JP3726456B2 - 同時二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
同時二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、同時二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関し、特に縦横方向に高強度化され、各種工業材料フィルムに適した同時二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックフィルムは、他の素材からは得られないような大面積のフィルムの連続生産が可能であり、その強度、耐久性、透明性、柔軟性、表面特性の付与などの特徴を活かして、農業用、包装用、建材用などの大量に需要のある分野で用いられている。中でも、二軸延伸ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、耐薬品性のために、さまざまな分野で利用されており、特に磁気テープ用ベースフィルムとしての有用性は、他のフィルムの追随を許さない。近年は機材の軽量化、小型化と長時間記録化のためにベースフィルムの一層の薄膜化が要求され、従ってますますの高強度化が望まれている。
【0003】
また、熱転写リボン用、コンデンサ用、感熱孔版印刷原紙用においても薄膜化の傾向が近年非常に強く、同様にますますの高強度化が望まれている。
【0004】
二軸延伸ポリエステルフィルムの高強度化の手法としては、縦・横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸し、縦方向に高強度化するいわゆる再縦延伸法が一般的である(例えば、特公昭42−9270号公報、特公昭43−3040号公報、特開昭46−1119号公報、特開昭46−1120号公報)。また、さらに横方向にも強度を付与したい場合には、再縦延伸を行なった後、再度横方向に延伸する再縦再横延伸法が提案されている(例えば、特開昭50−133276号公報、特開昭55−22915号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
縦横方向に高強度された二軸延伸ポリエステルフィルムを得るための手法としては、上記のような従来の再縦再横延伸法などがあるが、再縦延伸して縦方向に高強度化した後、再横延伸して横方向を高強度化すると、縦方向の配向が低下する欠点があり、縦横方向を同時に高強度化するのが難かしく、延伸時のフィルム破れ頻度が高くなる。
【0006】
本発明の課題は、縦横方向の配向が大きく、高強度化された同時二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、未延伸キャストフィルムを、(ポリエステルのガラス転移温度Tg+25)℃〜(Tg+45)℃の温度範囲で面積延伸倍率2〜7倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第1段目の延伸工程と、引続き(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度範囲で面積延伸倍率4〜20倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第2段目の延伸工程を有することを特徴とする方法からなる。
【0008】
また、本発明に係る同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、未延伸キャストフィルムを、(ポリエステルのガラス転移温度Tg+25)℃〜(Tg+45)℃の温度範囲で面積延伸倍率2〜7倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第1段目の延伸工程と、引続き(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度範囲で面積延伸倍率4〜16倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第2段目の延伸工程と、さらに(ポリエステルの融解温度Tm−130)℃〜(Tm−10)℃の温度範囲で面積延伸倍率1.5〜5倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第3段目の延伸工程を有することを特徴とする方法からなる。
【0009】
また、本発明に係る同時二軸延伸ポリエステルフィルムは、同時二軸延伸後の、レーザーラマン散乱法で測定した1615cm-1における縦方向のピーク強度(IMD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R1 (=IMD/IND)と横方向のピーク強度(ITD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R2 (=ITD/IND)の少なくともいずれか一方が6〜11であり、かつ、縦方向のヤング率(E MD )と横方向のヤング率(E TD )の少なくともいずれか一方が6〜9GPaであることを特徴とするものからなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明におけるレーザーラマン散乱法で測定した1615cm-1における縦方向のピーク強度(IMD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R1 (=IMD/IND)と横方向のピーク強度(ITD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R2 (=ITD/IND)は、縦あるいは横方向の配向の強さを示す指標であるが、本発明で使用する1615cm-1のラマンバンドはベンゼン環のC=C伸縮振動(νC=C)に帰属されるバンドで、このバンドの強度は、ベンゼン環のパッキング状態によっても変化し、特に二軸延伸フィルムの場合、配向のみでは決らないものである。
