JP3720534B2 - メディア検知方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成装置および画像読み取り装置等に係り、特に、被記録媒体等のメディアの有無の検知またはメディア幅寸法等の検知を行うための光学センサを備えたメディア検知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、画像形成装置および画像読み取り装置に於いて、印字・印刷が行われる前段階の一連の初期動作において、メディアの検知およびメディア幅寸法の検知等が行われる。このメディアの検知およびメディア幅寸法の検知に際しては、メディアを非接触で検知する光学センサが一般的に用いられる。特に、プリンタやプロッタ等のように可動なキャリッジを有する画像形成装置では、このキャリッジに光学センサが搭載され、メディア上を走査することで、メディアの検知・メディア幅寸法の検知が行われた後に、印字・印刷が可能かどうかを判断して次の動作に入る。
【0003】
従来の、光学センサからの出力をそのままメディアの有る無しとして判断させる回路では、センサの出力が不安定である為に正確なメディア検知が行われることが期待できない。また、不完全な出力状態のため、センサの出力に時間差が生じることから、指令された紙送り量に対し実際の紙送り量が異なることにより余白量の違いが生じる等の問題があった。
【0004】
また、光学センサそのものの個体差としての電気的性質のばらつき(暗電流の違い)や機械的な寸法誤差による検出距離のばらつき、また、搭載する際の取り付け誤差、光学センサの発光部、受光部に紙粉がついたり、汚れたりすることが原因となる誤動作が生じるおそれがあった。
【0005】
更に、プラテンやメディアを支える部材と光学センサとの間にメディアが挿置されることによってメディアの検知が行われる構造では、メディアがないときに光学センサの発光部からの赤外線を受ける光吸収部材または光低反射率部材、または、メディアがないことを光学センサに検知させるために工夫された部材が光学センサに近接し、対峙した構成を持つ例が多い。しかし、感度の良い種類の光学センサを用いた場合、また、個体差によって感度の良い光学センサが取りつけられた場合、上記光吸収部材または光低反射率部材の光反射率(吸収率・透過率)のばらつき、更に、取り付け具合による光学センサとの距離のばらつき、表面処理差、汚れ等によって、メディアの無い状態にも関わらずメディア有り、逆に、メディアの有る状態にも関わらずメディア無しと誤検知するという問題もあった。
【0006】
これらの対策として講じられてきた従来のメディア検知装置では、光学センサからの信号をA/D変換器に入力してデジタル変換して補正を行うもの、あるいは、特開平5−270700号公報に開示のように比較演算回路を用いて非反転入力端子に光学センサからの出力電圧を入力し、反転入力端子には、複数の抵抗と複数のスイッチング素子からなる構造を持たせ、そのスイッチング素子のオン・オフの組み合わせで複数の電圧値の設定ができるようにして、前記複数のスイッチング素子を順番にオン・オフし、比較演算回路の出力電圧が変化する際のスイッチング素子のオン・オフ状態を記憶することでメディアの有る無しを正確に行おうとする方法がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、センサの出力電圧値をスレッショルド(閾値)近傍の値で補正を行う方法や、スレッショルド電圧そのものを変える方法、また、スイッチング素子のオン・オフ状態の一連の設定動作を行わせるプログラミングを用いる等の従来の方法では、いずれも少なくとも1回はメディアの有る場合と無い場合の2状態をセッティングした後に、光学センサを機能させて検知を行わせ、そのときの2状態のメディアの有る無しの出力状態を認識し記憶した上で、改めてメディア検知を行うものである。このような従来の方法では時間もかかり、煩雑であり、CPUへの負荷も大きいという問題がある。
【0008】
また、メディアが無いにも関わらず、前述の要因によりメディア有りと誤検知してしまう場合では、最初のメディアの有無の2状態の設定自体が正常に実行できないことになり、不充分である。