JP3718664B2 - 非晶質カーボン被覆工具およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転削工具(ドリル、エンドミル、リーマなど)、フライス工具や旋削工具に使用される刃先交換型切削チップ、切断工具(カッター、ナイフ、スリッターなど)の表面に耐摩耗性および耐溶着性を有する非晶質カーボン膜を形成した工具に関するものである。また、このような工具の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、工具表面の損傷を小さくして高寿命・高能率加工を行うこと、および被削材の仕上げ(表面形状維持、母材硬度維持、寸法精度維持など)を高品位に行うことなどが切削工具に求められている。
【0003】
最近では、環境保全や省エネルギー化のニーズから、切削抵抗を下げる工具や切削油剤を減らしても寿命や切削能率が低下しない工具などの開発が強く求められている。
【0004】
また、アルミ合金などの軟金属や、チタン、マグネシウム、銅といった非鉄金属、有機材料、グラファイトなど硬質粒子を含有する材料、プリント回路基板加工や鉄系材料とアルミ共削り加工など近年被削材の材種は多技にわたっている。ここで、共削り加工とは鉄系材料とアルミ合金が一体になったものを同時に切削することをいう。上記のような材料を切削する場合、切削工具の切れ刃部分に被削材が凝着して切削抵抗が大きくなったり、場合によっては刃先が欠損するといった問題もある。これら特定被削材では、他の被削材に比べ工具摩耗が一層激しくなる。
【0005】
さらに、金属加工現場からは、性能は落すことなくコストを大幅に削減したいとの切実なニーズがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このようなアルミニウムおよびその合金や有機材料を加工する特定用途では、従来、ダイヤモンド工具が用いられてきた。基材にダイヤモンド膜を形成した工具では、そのダイヤモンド膜が多結晶構造のため表面の凹凸が大きくなる。従って、精密加工工具として使用するためには表面を研磨する必要がある。
【0007】
しかし、ダイヤモンド膜は現存する材料で一番硬い材料であるため、その研磨に対しては高価なダイヤモンドを用いるよりほかなく、非常なコストアップ要因となっていた。
【0008】
さらに、TiNなど、PVD(Physical vapor deposition)コーティングで得られるセラミックス被膜は、通常2〜3μmの厚さである。一方、ダイヤモンド膜の場合には、結晶成長速度が結晶方位によって大幅に異なるので、平滑な研磨面を得るためには、あらかじめ20〜30μmといった厚膜が必要である。その上、ダイヤモンド成長時に同時成長するグラファイトをエッチング除去しながら成膜するので通常のセラミックス被膜のコーティング時の1/10以下といった非常に低い成膜速度となり、コーティングを含めた製造コストが非常に高くなるという問題があった。
【0009】
また、ダイヤモンド焼結体を基材にロー付けする工具では、複雑形状の工具や径が数ミリの小径工具を製作することが困難であるとの問題があった。
【0010】
そこで、特開2000-176705号公報では、工具上にTiN、TiCN、TiAlN、Al2O3もしくはこれらの組み合わせを含む硬質物質コーティングした後に、さらに硬質炭素系潤滑膜を被覆した工具部材を提案している。ここで、発明者らは、安定した耐久性を有し、かつ量産性に適した安価な硬質炭素系潤滑被膜を形成するため、シリコンと炭素もしくはシリコン、炭素および窒素を含む成分からなる中間層を設け、中間層の下に界面と接する厚さ0.02μm以上0.5μm以下のシリコン単体の層を形成することを提案している。
【0011】
しかし、この発明における最表面層の硬質炭素被膜は、炭化水素系のガスを使って、イオンプレーティングとプラズマCVD(Chemical vapor deposition)の手法により形成されるため、被膜中に水素原子が含まれてしまう。通常、硬質炭素中の水素原子は大気中において約350℃の温度以上で膜中から脱離することが知られており、水素が脱離した後に硬質炭素被膜はグラファイトに変態し、硬度が極端に低下する。このような被膜は過酷な切削環境下で使用することが困難であると言わざるを得ない。
【0012】
従って、本発明の主目的は、軟金属、非鉄金属、有機材料、硬質粒子を含有する材料、プリント回路基板、鉄系材料と軟質金属材料との共削り加工などの切削加工用の非晶質カーボン被覆工具を提供することである。また、本発明の他の目的は、非晶質カーボン被覆工具の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材の組成や非晶質カーボン膜の厚さを特定することで上記の目的を達成する。
【0014】
すなわち、本発明非晶質カーボン被覆工具は、WC基超硬合金からなる基材と、この基材上の少なくとも刃先を被覆する非晶質カーボン膜とを具える非晶質カーボン被覆工具であって、前記基材はコバルトの含有率が12質量%以下であり、この非晶質カーボン膜中における水素量が5原子%以下であり、該非晶質カーボン膜の刃先における最大厚みが0.05μm以上0.5μm以下であることを特徴とする。
