JP3729912B2 - 赤色発光蛍光体および陰極線管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーテレビあるいはコンピュータディスプレイ等の陰極線管に用いられる蛍光体と、この蛍光体を用いた陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カラーテレビ、コンピュータディスプレイ等は高品位、高精細化してきており、これらに用いられる陰極線管には大型化および高品位化がもたらされている。
【0003】
周知のように、カラーテレビ、コンピュータディスプレイ等に用いられる陰極線管には、電子線を励起エネルギーの媒体として発光させる(カソードルミネッセンス)蛍光体が使用されており、蛍光体としては、光の三原色を組み合わせてほとんどすべての色を映しだす(加法混色)ために青、緑、赤色発光の蛍光体が用いられている。
【0004】
この中でも、赤色発光の蛍光体としては主に希土類蛍光体が用いられており、ユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y2 O2 S:Eu)、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体(Y2 O3 :Eu)、ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム蛍光体(YVO4 :Eu)等が代表的なものである。
【0005】
そして、発光特性の向上を図るため、これらの希土類蛍光体に微量の共付活剤となりうる元素を導入する試みがなされている。
【0006】
例えば、特公昭47−13243号には、微量のTbを添加することにより、電流に対する輝度の飽和特性を改良して発光輝度を向上させる提案がなされている。また、特公昭47−13244号にはMnを、特開昭63−101480号にはVを微量添加することにより、発光輝度を向上させる提案がなされている。
さらに、特公昭63−45719号には、Erを添加することにより電流特性を向上させる提案が、特願平3−236473号には、Y2 O2 S:Eu,Tbに微量のWを添加することにより発光輝度の電圧飽和特性を向上させる提案がなされている。
【0007】
こうした幾多の試みの中、発光色が実用的に十分赤く、且つ発光輝度の高い点から、カラーテレビあるいはコンピュータディスプレイ等の陰極線管には希土類酸硫化物系の蛍光体が広く用いられている。特に、現在実用化されている陰極線管には、微量のTbを添加したユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y2 O2 S:Eu,Tb)が比較的良好な発光特性を示すので、一般的に多用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特に高品位テレビ、高精細コンピュータディスプレイ等においては、陰極線管の大型化、高品位化に伴って蛍光面の蛍光体を励起する電子線の加速電圧が高くなっている反面、フォーカス特性の点から励起電流密度を大きくすることが難しいため、蛍光面全体の平均励起電流密度が小さくなっている。したがって、高品位テレビ、高精細コンピュータディスプレイ等の陰極線管においては、従来のY2 O2 S:Eu,Tb系の蛍光体では、十分な発光輝度を得ることが困難であるという問題が生じている。
【0009】
また、従来の蛍光体を用いた陰極線管においては、蛍光体の発光輝度が十分でないために、画面の明るさや色のバランスが低下してしまい、高画質画面を得ることが困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に対処するためになされたもので、十分な発光色および色純度を有すると共に高輝度化を達成した蛍光体、および画面が明るく、かつ色のバランスが良好で高画質画面を達成した陰極線管を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するためにユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y2 O2 S:Eu、Y2 O2 S:Eu,Tb)をベースとして、十分な発光色および色純度を有すると共に高輝度化を達成した蛍光体を得るべく種々実験を行い、本発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明に係る赤色発光蛍光体は、Y2O2S:Euで基本的に表される粉末状蛍光体において、前記粉末状蛍光体がCsを前記蛍光体に対して5×10 -4 〜5×10 -2 重量%の範囲で含有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明に係る他の赤色発光蛍光体は、Y2O2S:Eu,RE(ただし、REはTb、Pr、ErおよびSmから選ばれる少なくとも1種の元素を示す)で基本的に表される粉末状蛍光体において、前記粉末状蛍光体がCsを前記蛍光体に対して5×10 -4 〜5×10 -2 重量%の範囲で含有することを特徴としている。