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、光学センサの個体差および光学センサを搭載する際の機械組み立て誤差、また、光学センサの発光部、受光部の汚れ等に関わらず、正確なメディアの検知を行うことができるメディア検知方法および装置を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、メディアがまだ準備されていない状態においてもメディアを正確に検知できる状態の設定を可能とし、また、経年変化に伴いセンサ出力状態が変化したとしてもメディアの正確な検知が可能なメディア検知方法および装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によるメディア検知方法は、射出した光の反射光を検知する光学センサと、該光学センサの出力を受ける検知信号入力端子および基準入力電圧を受ける基準入力端子を有する差分増幅器とを用いて、該差分増幅器の出力に基づいて検知対象のメディアの存在を検知するメディア検知方法であって、メディアの不存在時または不存在場所において、前記差分増幅器の基準入力端子電圧を0Vとして前記光学センサの出力に応じた前記差分増幅器の出力を求め、該求められた差分増幅器の出力および前記差分増幅器の増幅率に応じて前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧値を求め、メディア検知動作時に、該求められた基準入力端子電圧を前記差分増幅器に与えるとともに、前記差分増幅器の検知信号入力端子に前記光学センサの出力を与え、該差分増幅器の出力を所定の閾値と比較することによりメディアの有無を判定することを特徴とする。
【0012】
これによって、メディア検知動作時に、光学センサやその環境を含めた種々の誤動作要因に対応して、差分増幅器に適正な基準入力端子電圧を与えることができ、正確なメディアの検知を行うことが可能となる。また、実際のメディア検知動作に先だってメディア無しの状態を検知するだけで基準入力端子電圧値を算出することができるので迅速にメディア検知動作に移行することができる。
【0013】
前記メディア検知方法において、前記差分増幅器の検知信号入力端子に電圧V+i、基準入力端子に電圧V-iをそれぞれ入力したときに、出力電圧Vo=α・(V+i−V-i)と一般的に表わされ、本実施の形態ではメディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力が前記差分増幅器の検知信号入力端子に入力されるととともに電圧0Vが前記基準入力端子に入力されたときの前記差分増幅器の出力が飽和電圧にならないように、増幅率αが設定されることが好ましい。
【0014】
前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧は、メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力に基づいて前記差分増幅器の出力値が0Vとなるような電圧であることが好ましい。
【0015】
より具体的には、メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力が前記検知信号入力端子に入力されるとともに電圧0Vが前記基準入力端子に入力されたときの前記差分増幅器の出力値をVoxとし、メディアの不存在時または不存在場所での前記差分増幅器の出力値が0Vとなるように前記基準入力端子に次に与えるべき電圧値をV-xとしたとき、前記予め定められた計算式は、
V-x=Vox/α
で与えられる。
【0016】
このように、基準入力端子電圧値を算出するための計算式の決定に際しては、メディア有りの状態での光学センサの出力を用いる必要がない。
【0017】
また、本発明によるメディア検知装置は、射出した光の反射光を検知する光学センサと、該光学センサの出力を受ける検知信号入力端子および基準入力電圧を受ける基準入力端子を有する差分増幅器と、前記差分増幅器の基準入力端子電圧を出力する基準電圧発生手段と、メディアの不存在時または不存在場所において、前記基準電圧発生手段から出力する基準入力端子電圧を0Vとして前記光学センサの出力に応じた前記差分増幅器の出力を求め、該求められた差分増幅器の出力および前記差分増幅器の増幅率に応じて、前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧値を求める制御手段と、該求められた基準入力端子電圧を前記差分増幅器に与えるとともに、前記差分増幅器の検知信号入力端子に前記光学センサの出力を与えた状態で、前記差分増幅器の出力を求め、この出力を所定の閾値と比較することによりメディアの有無を判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
このメディア検知装置において、前記光学センサは、検知対象のメディア上を走査するキャリッジに搭載することができる。例えば、画像形成装置、または画像読み取り装置において、ヘッドを搭載したキャリッジに光学センサを搭載して、メディアの検知もしくはメディア幅寸法等を検知することができる。
【0019】
この検知動作は、装置の電源投入直後もしくは電源投入後の最初の印字動作(読み取り動作)直前の初期動作中もしくは印字動作(読み取り動作)中、またはユーザが必要としたとき等の任意の時点で行うことができる。
