JP3722301B2 - Icカードおよびそれに用いるポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止性に優れると同時に易接着性にも優れた白色ポリエステルフィルムを用いたICカードに関し、更に詳しくは、印刷性、耐久性に優れたICカードおよびそれに用いるポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ICカードは、従来から知られているクレジットカードやキャッシュカードに用いられているプラスチックカードに集積回路IC(Integrated Circuit)を埋め込んだものの総称である。このICカードは大きく分けると端子付型と無端子型に分けられ、現在主流となっているのが端子付型で、更にマイクロプロセッサ(CPU)付ICカード(ISO型ICカード)、ICメモリカードがある。
【0003】
ISO型ICカードは、ICチップの中にCPUが内蔵されており、ISO(国際標準化機構)でその仕様の標準化が進められていて、狭義にICカードと呼ばれるものである。基本的にはCPUと情報格納用メモリを搭載し、通常6〜8個の外部接続端子を備えている。従って、情報の読み書きが可能かどうかをCPUが判断するためセキュリティ性に優れている。また、メモリは不揮発性であり、書換え可能なEEPROMが主流であるが、追記型EPROMも使用されている。ISO型ICカードはそのセキュリティの高さから、カードシステムとしてIDカードや各種情報の入出力に用いられ、保健・医療分野、商店街、インテリジェントビルなどで使用されている。
【0004】
ICメモリカードは、CPUを内蔵しないもので、ISO型ICカードと区別したものの呼称である。基本的にメモリの種類により、読取専用マスクROM、追記型EPROM、書換型EEPROMなどの不揮発型メモリと、電池を内蔵したRAMに代表される揮発型の2種類に分類される。ICメモリカードは情報の読み書きが容易であるため、電子手帳、ゲームソフト、ノートパソコンのプログラムなどに利用されている。
【0005】
また、この他に、CPUは内蔵されていないが、ICのロジック回路を利用する仕組みを持ったICカードなどもある。これは、上記ISO型ICカードの特徴であるセキュリティに関わる判断などの高度な機能は持ち合わせてはいないが、ヨーロッパのテレホンカードなどに使用されている例もある。
【0006】
ICカードは種々の構成をとるが、基本的には3層構成であり、ICモジュールを埋め込むコアシートの両面に保護層としてオーバーシートが設けられた構成をとる。このとき、プリペイドカードやクレジットカードなどと同様にコアシートの片面あるいは両面に絵柄が印刷されたり、場合によっては磁気記録層などが設けられたりする。コアシートしては、従来から一般的に金属、エポキシ樹脂、硬質塩化ビニル樹脂が用いられ、最近では特にポリイミド樹脂も用いられている。
【0007】
ICカードは、集積回路IC、即ち情報格納用メモリが装着され、更に必要に応じてCPUが装着されているものであるが、同時に、表面に絵柄が印刷されてはじめてICカードとして十分な機能を果たすものである。従って、ICカード表面、実際にはコアシート表面に絵柄を印刷する際、各種印刷インキが用いられるが、インキ密着性、印刷時のゴミの混入、更にそれらに付随したICカード耐久性、印刷性など多くの問題点があった。
【0008】
この点を解消するため、機能層としてコアシートにアンカ処理を施したり、各種フィルムをコアシート表面に設ける方法が検討されてきた。特に、各種フィルム、具体的にはポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、及び各々に表面処理を施した積層フィルムなどをコアシート表面に設ける方法が検討されている。中でも表面処理、例えば帯電防止性や易接着性などを付与した積層ポリエステルフィルムが好んで用いられている。
【0009】
易接着性付与の方法としては、フィルム表面のコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火焔処理などによる表面活性化法、酸、アルカリ、アミン水溶液、トリクロロ酢酸などの薬剤による表面エッチング法、フィルム表面にポリエステル、アクリル、ポリウレタンなどの各種樹脂をプライマ層として設ける方法(特開昭58−1727号公報、特開昭58−78761号公報)などが知られている。
【0010】
また、帯電防止性の付与の方法として、基材ポリエステルフィルム中に各種の帯電防止剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸またはその塩等の低分子量界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸またはその塩を練り込んだり、あるいは塗剤中に配合して塗布したりする方法(特開昭60−141525号公報、特開昭61−204240号公報)などが採られてきた。
【0011】
特に、塗布によって帯電防止性や易接着性を付与する方法として、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに塗布し、乾燥後、延伸、熱処理を施して結晶配向を完了させる方法(インラインコート法)が盛んに行われている。
【0012】
また、ICカードを構成するポリエステルフィルムに、樹脂(ポリウレタン樹脂など)と帯電防止剤の混合物を塗布することで、フィルムの表面比抵抗を104 〜1012Ω/□とする方法が開示されている(特開平7−25187号公報)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