【0014】
そして、本発明に係る陰極線管は、蛍光面として蛍光体の塗膜を具備する陰極線管において、前記蛍光体のうち赤色発光蛍光体は、上記した本発明の赤色発光蛍光体であることを特徴としている。
【0016】
本発明による赤色発光蛍光体は、Y2 O2 S:Eu蛍光体に、共付活剤としてCsあるいはCsおよびRE元素を添加したものである。ここで、Euは、蛍光体母体(Y2 O2 S)に対して3.0〜8.0重量%の範囲で含有していることが好ましい。Euの含有量が3.0重量%未満であると、発光色がピンクあるいはオレンジ色となり、赤色発光成分としての特性が低下し、また8.0重量%を超えると、発光輝度の低下を招いてしまう。実用的には、Euの含有量を5.0〜6.0重量%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0017】
Csは、発光輝度特性の改善に効果を発揮する成分であって、本発明において特徴的な成分である。本発明の蛍光体においては、以下に詳述するように、Csを基本的な蛍光体組成(Y2 O2 S,Eu)に対し5×10-4〜5×10-2重量%の範囲で含有させることが重要である。
【0018】
また、本発明の蛍光体においては、蛍光体母体であるY2 O2 SにEuおよびCsと共にRE元素(Tb、Pr、ErおよびSmから選ばれる少なくとも1種の元素)を共付活させることによって、発光色の向上および発光輝度特性の改善を図ることができる。
【0019】
RE元素を共付活剤として使用する際、RE元素としてTb、PrおよびErから選ばれる少なくとも1種の元素を用いる場合には、RE元素を基本的な蛍光体組成(Y2 O2 S,Eu)に対し5×10-4〜5×10-3重量%の範囲で含有させることが好ましい。Tb、PrおよびErから選ばれる少なくとも1種の元素の含有量が5×10-4重量%未満であると、発光輝度特性の改善効果を十分に得ることができず、逆に5×10-3重量%を超えると、発光輝度が低下する傾向を示す。
【0020】
また、RE元素の1つとしてSmを選んだ場合には、RE元素を基本的な蛍光体組成(Y2 O2 S,Eu)に対し5×10-4〜0.5重量%の範囲で含有させる。この含有量の規定理由も上記理由と同様であるが、この場合には、さらにSmがEuの代替効果を有するため、RE元素としてTb、PrおよびErのみを選んだ場合に比べてRE元素を多く含有させることができるのである。したがって、この場合、Euの含有量を減らすことができる。
【0021】
さらに、RE元素として特にTbを選んだ場合には、励起電流密度に対する発光輝度の直線性が保たれ、発光輝度の飽和が抑制されるので好ましい。
【0022】
さらに、RE元素としてTbおよびSmの混合系も好ましく用いられる。SmはEuの代替効果を有することから、RE元素はTbのみを選んだ場合に比べて多く含有させることができ、これによりEuの含有量を減らすことができる。この際のRE元素の含有量は、上記したTb量である5×10-4〜5×10-3重量%の範囲を基準として、基本的な蛍光体組成(Y2 O2 S,Eu)に対し0.5重量%の範囲内までSmを含有させることができる。
【0023】
次に、Csの含有量について述べる。図1は、Y2 O2 S:Eu,Tb,Cs蛍光体(EuおよびTbの含有量はそれぞれ6.8、1×10-3重量%である)におけるCsの含有量と発光輝度との関係を示した図である。
【0024】
なお、発光輝度は、上記蛍光体を用いて仕上げた陰極線管に、電子線(励起電圧25kV、励起電流200μA)を照射し、蛍光体をウインドウパターン状に励起して測定した。また、図1において縦軸は相対的な発光輝度(Csを含有していない蛍光体を100とした値)を示し、横紬(対数目盛り)はCsの含有量を示している。
【0025】
図1に示すように、Csの含有量が5×10-4重量%未満では、発光輝度特性の改善効果を十分に得ることができず、逆に5×10-2重量%を超えると、発光輝度の低下が大きくなる。Csのより好ましい含有量は、1×10-3〜1×10-2重量%の範囲である。
【0026】
さらに、画像のコントラストを改善するために、蛍光体にフィルタ物質を被覆して使用することがあるが、本発明の蛍光体はフィルタ物質を被覆しても輝度特性の優位性は変らない良好なものである。
【0027】
また、本発明の陰極線管は、上述した本発明の蛍光体を少なくとも赤色発光成分として用いたものである。
【0028】
したがって、本発明の陰極線管では、画面が明るく、かつ色のバランスが良好となるので、高画質の画面が達成される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0030】
はじめに、本発明の蛍光体を製造する工程の概略を示す。
【0031】
蛍光体を構成する元素を含む下記(1)〜(3)あるいは(1)〜(4)の各原料
(1)イットリウムの酸化物(Y2 O3 )や水酸化物等のイットリウム化合物
