JP3728826B2 - タイヤ異常検知装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のタイヤの異常を検知するタイヤ異常検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤ異常検知装置はタイヤの状態を走行中に監視して空気抜けなどの異常を検知するとこれを運転者等に知らせる装置である。タイヤ状態の検出技術としては、従来より知られているタイヤ空気圧やタイヤ内温度を検出するものの他、タイヤが空気抜けするとタイヤ半径が変化することに着目し、車輪の角速度を検出するようにしたものがある。かかるタイヤ状態の検出技術を用いたものとしては特開平4−232107号公報に、第1、第2の対の車輪の角速度の自乗の差の線形関数を計算し、これよりタイヤの空気抜けを検出するようにしたタイヤの空気抜け検出方法が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記特開平4−232107号公報記載のタイヤの空気抜け検出方法では、4つの車輪に関する角速度を入力とする線形関数からはタイヤの空気抜けの有無が知る得るのみであり、例えば空気抜けしたタイヤがフロント側なのかリア側なのか等、異常が発生したタイヤについての詳細な情報が得られない。
【0004】
そこで本発明は、タイヤ異常の発生の有無だけではなく、異常が発生したタイヤについての詳細な情報を得ることのできるタイヤ異常検知装置を提供することを目的とする。
【0005】
請求項1記載の発明では、車両の各タイヤと一体に回転体が回転し、回転体に周方向に形成された複数の回転検出部が通過するごとに、これを検出する回転検出手段と、回転検出手段により得られた複数の検出信号から各回転検出部の検出周期の、基準値からのずれ量を求め、このずれ量に基づき各回転検出部の検出周期のずれを補正するためのずれ量依存値を算出するずれ量依存値算出手段と、算出された複数のずれ量依存値により回転体の特徴を示す特徴変数を算出する特徴変数算出手段とが設けられる。算出された特徴変数に基づいて判定手段がタイヤ状態を二値判定する。
【0006】
ずれ量依存値が検出信号の周期の基準値からのずれ量に基づいて表されるから、タイヤに異常が発生したときにはタイヤ異常がずれ量依存値に反映される。タイヤ異常の発生時には特徴変数が大きく変化し、判定手段によりタイヤ異常が判定される。したがってタイヤ異常の有無の判定には、すべてのタイヤについてのデータを要しない。しかも特徴変数は各タイヤに対応した変数であるから、異常の発生したタイヤについての詳細な情報が得られる。
【0007】
上記特徴変数は、請求項2のように上記回転体1回転におけるずれ量依存値のばらつきや、請求項3のようにずれ量依存値の経時変化量とすることにより、簡単に算出できる。
【0008】
上記判定手段は、請求項4のように特徴変数の車輪間の差分を所定値と比較するように設定してもよいし、請求項5のように特徴変数の今回の値と前回の値の差分を所定値と比較するように設定してもよい。また請求項6のように特徴変数の今回の値と初期値の差分を所定値と比較するように設定してもよい。この場合、請求項7のように特徴変数の初期値を、タイヤ正常時に上記特徴変数算出手段で算出された算出値とし、上記判定手段が上記算出値を記憶する記憶手段を具備する構成とし得る。
【0009】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に本発明を適用したタイヤ異常検知装置を示す。タイヤ異常検知装置は、車両の各タイヤ1a,1b,1c,1dにこれら各々と一体に回転する回転体たるシグナルロータ2a,2b,2c,2dと、シグナルロータ2a〜2dの外周に近接位置に設けられた回転検出手段たる電磁ピックアップ3a,3b,3c,3dとを備えている。シグナルロータ2a〜2dは周方向に磁性材料によって構成された多数(本実施形態では48)個の歯21が規格上、等間隔で形成された歯車であり、歯21が回転検出部21となる。電磁ピックアップ3a〜3dは、タイヤ1a〜1dと一体に回転するシグナルロータ2a〜2dの、一つの歯が通過することにともなう磁界の変化を検出し、例えば歯の一つが通過するごとに1つの正弦波状の検出信号が出力される。電磁ピックアップ3a〜3dから出力される各シグナルロータ2a〜2dについての検出信号は電子制御装置(ECU)4に入力するようになっている。
【0010】
