JP3718906B2 - 溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス加工、曲げ加工などの用途に用いて好適な加工用溶融金属めっき鋼板の製造方法に関し、特に、めっき密着性に優れた溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属めっき鋼板は、その防食性能や、表面の光沢性が優れているため、現在各種分野において広く使用されており、建材や自動車に使われる鋼材の耐久性の向上に大きく寄与している。
これらの溶融金属めっき鋼板は、通常、鋼板を溶融めっき金属に浸漬した後、ガスワイピング法などによりめっき付着量を制御する方法で製造されているが、その際、溶融状態のめっき金属と鋼板との濡れ性や、めっき金属−鉄相互拡散反応をよくするため、素材鋼板(原板)としては、熱間圧延時に生成するスケール層を酸洗で完全に除去した鋼板を使用する必要がある。
【0003】
また、スケールそのものは非常に脆いため、仮にめっきが鋼板表面に密着しても、その後、通常の加工を施した時にスケールに多数のクラックが発生し、めっき密着性が大きく損なわれる。
このため、溶融金属めっき鋼板用の素材鋼板としては、熱間圧延後に必ず酸洗工程を通しスケールを除去した鋼板を用いることが必須であった。
【0004】
一方、スケール層を有する熱延鋼帯を、直接、溶融金属めっき装置に通板し、該装置に付設された還元性雰囲気の焼鈍炉でそのスケールを還元し、溶融金属めっきとの濡れ性を確保し、めっきする技術が開示されている(特開平6−145937号公報、特開平3−2779967 号公報)。
しかしながら、この場合においても、スケールを十分に還元しないとめっき密着性が十分確保されず、加工に耐えられるようなめっき密着性が確保されなかった。
【0005】
さらにこの場合、スケールを還元し完全に金属鉄にするためには、比較的高還元性の雰囲気ガスを焼鈍炉に供給し、十分な時間をかけて還元する必要があり、さらには、スケールの還元により発生する水分を含んだ焼鈍炉内の雰囲気ガスを除湿しないと、めっき密着性の劣化などめっき品質の劣化および炉内ロールの腐食に例示される焼鈍炉炉体の損傷といった問題が生じる。
【0006】
すなわち、前記した従来の溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法の場合、生産性および経済性に問題があった。
また、スケール層を有する熱延鋼帯の溶融金属めっきに引き続き、冷延鋼帯などスケール層のない鋼帯を、同一装置を用いて溶融金属めっきする場合、焼鈍炉内の雰囲気条件をその都度変更する必要があり、さらに生産性の低下を招くといった問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解決し、特に、極薄スケール層を有した熱間圧延鋼板を、直接溶融金属めっき装置に通板してめっきを施す溶融金属めっき熱間圧延鋼板において、プレス加工、曲げ加工などが施される用途に用いて好適な、優れためっき密着性を有し、生産性、経済性に優れた溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、酸洗槽と還元性雰囲気の焼鈍炉と溶融金属めっき槽を連接配置した連続めっき装置を用いた溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法であって、鋼板表面の鉄酸化物層の厚さが5μm 以下の熱間圧延鋼板を、前記酸洗槽で酸洗し鉄酸化物層を部分的に除去し、引き続いて連続的に、前記焼鈍炉において残余の鉄酸化物層を 0.03g−Fe/m2 以上還元した後、得られた鋼板を前記溶融金属めっき槽に浸漬し溶融金属めっきを施すことを特徴とする溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法である。
【0011】
本発明においては、前記酸洗後の鉄酸化物層の表面粗さを、Raで0.3 μm 以上とすることが好ましい。
また、前記酸洗の前工程において脱脂を行うことが好ましい。
また、前記酸洗における酸濃度は2〜20wt%、酸洗浴浴温は30〜100 ℃であることが好ましく、酸としては塩酸がより好ましい。
