JP3718330B2 - 熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、キャンとステムとよりなる容器内にサーモパイルよりなる感温素子を設けた熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
物体の温度を非接触で測定する温度測定装置の一つに、容器内にサーモパイルよりなる感温素子を設けた熱型赤外線検出器がある。この熱型赤外線検出器は、二種の熱電材料を接続した複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルよりなる感温素子を、その冷接合部をヒートシンクに熱的に接続するとともに、温接合部において測定対象である物体から輻射される赤外線を検出するもので、前記感温素子およびヒートシンクは、赤外線透過性窓を有するキャンとステムとからなる容器内に収容されている。
【0003】
そして、前記検出器に入射した赤外線は前記感温素子の受光部では全て吸収しきれずに、一部は透過しているため、前記検出器の出力は小さい。この欠点を補うために、透過赤外線を受光部に反射させる反射部を有する感温素子を設けた熱型赤外線検出器が提案されている(特開平6−137943号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように構成した従来の熱型赤外線検出器においては、感温素子の反射膜を熱電対パターンの形成とは別工程で絶縁基板であるシリコン基板に形成しており、その分工程数が増えていた。また、以下に示す問題点があった。
(1)感温素子の受光部は、例えば、金黒あるいは銀黒の蒸着膜にてSiO2 膜等の絶縁膜上に形成されており、付着強度が弱く、剥離するおそれがあった。
(2)第1熱電対パターンに対する第2熱電対パターンのマスク合わせの際に、パターン自身あるいはパターンに影響の部分に目印を作成しており、この目印を用いてマスクを合わせていたから、マスク合わせのために熟練した作業者を必要としており、歩留りが安定しないという問題があった。
(3)受光部は温接合部を覆う状態で感温素子の最上位に位置している訳であるが、温接合部は受光部の略中央領域に位置している。つまり、温接合部を前記領域に位置させるのに例えば第2熱電対パターンを受光部の中央付近まで伸ばす必要がある。このため、マスクずれによるパターン接触(第1熱電対パターンと第2熱電対パターンの接触)や、パターン作成時のパターン剥離等の原因で、歩留りが悪かった。
(4)両パターンの間隔に余裕がなく、これにより反射膜が一部覆われて好ましい反射面積を確保できなかった。よって、検出器の出力も大幅にアップしなかった。
【0005】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、出力が大で、容易にマクス合わせができ、歩留りの良いパターンを有する熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明は、二種の熱電材料を接続した複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルよりなり、熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法において、絶縁基板上に、反射膜が中央に位置する状態で一方の熱電材料で構成された第1熱電対パターンを前記反射膜と同時に形成し、続いて、前記絶縁基板上に、他方の熱電材料で構成された第2熱電対パターンを、前記反射膜とは重ならずに前記反射膜の外周領域に温接合部が位置する状態で形成し、続いて、前記両パターンで構成された前記熱電対、前記反射膜および温接合部を含む前記絶縁基板上の全面に絶縁膜を形成し、続いて、前記絶縁膜上に受光膜を、その中央領域に前記反射膜が位置する状態で、かつ、前記中央領域を除く外縁領域に前記温接合部が位置する状態で形成することを特徴とする。
【0007】
【0008】
また、この発明は別の観点から、二種の熱電材料を接続した複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルよりなり、熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法において、絶縁基板上に一方の熱電材料で構成された第1熱電対パターンを形成し、続いて、前記絶縁基板上に他方の熱電材料で構成された第2熱電対パターンを、反射膜が中央に位置する状態で、かつ、温接合部が前記反射膜とは重ならずに前記反射膜の外周領域に位置する状態で、前記反射膜と同時に形成するとともに、前記反射膜を前記他方の熱電材料と同じ材料で形成し、続いて、前記両パターンで構成された前記熱電対、前記反射膜および温接合部を含む前記絶縁基板上の全面に絶縁膜を形成し、続いて、前記絶縁膜上に受光膜を、その中央領域に前記反射膜が位置する状態で、かつ、前記中央領域を除く外縁領域に前記温接合部が位置する状態で形成することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の詳細について図を参照しながら説明する。
