JP3729683B2 - エバポパージシステムの故障診断装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンクからの燃料蒸気を吸気系へパージして処理するエバポパージシステムの故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両等に搭載される装置として、燃料タンクで発生する燃料蒸気(エバポ)をキャニスタに捕集し、その捕集された燃料蒸気を適宜キャニスタから吸気通路へパージするようにしたエバポパージシステムがある。
【0003】
こうしたエバポパージシステムは、通常、燃料タンク内にて発生した燃料蒸気を捕集するキャニスタと、燃料タンクとキャニスタとを連通するベーパ通路と、キャニスタと吸気通路とを連通するパージ通路とを備えるシステムとして構成される。また同システムにおいて、パージ通路の通路途中には開閉制御の可能なパージ制御弁が、キャニスタには大気導入の可能な大気導入弁が備えられる。
【0004】
また、上記のようなエバポパージシステムについて、そのエバポ経路の穴開きや裂傷等に起因する漏れの有無を診断するエバポパージシステムの故障診断装置がある。例えば特開平4−362264号公報に記載されたエバポパージシステムの故障診断装置では、一旦エバポ経路を負圧に維持した後、同経路内における内圧の経時変化をモニタすることで異常の有無を診断するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなエバポパージシステムの故障診断装置には、より微小な穴開きや裂傷をも迅速且つ正確に検出することのできる信頼性が望まれるようになってきている。この点、例えば上記公報に記載された故障診断装置の場合には、エバポ経路における1.0mm孔径程度の穴あきや裂傷を認識するのが限界であり、将来の公害規制下では、エバポ経路中のより微小な漏れ(例えば0.5mm孔径以下の穴の検出)には対応しきれないものとなっている。
【0006】
また、上記公報に記載された装置では、エンジンの始動直後のように、非常に限られた時期にしか漏れ検出にかかる相応の検出精度を発揮することができない上に、燃料タンク内の燃料残量が変わると、その他の条件が同一であっても燃料の蒸気圧がエバポ経路内圧に及ぼす影響が変わり、誤診断をしてしまう可能性もあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エバポ経路のより微小な漏れをも高精度且つ迅速に診断することのできるエバポパージシステムの故障診断装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
【0009】
まず請求項1記載の発明は、燃料タンクから発生する燃料蒸気を同燃料タンクを含むエバポ経路を介してエンジンの吸気通路へパージ制御するエバポパージシステムの故障診断装置において、前記エバポ経路の経路内圧力を検出する圧力センサと、同エバポ経路内に診断用の所定の圧力を導入する圧力導入手段と、前記所定の圧力が導入されたエバポ経路を密閉した状態での前記圧力センサにより検出される同エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達したときの第1の圧力変化度合いと前記第1の所定圧力よりも圧力導入以前の経路内圧力に近い第2の所定圧力に達したときの第2の圧力変化度合いとの比に基づいて当該エバポ経路の故障の有無を診断する診断手段とを備えることを要旨とする。
【0010】
エバポ経路内を所定圧力に保持して密閉した後放置すれば、燃料タンクからの燃料蒸気圧に応じ同経路内の気圧は徐々に平衡状態に向かう。ここで、エバポ経路内の密閉状態が良好であると、経路内の気圧変化は最初は速く徐々に遅くなる。これに対し、エバポ経路に漏れが生じていると、経路内の気圧はほぼ一定の気圧変化速度をもって推移することとなる。
【0011】
そこで、この請求項1記載の発明では、エバポ経路内がある第1の所定圧力下にあるときの圧力変化度合いと、同経路内が前記第1の所定圧力よりも密閉時の圧力に近い第2の所定圧力下にあるときの圧力変化度合いとを検出し、更に両圧力変化度合いの比を演算し、この比に基づいてエバポ経路の漏れを診断するようにしている。すなわち、エバポ経路に漏れが生じていると上記第1及び第2の圧力下においてその圧力変化度合いはほぼ一定となるのに対し、漏れのない場合には、同第1及び第2の圧力下においてその圧力変化度合いも異なったものとなる。そこで、これら圧力変化度合いの比をとることにより、上記各所定負圧が相当に近似した圧力値であっても漏れの有無を良好に検出することができるようになる。ちなみに、このような圧力変化度合いの違いを例えば両者の圧力変化度合いの差に基づいて判別しようとすると、測定対象とする上記第1及び第2の所定圧力に相当に広い圧力差をもたせない限り、それら直線的な圧力変化(漏れあり)及び曲線的な圧力変化(漏れ無し)間に顕れる差異を明確に区別することは困難であるが、この請求項1記載の発明のように、両者の圧力変化度合いの比を適用すれば、同第1及び第2の所定圧力として近似した圧力区間においても、それら測定されたデータに基づいて上記差異を明確に判別することが可能となる。したがって、エバポ経路の有無に応じた上述の態様での圧力変化に着目した精度の高い診断を極めて短い時間若しくは周期をもって行うことができるようになる。
【0012】
また請求項2記載の発明は、燃料タンクから発生する燃料蒸気を同燃料タンクを含むエバポ経路を介してエンジンの吸気通路へパージ制御するエバポパージシステムの故障診断装置において、前記エバポ経路の経路内圧力を検出する圧力センサと、同エバポ経路内に診断用の所定の圧力を導入する圧力導入手段と、前記所定の圧力が導入されたエバポ経路を密閉した状態での前記圧力センサにより検出される同エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達したときの第1の圧力変化度合いと前記第1の所定圧力よりも圧力導入以前の経路内圧力に近い第2の所定圧力に達したときの第2の圧力変化度合いとの比、及び前記第2の圧力変化度合いに基づいて当該エバポ経路の故障の有無を診断する診断手段とを備えることを要旨とする。
【0013】
第2の圧力変化度合いに基づけば、エバポ経路の漏れの有無を大方識別することができるが、エバポ経路内の燃料量や燃料の揮発性の相違等により、特に微小な漏れの診断が困難となる場合がある。
【0014】
そこで、この請求項2記載の発明では、このような判定が困難な場合でも、少なくとも2点の圧力変化度合い間の比、すなわち変化度合いの相対値を更に加味することにより、第2の圧力変化度合いだけでは識別できなかった漏れの有無にかかる相違が明確に顕れるようになり、もってエバポ経路内の燃料残量や燃料特性等の条件が異なる場合であれ、微小な穴による漏れについても信頼性の高い診断が行えるようになる。
【0015】
また、このように第1の圧力変化度合いと第2の圧力変化度合いとの比、及び第2の圧力変化度合いに基づいて上記診断を行うことで、例えばそれら各要素を軸とする2次元マップを用いた、より精度の高い、しかも効率のよい診断が可能ともなる。
【0016】
また請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記圧力導入手段は、前記エバポ経路の前記吸気通路との連通部に設けられて同吸気通路からの吸気負圧を導入する制御弁であることを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、吸気通路からエバポ経路に負圧を導入する操作を容易且つ的確に行うことができる。すなわち、別途に加圧ポンプを必要とする加圧法を用いることなく、いわゆる負圧法によっても上記エバポ経路の漏れについての検出頻度(診断頻度)を高めることができるようになる。
【0018】
また請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力が前記第1の所定圧力を経て前記第2の所定圧力に達するまでの時間が所定時間(ΔT1)以上となるとき、当該エバポ経路を故障無しと診断することを要旨とする。
【0019】
通常、エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力から第2の所定圧力に移行するまでに十分な時間を要するとすれば、第1の所定圧力下での圧力変化度合いと第2の所定圧力下での圧力変化度合いとの比、あるいは第2の圧力変化度合いをとるまでもなくエバポ経路内に漏れのないことを確定することができる。したがって同構成によれば、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときにこれを早い機会に判断することができ、ひいては故障診断のインターバルを狭めて、その頻度を高めることができるようになる。
【0020】
また請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力が前記第1の所定圧力に達した時点から所定時間(ΔTh)経過後、同経路内圧力が前記第2の所定圧力よりも前記第1の所定圧力に近い第3の所定圧力(Ph)未満にあるとき、当該エバポ経路を故障無しと診断することを要旨とする。
【0021】
上述のように、エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力から第2の所定圧力に移行するまでに十分な時間を要するとすれば、第1の所定圧力下での圧力変化度合いと第2の所定圧力下での圧力変化度合いとの比、あるいは第2の圧力変化度合いをとるまでもなくエバポ経路内に漏れのないことを確定することができる。
【0022】
また、この傾向が更に顕著である場合には、請求項4記載の発明の上記所定時間(ΔT1)の経過を必ずしも待たなくとも、当該エバポ経路を故障無しと診断することが可能となる場合がある。すなわち、エバポ経路内に漏れがなく、且つ燃料タンク内での燃料蒸気発生量が少ない場合には、診断用圧力導入後におけるエバポ経路内の圧力変化も極めて僅かなものとなる。
【0023】
そこでこのような場合には、同請求項5記載の発明によるように、エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達した時点から所定時間(ΔTh)経過後、同経路内圧力が第2の所定圧力よりも第1の所定圧力に近い第3の所定圧力(Ph)未満にあることをもって、当該エバポ経路を故障無しと診断することができるようになる。しかもこの場合には、上記第3の所定圧力(Ph)の設定に応じて上記所定時間(ΔTh)を極めて短い時間に設定することが可能となり、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときに、これを更に早い機会に判断することができるようになる。
【0024】
また請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いに応じて可変とすることを要旨とする。
【0025】
同構成によれば、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動し、エバポ経路の経路内圧力が変動することとなっても、その変動度合いに応じて上記診断基準が可変とされることで、漏れ診断にかかる診断精度が好適に保持されるようになる。
【0026】
また請求項7記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を、前記各圧力変化度合い算出期間中における前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いに応じて可変とすることを要旨とする。
【0027】
上述のように、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動すると、エバポ経路の経路内圧力が変動することがある。ただし、上記診断は第1の圧力変化度合いと第2の圧力変化度合いとの比、または第1の圧力変化度合いと第2の圧力変化度合いとの比及び第2の圧力変化度合いに基づいて行われることから、上記経路内圧力の変動度合いに応じた診断基準の変更も、実質的にはこれら圧力変化度合い算出期間中における同経路内圧力の変動度合いに応じて行われることで必要十分である。したがって、請求項7記載の発明の同構成によれば、上記経路内圧力の変動度合い監視にかかるより小さな演算負荷のもとに上記診断基準の変更、並びに該診断基準の変更に基づく診断精度の補償が行われるようになる。
【0028】
また請求項8記載の発明は、請求項6または7記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いが所定以上となるとき、前記診断を中断することを要旨とする。
【0029】
同構成によれば、確実にシステムの正常・異常を診断できる条件が整わない状態であいまいな診断が行われてしまうことを回避することができるようになり、ひいては誤診断が回避され、故障診断の信頼性も向上する。
【0030】
また特に、同請求項8記載の発明が上記請求項7記載の発明に適用される場合には、上記各圧力変化度合い算出期間中以外の経路内圧力の変動度合いによって診断が中断されることはないため、実路走行中における診断機会(診断頻度)の増大が図られ、ひいては故障診断にかかる更なる信頼性の向上が図られることともなる。
【0031】
また請求項9記載の発明は、請求項1〜8の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を、前記エバポ経路内に対する診断用圧力の導入前後における吸入空気量変化に応じて可変とすることを要旨とする。
【0032】
上記圧力センサとしては通常、大気圧との相対圧を検出するタイプのセンサが用いられることから、車両の登坂走行時や降坂走行時には、それら大気圧の変化に応じて上記検出されるエバポ経路の経路内圧力も変化する。すなわち、車両の登坂、降坂走行時には誤異常や誤正常といった誤診断を犯しやすくなる。
【0033】
他方、例えば一定の車速のもとでの登坂時にはエンジン負荷の増大に伴って同エンジンの吸入空気量が増大し、逆に一定の車速のもとでの降坂時にはエンジン負荷の減少に伴って同エンジンの吸入空気量が減少する。
【0034】
そこで、請求項9記載の発明の上記構成によるように、エバポ経路内に対する診断用圧力の導入前後における吸入空気量変化に応じて上記診断基準を変更することとすれば、車両の登坂、降坂走行時であれ、その診断機会(診断頻度)の増大を図りつつ、上記大気圧の変化に起因する誤診断を回避することができるようになる。またこの場合、別途に大気圧センサ等を設ける必要もない。
【0035】
また請求項10記載の発明は、請求項6〜9の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記診断基準の変更によって前記故障の有無についての判定が保留となったとき、前記エバポ経路内に対する診断用圧力の再度の導入に基づく再度の診断を実行することを要旨とする。
【0036】
こうした故障診断装置にあっては通常、故障の有無についての判定が保留となったとき、同故障の有無についての当該トリップでの診断を中断するようにしている。これは、一旦判定が保留となった場合には、同一トリップ内で再度の診断を行ったとしても同様の結果となることが多いためである。ただし、上述のような診断基準の変更によって上記故障の有無についての判定が保留となった場合には、たとえ同一トリップであっても、以降の診断では何らかの判定が可能となるケースも少なくない。この点、同請求項10記載の発明によるように、上記診断基準の変更によって故障の有無についての判定が保留となったときには、診断用圧力の再度の導入に基づく再度の診断を実行する構成とすることで、実路走行時の診断機会(診断頻度)を的確に増やすことができるようになる。
【0037】
また請求項11記載の発明は、請求項1〜10の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記エバポ経路の経路内圧力変動を積算し、その積算値が所定の設定値(thα)よりも小さいことを条件に前記圧力導入手段による診断用圧力の導入及び前記診断手段による診断を許可する前提条件監視手段を更に備えることを要旨とする。
【0038】
こうした故障診断装置を備えるエバポパージシステムにあっては、少なくともその診断中、エンジン吸気通路へのパージを行うことができないため、トリップ毎に、エバポ経路に対する診断用圧力の導入回数には制限が設けられていることが多い。またこのため、実路走行中にあって、エバポ経路に対する診断用圧力の導入と、該診断用圧力の導入後、経路内圧力の変動等を理由とする診断の中止とが繰り返されるようなことがあると、上記診断用圧力導入回数の制限によって、診断の機会が得られなくなることがある。この点、同請求項11記載の発明によるように、エバポ経路における経路内圧力の変動積算値が所定の設定値(thα)よりも小さいことを条件に圧力導入手段による診断用圧力の導入及び診断手段による診断を許可する前提条件監視手段を更に備える構成とすれば、実際に診断用圧力を導入することのできる機会は減少する可能性が高いものの、一旦上記の条件が成立して診断用圧力が導入され、且つ診断が開始された場合には、同診断が途中で中止されることなく最後まで遂行される可能性も高くなる。また、こうして診断が完了されれば、少なくとも当該トリップではその後の診断を中止することができ、ひいてはパージ流量も好適に確保されるようになる。
【0039】
また請求項12記載の発明は、請求項11記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記前提条件監視手段は、前記診断手段が診断の対象とする故障の度合いに応じて前記積算値に対する前記所定の設定値(thα)を可変とすることを要旨とする。
【0040】
上記診断手段が診断の対象とする故障の度合いとしては、エバポ経路に生じた穴の孔径の度合い(例えば「1.0mm」孔径程度の穴を診断対象とするか「0.5mm」孔径程度の穴を診断対象とするか)等があるが、このように度合いの異なる複数の故障を診断の対象とする場合には、それら診断の条件も各々異なる条件に設定されることが多い。そしてこのような場合、同請求項12記載の発明によるように、診断手段が診断の対象とする故障の度合いに応じて前記積算値に対する前記所定の設定値(thα)を可変とすることで、例えば「1.0mm」孔径程度の比較的大きな穴を診断の対象とする場合には上記診断用圧力を導入する機会を増やすことができるなど、上記前提条件監視手段を設ける場合であれ、診断の対象とする故障の度合いに応じたより柔軟な運用が可能になる。
【0041】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0042】
図1は、本実施の形態にかかるエバポパージシステム及びその故障診断装置を示す概略構成図である。
【0043】
同図1に示すように、車載されたエンジン10は、燃焼室11、吸気通路12、及び排気通路13を備えて構成され、また実施の形態にかかるエバポパージシステム20は、大きくは、燃料タンク30から発生する燃料蒸気を捕集するキャニスタ40や、その捕集された燃料蒸気をエンジン10の上記吸気通路12にパージするパージ通路71等を備えて構成される。
【0044】
ちなみにエンジン10の運転にあたっては、まず燃料タンク30内に備蓄された燃料が燃料ポンプ31によって汲み出され、燃料供給通路を通じてデリバリパイプ12aに送られた後、同デリバリパイプ12aに装着された燃料噴射弁12bによってエンジン10の吸気通路12に噴射供給される。
【0045】
なお、この吸気通路12において、その上流には、図示しないアクセルペダルの踏み込み操作に基づいて同吸気通路12の流路面積を可変とするスロットルバルブ12cが設けられており、更にその上流には、吸入空気の浄化を行うためのエアクリーナ12d、及びエンジン10への吸入空気量を検出するためのエアフローメータ12eがそれぞれ設けられている。
【0046】
さて、上記エバポパージシステム20にあって、燃料タンク30の天井壁には、圧力センサ32及びブリーザ制御弁33が設けられている。圧力センサ32は、燃料タンク30及び同タンク30と連通する空間の圧力を測定するためのものである。ブリーザ制御弁33は、ダイアフラム式の差圧弁であり、給油時等、燃料タンク30内の圧力がブリーザ通路34内の圧力より所定圧以上高くなるときのみ開弁して燃料蒸気をブリーザ通路34に逃がす仕組みとなっている。このブリーザ通路34は、直接キャニスタ40に連通している。この他、燃料タンク30内の空間は、ブリーザ通路34よりも通路の内径の小さなベーパ通路35にも連通している。このベーパ通路35は、タンク内圧制御弁60を介してキャニスタ40に連通している。タンク内圧制御弁60も、先のブリーザ制御弁33とほぼ同様の機能を有するダイアフラム式差圧弁である。同図1において示すように、タンク内圧制御弁60はその内部に、ダイアフラム61を備える。ダイアフラム61は、燃料タンク30内の圧力がキャニスタ40内の圧力より所定圧以上高くなるときのみタンク内圧制御弁60を開弁させる仕組みとなっている。ちなみに上述したブリーザ制御弁33もこのタンク内圧制御弁60とほぼ同一の構造を有する。
【0047】
キャニスタ40は、その内部に吸着材(活性炭)を備えており、燃料蒸気を該吸着材に吸着させて一時的に蓄えた後、負圧下におかれることによってこの吸着材に吸着させた燃料蒸気を再離脱させることが可能な構成となっている。
【0048】
またキャニスタ40は、上記ブリーザ通路34及びベーパ通路35を介して燃料タンク30と通じている他、上記パージ通路71に連通されるとともに、大気弁70を介して大気導入通路72及び大気排出通路73にも連通している。
【0049】
ここで、上記パージ通路71の通路途中には電磁弁からなるパージ制御弁71aが設けられており、同通路の他端が上記吸気通路12に連通している。
【0050】
一方、大気導入通路72の通路途中にも電磁弁からなる大気導入弁72aが設けられていて、同通路の他端は吸気通路12上流に設けられた上記エアクリーナ12dに連通している。
【0051】
大気弁70は、その内部に、各々が異なる弁機能を有するダイアフラムを2つ備える。まず、第1のダイアフラム74は、その背面側の空間74aがパージ通路71と連通しており、パージ通路71が所定圧以下の負圧状態になると開弁し、大気導入通路72からキャニスタ40内への外気の流入を許容する。一方、第2のダイアフラム75は、キャニスタ40内が所定圧以上の正圧に達すると開弁し、キャニスタ40内から大気排出通路73へ余分な空気を排出させる。
【0052】
キャニスタ40の内部は仕切板41によって2つの吸着材室に区画されており、一方の吸着材室は第1吸着材室42、他方の吸着材室は第2吸着材室43とされている。両吸着材室42、43は吸着材(活性炭)で満たされており、キャニスタ40底部において通気性フィルタ44を介して連通している。上述した燃料タンク30は、一方ではベーパ通路35及びタンク内圧制御弁60を介して、他方ではブリーザ通路34及びブリーザ制御弁33を介して第1吸着材室42に連通するようキャニスタ40に連結されている。また、大気導入通路72及び大気排出通路73は大気弁70を介して第2吸着材室43に連通するようキャニスタ40に連結されている。そして、上記パージ制御弁71aを備えるパージ通路71は、キャニスタ40の上記第1吸着材室42と吸気通路12の上記スロットルバルブ12c下流との間に連結されており、パージ制御弁71aの開弁動作に応じてそれら第1吸着材室42とスロットルバルブ12c下流とを連通する。
【0053】
すなわち、ベーパ通路35やブリーザ通路34から導入された燃料蒸気は、第1吸着材室42内の吸着材に一時的に吸着された後、パージ通路71に運ばれることとなる。また、大気弁70内に備えれられた第2のダイアフラム75が開弁してキャニスタ40内の余分な空気を大気排出通路73へ排出する場合にも、キャニスタ40内の気体中に残留する燃料蒸気は、第1吸着材室42及び第2吸着材室43を通過する際にその内部の吸着材に吸着され、燃料蒸気が外気に漏れることのないしくみとなっている。
【0054】
一方、負圧導入用通路80が、タンク内圧制御弁60の内部及びキャニスタ40の第2吸着材室43側を連絡するよう設けられている。この負圧導入用通路80の通路途中には、電磁弁からなる負圧導入制御弁80aが設けられている。この負圧導入制御弁80aが開弁することにより、負圧導入用通路80はタンク内圧制御弁60の内部と第2吸着材室43とを直接連通する。そして、特にパージ制御弁71aが開弁状態にあり、キャニスタ40内に負圧が導入されている状態で負圧導入制御弁80aを開弁すると、パージ通路71内の空間が、順次、第1吸着材室42→通気性フィルタ44→第2吸着材室43→負圧導入用通路80→タンク内圧制御弁60→ベーパ通路35→燃料タンク30に連通することとなる。また、ブリーザ通路34内の空間も本来第1吸着材室42と連通しているため、パージ通路71と同一空間を共有することとなる。
【0055】
このように、キャニスタ40内に負圧が導入されている状態で負圧導入制御弁80aを開弁することで互いに連通するエバポパージシステム20内の共有空間が同システム20におけるエバポ経路となる。本実施の形態にかかるエバポパージシステムの故障診断装置は、このエバポ経路の漏れの有無を判定することによってその故障の有無を診断することとなる。
【0056】
こうしたエンジン10と、このエンジン10の一部を構成するエバポパージシステム20及びその故障診断装置において、上記圧力センサ32やエアフローメータ12eをはじめとする各種センサの出力は、エンジン10の制御系並びに診断系としての役割を司る電子制御装置(以下、ECUという)50に対し入力される。このECU50は、燃料噴射弁12b、燃料ポンプ31、パージ制御弁71a、大気導入弁72a、及び負圧導入制御弁80a等を駆動制御するとともに、上記エバポ経路の漏れの有無に関する診断処理を実行する。
【0057】
図2は、このECU50のハードウエア構成についてその概要を示したものであり、次に、この図2を併せ参照して、同ECU50の内部構成を説明する。
【0058】
同図2に示すように、ECU50は、上記制御や診断にかかる各種処理を実行するCPU51a、読み出し専用の記憶媒体であるROM51b、読み出しと書き込みが自由な揮発性の記憶媒体であるRAM51c、及び読み込みと書き込みが自由で且つ、バッテリバックアップされることによりエンジン10の停止後も記憶内容が保存される不揮発性の記憶媒体であるバックアップRAM51d等を備えるマイクロコンピュータ51を中心に構成される。
【0059】
このマイクロコンピュータ51の入力ポートには、圧力センサ32やエアフローメータ12eのほか、回転数センサ、気筒判別センサ等、エンジン10の運転制御に必要な各種センサが接続されている。なお、これらセンサのうち上記圧力センサ32やエアフローメータ12e等、A/D(アナログ/ディジタル)変換の必要なセンサの出力はA/D変換回路を介して同入力ポートに取り込まれる。また、同マイクロコンピュータ51の出力ポートには、燃料噴射弁12b、燃料ポンプ31、パージ制御弁71a、大気導入弁72a、負圧導入制御弁80aを駆動する各駆動回路等が接続されている。ECU50は、マイクロコンピュータ51に取り込まれる各センサの出力に基づいて、燃料噴射等エンジン10の運転にかかる各種制御を実行するほか、圧力センサ32からの出力信号を認識しつつ、パージ制御弁71a、大気導入弁72a、及び負圧導入制御弁80aを開閉制御することによってエバポパージシステムの故障診断を実行する。
【0060】
次に、エバポパージシステム20のパージ制御にかかる動作態様について、その概要を説明する。
【0061】
燃料タンク30内に燃料蒸気が発生し、その蒸気圧が所定圧以上に達すると、差圧弁からなるタンク内圧制御弁60が開弁して燃料タンク30からキャニスタ40内への燃料蒸気の流入が許容される。また、例えば燃料供給時のように、燃料蒸気の蒸気圧が燃料タンク30内で急激に高まるような場合には、差圧弁からなるブリーザ制御弁33が開弁して、燃料タンク30からキャニスタ40内へのより大量の燃料蒸気の流入が許容される。
【0062】
キャニスタ40内に流入された燃料蒸気は、同キャニスタ40の内部に充填されている吸着材(活性炭)に一旦吸着される。
【0063】
その後、ECU(電子制御装置)50からの制御信号により適宜パージ制御弁71a及び大気導入弁72aが開弁されると、パージ通路71を介して吸気通路12からキャニスタ40内に吸気負圧が導入されるとともに、大気導入通路72を通じてエアクリーナ12aからキャニスタ40内に新気が導入される。これら負圧及び新気の導入によって、上記吸着材に吸着されている燃料蒸気が離脱し、該離脱した燃料蒸気がパージ通路71を介して吸気通路12にパージされる。
【0064】
次に、上記ECU50が実行するエバポパージシステムの故障診断についてその詳細を説明する。
【0065】
エバポパージシステム20の故障診断を実行するにあたっては、ECU50の制御指令により、大気導入弁72aが閉弁されるとともに、パージ制御弁71a及び負圧導入制御弁80aが開弁される。これらの動作により、キャニスタ40内が大気から遮断されるとともに、同キャニスタ40に吸気通路12からパージ通路71を介して負圧が導入される。また、負圧導入制御弁80aの開弁により、前述のように燃料タンク30、キャニスタ40、ブリーザ通路34、ベーパ通路35、そしてパージ通路71、すなわちエバポ経路内全体が負圧状態となる。そして、このエバポ経路の経路内圧は、燃料タンク30の天井壁に設けられた圧力センサ32によってモニタされる。
【0066】
この状態で一旦パージ制御弁71aを閉弁すると、エバポ経路内が負圧状態のままで密閉される。このときエバポ経路に異常がなければ、燃料タンク30内の燃料が蒸発することにより、エバポ経路内の圧力は、徐々に経路内に残った空気及び燃料蒸気が平衡状態に達したときの圧力に近づいていくこととなる。一方、エバポ経路に漏れがある場合には、エバポ経路内の圧力は急速に外気圧(大気圧)に近づいていくこととなる。このときのエバポ経路内の圧力推移に基づいて、ECU50はエバポパージシステムの故障を診断する。
【0067】
図3(a)は、本実施の形態の故障診断時におけるエバポ経路内圧の推移についてその一部を拡大して示すタイムチャートである。ただしタイムチャート上の全期間において、吸入空気量やその他のパージ制御に影響を及ぼすパラメータは全て一定であるものとする。
【0068】
ECU50が故障診断の動作に入ると、大気導入弁72aを閉弁するとともにパージ制御弁71a及び負圧導入制御弁80aを開弁してエバポ経路全体を所定負圧の負圧状態にした後、パージ通路71を閉鎖して、すなわちパージ制御弁71aを閉弁して同エバポ経路内を密閉状態とする。このとき同図に示すように、まず時刻t0においてエバポ経路への負圧導入を開始すると、その経路内圧はほぼ直線的に減少していく。そして、エバポ経路内圧が所定圧力P1を超える負圧となったことに基づき同経路内を密閉状態にすると、燃料の蒸発によって同経路内圧は上昇を開始する。ちなみに、エバポ経路内に穴開き等の故障がなければ、この圧力上昇は、燃料蒸気(気相)及び燃料(液相)間の関係が平衡状態に達するまで継続する。本実施の形態においては、この圧力上昇に基づき、エバポ経路内圧が再び所定圧力P1に達した時刻t1において、その圧力変化速度ΔP1(mmHg/秒、またはkPa/秒)を測定し、さらにその後、同エバポ経路内圧が所定圧力P2(ただし、P1<P2<大気圧)に達した時刻t2においても、その圧力変化速度ΔP2(mmHg/秒、またはkPa/秒)を測定する。そして、これら測定した圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)、及び所定圧力P2に達したときの圧力変化速度ΔP2に基づき、後に詳述するマップ(図4)を参照して、エバポ経路内に穴開き等の異常がある否かを診断する。