ECU4は、検出信号が入力する波形整形回路、および波形整形回路からの出力が入力されるマイクロコンピュータを含み構成されるもので、各シグナルロータ2a〜2dの正弦波状の検出信号が波形整形回路にて矩形波状のパルス信号に整形されてマイクロコンピュータに入力するようになっている。マイクロコンピュータは、パルス信号より各シグナルロータ2a〜2dの回転状態を演算しタイヤ異常の有無を判定するようになっている。
【0011】
ECU4には表示部5が接続してあり、タイヤ異常が検知されるとインディケータランプ等で運転者に異常を知らせるようになっている。
【0012】
なおタイヤ異常検知装置は各タイヤ1a〜1dの車輪速度を検出する車輪速度検出装置としても機能し、各シグナルロータ2a〜2dの回転状態の演算結果が、各タイヤ1a〜1dの車輪速度の演算に用いられ、装置全体としての演算負荷の軽減を実現している。
【0013】
図2はECU4のマイクロコンピュータに入力されるパルス信号の状態を示している。マイクロコンピュータでは、パルス信号の立ち下がりに対応して、これを割り込み信号として車速パルス割り込み処理が実行される。またマイクロコンピュータでは、定時割り込み処理がS1,S2・・・で示す時刻において実行される。
【0014】
図3は車速パルス割り込み処理の流れを示すもので、まずステップ1100ではパルス信号の周期Δtn を計測する。パルス信号周期Δtn は前後するパルス信号の、割り込み信号となる立ち下がり部の間隔(図2)を演算して得る。ステップ1200では各パルス信号に各回転検出部に対応した回転検出部番号を付ける。回転検出部番号とは、各シグナルロータ2a〜2dの歯21に1から歯数の最高値(本実施形態においては48)まで付けたシグナルロータの歯の番号である。すなわち各パルス信号に1,2,3・・・46,47,48,1,2・・・のように各回転検出部に対応した1〜48の数字を繰り返し付ける。
【0015】
回転体が1回転する時間は微小であるので、回転体が1回転する間の回転速度を一定速度とみなせる。したがって回転体の1回転における48のパルス信号周期は一定となるはずである。ところが実際はシグナルロータ2a〜2dの回転検出部の加工誤差や、偏磨耗、空気抜け等のタイヤ異常といった非規格要素により、パルス信号周期にずれが発生する(図4(a)参照)。そこで48パルス信号周期の平均値と各回転検出部のパルス信号周期との偏差Hを0に近づけるように補正を行う(図4(b)参照)。
【0016】
ステップ1300、1400は信号周期Δtn のずれを補正するためのずれ量依存値たる補正係数を更新する手順である。補正係数はステップ1300においては、補正係数ωn,m の更新許可を判定する。添え字nは上記回転検出部番号で、補正係数ωn,m はシグナルロータ2a〜2dの回転検出部21と一対一に対応している。添え字mはシグナルロータの回転数で、ωn,m-1 が1回転前の補正係数であることを示している。ここで補正係数ωn,m の更新条件は、最新連続48個のパルス信号が定時割り込み区間に途切れることなく入力した場合である(図5(a)更新可、図5(b)更新不可)。ステップ1400はずれ量依存値算出手段としての作動である。
【0017】
図6はずれ量依存値算出手段としてのステップ1400におけるずれ量依存値たる補正係数ωn,m の更新の手順を示すもので、ステップ1410ではブロックメモリからパルス信号周期Δtk (k=n−48,n−47,・・・n−2,n−1)を読み出し、読み出されたパルス信号周期Δtn よりシグナルロータの1回転にあたる48個のパルス信号周期の平均値Sを式(1)により算出する。このパルス信号周期の平均値Sが、非規格要素による検出誤差を含むパルス信号周期Δtn の基準値となる。
【0018】
【数1】
Figure 0003728826
【0019】
続くステップ1420では、式(2)により基準値からのずれ量である偏差依存値Δth を算出する。すなわちパルス信号周期平均値Sと前回の補正係数ωn,m-1により補正した各回転検出部のパルス信号周期Δtn との偏差を算出し(式(2)における分子参照)、上記偏差の速度依存性をなくすために上記偏差をパルス信号周期の平均値Sで規格化する。
Δth =(S−ωn,m-1Δtn )/S・・・・(2)
【0020】
偏差依存値Δth は、シグナルロータ2a〜2dの各回転検出部21(48個の歯21)のパルス信号周期Δt n の、その基準値(平均値S)に対するずれ量を示していると考えられる。ところが実際に車両が道路を走行した場合、路面の振動により車輪速度はランダムに変動するため、Δth もパルス信号入力ごとにランダムに変動し各回転検出部におけるシグナルロータ2a〜2dの特徴を示す値とはなり得ない。そこでステップ1430において、補正係数ωn,m の収束速度を調整する補正感度係数kをΔth にかける(kΔth )ことによって、1回のパルス信号入力に対するΔth の補正係数ωn,m への影響度合いを調整する。例えば補正感度係数kの値を小さくすれば補正係数ωn,m の変動量を小さくすることができる。この手段によって路面振動による車輪速度のランダム変動が補正係数ωn,m に及ぼす影響を無くすことが可能となる。