また、本発明非晶質カーボン被覆工具は、WC基超硬合金からなる基材と、この基材上の少なくとも刃先を被覆する非晶質カーボン膜とを具える非晶質カーボン被覆工具であって、前記基材はコバルトの含有率が12質量%以下であり、前記非晶質カーボン膜はグラファイトを原料として実質的に水素を含まない雰囲気下の物理的蒸着法により形成され、非晶質カーボン膜の刃先における最大厚みが0.05μm以上0.5μm以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明非晶質カーボン被覆工具の製造方法は、真空容器内にWC基超硬合金からなる基材を保持する工程と、基材にゼロまたは負の直流バイアスを印加すると共に、原料となるグラファイトを蒸発させて非晶質カーボン膜を形成する工程とを具え、刃先における非晶質カーボン膜の最大厚みを0.05〜0.5μmに制御することを特徴とする。
【0016】
以下に本発明の構成要件を詳しく説明する。
【0017】
(WC基超硬合金基材)
WC基超硬合金は、炭化タングステン(WC)を主成分とする硬質相と、コバルトなどの鉄族金属を主成分とする結合相とからなる。WC基超硬合金に含まれるコバルト量を規定しているのは、コバルト量が多くなると基材の勒性が上がり超硬基材刃先の耐欠損特性は上がるものの、刃先に強い外力が加わった場合に基材の変形に高硬度な非晶質カーボン膜が追随できず、非晶質カーボン膜が超硬基材との界面で剥離してしまうためである。剥離することなく切削性能を安定化させるためには、コバルト含有量を12質量%以下とすることが好ましい。更に好ましくは基材のコバルト含有率を3質量%以上7質量%以下とする。
【0018】
また、前記基材の焼結後の炭化タングステンの平均結晶粒径は0.1μm以上3μm以下であることが好ましい。平均結晶粒径が0.1μm未満の場合には現状の評価方法で判別困難である。逆に、平均結晶粒径が3μmを超えると膜が摩耗した場合に基材中の大きな炭化タングステン粒子が脱落して大欠損を起こしてしまうので好ましくない。
【0019】
さらに、前記基材の中に周期律表IVa、Va、VIa族の金属元素よりなる群から選択される1種以上の元素と、炭素および窒素よりなる群から選択される1種以上の元素とからなる化合物が0.01質量%以上3質量%以下含まれていることが好ましい。このような元素の含有により、焼結中の炭化タングステンの結晶粒成長を抑制する働きがある。好ましい添加化合物の具体例としては、(Ta,Nb)C、VC、Cr2C2、NbCなどが挙げられる。
【0020】
(非晶質カーボン膜)
非晶質カーボン膜は、硬質炭素膜、ダイヤモンドライクカーボン膜、DLC膜、a−C:H、i−カーボン膜などと一般に呼ばれるものを含む。しかしながら、本発明の非晶質カーボン膜は、以下に説明する特徴を持つ。
【0021】
<成膜方法>
本発明は、グラファイトを原料とし、水素を含まない雰囲気下で物理的蒸着法により非晶質カーボン膜を形成したものである。この膜はダイヤモンドに匹敵する高い硬度と切削工具として優れた耐摩耗性を有する。一方、炭化水素を原料とする非晶質カーボン膜は水素を含有するので、本発明の非晶質カーボン膜とは異なるものである。
【0022】
この非晶質カーボン膜は、成膜中に不可避的に含まれる不純物を除いて炭素原子のみから構成される。その結果、水素を含む非晶質カーボン膜よりもsp3結合の割合が高くなることで硬度を高くすると同時に耐酸化特性もダイヤモンドと同等の約600℃近くにまで改善される。水素を含まない雰囲気下で成膜しても、できあがった非晶質カーボン膜には5原子%以下程度の極わずかながら水素が含有されることがある。これは、成膜時の真空度などにより、成膜装置中に残存する水素や水分が非晶質カーボン膜中に取り込まれるためと考えられる。
【0023】
グラファイトを出発原料とした物理的蒸着法の中でも、一般に工業的に用いられる陰極アークイオンプレーティング法、レーザーアブレーション法やスパッタリング法などであれば、成膜速度も高く、ダイヤモンド膜で問題となっていた製造コストの問題もなくなる。特に、被膜の密着力、膜硬度の点で、陰極アークイオンプレーティング法による成膜が好ましい。この陰極アークイオンプレーティング法は、原料のイオン化率が高いため、主にカーボンイオンが基材に照射されることにより非晶質カーボン膜が形成される。そのため、sp3結合の比率が高く、緻密で硬度の高い膜が得られ、工具寿命を大きく向上させることができる。
成膜時の基板の温度は、50℃から200℃である。基材の温度が350℃を越えると、グラファイトが析出しやすいからである。成膜時にはカーボンイオンが基材に照射され、非晶質カーボンが形成されるので、その時基材の温度は上昇する。従って、基材をヒーターによって加熱しなくても、実用上支障のない程度まで温度上昇する場合もある。また、加熱や冷却によって、基材の温度調整することもできる。
成膜時の基板温度は、更に好ましくは50℃から150℃である。
【0024】
<マクロパーティクル密度>