【0012】
さらには、本発明においては、前記焼鈍炉における還元性雰囲気のガス組成としては、水素濃度が2〜20vol %、残部が実質的に窒素であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明者は、極薄スケール層を有する熱間圧延鋼板を、直接、溶融金属めっき装置に通板し、優れためっき密着性を有する溶融金属めっき熱間圧延鋼板を得る方法について鋭意検討した結果、下記知見を得、本発明に至った。
【0014】
▲1▼:鋼板表面へのめっきの付着が、十分なめっき密着性を有してなされるためには、スケールの厚み方向に還元が十分なされる必要があり、また、めっき金属と還元鉄との接触面積が十分に確保されず、金属結合の割合が少ない場合、得られるめっき鋼板は加工の用に適さない。
▲2▼:上記▲1▼と同様に、スケールと還元鉄との界面の面積も十分に確保されないと、スケール、還元鉄両者の界面での密着性も不十分で、得られるめっき鋼板は加工の用に適さない。
【0015】
すなわち、極薄スケール層を有した熱間圧延鋼板を溶融金属めっきする場合においては、そのめっき密着性を確保する上で、めっきと還元鉄の接触面積および還元鉄とスケールの接触面積を増すことが有効であることが判明した。
このための具体的方法として、鋼板表面のスケール層がポーラスな状態になる程度の酸洗をすることが重要であり、極薄スケール層を有する鋼板のスケール層をポーラスな状態とした上で、直接溶融めっき装置でめっきすることにより、良好なめっき密着性が確保可能となった。
【0016】
さらに、スケール層の面をポーラスとし、スケール層とその上層との界面の面積を大とすることにより、焼鈍炉での還元反応が効率良く進行し、その結果、還元ガスの濃度を低くし、また還元時間を短縮することが可能となった。
以下、本発明において規定した製造条件の限定理由について説明する。
(1) 素地鋼板のスケールの厚みに関して:
まず、素地鋼板のスケールの厚みであるが、熱間圧延鋼板のスケールの厚みが5μm 超えであるとスケールそのものの機械的性質が劣化し、酸洗または還元で表層のスケールを除去または還元したとしても非常に脆いため、めっき後の加工によりスケール下層にクラックが多数発生し、めっき密着性が劣化する。
【0017】
このような理由から、スケール厚みは薄ければ薄いほど可撓性を有し、得られるめっき鋼板の加工性が良好となる。
また、溶融金属めっき鋼板の製造工程全体においても、スケール厚みが薄くなればなる程、酸洗、還元後に残存するスケールの厚みが薄くなり、特に焼鈍炉中でのスケールの剥離による炉内汚染の危険性の防止の面からも有利であることは言うまでもない。
【0018】
一方、熱間圧延鋼板のスケール厚みを5μm 以下とする具体的方法としては、熱間圧延時の鋼板巻取温度の制御や仕上げミルでの温度を低温にする方法を用いることが可能であるが、熱間圧延機の能力上大きな制約を受けることになり、1μm 未満のスケール厚みの達成は非常に困難である。
以上の理由から、本発明において用いる熱間圧延鋼板は、熱間圧延工程で鋼板表面に生成するスケールすなわち鉄酸化物層の厚さが5μm 以下である極薄スケールを有した熱間圧延鋼板であることが好ましく、さらに好ましくは、該鉄酸化物層の厚さは1〜5μm である。
【0019】
また、熱間圧延鋼板としては極薄スケール材であれば、極低炭素鋼、低炭素鋼、高張力鋼、ステンレス鋼など任意である。
(2) 酸洗条件に関して:
本発明においては、スケール厚みを規制した熱間圧延鋼板を、次に、酸洗工程にて軽度の酸洗により、スケール表層の1部を除去する。
【0020】
これは、酸洗によりスケールの表層をポーラスな状態とし適度の凹凸をつけ、次の還元工程での還元性雰囲気ガスとの接触面積を大きくし、還元鉄の面積を大きくし、めっき時の溶融金属と還元鉄の密着強度を大きくするためである。
また、上記処理は、還元鉄とスケール間の界面の密着強度も大きくする効果を有する。
【0021】
酸洗工程を通さない場合は、還元鉄とめっき層との界面が比較的平坦になるため、還元鉄−めっき間および還元鉄−スケール間両者の密着性が劣ることになる。
