JP6883805B2 - 硬質被膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は硬質被膜及びその製造方法に関する。
自動車等の運輸機械、建設機械及び工作機械等の種々の機械において、摺動部材が用いられている。摺動部材における摩擦は、機械の効率を低下させるだけでなく、摺動部材の摩耗を生じさせ、機械寿命を短縮する。このため、摺動部材の摩擦係数を低減して摺動特性を向上させることは、機械分野において極めて重要である。近年、摩擦係数を低減すると共に、耐摩耗性を向上させることを目的として、摺動部材の表面にダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)等の硬質被膜を形成することが注目されている。
摺動部材は潤滑剤の存在下で摺動されることが多い。近年では潤滑剤として、モリブデンジチオカーバメート等の有機モリブデン化合物を含有するものが用いられている。このような潤滑剤は、摺動部材の表面にモリブデン化合物層を形成するため、鋼材からなる摺動部材においては、摩擦を低減することができる。しかし、DLC膜が形成された摺動部材に有機モリブデン化合物が添加された潤滑剤を用いた場合、摺動部材の表面が酸化され、耐摩耗性及び耐焼き付き性を低下させてしまうという問題がある。
このような問題を解決することを目的として、酸素を含まないDLC膜の利用が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
特開2009−114311号公報
しかしながら、本願発明者らは、有機モリブデン化合物が添加された潤滑剤を用いる場合、酸素を含まないDLC膜であっても大きく摩耗してしまうという現象を見出した。また、有機モリブデン化合物が添加された潤滑剤を用いた場合にも、摩擦係数を低減すると共に摩耗量も低減できる条件を見出した。
本開示の課題は、有機モリブデン化合物を含む潤滑剤の存在下においても、低摩擦性及び耐摩耗性を示す硬質被膜を実現できるようにすることである。
本開示の硬質被膜の一態様は、母材の表面に形成された表面層を備え、表面層は、炭素−炭素結合、炭素−水素結合及び炭素−酸素結合を有する膜であり、炭素−炭素結合及び炭素−水素結合のうちsp2混成軌道を形成しているもののsp3混成軌道を形成しているものに対する比が1.4以上、1.6以下であり、膜中に含まれる水素原子の量が0.5原子%以上、5原子%以下であり、ラマン分光法によるID/IGが0.45以上、0.75以下である。
硬質被膜の一態様は、母材と表面層との間に設けられた密着層と、密着層と表面層との間に設けられ、密着層を構成する材料と表面層を構成する材料とが混合された混合層とをさらに備え、密着層は、チタンであり、混合層は、厚さが3nm以上とすることができる。
硬質被膜の一態様において、表面層は膜厚が1.0μm以上とすることができる。
硬質被膜の一態様において、表面層は硬度が35GPa以上、100GPa以下とすることができる。
本開示の摺動部材の一態様は、相対移動し得る互いに対向した一対の摺動面と、摺動面に介在し得る潤滑剤とを備え、摺動面の少なくとも一方には、本開示の硬質被膜が設けられ、潤滑剤は、有機モリブデン化合物を含んでいる。
摺動部材の一態様において、母材は、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、ステンレス鋼、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、軸受鋼、鋳鉄又は、超硬合金を使用することができ、母材はめっき処理を施したものも使用できる。また、母材が200℃程度以下といった低温で焼き戻しを施されている場合においても、コーティング後の母材硬度を維持することができる。例えば、ロックウェル硬度HRC60程度に焼入れされた機械構造用合金鋼において、成膜後の硬度をHRC58以上とすることができる。また、母材が、炭素工具鋼、合金工具鋼、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、又は軸受鋼であり、硬質被膜形成後のロックウェル硬度がHRC58以上、又は母材が、ステンレス鋼であり、硬質被膜形成後のロックウェル硬度がHRC56以上とすることもできる。
本開示の硬質被膜の製造方法の一態様は、炭素−炭素結合、炭素−水素結合及び炭素−酸素結合を有し、炭素−炭素結合及び炭素−水素結合のうちsp2混成軌道を形成しているもののsp3混成軌道を形成しているものに対する比が1.4以上 、1.6以下であり、膜中に含まれる水素原子の量が0.5原子%以上、5原子%以下である硬質被膜を母材の表面に成膜する工程を備え、成膜する工程は、母材を保持するワークホルダと、アーク放電を発生させるカソード及びアノードと、カソードの表面に固定されたターゲットからワークホルダに保持された母材まで延びる磁力線を発生させる磁力線発生源とを有する成膜チャンバを用い、ターゲットの主面と直交し、母材側に延びる方向をX方向とし、ターゲットの動径方向をr方向とし、ターゲットの中心をX=0、r=0とする座標系において、ターゲットの半径をRとした場合に、X=R、r=Rの位置における磁束密度が0.5mT以上、5mT以下で、r方向の磁力ベクトルのX方向の磁力ベクトルに対する比|X/r|が1.5以下の条件で行う。
本開示に係る硬質被膜によれば、有機モリブデン化合物を含む潤滑剤の存在下においても、低摩擦性及び耐摩耗性を容易に実現することができる。
一実施形態に係る摺動部材を示す断面図である。 成膜装置の一例を示す模式図である。 磁場分布の測定モデルを示す図である。 中間層と硬質被膜との界面の状態を示す断面図である。 実施例2のDLC膜のEPMA測定の結果である。 実施例3のDLC膜のEPMA測定の結果である。 比較例4のDLC膜のEPMA測定の結果である。 比較例5のDLC膜のEPMA測定の結果である。 実施例2及び比較例3〜7のDLC膜の表面状態の測定結果である。 (a)は実施例2の断面を示し、(b)は比較例4の断面を示す電子顕微鏡写真である。
図1は、本実施形態の摺動部材の断面構成を示している。本実施形態の摺動部材は、相対移動し得る互いに対向した摺動面101を有する。相対する摺動面101の間には、硫黄を含有するモリブデン化合物を含む潤滑剤102が存在している。
摺動面101は、母材111の表面に形成された硬質被膜112である。硬質被膜112は、炭素(C)、水素(H)及び酸素(O)を含むダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜である。本実施形態のDLC膜はsp2炭素−炭素(sp2C−C)結合、sp3炭素−炭素結合(sp3C−C)結合、sp2炭素−水素(sp2C−H)結合及びsp3炭素−水素結合(sp3C−H)を有するアモルファス膜である。また、膜に含まれる酸素の少なくとも一部は、炭素−酸素一重(C−O)結合を形成している。