陰極アークイオンプレーティング法により形成した非晶質カーボン膜の表面には、マクロパーティクルと呼ばれる硬質粒子が存在する。この膜表面に存在するマクロパーティクル密度が小さいほど切削抵抗が小さくなるため望ましい。マクロパーティクル密度は、3×105個/mm2以下、より好ましくは1.5×105個/mm2以下である。もちろん、0個/mm2が最適であることは言うまでもない。マクロパーティクルの密度が3×105個/mm2よりも大きいと、被削材がこのマクロパーティクルに溶着して切削抵抗を上げるために好ましくない。
【0025】
マクロパーティクルの密度は、SEM(Scanning Electron Microscope)観察によって評価することができる。SEM観察は、マクロパーティクルを観察しやすくするために、PtやPdなどの貴金属を試料表面にイオンスパッタリングなどによって蒸著してから、観察すると良い。少なくとも1000倍以上の倍率で試料表面の写真撮影を行い、写真上でマクロパーティクルの数を数えることにより密度をもとめると良い。
【0026】
図2はマクロパーティクル21が生成する過程を、非晶質カーボン被覆面20の断面図で示したものである。工具の刃先23に、非晶質カーボン20を被覆するが、その過程でグラファイトの粒子22が飛散してきて、被覆面に付着する。表面を電子顕微鏡で見るといろいろな外径のまるい粒子21が観察できる。しかし、このような粒子は本発明においては望ましいものではない。グラファイト粒子22は膜の成長過程で飛散してくるので、図2に示すように非晶質カーボン20のいろいろな厚さの所に存在しているものと推定される。
さらに、非晶質カーボン膜の表面粗度をよくするために、グラファイト原料からの粒状飛散物を防止するような、例えば低エネルギーによる成膜や磁場によるフィルターを用いる方法も提案できる。
【0027】
<表面粗さ>
非晶質カーボン膜の表面粗さは、JIS規格B0601で定められたRaの表示で0.002μm以上0.05μm以下であることが望ましい。ここで、切削工具として見た場合、面粗さRaはできる限り小さいことが望ましい。しかし、実際にはゼロとすることはできないので、種々切削試験を行った結果、Raが0.05μm以下であった場合には刃先での溶着性が改善され切削性能が向上することを見いだした。また、JIS規格B0601で定められたRyの表示で0.02μm以上0.5μm以下であることも好ましい。ここで、Ryが0.5μmを越えると、非晶質カーボン膜の突起物が被削材の溶着の起点となり切削抵抗上昇の原因となるため好ましくない。
【0028】
<厚み>
工具刃先における非晶質カーボン膜の最大膜厚を0.05μm〜0.5μmと特定する理由は、0.05μm未満の場合、耐摩耗性に問題があり、0.5μmを越えると被膜に蓄積される内部応力が大きくなって剥離しやすくなったり、被膜の欠けを生ずる問題があるからである。また、膜厚を0.5μm以下とすることにより、表面のマクロパーティクルの大きさと密度を小さくし、表面粗さを前記のRa表示で0.05μm以下、Ry表示で0.5μm以下に抑えることができるという効果もある。非晶質カーボン膜は、図2のTで示すように、工具の刃先部で厚くなる。この厚さが薄いと性能がよくなる。従って、非晶質カーボン膜の切削に関与する刃先部での最大厚みTが0.05μm以上0.25μm以下であることがより溶着性が小さいという観点から好ましい。
【0029】
<硬度>
非晶質カーボン膜のヌープ硬度は20GPa以上50GPa以下であることが好ましい。この硬度が20GPa未満であると耐摩耗性の点で問題があり、50GPaを超えると刃先の耐欠損性が低下するためである。さらに好ましくは、非晶質カーボン膜のヌープ硬度が25GPa以上40GPa以下である。
【0030】
<ラマンスペクトル>
非晶質カーボン膜は非晶質であるがゆえに膜構造を特定することが非常に難しい。種々の非晶質カーボン膜を評価した結果、ラマン分光分析を行うと構造の変化に伴い得られるラマンスペクトルに違いのあることをつきとめた。
【0031】
図3は、本発明の非晶質カーボンのラマンスペクトルであり、図4は従来の水素を含む非晶質カーボンのラマンスペクトルである。これらは、514.5nmの波長を持つアルゴンガスレーザーを用いたラマン分光分析により得られたものである。図4において、実線は測定結果を示すもので、1340cm− 1近辺にふくらみが見られ、700cm− 1近辺にはピークがない。
次に得られたスペクトルを二つに分離するために、スペクトル波形からバックグラウンドを除去した。次にふくらみを持つスペクトルは2つのガウス関数を加算したものと仮定して、非線形最小二乗法で近似し、二つのピークに分離した。その結果を鎖線で示す。1340cm− 1付近に中心を持つピークの高さをI1340で示し、1560cm− 1付近のピークの高さをI1560で示す。これに対して、本発明のラマンスペクトルは、図3に示すように1340cm− 1付近のふくらみが実線では識別しにくく、700cm− 1付近に幅の広いピークがある。前記したものと同様の方法によりピーク分離した結果を図3に鎖線で示す。I1340のピーク高さが、図3のものに比較すると弱いことが分かる。700cm− 1付近のピーク高さをI700で示す。
同様に、それぞれのピークを積分した値を例えばS700などのように表現する。
