JP3723805B2 - 自動車用の空気調和システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、自動車用の空気調和システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
空気調和システムを装備する車両では、空気調和システムを短い停止時間の後に再始動するとき、一定の条件の下で窓に曇りが生じる問題があるが、これは、空気調和システムのスイッチを切った後、蒸発器の表面が湿気を帯び、さらにエンジン・ルーム内または周囲の暖かい環境が、空気調和ボックス中の空気の温度を上昇させるからである。このために車両の室内に流れ込む空気の湿度を増加させ、室内では、この空気が車両の窓、特に風防ガラスすなわちフロント・ガラスに触れるからである。同じ問題が、エンジンからの余熱を利用し、かつ/または補助ヒータを有する空気調和システムを装備する車両の場合にも生じる。湿った寒冷な天候でも同じように窓に曇りが生じるが、それは車両内部に取り込んだ空気を再暖房モードで乾燥することによって、前回の運転時に空気調和ボックス内に溜まっていた湿気が、空気と一緒に車両の室内に吹き出すからである。
【0003】
冒頭に述べたタイプの公知の空気調和システム(特許文献1)の場合では、このように窓の曇りが広がっていく傾向を、バイパスによって橋絡された蒸発器によって抑制し、空気の流れ方向において蒸発器の上流側に位置するバイパスの開口を制御可能な遮断要素によって開閉することができる。さらに空気調和ボックス内で、第2遮断要素を蒸発器と熱交換器の間に配置して、この遮断要素によって蒸発器と熱交換器の間の流れ断面全体を遮断することができる。空気の流れ方向で分かるように、このような第2遮断要素は、空気調和ボックス内に設けた排水口の下流側に配置してある。蒸発器の表面湿度を湿気または湿度検知器によって検知し、それが制限値を超えると、制御ユニットによって第1遮断要素をその開位置に移動しかつ第2遮断要素をその閉位置に移動することによって、第1の部分空気流が蒸発器を迂回して流れ、かつ湿気を帯びた蒸発器を通過する第2の空気流が、空気調和ボックス内に設けた排水口を介して車外に流出する。第1の部分空気流によって、車両の室内に暖めたまたは暖めていない空気を供給し続けながら、第2の部分空気流によって蒸発器を乾燥させる。このような乾燥プロセスの後に、これら2つの遮断要素が再び切り換えられ、それによりブロアによって搬送された空気すべてが再び蒸発器を通過する。
【0004】
自動車用の空気調和システムの場合では、この空気調和ボックスに組み込まれた蒸発器を冷却ユニットの冷媒回路中に接続する。この冷媒回路に漏れがあると、冷媒が漏出するおそれがある。このような漏出が空気調和ボックス内で発生すると、漏出した多量の有害な冷媒が、ブロアからの空気と一緒に車両の室内に吹き込まれ、長期的には車両搭乗者の健康障害につながる。公知の空気調和システム(特許文献2)の場合は、冷媒として炭酸ガスを使用するが、蒸発器に漏出が生じたときの車内に吹き込むブロアからの空気中の、健康を害する炭酸ガス濃度の発生を回避するために、炭酸ガス検知器を熱交換器の背後に配置し、かつ換気システムからの空気が自動車の室内に供給されるのを遮断する1つまたは複数の空気フラップを、換気システム内に、流れ方向で熱交換器の背後に設け、前記空気フラップを炭酸ガス検知器の入力信号の関数として制御ユニットによって制御する。炭酸ガス検知器が、蒸発器から出てくるブロアからの空気中で一定の炭酸ガス濃度を検知すると、この制御ユニットが空気フラップをその閉位置に移動し、その結果として、空気調和システム内の蒸発器と熱交換器の間に配置した過剰圧放出口を介してブロア空気すべてを外部に排出する。
【0005】
【特許文献1】
独国特許発明第19731369号明細書
【特許文献2】
独国特許出願公開第19850914号明細書