易接着化のための基体表面の活性化処理では、一時的な濡れ性の改良による接着性向上は期待できるが、経時的に失効するものであるし、それによって得られる接着力は必ずしも満足できるものではない。また、エッチング法では、強固な接着性は期待できるものの、処理液自身が有害であったり、大気汚染源となる上、装置面の発錆、腐食の原因となるため、万全の注意を必要とする問題がある。プライマ層を設ける方法では、プライマ層を別工程で塗布し、その上に所望の被覆層を設ける方法が一般的であり、処理工程中にゴミ等が混入し、清浄な表面が得られないという欠点を有する。また、プライマ層をインラインコート法で設けた場合、極めて強固な密着性は得られるものの、印刷時のゴミの混入などの問題は避けられない。
【0014】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸またはその塩といった低分子量界面活性剤等を練り込んだり、塗剤中に配合して塗布したものは、帯電防止剤が表面や界面にブリードアウトしたり、経時とともにマイグレーションを起こし弱境界層を形成するため、基材、被覆物、各種インキとの密着性を低下させ、層間剥離を起こし、ICカードの耐久性を低下させるなどの欠点がある。更に、インラインコート法に適用した場合には、結晶配向を完了させるための高温での熱処理によってその帯電防止性を失い、印刷時のゴミの混入などの問題が発生する。また、ポリスチレンスルホン酸またはその塩をインラインコート法によって積層した場合には二軸延伸によって塗膜に亀裂が生じ、帯電防止性や易接着性を低下させ、同様の問題が生じる。
【0015】
樹脂と帯電防止剤の混合物を塗布し表面比抵抗を104 〜1012Ω/□としたものはゴミの混入による問題は認められないものの、用いている帯電防止剤が低分子量化合物や電子伝導型帯電防止剤であったり、更にポリマタイプのものも架橋性官能基を有していないものであり、被覆物との密着性の点で不充分であった。
【0016】
本発明の課題は、上記欠点が無く、帯電防止性に優れると同時に、易接着性にも優れた白色ポリエステルフィルムが用いられた、耐久性、印刷性に優れたICカード、およびそれに用いるポリエステルフィルムを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために、本発明に係るICカードは、コアシートと積層白色ポリエステルフィルムが用いられたICカードにおいて、該白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた積層膜が、23℃、相対湿度65%における表面比抵抗が5×1012Ω/□以下であって、かつ水との接触角が50度以上であることを特徴とするものからなる。本発明に係るICカード用ポリエステルフィルムは、白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた積層膜が、23℃、相対湿度65%における表面比抵抗が5×1012Ω/□以下であり、かつ水との接触角が50度以上であることを特徴とするものからなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリエステルフィルムのポリエステルとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、好ましいポリエステルとしては、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート、エチレン−α,β−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレート単位から選ばれた少なくとも一種の構成成分を主要構成成分とするものを用いることができる。これらの構成成分は1種のみ用いても、2種以上併用してもいずれでもよいが、中でも、品質、経済性などを総合的に判断するとエチレンテレフタレートを主要構成成分とするポリエステルが特に好ましい。また、電子写真、感熱記録、各種印刷などの記録用受像シートなど、基材に熱が作用する用途においては、耐熱性や剛性に優れたポリエチレン−2,6−ナフタレートが更に好ましい。
【0019】
また、これらポリエステルには、更に他のジカルボン酸成分やジオール成分が一部、好ましくは20モル%以下共重合されていてもよい。
【0020】
更に、このポリエステル中には他種ポリマ、公知の各種添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
【0021】
本発明における白色ポリエステルフィルムは、白色のポリエステルフィルムであれば特に限定されるものではないが、好ましくは光学濃度0.5以上、白色度が80%以上であるのが望ましい。特に白色度が85〜150%、好ましくは90〜130%であり、光学濃度が0.9〜5、好ましくは1.2〜3の場合好適である。これは、透明なポリエステルフィルムでは、コアシートや反対面の絵柄などの着色が透過し表面の印刷層の美観を損なうので好ましくないためである。
【0022】
このような光学濃度、白色度を得る方法は、特に限定されないが、通常は無機粒子あるいはポリエステルと非相溶の樹脂を含有せしめることにより得ることができる。含有量は特に限定されないが、無機粒子の場合5〜35重量%、好ましくは8〜25重量%である。一方、非相溶性の樹脂を含有せしめる場合は5〜35体積%、好ましくは8〜25体積%である。