本発明工具の非晶質カーボン膜では、波数400cm− 1以上1000cm− 1以下の間、1340cm− 1付近および1560cm− 1付近の合計3箇所にピークが観測される。一方、これまでの水素を含有する被膜では低波数側の波数400cm− 1以上1000cm− 1以下の間ピークは観測されない。この波数400cm− 1以上1000cm− 1以下の間ピークを有する被膜構造をとることで、高硬度化が起こり耐摩耗性の向上が実現できる。
【0032】
さらに、波数400cm− 1以上1000cm− 1以下に存在するピークの強度(I700)と1340cm− 1付近に存在するピークの強度(I1340)との強度比(I700/I1340)が0.01以上2.5以下であると耐摩耗性が向上する。これは、微小サイズのグラファイトや歪みを持ったsp3結合の量が増えることで、膜硬度が高くなるためと考えられる。
【0033】
ここではピーク高さを用いて示したが、ピーク積分強度比でも整理することができ、波数400cm− 1以上1000cm− 1以下に存在するピークの積分強度(S700)と1340cm− 1付近に存在するピークの積分強度(S1340)との強度比(S700/S1340)が0.01以上2.5以下であることが好ましい。ピーク強度比が、0.01未満であれば耐摩耗性は従来被膜と同等である。後述するように、種々の成膜実験を実施したが、今回の実験ではピーク強度比が2.5以上のものは得られなかった。
【0034】
また、1560cm− 1付近に存在するピークの強度(I1560)と1340cm− 1付近に存在するピークの強度(I1340)との強度比(I1340/I1560)が0.1以上1.2以下であれば、高耐摩耗性を示すのでよい。1560cm− 1付近に存在するピークの強度(I1560)と1340cm− 1付近に存在するピークの強度(I1340)との比はsp2/sp3とも言われ被膜内部の炭素結合状態の存在量を表している。これらのピーク強度比が直接sp2の含有量を示している訳ではないが相対的には被膜構造のクラス分けをすることができる。1560cm− 1付近に存在するピークの強度が高い場合に高硬度化することがわかった。つまり、sp3結合性が強い場合により耐摩耗性が向上する。ピーク強度だけではなく1560cm− 1付近に存在するピークの積分強度(S1560)と1340cm− 1付近に存在するピークの積分強度(S1340)との強度比(S1340/S1560)が0.3以上3以下であればよい。
【0035】
そして、1560cm− 1付近に存在するピークが1560以上1580cm− 1以下に存在すれば高耐摩耗性が実現できる。ラマンスペクトルのピーク位置は被膜内の応力の影響を受ける。一般的には、被膜内の応力が圧縮側に高い場合は、ラマンスペクトルのピークは高波数側にシフトし、逆に引っ張り側に高い場合は低波数側にシフトする。被膜の応力が圧縮側に高い場合に耐摩耗性が向上することを見いだした。
【0036】
<干渉色>
従来の技術で用いられている非晶質カーボン膜は、可視光域において不透明であり、褐色から黒色といった色調である。本発明工具の非晶質カーボン膜は、可視光域において透明で、干渉色を示すことを特徴とする。
【0037】
干渉色を示すということは、非晶質カーボン膜のsp3結合成分が非常に多く、屈折率、光学バンドギャップ、弾性率といった物性が、従来の非晶質カーボン膜よりもよりダイヤモンドに近いことを示している。このような非晶質カーボン膜を工具として用いた場合、膜硬度が高いため、優れた耐摩耗性と耐熱性を示す。本発明工具の基材であるWC基超硬合金は、銀色もしくは銀色に近いグレーであるため、本発明工具は干渉色を示すことを外観的特徴とする。
【0038】
非晶質カーボン膜の干渉色は、膜厚が厚くなるにつれて、(1)茶→(2)赤紫→(3)紫→(4)青紫→(5)青→(6)銀→(7)黄→(8)赤→(9)青→(10)緑→(11)黄色→(12)赤と変化し、以降は(8)の赤から(12)の赤までをくり返す。これらの色の変化は膜厚の変化に対して連続的であり、それぞれの中間の膜厚では、それらの中間の色となる。
【0039】
本発明者らが検討した結果、工具刃先における最大膜厚を0.05μm〜0.5μmと特定した場合にはコーティング被膜は、(2)の赤紫から(10)の緑の間の色となることを見いだした。また、単一色ではなく複数の色調からなる虹色であっても良い。また、これらの干渉色を呈する非晶質カーボン膜の上に、従来の褐色から黒色の非晶質カーボン膜を形成して用いても良い。
【0040】
(界面層)
本発明工具は、非晶質カーボン膜の密着力を強固なものにするために、基材と非晶質カーボン膜との間に界面層を設けることが好ましい。
【0041】
<材質>
この界面層は、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素の元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選ばれた少なくとも1種以上の元素の炭化物が好適である。
【0042】
中でもTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Siの元素よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の元素、またはこの元素群から選ばれた少なくとも1種以上の元素の炭化物であることがさらに望ましい。これらの金属元素は炭素と強い結合を作りやすいため、これらの金属元素あるいは金属炭化物の界面層上に非晶質カーボン膜を形成することによって、より強固な密着力が得られる。