【0020】
前記メディア検知装置は、さらに前記差分増幅器のアナログ出力をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記求められた差分増幅器の出力および前記差分増幅器の増幅率に応じて前記基準入力端子電圧を求めるための計算式を格納した記憶手段とを有し、前記制御手段はCPUにより構成されるとともに、前記基準電圧発生手段はD/A変換器により構成され、前記CPUは、メディアの不存在時または不存在場所において、前記D/A変換器から出力される基準入力端子電圧を0Vとして前記光学センサの出力に応じた前記差分増幅器の出力を求め、該求められた差分増幅器の出力を前記記憶手段に格納された計算式に適用することにより、前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧としてのデジタル値を求め、該求められたデジタル値を前記D/A変換器に入力する構成としてもよい。
【0021】
このように、A/D変換器、D/A変換器およびCPUを用いることにより、ハードウエア構成を簡単化するとともに、メディア検知装置の制御をソフトウエアにより容易に行うことができ、制御の汎用性、融通性も向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
まず、図1により本発明の好適な実施の形態に係るメディア検知装置100のブロック図を示す。
【0024】
このメディア検知装置100は、主として、光学センサ11、差分増幅器10、A/D変換器13、D/A変換器14、処理部18からなる。このメディア検知装置は、通信インタフェース20を介してホストコンピュータ21と接続される。本実施の形態では、メディア検知装置100は画像形成装置に搭載される。処理部18は、ホストコンピュータ21から通信インタフェース20を介して画像データを受信し、これに基づいて画像形成動作を行う機能も有する。
【0025】
処理部18は、制御手段として機能するCPU15と、このCPU15の動作プログラムおよび固定的なデータ(後述する計算式も含む)を格納したROM17、CPU15の作業領域および一時記憶領域を提供するRAM16を有する。
【0026】
光学センサ11は、発光ダイオードのような発光部111とフォトトランジスタやフォトダイオードのような受光部112からなり、発光部111からメディア8の存在する方向へ射出した光の反射光を受光部112で検出する。
【0027】
この検出電流は抵抗R5を流れ、検出電圧V+iとして差分増幅器10の検知信号入力端子26に入力される。
【0028】
この検知信号入力端子26に入力された検出電圧V+iは、抵抗R1とR2からなる分圧器により分圧され、比較演算回路12の非反転入力端子24に印加される。反転入力端子23とD/A変換器14の間には抵抗R3が接続され、更に、反転入力端子23と出力端子27との間には帰還抵抗R4が接続されている。これら比較演算回路12および抵抗R1、R2,R3,R4は、一般的な差分増幅器を構成している。比較演算回路12の出力電圧VoはA/D変換器13に入力される。このA/D変換器13から出力されるデジタル信号D0は処理部18のCPU15に入力される。CPU15は、D/A変換器14に対してデジタル信号D1を入力する。これに対応してD/A変換器14から出力されるアナログ信号は基準入力端子電圧V-iとして差分増幅器10の基準入力端子25に入力される。この基準電圧V-iは入力抵抗R3を介して比較演算回路12の反転入力端子23へ印加される。差分増幅器10の出力は2値化回路19に入力され、2値化回路19の出力はCPU15に入力される。
【0029】
図1の構成の具体的な動作については、後述する。
【0030】
次に、本発明の原理を説明する。
【0031】
光学センサ11においては不可避的に暗電流が存在し、この暗電流のばらつきによる電気的ばらつきおよび機械的誤差によるばらつきが光学センサ11自身の感度のばらつきとなる。また、この光学センサ11を用いるにあたっては、検知すべきメディア8が無い場合であっても、光学センサ11の検知部上の無限遠において物体が存在しないということはありえない。従って、実際に光学センサを設置場所に設置して用いた場合のメディア8の非検知状態での出力は、検知状態での出力電流よりも遙かに低いが、暗電流よりも大きく、光学センサ11自身のばらつきや実際の光学センサ11の設置状態のばらつきによって、出力電流値(よって出力電圧値)にばらつきを生じる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、メディアの検知を行う画像形成装置において、例として、供給電源電圧5Vで、出力電圧範囲が0〜5[V]の差分増幅器10を用いて、まず、基準入力端子25には0Vを入力し、検知信号入力端子26にはメディアの無い状態での光学センサ11からの出力電圧を入力する。