えば、画像データ記憶部222は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスクなどである。
画像処理部223は、画像データ記憶部222が記憶するX線画像に対して各種画像処理を実行する処理部である。例えば、画像処理部223は、X線画像に対してノイズ低減のためのリカーシブフィルタ処理(時間フィルター処理)や等方性拡散フィルター(空間フィルター処理)を実行する。例えば、画像処理部223は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、又は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
入力部224は、X線診断装置200を操作する医師や技師などの操作者から各種コマンドを受け付け、受け付けたコマンドをシステム制御部226に転送する入力装置である。例えば、入力部224は、操作者から各種コマンドを受け付けるためのマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有する。なお、以下では、X線診断装置200を操作する操作者のことを、リスク管理装置300の操作者と区別するために、術者として説明する。
表示部225は、入力部224を介して術者からコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像データ記憶部222に記憶されたX線画像、画像処理部223によって画像処理されたX線画像などを表示する表示装置である。例えば、表示部225は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイなどである。表示部225には、撮像中のX線画像を表示するために使用されるリアルタイムモニタ及び過去に撮像したX線画像を表示するために使用される比較用モニタなどが含まれる。
システム制御部226は、X線診断装置200全体の動作を制御する処理部である。例えば、システム制御部226は、CPUやMPUなどの電子回路である。そして、このシステム制御部226は、例えば、入力部224から転送された術者からのコマンドに基づいて、高電圧発生器211、Cアーム・天板機構制御部219、絞り制御部220を制御することで、X線量の調整およびX線照射のON/OFF制御や、Cアーム216の回転・移動の調整、天板214の移動調整などを行なう。
また、システム制御部226は、術者からのコマンドに基づいて、画像データ生成部221における画像生成処理や後述する画像処理部223における画像処理の制御を行なう。また、システム制御部226は、術者からコマンドを受け付けるためのGUIや、画像データ記憶部222が記憶するX線画像および画像処理部223によって画像処理されたX線画像などを表示部225のモニタに表示するように制御する。
また、システム制御部226は、DTS機能を有し、X線画像撮像時間、X線照射線量、被曝線量を管理する。例えば、システム制御部226は、X線診断装置による照射条件から被検体の被曝量を算出し、被検体の身体情報に基づいて生成した擬似的な人体モデルに算出した被曝量を関連付けてモニタに表示する。なお、システム制御部226は、DMS機能を有するようにしてもよい。かかる場合、システム制御部226は、複数回の工程に対する皮膚被曝線量や臓器被曝線量を管理する。
次に、図3を用いて、第1の実施形態に係るリスク管理装置300の構成について説明する。図3は、第1の実施形態に係るリスク管理装置300の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、第1の実施形態に係るリスク管理装置300は、入力部301と、出力部302と、記憶部303と、システム制御部304と、シナリオ設定部305と、進捗情報収集部306と、参照情報収集部307と、生成部308とを有する。なお、リスク管理装置300の操作者は、X線診断装置200の操作者である術者を監督したり指導したりする立場にある医師などの管理者である。
入力部301は、リスク管理装置300を操作する操作者から各種コマンドを受け付け、受け付けたコマンドをシステム制御部304に転送する入力装置である。例えば、入力部301は、操作者から各種コマンドを受け付けるためのマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、ジョイスティックなどを有する。
出力部302は、入力部301を介して操作者からコマンドを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、医用画像データDB303aに記憶されたX線画像、生成部308によって生成された評価情報などを表示する表示装置である。例えば、出力部302は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイなどである。
システム制御部304は、リスク管理装置300全体の動作を制御する処理部である。例えば、システム制御部304は、CPUやMPUなどの電子回路である。そして、このシステム制御部304は、例えば、入力部301から転送された操作者からのコマンドに基づいて、シナリオ設定部305、進捗情報収集部306、参照情報収集部307、及び生成部308を制御する。これにより、リスク管理装置300は、X線診断装置200を用いて実行される手技の進行時に、手技の進捗状況を示す進捗情報を収集し、進捗情報に基づいて、手技の進行を評価する評価情報を生成する。また、システム制御部304は、操作者からコマンドを受け付けるためのGUIや、医用画像データDB303aが記憶するX線画像および生成部308によって生成された評価情報などを出力部302に表示するように制御する。
記憶部303は、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスクなどであり、医用画像データDB(Data Base)303aと、参照情報DB303bと、統計データDB303cと、進捗情報DB303dと、シナリオDB303eとを有する。
医用画像データDB303aは、参照情報収集部307によってネットワーク経由でX線診断装置200から収集されたX線画像を記憶する。なお、医用画像データDB303aは、X線診断装置200以外の医用画像診断装置から収集した医用画像を記憶してもよい。例えば、医用画像データDB303aは、X線CT装置から収集したX線CT画像を記憶する。ここで、医用画像データDB303aは、手技を一意に特定可能な識別子である手技IDと、画像データの識別子である画像IDと、画像データを収集した時刻を示す収集時刻とを対応付けて医用画像を記憶する。