【0043】
<厚み>
界面層の厚さは0.5nm以上10nm未満とする。膜厚がこの範囲よりも薄いと、界面層としての役割を果たさず、この範囲よりも厚いと従来技術と同等の密着力しか得られない。このように極めて薄い界面層を形成することにより、従来技術では達成できなかった極めて強固な密着力が得られ工具寿命を大きく改善することが可能となる。
【0044】
<混合組成層・傾斜組成層>
界面層と非晶質カーボン膜との間に、各被膜の組成が混合した混合組成層または組成が連続的に変化した傾斜組成層を介在させれば、さらに強固な密着力が得られるため一層望ましい。この混合層と傾斜組成層とは、必ずしも明確に区別できるものではない。界面層の成膜から非晶質カーボン膜の成膜に製造条件を切り替える際、通常、わずかに界面層と非晶質カーボン膜との組成に混合が起こり、これら混合組成層や傾斜組成層が形成される。これらは、直接確認することは難しいが、XPS:(X‐ray Photo-electronic Spectroscopy)やAES:(Auger Electron Spectroscopy)などの結果から十分推定できる。
【0045】
(工具の用途)
本発明非晶質カーボン被覆工具は、その耐摩耗性と耐溶着性から、特にアルミニウムおよびその合金を加工するための工具に適する。また、チタン、マグネシウム、銅など非鉄材に使用することが最適である。さらに、グラファイトなどの硬質粒子を含有する材料、有機材料などの切削や、プリント回路基板加工や鉄系材料とアルミニウムとの共削り加工などにも有効である。加えて、本発明工具の非晶質カーボン膜は非常に高硬度であることから、非鉄材だけではなく、ステンレス鋼などの鋼や鋳物などの加工にも用いることができる。
【0046】
(工具の具体例)
本発明非晶質カーボン被覆工具は、ドリル、エンドミル、エンドミル加工用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯きり工具、リーマおよびタップからなる群より選ばれた1種を含む用途に使用されると良い。
【0047】
【発明の実施の形態】
次に、本発明非晶質カーボン被覆工具について、実施例により具体的に説明する。ただし、ここで用いた製法に限られるものではなく、グラファイトを用いたPVD法で成膜されたものであれば、いずれの方法であってもよい。
【0048】
(実施例1)
基材として、φ8mmのWC基超硬合金製ドリルを用意した。この基材には(Ta,Nb)Cが1質量%と、後述する表1に示す量のCoが含有されている。その基材表面に下記のように公知の陰極アークイオンプレーティング法を用いて表1〜表4に示す本発明品の非晶質カーボン被覆ドリル試料1〜38を用意した。表1、表3において、界面層を表す化学式中のxは、金属元素1に対する非金属元素の割合を示す。
【0049】
すなわち、図1に示すように、成膜装置1内に複数個のターゲット2、3を配置し、ターゲットの中心点を中心としてターゲット間で回転する基材保持具4に超硬合金製ドリル5を装着する。電源7、8を調整して真空アークの放電電流を変え、ターゲット材料の蒸発量を制御しながら非晶質カーボンをコーティングする。
【0050】
まず、基材加熱ヒーター6を用いて100℃まで加熱させながら成膜装置1内の真空度を2×10− 3Paの雰囲気とした。ついでアルゴンガスを導入して2×10− 1Paの雰囲気に保持しながら、バイアス電源9により基材保持具4に−1000Vの電圧をかけてアルゴンプラズマ洗浄を行った後、アルゴンガスを排気した。成膜装置内へのガスの導入は供給口10より、排気は排気口11より行う。次に、成膜装置1内にアルゴンガスを100cc/minの割合で導入しながら、真空アーク放電によりグラファイトのターゲットを蒸発・イオン化させることにより超硬ドリル上に接して非晶質カーボン膜が形成される。このとき、バイアス電源9による電圧は、負の数百Vとした。非晶質カーボン膜の成膜時において基材である超硬ドリルの温度は100℃に設定した。
【0051】
ここで、サンプルによっては、非晶質カーボンの成膜に先立ち、周期律表IVa、Va、VIa族金属元素のターゲットを蒸発・イオン化させながらバイアス電源9により基材保持具4に−1000Vの電圧をかけてメタルイオンボンバードメント処理を行い、被膜の密着性を高めるための表面エッチング処理を行った。
【0052】
また、サンプルによっては、さらに炭化水素ガスを導入するか、あるいは導入しないで、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素の元素よりなる群から選ばれたターゲットを蒸発・イオン化し、バイアス電源9により基材保持具4に負の数百Vの電圧をかけて、これらの金属あるいは金属炭化物の界面層の形成を行った。界面層から非晶質カーボン膜の形成は、ターゲットや雰囲気の切り替えにより行われ、この切り替え時には、通常、わずかながらも両層の組成の混合が生じる。このことから、両層の間には、原料の混合組成層や傾斜組成層が存在していると推定される。
【0053】