本発明においては、後記の実施例で規定される酸洗後の鉄酸化物層の表面粗さRa0 を、0.3 μm 以上となるような酸洗条件で酸洗し、酸洗後のスケールの表層をポーラスな状態とすることが好ましい。
【0022】
上記したRa0 の好ましい上限値は、2.00μm であれば十分で、酸濃度、酸洗浴の浴温を高め、Ra0 を2.00μm 超えとしても、めっき密着性向上の効果は飽和し、経済的でない。
上記した酸洗を行い、表層のスケールを上記鉄酸化物層の表面粗さRa0 で規定されるポーラスな状態とした場合、その後の還元が層状に進行する結果、めっき鋼板の断面において鉄酸化物層とその上層の還元鉄との界面で形成される曲線が、後記の実施例で規定される二次元粗さRa1 で、0.3 μm 以上となり、該界面における両層の接触面積の増加により、還元、焼鈍後に鋼板表層部に鉄酸化物層が残存する場合においても、めっき密着性が良好なめっき鋼板が得られる。
【0023】
また、Ra0 同様、Ra1 を2.00μm 超えとしても、めっき密着性向上の効果は飽和し、経済的でない。
さらに、Ra1 と同様に、鋼板表面の皮膜の断面において還元鉄とその上層のめっき層との界面で形成される曲線が二次元粗さRaで、0.3 μm 以上であれば、この界面におけるめっき密着性が良好で好ましい。
【0024】
本発明においては、酸洗における酸濃度は2〜20wt%が好ましい。2wt%未満では、鉄の溶解速度が遅く、酸洗槽内の鋼板の滞留時間が短い時には、所定の表面粗さRa0 が得られず、20wt%超えの場合、鉄の溶解速度が大きすぎ、制御困難となり好ましくない。
また、酸洗浴浴温は30〜100 ℃であることが好ましい。30℃未満では、前記した酸濃度が低い場合と同様、所定の表面粗さRa0 が得られず、100 ℃超えの場合、前記した酸濃度が高い場合と同様、制御が困難となり、加熱のためのエネルギー効率が低下し、好ましくない。
【0025】
酸としては塩酸、硫酸、硝酸、または、これらの組み合わせを用いることが可能であるが、塩酸を用いることがより好ましい。
また、酸洗速度の向上を目的に、キレート剤などの酸洗促進剤を添加すること、酸洗後の表面粗さの安定のため、またはオーバーエッチング防止のために腐食抑制剤を添加しても良い。
【0026】
さらに、酸洗時の鉄酸化物層の除去量の制御を確実にするために、電解酸洗を行うことも有効である。
酸洗工程ではスケールを全て除去するほどの強酸洗は必要はないが、仮にスケールの全てが除去されたとしても、鋼板の地鉄面が露出するわけであるので、めっき密着性はスケールが残存した場合と比較して劣化することはない。
【0027】
以上、連続めっき装置において連接配置した酸洗槽における酸洗条件について述べたが、次に、従来の熱間圧延鋼板の製造ラインにおいて連接配置された酸洗槽における酸洗との対比について述べる。
すなわち、本発明においては、鉄酸化物層を有する熱間圧延鋼板は、熱間圧延の精整工程に冷間圧延の付帯設備として設置された酸洗装置を通さず、直接、溶融金属めっき装置において連接配設した酸洗工程を通すことが好ましい。
【0028】
この理由は、冷間圧延の付帯設備として設置された通常の酸洗ラインは、スケールを原則全て除去する必要があり、高濃度の酸を用い比較的高温で長時間処理するのに対して、本発明の溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法においては、スケールの表層のみをポーラスにするため、酸洗は、比較的低濃度の酸で低温、短時間の処理で良く、溶融めっき装置に簡単に配置し、酸や蒸気の使用量を大幅に削減できることによるものである。
【0029】
また、酸洗工程を溶融金属めっき装置の焼鈍炉の直前に配置することにより、酸洗により生成したポーラスな表層が還元処理されるまで、そのままの状態で保たれ、効率良く還元が可能となる。
すなわち、従来の冷間圧延の付帯設備として設置された酸洗ラインでの酸洗では、酸洗後に通常数日〜数週間は放置されるため、水分や汚れで表面が汚され、活性なポーラス面を保持できず、焼鈍によって還元したとしても、最終的に得られる溶融金属めっき熱間圧延鋼板のめっき密着性が劣化する。
【0030】