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の自動車用の空気調和システムにあっては、ブロアからの空気を車外へ排出するために、特許文献1においては第1遮断要素及び第2遮断要素、特許文献2においては空気フラップを空気制御要素として構成している。しかしながらこれらは、空気調和システム内に別途、強制排出のための構造的な要素を組付けているため、該システム内のスペースの節約には不利となり、さらにそれを製造するためのコストもかかることとなる。以上の問題点に対し、本発明は冒頭に述べたタイプの空気調和システムにおいて、効率的に、組付けスペースが節約可能かつ優れたコスト効果により、ブロアからの空気の強制的な排出を実現することを基本的な目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の発明では、ブロア空気が通過可能であり、冷媒回路中に配置された蒸発器と、該蒸発器から所定の間隔を空けて熱交換器とが配置されている空気調和ボックスを有し、該空気調和ボックスは、熱交換器の下流側に配置されかつ空気制御要素によって夫々制御可能な空気吹出し開口部を有する空気分配器と、蒸発器と熱交換器の間に位置する排水口とを含み、かつ蒸発器を通って出てくるブロア空気を排水口を介して強制的に車外に排出する制御手段を含む空気調和システムであって、前記制御手段は、前記ブロア空気を排出する目的のために強制的に閉鎖される全ての前記空気制御要素によって構成されることを特徴とする。
【0008】
本発明による空気調和システムは、ブロアからの空気を排水口へ強制排出するために車両の室内に連通された空気吹出し開口部に必ず存在する空気制御要素を使用することによって、強制排出のための構造的な要素を別途必要としないため、このような構造的な要素を収容するために組付けスペースを別途追加する必要性はなく、さらにそれを製造するために高コストとなることもないという利点を有する。このような排出機能は、自動空気調和システムには必ず存在する空気吹出し開口部の空気制御要素を駆動するための制御ユニットにおいて、優れたコスト効果により実施可能である。
【0009】
本発明による空気調和システムの有利な実施形態、ならびに本発明の好都合な発展形態および改良形態は、さらに従属請求項に記載されており、請求項2記載の発明では、調節要素が、前記空気制御要素を調節するために該空気制御要素に対して作用し、調節要素が、強制的な排出を要する基準が生じた時に空気制御要素を閉鎖させる調節プロセスを開始するために、調節要素を駆動する制御ユニットに接続されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、前記強制的な排出を要する基準が、自動車を始動することから導出されることを特徴とする。
請求項4記載の発明では、前記強制的な排出が自動車を始動することによって開始され、かつ一定時間の後に終了することを特徴とする。
請求項5記載の発明では、前記強制的な排出を要する基準が、蒸発器における空気の湿度から導出されることを特徴とする。
請求項6記載の発明では、前記強制的な排出を要する基準が、蒸発器の冷媒回路から漏出する、ブロア空気中の冷媒の濃度から導出されることを特徴とする。
請求項7記載の発明では、制御ユニットの入力側に空気調和ボックス中に配置されている湿度および/またはガス検知器が接続されていることを特徴とする。
請求項8記載の発明では、検知器が、蒸発器と熱交換器によって区画された、空気調和ボックスの区域内に位置するように空気調和ボックス中に配置されていることを特徴とする。
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
自動車の室内10用の本空気調和システムは、図1に概略的にかつ長手方向側面のみが例示されているが、ダッシュボード11下部の室内10に搭載した空気調和ボックス17を有する。図面にはまた、風防ガラスすなわちフロント・ガラス12、室内10をその前方に取り付けてあるエンジン・ルーム13から隔離する隔壁14、および室内10を下方で画定する車体フロア15を例示する。隔壁14を突出する空気調和ボックス17の吸気口が、ブロア18の吹出し口につながっている。このブロア18の吸気口は、エンジン・ルーム13を覆うエンジン・ボンネット16の外気吸入口19につながる。ダスト・フィルタ20がブロア18の吹出し口の下流側に配置してある。ブロア18のスイッチを入れると、ブロア18が外気吸入口19を介して車両の周囲から空気を取り入れ、さらにダスト・フィルタ20を介して、この空気を空気調和ボックス17によって形成された空気流路に吹き入れる。空気調和ボックス17では、取り入れた外気が調和されて空気調和ボックス17の各空気吹出し口を介して室内10に吹き出される。