メディアの無い状態での光学センサ11からの出力電圧は、0〜1未満[V]の小さな電圧である。従って、差分増幅器10を、例えば5〜10倍程度の増幅率で用いることによって、メディアの無い状態での差分増幅器10の出力は、0〜5V未満の非飽和の線形変化領域となるようにする。すなわち、図2(a)に示すように、基準電圧V-i=0Vにおいて、差分増幅器非反転入力電圧V+iと差分増幅器10の出力電圧Voの関係は、図2(b)のようになる。この非飽和領域の線形変化領域において、光学センサ11のばらつきによる検知信号入力端子26に入力される電圧値のばらつきを、基準入力端子電圧0Vとの比較により、そのときの比較演算回路12の電圧の出力電圧値Voのばらつきとして得る。その出力値Voを、A/D変換器13を介してデジタル信号に変換し、デジタル値Doを得る。光学センサ11が正常にメディアを検知できる範囲を保証する為に、CPU15は、ROM17に予め記憶されている計算式を用いて、メディア検知動作時に基準入力端子25に入力すべき電圧値V1に対応するデジタル値D1を前記のデジタル値Doに基づいて算出する。このデジタル値D1はD/A変換器14により、対応するアナログ電圧値V1に変換され基準入力端子25に入力される。
【0033】
予めROM17に記憶されている計算式は、比較演算回路12により構成される差分増幅器10の抵抗値選定による増幅倍率設定によって、差分増幅器10の基準入力端子25と検知信号入力端子26の微小な電圧差に対して出力電圧Voが非飽和になるように設定し、その電圧差と出力電圧との間の線形関係を利用したものである。本実施の形態における微小な電位差とは、0〜1未満[V]程度を意味する。
【0034】
例えば、第二原図用紙等の反射率の低いメディアを光学センサ11が検知した場合と、メディアの無い状態を検知した場合の差分増幅器10の出力電圧Voと、差分増幅器10の基準入力端子25に入力する電圧値V-との関係は、A)センサ感度が良い(または比較的メディアと近接するような形で取りつけられている)状態と、B)センサ感度が悪い(または比較的メディアに近接せずに取りつけられている)状態とは、それぞれ図3(a)(b)に示すようになる。(a)(b)の状態は、実際の製造上の厳しい精度においてもやむを得ず起こるものである。
【0035】
前述のように差分増幅器10の出力電圧Voは、基準入力端子25と検知信号入力端子26の電位差との間に、非飽和領域での線形関係を得るような構成とする。そのためには、メディア無し状態での光学センサ11の出力電圧の値がどの程度で、誤差範囲がどの程度であるのかを実験等によって知り、その結果に基づ
いて差分増幅器10の増幅率を決定する必要がある。
【0036】
図1の回路図に基づいて説明を行うと、例えば、メディア無し状態での光学センサ11の出力電圧が0〜1未満[V]程度であったとするならば、
Vo={(R3+R4)/(R1+R2)}(R2/R3)V+i−(R4/R3)V-i
となるから、例えばR1=R3=R、R2=R4=5Rとして、
Vo=5(V+i−V-i) …(1)
となり、増幅率5倍とする。
【0037】
この式(1)の関係を用いて、再度、図3を参照して説明を行う。前述のように、図3は、差分増幅器10の基準入力端子電圧V-に対する出力端子電圧Voの関係を示す。図3(a)において、Voaは、メディアの無い状態での差分増幅器10の基準入力端子電圧V-を0Vとしたときの出力電圧Voであり、V-aは、出力電圧Voを0Vとするための基準入力端子電圧V-である。同様に、図3(b)において、Vobは、メディアの無い状態での、差分増幅器10の基準入力端子電圧を0Vとしたときの出力電圧Voであり、V-bは、出力電圧Voを0Vとするための基準入力端子電圧V-である。基準入力端子電圧が0Vであるときに、出力電圧Voが0VとならずにVoa、Vobとなるのは、検知信号入力端子26に、メディアの無い状態での光学センサ11からの出力電圧V+a、V+bが入力されているためである。
【0038】
従って、これらの関係を式に表せば次のようになる。
【0039】
Voa=5(V+a−0) …(2)
0=5(V+a−V-a) …(3)
Vob=5(V+b−0) …(4)
0=5(V+b−V-b) …(5)
ここに、すなわち
V-a=V+a:図3(a)の場合のメディアの無い状態での光学センサ11の出力電圧
V-b=V+b:図3(b)の場合のメディアの無い状態での光学センサ11の出力電圧
である。かつ、上記増幅率が5倍であることから、
5=Voa/V-a=Vob/V-b …(6)
となる。
【0040】
一般に、差分増幅器の増幅率をαとすると、
α=Voa/V-a=Vob/V-b …(7)