(3) 焼鈍炉における還元条件に関して:
酸洗工程で、スケール層の表層がポーラスな状態となった鋼板は、次に、酸洗工程において連接配置された還元性雰囲気の焼鈍炉において、残余のスケールを、鋼板片面当たり、好ましくは0.03g −Fe/m2 以上、より好ましくは0.1 〜30g −Fe/m2 還元する。
【0031】
これはスケール層とめっき層の濡れ性を改善するために必須である。
上記還元量が0.03g −Fe/m2 未満の場合、めっき密着性が低下し、30g −Fe/m2 超えの場合、めっき密着性向上の効果が飽和し、さらには、スケールの還元に伴い発生するH2O により、逆にめっき密着性が低下し、さらに、前記した焼鈍炉の損傷が生じ、また生産性、経済性の面でも好ましくない。
【0032】
なお、上記した還元量とは、還元により鋼板表面に新たに生成した金属鉄の量を示す。
焼鈍炉における還元性雰囲気のガス組成としては、水素濃度が2〜20vol %、残部が実質的に窒素であることが好ましい。
水素濃度が2vol %未満の場合、めっき密着性が低下し、20vol %超えの場合、スケールの還元に伴い発生するH2O による前記した弊害が生じ好ましくない。
【0033】
焼鈍炉における還元域の温度は、700 〜950 ℃の範囲が好ましい。
本発明によれば、予め前記した軽度の酸洗を行うことにより、スケールの表面層を前記したRa0 で規定されるポーラスな状態としておくことにより、前記した低濃度の還元ガス雰囲気においても、加熱帯通過時間が15秒程度の短時間の焼鈍処理でも、めっき密着性に優れた溶融金属めっき熱間圧延鋼板を製造することが可能となった。
【0034】
(4) 溶融金属めっきに関して:
還元性雰囲気で還元された鋼板は、スナウト中を搬送され、直接空気に接触することなく溶融めっき金属に浸漬されめっきされるが、これらの方法は通常の溶融金属めっきと同様でよく、特に条件を規制することはない。
本発明が適用可能なめっき金属としては、Zn、Al、Pb、Sn、Mg、Sbまたはこれらの合金で例示される各種の溶融めっき金属が挙げられる。
【0035】
なお、本発明は、めっき品質、操業条件の改善を目的として溶融金属に添加される各種微量元素についてもなんら制限を受けるものではない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を、実施例により具体的に説明する。
低炭Alキルド鋼を、熱間圧延時の仕上げ温度: 700〜830 ℃、巻き取り温度: 450〜550 ℃として圧延し、そのスケール厚みを 2.8〜5.0 μm に調整した。
この熱間圧延鋼板を、酸洗槽を直接焼鈍炉の前に連接配置した図2に示す溶融金属めっき装置に通板し溶融金属めっき熱間圧延鋼板を製造した。
【0037】
なお、図2において、11は熱間圧延鋼板、12は電解脱脂槽、13は酸洗槽、14はリンス槽、15は加熱還元帯15a 、冷却帯15b から成る焼鈍炉、16はスナウト、17は溶融金属めっき槽、18は溶融金属、19はシンクロール、20はガスワイピングノズル、21はロール、22は鋼板搬送方向を示す。
熱間圧延鋼板11を、先ず、電解脱脂槽12において3.0 %NaOH水溶液である脱脂液で電解脱脂して鋼板上の汚れを洗浄した後、酸洗槽13において塩酸濃度:4.0 〜15wt%(1.8 〜4.1 規定)、浴温:50〜80℃の酸性水溶液で鋼板表面のスケールの一部を酸洗、除去した。
【0038】
酸洗時間はライン速度によって変え、5〜15秒の範囲とした。
酸洗処理後の鋼板の一部を切り出し、後記の酸洗後の鋼板表面粗さRa(=Ra0 )測定用のテストピースとした。
上記した酸洗後、リンス槽14において水洗された熱間圧延鋼板11は、連続して焼鈍炉15に搬送され、焼鈍炉15内の加熱還元帯15a において、H2 濃度:4〜15vol %、残部:N2、露点:−40℃の(H2 +N2 )ガス雰囲気中で還元と焼鈍を行い、残存スケールの表層部の一部または全てを還元鉄とした。
【0039】
なお、還元帯15a における最高板温は、 650〜850 ℃の範囲とし、該温度範囲における鋼板の滞留時間は15〜90秒の範囲とした。