(2)ユーロピウムの酸化物(Eu2 O3 )や炭酸塩等のユーロピウム化合物
(3)Cs2 CO3 やCsI等のセシウム化合物
(4)RE元素の酸化物(例えばTb4 O7 )または炭酸塩等から選択される少なくとも1種の希土類化合物
を、適量秤量した後、全体を十分に混合する。
【0032】
次いで、得られた混合物を乾燥した後、還元剤としてSを添加し、また必要に応じて、融剤として炭酸ナトリウム(Na2 CO3 )やリン酸カリウム(K3 PO4 )等を添加して全体を均一に混合する。
【0033】
そして、この混合物を石英チューブあるいはアルミナルツボ等の焼成容器に充填し、蓋をして1100〜1300℃の温度で焼成する。
【0034】
最後に、得られた焼成物にミリング、洗浄、乾燥、篩別といった一般の処理工程を施し、本発明の蛍光体を得る。
【0035】
なお、Cs量は,原料混合物への仕込み量に対して1/10前後の量となり、また原料混合物への仕込み量により蛍光体中の含有量も変化するため、それらを考慮して原料混合物に対する仕込み量を設定することが好ましい。
【0036】
次に、本発明の一実施例である陰極線管の構成を図2に示す。
【0037】
図2において、陰極線管はパネル1及びパネル1に一体に接合されたファンネル2からなる外囲器を有し、このパネル1の内面には、青、緑、赤に発光する三色蛍光体層と、この三色蛍光体層の間隙部を埋める黒色の光吸収層とからなる蛍光面3が形成されている。そして、三色蛍光体層の内、赤色に発光する蛍光体層には、例えば上述したような、本発明の赤色発光蛍光体が使用されている。このような蛍光体層は、蛍光体をPVA、界面活性剤、純水等と共に分散させたスラリーを用い、これを通常の方法に従ってパネルの内面に塗布して蛍光面を形成することにより得られる。
【0038】
三色蛍光体層の形状は、ストライプ状でもドット状でもよいが、ここではドット状とした。そして、蛍光面3に対向してその内側に多数の電子ビーム通過孔の形成されたシャドウマスク4が装着されている。
【0039】
また、ファンネル2のネック5の内部には、蛍光面3に電子ビーム6B、6Gおよび6Rを照射するための電子銃7が配設されており、電子銃7によって放出された電子ビーム6Β、6Gおよび6Rが蛍光面3に衝突し、三色蛍光体層を励起、発光させるものである。なお、8はシャドウマスク4を支持する支持手段、9はファンネル2の側壁に設けられた陽極端子、10はファンネル2の内面に形成された内部薄電膜である。
【0040】
上記実施形態による陰極線管は、本発明をカラー陰極線管に適用した場合の例である。このとき、残る二色を発光する蛍光体は、任意に選択される。
【0041】
緑色発光の蛍光体および青色発光の蛍光体としては、何ら限定されるものではないが、硫化亜鉛を母体とし銅を付活剤とする緑色発光蛍光体および硫化亜鉛を母体とし銀を付活剤とする青色発光蛍光体を用いると全体的な発光特性がバランスするのでより好ましい。
【0042】
なお、上記実施形態においては、本発明をカラー陰極線管に適用した場合を例として説明したが、単色の陰極線管として本発明の蛍光体および陰極線管を用いることも可能であることはいうまでもない。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0044】
(実施例1)
はじめに、下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した。
【0045】
Y2 O3 : 93.2g
Eu2 O3 : 6.8g
Tb4 O7 : 1×10-3g
CsCO3 : 0.1g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
そして、これらの原料を十分良く混合して蛍光体の原料混合物を得た。
【0046】
次いで、この混合物をアルミナルツボに充填して蓋をした後、1500℃で2時間焼成した。
【0047】
次に、この焼成物を洗浄して雑イオンを除去した後、ビーズミリングを行って混合物を分散させた。最後に、微粒子状シリカを表面にコーティングし、洗浄した後、乾燥、篩別して本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tb,Csを得た。
一方、対照として、上記原料にCsCO3 を添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tbを得た。
【0048】
続いて、これらの蛍光体にクロム酸化合物である重クロム酸アンモンとポリビニルアルコールを加えて感光性スラリーを作成し、この感光性スラリーを通常の回転塗布方法により陰極線管用パネル内面上に塗布して蛍光膜を形成し、図2に示した陰極線管を形成した。なお、本実施例においては、緑色蛍光体としてZnS:Cu,Alが、また青色蛍光体としてZnS:Agが用いられている。
【0049】
そして、この陰極線管を用いて、発光輝度を測定した。
【0050】
(実施例2)