【0023】
使用する無機粒子は特に限定されないが、平均粒径0.1〜4μm、好ましくは0.3〜1.5μmの無機粒子をその代表として用いることができる。具体的には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、タルク、クレー等あるいはこれらの混合物であり、これらの無機粒子は他の無機化合物、例えばリン酸カルシウム、雲母、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等と併用してもよい。また、上述した無機粒子の中でもモース硬度が5以下、好ましくは4以下のものを使用する場合、白色度が更に増すためより好ましい。
【0024】
ポリエステルと非相溶の樹脂としては、特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートと混合するケースについていえば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、変性オレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド等を挙げることが可能で、上述した無機粒子と併用してもよい。特に、無機粒子やポリエステルと非相溶の樹脂を混合して二軸延伸し、内部に空洞を有する、比重が0.5〜1.3g/cm3 の白色ポリエステルフィルムは印刷性が良好になるので好ましい。
【0025】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、積層膜が設けられた状態においては二軸配向されたものであるのが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、未延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向及び幅方向に各々2.5〜5倍程度延伸され、その後熱処理を施し、結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0026】
白色ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されないが、本用途においては50〜1000μm、好ましくは75〜500μmであるのが望ましい。また、得られたフィルムを接着剤などで2枚以上貼り合わせ、所望の厚みのフィルムとして用いてもよい。
【0027】
本発明において、白色ポリエステルフィルムの両面に設けられる積層膜は、23℃、相対湿度65%において5×1012Ω/□以下、好ましくは1×1012Ω/□以下、更に好ましくは5×1011Ω/□以下の帯電防止性を有し、かつ水との接触角が50度以上、好ましくは60度以上、更に好ましくは70度以上である。表面比抵抗が5×1012Ω/□を越えると帯電防止効果が小さくなり、印刷などの工程で塵埃が付着しやすく、印刷欠点になる可能性が高くなる。また、積層膜の水との接触角が50度に満たない場合には、積層膜上の印刷層、コアシートやオーバーシートとの接着剤、各種被覆物などとの密着性が不十分なものとなる。
【0028】
白色ポリエステルフィルム上にこのような積層膜を得るには、従来の界面活性剤のような低分子量化合物で表面に析出しやすいものや、ポリマタイプの帯電防止剤でも反応性の官能基を持たない帯電防止ポリマで達成することは通常困難であり、架橋性官能基を有する帯電防止ポリマ、中でもイオン伝導型の帯電防止ポリマが好適である。
【0029】
ここで、電子伝導型の帯電防止剤では次のような点で好ましくない。例えばカーボンブラックは着色の問題が、酸化錫アンチモンドープ型は延伸時の亀裂発生による密着性低下が、ポリアニリンは着色の問題などがあげられる。
【0030】
また、イオン伝導型の帯電防止ポリマにでも、特にアニオン型が帯電防止性と易接着性を両立するのに好適である。ノニオン型は得られる帯電防止性が低く、カチオン型は帯電防止性の点では優れているものの所望の密着性を得るために樹脂を混合する場合、一般的に用いられるアニオン型の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などとは凝集を起こしやすく、いずれも好ましくない。
【0031】
イオン伝導型帯電防止ポリマとしてはスルホン酸基及び/又はその塩や、リン酸基及び/又はその塩を有するモノマ(モノマ▲1▼)、反応性(架橋性)を有する官能基を持つモノマ(モノマ▲2▼)、及びその他のモノマ成分(モノマ▲3▼)とが共重合されたものが好適である。
【0032】
モノマ▲1▼としては、例えば、スチレンスルホン酸及び/又はその塩(塩としてはアンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウムなど)や1つの不飽和結合とリン酸基を有するモノマをその代表的なものとして用いることができる。
【0033】
特にモノマ中にアルキレンオキシドとリン酸基及び/又はその塩を含有したものが好ましく、中でもアルキレンオキシドとリン酸基及び/又はその塩が1つのモノマ中に存在しているのが好ましく、更には重合後においてポリマの側鎖にアルキレンオキシドを介在してリン酸塩基が存在するのがより好ましい。
【0034】
ここで、アルキレンオキシドとは、(1)式で示される分子中の繰り返し単位のことであり、好ましい例として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方を含むもの等が挙げられる。