【0069】
一方、図3(b)には、燃料タンク30内の燃料残量が変動すると図3(a)に示した時刻t1以降の圧力上昇態様がどのように変化するかを示す。
【0070】
同図中において、曲線L1〜L3のうち、曲線L1によって示される圧力推移は燃料残量の最も多いときのものであり、曲線L3によって示される圧力推移は燃料残量の最も少ないときのものである。同図に示すように、燃料タンク内の燃料残量が少なくなるにつれて、エバポ経路内圧(タンク内圧)の変化速度は遅くなる傾向にあることが発明者らにより確認されている。
【0071】
また、図3(c)には、エバポ経路に穴開き等に起因する漏れが生じていると、図3(a)に示した時刻t1以降の圧力上昇態様がどのように変化するかを、漏れが生じていない(正常な)場合と比較して示す。
【0072】
同図3(c)中、時刻t1以降の実線で示す圧力推移が漏れ等の生じていない正常なエバポ経路に対応するものであり、一点鎖線で示す圧力推移が漏れの生じているエバポ経路に対応するものである。例えば、漏れのないエバポ経路内に、揮発性燃料(液相)と空気(気相)とが存在しているとき、当該エバポ経路内の圧力を急激に所定負圧下におけば、最初は燃料の蒸気圧によってエバポ経路内の圧力は所定の圧力上昇速度をもって正圧に向かうが、燃料蒸気圧と空気の分圧とが平衡状態に近づくにつれて同圧力の圧力上昇速度は急速に減速し、やがて平衡状態に達する。ところがこのエバポ経路内に漏れがある場合には、経路内の圧力が燃料蒸気と空気とが平衡状態にあるときの全圧よりも一層高い大気圧に向かって上昇し続けるため、同経路に漏れがない場合と比べて、全体的にはより高い圧力上昇速度をもって、しかも見かけ上はその圧力上昇速度が衰えることなく、より直線的に上昇を継続することとなる。すなわち同図に示すように、エバポ経路に漏れが生じている場合には、時刻t1以降の圧力上昇の態様がより直線に近づくこととなる。
【0073】
さらに、同図3(c)に示すように、エバポ経路内の圧力を所定負圧まで減圧して密閉状態にした直後、すなわち時刻t1付近ではエバポ経路が正常である場合の圧力上昇速度が異常である場合の圧力上昇速度を上回っており、その後、逆に異常な場合の圧力上昇速度が正常な場合の圧力速度を上回るようになることが発明者らによって確認されている。このように、エバポ経路の密閉後初期の段階で、正常である場合の圧力変化速度が異常である場合の圧力変化速度を上回るのは、エバポ経路を急激な負圧下におくことにより、燃料タンク内に一時的に高密度の燃料蒸気が発生するためであると推測される。
【0074】
これら図3(a)〜(c)に示したように、エバポ経路の所定負圧への減圧完了後、時刻t1以降の圧力上昇態様には以下の特性がある。
【0075】
・特性(a1):圧力の上昇速度は気相−液相の二相間の関係が平衡に近づくにつれて緩慢となる。例えば圧力がP1のときの圧力変化速度ΔP1は、圧力がP2のときの圧力変化速度ΔP2より大きい(図3(a)参照)。
【0076】
・特性(a2):圧力の上昇速度は燃料タンク内の燃料残量が少ないほど遅く、多いほど速い(図3(b)参照)。
【0077】
・特性(a3):エバポ経路に漏れがあってその密閉性が十分でなければ、外気(大気)の進入によって圧力の上昇速度が速くなり、且つ直線的に上昇していく傾向がある(図3(c)参照)。すなわち圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)は限りなく「1.0」に近づくようになる。
【0078】
・特性(a4):エバポ経路に漏れのある場合の圧力の上昇速度の推移と、漏れのない場合の圧力変化速度の推移とを比較すると、時刻t1直後には漏れのない場合の圧力変化速度が漏れのある場合の圧力変化速度を上回っており、その後、逆に漏れのある場合の圧力変化速度が漏れのない場合の圧力変化速度を上回るようになる(図3(c)参照)。
【0079】
そこで、上記特性(a1)〜(a4)を勘案して、本実施の形態では、エバポパージシステムの故障診断(漏れ検出)にあたり、図4に示すマップを適用することとしている。
【0080】
図4は、先の図3(a)の説明において示した故障診断動作によって得られる情報に基づき、エバポパージシステムの正常(漏れ無し)または異常(漏れ有り)を判定するために参照する判定マップを示す。
【0081】
同マップにおいては、先の図3(a)〜(c)で用いた圧力変化速度ΔP1に対する圧力変化速度ΔP2の比(ΔP1/ΔP2)を横軸のスケールとし、エバポ経路への負圧導入後、同経路内の圧力が所定圧力P2に達したときの圧力変化速度ΔP2を縦軸のスケールとする。以下、同判定マップを用いて正常・異常判定を行うにあたり、適用される判定基準の設定方法を概念的に説明する。
【0082】
まず、エバポパージシステムの異常を判定するにあたって、圧力変化速度ΔP2に着目すると、該圧力変化速度ΔP2が大きいほどシステムに異常(漏れ)のある可能性が高い。また、上記比(ΔP1/ΔP2)に着目すると、同比(ΔP1/ΔP2)が大きいほどシステムは正常(漏れ無し)である可能性が高い。これらの判断は、上記特性(a3)及び(a4)に鑑みてなされるものである。このため、所定圧力P2に達したときの圧力変化速度ΔP2としては、上記特性(a4)での記載に照らせば、漏れのある場合の圧力変化速度が漏れのない場合の圧力変化速度を上回った後の圧力変化速度が適用されなければならない。そこでこの所定圧力P2は、同条件に見合うように予め実験等を通じて設定されることとなる。
【0083】
ここで、同図4に示すように、本実施の形態では、圧力変化速度ΔP2が所定速度S2以上であれば、無条件に異常と判定する。一方、圧力変化速度ΔP2が所定速度S1未満であると、正常である可能性が高い。圧力変化速度ΔP2が所定速度S1以上S2未満の領域は、中間領域であり、基本的には判定保留の領域とする。
【0084】
また、上記特性(a3)に照らせば、比(ΔP1/ΔP2)が小さいほど(「1.0」に近づくほど)エバポ経路に異常のある疑いが強い。そこで例えば、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R2以下であると異常のある可能性があり、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R2より小さい所定値R1以下であればその可能性が一層大きくなると言えるような所定値R1及びR2を予め決めておく。これら所定値R1及びR2も、実験等を通じて設定される。例えば、漏れのないエバポ経路内に、揮発性燃料(液相)と空気(気相)とが存在しているとき、当該エバポ経路内の圧力を急激に所定負圧下におけば、最初は燃料の蒸気圧によってエバポ経路内の圧力は所定の上昇速度をもって正圧に向かうが、蒸気圧の分圧と空気の分圧とが平衡状態に近づくにつれて同圧力の圧力上昇速度は急速に減速し、やがては平衡状態に達する。このとき、その圧力上昇速度が衰えることなくエバポ経路内圧が上昇を継続すれば、エバポ経路に漏れがある疑いが強いということは図3(c)においても説明した通りである。ちなみに比(ΔP1/ΔP2)が「1.0」であるということは、圧力変化速度が全く衰えず直線的に内圧が上昇し続けていることを意味し、同比が大きくなるほどエバポ経路内圧の圧力変化速度は急速に減速していることを意味する。本実施の形態においては、圧力変化速度ΔP2の所定値S1を「0.05kPa/秒(キロパスカル/秒)」程度、所定値S2を「0.13kPa/秒」程度に設定するとともに、比(ΔP1/ΔP2)についてはその所定値R1を「1.5」程度、所定値R2を「2.0」程度に設定し、圧力変化速度ΔP2が所定値S1以上で且つ所定値S2未満である判定保留領域のうち、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R1以下である領域は異常判定領域と設定している。なお、上記各所定値S1、S2及びR1、R2の値はエバポ経路の容積等によって異なり、最適値は実験等で容易に求まる。
【0085】
一方、圧力変化速度ΔP2が所定値S1未満である領域は、本来はシステムが正常であると判定できる領域であるが、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R2である範囲を上限として同比が小さくなるほど異常の疑いが強まることは上述した通りである。また、圧力変化速度ΔP2が遅いほどシステムは正常である可能性が高くなることも上述した。
【0086】
そこで本実施の形態では、同図4において座標(R0,0),(R0,S1),(R2,S1)で囲まれた領域(α)も判定保留領域として設定する。
【0087】
ちなみに、図3(c)に例示したエバポ経路に異常(漏れ)がある場合の圧力推移と異常(漏れ)がない場合の圧力推移とを判別するにあたり、上記2点間の圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に代えて、2点間の圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)を適用した場合には、異常判定領域、正常判定領域、及び判定保留領域の境界の的確な区分も困難となる。
【0088】
例えば、エバポ経路内の圧力変化速度ΔP1が「2A」、圧力変化速度ΔP2が「A」である第1の圧力推移と、エバポ経路内の圧力変化速度ΔP1が「4A」、圧力変化速度ΔP2が「3A」であるという第2の圧力推移とを比較した場合(ただし、Aは任意の測定値)、第1の圧力推移下での圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)は、
2A−A=A …(1)
となり、第2の圧力推移下での圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)も
4A−3A=A …(2)
となるように、本来明らかに異なる圧力推移に対してもそれら両推移条件間の差異は生じない。
【0089】
これに対し、上記第1の圧力推移下での圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)は、
2A/A=2/1 …(3)
となり、上記第2の圧力推移下での圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)は、
4A/3A=4/3 …(4)
となるように、それら両推移条件間にその推移態様に応じた明確な差異が生じるようになる。
【0090】
すなわち、上記両推移条件下における圧力変化速度の初期値(ΔP1)や終値(ΔP2)が異なっていても、その変化量が同一である場合には、圧力変化速度の差によってはそれらの違いを識別することができない。これに対し、上記両推移条件下での圧力変化速度の比を比較すれば、それら両推移条件の違いを明確に判別することができるようになる。
【0091】
実際、図4に例示したマップ上において、圧力変化速度ΔP2が所定値S1〜S2の範囲の値を取る場合、圧力の変化速度の比(ΔP1/ΔP2)が「2/1」=「2.0」≒R2となる上記第1の圧力推移に関してはこれを「判定保留とし、また同圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)が「4/3」≒「1.3」<R1となる上記第2の圧力推移に関してはこれを「異常判定」とすることができる。しかし、圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)を採用する場合には、上記第1及び第2の圧力推移についてその結果が共に「A」となることから、それら圧力推移について明確な診断を下すことが困難となる。
【0092】
以上、システムの正常・異常判定にかかる判定マップについて、その判定基準の設定態様について説明した。
【0093】
次に、同判定マップを利用して行うエバポパージシステムの故障診断の実際の手順について、フローチャートを参照して詳細に説明する。
【0094】
図5は、エバポパージシステムに異常(漏れ)が発生していないか否かを監視するための「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートである。本ルーチンは、ECU50により所定時間毎に周期的に実行される。
【0095】
さて、処理がこのルーチンに移行すると、ECU50はまずステップ1000において、故障診断の前提条件が成立しているか否かを判断する。具体的には、以下に例示列記する各条件(b1)〜(b3)が全て満たされているときにのみ故障診断の前提条件が成立しているものとみなす。
【0096】
(b1)空燃比A/Fに乱れがないこと。
【0097】
(b2)車速が安定していること。
【0098】
(b3)空燃比制御やパージ制御等にかかる各種学習値の登録が一旦完了していること。
【0099】
なお図1では便宜上、上記空燃比A/Fを検出するための空燃比センサ(酸素センサ)や車速を検出するための車速センサ等についての図示を割愛した。
【0100】
そしてECU50は、上記条件(b1)〜(b3)がすべて満たされていると認識すればその処理をステップ1001に移行し、1つでも満たされていないと認識すれば本ルーチンを一旦抜ける。
【0101】
ステップ1001においては、パージ制御弁71a及び負圧導入制御弁80aを開くとともに、大気導入弁72aを閉じる。このため、エバポ経路の外部への連通は吸気通路12に対してのみとなり、大気への直接の連通路は遮断されることとなる。その結果、同エバポ経路内に負圧が導入され、減圧されていくこととなる。この後、ECU50は、エバポ経路内での減圧が進んでその経路内圧力が前記所定圧力P1(P1<大気圧)以下に達したことを認識する。なお、ステップ1001でのこうした処理は、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が上記所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。
【0102】
そして続くステップ1002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔPをモニタしていく。なお、上記パージ制御弁71aの閉弁操作によってエバポ経路内は当初所定圧力P1の状態下にあるが、燃料タンク内の燃料の蒸気圧によって徐々に上昇していくことは前述した。
【0103】
さらに続くステップ1003では、エバポ経路内の圧力が所定値P1から所定値P2に達するまでに要する所要時間ΔTが所定時間ΔT1(例えば60秒)を上回っているか否かを判断する。
【0104】
ここで、先の図3に対応する図として図6に例示するように、もしエバポ経路に漏れがなければ、燃料タンク30内の燃料の蒸発のみによって同経路内の圧力上昇が起こることとなるため、この所要時間ΔTが上記時間ΔT1等、ある程度以上長ければ、エバポ経路に漏れがないと確定でき、より緻密な判定基準に頼るまでもない。すなわち、この所定時間ΔT1は、エバポ経路に漏れがないと確定するに十分な長さの時間として設定され、予め実験等により求められる。
【0105】
そこで本実施の形態では、同ステップ1003における判断が肯定であった場合、ECU50は、エバポ経路内の圧力の上昇が燃料タンク30内の燃料の蒸発のみに起因して起こり、外気(大気)の流入によって圧力の上昇が促進されるようなことは無かったことを認識する。すなわちECU50は、このステップ1003での判断が肯定であれば処理をステップ1004に移行し、同エバポ経路は正常であるとの判定を行った上で、本ルーチンを抜ける。
【0106】
一方、同ステップ1003での判断が否定であった場合、ECU50はその処理を続く診断手順であるステップ1005に移行する。
【0107】
ステップ1005では、エバポ経路内圧が所定値P2に達したか否かを判断し、該所定値P2に達していれば、ステップ1006において、先にエバポ経路内の圧力が所定圧P1に達した直後の所定時間ΔTs(例えば5秒間:図6)での圧力変化速度ΔP1と、同経路内圧力が所定圧P2に達した直後の所定時間ΔTs(例えば5秒間:図6)間での圧力変化速度ΔP2をそれぞれ認識する。そして、それら両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)を算出する。
【0108】
ステップ1007においては、上記ステップ1006において認識した圧力変化速度ΔP2及び比(ΔP1/ΔP2)に基づき、先の図4に示した判定マップを参照して、エバポ経路の異常(穴あり)または正常(穴なし)を判定するか、若しくは判定を保留する。
【0109】
すなわち、先の図4においても説明したように、基本的には圧力変化速度ΔP2が所定値S2以上である場合にはエバポ経路に異常があり、所定値S1未満である場合にはエバポ経路は正常であるとし、所定値S1以上で且つ所定値S2未満である場合には判定を保留する。ただし、この判定保留の範囲内であっても、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R1以下である場合にはエバポ経路に異常がある旨判定する。さらに、圧力変化速度ΔP2が所定値S1未満であっても、比(ΔP1/ΔP2)との兼ね合いで規定される判定マップ上の座標が図4中のいわゆる領域αに属する場合には判定を保留することも先の図4において説明した通りである。
【0110】
本実施の形態では、上記のような手順に基づいてエバポ経路の故障診断を実行する。そして上記説明から明らかなように、同故障診断においては、基本的にはエバポ経路内圧が所定圧力P2にあるときの圧力変化速度ΔP2に基づいてシステム20の故障を診断する。ただし、エバポ経路を所定圧力P2まで減圧したところでいきなり圧力変化速度の測定を開始するのではなく、圧力推移の態様が安定するようしばらく間をおいた後に測定を開始できる構成としている。すなわち、まずエバポ経路内圧を圧力P2より低い圧力P1まで一旦減圧し、同圧力P1から圧力P2を通過して上昇を続ける圧力上昇の過程をモニタする。そして、エバポ経路内圧が圧力P1にあるときの圧力変化速度ΔP1を演算するとともに、圧力P2にあるときの圧力変化速度ΔP2に対する変化率(ΔP1/ΔP2)をも考量して圧力推移の異常の有無を検出することとしている。
【0111】
ちなみに、エバポ経路内圧が圧力P2付近にあるときの圧力変化速度のみを判断基準としてエバポ経路の漏れを診断しようとすると、エバポ経路内の条件によっては以下のような問題が生じることがある。
【0112】
例えば、同じく先の図3に対応する図として図7に例示するように、
(条件1):揮発性の高い燃料が燃料タンクに入っている場合、または燃料残量が多い場合、またはその両方の組み合わせにおいて、エバポパージ経路が正常である場合。
【0113】
(条件2):揮発性の低い燃料が燃料タンクに入っている場合、または燃料残量が少ない場合、またはその両方の組み合わせにおいて、エバポ経路に上記孔径に0.5mm程度の微小な穴が空いている場合。
といった2条件にあっては、エバポ経路内圧が圧力P2にあるときの両者の圧力変化速度(各線の傾き)ΔP2に明確な差異が顕れないため、この圧力変化速度のみを判断基準としたのでは誤判定を生じ易い。
【0114】
この点、同診断に上記圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の組み合わせを適用する本実施の形態の故障診断装置によれば、その信頼性も自ずと高いものとなり、上記孔径0.5mm程度の微小な穴による漏れの有無も十分に判別できるようになる。
【0115】
さらに本実施の形態では、上記構成に加えて、特に揮発性の低い燃料が用いられる場合、あるいは燃料残量が少ない場合に頻発するケースとして、エバポ経路に漏れがなく経路内圧の上昇速度が遅い場合、すなわち所定圧P2に達するまでに要する時間ΔTが十分長い場合には(ΔT>ΔT1)、経路内圧が所定値P2に達するのを待つまでもなく正常判定をおこなうこととしている。このため、エバポ経路が正常な場合にはその判定時間も短縮されるようになる。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下のような効果が奏せられるようになる。
【0117】
(1)燃料タンク内の燃料の性状や燃料残量の相違等、エバポパージシステム内の燃料蒸気の状態が異なる場合であれ、信頼性の高い故障診断が行われるようになる。
【0118】
(2)互いに微小な圧力差しかない2つの測定点での圧力推移から、正確な故障診断を行うことができるようになる。
【0119】
(3)エバポ経路内に漏れがないことが確実なときには、その旨を早期に判断することができるようになる。またこれにより、故障診断にかかる一連の処理をより高い頻度で繰り返すことができるようにもなる。よって故障診断の信頼性が一層増す。
【0120】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0121】
上述のように、エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力P1から第2の所定圧力P2に移行するまでに十分な時間を要するとすれば、第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1と第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)、あるいは第2の圧力変化速度ΔP2をとるまでもなく、エバポ経路内に漏れのないことを確定することができる。
【0122】
またこの傾向が更に顕著である場合には、先の第1の実施の形態において設定した上記所定時間ΔT1の経過を必ずしも待たなくとも、当該エバポ経路を故障無しと診断することが可能となる場合がある。すなわち、エバポ経路内に漏れがなく、且つ燃料タンク内での燃料蒸気発生量が少ない場合には、診断用圧力導入後におけるエバポ経路内の圧力変化も極めて僅かなものとなる。
【0123】
このことを更に詳述すると、先の図3あるいは図6に対応する図として図8に例示するように、エバポ経路が正常であったとしても、燃料の性状や燃料残量等に応じた燃料タンク内での燃料蒸気発生量によっては、吸気負圧導入後におけるエバポ経路内の圧力推移も各種異なったものとなる。すなわち、燃料タンク内での燃料蒸気発生量が比較的多い場合には図8に特性線L21として示すような圧力推移となり、同燃料蒸気発生量が少ない場合には図8にL22として示すような圧力推移となり、同燃料蒸気発生量が更に少ない場合には図8にL23として示すような圧力推移となる。
【0124】
そして、上記特性線L21として示す圧力推移については、
(イ)エバポ経路内での第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1と第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)、及び第2の圧力変化速度ΔP2によって定まる点が図4に例示したマップにおいて「正常判定」領域にあること。
に基づいて同圧力推移が正常である旨を判定することができ、また、上記特性線L22として示す圧力推移については、
(ロ)エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力P1から第2の所定圧力P2に移行する以前に所定時間ΔT1が経過したこと。
に基づいて同圧力推移が正常である旨を判定することができることは、先の第1の実施の形態において説明した通りである。
【0125】
しかし、上記特性線L23として示す圧力推移のように、その圧力変化が極めて僅かである場合には、上記所定時間ΔT1の経過を必ずしも待たなくとも、同図8に併せ示すように、
(ハ)エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力P1に達した時点から所定時間ΔThの経過後、同圧力が第2の所定圧力P2よりも第1の所定圧力P1に近い第3の所定圧力Ph未満にあること。
をもって同圧力推移が正常である旨を判定することができるようになる。しかもこの場合には、上記第3の所定圧力Phの設定に応じて上記所定時間ΔThを極めて短い時間に設定することが可能となり、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときに、これを更に早い機会に判断することができるようになる。
【0126】
そこで、この第2の実施の形態では、先の第1の実施の形態による上記(イ)及び(ロ)の診断に併せて、上記(ハ)の診断をも行うようにする。
【0127】
図9は、こうした第2の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、この図9を併せ参照して同第2の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の第1の実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン(図5)」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0128】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50はまず、ステップ2000及び続くステップ2001において、先の第1の実施の形態の故障診断ルーチンにおけるステップ1000及び続くステップ1001で行う処理と同様の処理を行う。すなわち、まずステップ2000においては故障診断の前提条件が成立しているか否かを判断し、その判断が肯定ある場合に限り処理をステップ2001に移行し、その判断が否定である場合には一旦本ルーチンを抜ける。ステップ2001においては、パージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、ステップ2001でのこうした処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。
【0129】
続くステップ2002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔPをモニタしていく。
【0130】
さらに続くステップ2003では、エバポ経路内の圧力が所定値P1に達した時点から図8に示した上記所定時間ΔTh(例えば15秒)が経過したか否かを判断し、該所定時間ΔThを経過していれば、次のステップ2004で、エバポ経路内の圧力がこれも図8に示した上記第3の所定圧力Ph未満にあるか否かを判断する。
【0131】
そして、このステップ2004において、エバポ経路内の圧力が上記所定圧力Ph未満にある旨判断される場合には、処理をステップ2005に移行し、エバポ経路は正常であるとの判定を行った上で、本ルーチンを抜ける。
【0132】
こうして、エバポ経路の経路内圧力が所定値(第1の所定圧力)P1に達した時点から所定時間ΔThの経過後、同圧力が第3の所定圧力Ph未満にあることをもってその圧力推移が正常、すなわちエバポ経路内が正常である旨を判定することができることは図8を参照して上述した通りである。そしてこの場合には、上記所定時間ΔThも先の所定時間ΔT1に比べて極めて短い時間に設定されることから、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときに、これを更に早い機会に判断することができるようになることも上述した。
【0133】
他方、上記ステップ2003及び2004において、上記所定時間ΔTh経過後、エバポ経路内の圧力が上記所定圧力Ph以上である旨判断される場合には、ステップ2006〜2009の処理を通じて、先の第1の実施の形態のステップ1003(図5)以降の処理と同様の手順のもとに、当該エバポ経路の診断動作が実行される。
【0134】
すなわち、エバポ経路内の圧力が所定値P1から所定値P2に達するまでに要する所要時間ΔTが所定時間ΔT1(例えば60秒)を上回る場合には、エバポ経路内の圧力の上昇が燃料タンク30内の燃料の蒸発のみに起因して起こり、大気の流入によって圧力の上昇が促進されるようなことは無かったとして、ステップ2005を通じてエバポ経路は正常であるとの判定を行った上で、本ルーチンを抜ける。
【0135】
一方、エバポ経路内の圧力が上記所定時間ΔT1以内に所定値(第2の所定圧力)P2に達した場合には、この所定値P2に達したときの圧力変化速度ΔP2及び前記圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、先の図4に示した判定マップを参照して、エバポ経路の異常(穴あり)または正常(穴なし)を判定するか、若しくは判定を保留する。
【0136】
このように、エバポ経路の診断に上記圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の組み合わせを適用することによって、前述したように、燃料タンク内の燃料の性状や燃料残量の相違等に拘らず、例えば孔径0.5mm程度の微小な穴による漏れの有無についても、これを十分な精度をもって判別できるようになる。
【0137】
以上説明したように、上記手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態による前記(1)〜(3)の効果に加えて、更に以下のような効果が奏せられるようになる。
【0138】
(4)エバポ経路内に漏れがないことが確実なとき、前記所定時間ΔT1よりも更に短い時間ΔThをもって、その旨をより早期に判断することができるようになる。
【0139】
(5)また、こうしてエバポ経路内に漏れがないときの正常判定の実行が促進されることで、上記圧力変化速度ΔP2の算出時に何らかの外乱が発生して誤判定されるようなおそれも未然に抑制されるようになる。
【0140】
(6)また、こうした故障診断装置を備えるエバポパージシステムにあっては、少なくともその診断中、吸気通路12(図1)へのパージを行うことができないため、こうした診断が頻繁に繰り返される場合には、パージ流量の確保が困難となることがある。この点、同第2の実施の形態の装置では、エバポ経路正常時の診断時間が上記極めて短い時間ΔThに短縮されるため、パージ流量の確保も容易となる。
【0141】
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第3の実施の形態について、上記第1及び第2の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0142】
こうしたエバポパージシステムの故障診断装置にあっては、同システムを搭載する車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動すると、エバポ経路の経路内圧力も変動し、その診断内容に支障をきたすことがある。
【0143】
そこで、この第3の実施の形態の装置では、診断中、エバポ経路内を密閉状態にしている際、同エバポ経路内の圧力及び圧力変化速度のモニタリングに加え、エバポ経路内の圧力変動レベルの把握も併せて行うようにする。なおここでいうエバポ経路内の圧力変動レベルとは、圧力センサ32(図1)を通じて検出される圧力の所定の微小時間における変化量の2階差分値(ΔΔP)であり、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、揺動等による燃料蒸気圧の変動を反映するパラメータとなっている。