【0021】
ステップ1440では基準値に対するずれ量である偏差依存値Δth を補正感度係数kにより調整した値kΔth を用いてずれ量依存値である補正係数ωn,m を式(3)により更新する。すなわちkΔth を各回転検出部の補正係数の前回値ωn,m-1 に加算する。ここで補正係数ωn,m の初期値は1とする。
ωn,m =ωn,m-1+kΔth ・・・・(3)
【0022】
上記各式は、各回転検出部が電磁ピックアップ3a〜3dの被回転検出部を通過するごとに各回転検出部に対応する補正係数ωn,m を更新し、任意の速度で各回転検出部に対応する非規格要素による誤差を補正し得る補正係数収束値を求めることを意味する。
【0023】
このように補正係数は、シグナルロータ2a〜2dの加工誤差等の他、タイヤ1a〜1dの空気抜け等に起因するシグナルロータ2a〜2dの回転状態が反映されている。したがってタイヤ異常が発生した場合には、補正係数は、タイヤ正常時における補正係数に比して1回転あたりのばらつき量が大きくなり、また時間的な変化が大きくなる。本発明では補正係数のばらつき量もしくは時間変化量を補正係数の特徴を示す特徴変数として用い、タイヤの正常と異常とを判定する。
【0024】
ステップ1450は補正係数の特徴を描出するステップである。図7はステップ1450の詳細な手順を示すもので、ステップ1451では補正係数ωn,m を補正係数最大値ωmax と比較し、補正係数ωn,m の方が大きければこれを改めて補正係数最大値ωmax とする(ステップ1452)。補正係数最大値ωmax の初期値は0であり、後述するステップ1600(図3)において、シグナルロータ2a〜2d1回転ごとにクリアされる。続くステップ1453では補正係数ωn,m を補正係数最小値ωmin と比較し、補正係数ωn,m の方が小さければこれを改めて補正係数最小値ωmin とする(ステップ1454)。補正係数最小値ωmin の初期値は0であり、補正係数最大値ωmax がクリアされる上記ステップ1600においてクリアされる。しかして車速パルス割り込み処理ごとに補正係数ωn,m が補正係数最大値ωmax および補正係数最小値ωmin と比較され、補正係数最大値ωmax と補正係数最小値ωmin とが更新される。
【0025】
図3のステップ1500では、ステップ1100で計測されたパルス信号周期Δtn を式(4)により補正する。式中、Δtn ’は補正したパルス信号周期である。
Δtn ’=Δtn ×ωn,m ・・・・(4)
【0026】
続くステップ1600の詳細な流れを図8に示す。本ステップは特徴変数算出手段としての処理である。まずステップ1610では回転検出部番号が48かどうかが判定され、回転検出部番号48のパルス信号が入力するごとに、すなわちシグナルロータ2a〜2dの1回転ごとにステップ1620〜1640が実行される。ステップ1620では式(5)により、補正係数最大値ωmax と補正係数最小値ωmin の差Δωm を算出する。補正係数最大値ωmax と補正係数最小値ωmin とは0クリアされた後、回転検出部番号1〜48のパルス信号による車速パルス割り込み処理において更新されているからシグナルロータ2a〜2dの1回転あたりの、最大値と最小値である。したがって差Δωm はシグナルロータ2a〜2dの補正係数のばらつきを表している。
Δωm =ωmax −ωmin ・・・・(5)
【0027】
次いでステップ1630ではステップ1620において算出したΔωm を積算値ΣΔωm に加算する。ステップ1640では補正係数最大値ωmax および補正係数最小値ωmin をクリアする。しかしてシグナルロータ2a〜2dが1回転するごとに、当該1回転についての補正係数のばらつきΔωm が算出され、その積算値ΣΔωm が更新される。Δωm を加算するのは路面振動等の影響を平均作用により抑えるためである。
【0028】
図9は定時割り込み処理の流れを示すもので、この処理はECU4のマイクロコンピュータの定時割り込み信号ごとに実行される。まずタイヤ1a〜1dごとに、最新の定時割り込み区間における、補正したパルス信号周期の積算値Δts 、入力パルス信号数Np (図2参照)、シグナルロータ2a〜2dの歯数(ここでは48)と車輪半径によって決まる速度定数aに基づいて式(6)により車輪速度の演算を実行する(ステップ2010)。