本実施形態の硬質被膜は、脆くならないようにする観点から、C−C結合及びC−H結合のうち、sp2混成軌道を形成しているもののsp3混成軌道を形成しているものに対する比が1.4以上、1.6以下である。sp2混成軌道を形成している結合とは、sp2C−C結合及びsp2C−H結合であり、sp3混成軌道を形成している結合とは、sp3C−C結合及びsp3C−H結合である。
摺動部材を摺動させることにより、潤滑剤中に含まれる有機モリブデンから生成される三酸化モリブデンは還元剤として作用し、硬質被膜中の水素を引抜いて、摺動に脆弱なsp2混成軌道を形成し、摩耗が進んでしまう。従って、膜中の水素原子の量は少ない方が好ましい。具体的に、膜中に含まれる水素原子の量は5原子%以下とする。一方、膜中の水素を完全に除くことは困難であり、成膜性の観点から膜中に含まれる水素は、好ましくは0.5原子%以上、より好ましくは1.0原子%以上である。また、水素を5原子%以下としても、sp混成軌道の割合が多い場合、やはり摩耗が進んでしまう。しかし、本実施形態の硬質被膜のようにsp3混成軌道の割合を高くし、[sp2]/[sp3]を1.6以下に抑えることにより、三酸化モリブデンによる分解を抑えることができる。三酸化モリブデンによる分解を抑える観点からはsp3混成軌道の割合が高い方がよいが、脆くならないようにする観点からは、[sp2]/[sp3]を1.4以上とすることが好ましい。
本実施形態の硬質被膜は、C−O結合を含んでいる。C−O結合は成膜の際に雰囲気に混入する酸素及び水に起因して生成される。成膜の際の条件管理を容易にする観点から全炭素に占めるC−O結合のモル比は、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上である。C−O結合は意図的に導入する必要はなく、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.20以下である。
硬質被膜の原子組成は、実施例において述べるX線光電子分光分析(XPS)法により求めることができる。水素原子の量は、実施例において述べる高分解弾性反跳粒子検出(HR−ERDA)法により求めることができる。
本実施形態の硬質被膜は、このような組成を有していると共に、表面にMoDTC又はMoDTCの分解によって生じる二硫化モリブデン(MoS2)等のモリブデン化合物が吸着しやすい構造を有している。モリブデン化合物が表面に吸着することにより、大きく摩擦係数を低減することができる。
モリブデン化合物は、適度な欠陥が存在している場合に、硬質被膜に吸着しやすくなる。モリブデン化合物が吸着しやすい、適度な欠陥を有する表面の指標としては、ラマンスペクトルによる、Dバンドのピーク強度IDとGバンドのピーク強度Iとの比率ID/IGを用いることができる。具体的には、ID/IGが0.45以上、好ましくは0.50以上の場合に、モリブデン化合物が十分に吸着し、摩擦係数を低減することができる。一方、硬質被膜が脆くならないようにする観点から、ID/IGは0.75以下、好ましくは0.70以下とする。ID/IGは、実施例において述べるラマン分光法により求めることができる。
また、適度な欠陥が存在する状態は、硬質被膜の密度を指標として表すこともできる。具体的には、モリブデン化合物を十分に吸着させる観点から、密度は3.0以下が好ましく、2.8以下がより好ましく、2.6以下がさらに好ましい。一方、硬質被膜が脆くならないようにする観点から、密度は2.0以上が好ましく、2.1以上がより好ましく、2.2以上がさらに好ましい。硬質被膜の密度は、実施例において述べるX線反射率測定(XRR)法により求めることができる。
表面層の組成及び構造をこのようにすることにより、有機モリブデン化合物を添加した潤滑剤の存在下における摩擦係数及び耐摩耗性を大きく向上することができる。具体的には、摩擦係数を好ましくは0.13以下、より好ましくは0.10以下、比摩耗量を2.5×10-11mm3/N・mm以下、より好ましくは2.2×10-11mm3/N・mm以下とすることができる。なお、摩擦係数及び比摩耗量は、実施例において述べる摩擦摩耗(SRV)試験により測定することができる。
摺動部材として十分な耐久性を示すために、硬質被膜112は十分な硬度と弾性率を有していることが好ましい。具体的に、本実施形態の硬質被膜の硬度は好ましくは35GPa以上、より好ましくは40GPa以上、さらに好ましくは45GPa以上、好ましくは100GPa以下、より好ましくは90GPa以下であり、耐面圧が好ましくは1GPa以上である。また、弾性率は好ましくは250GPa以上、より好ましくは300GPa以上である。硬度及び弾性率は、実施例において詳細に説明するナノインデンテーション法により測定することができる。
硬質被膜112の厚さは、特に限定されないが、十分な耐摩耗性を得る観点から1μm以上とすることが好ましく、被膜の内部応力バランスを維持してより高い密着力を確保する観点から、4μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。硬質被膜の厚さは、実施例において述べる分光光度計を用いた方法により求めることができる。
潤滑油中における被膜の摩擦特性は、被膜の表面粗さにも影響を受ける。被膜の表面粗さはできるだけ小さい方が、摩擦特性が向上する。また、相手材を磨耗させる相手攻撃性も表面粗さが小さい方が低減できる。具体的には、被膜の表面における算術平均表面粗度Raは0.3μm以下であることが好ましい。表面粗度は、JISB0601に準拠して測定することができる。
また、母材111における硬質被膜112が形成される表面は、算術平均表面粗度Raが0.1μm以下であることが好ましい。物理気相堆積(PVD)法により形成した硬質被膜112は、緻密で平滑性の高い被膜であるため、母材111表面の表面状態が硬質被膜112の表面状態として反映されやすい。このため、母材111の表面粗度をこのような範囲とすることにより、硬質被膜112の表面における滑り性をより向上させることができる。
本実施形態の硬質被膜112を形成する際には、母材111の熱による歪み及び変形の発生を抑えるために、母材111が高温にさらされることがない条件において形成することが好ましい。具体的に、母材は、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、ステンレス鋼、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、軸受鋼、鋳鉄又は、超硬合金等とすることができる。このため、母材111の焼き戻し温度以下で硬質被膜112を形成できることが好ましい。従って、硬質被膜112は物理気相堆積(PVD)法により形成する。特に、イオン源にカソーディックアーク装置を用いるカソーディックアークイオンプレーティング(CA)法が好ましい。カソーディックアークイオンプレーティング法を用いることにより、母材を高温にさらすことなく、硬質被膜112を成膜することができ、低温で焼き戻しを施された機械構造用炭素鋼又は機械構造用合金鋼等を母材とすることが可能となる。具体的に、プロセス温度は180℃以下とすることが好ましい。