下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した後、(実施例1)と同様の方法を用いて、本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tb,Csを得た。
【0051】
Y2 O3 : 93.2g
Eu2 O3 : 6.8g
Tb4 O7 : 2×10-3g
CsCO3 : 0.02g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
一方、対照として、上記原料にCsCO3 を添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tbを得た。
【0052】
そして、実施例1と全く同様にして陰極線管を構成し、発光輝度を測定した。
(実施例3)
下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した後、(実施例1)と同様の方法を用いて、本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tb,Csを得た。
【0053】
Y2 O3 : 93.2g
Eu2 O3 : 6.8g
Tb4 O7 : 1×10-3g
CsCO3 : 1g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
一方、対照として、上記原料にCsCO3 を添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tbを得た。
【0054】
そして、実施例1と全く同様にして陰極線管を構成し、発光輝度を測定した。
(実施例4)
下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した後、(実施例1)と同様の方法を用いて、本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tb,Csを得た。
【0055】
Y2 O3 : 93.2g
Eu2 O3 : 6.8g
Tb4 O7 : 3×10-3g
CsCO3 : 0.25g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
一方、対照として、上記原料にCsCO3 を添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tbを得た。
【0056】
そして、実施例1と全く同様にして陰極線管を構成し、発光輝度を測定した。
(実施例5)
下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した後、(実施例1)と同様の方法を用いて、本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tb,Csを得た。
【0057】
Y2 O3 : 95.3g
Eu2 O3 : 4.7g
Tb4 O7 : 1×10-3g
CsCO3 : 0.07g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
一方、対照として、上記原料にCsCO3 を添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tbを得た。
【0058】
そして、実施例1と全く同様にして陰極線管を構成し、発光輝度を測定した。
(実施例6)
下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した後、(実施例1)と同様の方法を用いて、本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Pr,Csを得た。
【0059】
Y2 O3 : 95.3g
Eu2 O3 : 4.7g
Pr6 O11: 2×10-3g
CsI: 0.3g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
一方、対照として、上記原料にCsIを添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Prを得た。
【0060】
そして、実施例1と全く同様にして陰極線管を構成し、発光輝度を測定した。
(実施例7)
下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した後、(実施例1)と同様の方法を用いて本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Tb,Sm,Csを得た。
Y2 O3 : 95.3g
Eu2 O3 : 4.4g
Tb4 O7 : 1×10-3g
Sm2 O3 : 0.3g
CsCO3 : 0.5g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
一方、対照として、上記原料にCsCO3 を添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Smを得た。