還元、焼鈍後の熱間圧延鋼板11は、連続して、溶融金属めっき槽17の溶融金属18中へ浸漬してめっきし、その後、ガスワイピングノズル20を用いめっき付着量を制御した後、常温まで冷却し、調質圧延機にて 0.3〜1.5 %の伸びを与えて製品とした。
【0040】
なお、本実施例においては、溶融金属18として、(1) Alを 0.160〜0.170 %含有する溶融Zn、もしくは、(2) Siを9%含有する溶融Alを用い、また、めっき付着量を60〜270g/m2 (鋼板片面当り)の範囲に制御した(本発明例1〜11)。
また、比較例として、酸洗槽の水溶液として酸を含有しない通常の水を用い水洗した熱間圧延鋼板、およびスケール厚みを 6.0〜15μm とした熱間圧延鋼板を用いて、前記本発明例1〜11と同様の条件で溶融金属めっき鋼板を製造した。
【0041】
次に、得られた酸洗処理後のテストピースおよび下記に一括して示す各種溶融金属めっき熱間圧延鋼板試作品について、▲1▼酸洗後の鋼板表面粗さRa(=Ra0 )、▲2▼めっき鋼板の断面において鉄酸化物層とその上層の還元鉄との界面で形成される曲線の二次元粗さRa1 、▲3▼めっき密着性を、後記の測定方法および試験方法により、測定、評価した。
【0042】
〔溶融金属めっき熱間圧延鋼板試作品:〕
A.スケール厚み≦5μm 、酸洗処理有り:本発明例1〜11の鋼板
B.スケール厚み>5μm 、酸洗処理有り:比較例1〜4、10の鋼板
C.スケール厚み≦5μm 、酸洗処理無し:比較例5〜7、11、12の鋼板
D.スケール厚み>5μm 、酸洗処理無し:比較例8の鋼板
E.スケール厚み>5μm 、酸洗処理有り:比較例9の鋼板
〔粗さRaの測定方法:〕
(酸洗後の鉄酸化物層の表面粗さRa0 ;)
酸洗後の鋼板表面粗さRaを三次元表面粗さ計で測定した。
【0043】
(めっき鋼板の断面において鉄酸化物層とその上層の還元鉄との界面で形成される曲線の二次元粗さRa1 ;)
溶融金属めっき熱間圧延鋼板のテストピースを樹脂に埋め込み、埋め込み樹脂を鋼板断面方向に切断し、切断面をアルミナペーストで研磨した後、顕微鏡および画像解析装置を用いて、鋼板の断面において鉄酸化物層とその上層の還元鉄との界面(下記図1の符号5で示される界面)で形成される曲線で規定される二次元粗さRaを測定した。
【0044】
なお、上記Ra0 、Ra1 はいずれも、JIS B 0601-1994 で規定される算術平均粗さ(Ra)で規定される算出法で求めた値である。
図1に、本発明例1で得られた溶融亜鉛めっき熱間圧延鋼板の断面(顕微鏡観察結果)を模式図により示す。
図1において、各々の符号で示される層または界面は下記の内容または状態を示す。
【0045】
1:鋼板
2:酸洗、還元された後に残存するスケール層(酸洗、還元後の残存鉄酸化物層)。
3:酸洗後に残存したスケール層のうち還元により金属鉄となった層(還元により生成した金属鉄の層)(還元鉄の層)。
【0046】
4:酸洗によりスケールが一部除去され、その時点でポーラスな状態となった金属鉄(還元鉄の層)と、めっき層との界面。
5:酸洗、還元後の残存鉄酸化物層と還元により生成した金属鉄の層(還元鉄の層)との界面。
6:めっき層
〔めっき密着性評価方法:〕
(1) ボールインパクト法;
1kgの重りを 100cmの高さから落下させ、ボール状の治具を介してめっき鋼板の板面に垂直に衝撃を加えて塑性加工し、その後加工された凸部にセロハンテープを貼り、剥離させ、めっきの剥離状態を、画像解析により剥離面積を測定して、塑性加工部の剥離面積率を下記の5段階で評価した。
【0047】
(評価基準)
1:剥離面積率 0%(剥離無し)
2:剥離面積率 10%以下(剥離有り)
3:剥離面積率 10%超え、30%以下
4:剥離面積率 30%超え、70%以下
5:剥離面積率 70%超え
(2) 60°曲げ試験;
めっき鋼板をR= 1.0tで60°V字型にプレスで折り曲げた後、折り戻し曲げ部の内側にセロハンテープを貼り、一定速度で剥離させ、めっきの剥離状態を標準サンプルを基準として、目視により5段階で評価した。
【0048】
表1に、測定結果および評価結果を、溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造条件と併せて示す。