機械構造用炭素鋼又は機械構造用合金鋼等を母材111とする場合、硬質被膜112を形成した後の母材111は、熱による硬度の低下がほとんど生じないため、ロックウェル硬度(HRC)60程度に熱処理された母材の、成膜後のロックウェル硬度(HRC)は、好ましくは58以上、より好ましくは59以上とすることができる。SUS440C等のマルテンサイト系ステンレス鋼を母材111とする場合、成膜後のロックウェル硬度は、好ましくは56以上、より好ましくは57以上とすることができる。また、成膜後のロックウェル硬度の、成膜前のロックウェル硬度からの変動は、好ましくは±4%以内、より好ましくは±3%以内である。
成膜装置は、例えば図2に示すようにチャンバ201と、チャンバ201内に設けられた、カソード213と、アノード214と、ワークホルダ211とを有している。カソード213はターゲットそのものである。アノード214はカソード213の周りを囲むように設けられている。ワークホルダ211は回転テーブルであり、ワークホルダ211の上にはワーク(母材)221が載置されている。チャンバ201内にヒーターを設置し、載置したワークを任意の温度に加熱するようにすることもできる。図2においては、中間層形成用と硬質被膜形成用の2組のカソード213及びアノード214が設けられている例を示している。この場合、中間層形成用のカソード213及びアノード214と硬質被膜形成用のカソード213及びアノード214とを、ワーク221を挟んでチャンバ内の対角の位置に設けることが好ましい。
カソード213とアノード214との間にはアーク電源215が接続されており、カソード213とアノード214との間にアーク放電を発生させることができる。ワークホルダ211にはバイアス電源216が接続されており、ワーク221にバイアス電圧を印加することができる。アーク放電を発生させることにより、ターゲットを蒸発させイオン化することができる。ワーク221に印加されたバイアス電圧によりイオンを加速させてワーク221の表面に被着させることができる。
カソード213及びアノード214には磁力発生源である磁石231及び232が設けられている。磁石231及び232によりカソード213からワーク221まで延びる磁力線が形成されている。アーク放電により発生した電子(e)の一部は、磁力線に巻き付くように運動を行い、この電子がチャンバ内のガス分子と衝突することにより、チャンバ内に導入されたガスがプラズマ化する。磁力線がワーク221まで延びているため、発生したイオンを効率良くワーク221まで到達させることができる。ターゲットを炭素とし、チャンバ内にアルゴンガスを導入すれば、DLC膜を形成できる。
アーク放電はターゲットをカソードとして電子(e)を発生し、磁力線に巻き付くように運動しながら、アノードに引きつけられる。ターゲットから発生する電子の集合は、目視で発光して見られアークスポットと呼ばれるが、そのアークスポットが磁力線に巻き付くように運動する。アークスポットの運動は電流と磁束密度と磁場の長さの積(F=I×B×l)により表されるローレンツ力によるものであるが、等しい磁場であっても、ターゲットの電気抵抗率が異なると電場が異なり、運動の速度は異なる。炭素の電気抵抗率は一般に1.64×10-5Ωmであり、遷移元素のクロム(1.29×10-7Ωm)、チタン(4.27×10-7Ωm)及び銅(2.44×10-8Ωm)などと比べると高い。そして、遷移元素の銅のアークスポット運動の速度は1000mm/sec前後であるのに対し、炭素のアークスポットの速度は6mm/sec前後と遅い。動きが遅いと炭素ターゲットをイオン(荷電粒子)として蒸発させにくくなり、ドロップレット(マイクロパーティクル)と呼ばれる小さな塊としてワークへ飛ぶことが多くなる。イオンが少ないとDLC膜の密度が小さくなってしまう。ローレンツ力を高めて、アークスポットの回転を速くし、イオンの量を高めるには、電流I及び磁束密度Bのどちらかを高める必要がある。
電流Iを高めるには炭素ターゲットの電気抵抗率の低いものを使用することが重要である。電気抵抗率は1.40×10-5Ωm以下が好ましく、0.95×10-5Ωm以下がより好ましい。
また、電流Iを高めるにはカソード電流の値を高めることも有効で、5A以上とすることが好ましく、10A以上とすることがより好ましく、30A以上とすることがさらに好ましい。カソード電流が高い方が、カソードから発生したイオンを拡散させることなくワーク方向に向かわせる効果が大きく、ドロップレットの生成量に対するイオンの生成量が相対的に多くなり、被膜を占めるドロップレットの割合を抑えることができる。密度向上にはカソード電流を高くすることが有効である一方、摩擦係数を下げるためのMoDTCやMoSといった潤滑剤成分がDLC膜に吸着するような空孔を設ける観点からは、カソード電流を高くしすぎないことが好ましい。具体的には、カソード電流を75A以下とすることが好ましく、60A以下とすることがより好ましい。
磁束密度Bは、例えば以下のようにして高めることができる。図3に示すような、ターゲットの主面と直交し、ワーク側に延びる方向をX方向(垂直方向)とし、ターゲットの動径方向をr方向(水平方向)とする座標系を考える。ターゲットの中心をX=0,r=0とし、ターゲットの半径をRとし、Xのプラス側にワークがあるとする。X=R,r=Rの位置における磁束密度Bを0.5mT以上で、r方向の磁力ベクトル(r成分磁力ベクトル)のX方向の磁力ベクトル(X成分磁力ベクトル)に対するベクトル比(|X/r|)を1.5以下とすれば、DLC膜の密度を向上することができる。
DLC膜の密度を高くするために、磁束密度Bを高くすることが有効である一方、摩擦係数を下げるためのMoDTCやMoSといった潤滑剤成分がDLCに吸着する空孔を設ける観点からは、磁束密度を高くしすぎないことが好ましい。具体的には、X=R,r=Rの位置における磁束密度を5mT以下とすることがより好ましい。ターゲットの前方に電磁石のコイルを配置することにより磁束密度Bを高くすることも可能である。しかし、電磁石のコイルにより磁束密度Bを高くすると、磁束密度を5mT以下に制御することが困難となるため、永久磁石の配置により磁束密度Bを制御することが好ましい。
チャンバ内の圧力がある程度高い方がイオンの密度が上昇し、(200)結晶面の配向比/(111)結晶面の配向比が大きくなると期待される。このため、チャンバ内の圧力は、0.05Pa以上が好ましく、0.1Pa以上がより好ましい。また、3.5Pa以下が好ましく、3.0Pa以下がより好ましい。
本実施形態において、硬質被膜112を中間層113を介して母材111の表面に形成する例を示した。中間層113は、例えばチタン(Ti)層、シリコンカーバイド(SiC)層又はクロム(Cr)層等とすることができる。
中間層113は、例えば先に述べた成膜装置により形成することができる。この場合、中間層113の形成に引き続き硬質被膜112の形成を行うことができる。先に述べた成膜装置において、ターゲットをチタンとし、チャンバ内に供給するガスをアルゴンとすればTi層を形成できる。チャンバ内に供給するガスをテトラメチルシランガスとし、フィラメントから熱電子を発生させて、テトラメチルシラン分子に衝突させてイオン化し、イオンをワークへ引き込むことでSiC層を形成できる。ターゲットをクロムとし、チャンバ内にアルゴンガスを導入すれば、Cr層を形成できる。