参照情報DB303bは、参照情報収集部307によってX線診断装置200から収集されたX線診断装置200によるX線画像撮像時間、X線照射線量、被曝線量、造影剤注入量などの各種情報を記憶する。ここで、参照情報DB303bは、手技IDに紐付けて、収集時間ごとに、X線画像撮像時間と、X線照射線量と、被曝線量と、造影剤注入量とを記憶する。
進捗情報DB303dは、進捗情報収集部306によって収集された進捗情報を記憶する。例えば、進捗情報DB303dは、手技を開始してからの経過時間、切開部、治療部位、手技で使用されるデバイスの位置、手技で使用されたデバイスの使用履歴、手技で使用された薬剤の使用履歴などの各種情報を記憶する。ここで、進捗情報DB303dは、手技IDに紐付けて、経過時間ごとに、切開部の位置と、治療部位の位置と、手技で使用されるデバイスの位置と、手技で使用されたデバイスの使用履歴と、手技で使用された薬剤の使用履歴とを記憶する。なお、デバイスには、例えば、各種カテーテル、ステント、ガイドワイヤー、コイルなどが含まれる。
シナリオDB303eは、疾患別にシナリオを記憶する。ここで言うシナリオとは、手術計画のことを示す。また、シナリオには、複数の段階(「フェーズ」或いは「マイルストーン」とも言う)が含まれる場合がある。一例をあげると、カテーテルによる血管内インターベンション治療では、カテーテルが治療部位に到達する前を「カテーテル挿入フェーズ」と称し、カテーテルが治療部位に到達した後を「治療フェーズ」と称する。なお、後述するように、治療フェーズには更に複数の段階が含まれる。
統計データDB303cは、診断・治療手技の統計データを記憶する。例えば、統計データDB303cは、シナリオごとの基準時間、使用される薬剤の種別や使用量の基準値、及び使用されるデバイスの種別や使用量の基準値を記憶する。ここで言う基準時間とは、例えば、問題なく手技が進行した場合に、手技全体あるいは各フェーズの終了までに要する平均的な時間を示す。このため、基準時間を超過した場合には、進行中の手技に問題が生じている可能性があることを示す。言い換えると、基準時間は、問題が起こりそうな検査や治療を把握する基準の一つとなる。なお、この基準時間は、問題なく手技が進行した場合に手技あるいは各フェーズの終了までに要する平均的な時間を基準に、短めに設定されてもよく、或いは、長めに設定されてもよい。
シナリオ設定部305は、X線診断装置200から検査情報を受信する。ここで、検査情報には、患者名、患者ID(Identifier)などの個人情報、検査開始時間、検査プロトコル、検査部位、疾患名などの情報が含まれる。そして、シナリオ設定部305は、検査情報に基づいて、シナリオを設定する。
例えば、シナリオ設定部305は、シナリオDB303eを検索して、検査情報と類似又は一致するシナリオを選択する。なお、シナリオ設定部305は、シナリオDB303eに記憶されたシナリオパターンの中から適切なものを選択する操作を操作者から受付けてもよいし、シナリオパターンを編集して新たなシナリオの作成を操作者から受付けてもよい。更に、シナリオ設定部305は、全く新しいシナリオの作成を操作者から受付けてもよい。
また、シナリオ設定部305は、設定したシナリオに対する基準時間を設定する。例えば、シナリオ設定部305は、既存のシナリオを使用する場合には、統計データDB303cを参照し、設定したシナリオに対応付けられた基準時間を特定して設定する。また、例えば、シナリオ設定部305は、操作者の経験に基づいて決定された基準時間の設定を受付けてもよい。
進捗情報収集部306は、X線診断装置200を用いて実行される手技の進捗状況を示す進捗情報を収集する。ここで、進捗情報収集部306は、手技の進行時に進捗情報として、(1)「手技を開始してからの経過時間」、(2)「初期位置」、(3)「デバイス位置」、(4)「デバイス及び薬剤の使用履歴」を収集する。
(手技を開始してからの経過時間)
例えば、進捗情報収集部306は、進捗情報として、手技を開始してからの経過時間を収集する。ここで、リスク管理装置300として管理しなければならない時間は切開(パンクチャー)してからの時間である。通常、X線診断装置200では、パンクチャーしてカテーテルを血管に挿入すると直ぐに透視が開始されるので、進捗情報収集部306は、透視が開始されると時間の計測を開始する。なお、進捗情報収集部306は、パンクチャーの開始を通知する信号を受信することが可能である場合には、パンクチャーしてからの時間を計測してもよい。なお、進捗情報収集部306は、X線診断装置200に検査情報が登録された時を治療開始時間としてもよい。かかる場合、術者は、X線診断装置200の準備を事前に完了してから、治療室内の準備や患者の準備などの手技の準備を開始することになる。このため、計測される経過時間と、実際に手技を開始してからの時間とに差異が生じる。このような場合には、リスク管理装置300は、検査情報が登録された時間と、実際に手技を開始した時間の差異を管理してもよい。
(初期位置)
また、例えば、進捗情報収集部306は、X線CT画像を元にX線画像上で切開部位(カテーテルやガイドワイヤーの挿入部位)と疾患部位(治療部位とも言う)とを特定し、切開部位の位置情報と、治療部位の位置情報とを初期位置として収集する。具体的には、進捗情報収集部306は、人体モデル或いはX線CT線画像上で切開部位及び治療部位の指定を受付ける。そして、進捗情報収集部306は、人体モデル或いはX線CT画像とX線画像の位置関係とを対応付ける。これにより、進捗情報収集部306は、X線画像における切開部位及び治療部位を特定し、特定した切開部位及び治療部位の位置情報を収集する。なお、進捗情報収集部306は、人体モデルを使用する場合は、体格差を補正する。ここで、進捗情報収集部306は、透視画像や撮影画像などを利用して順次体格差を補正してもよいし、或いは事前に操作者が手動で体格差を補正してもよい。
なお、進捗情報収集部306は、X線診断装置200によって治療部位を非常に低い線量で撮影されたX線画像上で切開部位と治療部位とを特定する。また、進捗情報収集部306による切開部位と治療部位とを収集する処理は、検査や治療が始まってから実施してもよいが、好適な実施としては検査や治療の開始前に実施することが望ましい。