【0011】
本発明においては、高配向で高強度化されたフィルムを得るために、この縦と横の強度比R1 、R2 の少なくともいずれか一方が6〜11であることが必要である。好ましくは7以上である。特に、磁気材料用としては横方向の強度比R2 が6以上であることがさらに好ましい。
【0012】
また、通常の市販されている二軸延伸ポリエステルフィルムの縦方向のヤング率(EMD)、横方向のヤング率(ETD)は4〜4.5GPaが普通であるが、磁気テープ用ベースフィルムでは、特に高出力化、リボン用、感熱孔版印刷原紙用では高精細化、コンデンサー用では、絶縁特性の向上、という目的を顕著に達成するために、本発明では、縦方向のヤング率(EMD)と横方向のヤング率(ETD)の少なくともいずれか一方が6〜9GPaとされる。さらに好ましくは7GPa以上がより望ましい。この場合、ヤング率が6GPa未満となる方向のヤング率は5GPa以上とするのが好ましい。
【0013】
また、本発明で言うポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とからの縮重合により得られるポリマーである。ジカルボン酸とは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などで代表されるものであり、また、ジオールとは、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどで代表されるものである。具体的には、例えば、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを用いることができる。もちろん、これらのポリエステルは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールなどのジオール成分、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分を用いることができる。本発明の場合、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)およびこれらの共重合体より選ばれた少なくとも一種であることが機械的強度、耐熱性、耐薬品性、耐久性などの観点から好ましい。
【0014】
また、このポリエステルの中には、無機粒子や有機粒子、その他の各種添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤などを添加してもかまわない。
【0015】
無機粒子の具体例としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの酸化物、カオリン、タルク、モンモリロナイトなどの複合酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムなどのチタン酸塩、リン酸第3カルシウム、リン酸第2カルシウム、リン酸第1カルシウムなどのリン酸塩などを用いることができるが、これらに限定されるわけではない。また、これらは目的に応じて2種以上用いてもかまわない。
【0016】
有機粒子の具体例としては、ポリスチレンもしくは架橋ポリスチレン粒子、スチレン・アクリル系及びアクリル系架橋粒子、スチレン・メタクリル系及びメタクリル系架橋粒子などのビニル系粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレンなどの粒子を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、粒子を構成する部分のうち少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の有機高分子微粒子であれば如何なる粒子でも良い。また有機粒子は、易滑性、フィルム表面の突起形成の均一性から粒子形状が球形状で均一な粒度分布のものが好ましい。
【0017】
これらの粒子の粒径、配合量、形状などは用途、目的に応じて選ぶことが可能であるが、通常は、平均粒子径としては0.05μm以上3μm以下、配合量としては、0.01重量%以上10重量%以下が好ましい。
【0018】
また、本発明のフィルムは2層以上の積層フィルムであっても構わない。2層以上積層された積層フィルムとするのは、特に磁気記録媒体のベースフィルムにおいて、用途に応じて、磁気記録面となるフィルム面とその反対面の表面粗さを異なる設計にする方法として最適である。
【0019】
本発明のフィルムは同時二軸延伸ポリエステルフィルムであり、所望のフィルムの配向の付与が本発明の同時二軸延伸の製造方法によって達成されるものである。
【0020】
本発明におけるフィルムの全体厚みは用途、目的に応じて適宜決定することができる。通常磁気材料用途では1μm以上20μm以下が好ましく、中でもディジタルビデオ用塗布型磁気記録媒体用途では2μm以上8μm以下、ディジタルビデオ用蒸着型磁気記録媒体用途では3μm以上9μm以下が好ましい。
【0021】