【0012】
ブロア18からの空気の流れ方向に見られるように、空気調和ユニット22の蒸発器21、ドリップ薄膜の形態の水分離器23、自動車の内燃エンジンの冷却水が通過する熱交換器24、および車両の室内10を換気するための複数の空気吹出し開口部を有する空気分配器25が、相前後して空気調和ボックス17内に配置してある。また空気調和ボックス17はさらに、ダッシュボード11上方に延在するフロント・ガラス12上に空気を吹き出すためのデフロスタ開口部26、室内10の中央領域を換気するための中央および側方吹出し口につながる中央開口部27、および運転者席側および助手席側の足下空間を換気するために室内10の左右の側に配置した足下吹出し口につながる足下開口部28が設けてある。これらの空気吹出し開口部26〜28を、それらの開口断面に関して回動自在な空気フラップの形態の空気制御要素29によってそれぞれ制御することができる。空気制御要素29を、例えば電気サーボ・モータとして設計可能な調節要素30によってそれぞれ駆動する。これらの調節要素30は、空気調和条件に対応しかつ空気制御要素29を設定するための調節信号を制御ライン40〜42を介して調節要素30に送る電子制御ユニット31によって駆動されている。冷媒が通り抜ける蒸発器21を冷却ユニット22の冷媒回路内に接続し、かつこの目的のためにライン32、33を介して冷却ユニット22に接続する。コンプレッサ、膨張弁など、冷媒回路内に配置してある他の構成要素の例示は割愛する。
【0013】
一方側を蒸発器21によって、また他方側を熱交換器24によって区画されている、空気調和ボックス17内の区域171では、空気調和ボックス17の基部172の底に排水口34が設けてあり、前記排水口は、室内10の外側に排水管または排水ホース341を介して自由に開口しているが、ここでは車体フロア15の下方で開口する。この排水口34は、水分離器23を通過しかつ水分離器23に凝結する湿気を含んだブロア18からの空気中の湿気のために、水分離器23から滴下する水を排出する役目を果たす。湿度検知器35およびガス検知器36が区域171内に配置されており、それらの電気的な出力信号が、信号ライン37、38を介して制御ユニット31に送られる。この湿度検知器35を使用して蒸発器21の表面上の湿度を検知し、またガス検知器36を使用して冷媒回路内の漏出によって生じる冷媒排出物質のブロアからの空気中の含有濃度を監視する。これら2つの検知器35、36の出力信号は、空気制御要素29の調節要素30のために、評価ロジックによって制御ユニット31で調節信号に変換される。
【0014】
以上に説明した空気調和システムは次のように動作する。
【0015】
通常動作では、所望の空気調和にしたがって調和された一定量の空気を異なる空気吹出し開口部26〜28を介して室内10に吹き込む態様で、空気制御要素29を各々の空気吹出し開口部26〜28中に配設する。湿度検知器35によって測定した湿度および/またはガス検知器36によって測定したガス濃度が最大許容値を超過すると、制御ユニット31で生成された制御信号が、制御ライン40〜42を介して調節要素30のそれぞれに伝送され、さらにこの調節要素30が、空気制御要素29が各空気吹出し開口部26〜28を完全に閉鎖することになる。ブロア18のスイッチを入れると、今度は排水口34を介して、蒸発器21を通過するブロアからの空気を車外に強制的に排出する。検知器35、36によって測定した値が規定値を下回ると、制御ユニット31の閉鎖信号が停止して、空気制御要素29を元の位置に復帰させる。
【0016】