また、進捗情報収集部306は、X線診断装置200のX線光学系と寝台との相対的位置関係から治療部位のおおよその位置を特定してもよい。かかる場合、おおよその治療部位が中心となるようにX線光学系と寝台とが事前にセットされる。そして、進捗情報収集部306は、この相対的位置に到達したかどうかを判定する。
(デバイス位置)
また、進捗情報収集部306は、進捗情報として、手技で使用されるデバイスの位置を収集する。例えば、進捗情報収集部306は、カテーテル挿入フェーズにおいて、透視のX線イメージングジオメトリを再現し、X線診断装置200により収集された透視画像にX線CT画像或いは人体モデルを投影した投影画像を生成する。そして、進捗情報収集部306は、この投影画像と透視画像とを比較することでデバイスの位置を特定する。なお、進捗情報収集部306は、透視画像からカテーテルやガイドワイヤーなどのデバイスの先端位置を同定して、これらのデバイスが位置する血管を同定してデバイスの位置を特定するようにしてもよい。
(デバイス及び薬剤の使用履歴)
また、進捗情報収集部306は、進捗情報として、手技で使用されたデバイス及び薬剤の少なくともいずれか一方の使用履歴を収集する。例えば、進捗情報収集部306は、在庫管理システムから情報を入手することで、使用されたデバイスの種別と使用量或いは使用された薬剤の種別と使用量を収集する。
なお、進捗情報収集部306は、在庫管理システムと同様の機能を有するようにしてもよい。例えば、進捗情報収集部306は、バーコードリーダーとデータベースとを備える。例えば、術者や術者を補助する技師などがデバイスや薬剤を使用する際に、デバイスや薬剤に付与されたバーコードをバーコードリーダーで読み取る。進捗情報収集部306は、データベースの情報を参照して、バーコードリーダーで読み取られたデバイスや薬剤を使用するデバイスや薬剤として同定する。或いは、進捗情報収集部306は、データベースの中から使用するデバイスや薬剤の指定を操作者などから受付けてもよい。或いは、進捗情報収集部306は、検査・治療室内に設けられたカメラで得られた画像から、使用するデバイスや薬剤を同定してもよい。
参照情報収集部307は、参照情報として、X線診断装置200によるX線画像撮像時間、X線照射線量、被曝線量、造影剤注入量、及びX線画像のうち少なくともいずれか一つを収集する。
例えば、参照情報収集部307は、ネットワーク経由でX線診断装置200からX線画像を収集する。そして、参照情報収集部307は、収集したX線画像を医用画像データDB303aに保管する。なお、参照情報収集部307は、ユーザーからの要求に応じてネットワーク経由でX線診断装置200からリアルタイムにX線画像を収集して表示させても良い。
また、参照情報収集部307は、X線照射線量をX線絞り装置213の前面に付加された面積線量計のデータをX線診断装置200から収集する。また、参照情報収集部307は、透視時間、撮影時間などをX線診断装置200から収集する。
また、参照情報収集部307は、DTS機能を有するX線診断装置200から、患者の皮膚被曝線量などを収集する。なお、参照情報収集部307は、DTSと同様の機能を有するように構成されても良い。かかる場合、参照情報収集部307は、X線照射時のX線イメージングジオメトリを同定する情報と、X線照射条件などとをX線診断装置200から収集する。また、参照情報収集部307は、X線診断装置200がDMS機能を有する場合には、患者の臓器被曝線量を収集可能である。
また、参照情報収集部307は、自動造影剤注入器や注射器に付加されたセンサーの情報から患者に注入された総造影剤注入量を収集する。例えば、リスク管理装置300が自動造影剤注入器との間にインターフェースを有する場合、参照情報収集部307は、自動造影剤注入器によって注入された総造影剤注入量を収集する。
なお、リスク管理装置300が自動造影剤注入器との間にインターフェースを有さない場合でも、X線診断装置200と自動造影剤注入器との間にインターフェースが存在する。このため、参照情報収集部307は、X線診断装置200経由で総造影剤注入量を収集してもよい。さらに(造影剤注入用)注射器或いはカテーテルにセンサーが設けられている場合には、参照情報収集部307は、注射器から注入された造影剤の注入量を計測しても良い。或いは、参照情報収集部307は、造影剤のボトルの重量を計測することで造影剤の送出量を計測してもよい。また、参照情報収集部307は、造影剤のボトルから送出された造影剤量をセンサーによって計測することで造影剤の送出量を計測してもよい。
また、参照情報収集部307は、全身麻酔装置から患者に注入された麻酔薬の使用量を収集する。例えば、リスク管理装置300が全身麻酔装置との間にインターフェースを有する場合、参照情報収集部307は、全身麻酔装置によって注入された麻酔薬の使用量を収集する。なお、リスク管理装置300が全身麻酔装置との間にインターフェースを有さない場合、X線診断装置200と全身麻酔装置との間にインターフェースを設けることで、参照情報収集部307は、X線診断装置200経由で麻酔薬の使用量を収集してもよい。
生成部308は、進捗情報に基づいて、手技の進行を評価する評価情報を生成する。ここで、生成部308は、(1)「手技の進行に伴う達成度の変化」、(2)「手技で使用されたデバイス及び薬剤の少なくともいずれか一方の使用履歴」を評価情報として生成する。
(手技の進行に伴う達成度の変化)
例えば、生成部308は、進捗情報に基づいて手技の達成度を所定間隔で導出し、手技の進行に伴う達成度の変化を評価情報として生成する。ここで、手技には、複数の段階が含まれる場合がある。このようなことから生成部308は、手技の段階に応じて異なる評価情報を生成する。例えば、生成部308は、カテーテルが治療部位に到達する前であるカテーテル挿入フェーズでは、デバイスの位置と治療部位の位置との距離を算出することで達成度を導出し、カテーテルが治療部位に到達した後である治療フェーズでは、デバイスの種別に基づいて達成度を導出する。
また、生成部308は、手技の段階に応じて異なる評価情報を生成するために、手技の中でマイルストーンの終了を判定する機能を備える。そして、生成部308は、マイルストーンが終了した場合には、マイルストーンを変更して、変更したマイルストーンにおいて評価情報を生成する。例えば、生成部308は、マイルストーンの変更を、デバイスが患部に到達した瞬間、或いは治療デバイスを選択した瞬間に自動的に切り替える。なお、生成部308は、リスク管理装置300の操作者からマイルストーンを切り替える指示を受付けてもよい。また、検査室や治療室にカメラが設置されており、検査室や治療室の状況を収集可能であれば、生成部308は、術者の発する言葉の音声認識、術者によるジェスチャ、術者によるX線診断装置200のボタン押下のいずれか一つあるいはいずれかを任意に組み合わせて、マイルストーンを達成したか否かを判定してもよい。また、例えば、生成部308は、患者の声、患者の表情の変化などを情報としてマイルストーンの終了を判定してもよい。