中間層113の厚さは、硬質被膜112の密着性をより高く維持する観点から、0.01μm〜8μm程度とすることが好ましく、0.05μm〜5μm程度とすることがより好ましい。なお、中間層113は、必要に応じて設ければよく、硬質被膜112を母材111の表面に直接形成することもできる。
硬質被膜112が水素をほとんど含まないDLC膜である場合、内部応力の影響が大きく、厚くなると剥離してしまうため、通常は1μm以上の厚さにすることは困難である。しかし、中間層とDLC膜との間に、中間層とDLC膜とが混ざり合った混合層が形成されるようにすることにより、水素をほとんど含まない1μm以上の膜厚のDLC膜を形成できることを本願発明者らは見出した。具体的に、図4に示すように、中間層113をTi層とし、硬質被膜112をCA法により形成した水素をほとんど含まないDLC膜とする。この場合、中間層113と硬質被膜112との間に、十分な厚さの混合層115が形成される。
混合層115は、中間層113の膜成分と、硬質被膜112の膜成分とが混在する領域であり、中間層113及び硬質被膜112が相互に嵌入している。このような混合層115が形成されることにより、硬質被膜112と中間層113との密着性が非常に高くなる。従って、硬質被膜112を厚くしても剥離しにくくすることができる。Ti層の上にCA法によりDLC膜を形成すると、熱的に軟化した状態のTi層にカーボンイオンが衝突して成膜されるため、Ti層とDLC膜とが相互に嵌入した混合層が形成されやすくなる。混合層の厚さは密着性を向上させる観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは4nm以上である。中間層113の厚さから考えて、好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
本実施形態の硬質被膜は、有機モリブデン化合物を含む潤滑剤が存在する環境において互いに摺動する一対の摺動部材の摺動面に形成することができる。一対の摺動面のそれぞれに硬質被膜が形成されていてもよく、摺動面の一方のみに硬質被膜が形成されていてもよい。摺動面のそれぞれに硬質被膜が形成されている場合には、双方に同一組成の硬質被膜が形成されていてもよく、互いに異なる組成の硬質被膜が形成されていてもよい。また、摺動部材の摺動面以外の部分にも硬質被膜が形成されていてもよい。
本開示において、摺動部材とは摺動部分を有する機械部品を意味し、具体的には、バルブリフター、ピストンリング、ピストンピン、ピストンスカート、カムロブ、カムジャーナル、クランクシャフト、コネクティングロッド、ミッションギヤ、ミッションプライマリシャフト、ミッションセカンダリーシャフト、スプラインシャフト、フリクションプレート、セパレータープレート、クラッチハウジング、デファレンシャルギヤ、回転ベーン及びタイミングチェーン等に適用することができ、これらの2種類以上を対象としてもよい。
なお、潤滑剤が存在する環境とは、一対の摺動面の界面に単分子層以上の厚さの潤滑剤の層が存在していればよい。界面の全体に潤滑剤が存在している場合だけでなく、界面の一部に潤滑剤が存在している場合も含む。また、少なくとも界面に潤滑剤が存在していれば、摺動面を有する摺動部材の一部又は全部が潤滑剤中に浸漬されている場合も含まれる。
潤滑剤は、基油に有機モリブデン化合物を添加したものとすることができる。有機モリブデン化合物の添加量は、摩擦係数を確実に低下させる観点から、質量基準で好ましくは50ppm以上、より好ましくは200ppm以上であり、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1800ppm以下である。
有機モリブデン化合物は、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)や、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)等のイオウを含む化合物等とすることができる。中でもMoDTCやMoDTPが好ましい。
MoDTCとしては、硫化モリブデンジアルキルジチオカーバメートや硫化オキシモリブデンジアルキルジチオカーバメートが好ましい。これらの有機モリブデン化合物において、アルキル基は炭素数4〜18の分岐又は直鎖のアルキル基が好ましく、具体的にはブチル基、2−エチルヘキシル基、イソトリデシル基、ステアリル基などが好ましい。1分子中に存在するアルキル基は、同一であって異なっていてもよい。
基油は鉱物油、合成油若しくは油脂又はこれらの混合物等の潤滑油として通常使用されるものであれば、種類を問わず使用することができる。より好ましくはエステルからなる油性材を含む油が望ましい。
潤滑剤は、摩擦調節剤としての有機モリブデン化合物に加えて、通常のエンジンオイルに用いられる添加剤、例えば酸化防止剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤、防錆剤、消泡剤、油性向上剤、極圧添加剤などを含んでいてもよい。また、潤滑剤には半固体状のグリース等も含まれる。
本実施形態においては、母材が摺動部材である例を示した。しかし、本実施形態の硬質被膜は、冷間プレス等に用いる金型のコーティングとして用いることもできる。また、切削工具及び医療機器等のコーティングとして用いることもできる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更を行ってよい。
(評価方法)
−水素濃度−
DLC膜に含まれる水素の濃度は、高分解弾性反跳粒子検出法(High Resolution-Elastic Recoil Detection Analysis、HR−ERDA)により測定した。測定には神戸製鋼所製の高分解能RBS分析装置HRBS500を用いた。試料面の法線に対して70度の角度でN2 +イオンを試料に照射し、偏光磁場型エネルギー分析器により反跳された水素イオンを検出した。入射イオンは1原子核あたりのエネルギーを240KeVとした。水素イオンの散乱角は30度とした。イオンの照射量はビーム経路にて振り子を振動させ、振り子に照射された電流量を測定することにより求めた。試料電流は約2nAであり、照射量は約0.3μCであった。
得られたデータに対して水素ピークにおける高エネルギー側のエッジの中点を基準として横軸のチャネルを反跳イオンのエネルギーに変換する処理及びシステムのバックグラウンドを差し引く処理を行った。処理後のデータについてシミュレーションフィッテングを行い、表面から12nmまでの範囲について水素のデプスプロファイルを求めた。さらに、DLC膜に含まれる全原子に対する水素原子の割合(at%)に換算した。この際に試料の構成元素は炭素と水素のみであると仮定した。デプスプロファイルの横軸をnm単位に換算する際には、DLC膜の密度はグラファイトの密度(2.25g/cm3)であるとした。定量値は、スパッタリング法により形成した既知濃度のDLC膜を測定することにより校正した。また、最表面に炭化水素からなる汚染層の存在を仮定した。汚染層の密度はパラフィンの密度(0.89g/cm3)とした。