となる。このαの値は、式(1)から分かるように設計値によって決定できるが、設計の後、実験を行って、実験値に基づいてαの値を決定することが好ましい。
【0041】
α=Voc/V-c …(8)
ここに、V-cは、特定の装置に搭載された特定の光学センサ11についてメディアの無い状態で出力電圧を0Vとするための基準入力端子電圧V-の実験値であり、Vocは、同じくメディアの無い状態で差分増幅器10の基準入力端子電圧V-を0Vとしたときの出力電圧Voの実験値である。
【0042】
αの決定に際しての実験においては、実験に用いる光学センサ11の出力のばらつきが同様に伴うために、光学センサ11毎にVo、V-は異なるであろうが、その場合にも傾きαは一定であり、αの値を決定するに際しては問題ない。また、多くのサンプルで光学センサ11の出力状態を集計したりする必要もなく、容易にαの値を簡単な実験結果から定めることができる。
【0043】
このαに従って計算を行うような計算式をROM17に記憶させる。この計算式は、次のように表わせる。
【0044】
V-x=Vox/α …(9)
ここに、V-xは、特定のメディア検知装置に対して求めるべき基準入力端子電圧を表す変数であり、Voxは、そのメディア検知装置においてメディアの無い状態で差分増幅器10の基準入力端子電圧V-を0Vとしたときの出力電圧Voの値である。
【0045】
値αが決定された計算式(9)がROM17に記憶されたならば、メディアの無い状態での光学センサ11の出力電圧Voxが差分増幅器10の検知信号入力端子26に入力され、A/D変換器13を経てCPU15およびRAM16に入力される。このA/D変換器13を経た値をデジタル値をDoとすると、計算式(9)をROM17より呼び起こして、数値を代入すれば、
D1=Do/α …(10)
として、V-xに対応するデジタル値D1が求められる。この求められたデジタル値D1をD/A変換器14を経て差分増幅器10の基準入力端子25に入力することによって、メディア検知を行うにあたっての設定が完了する。
【0046】
その結果、実際のメディア検知動作時に、図3(a)に示したセンサ感度が良い場合には、一点鎖線41に示す位置で差分増幅器10が動作し、経年変化や何らかの要因で図3(b)に示したようにセンサ感度が悪くなった場合には、一点鎖線42で示す位置で差分増幅器10が動作する。すなわち、いずれの位置41,42においても、メディア無し状態とメディア検知状態との出力電圧Voの落差を最大とすることができ、一定の閾値Vthでの判定時に誤動作を回避することができる。
【0047】
図3のメディア検知状態でのメディアは第2原図用紙としたが、第2原図用紙の反射率は比較的低いので他のメディア、すなわち、反射率の高いメディアにおいては、図3(a)(b)の二点鎖線43,44で示すような出力となる。本例は、反射率の低いメディアについての誤検知を回避すべく考慮したものであり、従って、言及するまでもなくこの設定を他のメディア、すなわち、反射率の高いメディアに対してもそのまま適用することができる。
【0048】
なお、補足するならば、図3(a)において基準電圧V-を0Vとしてメディアの検知を行った場合に閾値Vthを図の大きさとすると、電圧Voaが閾値Vthを超え、メディアが無いにも拘わらずメディア有りと誤判定されることになる。本実施の形態によりこの誤判定が回避されるのである。
【0049】
図4により、本メディア検知装置をインクジェット記録方式の画像形成装置(プリンタやプロッタ等)に利用した場合の関連部分の機械的構造について説明する。
【0050】
この画像形成装置は、モータ(図示せず)により直線的に可動なキャリッジ2を有し、このキャリッジ2にインクカートリッジ1を搭載する。キャリッジ2には、インクカートリッジ1のインク吐出ヘッド4近傍に反射型光学センサ11が搭載され、キャリッジ2がメディア上を走査することによってメディア検知およびメディア幅寸法検知を行う。
【0051】
画像形成装置において、図4(a)に示すように、インク吐出ヘッド4は、印字動作を行う前段階に於いてはインクの乾燥を防ぐ為に、またはメディアセットをユーザが行うことを妨げないようにする為のキャッピング・回復機構5の存在するキャッピング位置または所定の位置に収まっている。
【0052】
印字動作を行う場合、図4(b)に示すように、インク吐出ヘッド4は、上記所定位置から脱しメディア8のセットが行われたことが確認された後に印字動作に移る。前述のように、メディア8の検知に用いられる光学センサ11には反射型のものを用い、メディア8による光の反射を光学センサ11の受光部が検知することでメディア8の有無を検知する。
【0053】