(カテーテル挿入フェーズ)
例えば、生成部308は、デバイスの位置と治療部位の位置との距離を算出することで達成度を導出する。ここで、生成部308は、導出した達成度の変化量が所定の基準値未満である場合と所定の基準値以上である場合とで、当該達成度の変化量を異なる形態で示した評価情報を生成する。なお、カテーテル挿入フェーズにおける評価情報を生成する処理の詳細については、図5から図8を用いて後述する。
(治療フェーズ)
カテーテルが疾患部に到達すると治療段階に移行する。ここでは、治療フェーズの一例として、「動脈瘤へのコイリング」と、「狭窄部の拡張」とを説明する。具体的には、動脈瘤へのコイリングは、治療がさらに細かく分割され、「ファーストコイル挿入段階」、「セカンドコイル挿入段階」、「サードコイル挿入段階」、その後は「ドームフィリング段階」に分割される。また、狭窄部の拡張は、「事前拡張段階」、「ステント挿入段階」、「事後拡張段階」に分割される。
生成部308は、進捗情報収集部306によって収集されたデバイス使用履歴に基づいてこれらの各段階を特定する。言い換えると、生成部308は、デバイスの種別に基づいて達成度を導出する。具体的には、生成部308は、動脈瘤へのコイリングの場合、最初のコイルを識別するとファーストコイル挿入段階に移行したと判定し、2番目のコイルを識別するとセカンドコイル挿入段階に移行したと判定する。そして、生成部308は、3番目のコイルを識別するとサードコイル挿入段階に移行したと判定し、更にその後コイルが追加されるとその後はドームフィリング段階であると判定する。
また、生成部308は、狭窄部の拡張である場合、バルーンカテーテルを識別すると事前拡張段階に移行したと判定し、ステントを識別するとステント挿入段階に移行したと判定する。なお、生成部308は、事後拡張段階への移行についてはデバイスの種別だけでは判定できない。このため、生成部308は、例えば、バルーンに圧力を付加する装置に設けられたインターフェースを介して収集されたバルーンからの拡張情報を識別して事後拡張段階を判定してもよい。
なお、生成部308は、治療フェーズにおいて、導出した達成度が所定の基準値未満である場合と所定の基準値以上である場合とで、当該達成度を異なる形態で示した評価情報を生成するようにしてもよい。なお、治療フェーズにおける評価情報を生成する処理の詳細については、図9から図11を用いて後述する。
(使用履歴)
また、生成部308は、手技で使用されたデバイス及び薬剤の少なくともいずれか一方の使用履歴に基づいて、評価情報を生成する。例えば、生成部308は、デバイス及び薬剤の少なくともいずれか一方の使用量を種別ごとに所定間隔で算出し、手技の進行に伴う使用量の変化を評価情報として生成する。なお、使用履歴を評価情報として生成する処理の詳細については、図12から図14を用いて後述する。
また、生成部308は、経過時間が、手技の終了までの目標として設定された基準時間を超えた場合に、警告情報を更に生成する。そして、生成部308が、生成した警告情報を例えばシステム制御部304に出力することで、システム制御部304は、警告情報を出力部302に更に出力させる。すなわち、生成部308は、手技の進捗に一定以上の遅れがあると判定した場合、警告情報を発信する。
次に、図4から図14を用いて、第1の実施形態に係るリスク管理装置300による処理手順について説明する。図4は、第1の実施形態に係るリスク管理装置300による処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、リスク管理装置300のシナリオ設定部305は、検査情報を受信したか否かを判定する(ステップS101)。ここで、シナリオ設定部305は、検査情報を受信したと判定しなかった場合(ステップS101、No)、引き続き検査情報を受信したか否かを判定する。
一方、シナリオ設定部305は、検査情報を受信したと判定した場合(ステップS101、Yes)、検査情報に基づいてシナリオを設定する(ステップS102)。続いて、シナリオ設定部305は、基準時間を設定する(ステップS103)。また、シナリオ設定部305は、切開部位と疾患部位とを同定する(ステップS104)。
そして、進捗情報収集部306は、X線診断装置200による透視が開始されたか否かを判定する(ステップS105)。ここで、進捗情報収集部306は、X線診断装置200による透視が開始されたと判定しなかった場合(ステップS105、No)、引き続き透視が開始されたか否かを判定する。一方、進捗情報収集部306は、X線診断装置200による透視が開始されたと判定した場合(ステップS105、Yes)、時間の計測を開始する(ステップS106)。
続いて、進捗情報収集部306と生成部308とによって評価情報生成処理が実行される(ステップS107)。なお、評価情報生成処理の詳細については、図5から図14を用いて後述する。リスク管理装置300は、ステップS107の終了後、処理を終了する。
図5は、第1の実施形態に係る生成部308による評価情報生成処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図5に示す例では、カテーテル挿入フェーズにおいて、手技の進行に伴う達成度の変化を評価情報として生成する場合について説明する。
図5に示すように、生成部308は、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS201)。例えば、所定時間は、30秒、1分、5分、10分など任意に設定可能である。ここで、生成部308は、所定時間が経過したと判定しなかった場合(ステップS201、No)、引き続きステップS201の判定処理を繰り返す。
一方、生成部308は、所定時間が経過したと判定した場合(ステップS201、Yes)、達成度を導出する(ステップS202)。例えば、生成部308は、切開部位と治療部位との距離を目標距離として算出する。また、生成部308は、デバイスの位置と治療部位との距離を残存距離として算出する。そして、生成部308は、例えば、達成度を「(1−残存距離/目標距離)×100(%)」により導出する。