−組成解析−
DLC膜組成はX線光電子分光(XPS)測定により評価した。XPS測定には日本電子社製JPS−9010を用いた。XPS測定の条件は、試料に対する検出角度を90度とし、X線源にはAlを用い、X線照射エネルギーを100Wとした。1回の測定時間は0.2msとし、1つの試料について32回測定を行った。炭素中を進む光電子の非弾性平均自由工程を考慮すると、表面から9nmまでの範囲について測定されると考えられる。さらに、光電子は表面から深くなるにつれて脱出しにくくなり、光電子の検出は表面から深くなるほど減衰する。従って、今回測定された情報の50%は表面からおよそ1.5nmまでの最表層の情報で占められていると考えられる。
XPS測定により得られた炭素1s(C1s)ピークを、炭素同士がsp3結合したsp3C−C及び炭素同士がsp2結合したsp2C−C、炭素と水素とがsp3結合したsp3C−H及び炭素と水素とがsp2結合したsp2C−Hの4つの成分にカーブフィッティングにより分解した。sp3C−Cの結合エネルギーは283.8eV、sp2C−Cの結合エネルギーは284.3eV、sp3C−Hの結合エネルギーは284.8eV、sp2C−Hの結合エネルギーは285.3eVとし、C−O単結合エネルギーは285.9eVとした。
カーブフィッティングにより得られた各ピークの面積をC1sの全ピークの面積により割った値を、全炭素に対する各成分の組成比(モル比)とした。sp3C−Cの組成比([sp3C−C]/[C])とsp3C−Hの組成比([sp3C−H]/[C])との和をsp3混成軌道を形成している結合の存在比[sp3]とし、sp2C−Cの組成比([sp2C−C]/[C])とsp2C−Hの組成比([sp2C−H]/[C])との和をsp2混成軌道を形成している結合の存在比[sp2]とした。
−ID/IGの測定−
また、DLC膜中のグラファイト成分(G)に対する欠陥(D)の比率(I/I)はラマン分光光度計の測定により評価した。ラマン分光測定にはナノフォトン社製Raman−11を用いた。ラマン分光の測定条件はレーザー強度を0.2mW、露光時間を30秒/ショットとした。
−密度の測定−
XRR装置(リガク社製、SmartLab)を用いてDLC膜の密度を測定した。XRRの測定条件はX線発生部の対陰極にCuを用いて、出力45kV、200mAとし、走査条件として走査軸2θ/ω、走査速度0.2°/min、解析範囲を0.3°〜3.0°とした。
−物理特性−
被膜の硬度及び弾性率(ヤング率)は、ナノインデンテーション装置(Hysitron社製:TI-950 Triboindenter)により測定した。ダイヤモンドの圧子は稜線角が115°の三角錐のBerkovich型とし、ダイヤモンド圧子の押し込み加重を2600μNとして荷重−変位曲線を求め、得られた荷重−変位曲線から硬度及び弾性率を算出した。
−母材硬度−
被膜形成後の母材硬度はロックウェル試験機により測定した。ダイヤモンドの圧子は120°円錐形状であり、試験荷重は150kg(Cスケール)とした。
−膜厚−
被膜の膜厚は、分光光度計(大塚電子社製:MCPD−9800)により測定した。対象サンプル上方から光を入射させて、膜の表面で反射した光と、膜を透過して基板で反射した光の位相のずれによって起こる光干渉現象を測定した。得られた反射スペクトルと屈折率から膜厚を演算した。
−密着性−
被膜の密着性は、ロックウェル圧痕密着試験(ミツトヨ社製:HR−523)により評価した。評価条件は、Cスケール、全試験力保持時間5secとした。また、断面の状態を電子ビーム加工観察装置(日立ハイテクノロジーズ社製:NB5000)により薄膜加工し、電界放出形透過電子顕微鏡(日本電子社製:JEM−2100F)により観察し、混合層の厚さを測定した。観察時の加速電圧は200kVとし、圧力は5×10-6Paとした。
−SRV試験−
測定には摩擦磨耗試験機(OPTIMOL社製:SRV4BASIC OSCILLATION SYSTEM)を用いた。試験片の上に直径10mmのボールを置き、ボールに荷重をかけて摺動させた。ボールの材質を高炭素クロム軸受鋼鋼材(SUJ2)とした場合には、荷重を10N(ヘルツ面圧として1GPaに相当)とした。振幅1.0mm、周波数50Hzで、1800秒間摺動させた(摺動距離180m)。試験温度は120℃とした。潤滑剤は、グループIII鉱物油を基油として用いた。基油のみ及び基油に有機モリブデン化合物としてモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)を1560ppmとなるように加えたものについて評価した。
潤滑剤に有機モリブデン化合物を添加した場合について、SRV試験を行った試験片をアセトンとトルエンが混合されたスプレーを噴霧して表面を洗浄した後、表面の状態を走査型白色干渉計(zygo社製:New View5032-2)により観察した。さらに、試験後の試料を電子線マイクロアナライザ(EPMA、日本電子製、JXA-8500FS)を用いて、表面におけるモリブデン及びイオウの存在の有無を確認した。測定の際に電子線の加速電圧は15kVとし、プローブ電流は2.0×10-8Aとした。
摩擦係数及び摩耗量については、ボールの材質をタフピッチ銅(C1100)とした場合及び、アルミニウム合金(A5052)とした場合についても同様の条件で測定した。
(実施例1)
まず、その表面がRa=0.03μm程度に鏡面仕上げされたSCr420(JIS G4053、ロックウェル硬度HRC60)からなる母材を準備した。この時、母材の焼入れ温度は930℃、焼き戻し温度は180℃とした。
次に、カソーディックアークイオンプレーティング(CA)法により、DLC膜を形成した。具体的にはまず、先に述べた|X/r|が1となるようにセッティングした成膜装置のワークホルダの上に、母材を転置した。ターゲットには純チタン(JIS2種)と炭素を用いた。続いて、チャンバ内を3×10−3Paまで減圧した。続いて、ガス導入口からアルゴン(Ar)ガスを供給しつつ、熱フィラメントより発生した熱電子をアルゴンガスへ衝突させ、生成したアルゴンイオンを、ワークへ衝突させることにより、アルゴンボンイオンバードを行い、母材の表面をクリーニングした。
次に、中間層の形成を行った。まず、純チタンをアーク放電により昇華させてチタンイオンを形成し、ワークへ引き込んで、Ti層からなる中間層を形成した。続いて、炭素をアーク放電により昇華させて炭素イオンを形成し、硬質炭素被膜層を形成した。
中間層の成膜後に供給ガスをアルゴンガス(Ar)とし、硬質被膜の形成を行った。チャンバ内の圧力は0.2Paとした。得られたTi層の厚さは約0.2μmであった。
成膜の際に、ターゲットの中心からターゲットの外周部までの最短距離D1に対する、ターゲットの中心からノズルオリフィスの中心までの距離D2の比D2/D1を4とした。成膜の際のカソード電流は10Aとした。基盤電圧は−60Vであった。成膜中に排気冷却は特に行わず、プロセス温度は約140℃であった。