x =a(Np /Δts )・・・・(6)
【0029】
ステップ2020では、所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間は予め設定した車速パルス割り込み処理の回数で規定される時間である。すなわち所定回数の車速パルス割り込み処理が実行されると、タイヤ状態を判定する判定手段としてのステップ2030〜2100が実行される。なお以後の説明では補正係数のばらつきΔωm の積算値ΣΔωm は、右側フロントタイヤについてはΣΔωFRと、左側フロントタイヤについてはΣΔωFLと、右側リアタイヤについてはΣΔωRRと、左側リアタイヤについてはΣΔωRLと表すものとする。ステップ2030では、式(7)によりフロント側の左右の車輪についての特徴変数、すなわち、補正係数のばらつきΔωm の積算値ΣΔωFRとΣΔωFLの差分ΔωF を算出する。
ΔωF =|ΣΔωFR−ΣΔωFL|・・・・(7)
【0030】
次いでステップ2040では、ステップ2030において算出した差分ΔωF を所定値と比較する。ここで所定値は、予め実験等で正常時および異常発生時における補正係数のばらつきを求め、このばらつきに基づいて設定される。差分ΔωF が所定値よりも小さければフロント側タイヤは正常と判定し(ステップ2051)、差分ΔωF が所定値よりも大きければフロント側タイヤで異常が発生したものと判定する(ステップ2052)。判定後、積算値ΣΔωFRおよびΣΔωFLはクリアする(ステップ2060)。
【0031】
続くステップ2070〜2100では、リア側タイヤについての補正係数のばらつきΔωm の積算値ΣΔωRRおよびΣΔωRLより、リア側タイヤの異常の有無を判定する。すなわち式(8)により差分ΔωR を算出し(ステップ2070)、差分ΔωR を所定値と比較し(ステップ2080)、フロント側タイヤの場合と同様にリア側タイヤについての正常、異常を判定する(ステップ2091,2092)。次いで積算値ΣΔωRRおよびΣΔωRLをクリアする(ステップ2100)。
ΔωR =|ΣΔωRR−ΣΔωRL|・・・・(8)
【0032】
本実施形態では4輪についての補正係数から、タイヤ異常の有無だけではなく、フロント側またはリア側のいずれのタイヤの異常であるかが特定できる。
【0033】
なお本実施形態では差分ΔωF ,ΔωR は絶対値としたが、単に右側タイヤについての積算値から左側タイヤについての積算値を減じた値としてもよい。この場合、その符号により、異常の発生したタイヤが右側か左側かが判定できる。あるいは補正係数のばらつきの積算値の、前輪と後輪の差分を左右輪それぞれについて算出し、異常の発生した車輪が左側車輪か右側車輪かを判定できる。あるいは各車輪の補正係数のばらつきの積算値をそれぞれ独立に、正常と異常を画する所定値と比較して各車輪の異常の有無を判定するようにしてもよいし、各車輪の補正係数のばらつきの積算値の今回値と前回値の差分を、それが正常と異常を画する所定値と比較するようにしてもよい。
【0034】
補正係数のばらつきとしてシグナルロータ1回転における補正係数の最大値と最小値の偏差を用いたが、ばらつきの指標となる統計値、例えば分散などが用いられ得る。
【0035】
また定時割り込み処理のステップ2010(図9)において算出した車輪速度の変動が前後輪いずれにおいても右側もしくは左側のみ大きい場合、路面が荒れているものと判断してタイヤ異常の有無を判定しないように設定するのもよい。これにより異常検知の確度が高められる。またタイヤ異常の判定を、直進走行中または路面荒れが少ない道路を走行中である可能性が高い高速領域に限定するのもよい。
【0036】
(第2実施形態)
本実施形態の車輪速度検出装置は構成が図1に示したものと基本的には同じで、主にECU4のマイクロコンピュータで実行されるソフトウェア等が異なっている。図10には車速パルス割り込み処理の流れを示し、図11には、図10におけるステップ1400Aの詳細手順を、図12には、図11におけるステップ1450Aの詳細手順を示す。図13には定時割り込み処理の流れを示す。各図中、第1実施形態に説明で示した図3,6,7,8と同一番号を付したステップについては実質的に同じ作動をするので第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0037】