エンジンの余熱を利用するかまたは補助ヒータを有する空気調和システムの場合、湿った寒冷な天候では、自動車の内燃機関の始動時に空気調和システムのスイッチを入れると、室内に取り込まれた空気が再暖房モードにおいて乾燥されることにより、前回の運転時に空気調和ボックス17内に溜まっていた湿気および湿った空気が室内10に吹き込まれるために窓の曇りが生じ得る問題がある。この問題を解決するため、別の実施形態としてまたは第1の実施形態に追加して、内燃機関の始動時に信号ライン39を介して始動信号を制御ユニット31に供給することによって、このような湿気の多い空気を排除することができる。この制御ユニット31は、前述した実施形態と同様に空気制御要素29をその閉位置に移動し、かつこれを所定の時間、閉鎖位置に維持する。この時間内にブロア18からの空気を排水口34を介して強制的に排出することによって空気調和ボックス17を乾燥させて、その所定時間が経過した後に、したがって空気制御要素29の閉鎖指示信号が停止した後に、十分に乾燥したブロアからの空気を室内10に流入させる。
【0017】
【発明の効果】
本発明の空気調和システムにおいては、ブロアからの空気を排水口へ強制排出するために車両室内に連通される空気吹出し開口部に必ず存在する空気制御要素を使用し、強制排出のための構造的な要素を別途必要としないので、効率的に、組付けスペースが節約可能かつ優れたコスト効果により、ブロアからの空気の強制的な排出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による空気調和システムの長手方向側面を示す概略図である。
【符号の説明】
17 空気調和ボックス
21 蒸発器
24 熱交換器
25 空気分配器
26 デフロスタ開口部
27 中央開口部
28 足下開口部
29 空気制御要素
30 調節要素
31 制御ユニット
34 排水口
35 湿度検知器
36 ガス検知器
171 区域

Claims (8)

  1. ブロア空気が通過可能であり、冷媒回路中に配置された蒸発器(21)と、該蒸発器(21)から所定の間隔を空けて熱交換器(24)とが配置されている空気調和ボックス(17)を有し、該空気調和ボックス(17)は、熱交換器(24)の下流側に配置されかつ空気制御要素(29)によって夫々制御可能な空気吹出し開口部(26,27,28)を有する空気分配器(25)と、蒸発器(21)と熱交換器(24)の間に位置する排水口(34)とを含み、かつ蒸発器(21)を通って出てくるブロア空気を排水口(34)を介して強制的に車外に排出する制御手段を含む空気調和システムであって、前記制御手段は、前記ブロア空気を排出する目的のために強制的に閉鎖される全ての前記空気制御要素(29)によって構成されることを特徴とする空気調和システム。
  2. 調節要素(30)が、前記空気制御要素(29)を調節するために該空気制御要素(29)に対して作用し、調節要素(30)が、強制的な排出を要する基準が生じた時に空気制御要素(29)を閉鎖させる調節プロセスを開始するために、調節要素(30)を駆動する制御ユニット(31)に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の空気調和システム。
  3. 前記強制的な排出を要する基準が、自動車を始動することから導出されることを特徴とする、請求項2に記載の空気調和システム。
  4. 前記強制的な排出が自動車を始動することによって開始され、かつ一定時間の後に終了することを特徴とする、請求項3に記載の空気調和システム。
  5. 前記強制的な排出を要する基準が、蒸発器(21)における空気の湿度から導出されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の空気調和システム。
  6. 前記強制的な排出を要する基準が、蒸発器(21)の冷媒回路から漏出する、ブロア空気中の冷媒の濃度から導出されることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の空気調和システム。
  7. 制御ユニット(31)の入力側に空気調和ボックス(17)中に配置されている湿度および/またはガス検知器(35、36)が接続されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の空気調和システム。
  8. 検知器(35、36)が、蒸発器(21)と熱交換器(24)によって区画された、空気調和ボックス(17)の区域(171)内に位置するように空気調和ボックス(17)中に配置されていることを特徴とする、請求項7に記載の空気調和システム。
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