続いて、生成部308は、導出した達成度の変化量が所定の基準値未満であるか否かを判定する(ステップS203)。例えば、生成部308は、前回導出した達成度と今回導出した達成度との差分を算出することで、達成度の変化量を導出する。また、所定の基準値は、例えば、5%などに設定されるものとするが任意に変更可能である。ここで、生成部308は、導出した達成度の変化量が所定の基準値未満であると判定しなかった場合(ステップS203、No)、導出した達成度の変化量が所定の基準値以上であることを示した評価情報を生成する(ステップS204)。図6は、第1の実施形態に係る評価情報の一例を示す図(1)である。なお、図6に示す例では、導出した達成度の変化量が所定の基準値以上であると判定した場合を示す。
図6の横軸は時間を示し、図6の縦軸は達成度を示す。図6に示す例では、所定時間ごとに達成度を導出した結果を折れ線グラフで示している。また、図6において、星印6aは、基準時間を示し、黒塗の三角印6bは、現在の時間を示す。言い換えると、黒塗り三角印6bは、最新の達成度を導出した時の時間を示す。なお、図6に示す例では説明の便宜上、前回までに導出した達成度を細線6cで示し、今回導出した達成度を太線6dで示す。
図6に示すように、生成部308は、今回導出した達成度と、前回導出した達成度との差から達成度の変化量を算出する。この変化量が所定の基準値以上であった場合、生成部308は、前回までに導出した達成度を示す細線6cに、今回導出した達成度を示す太線6dを実線で追加した評価情報を生成する。なお、図6に示すように、生成部308は、現在使用中のデバイスの種類、これまでに使用されたデバイスの種類数、投与された薬剤、及び現在までの達成度などを示す情報を更に評価情報として生成してもよい。なお、システム制御部304は、ステップS204において生成された評価情報を出力部302に出力させる。
図5に戻る。一方、生成部308は、導出した達成度の変化量が所定の基準値未満であると判定した場合(ステップS203、Yes)、導出した達成度の変化量が所定の基準値未満であることを示した評価情報を生成する(ステップS205)。図7は、第1の実施形態に係る評価情報の一例を示す図(2)である。なお、図7に示す例では、導出した達成度の変化量が所定の基準値未満であると判定した場合を示す。
図7の横軸は時間を示し、図7の縦軸は達成度を示す。図7に示す例では、所定時間ごとに達成度を導出した結果を折れ線グラフで示している。また、図7において、星印7aは、基準時間を示し、黒塗の三角印7bは、現在の時間を示す。言い換えると、黒塗り三角印7bは、最新の達成度を導出した時の時間を示す。なお、図7に示す例では説明の便宜上、前回までに導出した達成度を細線7cで示し、今回導出した達成度を太線7dで示す。
図7に示すように、生成部308は、今回導出した達成度と、前回導出した達成度との差から達成度の変化量を算出する。そして、この変化量が所定の基準値未満であった場合、生成部308は、所定の基準値以上である場合と異なる形態で達成度の変化量を示した評価情報を生成する。図7に示す例では、生成部308は、前回までに導出した達成度を示す細線7cに、今回導出した達成度を示す太線の破線7dを追加した評価情報を生成する。すなわち、生成部308は、導出した達成度の変化量が所定の基準値未満である場合と所定の基準値以上である場合とで、達成度を異なる形態で示した評価情報を生成する。
ここで、図7に示す例では、今回の達成度を示す破線7dは、前回の達成度からの変化がほぼなく、横ばいのグラフである。このような場合、例えば、カテーテルがある部位で停まっており、治療部位まで上手くナビゲーションできていない可能性がある。言い換えると、図7に示す評価情報は、手技の進捗が遅れている可能性があることを示している。このような評価情報を生成することにより、例えばリスク管理装置300の操作者は、問題が起こりそうな検査や治療を把握することが可能となり、問題が起こる前に対策を講じることが可能となる。なお、生成部308は、所定の基準値以上である場合と異なる形態として、色を変えた評価情報を生成してもよい。また、生成部308は、図6と同様に、現在使用中のデバイスの種類、これまでに使用されたデバイスの種類数、投与された薬剤、及び現在までの達成度などを示す情報を更に含んだ評価情報を生成してもよい。なお、システム制御部304は、ステップS205において生成された評価情報を出力部302に出力させる。
図5に戻る。続いて、生成部308は、デバイスが疾患部位に到達したか否かを判定する(ステップS206)。ここで、生成部308は、デバイスが疾患部位に到達したと判定した場合(ステップS206、Yes)、評価情報生成処理を終了する。一方、生成部308は、デバイスが疾患部位に到達したと判定しなかった場合(ステップS206、No)、基準時間を超えたか否かを判定する(ステップS207)。
ここで、生成部308は、基準時間を超えたと判定しなかった場合(ステップS207、No)、ステップS201に移行する。一方、生成部308は、基準時間を超えたと判定した場合(ステップS207、Yes)、警告情報を生成し(ステップS208)、ステップS201に移行する。図8は、第1の実施形態に係る評価情報の一例を示す図(3)である。なお、図8に示す例では、警告情報を更に生成した場合を示す。
図8の横軸は時間を示し、図8の縦軸は達成度を示す。図8に示す例では、所定時間ごとに達成度を導出した結果を折れ線グラフで示している。また、図8において、星印8aは、基準時間を示し、黒塗の三角印8bは、現在の時間を示す。図8に示す例では、現在の時刻が基準時間を超過している。言い換えると、図8に示す例では、手技の進行が遅延している可能性が考えられる。そこで、かかる場合、生成部308は、図8中の8cに示すように、「基準時間を超過しました」などの警告情報を生成する。なお、システム制御部304は、ステップS208において生成された警告情報を出力部302に出力させる。
なお、生成部308は、カテーテル挿入フェーズにおいて、手技の進行に伴う達成度の変化を評価情報として生成する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、生成部308は、切開部位とデバイスの位置との距離を手技の進行に伴う達成度として導出してもよく、或いは、デバイスの位置と治療部位との距離である残存距離を手技の進行に伴う達成度として導出してもよい。また、生成部308は、基準時間を超過した場合には、基準時間との差異を示す情報を更に含んだ警告情報を生成してもよい。一例として、基準時間が15分に設定されているものとする。かかる場合、生成部308は、30分を経過しても手技が終了していないとすると、「−15分」、或いは「200%」などの警告情報を生成する。
