JP3727695B2 - ゴムホース - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用のエアー系配管又は燃料系配管として最適なゴムホースに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年自動車用のエアー系配管及び燃料系配管には軽量化の要求の高まりから金属鋼管に代わって、耐熱性、耐衝撃性にも優れるポリアセタール樹脂が多く用いられている。一方、これら配管の相対運動を吸収しながら接続させるゴムホースの材質としてはニトリルゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴムが、コスト/性能バランスに優れるゴム材料として多用されている。
【0003】
ニトリルゴムにポリ塩化ビニルをブレンドすることは、ニトリルゴムの耐オゾン性、耐侯性、耐ガソリン透過性,耐溶剤亀裂成長性を改良するために従来からよく知られている。このブレンドゴムの可塑性、混練り性、型流れ性、押出性、耐低温性を改良するために配合される可塑剤としては、ニトリルゴム、ポリ塩化ビニルの両方との相溶性に優れるジオクチルフタレート(DOP),ジオクチルアジペート(DOA)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの可塑剤を配合したゴム加硫物は、ポリアセタール樹脂等と接触した場合、使用時にゴム中から可塑剤が抽出されて、これらの樹脂表面にクラックが発生するという不具合な現象を引き起こしてしまう。
【0005】
この不具合対策としては、上述の可塑剤の代わりにジブチルグリコールアジペート,ポリエーテルエステル系可塑剤等を配合することが考えられるが、その場合異径ホース,曲げRが小さいホース等の特に成形歪みが生じやすい複雑な形状の製品を成形する際には、ゴム表面にクラックが発生し、目的の形状・寸法の製品を安定的に得られないという問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、ニトリルゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴムに、可塑剤としてニトリルゴムとポリ塩化ビニルの両方との相溶性に優れ、かつポリアセタール樹脂に悪影響を及ぼさないキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を配合することにより、ポリアセタール樹脂製の自動車用のエアー系配管及び燃料系配管等に悪影響を及ぼさない(ソルベントクラックを発生させることのない)ゴムホースを得ることを可能にした。キシレン系ホルムアルデヒド樹脂は下記化3式に示されるキシレンホルムアルデヒド樹脂、又は化4式に示されるメシチレンホルムアルデヒド樹脂が好ましい。また、これらのキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を配合すると同時に、さらに液状ニトリルゴムを併用配合することで、キシレン系ホルムアルデヒド樹脂の優れた耐ソルベントクラック性を損なうことなく、加硫成形性を顕著に改良することを見出した。
【0007】
【化3】
Figure 0003727695
【0008】
【化4】
Figure 0003727695
【0009】
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂には各種の芳香族炭化水素化合物を原料とするものがあるが、m-キシレン,メシチレンについては、ホルマリン等との付加縮合反応速度が速いため、効率良く含酸素オリゴマーを得ることができる。一方、o,p-キシレン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、ナフタリン等については縮合反応速度が極めて遅いため、製造コストが高くなり、また、長時間反応により含有されている酸素が減少してしまい、結果としてニトリルゴム、ポリ塩化ビニル及びポリアセタール樹脂との相溶性が低下してしまい、目的とする効果が得られない。以上のことから、m-キシレン又は、メシチレンを原料とするキシレン系ホルムアルデヒド樹脂が適している。
【0010】
キシレン系ホルムアルデヒド樹脂の配合量は1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部が適当で、1重量部未満では十分な可塑化効果が得られず(バギング現象発生)、また40重量部を越えると、ゴム組成物の粘度が著しく低下し(粘着現象発生)、いずれも混練加工性に劣り、実用性に乏しい。
【0011】
なお、本発明においては、キシレン系ホルムアルデヒド樹脂に加えて、耐ソルベントクラック性に悪影響を及ぼさない範囲内でDOP、DOAといった従来の可塑剤も併用して用いることができる。
【0012】
キシレン系ホルムアルデヒド樹脂と同時に併用配合すると効果を発揮する液状ニトリルゴムの配合量は0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部が適当で、0.5重量部未満では加硫成形性の改良作用が得られず、また20重量部を越えるとコストアップとなり好ましくない。
【0013】
【発明の実施の形態】
ニトリルゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴムに可塑剤としてキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を配合したゴムホースにおいて、キシレン系ホルムアルデヒド樹脂は、その化学的組成から、ポリアセタール樹脂との相溶性が低いためにソルベントクラック性に優れ、一方、ニトリルゴム及びポリ塩化ビニルとの相溶性は高いので、そのブレンドゴムの可塑剤として優れた可塑化効果を発揮する。さらに、液状ニトリルゴムを併用することで、ニトリルゴム中に分散しているポリ塩化ビニルの密着性が向上し、優れたゴムホースへの加硫成形性が得られる。
【0014】
【実施例】
次に、実施例及び比較例をもって、本発明を説明する。
・実施例1〜8及び比較例1〜4
表1に示す配合(ただし、硫黄及び加硫促進剤を除く)を、90℃に調整した1500mlのバンバリーミキサーを用い、ローター回転60cpmで5分間混練した。その後、8インチのオープンロールを用いて、硫黄及び加硫促進剤を添加・混練し、ゴム組成物を得た。なお、配合単位は、特に断らない限り重量単位とする。