【0144】
そしてこの第3の実施の形態では、このような圧力変動レベルを逐次把握するとともに、予めこの圧力変動レベルの違いに応じて、先の図4に示した判定マップを例えば図10(a)〜(c)に例示する態様でアレンジした複数のマップを用意しておき、それら複数のマップを選択的に適用してエバポパージシステムの故障診断を行う。
【0145】
ここで、図10(a)は、アイドル状態など最も低い圧力変動レベルに対応して選択される判定マップを示し、また図10(c)は、診断の継続を許容できる範囲内での最も高い圧力変動レベルに対応して選択される判定マップを示し、そして図10(b)は、それら圧力変動レベルの中間レベルに対応して選択される判定マップを示す。
【0146】
これら各判定マップにおいても、異常、正常または判定保留の何れかを決めるための判定基準は、先の図4に示した判定マップと同様の概念に基づくが、この第3の実施の形態で適用する複数のマップ上では同図10(a)〜(c)に示されるように、圧力変動レベルが小さいほど判定保留の領域を狭め、圧力変動レベルが大きいほど判定保留の領域を拡大するようにしている。
【0147】
このような複数の判定マップの選択的な適用により、例えば走行時の加減速、旋回やレーンチェンジ、若しくは路面の荒れなどに起因して圧力変動レベルが大きくなるとき、すなわち外乱によって誤判定の可能性が高くなるときには、判定保留となるか、若しくは確実に異常または正常を判断できる領域でのみ異常あるいは正常の判定が行われることとなる。一方、アイドル時などのように圧力変動レベルが小さいとき、すなわち外乱の小さな条件下では、異常または正常の何れかにかかる判定がより行われやすくなる。
【0148】
図11は、こうした第3の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、同図11を併せ参照して同第3の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の第1あるいは第2の実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン(図5、図9)」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0149】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50はここでも、ステップ3000及び続くステップ3001において、先の第1の実施の形態の故障診断ルーチンにおけるステップ1000及び続くステップ1001で行う処理と同様の処理を行う。すなわち、まずステップ3000においては故障診断の前提条件が成立しているか否かを判断し、その判断が肯定ある場合に限り処理をステップ3001に移行し、その判断が否定である場合には一旦本ルーチンを抜ける。ステップ3001においては、パージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。ステップ3001でのこうした処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われることは先の実施の形態の場合と同様である。
【0150】
続くステップ3002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔP及び圧力変動をモニタしていく。圧力変化速度ΔPのモニタは、第1の実施の形態の診断ルーチンにおけるステップ1002での処理内容と同一であるが、本ステップ3002では圧力変動を併せてモニタする点で前記ステップ1002にかかる処理とは異なる。
【0151】
そして、ステップ3003では、ここでモニタされる圧力変動が所定レベル以上大きいか否かを判断し、所定レベル以上に大きなものであれば、今回の診断は見合わせ一旦本ルーチンを抜けることとなる。
【0152】
また、診断を継続するに場合には、第1の実施の形態の診断ルーチンにおけるステップ1005及び1006と同一の処理、すなわちエバポ経路内の圧力が所定値P2に達したことの確認のもとに(ステップ3004)、圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出を行う(ステップ3005)。
【0153】
そして続くステップ3006において、圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、判定マップを参照してエバポ経路の正常・異常を判定する。ただし、このときには上述のように、図10(a)〜(c)に例示する態様で用意された複数のマップを選択的に適用して同エバポ経路の故障診断を行う。
【0154】
このような複数の判定マップの選択的な適用により、車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動し、エバポ経路の経路内圧力が変動することとなっても、その変動度合いに応じて診断基準が可変とされ、漏れ診断にかかる診断精度が好適に保持されるようになる。
【0155】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第3の実施の形態によれば、第1あるいは第2の実施の形態による前記(1)及び(2)の効果に加えて、更に以下のような効果が奏せられるようになる。
【0156】
(7)エバポ経路内の圧力変動度合い(圧力変動レベル)に応じた信頼性の高いエバポパージシステムの故障診断を行うことができるようになる。
【0157】
(8)実路走行時における車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因するエバポ経路内の圧力変動に柔軟に対応し、精度の高い診断をより高い頻度をもって行うことができるようになる。
【0158】
(9)外乱によって誤判定の可能性が高くなるときには、判定保留とされるか若しくは確実に異常または正常を判断できる領域でのみ異常あるいは正常の判定が行われることとなる。
【0159】
(10)エバポ経路の経路内圧力の変動度合いが所定以上となるときには診断を中断するようにしたことで、確実にシステムの正常・異常を診断できる条件が整わない状態でのあいまいな診断を回避することができるようにもなる。
【0160】
なお、同第3の実施の形態においては、エバポ経路内の圧力変動度合い(圧力変動レベル)に応じて図10(a)〜(c)に例示したような複数の判定マップを用意するとしたが、圧力変動の補償を行うのに、必ずしもこうした判定マップを複数用意する必要はない。すなわち、判定マップとしては先の図4に例示した単一のマップを用意し、同マップの、図10(a)〜(c)に各々領域Zとして示した部分を上記圧力変動度合い(圧力変動レベル)に応じて順次かさ上げ補正することとしても、上記に準じた効果を得ることはできる。
【0161】
(第4の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第4の実施の形態について、上記第3の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0162】
上述のように、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動すると、エバポ経路の経路内圧力が変動することがある。
【0163】
ただし、上記診断は、エバポ経路内での第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1と第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)、及び第2の圧力変化速度ΔP2に基づいて行われることから、上記経路内圧力の変動度合いに応じた診断基準の変更も、実質的にはこれら各圧力変化速度ΔP1及びΔP2の算出期間中における同経路内圧力の変動度合いに応じて行われることで必要十分である。
【0164】
そこで、この第4の実施の形態では、先の図3あるいは図6に対応する図として図12に示すように、エバポ経路に対する吸気負圧導入後の全診断区間のうち、上記第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TAと上記第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TBとの2つの区間に限って上記経路内圧力の変動度合い(圧力変動レベル)をモニタする。
【0165】
そして、これらモニタした圧力変動レベルが各々診断の継続を許容できる所定の範囲内に収まっていた場合には、図13に示すように、上記区間TBでの圧力変動レベルの積算値(揺れ量)ΣΔΔPに応じて、その診断基準を可変とする。具体的には、上記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域を、同図13に示される態様でかさ上げ補正する。
【0166】
なおここで、上記圧力変動レベルが圧力センサ32(図1)を通じて検出される圧力の所定の微小時間における変化量の2階差分値(ΔΔP)であり、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、揺動等による燃料蒸気圧の変動を反映するパラメータとなっていることは上述の通りである。そして、この2階差分値(ΔΔP)の積算値が上記揺れ量ΣΔΔPとなる。
【0167】
また、図13に示す揺れ量ΣΔΔPに応じた異常判定域のかさ上げ補正マップは、先の図4に例示した判定マップに対し、この揺れ量ΣΔΔPといった三次元的な要素が加わることとなるが、同図13に示される異常判定域のかさ上げ補正態様とは、二次元的には、先の図10(a)に例示した判定マップから同図10(c)に例示した判定マップまで、それらに付記した領域Zの部分を上記揺れ量ΣΔΔPに応じて連続的に変更していくことに相当する。
【0168】
図14は、こうした第4の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、この図14を併せ参照して同第4の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の第1あるいは第2の実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン(図5、図9)」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0169】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、ステップ4000及び続くステップ4001において、先の各実施の形態の故障診断ルーチンと同様、故障診断の前提条件が成立しているか否かの判断、及びその判断が肯定あることを条件にパージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い、吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、これまでの実施の形態と同様、ステップ4001の処理は、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。
【0170】
続くステップ4002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔP及び圧力変動をモニタしていく。
【0171】
そして、ステップ4003では、上記所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TAに限って、そこでモニタされる圧力変動が所定レベル以上大きいか否かを判断し、同モニタされる圧力変動が所定レベル以上に大きなものであれば、今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0172】
また、診断を継続するに場合には、続くステップ4004において上記所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TBに到達したか否かを判断し、該区間TBに到達している旨判断される場合には、次のステップ4005にて、同区間TBでモニタされる圧力変動が所定レベル以上大きいか否かを判断する。そして、このモニタされる圧力変動が所定レベル以上に大きなものであれば、上記ステップ4003での処理と同様、今回の診断は見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0173】
なお、少なくとも上記ステップ4005において今回の診断が見合わせとなる場合とは、図13に例示したマップにおいて、上記揺れ量ΣΔΔPが「判定やり直し」の領域に入る程度に、上記区間TBでモニタされる圧力変動が大きかった場合に相当する。上記ステップ4003において今回の診断が見合わせとなる条件も概ねこれに準じたものとなっている。
【0174】
そして、上記ステップ4005において上記区間TBでモニタされる圧力変動が所定の許容範囲内に入っている旨判断される場合には、続くステップ4006において、先の図4に例示した判定マップに対し、図13に例示した態様で、同区間TBでの揺れ量ΣΔΔPに応じた補正が行われる。すなわち、上記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域に対し、同揺れ量ΣΔΔPに応じて図13に例示した態様でのかさ上げ補正が行われる。
【0175】
こうして必要に応じてマップ補正が行われた後は、次のステップ4007において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、さらに次のステップ4008において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、上記補正された判定マップを参照してエバポ経路の正常・異常が判定される。
【0176】
同診断ルーチンにあってはこのように、エバポ経路に対する吸気負圧導入後の全診断区間のうち、診断に用いる圧力変化速度の算出区間である区間TAと区間TBとに限って同経路内の圧力変動レベルがモニタされるとともに、上記区間TBでの圧力変動レベルの積算値(揺れ量)ΣΔΔPに応じてその診断基準が可変とされる。このため、上記経路内圧力の変動度合い監視にかかるより小さな演算負荷のもとに上記診断基準の変更、並びに該診断基準の変更に基づく診断精度の補償が行われるようになる。
【0177】
また、上記経路内圧力の変動度合いが所定以上となるときに当該診断を中断する場合であれ、上記区間TA及びTB以外の経路内圧力の変動度合いによって同診断が中断されることはないため、実路走行中における診断機会(診断頻度)の増大が図られることともなる。
【0178】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第4の実施の形態によっても、第1あるいは第2の実施の形態による前記(1)及び(2)の効果に加えて第3の実施の形態による前記(7)〜(10)の効果が奏せられるとともに、更に以下のような効果も併せ奏せられるようになる。
【0179】
(11)エバポ経路内の圧力変動度合いの監視にかかるより小さな演算負荷のもとに上記診断基準の変更、並びに該診断基準の変更に基づく診断精度の補償が行われるようになる。
【0180】
(12)上記経路内圧力の変動度合いが所定以上となるときに当該診断を中断する場合であれ、上記区間TA及びTB以外の経路内圧力の変動度合いによって同診断が中断されることはないため、実路走行中における診断機会(診断頻度)の増大が図られ、ひいては故障診断にかかる更なる信頼性の向上が図られることともなる。
【0181】
なお、この第4の実施の形態にあっては、所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出期間ΔTsを上記区間TBとしたが、同区間TBについては必ずしもこれを上記圧力変化速度ΔP2の算出期間ΔTsに一致させる必要はない。例えば、上記圧力変化速度ΔP2の算出以前にRAM51c(図2)等に記憶されている圧力変動レベル(ΔΔP)の値を併せ加味することとして、上記マップ補正にかかる精度や信頼性の更なる向上を図るようにしてもよい。
【0182】
(第5の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第5の実施の形態について、上記第1〜第4の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0183】
上記圧力センサ32(図1)としては通常、大気圧との相対圧を検出するタイプのセンサが用いられることから、車両の登坂走行中や降坂走行中には、それら大気圧の変化に応じて上記検出されるエバポ経路の経路内圧力も変化する。
【0184】
すなわち、車両の登坂走行中には、その登坂に伴ってエバポ経路の経路内圧力が上昇するようになることから、例えば図15(a)に実線U1として示すような平路走行中には正常である旨診断される圧力推移も、該登坂走行時には、同図15(a)に破線U2として示すような上昇傾向の圧力推移となり、誤って異常と診断されるおそれがある。ただしこの場合であれ、エバポ経路にそもそも異常があるような場合には、こうした圧力推移の変化も特に問題とはならない。
【0185】
また逆に、車両の降坂走行中には、その降坂に伴ってエバポ経路の経路内圧力が下降するようになることから、例えば図15(b)に実線D1として示すような平路走行時には異常(微小な穴開き)である旨診断される圧力推移も、該降坂走行中には、同図15(b)に破線D2として示すような下降傾向の圧力推移となり、誤って正常と診断されるおそれがある。ただしこの場合であれ、エバポ経路がそもそも正常であったような場合には、こうした圧力推移の変化も特に問題とはならない。
【0186】
他方、例えば一定の車速のもとでの登坂時にはエンジン負荷の増大に伴って同エンジンの吸入空気量が増大し、逆に一定の車速のもとでの降坂時にはエンジン負荷の減少に伴って同エンジンの吸入空気量が減少する。すなわち、車速がほぼ一定であった場合には、エンジンの吸入空気量を監視することで、同車両が登坂走行中であるか、あるいは降坂走行中であるかを判断することができる。
【0187】
そこで、エバポパージシステムの故障診断に際しても、先の図3あるいは図6に対応する図として図16に示すように、例えば
・車速がほぼ一定である条件のもとでのエバポ経路に対する吸気負圧導入前の前提条件確認区間TO、吸気負圧導入後における上記第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TA、及び上記第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TBにおいて、前記エアフローメータ12e(図1)を通じて検出される吸入空気量を求める。
とともに、
・少なくとも上記区間TO及び上記区間TB間での空気量変化(QO −QB )を監視して、同空気量変化(QO −QB )が所定範囲を超える場合には精度不足として判定をやり直す(なお、空気量QO と空気量QB とは同一の監視期間(例えば5秒間)に換算した値を用いるとする)。
こととすれば、車両の登坂走行、降坂走行に起因する上述した誤異常や誤正常といった誤診断の発生を回避することができるようになる。
【0188】
ここで、車両の登坂走行、降坂走行に起因する誤診断を回避し得る上記空気量変化(QO −QB )の所定範囲が、通常、どの程度の範囲として設定されるかを図17及び図18を参照して説明する。
【0189】
周知のように、標高が「1m」上る毎に「0.1mmHg」ずつ気圧が下がることから、例えば孔径0.5mm程度の微小な穴の検出に対する当該エバポ経路としてのS/N(信号対雑音比)余裕度が「0.2mmHg/5秒」であったとすると、前記圧力変化速度ΔPの算出期間ΔTs(5秒間)で標高の変化が「2m」以内の勾配変化については、たとえ登坂、降坂走行中であっても、十分な精度をもって上記穴の検出(診断)が可能となる。
【0190】
そして、車速が例えば「50km/h」、「80km/h」、「110km/h」等々、各々一定のもとで登坂、降坂走行を行ったときの、上記S/N余裕度に基づく上記5秒間でのそれら速度別に許容される斜度(%)は、図17に示されるように、
・車速 50km/hで約3%
・車速 80km/hで約2%
・車速110km/hで約1.4%
となる。
【0191】
一方、このように車速一定のもとで登坂、降坂走行を行ったときの、上記S/N余裕度に基づく各許容斜度と吸入空気量との関係は、概ね図18に示される関係となる。
【0192】
この図18から明らかなように、上記S/N余裕度に基づく許容斜度は車速毎に異なるものの、それら各許容斜度での吸入空気量は、たとえ車速が異なっていても全て約「±4g/秒」と、ほぼ一定となっている。
【0193】
そして、この約「±4g/秒」といった空気量を上記5秒間に換算すると、約「±20g/5秒」となる。すなわち、図16に基づき説明した上記空気量変化(QO −QB )の判定値としては、この「±20g/5秒」が許容範囲となり、同空気量変化(QO −QB )を
−20g ≦ 空気量変化(QO −QB ) < 20g …(5)
で制限することにより、車両の登坂走行、降坂走行に起因する上述した誤異常や誤正常といった誤診断の発生を回避することができるようになる。
【0194】
ただし、車両の実路での走行を考えた場合、吸入空気量変化に対するこのような制限は、当該故障診断装置としての診断頻度、すなわち穴等に対する検出率の低下を招くことともなり、必ずしも望ましくはない。
【0195】
そこで、この第5の実施の形態では、上記(5)式にかかる制限を、例えば
−50g ≦ 空気量変化(QO −QB ) < 50g …(6)
のように緩和するとともに、上記空気量変化(QO −QB )が該(6)式の範囲に収まっていた場合には、図19に示すように、同空気量変化(QO −QB )に応じてその診断基準を可変とする。具体的には、上記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域を、同図19に示される態様でかさ上げ補正する。
【0196】
なお、図19に示す空気量変化(QO −QB )に応じた異常判定域のかさ上げ補正マップも、先の図13に例示した補正マップと同様、先の図4に例示した判定マップに対しこの空気量変化(QO −QB )といった三次元的な要素が加わることとなるが、この図19に示される異常判定域のかさ上げ補正態様も、二次元的には、先の図10(a)に例示した判定マップから同図10(c)に例示した判定マップまでそれらに付記した領域Zの部分を上記空気量変化(QO −QB )に応じて連続的に変更していくことに相当する。
【0197】
また、同第5の実施の形態では、上記異常判定域のかさ上げ補正に際し、上記(5)式での許容範囲である「−20g/5秒」を基準として、例えば「Δ10g/5秒の空気量変化に対し0.1mmHgの割合」で同異常判定域をかさ上げ補正することとする。この「Δ10g/5秒」といった空気量変化は一例でしかないが、ある一般的なクラスの車両を想定した場合、上記圧力変化速度ΔPが「0.1mmHg/5秒」ずれる勾配変化に対し、空気量変化は、車速に拘わらず「Δ10g/5秒」とほぼ一律であることが発明者らによって確認されている。ちなみにこの場合、図19にも示されるように、上記(6)式での登坂側の最大許容範囲、すなわち「−50g/5秒」といった空気量変化(QO −QB )に対しては、「+0.3mmHg」だけかさ上げされるようにその異常判定域が補正されるようになる。
【0198】
なお、先の図15(a)及び(b)を参照しての説明からも明らかなように、実路走行において実際にこうした異常判定域のかさ上げ補正が必要となるのは、誤って異常と診断されやすい登坂走行中の、しかも上記(5)式と(6)式との間における制限緩和部分、すなわち空気量変化(QO −QB )が「−50g」〜「−20g」の範囲となる部分だけである。したがって、同第5の実施の形態にかかる装置全体としては、図20に例示する態様をもって、判定マップ(図4)及び補正マップ(図19)に基づく判定(診断)が実行される。
【0199】
ちなみにこの図20は、車速がほぼ一定である条件のもとでの上記空気量変化(QO −QB )に基づく診断支援態様についてその概要を総括したものであり、各々次のようなことをあらわしている。
【0200】
・空気量変化(QO −QB )が上記(6)式の範囲を超える登坂、降坂走行中には判定のやり直しを行う。
【0201】
・空気量変化(QO −QB )が「−50g」〜「−20g」の範囲にある登坂走行中には、「異常判定」については図19に示される補正マップを通じて異常判定域のかさ上げ補正を行い、「正常判定」についてはその判定を中止する(「正常判定」の場合、その判定頻度は低くてよい)。なお、登坂走行中には図15(a)に示されるように、その圧力推移がそもそも誤異常と判定されやすい上昇傾向となることから、ここで正常判定される場合には、同正常である旨の判定を実行するようにしてもよい。
【0202】
・空気量変化(QO −QB )が「−20g」〜「20g」の範囲にある平坦路走行中には、「異常判定」、「正常判定」ともに、通常の判定を実行する。
【0203】
・空気量変化(QO −QB )が「20g」〜「50g」の範囲にある降坂走行中には、「異常判定」については通常の判定を実行し、「正常判定」についてはその判定を中止する。すなわち、降坂走行中には図15(b)に示されるように、誤って正常と診断される可能性が高いため、「正常判定」についてはこれを見合わせる。
【0204】
図21は、こうした第5の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、この図21を併せ参照して同第5の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の各実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0205】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、ステップ5000及び続くステップ5001において、先の各実施の形態の故障診断ルーチンと同様、故障診断の前提条件が成立しているか否かの判断、及びその判断が肯定あることを条件にパージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い、吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、上記ステップ5001の処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。また、この第5の実施の形態において、上記前提条件(ステップ5000)の1つである
(b2)車速が安定していること。
には、同エバポ経路に対する吸気負圧導入前の前提条件確認区間である上記区間TO(図16)での吸入空気量変化、及び車速変化が所定範囲内である条件も含まれる。
【0206】
続くステップ5002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで、所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔPをモニタしていく。
【0207】
そして、ステップ5003では、上記所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TB(図16)に到達したか否かを判断し、該区間TBに到達している旨判断される場合には、次のステップ5004にて、区間TOと区間TBとの間での空気量変化(QO −QB )、及び区間TAと区間TBとの間での空気量変化(QA −QB )を求め、これら空気量変化がそれぞれ上記(6)式として示した所定の範囲に入っているか否かを判断する。そして、これら求めた各空気量変化が上記所定の範囲に入っていない旨判断される場合には、精度不足として今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0208】
他方、上記各空気量変化が上記所定の範囲内である旨判断される場合には、続くステップ5005おいて、先の図4に例示した判定マップに対し、図19に例示した態様で、上記空気量変化(QO −QB )に応じた補正が行われる。ただしこうした補正が、同空気量変化(QO −QB )が「−50g」〜「−20g」の範囲にある登坂走行中に限って行われることは上述の通りである。
【0209】
こうして必要に応じてマップ補正が行われた後は、次のステップ4006において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、さらに次のステップ4007において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、上記補正された判定マップを参照してエバポ経路の正常・異常が判定される。またこのときには、図20に例示した態様での診断支援(判定支援)も併せて行われる。
【0210】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第5の実施の形態によれば、第1あるいは第2の実施の形態による前記(1)及び(2)の効果に加えて、更に以下のような効果が併せ奏せられるようになる。
【0211】
(13)エバポ経路内に対する吸気負圧の導入前後における吸入空気量変化に応じて診断基準を変更するようにしたことで、車両の登坂、降坂走行中であれ、大気圧の変化に起因する誤診断の発生は好適に回避される。
【0212】
(14)また、吸入空気量変化に対する制限が大きく緩和されることで、車両の登坂、降坂走行中はもとより、平坦路走行中においても、確実にその診断機会(診断頻度)の増大が図られるようになる。
【0213】
(15)その他、上記エバポ経路内に対する吸気負圧の導入前後における吸入空気量変化を監視して車両の登坂、降坂走行等の別を管理できることから、別途に大気圧センサ等を設ける必要もない。
【0214】
なお、この第5の実施の形態にあって、上記空気量変化(QO −QB )の緩和態様、並びに同空気量変化(QO −QB )に応じた具体的なかさ上げ態様等は、図19に例示した補正マップでの態様に限られることなく任意である。要は、適用対象となる車両毎にその最適値を求め、それら最適値に応じて図19に準じた補正マップを決定すればよい。
【0215】
また、同第5の実施の形態にあっては、車速がほぼ一定である条件のもとで、上記空気量変化(QO −QB )に基づく診断支援を行うこととしたが、こうした空気量変化は通常、車速変化によっても生じる。すなわち、車速変化による空気量変化も併せ加味することとしてもよく、このように車速変化による空気量変化も併せ加味することで、特に平坦路走行中における診断機会(診断頻度)の更なる増大も期待される。
【0216】
(第6の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第6の実施の形態について、上記第4及び第5の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0217】