【0010】
図1〜図3は、この発明の一実施形態によって得られる、熱型赤外線検出器に用いられる感温素子を示し、図4、図5は熱型赤外線検出器の一例を示す。
【0011】
まず、熱型赤外線検出器の主要構成について説明する。
図4、図5において、1は下部側が開放された筒状のキャン2と、このキャン2の下方開口側を閉塞する板状のステム3とからなる容器で、両者2,3は、例えば圧接(または溶接)によって接合され、これにより容器1が封止されている。
【0012】
前記キャン2の上面中央部には、当該部分を適宜の大きさだけ矩形状に切除して形成された開口に、シリコン、ゲルマニウム等の半導体を母材とする赤外線透過性窓(第1の赤外線透過性窓)4が、前記母材の表面にコーティング膜を有する状態で、はんだa付けすることにより形成されている。そして、半導体を母材としているので、電気伝導性ならびに熱伝導性が良好である。なお、5はキャン2の開放下端部に形成される鍔部である。
【0013】
前記ステム3には、2本の信号取り出し用のリードピン6が貫設され、その貫通部7はリードピン6とステム3とを電気的に絶縁するためにガラス溶着が施されている。bはそのガラス溶着部である。また、8はステム3に適宜の手法で固着されるアース用リードピンである。
【0014】
9は感温素子で、二種の熱電材料10,11を接続した複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルよりなり、絶縁基板12上に、冷接合部13が外側に、温接合部14が内側にそれぞれ位置するように環状に形成されてなるものである。15a,15bは信号取り出し用のコンタクトホール(図1参照)で、リードピン6に接続される。この感温素子9の詳細については、図1〜図3を用いて後述する。
【0015】
16は前記感温素子9を保持する下側のヒートシンクで、ステム3の上方にリードピン6を介して設置されている。そして、このヒートシンク16の上部平面部19上に、絶縁基板12上に形成された感温素子9が穴16aを覆う状態で載置される。なお、下側のヒートシンク16は、第1の赤外線透過性窓4と同等以上の熱伝導性の良好な材料で構成されるのが好ましく、銅以外に例えばシリコン等の材料を挙げることができる。
【0016】
20は、前記第1の赤外線透過性窓4を透過した赤外線を透過させる第2の赤外線透過性窓で、シリコン、ゲルマニウム等の半導体を母材とし、この母材の両面に波長選択性多層膜を形成して構成されている。これにより、第2の赤外線透過性窓20を特定波長の赤外光のみが透過する。第2の赤外線透過性窓20は、例えば、8μmカットオンフィルタである。しかも、半導体を母材としているので、電気伝導性ならびに熱伝導性が良好である。
【0017】
21は前記第2の赤外線透過性窓20を前記第1の赤外線透過性窓4に臨むようにして保持する上側のヒートシンクで、ドーナツ状に形成されている。この上側のヒートシンク21も前記第1および第2の赤外線透過性窓4,20と同等以上の熱伝導性の良好な材料で構成されるのが好ましい。しかも、第2の赤外線透過性窓20は上側のヒートシンク21の上面cに熱伝導性に優れた接着剤によって固着されている。
【0018】
そして、感温素子9は、上下2つのヒートシンク21,16に挟まれた状態で冷接合部13を両ヒートシンク21,16と熱的に結合するようにして配置されている。
【0019】
以下、感温素子9について詳述する。
図1、図2において、感温素子9は、上述したように、二種の熱電材料10,11を接続した複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルよりなり、例えばポリエチレン系樹脂のような有機フィルム材料やシリコン・ゲルマニウム等の半導体材料(シリコン系材料が好ましい)等よりなる薄い円板状の絶縁基板(径をr0 で示す)12上に、冷接合部13が外側に、温接合部14が内側にそれぞれ位置するように環状に形成されてなるものである。
【0020】
そして、感温素子9の中央には、平面視円形の受光部A(径をr1 で示す)が設けられ、受光部Aの中央領域R1 には平面視円形の反射部B(径をr2 で示す:r1 >r2 )が受光部Aとは同心的に設けられている。ここで、受光部Aの中央領域R1 とは、反射部Bの径r2 と同径の大きさを有する平面視円形領域のことである。