また、工業材料用途の中では、熱転写リボン用途では1μm以上6μm以下、コンデンサ用途では0.5μm以上15μm以下、感熱孔版原紙用途では0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0022】
本発明のレーザーラマン散乱法による強度比Rが縦方向と横方向の少なくともいずれか一方が6以上であるフィルムは、磁気媒体用途、熱転写リボン用途、コンデンサ用途、感熱孔版印刷原紙用途などに好ましく用いることができる。
【0023】
磁気媒体用途の場合は、レーザーラマン散乱法による強度比Rが縦方向と横方向の少なくともいずれか一方が6〜11であり、特に横方向の強度比R2 が6以上、より好ましくは7以上とするのがより好ましい。また、好ましくはフィルムの横方向のヤング率(ETD)が6〜9GPa、より好ましいは7GPa以上である。この場合、縦方向のヤング率(EMD)は5GPa以上が好ましい。
【0024】
特に磁気材料用途の中でもディジタルビデオ用途の場合はレーザーラマン散乱法における強度比Rの縦方向と横方向の少なくともいずれか一方が6〜11であることはもちろんのこと、高いレベルの電磁変換特性を達成するために少なくとも片側の表面粗さ(Ra)が0.1nm〜5nmと超平滑な表面であることが好ましい。
【0025】
なお、この目的を達するためには少なくとも2層以上の積層フィルムとし、少なくとも片側の表面層でこの目的を達成することが好ましい。
【0026】
熱転写リボン用途の場合は、上記した強度比Rのうち、少なくとも縦方向の強度比R2 が6以上であることがより好ましく、長手方向の、100℃、30分での熱収縮率が2%以下、さらに1%以下であると、印字する際のシワがなく、印字むらやインクの過転写を生じることがなく、高精細な印刷を行うことができる。
【0027】
コンデンサ用途の場合は、上記した強度比Rのうち、少なくとも縦方向の強度比R1 が6以上であり、かつフィルムの縦方向の破断伸度が100%以下、さらに好ましくは80%以下とすると、絶縁破壊電圧の向上と誘電特性の安定化に有効である。
【0028】
感熱孔版原紙用途の場合は、上記した強度比Rの縦方向と横方向の少なくともいずれか一方が6以上であり、かつフィルムの融点が230℃以下であり、及び結晶融解熱(ΔHu)が、50J/g以下であると、低エネルギーでの穿孔性にも優れ、エネルギーレベルに応じて穿孔径を変化させることが可能であり複数版でのカラー印刷を行う場合などの印刷性にも優れている。
【0029】
本発明で言う同時二軸延伸フィルムとは、配向付与の方法が同時二軸延伸によって行われるフィルムである。本発明の製造方法は、未延伸キャストフィルムを、(ポリエステルのガラス転移温度Tg+25)℃〜(Tg+45)℃の温度範囲で面積延伸倍率2〜7倍に縦および横方向に同時二軸延伸する第1段目の延伸工程と、引続き(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度範囲で面積延伸倍率4〜20倍に縦及び横方向に同時二軸延伸する第2段目の延伸工程を有し、多段階の温度で多段に同時二軸延伸するものである。
【0030】
各段階の同時二軸延伸の縦と横の延伸倍率は、同倍率であってもよく、異なっていてもよい。好ましくは、キャストフィルムの両端部を把持具(クリップ)で把持する同時延伸テンターに導き、フィルムを予熱した後、第1段目と第2段目の同時延伸を行うとき、縦と横の延伸倍率は同倍率か、もしくは縦と横の延伸倍率の差を1以下とするのが好ましい。
【0031】
未延伸キャストフィルムを、(ポリエステルのガラス転移温度Tg+25)℃〜(Tg+45)℃の温度範囲で面積延伸倍率2〜7倍に縦および横方向に同時二軸延伸する第1段目の延伸工程と、引続き(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度範囲で面積延伸倍率4〜16倍に縦及び横方向に同時二軸延伸する第2段目の延伸工程と、さらに(ポリエステルの融解温度Tm−130)℃〜(Tm−10)℃の温度範囲で面積延伸倍率1.5〜5倍に縦および横方向に同時二軸延伸する第3段目の延伸工程を有する製造方法によれば、フィルムをさらに強力化できる。このとき、第3段目の延伸工程を多段階の温度で多段に同時二軸延伸するとさらに好ましい。この場合、第3段目の同時二軸延伸での縦と横の延伸倍率は、最終二軸延伸フィルムの必要強度特性に合わせて、縦と横の延伸倍率を本発明の範囲で適宜選択する。
【0032】
最後の同時二軸延伸後、(ポリエステルの融解温度Tm−60)℃〜(Tm−10)℃の温度範囲で熱固定を行い、熱固定温度からの冷却過程で縦および横方向に弛緩処理を行うことが熱寸法安定性の点で好ましい。ここで面積延伸倍率とは、縦延伸倍率と横延伸倍率の積である。
【0033】
本発明の同時二軸延伸において、フィルム端部の把持具(クリップ)の温度は(ポリエステルのガラス転移温度Tg+15)℃〜(Tg+50)℃の温度範囲が好ましく、またフィルム端部と把持具とが接触する面の形状において、長手方向の長さ(LMD)と幅方向の長さ(LTD)の比(LMD/LTD)を3〜15の範囲とする把持部を有するクリップを用いて同時二軸延伸することが、クリップ把持部分のフィルムの延伸倍率を高める点で好ましい。
【0034】
ここで把持具(クリップ)の温度とは、把持具はテンター中の延伸、熱固定ゾーンの熱風で加熱されつつ通過しテンターから排出され、オーブンの外周をリターンしてテンター入口に導かれるが、このとき、フィルム端部を把持する前の把持具(クリップ)の温度を言う。把持具の温度は、外周をリターンする工程で、冷却のための冷風の風量、冷却部の長さを制御して行う。この温度は製膜条件に設定して3〜5時間の連続運転で定常温度になる。