こうした故障診断装置にあっては通常、正常判定や異常判定が行われた場合はもとより、故障の有無についての判定が保留となったときにも、同故障の有無についての当該トリップでの診断を中断するようにしている。これは、一旦判定が保留となった場合には、同一トリップ内で再度の診断を行ったとしても同様の結果となることが多いためである。
【0218】
ただし、上記第4あるいは第5の実施の形態のような診断基準の変更によって上記故障の有無についての判定が保留となった場合には、たとえ同一トリップであっても、以降の診断では何らかの判定が可能となるケースも少なくない。
【0219】
そこで、この第6の実施の形態では、上記診断基準の変更によって故障の有無についての判定が保留となったときには、吸気負圧の再度の導入に基づく再度の診断を実行するようにする。
【0220】
具体的には、第4の実施の形態のように前記区間TBでの揺れ量ΣΔΔPに応じて診断基準が変更される場合には図22に示すように、また第5の実施の形態のように前記空気量変化(QO −QB )に応じて診断基準が変更される場合には図23に示すように、それぞれそのときの判定保留が前記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域のかさ上げ補正によって行われたものか(領域ZB)、あるいは同かさ上げ補正を不要として行われたものか(領域ZA)をそれら診断履歴に基づきまず判断する。そして、判定保留が上記異常判定域のかさ上げ補正領域である領域ZBにおいて行われていた場合には、「判定やり直しフラグ」をオンとすることによって、吸気負圧の再度の導入に基づく再度の診断実行を可能とし、また、同判定保留が上記異常判定域のかさ上げ不要領域である領域ZAにおいて行われていた場合には、「判定終了フラグ」をオンとすることによって、当該トリップでの診断を中断する。
【0221】
図24及び図25は、こうした第6の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、これら図24及び図25を併せ参照して同第6の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の各実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0222】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、まずステップ6000において、上記「判定終了フラグ」がオンとなっているか否かを判断する。この「判定終了フラグ」がオンとなっている場合、ECU50は、当該トリップでの以後の診断を中断する。
【0223】
一方、上記「判定終了フラグ」がオンとなっていなければ、ECU50は、ステップ6001及び続くステップ6002において、先の各実施の形態の故障診断ルーチンと同様、故障診断の前提条件が成立しているか否かの判断、及びその判断が肯定あることを条件にパージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い、吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、上記ステップ6002の処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。また、この第6の実施の形態においても先の第5の実施の形態と同様、上記前提条件(ステップ6001)の1つである
(b2)車速が安定していること。
には、同エバポ経路に対する吸気負圧導入前の前提条件確認区間である区間TO(図16)での吸入空気量変化、及び車速変化が所定範囲内である条件が含まれる。
【0224】
続くステップ6003においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔP及び圧力変動をモニタしていく。
【0225】
そして、ステップ6004では、上記所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TA(図12)に限って、そこでモニタされる圧力変動が所定値内であるか否かを判断し、同モニタされる圧力変動が所定値を超える旨判断される場合には、今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0226】
また、診断を継続するに場合には、続くステップ6005において上記所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TB(図12、図16)に到達したか否かを判断し、該区間TBに到達している旨判断される場合には、次のステップ6006にて、
・同区間TBでモニタされる圧力変動が所定値内であるか否か。
または、
・区間TOと区間TBとの間での空気量変化(QO −QB )、及び区間TAと区間TBとの間での空気量変化(QA −QB )がそれぞれ前記(6)式として示した所定値(所定範囲)内であるか否か。
を判断する。そして、これら圧力変動または各空気量変化が各々上記所定値を超える旨判断される場合にも、精度不足として今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0227】
他方、同ステップ6006において上記圧力変動または各空気量変化が各々上記所定値内である判断される場合には、続くステップ6007において、上記区間TBでの揺れ量ΣΔΔPまたは上記区間TOと区間TBとの間での空気量変化(QO −QB )が、図22及び図23に示した補正マップにおいて異常判定域のかさ上げ補正が必要とされる領域ZBに属するか、あるいは同異常判定域のかさ上げ補正が不要とされる領域ZAに属するかが判断される。
【0228】
そして、ステップ6007において上記揺れ量ΣΔΔPまたは上記空気量変化(QO −QB )が上記異常判定域のかさ上げ補正が必要とされる領域ZBに属する旨判断される場合には、先の図4に例示した判定マップに対し、ステップ6008にてそれら揺れ量ΣΔΔPまたは空気量変化(QO −QB )に応じたマップ補正が行われるとともに、ステップ6009にて上記「判定やり直しフラグ」がオンとされる。また、こうしてマップ補正が行われ、「判定やり直しフラグ」がオンとされた後は、次のステップ6010において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、さらに次のステップ6011において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、上記補正された判定マップを参照して、保留も含めたエバポ経路の正常・異常が判定される。
【0229】
一方、ステップ6007において上記揺れ量ΣΔΔPまたは上記空気量変化(QO −QB )が上記異常判定域のかさ上げ補正が不要とされる領域ZAに属する旨判断される場合には、マップ補正や「判定やり直しフラグ」のセット(オン)が行われることなくステップ6010において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、次のステップ6011において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、先の図4に例示した判定マップを参照して、同じく保留も含めたエバポ経路の正常・異常が判定される。
【0230】
その後、ステップ6012においては、上記ステップ6011での処理が判定の保留であったか否かが判断される。
【0231】
そして、同処理が判定の保留であった場合には、続くステップ6013において上記「判定やり直しフラグ」がオンとされているか否かが判断され、該「判定やり直しフラグ」がオンとされている場合には、ステップ6014にてこれをオフとする後処理が行われた上で、本ルーチンが終了される。すなわちこの場合には、その後も前記前提条件が満たされる限り、当該トリップでの、再度の吸気負圧導入に基づく再度の診断が可能となる。
【0232】
他方、上記ステップ6011での処理が判定保留ではなかった場合、あるいは判定保留であっても上記「判定やり直しフラグ」がオンとされていなかった場合には、ステップ6015にて上記「判定終了フラグ」がオンとされた上で、本ルーチンが終了される。すなわちこの場合には、当該トリップでの以降の診断処理は中断される。
【0233】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第6の実施の形態によれば、先の第4あるいは第5の実施の形態による前記(11)〜(15)の効果に加えて、更に以下のような効果が併せ奏せられるようになる。
【0234】
(16)診断基準の変更によって故障の有無についての判定が保留となったときには、吸気負圧の再度の導入に基づく再度の診断が実行可能となることで、実路走行時の診断機会(診断頻度)を的確に増やすことができるようになる。
【0235】
(17)また逆に、診断基準の変更を要することなく故障の有無についての判定が保留となったときには、当該トリップでの以降の診断処理が中断されることで、無駄な診断が省かれ、ひいてはパージ流量の確保も容易となる。
【0236】
なお、同第6の実施の形態では、前記第4及び第5の実施の形態の双方に対して上記「判定やり直しフラグ」を導入する場合について示したが、何らかのかたちで診断基準を可変とする故障診断装置であれば、この「判定やり直しフラグ」の導入は可能であり、且つ有効である。
【0237】
また、この「判定やり直しフラグ」の導入は、前記第4及び第5の実施の形態のいずれか一方のみに対して行うものであってもよいし、他に、前記第3の実施の形態に対して行うものであってもよい。ちなみに、前記第3の実施の形態に対してこの「判定やり直しフラグ」を導入した場合には、先の図10に例示した各判定マップのうち、図10(b)及び(c)に例示した判定マップが選択されて「判定保留」となったときに同「判定やり直しフラグ」がオンとされる。他方、図10(a)に例示した判定マップが選択されて「判定保留」となったときには上記「判定終了フラグ」がオンとされる。
【0238】
(第7の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第7の実施の形態について、上記第1〜第6の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0239】
前述のように、こうした故障診断装置を備えるエバポパージシステムにあっては、少なくともその診断中、エンジン吸気通路へのパージを行うことができないため、エバポ経路に対する吸気負圧の導入回数には、例えば「トリップ毎に8回未満」等の制限が設けられていることが多い。
【0240】
またこのため、実路走行中にあって、エバポ経路に対する吸気負圧の導入と、該吸気負圧の導入後、経路内圧力の変動等を理由とする診断の中止とが繰り返されるようなことがあると、上記吸気負圧導入回数の制限によって、診断の機会が得られなくなることがある。
【0241】
そこで、この第7の実施の形態では、上記吸気負圧の導入にかかる前提条件として、「エバポ経路における経路内圧力の変動積算値が所定の設定値thαよりも小さいこと」を新たに加えることにより、一旦、エバポ経路に吸気負圧が導入され、診断が開始された後は、極力最終判定まで到達できるようにする。
【0242】
具体的には、図26(a)及び(b)に示すように、車速の変動または路面の段差等に起因してエバポ経路内圧が変動している間は、図26(c)に示すように、エバポ経路内圧変化の積算値(揺れ量)Σ|ΔΔP|が所定時間TG(例えば30秒)内に上記設定値thαを超えてしまうことをもって、上記吸気負圧の導入を禁止する。そしてその後、同図26(a)及び(b)に示すように、車速が定常化、あるいは路面が安定して、エバポ経路内圧の変動(揺れ)が収まった場合には、同図26(c)に示すように、上記所定時間TG内における上記揺れ量Σ|ΔΔP|が上記設定値thαよりも小さいことをもって、前提条件の成立とし(図26(d))、上記吸気負圧の導入を許可する。
【0243】
図27は、同第7の実施の形態による上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出手順を示すフローチャートであり、まずこの図27を併せ参照して、揺れ量Σ|ΔΔP|がどのように算出されるかを説明する。なおこのルーチンは、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0244】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、まずステップ7000において、その時点で求められている揺れ量Σ|ΔΔP|が上記設定値thα以上となっているか否か、または同揺れ量Σ|ΔΔP|が上記所定時間TGにわたって累積されているか否かを判断する。そして、これら条件がいずれも満たされない場合には、ステップ7010において上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出時期であるか否かを更に判断し、該算出時期ではない旨判断される場合、同ルーチンを一旦抜ける。すなわちここでは、当該ルーチンの何周期かに一度の割合で、上記揺れ量Σ|ΔΔP|を算出することとしており、その算出周期となるまでは一旦同ルーチンを抜ける。なお、このルーチンが例えば65ミリ秒程度の時間を周期として実行される場合、同揺れ量Σ|ΔΔP|の算出は、その8周期に一度程度の頻度をもって実行される。
【0245】
一方、ステップ7010において上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出時期である旨判断される場合には、まずステップ7011において、エバポ経路内圧の変化量(圧力変動レベル)ΔΔPが算出され、次のステップ7012において、その積算値である上記揺れ量Σ|ΔΔP|が算出される。なお、上記エバポ経路内圧の変化量(圧力変動レベル)ΔΔPが、圧力センサ32(図1)を通じて検出される圧力の所定の微小時間における変化量の2階差分値であり、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、揺動等による燃料蒸気圧の変動を反映するパラメータであることは前述した。こうして揺れ量Σ|ΔΔP|が算出したECU50は、その後、同ルーチンを一旦抜ける。
【0246】
他方、先のステップ7000において、上記算出される揺れ量Σ|ΔΔP|が上記設定値thα以上となっている旨判断される場合、または同揺れ量Σ|ΔΔP|が上記所定時間TGにわたって累積されている旨判断される場合、ECU50は次のステップ7020において、当該ルーチンを通じて前回算出されている同揺れ量Σ|ΔΔP|の値をRAM51c(図2)に記憶する。そして、その後のステップ7021において、今回参照した揺れ量Σ|ΔΔP|の値を「0」にクリアする。
【0247】
同揺れ量Σ|ΔΔP|の算出ルーチンを通じて、こうした処理が繰り返し実行されることにより、先の図26(a)及び(b)に例示した車速または路面段差に応じたエバポ経路内圧の推移に対し、上記揺れ量Σ|ΔΔP|の値は、図26(c)に例示する態様をもって推移するようになる。
【0248】
また、図28は、この第7の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートである。次に、この図28を併せ参照して、同第7の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の各実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0249】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、まずステップ8000において、前記(b1)〜(b3)として例示したような通常の前提条件が成立している否かを判断する。そして、この通常の前提条件が満たされていない旨判断される場合には、そのまま同ルーチンを一旦抜ける。
【0250】
一方、ステップ8000において上記通常の前提条件が成立している旨判断される場合には、ECU50は、続くステップ8001において、
・上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出ルーチン(図27)を通じて求められている揺れ量Σ|ΔΔP|が前記設定値thα未満で且つ、上記RAM51cに記憶されている前回算出の揺れ量Σ|ΔΔP|も同設定値thα未満であるか否か。
を更に判断する。すなわちこの第7の実施の形態の装置では、先の図26(c)及び(d)にも示されるように、該ステップ8001での条件が併せ満たされていることによって、はじめて前提条件の成立となる。
【0251】
そして、こうした前提条件の成立に伴って、吸気負圧の導入及び診断の開始が許可され、続くステップ9000の処理として、前記第1〜第6の実施の形態にかかるいずれか形態での診断処理が実行される。
【0252】
このように、同第7の実施の形態においては、上記ステップ8000及び上記ステップ8001にかかる処理を実行する部分によって、吸気負圧の導入並びに診断開始を許可すべきか否かを監視する前提条件監視手段が構成されている。
【0253】
以上説明したように、この第7の実施の形態によれば、先の第1〜第6の実施の形態による前記(1)〜(17)の効果に加えて、更に以下のような効果が併せ奏せられるようになる。
【0254】
(18)上記前提条件監視手段の採用によって、実際に診断用圧力を導入することのできる機会は減少する可能性が高いものの、一旦上記ステップ8001での条件が成立して吸気負圧が導入され、且つ診断が開始された場合には、同診断が途中で中止されることなく最後まで遂行される可能性も高くなる。
【0255】
(19)また、こうして診断が完了されれば、少なくとも当該トリップではその後の診断を中止することができ、ひいてはパージ流量も好適に確保されるようになる。
【0256】
なお、この第7の実施の形態にあっては、上記設定値thαとして固定の値を想定したが、この値thαは、診断の対象とする故障の度合いに応じて可変設定するようにしてもよい。
【0257】
すなわち、診断の対象とする故障の度合いとしては、例えば「1.0mm」孔径程度の穴を診断対象とするか、あるいは「0.5mm」孔径程度の穴を診断対象とするか等、エバポ経路に生じた穴の孔径の度合いがあるが、このように度合いの異なる複数の故障を診断の対象とする場合には、それら診断の条件も各々異なる条件に設定されることが多い。そしてこのような場合、診断の対象とする故障の度合いに応じて上記設定値thαの値を可変とすることで、例えば「1.0mm」孔径程度の比較的大きな穴を診断の対象とする場合には吸気負圧を導入する機会を増やすことができるなど、上記前提条件監視手段を採用する場合であれ、診断の対象とする故障の度合いに応じたより柔軟な運用が可能になる。
【0258】
(その他の実施の形態)
以上、本発明を具体化した第1〜第7の実施の形態について説明したが、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置は、それら各実施の形態に限定されるものではなく、同各実施の形態を適宜変更した、例えば次のような形態として実施することもできる。
【0259】
・上記各実施の形態では、圧力センサ32は、燃料タンク30の天井壁に設けられることとしたが、各通路途中やキャニスタ40の内壁等、エバポ経路内の圧力を検出できる部位であれば何処に設けてもよい。
【0260】
・上記各実施の形態では、エバポパージシステム20の故障診断にあたり、負圧導入制御弁80aを開弁することによってエバポ経路全体を連通させるとともに、大気導入弁72aを閉弁して外部からは閉鎖状態とし、パージ制御弁71aを開弁して負圧を導入するという構成をとった。これに対し、密閉状態のエバポ経路(空間)内に負圧を導入して同空間内の減圧を行うことのできるエバポパージシステムであれば、如何なる構造のものであっても本発明の故障診断装置を適用することはできる。
【0261】
・上記各実施の形態では、エバポ経路に負圧を導入して同経路内を所定負圧P1とし、その後、同エバポ経路を一旦密閉状態にし、基本的には経路内が所定負圧P2になるまで待機することとしている。そして、エバポ経路内が所定負圧P1にあるときの圧力変化速度ΔP1と、エバポ経路内が所定負圧P2にあるときの圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)を算出し、この算出値に基づいてシステム20の漏れの有無を判定することとした。この所定負圧P1、P2の設定にあたっては、例えば所定負圧P1を98kPa(キロパスカル)程度、すなわち760mmHgを基準として「−20mmHg」程度、また所定負圧P2についてはこれを99kPa程度、すなわち760mmHgを基準として「−15mmHg」程度に設定するのが好適であることが発明者らによって確認されている。しかしながら、この設定値はエンジンやエバポパージシステムの構造的、且つ物理的な特性によっても異なるものであり、様々な設定値が考えられる。また、P1及びP2の2点に限らず、3点以上の所定圧力下における圧力速度の比に基づいてエバポ経路の漏れの有無を診断することもできる。
【0262】
・上記各実施の形態では、圧力変化速度ΔP1及びΔP2という概念を基にして故障診断を行うこととしたが、変化率、あるいは特定の時間当たり圧力変化量等、圧力の変化度合いに相当する如何なるパラメータも本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断に適用することはできる。
【0263】
・上記第1の実施の形態での「所定時間ΔT1(図5、図6)」の導入に基づく正常判定処理、また上記第2の実施の形態での「所定時間ΔTh並びに第3の所定圧力Ph(図8、図9)」の導入に基づく正常判定処理は、上記第3〜第6の実施の形態に対しても同様に適用することができる。ちなみにこれらの処理を適用する場合、第3の実施の形態にあってはステップ3004(図11)の処理の前に、第4の実施の形態にあってはステップ4004(図14)の処理の前に、第5の実施の形態にあってはステップ5003(図21)の処理の前に、そして第6の実施の形態にあってはステップ6005(図25)の処理の前に、それぞれ前処理として挿入することが望ましい。
【0264】
・もっとも、上記第1の実施の形態での「所定時間ΔT1(図5、図6)」の導入に基づく正常判定処理、また上記第2の実施の形態での「所定時間ΔTh並びに第3の所定圧力Ph(図8、図9)」の導入に基づく正常判定処理は、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置にとって必須の処理ではない。したがって、上記第1及び第2の実施の形態にあっては、これら要素の導入に基づく正常判定処理の実行を適宜割愛する構成とすることもできる。
【0265】
・上記第4の実施の形態と上記第5の実施の形態とは、それらを適宜に組み合わせたかたちで実施することもできる。もっともこの場合には、上記第6の実施の形態に添ったかたちで実施することが、診断機会(診断頻度)を増やす上で望ましい。
【0266】
・上記各実施の形態では、診断のための前提条件として、前記(b1)〜(b3)の条件、すなわち
(b1)空燃比A/Fに乱れがないこと。
【0267】
(b2)車速が安定していること。
【0268】
(b3)空燃比制御やパージ制御等にかかる各種学習値の登録が一旦完了していること。
を採用した。これら前提条件の設定も任意であり、他に例えば、
(b4)標高2400m以下であること。
【0269】
(b5)エンジン始動時の温度が所定の温度範囲内(例えば10〜35℃)であること。
【0270】
(b6)車載バッテリの電圧が所定電圧(例えば11V)以上であること。
【0271】
(b7)エンジン始動後、所定時間(例えば50分)以内であること。
等々の条件も適宜採用することができる。
【0272】
・上記各実施の形態では、エバポ経路に吸気負圧を導入してその故障診断を行うこととしたが、同構成に代え、エバポ経路内に正圧を導入してその故障診断を行うようにしてもよい。すなわちこの場合、導入した正圧によってエバポ経路内を所定圧まで加圧し、その後、エバポ経路を密閉状態にすることによって同経路内での圧力推移(減圧速度)をモニタするなどの構成が考えられる。そしてこの場合には、エバポ経路を密閉状態にした後、経路内が所定圧にあるときの圧力推移または減圧速度と、他の所定圧にあるときの圧力推移または減圧速度との比に基づいて、エバポシステムの故障の有無を診断することができる。
【0273】
もっとも、上記各実施の形態にかかる故障診断装置では、エバポ経路内に正圧を導入するための加圧ポンプ等を付加するまでもなく、吸気通路から導入される負圧に基づき、十分に精度の高い故障診断を実施することができるという点で、簡易性や搭載性に優れた構成となっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第1の実施の形態についてその概略構成を示す略図。
【図2】同実施の形態に採用されるECU(電子制御装置)の電気的構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態による故障診断原理を示すタイムチャート。
【図4】同実施の形態の故障診断に用いられる判定マップを示す略図。
【図5】同実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図6】同実施の形態による故障診断態様の一例を示すタイムチャート。
【図7】同実施の形態の診断精度を説明するためのタイムチャート。
【図8】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第2の実施の形態についてその故障診断態様の一例を示すタイムチャート。
【図9】同第2の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第3の実施の形態についてこれに用いられる判定マップを示す略図。
【図11】同第3の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図12】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第4の実施の形態についてその故障診断原理を示すタイムチャート。
【図13】同第4の実施の形態で用いられる補正マップ例を示す略図。
【図14】同第4の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図15】登坂、降坂走行中のエバポ経路内圧力の推移傾向を示すタイムチャート。
【図16】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第5の実施の形態についてその故障診断原理を示すタイムチャート。
【図17】路面斜度とエバポ経路内圧変化との関係を示すグラフ。
【図18】路面斜度と吸入空気量との関係を示すグラフ。
【図19】同第5の実施の形態で用いられる補正マップ例を示す略図。
【図20】同第5の実施の形態での判定(診断)支援マップを示す略図。
【図21】同第5の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図22】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第6の実施の形態についてその故障診断原理を示す略図。
【図23】同じく第6の実施の形態についてその故障診断原理を示す略図。
【図24】同第6の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図25】同第6の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図26】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第7の実施の形態についてその前提条件監視態様を示すタイムチャート。
【図27】同第7の実施の形態による揺れ量Σ|ΔΔP|の算出手順を示すフローチャート。
【図28】同第7の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…エンジン、11…燃焼室、12…吸気通路、13…排気通路、20…エバポパージシステム、30…燃料タンク、40…キャニスタ、31…燃料ポンプ、12a…デリバリパイプ、12b…燃料噴射弁、12d…エアクリーナ、32…圧力センサ、33…ブリーザ制御弁、34…ブリーザ通路、35…ベーパ通路、50…ECU(電子制御装置)、51…マイクロコンピュータ、51a…CPU、51b…ROM、51c…RAM、51d…バックアップRAM、60…タンク内圧制御弁、71…パージ通路、70…大気弁、72…大気導入通路、72a…大気導入弁(電磁弁)、73…大気排出通路、71a…パージ制御弁(電磁弁)、80…負圧導入用通路、80a…負圧導入制御弁(電磁弁)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンクからの燃料蒸気を吸気系へパージして処理するエバポパージシステムの故障診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、車両等に搭載される装置として、燃料タンクで発生する燃料蒸気(エバポ)をキャニスタに捕集し、その捕集された燃料蒸気を適宜キャニスタから吸気通路へパージするようにしたエバポパージシステムがある。
【0003】
こうしたエバポパージシステムは、通常、燃料タンク内にて発生した燃料蒸気を捕集するキャニスタと、燃料タンクとキャニスタとを連通するベーパ通路と、キャニスタと吸気通路とを連通するパージ通路とを備えるシステムとして構成される。また同システムにおいて、パージ通路の通路途中には開閉制御の可能なパージ制御弁が、キャニスタには大気導入の可能な大気導入弁が備えられる。
【0004】
また、上記のようなエバポパージシステムについて、そのエバポ経路の穴開きや裂傷等に起因する漏れの有無を診断するエバポパージシステムの故障診断装置がある。例えば特開平4−362264号公報に記載されたエバポパージシステムの故障診断装置では、一旦エバポ経路を負圧に維持した後、同経路内における内圧の経時変化をモニタすることで異常の有無を診断するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなエバポパージシステムの故障診断装置には、より微小な穴開きや裂傷をも迅速且つ正確に検出することのできる信頼性が望まれるようになってきている。この点、例えば上記公報に記載された故障診断装置の場合には、エバポ経路における1.0mm孔径程度の穴あきや裂傷を認識するのが限界であり、将来の公害規制下では、エバポ経路中のより微小な漏れ(例えば0.5mm孔径以下の穴の検出)には対応しきれないものとなっている。
【0006】
また、上記公報に記載された装置では、エンジンの始動直後のように、非常に限られた時期にしか漏れ検出にかかる相応の検出精度を発揮することができない上に、燃料タンク内の燃料残量が変わると、その他の条件が同一であっても燃料の蒸気圧がエバポ経路内圧に及ぼす影響が変わり、誤診断をしてしまう可能性もあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エバポ経路のより微小な漏れをも高精度且つ迅速に診断することのできるエバポパージシステムの故障診断装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