表1に示すように、スケール厚みを 5.0μm 以下に調製した熱間圧延鋼板を使用し、酸洗によりスケールの一部を除去した後、還元し、めっきを施した溶融金属めっき鋼板は、スケール厚みが 5.0μm より大きな鋼板を用いた溶融金属めっき鋼板、酸洗なしでめっきした溶融金属めっき鋼板いずれに対しても、そのめっき密着性が優れていることが分かる。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、極薄スケールを有する熱間圧延鋼板を、直接溶融金属めっき装置に通板し、めっき密着性に優れた溶融金属めっき鋼板を得ることが可能となり、本発明による各種の溶融金属めっき鋼板は、プレス加工、曲げ加工などの用途に用いて好適である。
【0051】
また、本発明によれば、極薄スケールを有する熱間圧延鋼板を、従来法のように高濃度の酸を使用し長時間酸洗することが不要となったため生産性、経済性に優れた効果も有する。
さらには、本発明によれば、極薄スケールを有する熱間圧延鋼板の鉄酸化物層を酸洗槽で部分的に除去し、焼鈍炉における還元後も該鉄酸化物層を残存させることにより、焼鈍炉内に発生する水分量を低下させることが可能となった。
【0052】
この結果、さらに厳しいめっき品質が要求される冷間圧延鋼板の通板にも迅速に対応可能となり、生産性の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる溶融亜鉛めっき熱間圧延鋼板の断面の1例を示す模式図である。
【図2】本発明に係わる溶融金属めっき装置を示す側面図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2 酸洗、還元後の残存鉄酸化物層
3 還元により生成した金属鉄の層
4 ポーラスな状態となった金属鉄と、めっき層との界面
5 酸洗、還元後の残存鉄酸化物層と還元により生成した金属鉄の層との界面
6 めっき層
11 熱間圧延鋼板
12 電解脱脂槽
13 酸洗槽
14 リンス槽
15 焼鈍炉
15a 加熱還元帯
15b 冷却帯
16 スナウト
17 溶融金属めっき槽
18 溶融金属
19 シンクロール
20 ガスワイピングノズル
21 ロール
22 鋼板搬送方向
Claims (6)
- 酸洗槽と還元性雰囲気の焼鈍炉と溶融金属めっき槽を連接配置した連続めっき装置を用いた溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法であって、鋼板表面の鉄酸化物層の厚さが5μm 以下の熱間圧延鋼板を、前記酸洗槽で酸洗し鉄酸化物層を部分的に除去し、引き続いて連続的に、前記焼鈍炉において残余の鉄酸化物層を 0.03g−Fe/m2 以上還元した後、得られた鋼板を前記溶融金属めっき槽に浸漬し溶融金属めっきを施すことを特徴とする溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法。
- 前記酸洗後の鉄酸化物層の表面粗さが、Raで0.3 μm 以上とする請求項1記載の溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法。
- 前記酸洗の前工程において脱脂を行う請求項1または2記載の溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法。
- 前記酸洗における、酸濃度が2〜20wt%、酸洗浴浴温が30〜100 ℃である請求項1〜3いずれかに記載の溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法。
- 前記酸洗における、酸が塩酸である請求項1〜4いずれかに記載の溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法。
- 前記焼鈍炉における還元性雰囲気のガス組成が、水素濃度が2〜20vol %、残部が実質的に窒素である請求項1〜5いずれかに記載の溶融金属めっき熱間圧延鋼板の製造方法。
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