−(R−O)n − ・・・(1)
(R:アルキル基及びその誘導体、n:1〜9の中から選ばれる整数)
【0035】
また、リン酸塩基は陽イオンの付加により形成されたものであれば任意に選ばれるが、陽イオンとしてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩及びアンモニウム塩等の1価のものが好ましく、中でもカリウム塩、ルビジウム塩が帯電防止性の点で特に望ましい。
【0036】
リン酸塩基は、共重合後、フリーのリン酸基に陽イオンを付加する方法、あるいはリン酸基を有するモノマを予め中和によりリン酸塩化したものをモノマの1成分として共重合する方法、いずれの方法によっても得ることができる。
【0037】
このようなアルキレンオキシドを介在してリン酸基が存在しているモノマとしては、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノアクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノメタクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシプロピレングリコール)モノアクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシプロピレングリコール)モノメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等をその代表例として用いることができる。
【0038】
上記モノマ▲1▼の共重合比は特に限定されないが、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上であるのが帯電防止性の点で望ましい。
【0039】
更に架橋性官能基を付与する目的で以下の架橋性官能基を有するモノマ(モノマ▲2▼)を共重合することが本発明の要件を満たすために重要なことである。このような架橋性官能基としては、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、スルホン酸基、アミド基またはメチロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)、あるいはアルキロール化されたアミノ基、水酸基、エポキシ基、酸無水物等を例示することができる。
【0040】
上記モノマ▲2▼を例示すると、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、および上記アミノ基をメチロール化したもの、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等があるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0041】
上記モノマ▲2▼の共重合比は特に限定されないが、1〜30重量%が好ましく、更に好ましくは3〜20重量%であるのが易接着性の点で望ましい。
【0042】
他のモノマ成分(モノマ▲3▼)としては公知のものを使用することができる。特に、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)等のアクリル系モノマが基本骨格として好適に用いられる。
【0043】
更に、上記以外に次のような化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン類、マレイン酸およびイタコン酸のモノあるいはジアルキルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル基を有するアルコキシシラン等を、該帯電防止ポリマの共重合成分として用いてもよい。
【0044】
また、イオン伝導型帯電防止ポリマの分子量は10万以上が好ましく、更に好ましくは30万以上とするのが易接着性の点で望ましい。
【0045】
本発明のイオン伝導型帯電防止ポリマは公知のアクリル樹脂の重合法によって得ることができるが、インラインコート法に適用する場合には水に溶解あるいは分散したものが好ましいため、乳化重合、懸濁重合等の方法によって作成した水分散体が望ましい。
【0046】
好ましいイオン伝導型帯電防止ポリマとしては、モノマ▲1▼としてアシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノアクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノメタクリレート、アシッドホスホオキシ(ポリオキシプロピレングリコール)モノアクリレートを、モノマ▲2▼としてアクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレートを、モノマ▲3▼としてメチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートから選ばれたモノマを共重合したものを用いることができる。
【0047】
本発明では、目標特性を満足させるために上記帯電防止ポリマと他の樹脂とを混合して用いるのが易接着性の点で好ましい。混合する樹脂としては特に限定するものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステルグラフトアクリル樹脂などを用いることができる。これらの内、上記帯電防止ポリマと同様、架橋性官能基を有するものが易接着性の点で好ましく、上記のアクリル系モノマの共重合体が特に好適である。