【0009】
まず請求項1記載の発明は、燃料タンクから発生する燃料蒸気を同燃料タンクを含むエバポ経路を介してエンジンの吸気通路へパージ制御するエバポパージシステムの故障診断装置において、前記エバポ経路の経路内圧力を検出する圧力センサと、同エバポ経路内に診断用の所定の圧力を導入する圧力導入手段と、前記所定の圧力が導入されたエバポ経路を密閉した状態での前記圧力センサにより検出される同エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達したときの第1の圧力変化度合いと前記第1の所定圧力よりも圧力導入以前の経路内圧力に近い第2の所定圧力に達したときの第2の圧力変化度合いとの比に基づいて当該エバポ経路の故障の有無を診断する診断手段とを備えることを要旨とする。
【0010】
エバポ経路内を所定圧力に保持して密閉した後放置すれば、燃料タンクからの燃料蒸気圧に応じ同経路内の気圧は徐々に平衡状態に向かう。ここで、エバポ経路内の密閉状態が良好であると、経路内の気圧変化は最初は速く徐々に遅くなる。これに対し、エバポ経路に漏れが生じていると、経路内の気圧はほぼ一定の気圧変化速度をもって推移することとなる。
【0011】
そこで、この請求項1記載の発明では、エバポ経路内がある第1の所定圧力下にあるときの圧力変化度合いと、同経路内が前記第1の所定圧力よりも密閉時の圧力に近い第2の所定圧力下にあるときの圧力変化度合いとを検出し、更に両圧力変化度合いの比を演算し、この比に基づいてエバポ経路の漏れを診断するようにしている。すなわち、エバポ経路に漏れが生じていると上記第1及び第2の圧力下においてその圧力変化度合いはほぼ一定となるのに対し、漏れのない場合には、同第1及び第2の圧力下においてその圧力変化度合いも異なったものとなる。そこで、これら圧力変化度合いの比をとることにより、上記各所定負圧が相当に近似した圧力値であっても漏れの有無を良好に検出することができるようになる。ちなみに、このような圧力変化度合いの違いを例えば両者の圧力変化度合いの差に基づいて判別しようとすると、測定対象とする上記第1及び第2の所定圧力に相当に広い圧力差をもたせない限り、それら直線的な圧力変化(漏れあり)及び曲線的な圧力変化(漏れ無し)間に顕れる差異を明確に区別することは困難であるが、この請求項1記載の発明のように、両者の圧力変化度合いの比を適用すれば、同第1及び第2の所定圧力として近似した圧力区間においても、それら測定されたデータに基づいて上記差異を明確に判別することが可能となる。したがって、エバポ経路の有無に応じた上述の態様での圧力変化に着目した精度の高い診断を極めて短い時間若しくは周期をもって行うことができるようになる。
【0012】
また請求項2記載の発明は、燃料タンクから発生する燃料蒸気を同燃料タンクを含むエバポ経路を介してエンジンの吸気通路へパージ制御するエバポパージシステムの故障診断装置において、前記エバポ経路の経路内圧力を検出する圧力センサと、同エバポ経路内に診断用の所定の圧力を導入する圧力導入手段と、前記所定の圧力が導入されたエバポ経路を密閉した状態での前記圧力センサにより検出される同エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達したときの第1の圧力変化度合いと前記第1の所定圧力よりも圧力導入以前の経路内圧力に近い第2の所定圧力に達したときの第2の圧力変化度合いとの比、及び前記第2の圧力変化度合いに基づいて当該エバポ経路の故障の有無を診断する診断手段とを備えることを要旨とする。
【0013】
第2の圧力変化度合いに基づけば、エバポ経路の漏れの有無を大方識別することができるが、エバポ経路内の燃料量や燃料の揮発性の相違等により、特に微小な漏れの診断が困難となる場合がある。
【0014】
そこで、この請求項2記載の発明では、このような判定が困難な場合でも、少なくとも2点の圧力変化度合い間の比、すなわち変化度合いの相対値を更に加味することにより、第2の圧力変化度合いだけでは識別できなかった漏れの有無にかかる相違が明確に顕れるようになり、もってエバポ経路内の燃料残量や燃料特性等の条件が異なる場合であれ、微小な穴による漏れについても信頼性の高い診断が行えるようになる。
【0015】
また、このように第1の圧力変化度合いと第2の圧力変化度合いとの比、及び第2の圧力変化度合いに基づいて上記診断を行うことで、例えばそれら各要素を軸とする2次元マップを用いた、より精度の高い、しかも効率のよい診断が可能ともなる。
【0016】
また請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記圧力導入手段は、前記エバポ経路の前記吸気通路との連通部に設けられて同吸気通路からの吸気負圧を導入する制御弁であることを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、吸気通路からエバポ経路に負圧を導入する操作を容易且つ的確に行うことができる。すなわち、別途に加圧ポンプを必要とする加圧法を用いることなく、いわゆる負圧法によっても上記エバポ経路の漏れについての検出頻度(診断頻度)を高めることができるようになる。
【0018】
また請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力が前記第1の所定圧力を経て前記第2の所定圧力に達するまでの時間が所定時間(ΔT1)以上となるとき、当該エバポ経路を故障無しと診断することを要旨とする。
【0019】
通常、エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力から第2の所定圧力に移行するまでに十分な時間を要するとすれば、第1の所定圧力下での圧力変化度合いと第2の所定圧力下での圧力変化度合いとの比、あるいは第2の圧力変化度合いをとるまでもなくエバポ経路内に漏れのないことを確定することができる。したがって同構成によれば、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときにこれを早い機会に判断することができ、ひいては故障診断のインターバルを狭めて、その頻度を高めることができるようになる。
【0020】
また請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力が前記第1の所定圧力に達した時点から所定時間(ΔTh)経過後、同経路内圧力が前記第2の所定圧力よりも前記第1の所定圧力に近い第3の所定圧力(Ph)未満にあるとき、当該エバポ経路を故障無しと診断することを要旨とする。
【0021】
上述のように、エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力から第2の所定圧力に移行するまでに十分な時間を要するとすれば、第1の所定圧力下での圧力変化度合いと第2の所定圧力下での圧力変化度合いとの比、あるいは第2の圧力変化度合いをとるまでもなくエバポ経路内に漏れのないことを確定することができる。
【0022】
また、この傾向が更に顕著である場合には、請求項4記載の発明の上記所定時間(ΔT1)の経過を必ずしも待たなくとも、当該エバポ経路を故障無しと診断することが可能となる場合がある。すなわち、エバポ経路内に漏れがなく、且つ燃料タンク内での燃料蒸気発生量が少ない場合には、診断用圧力導入後におけるエバポ経路内の圧力変化も極めて僅かなものとなる。
【0023】
そこでこのような場合には、同請求項5記載の発明によるように、エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達した時点から所定時間(ΔTh)経過後、同経路内圧力が第2の所定圧力よりも第1の所定圧力に近い第3の所定圧力(Ph)未満にあることをもって、当該エバポ経路を故障無しと診断することができるようになる。しかもこの場合には、上記第3の所定圧力(Ph)の設定に応じて上記所定時間(ΔTh)を極めて短い時間に設定することが可能となり、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときに、これを更に早い機会に判断することができるようになる。
【0024】
また請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いに応じて可変とすることを要旨とする。
【0025】
同構成によれば、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動し、エバポ経路の経路内圧力が変動することとなっても、その変動度合いに応じて上記診断基準が可変とされることで、漏れ診断にかかる診断精度が好適に保持されるようになる。
【0026】
また請求項7記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を、前記各圧力変化度合い算出期間中における前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いに応じて可変とすることを要旨とする。
【0027】
上述のように、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動すると、エバポ経路の経路内圧力が変動することがある。ただし、上記診断は第1の圧力変化度合いと第2の圧力変化度合いとの比、または第1の圧力変化度合いと第2の圧力変化度合いとの比及び第2の圧力変化度合いに基づいて行われることから、上記経路内圧力の変動度合いに応じた診断基準の変更も、実質的にはこれら圧力変化度合い算出期間中における同経路内圧力の変動度合いに応じて行われることで必要十分である。したがって、請求項7記載の発明の同構成によれば、上記経路内圧力の変動度合い監視にかかるより小さな演算負荷のもとに上記診断基準の変更、並びに該診断基準の変更に基づく診断精度の補償が行われるようになる。
【0028】
また請求項8記載の発明は、請求項6または7記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いが所定以上となるとき、前記診断を中断することを要旨とする。
【0029】
同構成によれば、確実にシステムの正常・異常を診断できる条件が整わない状態であいまいな診断が行われてしまうことを回避することができるようになり、ひいては誤診断が回避され、故障診断の信頼性も向上する。
【0030】
また特に、同請求項8記載の発明が上記請求項7記載の発明に適用される場合には、上記各圧力変化度合い算出期間中以外の経路内圧力の変動度合いによって診断が中断されることはないため、実路走行中における診断機会(診断頻度)の増大が図られ、ひいては故障診断にかかる更なる信頼性の向上が図られることともなる。
【0031】
また請求項9記載の発明は、請求項1〜8の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を、前記エバポ経路内に対する診断用圧力の導入前後における吸入空気量変化に応じて可変とすることを要旨とする。
【0032】
上記圧力センサとしては通常、大気圧との相対圧を検出するタイプのセンサが用いられることから、車両の登坂走行時や降坂走行時には、それら大気圧の変化に応じて上記検出されるエバポ経路の経路内圧力も変化する。すなわち、車両の登坂、降坂走行時には誤異常や誤正常といった誤診断を犯しやすくなる。
【0033】
他方、例えば一定の車速のもとでの登坂時にはエンジン負荷の増大に伴って同エンジンの吸入空気量が増大し、逆に一定の車速のもとでの降坂時にはエンジン負荷の減少に伴って同エンジンの吸入空気量が減少する。
【0034】
そこで、請求項9記載の発明の上記構成によるように、エバポ経路内に対する診断用圧力の導入前後における吸入空気量変化に応じて上記診断基準を変更することとすれば、車両の登坂、降坂走行時であれ、その診断機会(診断頻度)の増大を図りつつ、上記大気圧の変化に起因する誤診断を回避することができるようになる。またこの場合、別途に大気圧センサ等を設ける必要もない。
【0035】
また請求項10記載の発明は、請求項6〜9の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記診断手段は、前記診断基準の変更によって前記故障の有無についての判定が保留となったとき、前記エバポ経路内に対する診断用圧力の再度の導入に基づく再度の診断を実行することを要旨とする。
【0036】
こうした故障診断装置にあっては通常、故障の有無についての判定が保留となったとき、同故障の有無についての当該トリップでの診断を中断するようにしている。これは、一旦判定が保留となった場合には、同一トリップ内で再度の診断を行ったとしても同様の結果となることが多いためである。ただし、上述のような診断基準の変更によって上記故障の有無についての判定が保留となった場合には、たとえ同一トリップであっても、以降の診断では何らかの判定が可能となるケースも少なくない。この点、同請求項10記載の発明によるように、上記診断基準の変更によって故障の有無についての判定が保留となったときには、診断用圧力の再度の導入に基づく再度の診断を実行する構成とすることで、実路走行時の診断機会(診断頻度)を的確に増やすことができるようになる。
【0037】
また請求項11記載の発明は、請求項1〜10の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記エバポ経路の経路内圧力変動を積算し、その積算値が所定の設定値(thα)よりも小さいことを条件に前記圧力導入手段による診断用圧力の導入及び前記診断手段による診断を許可する前提条件監視手段を更に備えることを要旨とする。
【0038】
こうした故障診断装置を備えるエバポパージシステムにあっては、少なくともその診断中、エンジン吸気通路へのパージを行うことができないため、トリップ毎に、エバポ経路に対する診断用圧力の導入回数には制限が設けられていることが多い。またこのため、実路走行中にあって、エバポ経路に対する診断用圧力の導入と、該診断用圧力の導入後、経路内圧力の変動等を理由とする診断の中止とが繰り返されるようなことがあると、上記診断用圧力導入回数の制限によって、診断の機会が得られなくなることがある。この点、同請求項11記載の発明によるように、エバポ経路における経路内圧力の変動積算値が所定の設定値(thα)よりも小さいことを条件に圧力導入手段による診断用圧力の導入及び診断手段による診断を許可する前提条件監視手段を更に備える構成とすれば、実際に診断用圧力を導入することのできる機会は減少する可能性が高いものの、一旦上記の条件が成立して診断用圧力が導入され、且つ診断が開始された場合には、同診断が途中で中止されることなく最後まで遂行される可能性も高くなる。また、こうして診断が完了されれば、少なくとも当該トリップではその後の診断を中止することができ、ひいてはパージ流量も好適に確保されるようになる。
【0039】
また請求項12記載の発明は、請求項11記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、前記前提条件監視手段は、前記診断手段が診断の対象とする故障の度合いに応じて前記積算値に対する前記所定の設定値(thα)を可変とすることを要旨とする。
【0040】
上記診断手段が診断の対象とする故障の度合いとしては、エバポ経路に生じた穴の孔径の度合い(例えば「1.0mm」孔径程度の穴を診断対象とするか「0.5mm」孔径程度の穴を診断対象とするか)等があるが、このように度合いの異なる複数の故障を診断の対象とする場合には、それら診断の条件も各々異なる条件に設定されることが多い。そしてこのような場合、同請求項12記載の発明によるように、診断手段が診断の対象とする故障の度合いに応じて前記積算値に対する前記所定の設定値(thα)を可変とすることで、例えば「1.0mm」孔径程度の比較的大きな穴を診断の対象とする場合には上記診断用圧力を導入する機会を増やすことができるなど、上記前提条件監視手段を設ける場合であれ、診断の対象とする故障の度合いに応じたより柔軟な運用が可能になる。
【0041】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0042】
図1は、本実施の形態にかかるエバポパージシステム及びその故障診断装置を示す概略構成図である。
【0043】
同図1に示すように、車載されたエンジン10は、燃焼室11、吸気通路12、及び排気通路13を備えて構成され、また実施の形態にかかるエバポパージシステム20は、大きくは、燃料タンク30から発生する燃料蒸気を捕集するキャニスタ40や、その捕集された燃料蒸気をエンジン10の上記吸気通路12にパージするパージ通路71等を備えて構成される。
【0044】
ちなみにエンジン10の運転にあたっては、まず燃料タンク30内に備蓄された燃料が燃料ポンプ31によって汲み出され、燃料供給通路を通じてデリバリパイプ12aに送られた後、同デリバリパイプ12aに装着された燃料噴射弁12bによってエンジン10の吸気通路12に噴射供給される。
【0045】
なお、この吸気通路12において、その上流には、図示しないアクセルペダルの踏み込み操作に基づいて同吸気通路12の流路面積を可変とするスロットルバルブ12cが設けられており、更にその上流には、吸入空気の浄化を行うためのエアクリーナ12d、及びエンジン10への吸入空気量を検出するためのエアフローメータ12eがそれぞれ設けられている。
【0046】
さて、上記エバポパージシステム20にあって、燃料タンク30の天井壁には、圧力センサ32及びブリーザ制御弁33が設けられている。圧力センサ32は、燃料タンク30及び同タンク30と連通する空間の圧力を測定するためのものである。ブリーザ制御弁33は、ダイアフラム式の差圧弁であり、給油時等、燃料タンク30内の圧力がブリーザ通路34内の圧力より所定圧以上高くなるときのみ開弁して燃料蒸気をブリーザ通路34に逃がす仕組みとなっている。このブリーザ通路34は、直接キャニスタ40に連通している。この他、燃料タンク30内の空間は、ブリーザ通路34よりも通路の内径の小さなベーパ通路35にも連通している。このベーパ通路35は、タンク内圧制御弁60を介してキャニスタ40に連通している。タンク内圧制御弁60も、先のブリーザ制御弁33とほぼ同様の機能を有するダイアフラム式差圧弁である。同図1において示すように、タンク内圧制御弁60はその内部に、ダイアフラム61を備える。ダイアフラム61は、燃料タンク30内の圧力がキャニスタ40内の圧力より所定圧以上高くなるときのみタンク内圧制御弁60を開弁させる仕組みとなっている。ちなみに上述したブリーザ制御弁33もこのタンク内圧制御弁60とほぼ同一の構造を有する。
【0047】
キャニスタ40は、その内部に吸着材(活性炭)を備えており、燃料蒸気を該吸着材に吸着させて一時的に蓄えた後、負圧下におかれることによってこの吸着材に吸着させた燃料蒸気を再離脱させることが可能な構成となっている。
【0048】
またキャニスタ40は、上記ブリーザ通路34及びベーパ通路35を介して燃料タンク30と通じている他、上記パージ通路71に連通されるとともに、大気弁70を介して大気導入通路72及び大気排出通路73にも連通している。
【0049】
ここで、上記パージ通路71の通路途中には電磁弁からなるパージ制御弁71aが設けられており、同通路の他端が上記吸気通路12に連通している。
【0050】
一方、大気導入通路72の通路途中にも電磁弁からなる大気導入弁72aが設けられていて、同通路の他端は吸気通路12上流に設けられた上記エアクリーナ12dに連通している。
【0051】
大気弁70は、その内部に、各々が異なる弁機能を有するダイアフラムを2つ備える。まず、第1のダイアフラム74は、その背面側の空間74aがパージ通路71と連通しており、パージ通路71が所定圧以下の負圧状態になると開弁し、大気導入通路72からキャニスタ40内への外気の流入を許容する。一方、第2のダイアフラム75は、キャニスタ40内が所定圧以上の正圧に達すると開弁し、キャニスタ40内から大気排出通路73へ余分な空気を排出させる。
【0052】
キャニスタ40の内部は仕切板41によって2つの吸着材室に区画されており、一方の吸着材室は第1吸着材室42、他方の吸着材室は第2吸着材室43とされている。両吸着材室42、43は吸着材(活性炭)で満たされており、キャニスタ40底部において通気性フィルタ44を介して連通している。上述した燃料タンク30は、一方ではベーパ通路35及びタンク内圧制御弁60を介して、他方ではブリーザ通路34及びブリーザ制御弁33を介して第1吸着材室42に連通するようキャニスタ40に連結されている。また、大気導入通路72及び大気排出通路73は大気弁70を介して第2吸着材室43に連通するようキャニスタ40に連結されている。そして、上記パージ制御弁71aを備えるパージ通路71は、キャニスタ40の上記第1吸着材室42と吸気通路12の上記スロットルバルブ12c下流との間に連結されており、パージ制御弁71aの開弁動作に応じてそれら第1吸着材室42とスロットルバルブ12c下流とを連通する。
【0053】
すなわち、ベーパ通路35やブリーザ通路34から導入された燃料蒸気は、第1吸着材室42内の吸着材に一時的に吸着された後、パージ通路71に運ばれることとなる。また、大気弁70内に備えれられた第2のダイアフラム75が開弁してキャニスタ40内の余分な空気を大気排出通路73へ排出する場合にも、キャニスタ40内の気体中に残留する燃料蒸気は、第1吸着材室42及び第2吸着材室43を通過する際にその内部の吸着材に吸着され、燃料蒸気が外気に漏れることのないしくみとなっている。
【0054】
一方、負圧導入用通路80が、タンク内圧制御弁60の内部及びキャニスタ40の第2吸着材室43側を連絡するよう設けられている。この負圧導入用通路80の通路途中には、電磁弁からなる負圧導入制御弁80aが設けられている。この負圧導入制御弁80aが開弁することにより、負圧導入用通路80はタンク内圧制御弁60の内部と第2吸着材室43とを直接連通する。そして、特にパージ制御弁71aが開弁状態にあり、キャニスタ40内に負圧が導入されている状態で負圧導入制御弁80aを開弁すると、パージ通路71内の空間が、順次、第1吸着材室42→通気性フィルタ44→第2吸着材室43→負圧導入用通路80→タンク内圧制御弁60→ベーパ通路35→燃料タンク30に連通することとなる。また、ブリーザ通路34内の空間も本来第1吸着材室42と連通しているため、パージ通路71と同一空間を共有することとなる。
【0055】
このように、キャニスタ40内に負圧が導入されている状態で負圧導入制御弁80aを開弁することで互いに連通するエバポパージシステム20内の共有空間が同システム20におけるエバポ経路となる。本実施の形態にかかるエバポパージシステムの故障診断装置は、このエバポ経路の漏れの有無を判定することによってその故障の有無を診断することとなる。
【0056】
こうしたエンジン10と、このエンジン10の一部を構成するエバポパージシステム20及びその故障診断装置において、上記圧力センサ32やエアフローメータ12eをはじめとする各種センサの出力は、エンジン10の制御系並びに診断系としての役割を司る電子制御装置(以下、ECUという)50に対し入力される。このECU50は、燃料噴射弁12b、燃料ポンプ31、パージ制御弁71a、大気導入弁72a、及び負圧導入制御弁80a等を駆動制御するとともに、上記エバポ経路の漏れの有無に関する診断処理を実行する。
【0057】
図2は、このECU50のハードウエア構成についてその概要を示したものであり、次に、この図2を併せ参照して、同ECU50の内部構成を説明する。
【0058】
同図2に示すように、ECU50は、上記制御や診断にかかる各種処理を実行するCPU51a、読み出し専用の記憶媒体であるROM51b、読み出しと書き込みが自由な揮発性の記憶媒体であるRAM51c、及び読み込みと書き込みが自由で且つ、バッテリバックアップされることによりエンジン10の停止後も記憶内容が保存される不揮発性の記憶媒体であるバックアップRAM51d等を備えるマイクロコンピュータ51を中心に構成される。
【0059】
このマイクロコンピュータ51の入力ポートには、圧力センサ32やエアフローメータ12eのほか、回転数センサ、気筒判別センサ等、エンジン10の運転制御に必要な各種センサが接続されている。なお、これらセンサのうち上記圧力センサ32やエアフローメータ12e等、A/D(アナログ/ディジタル)変換の必要なセンサの出力はA/D変換回路を介して同入力ポートに取り込まれる。また、同マイクロコンピュータ51の出力ポートには、燃料噴射弁12b、燃料ポンプ31、パージ制御弁71a、大気導入弁72a、負圧導入制御弁80aを駆動する各駆動回路等が接続されている。ECU50は、マイクロコンピュータ51に取り込まれる各センサの出力に基づいて、燃料噴射等エンジン10の運転にかかる各種制御を実行するほか、圧力センサ32からの出力信号を認識しつつ、パージ制御弁71a、大気導入弁72a、及び負圧導入制御弁80aを開閉制御することによってエバポパージシステムの故障診断を実行する。
【0060】
次に、エバポパージシステム20のパージ制御にかかる動作態様について、その概要を説明する。
【0061】
燃料タンク30内に燃料蒸気が発生し、その蒸気圧が所定圧以上に達すると、差圧弁からなるタンク内圧制御弁60が開弁して燃料タンク30からキャニスタ40内への燃料蒸気の流入が許容される。また、例えば燃料供給時のように、燃料蒸気の蒸気圧が燃料タンク30内で急激に高まるような場合には、差圧弁からなるブリーザ制御弁33が開弁して、燃料タンク30からキャニスタ40内へのより大量の燃料蒸気の流入が許容される。
【0062】
キャニスタ40内に流入された燃料蒸気は、同キャニスタ40の内部に充填されている吸着材(活性炭)に一旦吸着される。
【0063】
その後、ECU(電子制御装置)50からの制御信号により適宜パージ制御弁71a及び大気導入弁72aが開弁されると、パージ通路71を介して吸気通路12からキャニスタ40内に吸気負圧が導入されるとともに、大気導入通路72を通じてエアクリーナ12aからキャニスタ40内に新気が導入される。これら負圧及び新気の導入によって、上記吸着材に吸着されている燃料蒸気が離脱し、該離脱した燃料蒸気がパージ通路71を介して吸気通路12にパージされる。
【0064】
次に、上記ECU50が実行するエバポパージシステムの故障診断についてその詳細を説明する。
【0065】
エバポパージシステム20の故障診断を実行するにあたっては、ECU50の制御指令により、大気導入弁72aが閉弁されるとともに、パージ制御弁71a及び負圧導入制御弁80aが開弁される。これらの動作により、キャニスタ40内が大気から遮断されるとともに、同キャニスタ40に吸気通路12からパージ通路71を介して負圧が導入される。また、負圧導入制御弁80aの開弁により、前述のように燃料タンク30、キャニスタ40、ブリーザ通路34、ベーパ通路35、そしてパージ通路71、すなわちエバポ経路内全体が負圧状態となる。そして、このエバポ経路の経路内圧は、燃料タンク30の天井壁に設けられた圧力センサ32によってモニタされる。
【0066】
この状態で一旦パージ制御弁71aを閉弁すると、エバポ経路内が負圧状態のままで密閉される。このときエバポ経路に異常がなければ、燃料タンク30内の燃料が蒸発することにより、エバポ経路内の圧力は、徐々に経路内に残った空気及び燃料蒸気が平衡状態に達したときの圧力に近づいていくこととなる。一方、エバポ経路に漏れがある場合には、エバポ経路内の圧力は急速に外気圧(大気圧)に近づいていくこととなる。このときのエバポ経路内の圧力推移に基づいて、ECU50はエバポパージシステムの故障を診断する。
【0067】
図3(a)は、本実施の形態の故障診断時におけるエバポ経路内圧の推移についてその一部を拡大して示すタイムチャートである。ただしタイムチャート上の全期間において、吸入空気量やその他のパージ制御に影響を及ぼすパラメータは全て一定であるものとする。
【0068】
ECU50が故障診断の動作に入ると、大気導入弁72aを閉弁するとともにパージ制御弁71a及び負圧導入制御弁80aを開弁してエバポ経路全体を所定負圧の負圧状態にした後、パージ通路71を閉鎖して、すなわちパージ制御弁71aを閉弁して同エバポ経路内を密閉状態とする。このとき同図に示すように、まず時刻t0においてエバポ経路への負圧導入を開始すると、その経路内圧はほぼ直線的に減少していく。そして、エバポ経路内圧が所定圧力P1を超える負圧となったことに基づき同経路内を密閉状態にすると、燃料の蒸発によって同経路内圧は上昇を開始する。ちなみに、エバポ経路内に穴開き等の故障がなければ、この圧力上昇は、燃料蒸気(気相)及び燃料(液相)間の関係が平衡状態に達するまで継続する。本実施の形態においては、この圧力上昇に基づき、エバポ経路内圧が再び所定圧力P1に達した時刻t1において、その圧力変化速度ΔP1(mmHg/秒、またはkPa/秒)を測定し、さらにその後、同エバポ経路内圧が所定圧力P2(ただし、P1<P2<大気圧)に達した時刻t2においても、その圧力変化速度ΔP2(mmHg/秒、またはkPa/秒)を測定する。そして、これら測定した圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)、及び所定圧力P2に達したときの圧力変化速度ΔP2に基づき、後に詳述するマップ(図4)を参照して、エバポ経路内に穴開き等の異常がある否かを診断する。
【0069】
一方、図3(b)には、燃料タンク30内の燃料残量が変動すると図3(a)に示した時刻t1以降の圧力上昇態様がどのように変化するかを示す。
【0070】
同図中において、曲線L1〜L3のうち、曲線L1によって示される圧力推移は燃料残量の最も多いときのものであり、曲線L3によって示される圧力推移は燃料残量の最も少ないときのものである。同図に示すように、燃料タンク内の燃料残量が少なくなるにつれて、エバポ経路内圧(タンク内圧)の変化速度は遅くなる傾向にあることが発明者らにより確認されている。
【0071】
また、図3(c)には、エバポ経路に穴開き等に起因する漏れが生じていると、図3(a)に示した時刻t1以降の圧力上昇態様がどのように変化するかを、漏れが生じていない(正常な)場合と比較して示す。
【0072】
同図3(c)中、時刻t1以降の実線で示す圧力推移が漏れ等の生じていない正常なエバポ経路に対応するものであり、一点鎖線で示す圧力推移が漏れの生じているエバポ経路に対応するものである。例えば、漏れのないエバポ経路内に、揮発性燃料(液相)と空気(気相)とが存在しているとき、当該エバポ経路内の圧力を急激に所定負圧下におけば、最初は燃料の蒸気圧によってエバポ経路内の圧力は所定の圧力上昇速度をもって正圧に向かうが、燃料蒸気圧と空気の分圧とが平衡状態に近づくにつれて同圧力の圧力上昇速度は急速に減速し、やがて平衡状態に達する。ところがこのエバポ経路内に漏れがある場合には、経路内の圧力が燃料蒸気と空気とが平衡状態にあるときの全圧よりも一層高い大気圧に向かって上昇し続けるため、同経路に漏れがない場合と比べて、全体的にはより高い圧力上昇速度をもって、しかも見かけ上はその圧力上昇速度が衰えることなく、より直線的に上昇を継続することとなる。すなわち同図に示すように、エバポ経路に漏れが生じている場合には、時刻t1以降の圧力上昇の態様がより直線に近づくこととなる。
【0073】