【0015】
【表1】
Figure 0003727695
【0016】
(*1)日本合成ゴム(株)製NBR/PVCブレンドゴム
(ブレンド比率=70/30)
(*2)日本ゼオン(株)製液状NBR
(*3)三菱ガス化学(株)製キシレン・ホルムアルデヒド樹脂
(酸素含有率=10wt% 平均分子量=410) ニカノールL
(*4)三菱ガス化学(株)製キシレン・ホルムアルデヒド樹脂
(酸素含有率=19wt% 平均分子量=260) ニカノールY−51
(*5)三菱ガス化学(株)製キシレン・ホルムアルデヒド樹脂
(酸素含有率=17wt% 平均分子量=300) ニカノールY−101
(*6)三菱ガス化学(株)製キシレン・ホルムアルデヒド樹脂
(酸素含有率=15wt% 平均分子量=330) ニカノールY−1001
(*7)三菱ガス化学(株)製メシチレン・ホルムアルデヒド樹脂
(酸素含有率=13wt% 平均分子量=410) ニカノールM
(*8)大八化学(株)製フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
(酸素含有率=16wt% 平均分子量=391)
(*9)大八化学(株)製アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル
(酸素含有率=17wt% 平均分子量=371)
(*10)大八化学(株)製ジ-n-ブチルジグリコールエステル
(酸素含有率=29wt% 平均分子量=435)
【0017】
次に、これらのゴム組成物について下記の通り評価した。その結果を表2に示した。
【0018】
【表2】
Figure 0003727695
【0019】
但し、各試験方法は下記の通りである。
(1)ムーニー粘度試験
配合物のムーニー粘度試験は、試験温度は100℃にて行い、試験方法の詳細はJIS K6300 4.ムーニー粘度試験に準拠した。
【0020】
(2)伸長破壊試験*1
スクリュー外径30mmの押出機を用い、スクリュー回転数30cpm,ヘッド温度80℃,シリンダー温度60℃の条件で、内径10mm,肉厚2mmのチューブを押出す。次に、そのチューブからJIS K6301 3.2試験片に準じたダンベル1号試験片を打ち抜き、この試験片の中央部にJIS K6301 15.屈曲試験に準じた刃を用いて穴(切り欠き)を入れる。この後、50%伸長を与え、常温下で放置し、破断時間(単位:分)を測定する。
【0021】
(3)応力緩和破壊試験*2
スクリュー外径30mmの押出機を用い、スクリュー回転数30cpm,ヘッド温度80℃,シリンダー温度60℃の条件で、内径10mm,肉厚2mmのチューブを押出す。次に、そのチューブからJIS K6301 3.2試験片に準じたダンベル3号試験片を打ち抜き、この試験片に所定の伸長(50〜150%)を与えた後、160℃で20分間加硫し、試験片表面のクラック発生の有無を観察した。クラックの発生しない最大伸長率を臨界伸長率(単位:%)とした。
【0022】
(4)加硫物の物性試験
常態物性の試験は、JIS K6301に準拠して測定した。
【0023】
(5)ソルベントクラック試験(樹脂パイプへの連結試験)
スクリュー外径70mmの押出機を用い、スクリュー回転数60cpm,ヘッド温度80℃,シリンダー温度60℃の条件で、内径6mm,肉厚3mmのチューブを押出す。次に、そのチューブを160℃で20分間加硫した後、外径7mmのポリアセタール樹脂(セラニーズ社製ジュラコンを使用)製パイプに挿入し、120℃雰囲気で放置し、24時間毎にポリアセタール樹脂製パイプ表面のクラック発生の有無を確認し、クラック発生時間(単位:時間)を測定した。
【0024】
(6)ガーベダイ押出試験
ASTM D2230のA法に基づき評価を行い、4項目の合計点を示した。
【0025】
(7)混練加工性
バンバリーミキサー及び、オープンロールでの混練加工性について評価を行った。(○…良好、△…やや難、×…難あり)
注:*1、*2…加硫成形性試験。
【0026】
結果から、次のことがわかる。すなわち、本発明のキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を使用した実施例は、いずれも優れた耐ソルベントクラック性を示す。また、さらに液状ニトリルゴムを併用配合すると、加硫成形性が大きく改善されることが分かる。
【0027】
【発明の効果】
本発明では、ニトリルゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴムに、可塑剤としてニトリルゴムとポリ塩化ビニルの両方との相溶性に優れ、かつポリアセタール樹脂に悪影響を及ぼさないキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を配合したゴムホースを用いることにより、ポリアセタール樹脂製の自動車用のエアー系配管及び燃料系配管等のソルベントクラックを防止することを可能にした。さらにこのキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を配合すると同時に、液状ニトリルゴムを併用配合することで、キシレン系ホルムアルデヒド樹脂の優れた耐ソルベントクラック性を損なうことなく、加硫成形性を顕著に改良することが可能となった。

Claims (3)

  1. ニトリルゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴムに可塑剤としてキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を配合し、耐ソルベントクラック性を改良したゴムホース。
  2. ニトリルゴムとポリ塩化ビニルとのブレンドゴムに可塑剤としてキシレン系ホルムアルデヒド樹脂を配合すると共に、液状ニトリルゴムを配合し、耐ソルベントクラック性と加硫成形性を改良したゴムホース。
  3. キシレン系ホルムアルデヒド樹脂が下記化1式に示されるキシレンホルムアルデヒド樹脂、又は化2式に示されるメシチレンホルムアルデヒド樹脂である請求項1又は請求項2記載のゴムホース。
    Figure 0003727695
    Figure 0003727695
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