【0061】
そして、実施例1と全く同様にして陰極線管を構成し、発光輝度を測定した。
(実施例8)
下記に示すように、蛍光体の原料をそれぞれ秤量した後、(実施例1)と同様の方法を用いて、本発明の蛍光体:Y2 O2 S:Eu,Csを得た。
【0062】
Y2 O3 : 95.3g
Eu2 O3 : 4.7g
CsCO3 : 0.25g
Na2 CO3 : 40g
S: 40g
K3 PO4 : 10g
一方、対照として、上記原料にCsCO3 を添加しない以外は、完全に同じ条件で比較例の蛍光体:Y2 O2 S:Euを得た。
【0063】
そして、実施例1と全く同様にして陰極線管を構成し、発光輝度を測定した。
ここで、実施例1〜実施例8において測定された、本発明の蛍光体による発光輝度の相対値(相対輝度)を表1に示す。
【0064】
【表1】
なお、発光輝度は、蛍光面3に赤色発光用の電子ビーム6R(励起電圧25kV、励起電流200μA)を照射し、実施例1〜実施例7の各蛍光体をウインドウパターン状に励起して測定した。表1において、各実施例での本発明の蛍光体による相対輝度は、各実施例における比較例の蛍光体の発光輝度を100とした場合の相対値である。
【0065】
表1から明らかなように、本発明の蛍光体は、Csを含んでいない比較例の蛍光体と比べて発光輝度が高くなっており、発光輝度の向上が達成されていることが理解できる。
【0066】
また、本発明の蛍光体は、発光色および色純度の点においても、比較例の蛍光体と比べて遜色のないものであった。
【0067】
さらに、以上のことから、本発明の陰極線管は、従来の陰極線管と比べて発光輝度が高いので画面が明るく、かつ色のバランスが良好となっているので、高画質の画面が達成されていた。
【0068】
なお、実施例1の蛍光体と実施例8の蛍光体を比べた場合、実施例1の蛍光体の方が発光輝度が高く、より実用性に優れることを確認した。
【0069】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、ユーロピウム付活酸硫化イットリウム蛍光体(Y2 O2 S:EuまたはY2 O2 S:Eu,RE)にCsを含有させているため、十分な発光色および色純度を有すると共に高輝度化が達成された赤色発光蛍光体を提供することができる。
【0070】
また、赤色発光蛍光体として、十分な発光色および色純度を有すると共に、高輝度化が達成された上記蛍光体を用いるので、画面が明るく、かつ色のバランスが良好な高画質の陰極線管を提供することができる。
【0071】
したがって、高品位テレビや高精細ディスプレイ等、特に高輝度化が要求される各種デバイスに対し実用上、効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】Y2 O2 S:Eu,Tb,Cs蛍光体におけるCsの含有量と発光輝度との関係を示した図。
【図2】本発明の一実施例である陰極線管の構成を示す図。
【符号の説明】
1……パネル 2……ファンネル 3……蛍光面 4……シャドウマスク
5……ネック 6B、6G、6R……電子ビーム 7……電子銃
8……支持手段 9……陽極端子 10……内部薄電膜
Claims (8)
- Y2O2S:Euで基本的に表される粉末状蛍光体において、
前記粉末状蛍光体がCsを前記蛍光体に対して5×10 -4 〜5×10 -2 重量%の範囲で含有することを特徴とする赤色発光蛍光体。 - 前記Csを前記蛍光体に対して3×10 -3 〜5×10-2重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1記載の赤色発光蛍光体。
- Y2O2S:Eu,RE(ただし、REはTb、Pr、ErおよびSmから選ばれる少なくとも1種の元素を示す)で基本的に表される粉末状蛍光体において、
前記粉末状蛍光体がCsを前記蛍光体に対して5×10 -4 〜5×10 -2 重量%の範囲で含有することを特徴とする赤色発光蛍光体。 - 前記Csを前記蛍光体に対して3×10 -3 〜5×10-2重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項3記載の赤色発光蛍光体。
- 前記RE元素がTbであることを特徴とする請求項3記載の赤色発光蛍光体。
- 前記RE元素がTbおよびSmの混合系であることを特徴とする請求項3記載の赤色発光蛍光体。
- 陰極線管用蛍光体であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の赤色発光蛍光体。
- 蛍光面として蛍光体の塗膜を具備する陰極線管において、
前記蛍光体のうち赤色発光蛍光体は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の赤色発光蛍光体であることを特徴とする陰極線管。
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