本実施の形態において、光学センサ11によりメディア8の有無の検知するプラテン7上の箇所において、メディア8が無い場合には光学センサ11の受光部に反射光が入らないようにプラテン7の形状または表面状態等を工夫し、またはプラテン7上にスポンジもしくはスウェード等の反射率の低い部材(メディア非検知部材)6を貼付するなどして、メディア非検知状態(領域)9(図4(b))を作り、その上にメディア8がセットされたときに対照的な検知状態を形成するようにする。このような、光学センサ11の受光部に反射光が入らないように工夫されたメディア非検知領域9を、メディア8がセットされた際にメディア8の占有する幅よりも広くとることにより、メディア8がセットされているか否かに関わらず、印字を開始する際のキャリッジの動作を始める所定位置からメディア端部になるであろう所の位置に至る迄の間には、必ずメディアの非検知状態(領域)9を得られるようにする。そのメディア8の存在自体の検知、およびメディア8とその上の印字範囲の適合性を見る為のメディア幅寸法検知を行う際、前記所定位置からメディア端部に至る間の非検知領域9において、反射型光学センサ11のメディア8がセットされていない状態での出力電圧V+iを得て、上述内容の結果によりメディア検知を行うことができる。
【0054】
本発明では、このようにメディアの不存在時または不存在場所において、光学センサ11の出力を検査するのみで適正なメディア検知を行うにあたっての設定を行うことができ、従来のように、メディアをセットした状態を要求せず、また、そのときの光学センサ11の出力まで検査する必要はない。したがって、印字開始までの時間を短縮することができる。
【0055】
次に、図1の回路構成における初期設定の動作を、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
この処理は、(1)装置の初期動作時、(2)電源投入後の最初の印字動作の直前、(3)各メディアに対する印字動作の直前、(4)キャリッジの走査時毎、(5)ユーザによる指示時、等のような種々の時点で実施することができる。どの時点で行うかは、装置の種類によって、あるいはユーザの要求に応じて、任意に決定することができる。
【0057】
まず、CPU15は、D/A変換器14を介して、差分増幅器10の基準入力端子25に0[V]をセットする(S41)。次に、光学センサ11が前述した非検知領域9に来るように、キャリッジ2を移動させる(S42)。
【0058】
そこで、光学センサ11を動作状態(ON)にする(S43)。これにより非検知領域9において光学センサ11の出力電圧V+iが差分増幅器10の検知信号入力端子26に入力される。差分増幅器10の差分増幅における非飽和領域の線形変化領域において、差分増幅器10の出力電圧Voを、A/D変換器13を介してデジタル値Doに変換し、これをCPU15で読み取る(S44)。そこで、CPU15は、RAM16にこのデジタル値Doを取り込み、ROM17に予め記憶されている計算式を読み出し、この計算式の演算を行いデジタル値D1を算出する(S45)。ついで、このデジタル値D1をD/A変換器14を介してアナログ電圧V1に変換し、この電圧V1を基準入力端子25に印加する(S46)。これによって、本メディア検知装置の初期設定は完了する。
【0059】
このような設定を行った後に、初めて、メディアの検知またはメディア幅寸法の検知の動作に入る。この際、差分増幅器10の後段の2値化回路19が、予め定められた一定の閾値Vthによって差分増幅器10の出力電圧Voを2値化し、これによって得られる「H」レベルと「L」レベルによって、CPU15はメディア8の有無を判定する。
【0060】
なお、2値化回路19を用いずに、A/D変換器13の出力に基づいてCPU15が閾値との比較判定を行うようにしてもよい。いずれにせよ、メディア8の有無が、電気信号の2値化により判定される。
【0061】
以上説明した本実施の形態においては、画像形成装置の動作に従い、特に、メディアを検知する場合においての光学センサ、中でも反射型センサについての説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、光学センサによるメディア検知を行う画像読み取り装置においても適用することができる。
【0062】
更には、本明細書で述べているメディアとは被記録媒体のみに限定するものではなく、例えば、光学センサを用いてスイッチング動作を行わせるようなある部材を検知する場合においても利用することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明により、光学センサを用いる場合に、その光学センサ自身の製品誤差によって生じる出力能力のばらつきや、光学センサを取り扱う場合において止むを得ず種々生じる誤差に対して、簡便な方法で一定の検知結果を得ることができる。
【0064】