補正係数算出(図11、ステップ1440)後のステップ1450Aでは、図12に示すように、まず式(9)により、補正係数の経時変化量Δωn を算出する(ステップ1455)。
Δωn =|ωn,m −ωn,m-1 |・・・・(9)
【0038】
続くステップ1456では、ステップ1455において算出した経時変化量Δωn を積算値ΣΔωn に加算する。しかしてシグナルロータ2a〜2dが1回転するごとに、経時変化量Δωn が算出され、その積算値ΣΔωn が更新される。
【0039】
図13に示す定時割り込み処理では、図9のステップ2010と同一手順で車輪速度が算出される(ステップ3010)。ステップ3020では、所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間とは、予め設定した車速パルス割り込み処理の回数で規定される時間である。すなわち所定回数の車速パルス割り込み処理が実行されると、ステップ3030〜3060が実行される。なおステップ3030〜3060は各タイヤ1a〜1dについてそれぞれ実行される。
【0040】
ステップ3030では式(10)により、差分Δ(ΣΔωn )を算出し、これを予め設定した所定値と比較する。所定値は予め実験等でタイヤの空気抜け等のタイヤ異常時の補正係数の経時変化量に基づいて設定される。
Δ(ΣΔωn )=|ΣΔωn −ΣΔωn の前回値|・・・・(10)
【0041】
ステップ3030において差分Δ(ΣΔωn )が所定値よりも小さければタイヤは正常と判定し(ステップ3041)、差分Δ(ΣΔωn )が所定値よりも大きければ当該タイヤで異常が発生したものと判定する(ステップ3042)。判定後、積算値ΣΔωn の前回値を今回の積算値ΣΔωn の値に更新し(ステップ3050)、積算値ΣΔωn をクリアする(ステップ3060)。
【0042】
本実施形態では各タイヤ1a〜1dについてそれぞれ実行されるから、タイヤ異常の有無だけではなく、異常の発生したタイヤが特定できる。
【0043】
なお本実施形態では、特徴変数は、これを1つの回転検出部の、補正係数の経時変化量としたが、経時変化量の48全部もしくはその一部の回転検出部についての平均値としてもよい。この場合、車両が停止した場合に回転検出部番号が特定できなくとも正確な判定ができる。
【0044】
また補正係数の経時変化量の積算値の、今回値と前回値との差分を所定値と比較するようにしたが、第1実施形態のごとく車輪間の差分とし得る。
【0045】
(第3実施形態)
本実施形態の車輪速度検出装置は構成および車速パルス割り込み処理が第2実施形態と基本的には同じで、第2実施形態の定時割り込み処理に代えて別の定時割り込み処理としたものである。図14に本実施形態の定時割り込み処理の流れを示す。図中、第1および第2実施形態の説明で示した図13と同一番号を付したステップについては実質的に同じ作動をするので第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0046】
図14において、ステップ3070では初期化操作がされているかどうかを判定する。初期化操作とは運転者などが行うスイッチ操作であり、タイヤ交換時等、タイヤ正常時に行われる。初期化操作がされていればステップ3080に進み積算値ΣΔωn 記憶値を積算値ΣΔωn に設定し記憶手段たるバックアップメモリに記憶する。以降の定時割り込み処理では積算値ΣΔωn 記憶値がタイヤ異常の判定に使用される。
【0047】
ステップ3090では式(11)により、差分Δ(ΣΔωn )を算出し、これを予め設定した所定値と比較する。ここで所定値は、予め実験等でタイヤの空気抜け等のタイヤ異常発生時における補正係数の経時変化量を求めておき、この経時変化量より設定される。
Δ(ΣΔωn )=|ΣΔωn −ΣΔωn の記憶値|・・・・(11)
【0048】
ステップ3090において、差分Δ(ΣΔωn )が所定値よりも小さければタイヤは正常と判定し(ステップ3101)、差分Δ(ΣΔωn )が所定値よりも大きければ当該車輪で異常が発生したものと判定する(ステップ3102)。判定後、積算値ΣΔωn をクリアする(ステップ3110)。
【0049】
上記各実施形態では、特徴係数は積算することにより、判定誤差を抑えるようにしたが、路面振動などの判定誤差要因が小さければ、積算しなくともよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1のタイヤ異常検知装置の構成図である。
【図2】本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第1の模式図である。