図9は、第1の実施形態に係る生成部308による評価情報生成処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図9に示す例では、治療フェーズにおいて、手技の進行に伴う達成度の変化を評価情報として生成する場合について説明する。
図9に示すように、生成部308は、使用デバイスを特定する(ステップS301)。続いて、生成部308は、デバイスが変更されたか否かを判定する(ステップS302)。ここで、生成部308は、デバイスが変更されたと判定した場合(ステップS302、Yes)、治療フェーズの段階ごとに計測していた時間をリセットし(ステップS303)、ステップS301に移行する。なお、かかる場合、手技の開始からの計測していた累積時間については計測を継続してもよい。
一方、生成部308は、デバイスが変更されたと判定しなかった場合(ステップS302、No)、経過時間をプロットする(ステップS304)。図10は、第1の実施形態に係る評価情報の一例を示す図(4)である。図10に示す例では、シナリオAの第2段階の手技として治療フェーズのファーストコイル挿入段階が進行中である場合を示す。
図10の横軸は時間を示す。図10に示す例では、手技の各段階における経過時間を達成度として示している。また、図10において、星印10aは、基準時間を示し、黒塗の三角印10bは、現在の時間を示す。言い換えると、黒塗り三角印10bは、最新の達成度を導出した時の時間を示す。図10に示すように、生成部308は、経過時間をプロットした評価情報を生成する。なお、生成部308は、図6に示したように、現在使用中のデバイスの種類、これまでに使用されたデバイスの種類数、投与された薬剤、及び現在までの達成度などを示す情報を更に評価情報として生成してもよい。また、システム制御部304は、ステップS304において生成された評価情報を出力部302に出力させる。
図9に戻る。続いて、生成部308は、基準時間を超えたか否かを判定する(ステップS305)。ここで、生成部308は、基準時間を超えたと判定した場合(ステップS305、Yes)、警告情報を生成し(ステップS306)、ステップS307に移行する。図11は、第1の実施形態に係る評価情報の一例を示す図(5)である。図11に示す例では、警告情報を更に生成した場合を示す。
図11の横軸は時間を示す。図11に示す例では、図10と同様に、手技の各段階における経過時間を達成度として示している。また図11において、星印11aは、基準時間を示し、黒塗の三角印11bは、現在の時間を示す。図11に示す例では、現在の時刻が基準時間を超過している。言い換えると、図11に示す例では、手技の進行が遅延している可能性が考えられる。そこで、かかる場合、生成部308は、図11中の11cに示すように、「基準時間を超過しました」などの警告情報を生成する。なお、システム制御部304は、ステップS306において生成された警告情報を出力部302に出力させる。
図9に戻る。一方、生成部308は、基準時間を超えたと判定しなかった場合(ステップS305、No)、ステップS307に移行する。ステップS307において、生成部308は、全ての治療は終了したか否かを判定する(ステップS307)。ここで、生成部308は、全ての治療は終了したと判定した場合(ステップS307、Yes)、評価情報生成処理を終了する。一方、生成部308は、全ての治療は終了したと判定しなかった場合(ステップS307、No)、ステップS301に移行する。
図12は、第1の実施形態に係る生成部308による評価情報生成処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図12に示す例では、カテーテル挿入フェーズ及び治療フェーズにおいて、手技で使用されたデバイスの使用履歴に基づいて、評価情報を生成する場合について説明する。
図12に示すように、生成部308は、デバイスが使用されたか否かを判定する(ステップS401)。例えば、生成部308は、進捗情報DB303dを定期的に監視し、手技で使用されたデバイスの使用履歴が更新された場合にデバイスが使用されたと判定する。
ここで、生成部308は、デバイスが使用されたと判定しなかった場合(ステップS401、No)、引き続きデバイスが使用されたか否かを判定する。一方、生成部308は、デバイスが使用されたと判定した場合(ステップS401、Yes)、デバイスの種別ごとに使用量を算出する(ステップS402)。
そして、生成部308は、デバイスの種別ごとの使用量に応じたアイコンを設定する(ステップS403)。図13は、第1の実施形態に係る評価情報の一例を示す図(6)である。図13に示す例では、シナリオAの第2段階の手技として治療フェーズのファーストコイル挿入段階が進行中である場合を示す。
図13の横軸は時間を示す。図13に示す例では、手技の各段階における経過時間と、使用されたデバイスの種別及び数量とをして示している。また、図13において、星印13aは、基準時間を示し、黒塗の三角印13bは、現在の時間を示す。また、図13では、デバイスの種別をアイコン13c〜13kで示している。ここで、3種類のデバイスを示すアイコンが設定されており、アイコン13cと13jとが同一種類であり、アイコン13d〜13iが同一種類であることを示す。また、1つのアイコンは数量1つ分に対応している。
図13に示すように、生成部308は、デバイスが使用された時間ごとに使用されたデバイスの種別を示すアイコンを対応付けた評価情報を生成する。図13では、まず、アイコン13cに対応するデバイスが使用されたことを示す。また、図13では、続いて、アイコン13d〜アイコン13iに対応するデバイスが短時間の間に繰り返し使用された後に、アイコン13jに対応するデバイスが使用されたことを示す。更に、図13では、アイコン13kに対応するデバイスが使用されて手技が進行中であることを示す。