【0035】
また、フィルム端部と把持具とが接触する面の形状とは、紙の間にカーボン紙を挟み込んだ状態、あるいは加圧発色する感圧フィルムを把持具に挟み込んで、加圧印画したときに得られる形状を言う。本発明では、この形状の縦方向の長さ(LMD)は、15〜30mmが好ましい。
【0036】
また、本発明の同時二軸延伸では、第1段目の温度を(ポリエステルのガラス転移温度Tg+25)℃〜(Tg+45)℃の温度範囲とし、第2段目の温度を(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度範囲で行うことで、フィルムの端部部分の延伸性を高め、かつ第2段目の同時二軸延伸後のフィルム中央部の強度を高める効果があり、さらに第3段目以降の同時二軸延伸性が良くなり、同時二軸延伸後のフィルムの強度をさらに高めることができる。
【0037】
なお、本発明において未延伸キャストフィルムとは、十分乾燥された原料ペレットを押出機に供給し、T型等の口金により、回転する金属製キャスティングドラム上にシート状に押し出し、冷却固化せしめたもの、もしくは未乾燥ペレットをベント式押出機に供給し同様にして得られたものをいう。
【0038】
次に、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造法の具体的な例について説明するが、本発明方法はかかる例に限定されるものではない。
【0039】
ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレートのペレットを真空下で十分に乾燥して、270〜300℃の温度に加熱された押出機に供給し、T型口金よりシート状に押し出す。この溶融されたシートを、表面温度10〜40℃に冷却されたドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、実質的に非晶状態の未延伸キャストフィルムを得る。このキャストフィルムを、フィルム両端部を走行するクリップで把持して同時二軸延伸テンターに導き、予熱ゾーンで100〜120℃に加熱し、縦および横の延伸倍率を1.5〜2.5倍の範囲で、面積延伸倍率を2〜7倍の範囲に第1段目の同時二軸延伸を行う。このとき、フィルム端部を把持するクリップの温度は、90〜130℃の温度範囲にするのが好ましい。引続き、60〜85℃の温度に降温し、縦および横の延伸倍率を2〜5倍の範囲で、面積延伸倍率を4〜20倍の範囲に第2段目の同時二軸延伸を行う。あるいは、第2段目の同時二軸延伸の面積延伸倍率を4〜16倍の範囲で行い、引続き、125〜245℃、好ましくは130〜210℃の温度範囲で、縦および横の延伸倍率を1.0〜2.5倍の範囲で、面積延伸倍率を1.5〜5倍の範囲に第3段目の同時二軸延伸を行う。第3段目の同時二軸延伸は、2段階以上の温度で多段階に分割して行うことが好ましい。例えば、125〜160℃の温度範囲と161〜245℃の温度範囲で延伸倍率を分割して同時二軸延伸を行うことが強度発現の点で好ましい。
【0040】
こうして二軸延伸されたフィルムに平面性、寸法安定性を付与するために、195〜245℃の温度範囲で熱固定を行い、熱固定温度からの冷却過程で、好ましくは100〜200℃の温度範囲で縦および横方向に、好ましくは1〜6%の範囲で弛緩処理を行う。その処理後、フィルムを室温まで冷やして巻き取り、目的とするレーザーラマン散乱法で測定した1615cm-1における縦方向のピーク強度(IMD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R1 (=IMD/IND)と横方向のピーク強度(ITD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R2 (=ITD/IND)の少なくともいずれか一方が6〜11の同時二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0041】
なお、本発明では、フィルムの表面特性を付与するため、例えば易接着性、易滑性、離型性、制電性を付与するために、フィルムの同時二軸延伸の前または後の工程で、ポリエステルフィルムの表面に塗材をコーティングすることができる。
【0042】
[物性値の測定、評価法]
(1)ガラス転移温度Tg、融解温度Tm、結晶融解熱ΔHu
示差走査熱量計として、セイコー電子工業(株)製“ロボットDSC−RDC220”を用い、データー解析装置として、同社製“ディスクセッション”SSC/5200を用い、サンプルを約5mg採取し、室温から昇温速度20℃/分で300℃まで加熱した時に得られる熱カーブより、Tg、Tmを求める。また、融解に伴う融解吸熱カーブの面積から結晶融解熱ΔHuを求める。
【0043】
(2)レーザーラマン散乱法によるフィルムの配向
レーザーラマン分光の測定条件は次のとおりである。
測定に用いたフィルムはポリメチルメタクリレートに包埋後、湿式研磨し、断面は横方向に平行にした。測定部分は中心部分とし、位置を少しずらして10回測定し平均値をとった。測定は縦方向に平行な偏光測定における1615cm-1バンドの強度(IMD)と厚み方向に平行な偏光測定における1615cm-1バンドの強度(IND)をとり、配向を表す比RをR1 =IMD/INDとした。また横方向に平行な偏光測定における1615cm-1バンドの強度(ITD)と厚み方向に平行な偏光測定における1615cm-1バンドの強度(IND)をとり、配向を表す比RをR2 =ITD/INDとした。