[sp3C−C]/[C]は0.11、[sp3C−H]/[C]は0.21、[sp2C−C]/[C]は0.27、[sp2C−H]/[C]は0.25、[C−O]/[C]は0.17であった。従って[sp3]は0.32であり、[sp2]は0.52であり、[sp2]/[sp3]は1.6であった。また、ID/IGは0.59、密度は2.5g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は39GPa、弾性率は279GPa、膜厚は1.2μmであった。DLC膜形成後の母材硬度はHRC62であった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.13及び2.4×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.092及び3.9×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がタフピッチ銅の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、有機モリブデン化合物を添加した場合0.11及び7.6×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がアルミニウム合金の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、有機モリブデン化合物を添加した場合0.094及び7.9×10-11mm3/N・mmであった。
(実施例2)
カソード電流を45Aした以外は実施例1と同様にしてDLC膜を形成した。
得られたDLC膜の水素濃度は、3.5原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.10、[sp3C−H]/[C]は0.23、[sp2C−C]/[C]は0.24、[sp2C−H]/[C]は0.28、[C−O]/[C]は0.16であった。従って[sp3]は0.33であり、[sp2]は0.52であり、[sp2]/[sp3]は1.6となった。また、ID/IGは0.61、密度は2.2g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は47GPa、弾性率は385GPa、膜厚は2.8μmであった。DLC膜形成後の母材硬度はHRC61であった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.12及び6.6×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.089及び2.0×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がタフピッチ銅の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.15及び1.1×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.098及び5.0×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がアルミニウム合金の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は、0.11及び6.7×10-11mm/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.091及び6.8×10-11mm3/N・mmであった。
図5に示すように、モリブデンとイオウとがほぼ同じ位置に存在していることが確認できた。
(実施例3)
カソード電流を60Aした以外は実施例1と同様にしてDLC膜を形成した。
得られたDLC膜の水素濃度は、4.7原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.11、[sp3C−H]/[C]は0.23、[sp2C−C]/[C]は0.22、[sp2C−H]/[C]は0.27、[C−O]/[C]は0.18であった。従って[sp3]は0.34であり、[sp2]は0.49であり、[sp2]/[sp3]は1.4となった。また、ID/IGは0.70、密度は2.4g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は50GPa、弾性率は379GPa、膜厚は3.5μmであった。DLC膜形成後の母材硬度はHRC61であった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.13及び1.0×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.096及び1.9×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がタフピッチ銅の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、有機モリブデン化合物を添加した場合0.11及び5.2×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がアルミニウム合金の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、有機モリブデン化合物を添加した場合0.092及び5.6×10-11mm3/N・mmであった。
SRV試験を行った後の試料について、EPMA測定を行ったところ、図6に示すように、モリブデンとイオウとがほぼ同じ位置に存在していることが確認できた。
(比較例1)
基盤電圧を−120Vとした以外は実施例1と同様にしてDLC膜を形成した。
得られたDLC膜の水素濃度は、3.3原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.13、[sp3C−H]/[C]は0.19、[sp2C−C]/[C]は0.26、[sp2C−H]/[C]は0.23、[C−O]/[C]は0.19であった。従って[sp3]は0.32であり、[sp2]は0.49であり、[sp2]/[sp3]は1.5となった。また、ID/IGは0.78、密度は2.4g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は21GPa、弾性率は162GPa、膜厚は3.0μmであった。DLC膜形成後の母材硬度はHRC59であった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合0.15及び1.8×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合0.10及び5.1×10-11mm3/N・mmであった。
(比較例2)
供給ガスにメタンを60sccm添加した以外は実施例1と同様にしてDLC膜を形成した。