【図3】本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第1のフローチャートである。
【図4】(a)は本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第2の模式図であり、(b)は本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第3の模式図である。
【図5】(a)は本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第3の模式図であり、(b)は本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第4の模式図である。
【図6】本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第2のフローチャートである。
【図7】本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第3のフローチャートである。
【図8】本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第4のフローチャートである。
【図9】本発明の第1のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第5のフローチャートである。
【図10】本発明の第2のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第1のフローチャートである。
【図11】本発明の第2のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第2のフローチャートである。
【図12】本発明の第2のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第3のフローチャートである。
【図13】本発明の第2のタイヤ異常検知装置の作動を説明する第4のフローチャートである。
【図14】本発明の第3のタイヤ異常検知装置の作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1a〜1d タイヤ
2a〜2d シグナルロータ(回転体)
2a〜2d 電磁ピックアップ(回転検出手段)
4 電子制御装置(ずれ量依存値算出手段、特徴変数算出手段、判定手段、記憶手段)

Claims (7)

  1. 車両の各車輪に、これら車輪と一体に回転する回転体であって周方向に複数の回転検出部が形成された回転体と、回転体に対向して設けられて回転体の複数の回転検出部の通過を検出する回転検出手段とを設け、回転検出手段により得られた複数の検出信号から各回転検出部の検出周期の、基準値からのずれ量を求め、このずれ量に基づき各回転検出部の検出周期のずれを補正するためのずれ量依存値を算出するずれ量依存値算出手段と、ずれ量依存値算出手段で算出された複数のずれ量依存値により回転体の特徴を示す特徴変数を算出する特徴変数算出手段と、特徴変数算出手段により算出された特徴変数に基づいてタイヤ状態を二値判定する判定手段とを具備することを特徴とするタイヤ異常検知装置。
  2. 請求項1記載のタイヤ異常検知装置において、上記特徴変数を、上記回転体1回転におけるずれ量依存値のばらつき量としたタイヤ異常検知装置。
  3. 請求項1記載のタイヤ異常検知装置において、上記特徴変数を、ずれ量依存値の経時変化量としたタイヤ異常検知装置。
  4. 請求項1ないし3いずれか記載のタイヤ異常検知装置において、上記判定手段は、上記特徴変数の車輪間の差分を所定値と比較するように設定したタイヤ異常検知装置。
  5. 請求項1ないし3いずれか記載のタイヤ異常検知装置において、上記判定手段は、上記特徴変数の今回の値と前回の値の差分を所定値と比較するように設定したタイヤ異常検知装置。
  6. 請求項1ないし3いずれか記載のタイヤ異常検知装置において、上記判定手段は、上記特徴変数の今回の値と、予め設定された特徴変数の初期値の差分を所定値と比較するように設定したタイヤ異常検知装置。
  7. 請求項6記載のタイヤ異常検知装置において、上記特徴変数の初期値を、タイヤ正常時に上記特徴変数算出手段で算出された算出値とし、かつ上記判定手段には上記算出値を記憶する記憶手段を具備せしめたタイヤ異常検知装置。
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