【0044】
(3)高速削れ性
フィルムを幅1/2 インチのテープ状にスリットしたものをテープ走行性試験機を使用して、ガイドピン(表面粗度:Raで100nm)上を走行させる(走行速度250m/分、走行回数1パス、巻き付け角:60゜、走行張力:90g)。このとき、フィルムを走行させ終わった後のガイドピンを肉眼で観察し、白粉の付着が見られないものを優(○)、白粉の付着が若干見られるものを良(△)、白粉が多く付着しているものは不良(×)と判定した。優が望ましいが、良でも実用的には使用可能である。
【0045】
(4)ヤング率
オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、試料フィルムを幅10mm、試長間100mm、引張り速度200mm/分で引っ張った。得られた張力−歪曲線の立上がりの接線の勾配からヤング率を求めた。測定は25℃、65%RHの雰囲気下で行った。
【0046】
(5)破れ頻度
真空乾燥したポリエチレンテレフタレートをT型口金から、静電気力でキャスティングドラム上に密着させて冷却固化せしめて、キャストフィルムを得、複数のロールからなる長手方向延伸装置、あるいはテンターによる延伸、熱固定装置での延伸に伴うフィルム破れを観察して、次の基準で判定した。
◎:エッジからの破れが皆無である場合
○:エッジからの破れが極まれに生じる場合
△:エッジからの破れが時々生じる場合
×:エッジからの破れが頻発する場合
【0047】
(6)電磁変換特性(C/N)
本発明のフィルムの表面に、下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層は磁性塗料で塗布厚0.1μm、非磁性下層の厚みは適宜変化させた)し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコート層を形成した後、小型テストカレンダー装置(スチール/スチールロール、5段)で、温度:85℃、線圧:200kg/cmでカレンダー処理した後、60℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を8mm幅にスリットし、パンケーキを作成した。次いで、このパンケーキから長さ200m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。
このテープに、市販のHi8用VTR(SONY社製 EV−BS3000)を用いて、7MHz+1MHzのC/N(キャリア対ノイズ比)の測定を行った。
【0048】
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(非磁性下層塗料の組成)
・酸化チタン : 100重量部
・カーボンブラック : 10重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 10重量部
・メチルエチルケトン : 30重量部
・メチルイソブチルケトン : 30重量部
・トルエン : 30重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・酸化亜鉛 : 0.3重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 20重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
【0049】
(7)印字むらおよび階調性評価
得られたフィルムにシアン、マゼンタ、イエローのインキ層を塗布してプリンタリボンを作成し、バリアブルドット方式の熱転写型カラープリンタで色彩パターンの標準印刷をし、目視で階調性を評価した。また、印刷部分の均一性によりリボンにシワが入っていないかどうかを併せて目視で判定した。
【0050】
(8)コンデンサ用特性評価
A.誘電特性
フィルムの両面に直径18mmの円状にアルミニウムを600〜1000オングストロームの厚さになるように蒸着したものを試験片とし、試験片はあらかじめ温度20±5℃、相対湿度65±5%の雰囲気に48時間以上放置しておく。
TA Instruments社の誘電特性測定装置DEA−2970を用いて、周波数1kHz、昇温速度2℃/分で誘電正接の温度依存性を測定し、105℃における誘電正接の値が1.3%以下のものを合格とした。
【0051】
B.絶縁破壊電圧
JIS−C−2319に記載の方法に準じて、ただし、金属蒸着を施していないフィルムを試験片として用いて次のように評価する。
適当な大きさの金属製平板の上にゴムショア硬さ約60度、厚さ約2mmのゴム板を一枚敷き、その上に厚さ約6μmのアルミニウム箔を10枚重ねたものを下部電極とし、約50gの重さで周辺に約1mmの丸みを持った径8mmの底面が平滑で傷のない黄銅製円柱を上部電極とする。試験片はあらかじめ温度20±5℃、相対湿度65±5%の雰囲気に48時間以上放置しておく。上部電極と下部電極の間に試験片をはさみこみ、温度20±5℃、相対湿度65±5%の雰囲気中で両電極間に直流電源により直流電圧を印加し、該直流電圧を1秒間に100Vの速さで0Vから絶縁破壊するまで上昇させる。試料50個に対し試験を行い、絶縁破壊電圧を試験片の厚みで除したものの平均値を求め、その値が400V/μm以上を合格とする。
【0052】
【実施例】
以下に、本発明のより具体的な実施例について説明する。
実施例1、2、比較例1、2