得られたDLC膜の水素濃度は、9.1原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.13、[sp3C−H]/[C]は0.15、[sp2C−C]/[C]は0.29、[sp2C−H]/[C]は0.29、[C−O]/[C]は0.14であった。従って[sp3]は0.28であり、[sp2]は0.58であり、[sp2]/[sp3]は2.1となった。また、ID/IGは0.48、密度は2.0g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は48GPa、弾性率は327GPa、膜厚は2.7μmであった。DLC膜形成後の母材硬度はHRC60であった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合0.17及び1.2×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合0.10及び8.9×10-11mm3/N・mmであった。
(比較例3)
供給ガスにメタンを150sccm添加した以外は実施例1と同様にしてDLC膜を形成した。
得られたDLC膜の水素濃度は、11.3原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.10、[sp3C−H]/[C]は0.17、[sp2C−C]/[C]は0.28、[sp2C−H]/[C]は0.31、[C−O]/[C]は0.14であった。従って[sp3]は0.27であり、[sp2]は0.59であり、[sp2]/[sp3]は2.2となった。また、ID/IGは0.64、密度は1.6g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は31GPa、弾性率は220GPa、膜厚は0.64μmであった。DLC膜形成後の母材硬度はHRC59であった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合0.16及び2.3×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合0.10及び1.3×10-10mm3/N・mmであった。
SRV試験を行った後の試料について、EPMA測定を行ったところ、モリブデン及びイオウの存在は確認できなかった。
(比較例4)
商用の成膜サービスによりDLC膜を形成した。成膜方法はカソーディックアークイオンプレーティング法であり、中間層はクロムであった。DLC膜形成後の母材硬度はHRC56であった。
得られたDLC膜の水素濃度は、3.4原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.10、[sp3C−H]/[C]は0.24、[sp2C−C]/[C]は0.20、[sp2C−H]/[C]は0.29、[C−O]/[C]は0.18であった。従って[sp3]は0.34であり、[sp2]は0.49であり、[sp2]/[sp3]は1.4となった。また、ID/IGは0.35、密度は2.9g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は34GPa、弾性率は327GPa、膜厚は0.18μmであった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.15及び2.7×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.097及び3.6×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がタフピッチ銅の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、有機モリブデン化合物を添加した場合0.12及び7.7×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がアルミニウム合金の場合の摩擦係数は、有機モリブデン化合物を添加した場合0.12及び1.7×10-10mm3/N・mmであった。
SRV試験を行った後の試料について、EPMA測定を行ったところ、図7に示すように、イオウは存在していたが、モリブデンはほとんど存在していなかった。
(比較例5)
スパッタリング法によりDLC膜を形成した。成膜条件は、ガス導入口からアルゴン(Ar)ガスを供給しつつ、熱フィラメントより発生した熱電子をアルゴンガスへ衝突させ、生成したアルゴンイオンを、ワークへ衝突させることにより、アルゴンボンイオンバードを行い、母材の表面をクリーニングした。
次に、中間層の形成を行った。まずフィラメントから熱電子を発生させて、テトラメチルシラン分子に衝突させてイオン化し、イオンをワークへ引き込むことでSiC層を形成した。続いて、炭素原料にアルゴンイオンとメタンイオンを衝突させて、スパッタリングにより飛び出させて、ワークへ引き込み、硬質炭素被膜層を形成した。
中間層の成膜後に供給ガスをアルゴン(Ar)とし、硬質被膜の形成を行った。チャンバ内の圧力は0.5Paとした。
得られたDLC膜の水素濃度は、0.9原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.16、[sp3C−H]/[C]は0.13、[sp2C−C]/[C]は0.25、[sp2C−H]/[C]は0.25、[C−O]/[C]は0.21であった。従って[sp3]は0.29であり、[sp2]は0.50であり、[sp2]/[sp3]は1.7となった。また、ID/IGは0.89、密度は1.9g/cm3であった。
得られたDLC膜の硬度は25GPa、弾性率は181GPa、膜厚は0.9μmであった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合0.15及び2.4×10-12mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合0.095及び1.7×10-10mm3/N・mmであった。
SRV試験を行った後の試料について、EPMA測定を行ったところ、図8に示すように、イオウ及びモリブデンはほとんど存在していなかった。
(比較例6)
CVD法によりDLC膜を形成した。成膜条件は、ガス導入口からアルゴン(Ar)ガスを供給しつつ、熱フィラメントより発生した熱電子をアルゴンガスへ衝突させ、生成したアルゴンイオンを、ワークへ衝突させることにより、アルゴンボンイオンバードを行い、母材の表面をクリーニングした。チャンバ内の圧力は0.2Paとし、フィラメント電流は30Aとした。
次に、中間層の形成を行った。まずフィラメントから熱電子を発生させて、テトラメチルシラン分子に衝突させてイオン化し、イオンをワークへ引き込むことでSiC層を形成した。チャンバ内の圧力は0.2Paとし、フィラメント電流は30Aとした。続いて、ベンゼンガスに熱電子を衝突させて、メタンイオン等を生成させて、ワークへ引き込み、硬質炭素被膜層を形成した。