また、メディアの無い状態での光学センサの取り付け状態を認識することにより、メディアセット後からメディア検知を行う迄の動作設定を簡略化し、その時間を短縮することができる。
【0065】
このようにして、メディアの正確な検知を簡便な方法で短時間に行い、また、後段の動作へと速やかに移ることが可能となる。
【0066】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係るメディア検知装置のブロック図である。
【図2】図1に示した差分増幅器10の概念図(a)および特性を説明するためのグラフ(b)である。
【図3】図1に示した差分増幅器10について、光学センサのセンサ感度がよい場合(a)および悪い場合(b)について、基準入力端子電圧に対する出力端子電圧の関係を示すグラフである。
【図4】本メディア検知装置をインクジェット記録方式の画像形成装置(プリンタやプロッタ等)に利用した場合の関連部分の機械的構造について、キャリッジが所定位置にある状態(a)およびその所定位置から脱した状態(b)を示す正面図である。
【図5】図1の回路構成における初期設定の基本的な動作を表わすフローチャートである。
【符号の説明】
10…差分増幅器、11…光学センサ、12…比較演算回路、13…A/D変換器、14…D/A変換器、15…CPU、16…RAM、17…ROM、18…処理部、19…2値化回路、20…通信インタフェース、21…ホストコンピュータ、23…反転入力端子、24…非反転入力端子、25…基準入力端子、26…検知信号入力端子。

Claims (11)

  1. 射出した光の反射光を検知する光学センサと、該光学センサの出力を受ける検知信号入力端子および基準入力電圧を受ける基準入力端子を有する差分増幅器とを用いて、該差分増幅器の出力に基づいて検知対象のメディアの存在を検知するメディア検知方法であって、
    メディアの不存在時または不存在場所において、前記差分増幅器の基準入力端子電圧を0Vとして前記光学センサの出力に応じた前記差分増幅器の出力を求め、
    該求められた差分増幅器の出力および前記差分増幅器の増幅率に応じて前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧値を求め、
    メディア検知動作時に、該求められた基準入力端子電圧を前記差分増幅器に与えるとともに、前記差分増幅器の検知信号入力端子に前記光学センサの出力を与え、
    該差分増幅器の出力を所定の閾値と比較することによりメディアの有無を判定することを特徴とするメディア検知方法。
  2. メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力が前記差分増幅器の検知信号入力端子に入力されるととともに0Vが前記基準入力端子に入力されたときの前記差分増幅器の出力が飽和電圧にならないように、前記差分増幅器の増幅率αが設定されることを特徴とする請求項1記載のメディア検知方法。
  3. 前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧は、メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力に基づいて前記差分増幅器の出力値が0Vとなるような電圧であることを特徴とする請求項2記載のメディア検知方法。
  4. メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力が前記検知信号入力端子に入力されるとともに前記0Vが前記基準入力端子に入力されたときの前記差分増幅器の出力値をVoxとし、メディアの不存在時または不存在場所での前記差分増幅器の出力値が0Vとなるように前記基準入力端子に与えるべき電圧値をV-xとしたとき、前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧は次の計算式
    V-x=Vox/α
    で与えられることを特徴とする請求項3記載のメディア検知方法。
  5. 射出した光の反射光を検知する光学センサと、
    該光学センサの出力を受ける検知信号入力端子および基準入力電圧を受ける基準入力端子を有する差分増幅器と、
    前記差分増幅器の基準入力端子電圧を出力する基準電圧発生手段と、
    メディアの不存在時または不存在場所において、前記基準電圧発生手段から出力する基準入力端子電圧を0Vとして前記光学センサの出力に応じた前記差分増幅器の出力を求め、該求められた差分増幅器の出力および前記差分増幅器の増幅率に応じて、前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧値を求める制御手段と、