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、融点255℃、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.1重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融押出し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸キャストフィルムを得た。この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、クリップをリニアモータ方式で駆動する駆動装置を具備した同時二軸延伸テンターに導き、110℃の温度で予熱し、表1に示した延伸倍率で第1段目の同時二軸延伸を行い、引続き80℃の温度で、表1に示した延伸倍率で第二段目の同時二軸延伸を行った後、さらに、210℃の温度で熱固定を施した後、120℃の冷却ゾーンで縦方向に1.5%、横方向に2%の弛緩率で弛緩処理を行い、フィルムを室温に徐冷して巻き取った。フィルム厚みは押出量を調節して9μmに合わせた。この時のクリップ温度は100℃とした。比較例では、同時二軸延伸を表1に示す延伸温度、倍率とした以外は実施例1と同様に行った。フィルム端部のクリップ把持跡を観察すると、実施例1、2ではフィルムの延伸跡が見られたが、比較例1、2では、フィルムに把持跡の未延伸部分が見られ、フィルム端部からのフィルム破れが見られる。フィルムの製造条件(延伸温度、倍率)を表1に、得られたフィルムのレーザーラマン散乱法で得たピーク強度比R、ヤング率、破れ頻度を表2に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
実施例3、4、比較例3、4
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、融点255℃、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.1重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融押出し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸キャストフィルムを得た。この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、クリップをリニアモータ方式で駆動する駆動装置を具備した同時二軸延伸テンターに導き、110℃の温度で予熱し、表3に示した延伸倍率で第1段目の同時二軸延伸を行い、引続き80℃の温度で、表3に示した延伸倍率で第二段目の同時二軸延伸を行った。引続き、160℃の温度で表3に示す延伸倍率で第3段目の同時二軸延伸を行った。210℃の温度で熱固定を施した後、120℃の冷却ゾーンで縦方向に2%、横方向に3%の弛緩率で弛緩処理を行い、フィルムを室温に徐冷して巻取った。フィルム厚みは押出量を調節して9μmに合わせた。この時のクリップ温度は105℃とした。比較例として、同時二軸延伸を表3に示す延伸温度、倍率とした以外は実施例と同様ににした。フィルム端部のクリップ把持跡を観察すると、実施例3、4ではフィルムの把持部がほぼ縦方向の延伸倍率まで延伸しており、比較例3は、フィルムの把持部は延伸倍率の低い部分が見られ、フィルム端部からのフィルム破れが見られる。また比較例4はフィルム端部からのフィルム破れがあり、延伸ができなかった。フィルムの製造条件(延伸温度、倍率)を表3に、得られたフィルムのレーザーラマン散乱法で得たピーク強度比R、ヤング率、破れ頻度を表4に示した。
【0056】
比較例5
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、融点255℃、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.1重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給して溶融押出し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸キャストフィルムを得た。この未延伸キャストフィルムを加熱金属ロール群に導き、90℃の温度に加熱して、縦方向に3.1倍の延伸倍率で延伸し、この縦延伸フィルムをテンターに導き、フィルム端部をクリップで把持し、95℃の温度に加熱して横方向に3.3倍の延伸倍率で延伸した。この二軸延伸フィルムを加熱金属ロール群に導き、160℃の温度に加熱して、縦方向に1.3倍の延伸倍率で再延伸した。この延伸フィルムをテンターに導き、フィルム端部をクリップで把持して、200℃の温度に加熱して横方向に1.2倍の倍率で延伸し、引続き210℃の温度で熱固定して室温まで徐冷して巻取った。フィルム厚みは押出量を調節して9μmに合わせた。得られたフィルムのレーザーラマン散乱法で得たピーク強度比R、ヤング率、破れ頻度を表4に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
実施例5