また、比較のため表5、6に示す比較品1〜7のコーティングドリルも用意した。ここで、比較品4は通常のプラズマCVD成膜装置を使用して上記と同じ超硬ドリルの表面に非晶質カーボン膜を形成した。表5において、界面層を表す化学式中のxは、金属元素1に対する非金属元素の割合を示す。
【0054】
次に、上記の方法で製造した各ドリルについて、表7の条件による穴あけ試験(外部給油による湿式条件)を行い、ノンコートドリルに対するスラスト低減率(比較品26のスラスト抵抗を基準として評価する)および切刃における凝着状況を測定した。上記の各切削試験の結果を表2、4、6に示す。なお、表1、3、5において、「WCの結晶粒径」は基材焼結後のWCの平均結晶粒径を示す。また、刃先先端での膜厚は、刃先断面のSEMにより評価した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
表2、4、6の結果から、従来からのTiN膜(比較品5)、TiAlN膜(比較品6)、CVD法で形成した含有水素量35原子%の水素化非晶質カーボン膜である比較品4やその他の比較品は、スラスト抵抗がノンコートと同等でかつ耐溶着性に劣る。これに対し、本発明例のドリル(本発明品1〜38)は、非晶質カーボン被膜の水素含有量がいずれも5原子%以下であった。この水素量は、ERDA(Elastic Recoil Detection Analysis:弾性反跳粒子検出法)により評価した。そして、アルミ穴あけ加工において優れた耐摩耗性を有すると同時に、優れた耐溶着性を備えることがわかる。従って、穴開け加工後の穴加工精度も非常に高く、長寿命が可能であることがわかる。
【0063】
(実施例2)
実施例1と全く同じ方法により、φ4mmの超硬製リーマの表面に非晶質カーボン膜を被覆した(本発明品2の被膜)。この超硬基材にも(Ta,Nb)Cが1質量%と、7質量%のCoが含有され、非晶質カーボン膜の水素含有量は5原子%以下である。また、比較材としてCVD法による水素化非晶質カーボン膜(比較品4)とTiN膜(比較品5)、TiAlN膜(比較品6)を被覆した。次に、上記の方法により製造した各表面被覆リーマについて、表8の条件によるアルミダイキャスト(ADC12)の穴開け加工を行い、穴開け個数と刃先の状態を評価した。
【0064】
【表8】
【0065】
その結果、従来からの表面被覆切削リーマ(CVDの水素化非晶質カーボン膜(比較品4)とPVD法で形成した金属窒化物膜(比較品5、6))は600穴あけたところで被削材の穴径にバラツキが生じたため、リーマの状態を調べたところ、刃先に摩耗が生じ、その先端でチッピングが認められた。
【0066】
一方、本発明品2の非晶質カーボンを被覆したリーマでは9100穴あけた時点でも全く被削材の加工状況に問題がなく、リーマ刃先にも摩耗やチッピングは認められなかった。
【0067】
(実施例3)
実施例1と全く同じ方法により、φ7mmの超硬製エンドミルの表面に非晶質カーボン膜を被覆した(本発明品3の被膜)。この超硬基材にも(Ta,Nb)Cが1質量%と、7質量%のCoが含有され、非晶質カーボン膜の水素含有量は5原子%以下である。また、比較材としてCVD法による水素化非晶質カーボン膜(比較品4)とTiN膜(比較品5)、TiAlN膜(比較品6)を被覆した。次に、上記の方法により製造した各表面被覆エンドミルについて、表9の条件によるアルミダイキャスト(ADC12)のエンドミル加工を行い、被削の表面粗さの規格から外れるまでの切削長と刃先の状態を評価した。
【0068】
【表9】
【0069】
その結果、従来からの表面被覆切削エンドミルのうち、CVDの水素化非晶質カーボン膜(比較品4)は切削長さ20mで、PVD法で形成した金属窒化物膜、比較品5、6はそれぞれ切削長さ5m、6mで表面粗さの規格から外れたため、工具の寿命と判断した。寿命になった表面被覆エンドミルの先端に溶着したアルミを除去して調べたところ、既に被覆した膜は存在せず、基材のWC基超硬合金が露出していた。
【0070】
一方、本発明品3のエンドミルでは800m切削した時点でも被削材の表面粗さは規格内に維持できており、さらなる寿命延長が期待された。
【0071】
(実施例4)
実施例1と全く同じ方法により、刃先交換型超硬製チップの裏面に非晶質カーボン膜を被覆した(本発明品2の被膜)。この超硬基材にも(Ta,Nb)Cが1質量%と、6質量%のCoが含有され、非晶質カーボン膜の水素含有量は5原子%以下である。また、比較材としてCVD法による水素化非晶質カーボン膜(比較品4)とTiN膜(比較品5)、TiAlN膜(比較品6)を被覆した。次に、上記の方法により製造した各表面被覆刃先型交換型チップ1つを工具径32mmのホルダーに付けて、表10の条件によるアルミダイキャスト(A390)のエンドミル加工を行い、被削の表面粗さの規格から外れるまでの切削長と刃先の状態を評価した。
【0072】
【表10】
【0073】
その結果、従来からの表面被覆切削エンドミルのうち、CVDの水素化非晶質カーボン膜(比較品4)は切削長さ15mで、PVD法で形成した金属窒化物膜、比較品5、6はそれぞれ切削長さ4m、2mで表面粗さの規格から外れたため、工具の寿命と判断した。寿命になった表面被覆チップの先端に溶着したアルミを除去して調べたところ、既に被覆した膜は存在せず、基材のWC基超硬合金が露出していた。