さらに、同図3(c)に示すように、エバポ経路内の圧力を所定負圧まで減圧して密閉状態にした直後、すなわち時刻t1付近ではエバポ経路が正常である場合の圧力上昇速度が異常である場合の圧力上昇速度を上回っており、その後、逆に異常な場合の圧力上昇速度が正常な場合の圧力速度を上回るようになることが発明者らによって確認されている。このように、エバポ経路の密閉後初期の段階で、正常である場合の圧力変化速度が異常である場合の圧力変化速度を上回るのは、エバポ経路を急激な負圧下におくことにより、燃料タンク内に一時的に高密度の燃料蒸気が発生するためであると推測される。
【0074】
これら図3(a)〜(c)に示したように、エバポ経路の所定負圧への減圧完了後、時刻t1以降の圧力上昇態様には以下の特性がある。
【0075】
・特性(a1):圧力の上昇速度は気相−液相の二相間の関係が平衡に近づくにつれて緩慢となる。例えば圧力がP1のときの圧力変化速度ΔP1は、圧力がP2のときの圧力変化速度ΔP2より大きい(図3(a)参照)。
【0076】
・特性(a2):圧力の上昇速度は燃料タンク内の燃料残量が少ないほど遅く、多いほど速い(図3(b)参照)。
【0077】
・特性(a3):エバポ経路に漏れがあってその密閉性が十分でなければ、外気(大気)の進入によって圧力の上昇速度が速くなり、且つ直線的に上昇していく傾向がある(図3(c)参照)。すなわち圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)は限りなく「1.0」に近づくようになる。
【0078】
・特性(a4):エバポ経路に漏れのある場合の圧力の上昇速度の推移と、漏れのない場合の圧力変化速度の推移とを比較すると、時刻t1直後には漏れのない場合の圧力変化速度が漏れのある場合の圧力変化速度を上回っており、その後、逆に漏れのある場合の圧力変化速度が漏れのない場合の圧力変化速度を上回るようになる(図3(c)参照)。
【0079】
そこで、上記特性(a1)〜(a4)を勘案して、本実施の形態では、エバポパージシステムの故障診断(漏れ検出)にあたり、図4に示すマップを適用することとしている。
【0080】
図4は、先の図3(a)の説明において示した故障診断動作によって得られる情報に基づき、エバポパージシステムの正常(漏れ無し)または異常(漏れ有り)を判定するために参照する判定マップを示す。
【0081】
同マップにおいては、先の図3(a)〜(c)で用いた圧力変化速度ΔP1に対する圧力変化速度ΔP2の比(ΔP1/ΔP2)を横軸のスケールとし、エバポ経路への負圧導入後、同経路内の圧力が所定圧力P2に達したときの圧力変化速度ΔP2を縦軸のスケールとする。以下、同判定マップを用いて正常・異常判定を行うにあたり、適用される判定基準の設定方法を概念的に説明する。
【0082】
まず、エバポパージシステムの異常を判定するにあたって、圧力変化速度ΔP2に着目すると、該圧力変化速度ΔP2が大きいほどシステムに異常(漏れ)のある可能性が高い。また、上記比(ΔP1/ΔP2)に着目すると、同比(ΔP1/ΔP2)が大きいほどシステムは正常(漏れ無し)である可能性が高い。これらの判断は、上記特性(a3)及び(a4)に鑑みてなされるものである。このため、所定圧力P2に達したときの圧力変化速度ΔP2としては、上記特性(a4)での記載に照らせば、漏れのある場合の圧力変化速度が漏れのない場合の圧力変化速度を上回った後の圧力変化速度が適用されなければならない。そこでこの所定圧力P2は、同条件に見合うように予め実験等を通じて設定されることとなる。
【0083】
ここで、同図4に示すように、本実施の形態では、圧力変化速度ΔP2が所定速度S2以上であれば、無条件に異常と判定する。一方、圧力変化速度ΔP2が所定速度S1未満であると、正常である可能性が高い。圧力変化速度ΔP2が所定速度S1以上S2未満の領域は、中間領域であり、基本的には判定保留の領域とする。
【0084】
また、上記特性(a3)に照らせば、比(ΔP1/ΔP2)が小さいほど(「1.0」に近づくほど)エバポ経路に異常のある疑いが強い。そこで例えば、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R2以下であると異常のある可能性があり、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R2より小さい所定値R1以下であればその可能性が一層大きくなると言えるような所定値R1及びR2を予め決めておく。これら所定値R1及びR2も、実験等を通じて設定される。例えば、漏れのないエバポ経路内に、揮発性燃料(液相)と空気(気相)とが存在しているとき、当該エバポ経路内の圧力を急激に所定負圧下におけば、最初は燃料の蒸気圧によってエバポ経路内の圧力は所定の上昇速度をもって正圧に向かうが、蒸気圧の分圧と空気の分圧とが平衡状態に近づくにつれて同圧力の圧力上昇速度は急速に減速し、やがては平衡状態に達する。このとき、その圧力上昇速度が衰えることなくエバポ経路内圧が上昇を継続すれば、エバポ経路に漏れがある疑いが強いということは図3(c)においても説明した通りである。ちなみに比(ΔP1/ΔP2)が「1.0」であるということは、圧力変化速度が全く衰えず直線的に内圧が上昇し続けていることを意味し、同比が大きくなるほどエバポ経路内圧の圧力変化速度は急速に減速していることを意味する。本実施の形態においては、圧力変化速度ΔP2の所定値S1を「0.05kPa/秒(キロパスカル/秒)」程度、所定値S2を「0.13kPa/秒」程度に設定するとともに、比(ΔP1/ΔP2)についてはその所定値R1を「1.5」程度、所定値R2を「2.0」程度に設定し、圧力変化速度ΔP2が所定値S1以上で且つ所定値S2未満である判定保留領域のうち、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R1以下である領域は異常判定領域と設定している。なお、上記各所定値S1、S2及びR1、R2の値はエバポ経路の容積等によって異なり、最適値は実験等で容易に求まる。
【0085】
一方、圧力変化速度ΔP2が所定値S1未満である領域は、本来はシステムが正常であると判定できる領域であるが、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R2である範囲を上限として同比が小さくなるほど異常の疑いが強まることは上述した通りである。また、圧力変化速度ΔP2が遅いほどシステムは正常である可能性が高くなることも上述した。
【0086】
そこで本実施の形態では、同図4において座標(R0,0),(R0,S1),(R2,S1)で囲まれた領域(α)も判定保留領域として設定する。
【0087】
ちなみに、図3(c)に例示したエバポ経路に異常(漏れ)がある場合の圧力推移と異常(漏れ)がない場合の圧力推移とを判別するにあたり、上記2点間の圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に代えて、2点間の圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)を適用した場合には、異常判定領域、正常判定領域、及び判定保留領域の境界の的確な区分も困難となる。
【0088】
例えば、エバポ経路内の圧力変化速度ΔP1が「2A」、圧力変化速度ΔP2が「A」である第1の圧力推移と、エバポ経路内の圧力変化速度ΔP1が「4A」、圧力変化速度ΔP2が「3A」であるという第2の圧力推移とを比較した場合(ただし、Aは任意の測定値)、第1の圧力推移下での圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)は、
2A−A=A …(1)
となり、第2の圧力推移下での圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)も
4A−3A=A …(2)
となるように、本来明らかに異なる圧力推移に対してもそれら両推移条件間の差異は生じない。
【0089】
これに対し、上記第1の圧力推移下での圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)は、
2A/A=2/1 …(3)
となり、上記第2の圧力推移下での圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)は、
4A/3A=4/3 …(4)
となるように、それら両推移条件間にその推移態様に応じた明確な差異が生じるようになる。
【0090】
すなわち、上記両推移条件下における圧力変化速度の初期値(ΔP1)や終値(ΔP2)が異なっていても、その変化量が同一である場合には、圧力変化速度の差によってはそれらの違いを識別することができない。これに対し、上記両推移条件下での圧力変化速度の比を比較すれば、それら両推移条件の違いを明確に判別することができるようになる。
【0091】
実際、図4に例示したマップ上において、圧力変化速度ΔP2が所定値S1〜S2の範囲の値を取る場合、圧力の変化速度の比(ΔP1/ΔP2)が「2/1」=「2.0」≒R2となる上記第1の圧力推移に関してはこれを「判定保留とし、また同圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)が「4/3」≒「1.3」<R1となる上記第2の圧力推移に関してはこれを「異常判定」とすることができる。しかし、圧力変化速度の差(ΔP1−ΔP2)を採用する場合には、上記第1及び第2の圧力推移についてその結果が共に「A」となることから、それら圧力推移について明確な診断を下すことが困難となる。
【0092】
以上、システムの正常・異常判定にかかる判定マップについて、その判定基準の設定態様について説明した。
【0093】
次に、同判定マップを利用して行うエバポパージシステムの故障診断の実際の手順について、フローチャートを参照して詳細に説明する。
【0094】
図5は、エバポパージシステムに異常(漏れ)が発生していないか否かを監視するための「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートである。本ルーチンは、ECU50により所定時間毎に周期的に実行される。
【0095】
さて、処理がこのルーチンに移行すると、ECU50はまずステップ1000において、故障診断の前提条件が成立しているか否かを判断する。具体的には、以下に例示列記する各条件(b1)〜(b3)が全て満たされているときにのみ故障診断の前提条件が成立しているものとみなす。
【0096】
(b1)空燃比A/Fに乱れがないこと。
【0097】
(b2)車速が安定していること。
【0098】
(b3)空燃比制御やパージ制御等にかかる各種学習値の登録が一旦完了していること。
【0099】
なお図1では便宜上、上記空燃比A/Fを検出するための空燃比センサ(酸素センサ)や車速を検出するための車速センサ等についての図示を割愛した。
【0100】
そしてECU50は、上記条件(b1)〜(b3)がすべて満たされていると認識すればその処理をステップ1001に移行し、1つでも満たされていないと認識すれば本ルーチンを一旦抜ける。
【0101】
ステップ1001においては、パージ制御弁71a及び負圧導入制御弁80aを開くとともに、大気導入弁72aを閉じる。このため、エバポ経路の外部への連通は吸気通路12に対してのみとなり、大気への直接の連通路は遮断されることとなる。その結果、同エバポ経路内に負圧が導入され、減圧されていくこととなる。この後、ECU50は、エバポ経路内での減圧が進んでその経路内圧力が前記所定圧力P1(P1<大気圧)以下に達したことを認識する。なお、ステップ1001でのこうした処理は、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が上記所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。
【0102】
そして続くステップ1002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔPをモニタしていく。なお、上記パージ制御弁71aの閉弁操作によってエバポ経路内は当初所定圧力P1の状態下にあるが、燃料タンク内の燃料の蒸気圧によって徐々に上昇していくことは前述した。
【0103】
さらに続くステップ1003では、エバポ経路内の圧力が所定値P1から所定値P2に達するまでに要する所要時間ΔTが所定時間ΔT1(例えば60秒)を上回っているか否かを判断する。
【0104】
ここで、先の図3に対応する図として図6に例示するように、もしエバポ経路に漏れがなければ、燃料タンク30内の燃料の蒸発のみによって同経路内の圧力上昇が起こることとなるため、この所要時間ΔTが上記時間ΔT1等、ある程度以上長ければ、エバポ経路に漏れがないと確定でき、より緻密な判定基準に頼るまでもない。すなわち、この所定時間ΔT1は、エバポ経路に漏れがないと確定するに十分な長さの時間として設定され、予め実験等により求められる。
【0105】
そこで本実施の形態では、同ステップ1003における判断が肯定であった場合、ECU50は、エバポ経路内の圧力の上昇が燃料タンク30内の燃料の蒸発のみに起因して起こり、外気(大気)の流入によって圧力の上昇が促進されるようなことは無かったことを認識する。すなわちECU50は、このステップ1003での判断が肯定であれば処理をステップ1004に移行し、同エバポ経路は正常であるとの判定を行った上で、本ルーチンを抜ける。
【0106】
一方、同ステップ1003での判断が否定であった場合、ECU50はその処理を続く診断手順であるステップ1005に移行する。
【0107】
ステップ1005では、エバポ経路内圧が所定値P2に達したか否かを判断し、該所定値P2に達していれば、ステップ1006において、先にエバポ経路内の圧力が所定圧P1に達した直後の所定時間ΔTs(例えば5秒間:図6)での圧力変化速度ΔP1と、同経路内圧力が所定圧P2に達した直後の所定時間ΔTs(例えば5秒間:図6)間での圧力変化速度ΔP2をそれぞれ認識する。そして、それら両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)を算出する。
【0108】
ステップ1007においては、上記ステップ1006において認識した圧力変化速度ΔP2及び比(ΔP1/ΔP2)に基づき、先の図4に示した判定マップを参照して、エバポ経路の異常(穴あり)または正常(穴なし)を判定するか、若しくは判定を保留する。
【0109】
すなわち、先の図4においても説明したように、基本的には圧力変化速度ΔP2が所定値S2以上である場合にはエバポ経路に異常があり、所定値S1未満である場合にはエバポ経路は正常であるとし、所定値S1以上で且つ所定値S2未満である場合には判定を保留する。ただし、この判定保留の範囲内であっても、比(ΔP1/ΔP2)が所定値R1以下である場合にはエバポ経路に異常がある旨判定する。さらに、圧力変化速度ΔP2が所定値S1未満であっても、比(ΔP1/ΔP2)との兼ね合いで規定される判定マップ上の座標が図4中のいわゆる領域αに属する場合には判定を保留することも先の図4において説明した通りである。
【0110】
本実施の形態では、上記のような手順に基づいてエバポ経路の故障診断を実行する。そして上記説明から明らかなように、同故障診断においては、基本的にはエバポ経路内圧が所定圧力P2にあるときの圧力変化速度ΔP2に基づいてシステム20の故障を診断する。ただし、エバポ経路を所定圧力P2まで減圧したところでいきなり圧力変化速度の測定を開始するのではなく、圧力推移の態様が安定するようしばらく間をおいた後に測定を開始できる構成としている。すなわち、まずエバポ経路内圧を圧力P2より低い圧力P1まで一旦減圧し、同圧力P1から圧力P2を通過して上昇を続ける圧力上昇の過程をモニタする。そして、エバポ経路内圧が圧力P1にあるときの圧力変化速度ΔP1を演算するとともに、圧力P2にあるときの圧力変化速度ΔP2に対する変化率(ΔP1/ΔP2)をも考量して圧力推移の異常の有無を検出することとしている。
【0111】
ちなみに、エバポ経路内圧が圧力P2付近にあるときの圧力変化速度のみを判断基準としてエバポ経路の漏れを診断しようとすると、エバポ経路内の条件によっては以下のような問題が生じることがある。
【0112】
例えば、同じく先の図3に対応する図として図7に例示するように、
(条件1):揮発性の高い燃料が燃料タンクに入っている場合、または燃料残量が多い場合、またはその両方の組み合わせにおいて、エバポパージ経路が正常である場合。
【0113】
(条件2):揮発性の低い燃料が燃料タンクに入っている場合、または燃料残量が少ない場合、またはその両方の組み合わせにおいて、エバポ経路に上記孔径に0.5mm程度の微小な穴が空いている場合。
といった2条件にあっては、エバポ経路内圧が圧力P2にあるときの両者の圧力変化速度(各線の傾き)ΔP2に明確な差異が顕れないため、この圧力変化速度のみを判断基準としたのでは誤判定を生じ易い。
【0114】
この点、同診断に上記圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の組み合わせを適用する本実施の形態の故障診断装置によれば、その信頼性も自ずと高いものとなり、上記孔径0.5mm程度の微小な穴による漏れの有無も十分に判別できるようになる。
【0115】
さらに本実施の形態では、上記構成に加えて、特に揮発性の低い燃料が用いられる場合、あるいは燃料残量が少ない場合に頻発するケースとして、エバポ経路に漏れがなく経路内圧の上昇速度が遅い場合、すなわち所定圧P2に達するまでに要する時間ΔTが十分長い場合には(ΔT>ΔT1)、経路内圧が所定値P2に達するのを待つまでもなく正常判定をおこなうこととしている。このため、エバポ経路が正常な場合にはその判定時間も短縮されるようになる。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下のような効果が奏せられるようになる。
【0117】
(1)燃料タンク内の燃料の性状や燃料残量の相違等、エバポパージシステム内の燃料蒸気の状態が異なる場合であれ、信頼性の高い故障診断が行われるようになる。
【0118】
(2)互いに微小な圧力差しかない2つの測定点での圧力推移から、正確な故障診断を行うことができるようになる。
【0119】
(3)エバポ経路内に漏れがないことが確実なときには、その旨を早期に判断することができるようになる。またこれにより、故障診断にかかる一連の処理をより高い頻度で繰り返すことができるようにもなる。よって故障診断の信頼性が一層増す。
【0120】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0121】
上述のように、エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力P1から第2の所定圧力P2に移行するまでに十分な時間を要するとすれば、第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1と第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)、あるいは第2の圧力変化速度ΔP2をとるまでもなく、エバポ経路内に漏れのないことを確定することができる。
【0122】
またこの傾向が更に顕著である場合には、先の第1の実施の形態において設定した上記所定時間ΔT1の経過を必ずしも待たなくとも、当該エバポ経路を故障無しと診断することが可能となる場合がある。すなわち、エバポ経路内に漏れがなく、且つ燃料タンク内での燃料蒸気発生量が少ない場合には、診断用圧力導入後におけるエバポ経路内の圧力変化も極めて僅かなものとなる。
【0123】
このことを更に詳述すると、先の図3あるいは図6に対応する図として図8に例示するように、エバポ経路が正常であったとしても、燃料の性状や燃料残量等に応じた燃料タンク内での燃料蒸気発生量によっては、吸気負圧導入後におけるエバポ経路内の圧力推移も各種異なったものとなる。すなわち、燃料タンク内での燃料蒸気発生量が比較的多い場合には図8に特性線L21として示すような圧力推移となり、同燃料蒸気発生量が少ない場合には図8にL22として示すような圧力推移となり、同燃料蒸気発生量が更に少ない場合には図8にL23として示すような圧力推移となる。
【0124】
そして、上記特性線L21として示す圧力推移については、
(イ)エバポ経路内での第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1と第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)、及び第2の圧力変化速度ΔP2によって定まる点が図4に例示したマップにおいて「正常判定」領域にあること。
に基づいて同圧力推移が正常である旨を判定することができ、また、上記特性線L22として示す圧力推移については、
(ロ)エバポ経路内の圧力が第1の所定圧力P1から第2の所定圧力P2に移行する以前に所定時間ΔT1が経過したこと。
に基づいて同圧力推移が正常である旨を判定することができることは、先の第1の実施の形態において説明した通りである。
【0125】
しかし、上記特性線L23として示す圧力推移のように、その圧力変化が極めて僅かである場合には、上記所定時間ΔT1の経過を必ずしも待たなくとも、同図8に併せ示すように、
(ハ)エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力P1に達した時点から所定時間ΔThの経過後、同圧力が第2の所定圧力P2よりも第1の所定圧力P1に近い第3の所定圧力Ph未満にあること。
をもって同圧力推移が正常である旨を判定することができるようになる。しかもこの場合には、上記第3の所定圧力Phの設定に応じて上記所定時間ΔThを極めて短い時間に設定することが可能となり、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときに、これを更に早い機会に判断することができるようになる。
【0126】
そこで、この第2の実施の形態では、先の第1の実施の形態による上記(イ)及び(ロ)の診断に併せて、上記(ハ)の診断をも行うようにする。
【0127】
図9は、こうした第2の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、この図9を併せ参照して同第2の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の第1の実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン(図5)」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0128】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50はまず、ステップ2000及び続くステップ2001において、先の第1の実施の形態の故障診断ルーチンにおけるステップ1000及び続くステップ1001で行う処理と同様の処理を行う。すなわち、まずステップ2000においては故障診断の前提条件が成立しているか否かを判断し、その判断が肯定ある場合に限り処理をステップ2001に移行し、その判断が否定である場合には一旦本ルーチンを抜ける。ステップ2001においては、パージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、ステップ2001でのこうした処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。
【0129】
続くステップ2002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔPをモニタしていく。
【0130】
さらに続くステップ2003では、エバポ経路内の圧力が所定値P1に達した時点から図8に示した上記所定時間ΔTh(例えば15秒)が経過したか否かを判断し、該所定時間ΔThを経過していれば、次のステップ2004で、エバポ経路内の圧力がこれも図8に示した上記第3の所定圧力Ph未満にあるか否かを判断する。
【0131】
そして、このステップ2004において、エバポ経路内の圧力が上記所定圧力Ph未満にある旨判断される場合には、処理をステップ2005に移行し、エバポ経路は正常であるとの判定を行った上で、本ルーチンを抜ける。
【0132】
こうして、エバポ経路の経路内圧力が所定値(第1の所定圧力)P1に達した時点から所定時間ΔThの経過後、同圧力が第3の所定圧力Ph未満にあることをもってその圧力推移が正常、すなわちエバポ経路内が正常である旨を判定することができることは図8を参照して上述した通りである。そしてこの場合には、上記所定時間ΔThも先の所定時間ΔT1に比べて極めて短い時間に設定されることから、エバポ経路内に漏れがないことが確実なときに、これを更に早い機会に判断することができるようになることも上述した。
【0133】
他方、上記ステップ2003及び2004において、上記所定時間ΔTh経過後、エバポ経路内の圧力が上記所定圧力Ph以上である旨判断される場合には、ステップ2006〜2009の処理を通じて、先の第1の実施の形態のステップ1003(図5)以降の処理と同様の手順のもとに、当該エバポ経路の診断動作が実行される。
【0134】
すなわち、エバポ経路内の圧力が所定値P1から所定値P2に達するまでに要する所要時間ΔTが所定時間ΔT1(例えば60秒)を上回る場合には、エバポ経路内の圧力の上昇が燃料タンク30内の燃料の蒸発のみに起因して起こり、大気の流入によって圧力の上昇が促進されるようなことは無かったとして、ステップ2005を通じてエバポ経路は正常であるとの判定を行った上で、本ルーチンを抜ける。
【0135】
一方、エバポ経路内の圧力が上記所定時間ΔT1以内に所定値(第2の所定圧力)P2に達した場合には、この所定値P2に達したときの圧力変化速度ΔP2及び前記圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、先の図4に示した判定マップを参照して、エバポ経路の異常(穴あり)または正常(穴なし)を判定するか、若しくは判定を保留する。
【0136】
このように、エバポ経路の診断に上記圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の組み合わせを適用することによって、前述したように、燃料タンク内の燃料の性状や燃料残量の相違等に拘らず、例えば孔径0.5mm程度の微小な穴による漏れの有無についても、これを十分な精度をもって判別できるようになる。
【0137】
以上説明したように、上記手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態による前記(1)〜(3)の効果に加えて、更に以下のような効果が奏せられるようになる。
【0138】
(4)エバポ経路内に漏れがないことが確実なとき、前記所定時間ΔT1よりも更に短い時間ΔThをもって、その旨をより早期に判断することができるようになる。
【0139】
(5)また、こうしてエバポ経路内に漏れがないときの正常判定の実行が促進されることで、上記圧力変化速度ΔP2の算出時に何らかの外乱が発生して誤判定されるようなおそれも未然に抑制されるようになる。
【0140】
(6)また、こうした故障診断装置を備えるエバポパージシステムにあっては、少なくともその診断中、吸気通路12(図1)へのパージを行うことができないため、こうした診断が頻繁に繰り返される場合には、パージ流量の確保が困難となることがある。この点、同第2の実施の形態の装置では、エバポ経路正常時の診断時間が上記極めて短い時間ΔThに短縮されるため、パージ流量の確保も容易となる。
【0141】
(第3の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第3の実施の形態について、上記第1及び第2の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0142】
こうしたエバポパージシステムの故障診断装置にあっては、同システムを搭載する車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動すると、エバポ経路の経路内圧力も変動し、その診断内容に支障をきたすことがある。
【0143】
そこで、この第3の実施の形態の装置では、診断中、エバポ経路内を密閉状態にしている際、同エバポ経路内の圧力及び圧力変化速度のモニタリングに加え、エバポ経路内の圧力変動レベルの把握も併せて行うようにする。なおここでいうエバポ経路内の圧力変動レベルとは、圧力センサ32(図1)を通じて検出される圧力の所定の微小時間における変化量の2階差分値(ΔΔP)であり、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、揺動等による燃料蒸気圧の変動を反映するパラメータとなっている。
【0144】
そしてこの第3の実施の形態では、このような圧力変動レベルを逐次把握するとともに、予めこの圧力変動レベルの違いに応じて、先の図4に示した判定マップを例えば図10(a)〜(c)に例示する態様でアレンジした複数のマップを用意しておき、それら複数のマップを選択的に適用してエバポパージシステムの故障診断を行う。
【0145】
ここで、図10(a)は、アイドル状態など最も低い圧力変動レベルに対応して選択される判定マップを示し、また図10(c)は、診断の継続を許容できる範囲内での最も高い圧力変動レベルに対応して選択される判定マップを示し、そして図10(b)は、それら圧力変動レベルの中間レベルに対応して選択される判定マップを示す。
【0146】
これら各判定マップにおいても、異常、正常または判定保留の何れかを決めるための判定基準は、先の図4に示した判定マップと同様の概念に基づくが、この第3の実施の形態で適用する複数のマップ上では同図10(a)〜(c)に示されるように、圧力変動レベルが小さいほど判定保留の領域を狭め、圧力変動レベルが大きいほど判定保留の領域を拡大するようにしている。
【0147】
このような複数の判定マップの選択的な適用により、例えば走行時の加減速、旋回やレーンチェンジ、若しくは路面の荒れなどに起因して圧力変動レベルが大きくなるとき、すなわち外乱によって誤判定の可能性が高くなるときには、判定保留となるか、若しくは確実に異常または正常を判断できる領域でのみ異常あるいは正常の判定が行われることとなる。一方、アイドル時などのように圧力変動レベルが小さいとき、すなわち外乱の小さな条件下では、異常または正常の何れかにかかる判定がより行われやすくなる。
【0148】
図11は、こうした第3の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、同図11を併せ参照して同第3の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の第1あるいは第2の実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン(図5、図9)」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0149】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50はここでも、ステップ3000及び続くステップ3001において、先の第1の実施の形態の故障診断ルーチンにおけるステップ1000及び続くステップ1001で行う処理と同様の処理を行う。すなわち、まずステップ3000においては故障診断の前提条件が成立しているか否かを判断し、その判断が肯定ある場合に限り処理をステップ3001に移行し、その判断が否定である場合には一旦本ルーチンを抜ける。ステップ3001においては、パージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。ステップ3001でのこうした処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われることは先の実施の形態の場合と同様である。