【0048】
好適なアクリル樹脂の一例を挙げれば、架橋性官能基としてカルボキシル基、水酸基、メチロール基などを有するアクリルモノマの共重合体であって、ポリマのガラス転移点が0〜45℃、分子量が1万以上のものが望ましい。また帯電防止ポリマと他の樹脂との混合比率は特に限定しないが、好ましい範囲としては積層膜中における帯電防止ポリマの重量比率が10〜70%、好ましくは20〜60%、更に好ましくは30〜50%である。
【0049】
また本発明において、その効果をより顕著に発現させるため架橋剤の併用が好ましい。架橋剤は公知のもの、例えばメラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シランカップリング剤、有機チタネート化合物などを用いることができる。
【0050】
この中でもメラミン系架橋剤が水との接触角を大きくする点で有効である。メラミン系架橋剤としては、例えば官能基としてイミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基などのアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などが挙げられる。その中でもメチロール化メラミン樹脂が最も好ましい。更に、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いてもよい。また、有機チタネート化合物、特にチタンラクテートの添加は帯電防止効果の点で有効である。
【0051】
これら架橋剤の添加量は、各々積層膜中において、1〜40重量%、好ましくは3〜20重量%であるのが望ましい。
【0052】
本発明の効果をより顕著に発現させるには、塗布後、延伸する過程において、積層膜中に水が存在した状態で延伸するのが好ましく、そのために塗剤の濃度を低くしたり、フィルム破れやネッキング延伸、延伸熱処理後の塗膜の未乾燥がない範囲で延伸温度を低くしたりするのが有効である。具体的には、塗剤濃度は、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%であり、延伸温度は85〜135℃、好ましくは95〜130℃であるのがよい。
【0053】
本発明の積層膜中には、本発明の効果を阻害しない範囲において公知の添加剤、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤等を添加してもよい。特に、本発明の積層膜中に無機粒子を添加配合し、二軸延伸したものは、易滑性を改良したものとすることができるので更に好ましい。
【0054】
添加する無機粒子の代表例として、シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等を用いることができる。無機粒子は、平均粒径0.01〜10μmが好ましく、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.08〜2μmであり、積層膜中の固形分に対する配合比は、特に限定されないが重量比で0.05〜8部が好ましく、より好ましくは0.1〜3部である。
【0055】
積層膜の厚みは特に限定されないが、本発明においては0.01〜2μmが好ましく、より好ましくは0.04〜1μm、更に好ましくは0.06〜0.5μmである。
【0056】
塗布の方法は、公知の塗布方法、例えばリバースコート法、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、ロッドコート法、ダイコート法等各種の方法を用いることができる。
【0057】
本発明は、積層ポリエステルフィルム上に印刷層を設ける場合、著しい効果がある。設ける印刷層は特に限定されないが、紫外線硬化型インキ、酸化重合型インキ、昇華型感熱転写インキ、溶融型感熱転写インキなどを用いることができる。代表例として紫外線硬化型インキについて説明すると、樹脂成分として不飽和ポリエステル、架橋成分として多官能アクリレート、紫外線照射時の増感剤あるいは開始剤として2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリプロパン、ジエチルアミノベンゾフェノンなど、顔料成分としてカーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミ粉などを調合したものを用いることができる。
【0058】
これらの印刷層を設ける方法は特に限定されないが、活版、平版、凸版、スクリーン、平台、輪転、転写等の方法で行うことができる。
【0059】
次に、本発明のICカードの代表的製造方法について説明するが、これに限定されるものではない。例えば白色ポリエステルフィルムの両面に、上記した樹脂の積層膜を設ける。設ける方法は特に限定されないが、所定の物性を持つ白色ポリエステルフィルム上に、必要に応じて各種雰囲気中でコロナ放電処理を施した後、グラビアコート、リバースコート、バーコート、スプレーコート、コンマコート等の方法を用いて塗布すればよい。この時、基材フィルムに塗剤を塗布後、乾燥しつつ少なくとも一軸方向に延伸、熱処理を行い、基材フィルム製膜工程中で塗布した場合、積層膜の強靭性、密着性がより向上するため好ましい。
【0060】