【0074】
一方、本発明品2のエンドミルでは900m切削した時点で被削材の表面粗さの規格から外れたため、工具寿命と判断した。
【0075】
ここで開示された実施例は全ての点で例示的であって制限的なものでないと考えるべきである。本発明の範囲は、以上の実施例の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものであることが意図させる。
【0076】
以上、本発明の具体例について説明したが、本発明は他の形状の転削工具(ドリル、エンドミル、リーマなど)、フライス工具や旋削工具に使用される刃先交換型切削チップ、切断工具(カッター、ナイフ、スリッターなど)にも適用することができる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の被覆工具によれば、基材の組成と非晶質カーボン膜の厚みを特定することで、耐摩耗性を維持し優れた耐溶着性を得ることができ、工具の切削・耐摩寿命を著しく延長させることができる。また、この工具は、工具表面の潤滑性が高いので突発的な刃先の欠損や被削材の凝着が生じ難く、さらに熱伝導性が高いので刃先の温度上昇が少なくドライ切削や高速加工といった過酷な切削環境下でも使用できる。特に、水素を含有しない非晶質カーボン膜とすることで、一層優れた耐摩耗性と耐溶着性を得ることができる。従って、転削工具(ドリル、エンドミル、リーマなど)、フライス工具や旋削工具に使用される切削スローアウェイチップ、切断工具(カッター、ナイフ、スリッターなど)への効果的な利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明工具の被膜形成に用いる成膜装置の概略図である。
【図2】この発明工具の刃先部の断面図である。
【図3】本発明の非晶質カーボン被覆膜のラマンスペクトルである。
【図4】従来の非晶質カーボン被覆膜のラマンスペクトルである。
【符号の説明】
1 成膜装置
2、3 ターゲット
4 基材保持具
5 ドリル
6 基板加熱ヒーター
7,8 アーク電源
9 バイアス電源
10 供給口
11 排気口
20 非晶質カーボン
21 マクロパーティクル
22 グラファイト粒子
23 工具の刃先
Claims (26)
- WC基超硬合金からなる基材と、この基材上の少なくとも刃先を被覆する非晶質カーボン膜とを具える非晶質カーボン被覆工具であって、
前記基材はコバルトの含有率が12質量%以下であり、
前記非晶質カーボン膜は物理的蒸着法により形成され、
この非晶質カーボン膜中における水素量が5原子%以下であり、
この非晶質カーボン膜の刃先における最大厚みが0.05μm以上0.5μm以下で、
この非晶質カーボン膜表面に存在するマクロパーティクルの密度が 3 × 10 5 個 /mm 2 以下であることを特徴とする非晶質カーボン被覆工具。 - WC基超硬合金からなる基材と、この基材上の少なくとも刃先を被覆する非晶質カーボン膜とを具える非晶質カーボン被覆工具であって、
前記基材はコバルトの含有率が12質量%以下であり、
前記非晶質カーボン膜はグラファイトを原料として実質的に水素を含まない雰囲気下の物理的蒸着法により形成され、
この非晶質カーボン膜の刃先における最大厚みが0.05μm以上0.5μm以下で、
この非晶質カーボン膜表面に存在するマクロパーティクルの密度が 3 × 10 5 個 /mm 2 以下であることを特徴とする非晶質カーボン被覆工具。 - 前記非晶質カーボン膜は実質的に炭素のみから形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボン膜の切削に関与する刃先部での最大厚みが0.05μm以上0.25μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記基材のコバルト含有率が3質量%以上7質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記基材の焼結後の炭化タングステンの平均結晶粒径が0.1μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記基材の中に、周期律表IVa、Va、VIa族金属元素よりなる群から選択される1種以上の元素と、炭素および窒素よりなる群から選択される1種以上の元素とからなる化合物が0.01質量%以上3質量%以下含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボン膜の表面粗さRaが0.002μm以上0.05μm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボン膜の表面粗さRyが0.02μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボン膜のヌープ硬度が20GPa以上50GPa以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 514.5nmの波長を持つアルゴンイオンレーザーを用いたラマン分光分析により得られるラマンスペクトルにおいて、波数400cm− 1以上1000cm− 