このように、リスク管理装置300がデバイスの使用量を示す評価情報を生成することで、例えば、操作者は、アイコン13d〜アイコン13jで示すように、デバイスが短時間で過剰に使用されている場合に、手技の進捗に遅れや手技に問題が生じている可能性を把握することが可能となる。なお、生成部308は、図6に示したように、現在使用中のデバイスの種類、これまでに使用されたデバイスの種類数、投与された薬剤、及び現在までの達成度などを示す情報を更に評価情報として生成してもよい。また、システム制御部304は、ステップS403において生成された評価情報を出力部302に出力させる。
図12に戻る。続いて、生成部308は、手技の終了を受付けたか否かを判定する(ステップS404)。例えば、生成部308は、透視の終了を受付けた場合に、手技が終了したと判定する。ここで、生成部308は、手技の終了を受付けたと判定した場合(ステップS404、Yes)、評価情報生成処理を終了する。一方、生成部308は、手技の終了を受付けたと判定しなかった場合(ステップS404、No)、基準時間を超えたか否かを判定する(ステップS405)。
ここで、生成部308は、基準時間を超えたと判定しなかった場合(ステップS405、No)、ステップS401に移行する。一方、生成部308は、基準時間を超えたと判定した場合(ステップS405、Yes)、警告情報を生成し(ステップS406)、ステップS401に移行する。図14は、第1の実施形態に係る評価情報の一例を示す図(7)である。なお、図14に示す例では、警告情報を更に生成した場合を示す。
図14の横軸は時間を示す。図14に示す例では、手技の各段階における経過時間と、使用されたデバイスの種別及び数量とをして示している。また図14において、星印14aは、基準時間を示し、黒塗の三角印14bは、現在の時間を示す。図14に示す例では、現在の時刻が基準時間を超過している。言い換えると、図14に示す例では、手技の進行が遅延している可能性が考えられる。そこで、かかる場合、生成部308は、図14中の14cに示すように、「基準時間を超過しました」などの警告情報を生成する。なお、システム制御部304は、ステップS406において生成された警告情報を出力部302に出力させる。
なお、図12に示す例では、手技の進行に伴うデバイス使用量の変化を評価情報として生成する場合について説明したが、手技の進行に伴う薬剤使用量の変化を評価情報として生成する場合も処理手順は同様である。例えば、カテーテルの挿入に伴い、血栓ができやすくなる。このため、薬剤として血栓溶解剤が使用される。リスク管理装置300が薬剤の使用量を示す評価情報を生成することで、例えば、リスク管理装置300の操作者は、薬剤が過剰に投与されている場合に、手技の進捗に遅れや手技に問題が生じている可能性を把握することが可能となる。
上述したように、第1の実施形態に係るリスク管理装置300は、X線診断装置200を用いて実行される手技の進行時に、手技の進捗状況を示す進捗情報を収集し、進捗情報に基づいて、手技の進行を評価する評価情報を生成する。これにより、リスク管理装置300の操作者は、手技の進行を評価することができる。この結果、第1の実施形態に係るリスク管理装置300によれば、操作者は、問題が起こりそうな検査や治療を把握し、問題が起こる前に対策を講じることが可能となる。例えば、血管内治療医をスキルの高い人に交代させたり、スキルが高い人が指導や助言できるようにしたりする。
また、第1の実施形態に係るリスク管理装置300は、複数のX線診断装置、X線診断装置200aと、X線診断装置200bと、X線診断装置200cとを統合的に管理する。ここで、リスク管理装置300には、各X線診断装置におけるリスクを統合的に把握できる仕組みを持たせるようにしてもよい。例えば、リスク管理装置300には、各X線診断装置の進捗・リスクをリスク度に従って危険なものから順にリスト表示する、あるいは各X線診断装置の進捗Windowを危険度に応じて赤(危険)、オレンジ(要注意)、黄(注意)、黄緑(リスク小)、青(リスクなし)などと表示する。これにより、リスク管理装置300の操作者は、複数のX線診断装置の内、どの装置での進捗を重点的に、あるいは優先的にチェックしなければいけないか容易に把握できる。なお、リスク度は経過時間(絶対値)、目標時間に対する経過時間の割合、術者のスキルなどを元に算出される。
(第1の実施形態の変形例)
以下では、第1の実施形態の変形例について説明する。
なお、上述した第1の実施形態では、生成部308は、進捗情報に基づいて、手技の進行を評価する評価情報を生成するものとして説明したが実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、生成部308は、評価情報に参照情報を更に関連付けてもよい。図15から図18は、第1の実施形態の変形例に係る評価情報の一例を示す図(1)〜(4)である。
図15では、カテーテル挿入フェーズにおいて、手技の進行に伴う達成度の変化を示す評価情報にX線画像を参照情報として関連付ける場合を示す。また、図15の左側に、手技の進行に伴う達成度の変化を示す評価情報を示す。なお、図15において、星印15aは、基準時間を示し、黒塗の三角印15bは、現在の時間を示す。この評価情報において、現在の達成度が横ばいとなっており、手技の進捗が遅れている可能性がある。このような場合、例えば、選択したカテーテルが適切ではなくカテーテルをうまく治療部位までナビゲーションできていない可能性がある。このような場合、リスク管理装置300の操作者は、X線画像を参照することで、より正確な指導や助言を術者に対して行うことができる場合がある。そこで、生成部308は、例えば、評価情報において、操作者によって矢印15cの指定を受付けた場合、この矢印15cで指定された時間におけるX線画像15dを評価情報の隣に並べて表示させる。このように、X線画像を関連付けた評価情報を生成して表示することで、例えば、スキルの高い医師であれば、カテーテルと治療部位との位置関係を把握することで、より具体的な助言を術者に与えることが可能となりえる。
図16では、手技の各段階における経過時間と、使用されたデバイスの種別及び数量を示す評価情報にX線画像を参照情報として関連付ける場合を示す。図16において、星印16aは、基準時間を示し、黒塗の三角印16bは、現在の時間を示す。この評価情報において、短時間の内にデバイスの使用量が急増している。かかる場合、例えば、適切なデバイスを選択できずに手技の進捗が遅れている可能性がある。そこで、生成部308は、例えば、評価情報において、操作者によって矢印16cでの指定を受付けた場合、この矢印16cで指定されたアイコンの選択時におけるX線画像16dを評価情報の隣に並べて表示させる。このように、X線画像を関連付けた評価情報を生成して表示することで、例えば、スキルの高い医師であれば、カテーテルと治療部位との位置関係を把握することで、術者により具体的な助言を与えることが可能となりえる。