このようにして得られた積層白色ポリエステルフィルムを接着剤などを用いてポリイミドで作られたコアシートの両面に接着させる。この積層体にICカードとしての表面絵柄を印刷する。例えば、一方の面には紫外線硬化型インキをオフセット印刷やグラビア印刷し、他方の面には必要に応じて感熱転写方式を用い昇華型インキにより顔写真などの高精細な印刷を施す。次に、この積層体の両面に塩化ビニルなどの透明オーバーシートを仮貼りし、更にプレスラミネート加工を施し、完全に接着させた後、外形仕上げ抜き加工を行い、ICカード基体とする。
【0061】
ICモジュールは公知の方法で製造され、特に限定されるものではない。製造方法の一例を示すと、外部端子付基板のICチップ実装面に、ワンチップマイクロコンピュータチップをダイボンダによりチップマウントし、外部接続端子付基板の配線パターンとワンチップマイクロコンピュータチップのボンディングパット間をワイヤボンダによる金ワイヤにて決線後、樹脂封止する。更に作動検査を施し、ICモジュールを作成する。続いて、ICカード基体にICモジュールはめ込み部の加工を施し、ICモジュールを接着させ、ICカードを得ることができる。
【0062】
[特性の測定方法及び効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法及び効果の評価方法は次のとおりである。
(1)塗布層の厚み
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用い、塗布層を設けた二軸配向ポリエステルフィルムの断面を観察した写真から求めた。厚みは測定視野内の30個の平均値とした。
【0063】
(2)表面比抵抗
常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計R8340A(アドバンテスト(株)製)を用い、印加電圧100Vで測定を行った。単位は、Ω/□である。
【0064】
(3)水との接触角
常態(23℃、相対湿度65%)において24時間放置後、その雰囲気下で接触角計CA−D型(協和界面科学(株)製)を用い、同様の条件に保管しておいた蒸留水を用いて接触角を測定した。測定は10個の平均値を用いた。
【0065】
(4)耐久性
下記の4つの密着性評価を行い、◎、○を耐久性良好とした。
(a)密着性−1(紫外線硬化型インキ密着性)
紫外線硬化型インキとしてFLASH DRY(FDOL墨)(東洋インキ製造(株)製)を用い、ロールコート法で積層膜上に約1.5μm厚みに塗布した。その後、照射強度80W/cmの紫外線を照射距離9cmで8秒間照射し硬化させた。密着性の評価は以下の方法で行った。
積層膜に1mm2 のクロスカットを100個入れ、ニチバン(株)製セロハンテープをその上に貼り付け指で強く押し付けた後、90゜方向に急速に剥離し、残存した個数により4段階評価を行った。
◎ : 100/100(残存個数/測定個数)
○ : 80/100以上、100/100未満
△ : 50/100以上、80/100未満
× : 50/100未満
【0066】
(b)密着性−2(湿し水混入紫外線硬化型インキ密着性)
上記(a)の紫外線硬化型インキ100重量部に対し、湿し水(水+イソプロピルアルコール(10重量%)+リン酸でpH=5.5に調製したもの)を30重量部混入し、よく混練した後、上記(a)と同様の方法で印刷し評価を行った。
【0067】
(c)密着性−3(磁性塗料密着性)
“ダイフェラコート”CAD4301(大日精化工業(株)製)100重量部に“スミジュール”N−75(住友バイエル(株)製)1重量部を加え、固形分濃度20重量%の塗料を作成し、バーコータを用いて塗布し、100℃で5分間乾燥した。密着性の評価は上記(a)と同様の方法で行った。
【0068】
(5)印刷性
(a)印刷性−1
上記(4)−(b)の湿し水混入紫外線硬化型インキ印刷後の表面欠点を観察し、ICカードとして以下の基準で評価した。
◎ : 極めて良好な印刷状態
○ : 良好な印刷状態
△ : やや不良な印刷状態
× : 著しく不良な印刷状態
【0069】
(b)印刷性−2
市販のカラービデオプリンタ(シャープ(株)製カラービデオプリンタGZ−P11W)を用いて、積層白色ポリエステルフィルムへの印刷状態を観察し、上記(a)と同様の方法で評価した。
【0070】
(6)フィルムの平面性
上記(4)−(c)で塗布、硬化させた紫外線硬化型インキ積層体について、積層体の平面性をインキ面を上にしてガラス板上に置き、カールの程度を目視で測定し、以下の基準で判定した。
◎ : 全くカールがなく、極めて平面性が良い
○ : 端部がわずかにカールしているが良好
△ : 中央部付近までカールが及んでいる
× : カールが著しい
【0071】
(7)光学濃度
マクベス(株)製透過濃度計TD−504を用いて測定した。
【0072】
(8)白色度
JIS−L1015により測定した。
【0073】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
実施例1
酸化チタンを16重量%微分散した固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)ペレットを十分に真空乾燥した後、280℃の加熱された押出機に供給しT字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめ、未延伸PETフィルムを作成した。このPETフィルムを90℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.5倍延伸し、一軸配向フィルムとした。このフィルムの両面にコロナ放電処理を施し、その処理面に以下に示す水系塗剤を塗布した。塗布後、連続的に端部をクリップで把持しながら100℃の加熱ゾーンに導き、予熱、乾燥を経て幅方向に3.5倍延伸し、更に200℃の加熱ゾーンで5%弛緩させつつ熱処理を施し、基材PETフィルム厚みが120μm、塗布厚みが0.1μmの積層二軸配向白色PETフィルムを得た。