1以下にピークを有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 波数400cm− 1以上1000cm− 1以下に存在するピークの強度(I700)と1340cm− 1付近に存在するピークの強度(I1340)との強度比(I700/I1340)が0.02以上2.5以下であることを特徴とする請求項11に記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 波数400cm− 1以上1000cm−1以下に存在するピークの積分強度(S700)と1340cm− 1付近に存在するピークの積分強度(S1340)との強度比(S700/S1340)が0.01以上2.5以下であることを特徴とする請求項11 〜 12のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 1560cm− 1付近に存在するピークの強度(I1560)と1340cm− 1付近に存在するピークの強度(I1340)との強度比(I1340/I1560)が0.1以上1.2以下であることを特徴とする請求項11 〜 13のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 1560cm− 1付近に存在するピークの積分強度(S1560)と1340cm− 1付近に存在するピークの積分強度(S1340)との強度比(S1340/S1560)が0.3以上3以下であることを特徴とする請求項11 〜 14のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 1560cm− 1付近に存在するピークが1560cm− 1以上1580cm− 1以下に存在することを特徴とする請求項11 〜 15のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボン膜が可視光域において透明で、干渉色を示すことを特徴とする請求項1 〜 16のいずれかに記載の非晶質力一ボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボン膜が赤紫、紫、青紫、青、銀、黄、赤、緑の中から選ばれた1つ以上の干渉色を示すことを特徴とする請求項17に記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボンは基材に直接被覆されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記基材と非晶質カーボン膜との間に界面層を具え、
この界面層は、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素の元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物からなり、
界面層の厚さが0.5nm以上10nm未満であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。 - 前記界面層がTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、WおよびSiよりなる元素群から選ばれた少なくとも1種以上の元素、またはこの元素群から選ばれた少なくとも1種以上の元素の炭化物であることを特徴とする請求項20に記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記界面層と非晶質カーボン膜との間に、各被膜の組成が混合した混合組成層または組成が連続的に変化した傾斜組成層が介在することを特徴とする請求項20 または 21に記載の非晶質カーボン工具。
- 前記非晶質カーボン工具は、軟質金属材料、非鉄金属材料、有機材料、硬質粒子を含有する材料、プリント回路基板、または鉄系材料と軟質金属材料との共削り加工をするための工具であることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 前記非晶質カーボン工具は、ドリル、マイクロドリル、エンドミル、エンドミル加工用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯きり工具、リーマおよびタップからなる群より選択される1種であることを特徴とする請求項1〜23のいずれかに記載の非晶質カーボン被覆工具。
- 真空容器内にWC基超硬合金からなる基材を保持する工程と、
基材にゼロまたは負の直流バイアスを印加すると共に、実質的に水素を含まない雰囲気下で原料となるグラファイトを蒸発させて非晶質カーボン膜を形成する工程とを具え、
刃先における非晶質カーボン膜の最大厚みを0.05〜0.5μmにし、かつ同カーボン膜表面に存在するマクロパーティクルの密度を 3 × 10 5 個 /mm 2 以下に制御することを特徴とする非晶質カーボン被覆工具の製造方法。 - 前記非晶質カーボン膜を形成する工程は、陰極アークイオンプレーティングにより行われることを特徴とする請求項25に記載の非晶質カーボン被覆工具の製造方法。
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