なお、図15や図16において、評価情報に関連付ける参照情報は、X線画像に限らない。例えば、その他の参照情報を表示させるようにしてもよい。図17では、図15に示す矢印15cや図16に示す矢印16cの指定を受付けた場合に表示する参照情報の一例を示す。図17では、評価情報を表示している画面を切り替えて参照情報を表示する例を示す。図17に示すように、生成部308は、X線透視時間、X線撮影時間、X線照射時間、患者皮膚被曝線量、患者臓器被曝線量、造影剤注入量、デバイス使用量、及び薬剤投与量を参照情報として表示させるとともに、X線画像を隣に並べて表示させる。これにより、リスク管理装置300の操作者は、例えば、手技の進捗に遅れが生じた場合に、現場の状況をより正確に把握することが可能となりえる。
また、生成部308は、手技の進行に伴う達成度の変化と、デバイス及び薬剤の少なくともいずれか一方の手技の進行に伴う使用量の変化とを評価情報として生成してもよい。例えば、生成部308は、図18に示すように、図6と同様にして生成した評価情報と図13と同様にして生成した評価情報とを同時に表示させる。
また、生成部308は、例えば、動脈瘤へのコイリングにおいて、動脈瘤の中にどれだけコイルが挿入されたかを示す塞栓率(VER:Volume Embolization Ratio)を更に含んだ評価情報を生成してもよい。なお、VERは、コイルが占める体積をC、動脈瘤の体積をVとした場合、「VER=C/V×100(%)」で算出される。ここで、動脈瘤の体積Vは、X線CT画像から画像処理によって測定され、コイルが示す体積Cは、コイルの太さと、血管内に挿入されたコイルの長さとから求められる。なお、血管内に挿入されたコイルの長さ及びコイルの太さは、在庫管理システムから収集可能である。
なお、リスク管理装置300において、進捗情報収集部306と参照情報収集部307とが収集部として統合されてもよい。
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、リスク管理装置300は、複数の検査室や治療室の進捗情報を収集して評価情報を生成するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、リスク管理装置300は、1つの検査室或いは1つの治療室の進捗情報を収集して評価情報を生成してもよい。図19は、その他の実施形態に係るリスク管理システム100aの構成例を示すブロック図である。
図19に示すように、その他の実施形態に係るリスク管理システム100aは、X線診断装置200と、リスク管理装置300とを備える。なお、図19に示すX線診断装置200の構成は、図2に示したX線診断装置200の構成と同様であり、リスク管理装置300の構成は、図3に示したリスク管理装置300の構成と同様である。
図19に示す例では、X線診断装置200の隣にリスク管理装置300が設置されているものとする。また、図19において、リスク管理装置300の操作者は、例えば、X線診断装置200を使用する術者に付き添って、術者を指導したり監督したりする立場にある管理者である。図19に示すリスク管理システム100aにおいて、操作者がX線画像を閲覧する場合、X線診断装置200の表示部225に表示されたX線画像を閲覧すればよい。このため、リスク管理システム100aにおいて、リスク管理装置300は、X線画像を表示させなくてもよい。なお、X線CT装置から収集したX線CT画像を画像データ記憶部222に記憶させる場合には、リスク管理装置300は、医用画像データDB303aを有さずに構成されてもよい。
また、上述した実施形態では、リスク管理装置300がX線診断装置200とは独立に設けられる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断装置200は、リスク管理装置300が有する機能を更に備えるようにしてもよい。図20は、その他の実施形態に係るX線診断装置400の構成例を示すブロック図である。
図20に示すように、その他の実施形態に係るX線診断装置400は、高電圧発生器211、X線管212、X線絞り装置213、天板214、X線検出器215、Cアーム216、Cアーム回転・移動機構217、天板移動機構218、Cアーム・天板機構制御部219、絞り制御部220、画像データ生成部221、画像データ記憶部222、画像処理部223、入力部224、表示部225、システム制御部226、記憶部410、及びリスク管理部420を有する。なお、図20に示すX線診断装置400において、図2に示すX線診断装置200の構成と同様である各部については同一の符号を付与し、詳細な説明を省略する。また、図20において、X線診断装置400の操作者は、例えば、X線診断装置400を使用する術者と、この術者に付き添って、術者を指導したり監督したりする立場にある管理者である。
記憶部410は、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスクなどであり、医用画像データDB303aと、参照情報DB303bと、統計データDB303cと、進捗情報DB303dと、シナリオDB303eとを有する。なお、X線CT装置から収集したX線CT画像を画像データ記憶部222に記憶させる場合には、X線診断装置400は、医用画像データDB303aを有さずに構成されてもよい。
リスク管理部420は、シナリオ設定部305と、進捗情報収集部306と、参照情報収集部307と、生成部308とを有する。なお、リスク管理部420において、図3に示すリスク管理装置300の構成と同様である各部については同一の符号を付与し、詳細な説明を省略する。なお、X線診断装置400では、参照情報収集部307がDTS機能を有する場合には、システム制御部226は、DTS機能を有さずに構成されてもよい。また、表示部225は、例えば表示領域を分割して一方の領域にX線画像を表示し、他方の領域に評価情報を表示してもよい。或いは、表示部225は、操作者の指示に応じて、X線画像と評価情報とを切り替えて表示してもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、手技の進行を評価することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。