【0074】
「水系塗剤1」
(A):予め水酸化カリウムで中和したアシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノメタクリレート(オキシエチレングリコールの繰り返し単位数n=5)/ブチルアクリレート/アクリル酸を70/25/5(重量%)の比率で乳化重合させた分子量約15万の帯電防止ポリマ水分散体
(B):メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸を55/35/10(重量%)の比率で共重合したアクリルエマルジョン
(C):メチロール化メラミン樹脂
(A)/(B)を固形分重量比で40/60で混合し、これを100重量部としたものに対し(C)を10重量部混合し、更に水で希釈して3重量%液としたもの。
【0075】
このようにして得られたフィルムを接着剤を用いてポリイミドで作られたコアシートの両面に接着させる。この積層体の一方の面に紫外線硬化型インキを印刷し、他方の面には昇華型感熱転写インキで印刷を施した。次に、この積層体の両面に塩化ビニル製オーバーシートを設け、完全に接着させた後、外形仕上げ抜き加工を行い、ICカード基体とした。続いて、このICカード基体にICモジュールはめ込み部の加工を施し、ICモジュールを接着させ、ICカードを得た。結果を表1に示す。
【0076】
実施例2〜5、比較例1〜3
実施例1の(A)/(B)の混合比率、及び(C)の添加量を表1に示すように変更して白色PETフィルムを得た以外は、同様の方法でICカードを作成した。結果を表1に示す。
【0077】
比較例4
実施例1の水分散体成分(A)に代えて、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩(分子量7万)を用いた以外は、実施例1と同様にしてICカードを作成した。結果を表2に示す。
【0078】
実施例6
実施例1の水分散体成分(A)に代えて、スチレンスルホン酸アンモニウム塩/ブチルアクリレート/アクリル酸(65/30/5(重量%))とした以外は実施例1と同様にしてICカードを作成した。結果を表2に示す。
【0079】
比較例5
実施例1の水分散体成分(A)に代えて、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様にしてICカードを作成した。結果を表2に示す。
【0080】
比較例6
実施例1の水分散体成分(A)に代えて、水酸化カリウムで中和をしていないアシッドホスホオキシ(ポリオキシエチレングリコール)モノメタクリレート(オキシエチレングリコールの繰り返し単位数n=5)を用いて作成した帯電防
止ポリマ水分散体を用いた以外は実施例1と同様にしてICカードを作成した。結果を表2に示す。
【0081】
実施例7
実施例1のPETをPEN(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)に変えた以外は同様にしてICカードを作成した。結果を表2に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のICカードによれば、白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた積層膜を、特定の表面比抵抗、特定の水との接触角を有するものとしたので、優れた帯電防止性が得られるとともに、優れた印刷性、耐久性が得られる。
Claims (7)
- コアシートと積層白色ポリエステルフィルムが用いられたICカードにおいて、該白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた積層膜が、23℃、相対湿度65%における表面比抵抗が5×1012Ω/□以下であって、かつ水との接触角が50度以上であることを特徴とするICカード。
- 積層膜に架橋性官能基を有するイオン伝導型帯電防止ポリマが含有されている、請求項1記載のICカード。
- 架橋性官能基を有するイオン伝導型帯電防止ポリマが側鎖アルキレンオキシドを介在してリン酸塩基を有するポリマである、請求項2記載のICカード。
- 積層膜中における架橋性官能基を有するイオン伝導型帯電防止ポリマの含有量が10重量%以上70重量%以下である、請求項2または3記載のICカード。
- 積層膜中にメラミン系架橋剤を含有している、請求項1ないし4のいずれかに記載のICカード。
- ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである、請求項1ないし5のいずれかに記載のICカード。
- 白色ポリエステルフィルムの少なくとも片面に設けられた積層膜が、23℃、相対湿度65%における表面比抵抗が5×10 12 Ω/□以下であり、かつ水との接触角が50度以上であることを特徴とするICカード用ポリエステルフィルム。
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- 1995-09-06 JP JP25548395A patent/JP3722301B2/ja not_active Expired - Lifetime
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