押出機A,B2台を用い、280℃に加熱された押出機AにはポリエチレンテレフタレートI(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、融点255℃、平均径0.2μmの球状架橋ポリスチレン0.2重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、ポリエチレンテレフタレートII(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、融点255℃、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.1重量%と平均径0.45μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.025重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、Tダイ中で合流し(積層比I/II=10/1)、表面温度30℃のキャストドラム上に静電気により密着させて冷却固化し、積層未延伸キャストフィルムを得て、フィルム厚みを5.5μmとした以外は、実施例4と同様の方法で同時二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムのレーザーラマン散乱法で得たピーク強度比R、ヤング率、破れ頻度、ポリエチレンテレフタレートII面の耐摩耗性、ポリエチレンテレフタレートI面に磁性層を塗布したフィルムの電磁変換特性を表5に示した。本発明のフィルムは磁気記録媒体用として非常に適したものであった。
【0060】
【表5】
【0061】
実施例6
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、融点255℃、平均径0.3μmの凝集シリカ粒子0.2重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸キャストフィルムを得た。この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、同時二軸延伸テンターに導き、110℃の温度で予熱し、延伸倍率を縦方向に2倍、横方向に2倍とし、面積延伸倍率4倍に第1段目の同時二軸延伸し、引続き80℃の温度で、延伸倍率を縦方向に3倍、横方向に3倍とし、面積延伸倍率9倍に第2段目の同時二軸延伸した後、さらに、160℃の温度で、延伸倍率を縦方向に1.3倍、横方向に1.2倍とし、面積延伸倍率1.56倍に第3段目の同時二軸延伸した後、230℃の温度で熱固定を施した後、150℃の冷却ゾーンで縦方向に2%、横方向に3%の弛緩率で弛緩処理を行い、フィルムを室温に徐冷して巻取った。フィルム厚みは押出量を調節して4.5μmに合わせた。この時のクリップ温度は105℃とした。得られたフィルムのレーザーラマン散乱法で得たピーク強度比R、ヤング率、長手方向の熱収縮率(100℃×30分,%)、およびカラー印刷特性を評価し表6に示した。表6に示したように熱転写リボン用として非常に良好であった。
【0062】
【表6】
【0063】
実施例7
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、融点255℃、平均径0.2μmの燐酸カルシウム粒子0.1重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に、280℃に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸キャストフィルムを得た。この未延伸フィルムを、フィルム厚み3.5μm、熱固定温度220℃とした以外は、実施例6と同様にして同時二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムのレーザーラマン散乱法で得たピーク強度比R、ヤング率、および幅方向、長手方向の破断伸度、コンデンサー特性を表7に示した。表7から判るようにコンデンサー用途として非常に良好であった。
【0064】
【表7】
【0065】
実施例8
ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体(固有粘度0.70、ガラス転移点75℃、融点225℃、共重合比80/20、平均径0.3μmの凝集シリカ0.2重量%配合)のペレットを120℃で3時間真空乾燥して予備結晶化した後、180℃で3時間真空乾燥し、しかる後に、270℃に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に吐出した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、未延伸キャストフィルムを得た。この未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、同時二軸延伸テンターに導き、105℃の温度で予熱し、延伸倍率を縦方向に2倍、横方向に2倍とし、面積延伸倍率4倍に第1段目の同時二軸延伸し、引続き75℃の温度で、延伸倍率を縦方向に3倍、横方向に3倍とし、面積延伸倍率9倍に第2段目の同時二軸延伸した後、さらに、150℃の温度で、延伸倍率を縦方向に1.3倍、横方向に1.3倍とし、面積延伸倍率1.69倍に第3段目の同時二軸延伸した後、120℃の温度に冷却して、フィルムを室温に徐冷して巻取った。フィルム厚みは押出量を調節して1.5μmとした。得られたフィルムの結晶融解熱ΔHuは25J/gであった。レーザーラマン散乱法によるピーク強度比R、ヤング率、表8に示した。このフィルムを目付量12g/m2 の和紙と貼り合わせ感熱孔版用原紙とした。この原紙を用いてリソグラフ(理想化学工業社製)でテストパターン印刷をしたところ階調性も印字性能も優れたものであった。
【0066】
【表8】
【0067】
【発明の効果】