【0150】
続くステップ3002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔP及び圧力変動をモニタしていく。圧力変化速度ΔPのモニタは、第1の実施の形態の診断ルーチンにおけるステップ1002での処理内容と同一であるが、本ステップ3002では圧力変動を併せてモニタする点で前記ステップ1002にかかる処理とは異なる。
【0151】
そして、ステップ3003では、ここでモニタされる圧力変動が所定レベル以上大きいか否かを判断し、所定レベル以上に大きなものであれば、今回の診断は見合わせ一旦本ルーチンを抜けることとなる。
【0152】
また、診断を継続するに場合には、第1の実施の形態の診断ルーチンにおけるステップ1005及び1006と同一の処理、すなわちエバポ経路内の圧力が所定値P2に達したことの確認のもとに(ステップ3004)、圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出を行う(ステップ3005)。
【0153】
そして続くステップ3006において、圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、判定マップを参照してエバポ経路の正常・異常を判定する。ただし、このときには上述のように、図10(a)〜(c)に例示する態様で用意された複数のマップを選択的に適用して同エバポ経路の故障診断を行う。
【0154】
このような複数の判定マップの選択的な適用により、車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動し、エバポ経路の経路内圧力が変動することとなっても、その変動度合いに応じて診断基準が可変とされ、漏れ診断にかかる診断精度が好適に保持されるようになる。
【0155】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第3の実施の形態によれば、第1あるいは第2の実施の形態による前記(1)及び(2)の効果に加えて、更に以下のような効果が奏せられるようになる。
【0156】
(7)エバポ経路内の圧力変動度合い(圧力変動レベル)に応じた信頼性の高いエバポパージシステムの故障診断を行うことができるようになる。
【0157】
(8)実路走行時における車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因するエバポ経路内の圧力変動に柔軟に対応し、精度の高い診断をより高い頻度をもって行うことができるようになる。
【0158】
(9)外乱によって誤判定の可能性が高くなるときには、判定保留とされるか若しくは確実に異常または正常を判断できる領域でのみ異常あるいは正常の判定が行われることとなる。
【0159】
(10)エバポ経路の経路内圧力の変動度合いが所定以上となるときには診断を中断するようにしたことで、確実にシステムの正常・異常を診断できる条件が整わない状態でのあいまいな診断を回避することができるようにもなる。
【0160】
なお、同第3の実施の形態においては、エバポ経路内の圧力変動度合い(圧力変動レベル)に応じて図10(a)〜(c)に例示したような複数の判定マップを用意するとしたが、圧力変動の補償を行うのに、必ずしもこうした判定マップを複数用意する必要はない。すなわち、判定マップとしては先の図4に例示した単一のマップを用意し、同マップの、図10(a)〜(c)に各々領域Zとして示した部分を上記圧力変動度合い(圧力変動レベル)に応じて順次かさ上げ補正することとしても、上記に準じた効果を得ることはできる。
【0161】
(第4の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第4の実施の形態について、上記第3の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0162】
上述のように、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、あるいは路面の荒れ等に起因して燃料タンク内の燃料が揺動すると、エバポ経路の経路内圧力が変動することがある。
【0163】
ただし、上記診断は、エバポ経路内での第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1と第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)、及び第2の圧力変化速度ΔP2に基づいて行われることから、上記経路内圧力の変動度合いに応じた診断基準の変更も、実質的にはこれら各圧力変化速度ΔP1及びΔP2の算出期間中における同経路内圧力の変動度合いに応じて行われることで必要十分である。
【0164】
そこで、この第4の実施の形態では、先の図3あるいは図6に対応する図として図12に示すように、エバポ経路に対する吸気負圧導入後の全診断区間のうち、上記第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TAと上記第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TBとの2つの区間に限って上記経路内圧力の変動度合い(圧力変動レベル)をモニタする。
【0165】
そして、これらモニタした圧力変動レベルが各々診断の継続を許容できる所定の範囲内に収まっていた場合には、図13に示すように、上記区間TBでの圧力変動レベルの積算値(揺れ量)ΣΔΔPに応じて、その診断基準を可変とする。具体的には、上記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域を、同図13に示される態様でかさ上げ補正する。
【0166】
なおここで、上記圧力変動レベルが圧力センサ32(図1)を通じて検出される圧力の所定の微小時間における変化量の2階差分値(ΔΔP)であり、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、揺動等による燃料蒸気圧の変動を反映するパラメータとなっていることは上述の通りである。そして、この2階差分値(ΔΔP)の積算値が上記揺れ量ΣΔΔPとなる。
【0167】
また、図13に示す揺れ量ΣΔΔPに応じた異常判定域のかさ上げ補正マップは、先の図4に例示した判定マップに対し、この揺れ量ΣΔΔPといった三次元的な要素が加わることとなるが、同図13に示される異常判定域のかさ上げ補正態様とは、二次元的には、先の図10(a)に例示した判定マップから同図10(c)に例示した判定マップまで、それらに付記した領域Zの部分を上記揺れ量ΣΔΔPに応じて連続的に変更していくことに相当する。
【0168】
図14は、こうした第4の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、この図14を併せ参照して同第4の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の第1あるいは第2の実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン(図5、図9)」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0169】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、ステップ4000及び続くステップ4001において、先の各実施の形態の故障診断ルーチンと同様、故障診断の前提条件が成立しているか否かの判断、及びその判断が肯定あることを条件にパージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い、吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、これまでの実施の形態と同様、ステップ4001の処理は、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。
【0170】
続くステップ4002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔP及び圧力変動をモニタしていく。
【0171】
そして、ステップ4003では、上記所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TAに限って、そこでモニタされる圧力変動が所定レベル以上大きいか否かを判断し、同モニタされる圧力変動が所定レベル以上に大きなものであれば、今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0172】
また、診断を継続するに場合には、続くステップ4004において上記所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TBに到達したか否かを判断し、該区間TBに到達している旨判断される場合には、次のステップ4005にて、同区間TBでモニタされる圧力変動が所定レベル以上大きいか否かを判断する。そして、このモニタされる圧力変動が所定レベル以上に大きなものであれば、上記ステップ4003での処理と同様、今回の診断は見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0173】
なお、少なくとも上記ステップ4005において今回の診断が見合わせとなる場合とは、図13に例示したマップにおいて、上記揺れ量ΣΔΔPが「判定やり直し」の領域に入る程度に、上記区間TBでモニタされる圧力変動が大きかった場合に相当する。上記ステップ4003において今回の診断が見合わせとなる条件も概ねこれに準じたものとなっている。
【0174】
そして、上記ステップ4005において上記区間TBでモニタされる圧力変動が所定の許容範囲内に入っている旨判断される場合には、続くステップ4006において、先の図4に例示した判定マップに対し、図13に例示した態様で、同区間TBでの揺れ量ΣΔΔPに応じた補正が行われる。すなわち、上記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域に対し、同揺れ量ΣΔΔPに応じて図13に例示した態様でのかさ上げ補正が行われる。
【0175】
こうして必要に応じてマップ補正が行われた後は、次のステップ4007において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、さらに次のステップ4008において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、上記補正された判定マップを参照してエバポ経路の正常・異常が判定される。
【0176】
同診断ルーチンにあってはこのように、エバポ経路に対する吸気負圧導入後の全診断区間のうち、診断に用いる圧力変化速度の算出区間である区間TAと区間TBとに限って同経路内の圧力変動レベルがモニタされるとともに、上記区間TBでの圧力変動レベルの積算値(揺れ量)ΣΔΔPに応じてその診断基準が可変とされる。このため、上記経路内圧力の変動度合い監視にかかるより小さな演算負荷のもとに上記診断基準の変更、並びに該診断基準の変更に基づく診断精度の補償が行われるようになる。
【0177】
また、上記経路内圧力の変動度合いが所定以上となるときに当該診断を中断する場合であれ、上記区間TA及びTB以外の経路内圧力の変動度合いによって同診断が中断されることはないため、実路走行中における診断機会(診断頻度)の増大が図られることともなる。
【0178】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第4の実施の形態によっても、第1あるいは第2の実施の形態による前記(1)及び(2)の効果に加えて第3の実施の形態による前記(7)〜(10)の効果が奏せられるとともに、更に以下のような効果も併せ奏せられるようになる。
【0179】
(11)エバポ経路内の圧力変動度合いの監視にかかるより小さな演算負荷のもとに上記診断基準の変更、並びに該診断基準の変更に基づく診断精度の補償が行われるようになる。
【0180】
(12)上記経路内圧力の変動度合いが所定以上となるときに当該診断を中断する場合であれ、上記区間TA及びTB以外の経路内圧力の変動度合いによって同診断が中断されることはないため、実路走行中における診断機会(診断頻度)の増大が図られ、ひいては故障診断にかかる更なる信頼性の向上が図られることともなる。
【0181】
なお、この第4の実施の形態にあっては、所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出期間ΔTsを上記区間TBとしたが、同区間TBについては必ずしもこれを上記圧力変化速度ΔP2の算出期間ΔTsに一致させる必要はない。例えば、上記圧力変化速度ΔP2の算出以前にRAM51c(図2)等に記憶されている圧力変動レベル(ΔΔP)の値を併せ加味することとして、上記マップ補正にかかる精度や信頼性の更なる向上を図るようにしてもよい。
【0182】
(第5の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第5の実施の形態について、上記第1〜第4の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0183】
上記圧力センサ32(図1)としては通常、大気圧との相対圧を検出するタイプのセンサが用いられることから、車両の登坂走行中や降坂走行中には、それら大気圧の変化に応じて上記検出されるエバポ経路の経路内圧力も変化する。
【0184】
すなわち、車両の登坂走行中には、その登坂に伴ってエバポ経路の経路内圧力が上昇するようになることから、例えば図15(a)に実線U1として示すような平路走行中には正常である旨診断される圧力推移も、該登坂走行時には、同図15(a)に破線U2として示すような上昇傾向の圧力推移となり、誤って異常と診断されるおそれがある。ただしこの場合であれ、エバポ経路にそもそも異常があるような場合には、こうした圧力推移の変化も特に問題とはならない。
【0185】
また逆に、車両の降坂走行中には、その降坂に伴ってエバポ経路の経路内圧力が下降するようになることから、例えば図15(b)に実線D1として示すような平路走行時には異常(微小な穴開き)である旨診断される圧力推移も、該降坂走行中には、同図15(b)に破線D2として示すような下降傾向の圧力推移となり、誤って正常と診断されるおそれがある。ただしこの場合であれ、エバポ経路がそもそも正常であったような場合には、こうした圧力推移の変化も特に問題とはならない。
【0186】
他方、例えば一定の車速のもとでの登坂時にはエンジン負荷の増大に伴って同エンジンの吸入空気量が増大し、逆に一定の車速のもとでの降坂時にはエンジン負荷の減少に伴って同エンジンの吸入空気量が減少する。すなわち、車速がほぼ一定であった場合には、エンジンの吸入空気量を監視することで、同車両が登坂走行中であるか、あるいは降坂走行中であるかを判断することができる。
【0187】
そこで、エバポパージシステムの故障診断に際しても、先の図3あるいは図6に対応する図として図16に示すように、例えば
・車速がほぼ一定である条件のもとでのエバポ経路に対する吸気負圧導入前の前提条件確認区間TO、吸気負圧導入後における上記第1の所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TA、及び上記第2の所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TBにおいて、前記エアフローメータ12e(図1)を通じて検出される吸入空気量を求める。
とともに、
・少なくとも上記区間TO及び上記区間TB間での空気量変化(QO −QB )を監視して、同空気量変化(QO −QB )が所定範囲を超える場合には精度不足として判定をやり直す(なお、空気量QO と空気量QB とは同一の監視期間(例えば5秒間)に換算した値を用いるとする)。
こととすれば、車両の登坂走行、降坂走行に起因する上述した誤異常や誤正常といった誤診断の発生を回避することができるようになる。
【0188】
ここで、車両の登坂走行、降坂走行に起因する誤診断を回避し得る上記空気量変化(QO −QB )の所定範囲が、通常、どの程度の範囲として設定されるかを図17及び図18を参照して説明する。
【0189】
周知のように、標高が「1m」上る毎に「0.1mmHg」ずつ気圧が下がることから、例えば孔径0.5mm程度の微小な穴の検出に対する当該エバポ経路としてのS/N(信号対雑音比)余裕度が「0.2mmHg/5秒」であったとすると、前記圧力変化速度ΔPの算出期間ΔTs(5秒間)で標高の変化が「2m」以内の勾配変化については、たとえ登坂、降坂走行中であっても、十分な精度をもって上記穴の検出(診断)が可能となる。
【0190】
そして、車速が例えば「50km/h」、「80km/h」、「110km/h」等々、各々一定のもとで登坂、降坂走行を行ったときの、上記S/N余裕度に基づく上記5秒間でのそれら速度別に許容される斜度(%)は、図17に示されるように、
・車速 50km/hで約3%
・車速 80km/hで約2%
・車速110km/hで約1.4%
となる。
【0191】
一方、このように車速一定のもとで登坂、降坂走行を行ったときの、上記S/N余裕度に基づく各許容斜度と吸入空気量との関係は、概ね図18に示される関係となる。
【0192】
この図18から明らかなように、上記S/N余裕度に基づく許容斜度は車速毎に異なるものの、それら各許容斜度での吸入空気量は、たとえ車速が異なっていても全て約「±4g/秒」と、ほぼ一定となっている。
【0193】
そして、この約「±4g/秒」といった空気量を上記5秒間に換算すると、約「±20g/5秒」となる。すなわち、図16に基づき説明した上記空気量変化(QO −QB )の判定値としては、この「±20g/5秒」が許容範囲となり、同空気量変化(QO −QB )を
−20g ≦ 空気量変化(QO −QB ) < 20g …(5)
で制限することにより、車両の登坂走行、降坂走行に起因する上述した誤異常や誤正常といった誤診断の発生を回避することができるようになる。
【0194】
ただし、車両の実路での走行を考えた場合、吸入空気量変化に対するこのような制限は、当該故障診断装置としての診断頻度、すなわち穴等に対する検出率の低下を招くことともなり、必ずしも望ましくはない。
【0195】
そこで、この第5の実施の形態では、上記(5)式にかかる制限を、例えば
−50g ≦ 空気量変化(QO −QB ) < 50g …(6)
のように緩和するとともに、上記空気量変化(QO −QB )が該(6)式の範囲に収まっていた場合には、図19に示すように、同空気量変化(QO −QB )に応じてその診断基準を可変とする。具体的には、上記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域を、同図19に示される態様でかさ上げ補正する。
【0196】
なお、図19に示す空気量変化(QO −QB )に応じた異常判定域のかさ上げ補正マップも、先の図13に例示した補正マップと同様、先の図4に例示した判定マップに対しこの空気量変化(QO −QB )といった三次元的な要素が加わることとなるが、この図19に示される異常判定域のかさ上げ補正態様も、二次元的には、先の図10(a)に例示した判定マップから同図10(c)に例示した判定マップまでそれらに付記した領域Zの部分を上記空気量変化(QO −QB )に応じて連続的に変更していくことに相当する。
【0197】
また、同第5の実施の形態では、上記異常判定域のかさ上げ補正に際し、上記(5)式での許容範囲である「−20g/5秒」を基準として、例えば「Δ10g/5秒の空気量変化に対し0.1mmHgの割合」で同異常判定域をかさ上げ補正することとする。この「Δ10g/5秒」といった空気量変化は一例でしかないが、ある一般的なクラスの車両を想定した場合、上記圧力変化速度ΔPが「0.1mmHg/5秒」ずれる勾配変化に対し、空気量変化は、車速に拘わらず「Δ10g/5秒」とほぼ一律であることが発明者らによって確認されている。ちなみにこの場合、図19にも示されるように、上記(6)式での登坂側の最大許容範囲、すなわち「−50g/5秒」といった空気量変化(QO −QB )に対しては、「+0.3mmHg」だけかさ上げされるようにその異常判定域が補正されるようになる。
【0198】
なお、先の図15(a)及び(b)を参照しての説明からも明らかなように、実路走行において実際にこうした異常判定域のかさ上げ補正が必要となるのは、誤って異常と診断されやすい登坂走行中の、しかも上記(5)式と(6)式との間における制限緩和部分、すなわち空気量変化(QO −QB )が「−50g」〜「−20g」の範囲となる部分だけである。したがって、同第5の実施の形態にかかる装置全体としては、図20に例示する態様をもって、判定マップ(図4)及び補正マップ(図19)に基づく判定(診断)が実行される。
【0199】
ちなみにこの図20は、車速がほぼ一定である条件のもとでの上記空気量変化(QO −QB )に基づく診断支援態様についてその概要を総括したものであり、各々次のようなことをあらわしている。
【0200】
・空気量変化(QO −QB )が上記(6)式の範囲を超える登坂、降坂走行中には判定のやり直しを行う。
【0201】
・空気量変化(QO −QB )が「−50g」〜「−20g」の範囲にある登坂走行中には、「異常判定」については図19に示される補正マップを通じて異常判定域のかさ上げ補正を行い、「正常判定」についてはその判定を中止する(「正常判定」の場合、その判定頻度は低くてよい)。なお、登坂走行中には図15(a)に示されるように、その圧力推移がそもそも誤異常と判定されやすい上昇傾向となることから、ここで正常判定される場合には、同正常である旨の判定を実行するようにしてもよい。
【0202】
・空気量変化(QO −QB )が「−20g」〜「20g」の範囲にある平坦路走行中には、「異常判定」、「正常判定」ともに、通常の判定を実行する。
【0203】
・空気量変化(QO −QB )が「20g」〜「50g」の範囲にある降坂走行中には、「異常判定」については通常の判定を実行し、「正常判定」についてはその判定を中止する。すなわち、降坂走行中には図15(b)に示されるように、誤って正常と診断される可能性が高いため、「正常判定」についてはこれを見合わせる。
【0204】
図21は、こうした第5の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、この図21を併せ参照して同第5の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の各実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0205】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、ステップ5000及び続くステップ5001において、先の各実施の形態の故障診断ルーチンと同様、故障診断の前提条件が成立しているか否かの判断、及びその判断が肯定あることを条件にパージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い、吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、上記ステップ5001の処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。また、この第5の実施の形態において、上記前提条件(ステップ5000)の1つである
(b2)車速が安定していること。
には、同エバポ経路に対する吸気負圧導入前の前提条件確認区間である上記区間TO(図16)での吸入空気量変化、及び車速変化が所定範囲内である条件も含まれる。
【0206】
続くステップ5002においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで、所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔPをモニタしていく。
【0207】
そして、ステップ5003では、上記所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TB(図16)に到達したか否かを判断し、該区間TBに到達している旨判断される場合には、次のステップ5004にて、区間TOと区間TBとの間での空気量変化(QO −QB )、及び区間TAと区間TBとの間での空気量変化(QA −QB )を求め、これら空気量変化がそれぞれ上記(6)式として示した所定の範囲に入っているか否かを判断する。そして、これら求めた各空気量変化が上記所定の範囲に入っていない旨判断される場合には、精度不足として今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0208】
他方、上記各空気量変化が上記所定の範囲内である旨判断される場合には、続くステップ5005おいて、先の図4に例示した判定マップに対し、図19に例示した態様で、上記空気量変化(QO −QB )に応じた補正が行われる。ただしこうした補正が、同空気量変化(QO −QB )が「−50g」〜「−20g」の範囲にある登坂走行中に限って行われることは上述の通りである。
【0209】
こうして必要に応じてマップ補正が行われた後は、次のステップ4006において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、さらに次のステップ4007において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、上記補正された判定マップを参照してエバポ経路の正常・異常が判定される。またこのときには、図20に例示した態様での診断支援(判定支援)も併せて行われる。
【0210】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第5の実施の形態によれば、第1あるいは第2の実施の形態による前記(1)及び(2)の効果に加えて、更に以下のような効果が併せ奏せられるようになる。
【0211】
(13)エバポ経路内に対する吸気負圧の導入前後における吸入空気量変化に応じて診断基準を変更するようにしたことで、車両の登坂、降坂走行中であれ、大気圧の変化に起因する誤診断の発生は好適に回避される。
【0212】
(14)また、吸入空気量変化に対する制限が大きく緩和されることで、車両の登坂、降坂走行中はもとより、平坦路走行中においても、確実にその診断機会(診断頻度)の増大が図られるようになる。
【0213】
(15)その他、上記エバポ経路内に対する吸気負圧の導入前後における吸入空気量変化を監視して車両の登坂、降坂走行等の別を管理できることから、別途に大気圧センサ等を設ける必要もない。
【0214】
なお、この第5の実施の形態にあって、上記空気量変化(QO −QB )の緩和態様、並びに同空気量変化(QO −QB )に応じた具体的なかさ上げ態様等は、図19に例示した補正マップでの態様に限られることなく任意である。要は、適用対象となる車両毎にその最適値を求め、それら最適値に応じて図19に準じた補正マップを決定すればよい。
【0215】
また、同第5の実施の形態にあっては、車速がほぼ一定である条件のもとで、上記空気量変化(QO −QB )に基づく診断支援を行うこととしたが、こうした空気量変化は通常、車速変化によっても生じる。すなわち、車速変化による空気量変化も併せ加味することとしてもよく、このように車速変化による空気量変化も併せ加味することで、特に平坦路走行中における診断機会(診断頻度)の更なる増大も期待される。
【0216】
(第6の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第6の実施の形態について、上記第4及び第5の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0217】
こうした故障診断装置にあっては通常、正常判定や異常判定が行われた場合はもとより、故障の有無についての判定が保留となったときにも、同故障の有無についての当該トリップでの診断を中断するようにしている。これは、一旦判定が保留となった場合には、同一トリップ内で再度の診断を行ったとしても同様の結果となることが多いためである。
【0218】
ただし、上記第4あるいは第5の実施の形態のような診断基準の変更によって上記故障の有無についての判定が保留となった場合には、たとえ同一トリップであっても、以降の診断では何らかの判定が可能となるケースも少なくない。
【0219】
そこで、この第6の実施の形態では、上記診断基準の変更によって故障の有無についての判定が保留となったときには、吸気負圧の再度の導入に基づく再度の診断を実行するようにする。
【0220】
具体的には、第4の実施の形態のように前記区間TBでの揺れ量ΣΔΔPに応じて診断基準が変更される場合には図22に示すように、また第5の実施の形態のように前記空気量変化(QO −QB )に応じて診断基準が変更される場合には図23に示すように、それぞれそのときの判定保留が前記圧力変化速度ΔP2に対する異常判定域のかさ上げ補正によって行われたものか(領域ZB)、あるいは同かさ上げ補正を不要として行われたものか(領域ZA)をそれら診断履歴に基づきまず判断する。そして、判定保留が上記異常判定域のかさ上げ補正領域である領域ZBにおいて行われていた場合には、「判定やり直しフラグ」をオンとすることによって、吸気負圧の再度の導入に基づく再度の診断実行を可能とし、また、同判定保留が上記異常判定域のかさ上げ不要領域である領域ZAにおいて行われていた場合には、「判定終了フラグ」をオンとすることによって、当該トリップでの診断を中断する。
【0221】
図24及び図25は、こうした第6の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートであり、以下、これら図24及び図25を併せ参照して同第6の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の各実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0222】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、まずステップ6000において、上記「判定終了フラグ」がオンとなっているか否かを判断する。この「判定終了フラグ」がオンとなっている場合、ECU50は、当該トリップでの以後の診断を中断する。
【0223】