中間層の成膜後に供給ガスをベンゼン(C)とし、硬質被膜の形成を行った。チャンバ内の圧力は0.3Paとし、フィラメント電流は30Aとした。
得られたDLC膜の水素濃度は、14原子%であった。[sp3C−C]/[C]は0.17、[sp3C−H]/[C]は0.13、[sp2C−C]/[C]は0.35、[sp2C−H]/[C]は0.30、[C−O]/[C]は0.05であった。従って[sp3]は0.30であり、[sp2]は0.65であり、[sp2]/[sp3]は2.2となった。
得られたDLC膜の硬度は27GPa、弾性率は210GPa、膜厚は1.1μmであった。
ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合0.073及び6.7×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合0.093及び2.0×10-10mm3/N・mmであった。
(比較例7)
DLC膜を形成していない母材について、摩擦係数を測定した。ボールがSUJ2の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.17及び3.7×10-11mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.11及び5.7×10-11mm3/N・mmであった。ボールの材質がタフピッチ銅の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.16及び8.2×10-12mm3/N・mmであり、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.19及び5.4×10-10mm3/N・mmであった。ボールの材質がアルミニウム合金の場合の摩擦係数及び比摩耗量は、基油のみの場合は0.19及び6.2×10-10mm3/N・mm、有機モリブデン化合物を添加した場合は0.13及び2.7×10-10mm3/N・mmであった。
SRV試験を行った後の試料について、EPMA測定を行ったところ、モリブデン及びイオウの存在は確認できなかった。
表1及び表2に各実施例及び比較例についてまとめて示す。
Figure 0006883805
Figure 0006883805
図9には、実施例2及び比較例3〜7についてSRV試験を行った後の試料の表面を操作プローブ顕微鏡により観察した結果を示す。実施例2においては、ボールを摺動させた位置において表面に吸着している物質が認められ、表面に大きなくぼみ等は認められない。一方、比較例3〜7においては、表面に吸着している物質はほとんど認められない。特に、比較例3、5及び6においては摩耗が激しく大きなくぼみが形成されていた。これは、モリブデン及びイオウの表面への吸着の有無を示すEPMA測定の結果とよく一致している。
図10には、実施例2及び比較例4について、断面を観察した結果を示している。実施例2については中間層113と硬質被膜112との間の全体に亘って厚さが10nm〜20nm程度の混合層115が観察された。一方、比較例4においては、界面の極一部にしか混合層は認められず、その厚さも3nm未満であった。
本発明に係る硬質被膜は、容易に製造でき且つ有機モリブデン化合物を含む潤滑剤の存在下においても、低摩擦性及び耐摩耗性を示し、摺動部材等として有用である。
101 摺動面
102 潤滑剤
111 母材
112 硬質被膜
113 中間層

Claims (8)

  1. 母材の表面に形成された表面層を備え、
    前記表面層は、炭素−炭素結合、炭素−水素結合及び炭素−酸素結合を有するダイヤモンドライクカーボン膜であり、前記炭素−炭素結合及び前記炭素−水素結合のうちsp2混成軌道を形成しているもののsp3混成軌道を形成しているものに対する比が1.4以上、1.6以下であり、膜中に含まれる水素原子の量が0.5原子%以上、5原子%以下であり、ラマン分光法によるID/IGが0.45以上、0.75以下である、硬質被膜。
  2. 前記母材と前記表面層との間に設けられた密着層と、
    前記密着層と前記表面層との間に設けられ、前記密着層を構成する材料と前記表面層を構成する材料とが混合された混合層とをさらに備え、
    前記密着層は、チタンであり、
    前記混合層は、厚さが3nm以上である、請求項1に記載の硬質被膜。
  3. 前記表面層は、膜厚が1.0μm以上である、請求項1又は2に記載の硬質被膜。
  4. 前記表面層は、硬度が35GPa以上、100GPa以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬質被膜。
  5. 相対移動し得る互いに対向した一対の摺動面と、
    前記摺動面に介在し得る潤滑剤とを備え、
    前記摺動面の少なくとも一方には、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬質被膜が設けられ、
    前記潤滑剤は、有機モリブデン化合物を含んでいる、摺動部材。
  6. 前記母材は、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、ステンレス鋼、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、軸受鋼、鋳鉄、又は超硬合金である、請求項5に記載の摺動部材。
  7. 前記母材は、炭素工具鋼、合金工具鋼、機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、又は軸受鋼であり、前記硬質被膜形成後のロックウェル硬度がHRC58以上である、又は、ステンレス鋼であり、前記硬質被膜形成後のロックウェル硬度がHRC56以上である、請求項5に記載の摺動部材。
  8. 炭素−炭素結合、炭素−水素結合及び炭素−酸素結合を有し、前記炭素−炭素結合及び前記炭素−水素結合のうちsp2混成軌道を形成しているもののsp3混成軌道を形成しているものに対する比が1.4以上 、1.6以下であり、膜中に含まれる水素原子の量が0.5原子%以上、5原子%以下であり、ラマン分光法によるID/IGが0.45以上、0.75以下であるダイヤモンドライクカーボン膜を母材の表面に成膜する工程を備え、
    前記成膜する工程は、前記母材を保持するワークホルダと、アーク放電を発生させるカソード及びアノードと、前記カソードの表面に固定されたターゲットから前記ワークホルダに保持された母材まで延びる磁力線を発生させる磁力線発生源とを有する成膜チャンバを用い、
    前記ターゲットの主面と直交し、前記母材側に延びる方向をX方向とし、前記ターゲットの動径方向をr方向とし、前記ターゲットの中心をX=0、r=0とする座標系において、前記ターゲットの半径をRとした場合に、X=R、r=Rの位置における磁束密度が0.5mT以上、5mT以下で、|X/r|で表されるr方向の磁力ベクトルのX方向の磁力ベクトルに対する比が1.5以下の条件で行う、硬質被膜の製造方法。
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