本発明の同時二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその製造方法によれば、フィルムの延伸破れを起さずに、高範囲の面積延伸倍率に延伸が可能となり、縦、横方向に高強度がされ、レーザーラマン散乱法で測定した1615cm-1における縦方向と横方向の少なくともいずれか一方の強度比Rを6〜11とすることで、高強度、耐摩耗性、寸法安定性、耐伸び性に優れたフィルムを得ることができ、幅広い用途で使用することができ、特に磁気記録媒体用途では、良好な特性を得ることができる。
Claims (14)
- 未延伸キャストフィルムを、(ポリエステルのガラス転移温度Tg+25)℃〜(Tg+45)℃の温度範囲で面積延伸倍率2〜7倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第1段目の延伸工程と、引続き(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度範囲で面積延伸倍率4〜20倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第2段目の延伸工程を有することを特徴とする同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- 縦延伸倍率と横延伸倍率の差が1以下で各段階の延伸を行うことを特徴とする請求項1に記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- 未延伸キャストフィルムを、(ポリエステルのガラス転移温度Tg+25)℃〜(Tg+45)℃の温度範囲で面積延伸倍率2〜7倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第1段目の延伸工程と、引続き(Tg−15)℃〜(Tg+10)℃の温度範囲で面積延伸倍率4〜16倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第2段目の延伸工程と、さらに(ポリエステルの融解温度Tm−130)℃〜(Tm−10)℃の温度範囲で面積延伸倍率1.5〜5倍で縦および横方向に同時二軸延伸する第3段目の延伸工程を有することを特徴とする同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- 第3段目の延伸を2段階以上の温度領域で行うことを特徴とする請求項3に記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- 最後の同時二軸延伸後、(ポリエステルの融解温度Tm−60)℃〜(Tm−10)℃の温度範囲で熱固定を行い、熱固定温度からの冷却過程で縦および横方向に弛緩処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- フィルム端部の把持具の温度が(ポリエステルのガラス転移温度Tg+15)℃〜(Tg+50)℃の温度範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- フィルム端部と把持具とが接触する面の形状において、長手方向の長さ(LMD)と幅方向の長さ(LTD)の比(LMD/LTD)が3〜15の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- 同時二軸延伸を行うテンターの把持具の走行具の駆動方式がリニアモータ方式であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
- レーザーラマン散乱法で測定した1615cm-1における縦方向のピーク強度(IMD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R1 (=IMD/IND)と、横方向のピーク強度(ITD)と厚み方向のピーク強度(IND)との比R2 (=ITD/IND)の少なくともいずれか一方が6〜11であり、かつ、縦方向のヤング率(E MD )と横方向のヤング率(E TD )の少なくともいずれか一方が6〜9GPaであることを特徴とする同時二軸延伸ポリエステルフィルム。
- ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびこれらの共重合体より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項9に記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 横方向のヤング率(E TD )が6〜9GPaであり、磁気記録媒体用であることを特徴とする請求項9または10に記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルム。
- 100℃、30分での長手方向の熱収縮率が2%以下であり、熱転写リボン用であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルム。
- フィルムの長手方向の破断伸度が100%以下であり、コンデンサー用であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の同時二軸延伸ポリエステルフィルム。
- フィルムの結晶融解熱ΔHuが50J/g以下であり、感熱孔版印刷原紙用であることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
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