一方、上記「判定終了フラグ」がオンとなっていなければ、ECU50は、ステップ6001及び続くステップ6002において、先の各実施の形態の故障診断ルーチンと同様、故障診断の前提条件が成立しているか否かの判断、及びその判断が肯定あることを条件にパージ制御弁71aの開弁と大気導入弁72aの閉弁とを行い、吸気通路12からの吸気負圧によってエバポ経路内の圧力を所定圧力P1以下まで減圧する。なお、上記ステップ6002の処理も、適宜のフラグ処理等によって、実際には当該診断の開始時、上記経路内圧力が所定圧力P1以下に達したことが認識されるまでの期間に限って行われる。また、この第6の実施の形態においても先の第5の実施の形態と同様、上記前提条件(ステップ6001)の1つである
(b2)車速が安定していること。
には、同エバポ経路に対する吸気負圧導入前の前提条件確認区間である区間TO(図16)での吸入空気量変化、及び車速変化が所定範囲内である条件が含まれる。
【0224】
続くステップ6003においては、パージ制御弁71aを閉じてエバポ経路内を密閉状態にするとともに、エバポ経路内の圧力が所定圧力P2(P1<P2<大気圧)に達するまで所定時間間隔で連続的に圧力変化速度ΔP及び圧力変動をモニタしていく。
【0225】
そして、ステップ6004では、上記所定圧力P1下での圧力変化速度ΔP1の算出区間TA(図12)に限って、そこでモニタされる圧力変動が所定値内であるか否かを判断し、同モニタされる圧力変動が所定値を超える旨判断される場合には、今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0226】
また、診断を継続するに場合には、続くステップ6005において上記所定圧力P2下での圧力変化速度ΔP2の算出区間TB(図12、図16)に到達したか否かを判断し、該区間TBに到達している旨判断される場合には、次のステップ6006にて、
・同区間TBでモニタされる圧力変動が所定値内であるか否か。
または、
・区間TOと区間TBとの間での空気量変化(QO −QB )、及び区間TAと区間TBとの間での空気量変化(QA −QB )がそれぞれ前記(6)式として示した所定値(所定範囲)内であるか否か。
を判断する。そして、これら圧力変動または各空気量変化が各々上記所定値を超える旨判断される場合にも、精度不足として今回の診断を見合わせ、一旦本ルーチンを抜ける。
【0227】
他方、同ステップ6006において上記圧力変動または各空気量変化が各々上記所定値内である判断される場合には、続くステップ6007において、上記区間TBでの揺れ量ΣΔΔPまたは上記区間TOと区間TBとの間での空気量変化(QO −QB )が、図22及び図23に示した補正マップにおいて異常判定域のかさ上げ補正が必要とされる領域ZBに属するか、あるいは同異常判定域のかさ上げ補正が不要とされる領域ZAに属するかが判断される。
【0228】
そして、ステップ6007において上記揺れ量ΣΔΔPまたは上記空気量変化(QO −QB )が上記異常判定域のかさ上げ補正が必要とされる領域ZBに属する旨判断される場合には、先の図4に例示した判定マップに対し、ステップ6008にてそれら揺れ量ΣΔΔPまたは空気量変化(QO −QB )に応じたマップ補正が行われるとともに、ステップ6009にて上記「判定やり直しフラグ」がオンとされる。また、こうしてマップ補正が行われ、「判定やり直しフラグ」がオンとされた後は、次のステップ6010において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、さらに次のステップ6011において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、上記補正された判定マップを参照して、保留も含めたエバポ経路の正常・異常が判定される。
【0229】
一方、ステップ6007において上記揺れ量ΣΔΔPまたは上記空気量変化(QO −QB )が上記異常判定域のかさ上げ補正が不要とされる領域ZAに属する旨判断される場合には、マップ補正や「判定やり直しフラグ」のセット(オン)が行われることなくステップ6010において圧力変化速度ΔP1及びΔP2の認識、並びに両圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)の算出が行われ、次のステップ6011において、これら圧力変化速度ΔP2及び圧力変化速度の比(ΔP1/ΔP2)に基づき、先の図4に例示した判定マップを参照して、同じく保留も含めたエバポ経路の正常・異常が判定される。
【0230】
その後、ステップ6012においては、上記ステップ6011での処理が判定の保留であったか否かが判断される。
【0231】
そして、同処理が判定の保留であった場合には、続くステップ6013において上記「判定やり直しフラグ」がオンとされているか否かが判断され、該「判定やり直しフラグ」がオンとされている場合には、ステップ6014にてこれをオフとする後処理が行われた上で、本ルーチンが終了される。すなわちこの場合には、その後も前記前提条件が満たされる限り、当該トリップでの、再度の吸気負圧導入に基づく再度の診断が可能となる。
【0232】
他方、上記ステップ6011での処理が判定保留ではなかった場合、あるいは判定保留であっても上記「判定やり直しフラグ」がオンとされていなかった場合には、ステップ6015にて上記「判定終了フラグ」がオンとされた上で、本ルーチンが終了される。すなわちこの場合には、当該トリップでの以降の診断処理は中断される。
【0233】
以上説明したように、上記手法及び手順をもってエバポ経路の故障(漏れ)の有無を診断する第6の実施の形態によれば、先の第4あるいは第5の実施の形態による前記(11)〜(15)の効果に加えて、更に以下のような効果が併せ奏せられるようになる。
【0234】
(16)診断基準の変更によって故障の有無についての判定が保留となったときには、吸気負圧の再度の導入に基づく再度の診断が実行可能となることで、実路走行時の診断機会(診断頻度)を的確に増やすことができるようになる。
【0235】
(17)また逆に、診断基準の変更を要することなく故障の有無についての判定が保留となったときには、当該トリップでの以降の診断処理が中断されることで、無駄な診断が省かれ、ひいてはパージ流量の確保も容易となる。
【0236】
なお、同第6の実施の形態では、前記第4及び第5の実施の形態の双方に対して上記「判定やり直しフラグ」を導入する場合について示したが、何らかのかたちで診断基準を可変とする故障診断装置であれば、この「判定やり直しフラグ」の導入は可能であり、且つ有効である。
【0237】
また、この「判定やり直しフラグ」の導入は、前記第4及び第5の実施の形態のいずれか一方のみに対して行うものであってもよいし、他に、前記第3の実施の形態に対して行うものであってもよい。ちなみに、前記第3の実施の形態に対してこの「判定やり直しフラグ」を導入した場合には、先の図10に例示した各判定マップのうち、図10(b)及び(c)に例示した判定マップが選択されて「判定保留」となったときに同「判定やり直しフラグ」がオンとされる。他方、図10(a)に例示した判定マップが選択されて「判定保留」となったときには上記「判定終了フラグ」がオンとされる。
【0238】
(第7の実施の形態)
次に、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置を具体化した第7の実施の形態について、上記第1〜第6の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0239】
前述のように、こうした故障診断装置を備えるエバポパージシステムにあっては、少なくともその診断中、エンジン吸気通路へのパージを行うことができないため、エバポ経路に対する吸気負圧の導入回数には、例えば「トリップ毎に8回未満」等の制限が設けられていることが多い。
【0240】
またこのため、実路走行中にあって、エバポ経路に対する吸気負圧の導入と、該吸気負圧の導入後、経路内圧力の変動等を理由とする診断の中止とが繰り返されるようなことがあると、上記吸気負圧導入回数の制限によって、診断の機会が得られなくなることがある。
【0241】
そこで、この第7の実施の形態では、上記吸気負圧の導入にかかる前提条件として、「エバポ経路における経路内圧力の変動積算値が所定の設定値thαよりも小さいこと」を新たに加えることにより、一旦、エバポ経路に吸気負圧が導入され、診断が開始された後は、極力最終判定まで到達できるようにする。
【0242】
具体的には、図26(a)及び(b)に示すように、車速の変動または路面の段差等に起因してエバポ経路内圧が変動している間は、図26(c)に示すように、エバポ経路内圧変化の積算値(揺れ量)Σ|ΔΔP|が所定時間TG(例えば30秒)内に上記設定値thαを超えてしまうことをもって、上記吸気負圧の導入を禁止する。そしてその後、同図26(a)及び(b)に示すように、車速が定常化、あるいは路面が安定して、エバポ経路内圧の変動(揺れ)が収まった場合には、同図26(c)に示すように、上記所定時間TG内における上記揺れ量Σ|ΔΔP|が上記設定値thαよりも小さいことをもって、前提条件の成立とし(図26(d))、上記吸気負圧の導入を許可する。
【0243】
図27は、同第7の実施の形態による上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出手順を示すフローチャートであり、まずこの図27を併せ参照して、揺れ量Σ|ΔΔP|がどのように算出されるかを説明する。なおこのルーチンは、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0244】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、まずステップ7000において、その時点で求められている揺れ量Σ|ΔΔP|が上記設定値thα以上となっているか否か、または同揺れ量Σ|ΔΔP|が上記所定時間TGにわたって累積されているか否かを判断する。そして、これら条件がいずれも満たされない場合には、ステップ7010において上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出時期であるか否かを更に判断し、該算出時期ではない旨判断される場合、同ルーチンを一旦抜ける。すなわちここでは、当該ルーチンの何周期かに一度の割合で、上記揺れ量Σ|ΔΔP|を算出することとしており、その算出周期となるまでは一旦同ルーチンを抜ける。なお、このルーチンが例えば65ミリ秒程度の時間を周期として実行される場合、同揺れ量Σ|ΔΔP|の算出は、その8周期に一度程度の頻度をもって実行される。
【0245】
一方、ステップ7010において上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出時期である旨判断される場合には、まずステップ7011において、エバポ経路内圧の変化量(圧力変動レベル)ΔΔPが算出され、次のステップ7012において、その積算値である上記揺れ量Σ|ΔΔP|が算出される。なお、上記エバポ経路内圧の変化量(圧力変動レベル)ΔΔPが、圧力センサ32(図1)を通じて検出される圧力の所定の微小時間における変化量の2階差分値であり、エバポパージシステムを搭載した車両の旋回や加減速、揺動等による燃料蒸気圧の変動を反映するパラメータであることは前述した。こうして揺れ量Σ|ΔΔP|が算出したECU50は、その後、同ルーチンを一旦抜ける。
【0246】
他方、先のステップ7000において、上記算出される揺れ量Σ|ΔΔP|が上記設定値thα以上となっている旨判断される場合、または同揺れ量Σ|ΔΔP|が上記所定時間TGにわたって累積されている旨判断される場合、ECU50は次のステップ7020において、当該ルーチンを通じて前回算出されている同揺れ量Σ|ΔΔP|の値をRAM51c(図2)に記憶する。そして、その後のステップ7021において、今回参照した揺れ量Σ|ΔΔP|の値を「0」にクリアする。
【0247】
同揺れ量Σ|ΔΔP|の算出ルーチンを通じて、こうした処理が繰り返し実行されることにより、先の図26(a)及び(b)に例示した車速または路面段差に応じたエバポ経路内圧の推移に対し、上記揺れ量Σ|ΔΔP|の値は、図26(c)に例示する態様をもって推移するようになる。
【0248】
また、図28は、この第7の実施の形態において採用する「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」を示すフローチャートである。次に、この図28を併せ参照して、同第7の実施の形態にかかる診断処理の詳細を説明する。なお、この故障診断ルーチンも、先の各実施の形態にかかる「エバポパージシステムの故障診断ルーチン」同様、ECU50(図1、図2)により所定時間毎に周期的に実行される。
【0249】
さて、処理が本ルーチンに移行すると、ECU50は、まずステップ8000において、前記(b1)〜(b3)として例示したような通常の前提条件が成立している否かを判断する。そして、この通常の前提条件が満たされていない旨判断される場合には、そのまま同ルーチンを一旦抜ける。
【0250】
一方、ステップ8000において上記通常の前提条件が成立している旨判断される場合には、ECU50は、続くステップ8001において、
・上記揺れ量Σ|ΔΔP|の算出ルーチン(図27)を通じて求められている揺れ量Σ|ΔΔP|が前記設定値thα未満で且つ、上記RAM51cに記憶されている前回算出の揺れ量Σ|ΔΔP|も同設定値thα未満であるか否か。
を更に判断する。すなわちこの第7の実施の形態の装置では、先の図26(c)及び(d)にも示されるように、該ステップ8001での条件が併せ満たされていることによって、はじめて前提条件の成立となる。
【0251】
そして、こうした前提条件の成立に伴って、吸気負圧の導入及び診断の開始が許可され、続くステップ9000の処理として、前記第1〜第6の実施の形態にかかるいずれか形態での診断処理が実行される。
【0252】
このように、同第7の実施の形態においては、上記ステップ8000及び上記ステップ8001にかかる処理を実行する部分によって、吸気負圧の導入並びに診断開始を許可すべきか否かを監視する前提条件監視手段が構成されている。
【0253】
以上説明したように、この第7の実施の形態によれば、先の第1〜第6の実施の形態による前記(1)〜(17)の効果に加えて、更に以下のような効果が併せ奏せられるようになる。
【0254】
(18)上記前提条件監視手段の採用によって、実際に診断用圧力を導入することのできる機会は減少する可能性が高いものの、一旦上記ステップ8001での条件が成立して吸気負圧が導入され、且つ診断が開始された場合には、同診断が途中で中止されることなく最後まで遂行される可能性も高くなる。
【0255】
(19)また、こうして診断が完了されれば、少なくとも当該トリップではその後の診断を中止することができ、ひいてはパージ流量も好適に確保されるようになる。
【0256】
なお、この第7の実施の形態にあっては、上記設定値thαとして固定の値を想定したが、この値thαは、診断の対象とする故障の度合いに応じて可変設定するようにしてもよい。
【0257】
すなわち、診断の対象とする故障の度合いとしては、例えば「1.0mm」孔径程度の穴を診断対象とするか、あるいは「0.5mm」孔径程度の穴を診断対象とするか等、エバポ経路に生じた穴の孔径の度合いがあるが、このように度合いの異なる複数の故障を診断の対象とする場合には、それら診断の条件も各々異なる条件に設定されることが多い。そしてこのような場合、診断の対象とする故障の度合いに応じて上記設定値thαの値を可変とすることで、例えば「1.0mm」孔径程度の比較的大きな穴を診断の対象とする場合には吸気負圧を導入する機会を増やすことができるなど、上記前提条件監視手段を採用する場合であれ、診断の対象とする故障の度合いに応じたより柔軟な運用が可能になる。
【0258】
(その他の実施の形態)
以上、本発明を具体化した第1〜第7の実施の形態について説明したが、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置は、それら各実施の形態に限定されるものではなく、同各実施の形態を適宜変更した、例えば次のような形態として実施することもできる。
【0259】
・上記各実施の形態では、圧力センサ32は、燃料タンク30の天井壁に設けられることとしたが、各通路途中やキャニスタ40の内壁等、エバポ経路内の圧力を検出できる部位であれば何処に設けてもよい。
【0260】
・上記各実施の形態では、エバポパージシステム20の故障診断にあたり、負圧導入制御弁80aを開弁することによってエバポ経路全体を連通させるとともに、大気導入弁72aを閉弁して外部からは閉鎖状態とし、パージ制御弁71aを開弁して負圧を導入するという構成をとった。これに対し、密閉状態のエバポ経路(空間)内に負圧を導入して同空間内の減圧を行うことのできるエバポパージシステムであれば、如何なる構造のものであっても本発明の故障診断装置を適用することはできる。
【0261】
・上記各実施の形態では、エバポ経路に負圧を導入して同経路内を所定負圧P1とし、その後、同エバポ経路を一旦密閉状態にし、基本的には経路内が所定負圧P2になるまで待機することとしている。そして、エバポ経路内が所定負圧P1にあるときの圧力変化速度ΔP1と、エバポ経路内が所定負圧P2にあるときの圧力変化速度ΔP2との比(ΔP1/ΔP2)を算出し、この算出値に基づいてシステム20の漏れの有無を判定することとした。この所定負圧P1、P2の設定にあたっては、例えば所定負圧P1を98kPa(キロパスカル)程度、すなわち760mmHgを基準として「−20mmHg」程度、また所定負圧P2についてはこれを99kPa程度、すなわち760mmHgを基準として「−15mmHg」程度に設定するのが好適であることが発明者らによって確認されている。しかしながら、この設定値はエンジンやエバポパージシステムの構造的、且つ物理的な特性によっても異なるものであり、様々な設定値が考えられる。また、P1及びP2の2点に限らず、3点以上の所定圧力下における圧力速度の比に基づいてエバポ経路の漏れの有無を診断することもできる。
【0262】
・上記各実施の形態では、圧力変化速度ΔP1及びΔP2という概念を基にして故障診断を行うこととしたが、変化率、あるいは特定の時間当たり圧力変化量等、圧力の変化度合いに相当する如何なるパラメータも本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断に適用することはできる。
【0263】
・上記第1の実施の形態での「所定時間ΔT1(図5、図6)」の導入に基づく正常判定処理、また上記第2の実施の形態での「所定時間ΔTh並びに第3の所定圧力Ph(図8、図9)」の導入に基づく正常判定処理は、上記第3〜第6の実施の形態に対しても同様に適用することができる。ちなみにこれらの処理を適用する場合、第3の実施の形態にあってはステップ3004(図11)の処理の前に、第4の実施の形態にあってはステップ4004(図14)の処理の前に、第5の実施の形態にあってはステップ5003(図21)の処理の前に、そして第6の実施の形態にあってはステップ6005(図25)の処理の前に、それぞれ前処理として挿入することが望ましい。
【0264】
・もっとも、上記第1の実施の形態での「所定時間ΔT1(図5、図6)」の導入に基づく正常判定処理、また上記第2の実施の形態での「所定時間ΔTh並びに第3の所定圧力Ph(図8、図9)」の導入に基づく正常判定処理は、本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置にとって必須の処理ではない。したがって、上記第1及び第2の実施の形態にあっては、これら要素の導入に基づく正常判定処理の実行を適宜割愛する構成とすることもできる。
【0265】
・上記第4の実施の形態と上記第5の実施の形態とは、それらを適宜に組み合わせたかたちで実施することもできる。もっともこの場合には、上記第6の実施の形態に添ったかたちで実施することが、診断機会(診断頻度)を増やす上で望ましい。
【0266】
・上記各実施の形態では、診断のための前提条件として、前記(b1)〜(b3)の条件、すなわち
(b1)空燃比A/Fに乱れがないこと。
【0267】
(b2)車速が安定していること。
【0268】
(b3)空燃比制御やパージ制御等にかかる各種学習値の登録が一旦完了していること。
を採用した。これら前提条件の設定も任意であり、他に例えば、
(b4)標高2400m以下であること。
【0269】
(b5)エンジン始動時の温度が所定の温度範囲内(例えば10〜35℃)であること。
【0270】
(b6)車載バッテリの電圧が所定電圧(例えば11V)以上であること。
【0271】
(b7)エンジン始動後、所定時間(例えば50分)以内であること。
等々の条件も適宜採用することができる。
【0272】
・上記各実施の形態では、エバポ経路に吸気負圧を導入してその故障診断を行うこととしたが、同構成に代え、エバポ経路内に正圧を導入してその故障診断を行うようにしてもよい。すなわちこの場合、導入した正圧によってエバポ経路内を所定圧まで加圧し、その後、エバポ経路を密閉状態にすることによって同経路内での圧力推移(減圧速度)をモニタするなどの構成が考えられる。そしてこの場合には、エバポ経路を密閉状態にした後、経路内が所定圧にあるときの圧力推移または減圧速度と、他の所定圧にあるときの圧力推移または減圧速度との比に基づいて、エバポシステムの故障の有無を診断することができる。
【0273】
もっとも、上記各実施の形態にかかる故障診断装置では、エバポ経路内に正圧を導入するための加圧ポンプ等を付加するまでもなく、吸気通路から導入される負圧に基づき、十分に精度の高い故障診断を実施することができるという点で、簡易性や搭載性に優れた構成となっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第1の実施の形態についてその概略構成を示す略図。
【図2】同実施の形態に採用されるECU(電子制御装置)の電気的構成を示すブロック図。
【図3】同実施の形態による故障診断原理を示すタイムチャート。
【図4】同実施の形態の故障診断に用いられる判定マップを示す略図。
【図5】同実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図6】同実施の形態による故障診断態様の一例を示すタイムチャート。
【図7】同実施の形態の診断精度を説明するためのタイムチャート。
【図8】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第2の実施の形態についてその故障診断態様の一例を示すタイムチャート。
【図9】同第2の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図10】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第3の実施の形態についてこれに用いられる判定マップを示す略図。
【図11】同第3の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図12】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第4の実施の形態についてその故障診断原理を示すタイムチャート。
【図13】同第4の実施の形態で用いられる補正マップ例を示す略図。
【図14】同第4の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図15】登坂、降坂走行中のエバポ経路内圧力の推移傾向を示すタイムチャート。
【図16】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第5の実施の形態についてその故障診断原理を示すタイムチャート。
【図17】路面斜度とエバポ経路内圧変化との関係を示すグラフ。
【図18】路面斜度と吸入空気量との関係を示すグラフ。
【図19】同第5の実施の形態で用いられる補正マップ例を示す略図。
【図20】同第5の実施の形態での判定(診断)支援マップを示す略図。
【図21】同第5の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図22】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第6の実施の形態についてその故障診断原理を示す略図。
【図23】同じく第6の実施の形態についてその故障診断原理を示す略図。
【図24】同第6の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図25】同第6の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【図26】本発明にかかるエバポパージシステムの故障診断装置の第7の実施の形態についてその前提条件監視態様を示すタイムチャート。
【図27】同第7の実施の形態による揺れ量Σ|ΔΔP|の算出手順を示すフローチャート。
【図28】同第7の実施の形態による故障診断手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…エンジン、11…燃焼室、12…吸気通路、13…排気通路、20…エバポパージシステム、30…燃料タンク、40…キャニスタ、31…燃料ポンプ、12a…デリバリパイプ、12b…燃料噴射弁、12d…エアクリーナ、32…圧力センサ、33…ブリーザ制御弁、34…ブリーザ通路、35…ベーパ通路、50…ECU(電子制御装置)、51…マイクロコンピュータ、51a…CPU、51b…ROM、51c…RAM、51d…バックアップRAM、60…タンク内圧制御弁、71…パージ通路、70…大気弁、72…大気導入通路、72a…大気導入弁(電磁弁)、73…大気排出通路、71a…パージ制御弁(電磁弁)、80…負圧導入用通路、80a…負圧導入制御弁(電磁弁)。
Claims (12)
- 燃料タンクから発生する燃料蒸気を同燃料タンクを含むエバポ経路を介してエンジンの吸気通路へパージ制御するエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記エバポ経路の経路内圧力を検出する圧力センサと、
同エバポ経路内に診断用の所定の圧力を導入する圧力導入手段と、
前記所定の圧力が導入されたエバポ経路を密閉した状態での前記圧力センサにより検出される同エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達したときの第1の圧力変化度合いと前記第1の所定圧力よりも圧力導入以前の経路内圧力に近い第2の所定圧力に達したときの第2の圧力変化度合いとの比に基づいて当該エバポ経路の故障の有無を診断する診断手段と、
を備えることを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 燃料タンクから発生する燃料蒸気を同燃料タンクを含むエバポ経路を介してエンジンの吸気通路へパージ制御するエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記エバポ経路の経路内圧力を検出する圧力センサと、
同エバポ経路内に診断用の所定の圧力を導入する圧力導入手段と、
前記所定の圧力が導入されたエバポ経路を密閉した状態での前記圧力センサにより検出される同エバポ経路の経路内圧力が第1の所定圧力に達したときの第1の圧力変化度合いと前記第1の所定圧力よりも圧力導入以前の経路内圧力に近い第2の所定圧力に達したときの第2の圧力変化度合いとの比、及び前記第2の圧力変化度合いに基づいて当該エバポ経路の故障の有無を診断する診断手段と、
を備えることを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 前記圧力導入手段は、前記エバポ経路の前記吸気通路との連通部に設けられて同吸気通路からの吸気負圧を導入する制御弁である
請求項1または2記載のエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項1〜3の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力が前記第1の所定圧力を経て前記第2の所定圧力に達するまでの時間が所定時間(ΔT1)以上となるとき、当該エバポ経路を故障無しと診断する
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項1〜4の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力が前記第1の所定圧力に達した時点から所定時間(ΔTh)経過後、同経路内圧力が前記第2の所定圧力よりも前記第1の所定圧力に近い第3の所定圧力(Ph)未満にあるとき、当該エバポ経路を故障無しと診断する
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項1〜5の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いに応じて可変とする
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項1〜5の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を、前記各圧力変化度合い算出期間中における前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いに応じて可変とする
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項6または7記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記診断手段は、前記エバポ経路の経路内圧力の変動度合いが所定以上となるとき、前記診断を中断する
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項1〜8の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記診断手段は、前記故障の有無についての診断基準を、前記エバポ経路内に対する診断用圧力の導入前後における吸入空気量変化に応じて可変とする
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項6〜9の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記診断手段は、前記診断基準の変更によって前記故障の有無についての判定が保留となったとき、前記エバポ経路内に対する診断用圧力の再度の導入に基づく再度の診断を実行する
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項1〜10の何れかに記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記エバポ経路の経路内圧力変動を積算し、その積算値が所定の設定値(thα)よりも小さいことを条件に前記圧力導入手段による診断用圧力の導入及び前記診断手段による診断を許可する前提条件監視手段を更に備える
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。 - 請求項11記載のエバポパージシステムの故障診断装置において、
前記前提条件監視手段は、前記診断手段が診断の対象とする故障の度合いに応じて前記積算値に対する前記所定の設定値(thα)を可変とする
ことを特徴とするエバポパージシステムの故障診断装置。
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