    該求められた基準入力端子電圧を前記差分増幅器に与えるとともに、前記差分増幅器の検知信号入力端子に前記光学センサの出力を与えた状態で、前記差分増幅器の出力を求め、この出力を所定の閾値と比較することによりメディアの有無を判定する判定手段と、
    を備えたことを特徴とするメディア検知装置。
  6. 前記光学センサは、検知対象のメディア上を走査するキャリッジに搭載されることを特徴とする請求項5記載のメディア検知装置。
  7. 前記差分増幅器のアナログ出力をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
    前記求められた差分増幅器の出力および前記差分増幅器の増幅率に応じて前記基準入力端子電圧を求めるための計算式を格納した記憶手段とを有し、
    前記制御手段はCPUにより構成されるとともに、前記基準電圧発生手段はD/A変換器により構成され、
    前記CPUは、メディアの不存在時または不存在場所において、前記D/A変換器から出力される基準入力端子電圧を0Vとして前記光学センサの出力に応じた前記差分増幅器の出力を求め、該求められた差分増幅器の出力を前記記憶手段に格納された計算式に適用することにより、前記差分増幅器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧としてのデジタル値を求め、該求められたデジタル値を前記D/A変換器に入力することを特徴とする請求項5または6記載のメディア検知装置。
  8. メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力が前記検知信号入力端子に入力されるとともに、前記0Vが前記基準入力端子に入力されたときの前記差分増幅器の出力値をVoxとし、前記基準入力端子にメディア検知動作時に与えるべき電圧値をV-xとしたとき、
    メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力が前記検知信号入力端子に入力されるとともに電圧0Vが前記基準入力端子に入力されたときの前記差分増幅器の出力に基づく前記A/D変換器の出力をDoとし、メディアの不存在時または不存在場所での前記差分増幅器の出力値が0VとなるようにD/A変換器にメディア検知動作時に与えるべき基準入力端子電圧をD1としたとき、前記計算式は、
    D1=Do/α
    (ここに、αは、メディアの不存在時または不存在場所での前記光学センサの出力が前記差分増幅器の検知信号入力端子に入力されるととともに電圧0Vが前記基準入力端子に入力されたときの前記差分増幅器の出力が飽和電圧にならないように設定された前記差分増幅器の増幅率である)
    で与えられることを特徴とする請求項7記載のメディア検知装置。
  9. 前記キャリッジの可動範囲内であってメディアの存在しうる領域からはずれたメディア非検知領域を設け、このメディア非検知領域における前記光学センサの動作に基づいて前記差分増幅器の基準入力端子電圧を求め、ついで、メディアの存在しうる領域へキャリッジが移動して前記求められた基準入力端子電圧を用いてメディアの検知動作を行うことを特徴とする請求項6記載のメディア検知装置。
  10. 射出した光の反射光を検知する光学センサと、該光学センサの出力を受ける検知信号入力端子および基準入力電圧を受ける基準入力端子を有する差分増幅器とを用いて、該差分増幅器の出力に基づいて検知対象のメディアの存在を検知するメディア検知方法であって、
    メディアの不存在時または不存在場所において、前記差分増幅器の出力がほぼ0となるような前記差分増幅器の基準入力端子電圧を求め、
    メディア検知動作時に、前記求められた基準入力端子電圧を前記差分増幅器に与えるとともに、前記差分増幅器の検知信号入力端子に前記光学センサの出力を与え、
    前記差分増幅器の出力を所定の閾値と比較することによりメディアの有無を判定することを特徴とするメディア検知方法。
  11. 射出した光の反射光を検知する光学センサと、
    該光学センサの出力を受ける検知信号入力端子および基準入力電圧を受ける基準入力端子を有する差分増幅器と、
    前記差分増幅器の基準入力端子電圧を出力する基準電圧発生手段と、
    メディアの不存在時または不存在場所において、前記差分増幅器の出力がほぼ0となるような前記差分増幅器の基準入力端子電圧を求める制御手段と、
    該求められた基準入力端子電圧を前記差分増幅器に与えるとともに、前記差分増幅器の検知信号入力端子に前記光学センサの出力を与えた状態で、前記差分増幅器の出力を求め、この出力を所定の閾値と比較することによりメディアの有無を判定する判定手段と、
    を備えたことを特徴とするメディア検知装置。
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