【0021】
一方、受光部Aの中央領域R1 を除く外縁領域R2 に温接合部14が設けられている。ここで、受光部Aの外縁領域R2 とは、幅L〔=(r1 −r2 )/2〕を有する環状形状に対応する領域のことである。
【0022】
また、反射部Bには、マスク合わせのための目印30が形成されている。すなわち、一方の熱電材料10で構成された第1熱電対パターン31〔図3(A)参照〕を形成した後に、他方の熱電材料11で構成された第2熱電対パターン32〔図3(B)参照〕を形成する訳であるが、この場合に、第1熱電対パターン31に対する第2熱電対パターン32のマスク合わせのために用いられるのが前記目印30である。
【0023】
そして、この実施形態では、上側のヒートシンク21の穴22の径Dが、感温素子9の受光部Aの径r1 の1.5倍以下に設定されている。また、両パターン31,32、反射膜33および温接合部14・冷接合部13を含む絶縁基板12が絶縁膜34によって覆われている。
【0024】
而して、感温素子9を形成するには、まず、図3(A)に示すように、絶縁基板12上に、熱電材料10で構成された第1熱電対パターン31を形成する。この熱電材料10としては、アンチモン系の材料が好ましい。
【0025】
この場合、第1熱電対パターン31は感温素子9の中央部に反射膜33を含む。すなわち、同時に形成された反射膜33を反射部Bとする。この反射膜33は絶縁基板12上の中央に位置する。しかも、反射膜33は一部に目印30を有する。つまり、この発明では、熱電材料10をフォトリソグラフィにてパターンニングして反射膜33も同時に形成するとともに、この反射膜33の一部に目印30も形成する。よって、従来熱電対パターンの形成とは別工程で反射膜を形成する場合に比して、工程数が低減される分安価になる。そして、この実施形態では目印30を反射膜33の中央に設けている。この反射膜33は、熱電材料10と同じ材料であることは勿論である。
【0026】
続いて、図3(B)に示すように、絶縁基板12上に、熱電材料11で構成された第2熱電対パターン32を形成する。この熱電材料11としては、ビスマス系の材料が好ましい。
【0027】
これにより、冷接合部13が外側に、温接合部14が内側にそれぞれ環状に位置することになる。この場合、反射膜33の一部に目印30を付けて熱電材料11をフォトリソグラフィにてパターンニングしたので、マスク合わせに熟練した技術が不要となり、歩留りが安定する。そして、以上のフォトリソグラフィ工程に使用するレジストはネガ型、ポジ型を問わない。
【0028】
また、図2からも明らかなように、温接合部14を受光部Aの中央領域R1 ではなく外縁領域R2 に形成すべく熱電材料10,11のパターンニングを行ったので、温接合部を受光部の外縁領域ではなく略中央領域に位置させた従来パターンに比して、パターン31,32の間隔に余裕ができ、また、中央領域R1 にまで熱電材料10,11のパターンニングをしなくて良いため、パターン31,32の接触や剥離が従来に比して大幅に減少して、歩留りを向上できる。
【0029】
続いて、図3(C)に示すように、パターン31,32にそれぞれコンタクトホール15a,15bを形成するとともに、両パターン31,32、前記反射膜33および温接合部14・冷接合部13を含む絶縁基板12上の全面に絶縁膜34を形成する。この絶縁膜34の形成には、ポリイミド系あるいはSiO2 等の材料を用いる。
【0030】
最後に、図3(D)に示すように、前記絶縁膜34上に受光膜35で構成される受光部Aを形成する。すなわち、カーボンを含有したネガレジスト膜を形成し、これを任意の形状にフォトリソグラフィにてパターニングして受光膜35を形成する。この場合、反射膜33直上に受光膜35の中央部が位置するように、かつ、温接合部13直上に受光膜35の外縁部が位置するようにパターンニングされる。
【0031】
このように、受光膜35の外縁部の直下のみに温接合部14を配置するとともに、受光膜35の中央部の直下のみに反射膜33を配置して受光膜35を透過した透過赤外線を反射膜33で反射させるように構成したものであり、パターン31,32の間隔に余裕ができるので、従来に比して、略100%に近い反射面積を確保できる。よって、検出器の出力も大幅にアップする。
【0032】
また、ネガレジストにカーボン粉末を混入し、フォトリソグラフィにてパターニングした受光膜35で受光部Aを構成したので、従来に比して、付着強度を大にでき、剥離することもなく、信頼性を向上できる。
【0033】
更に、熱電材料10,11、ネガレジスト膜をフォトリソグラフィにてパターンニングしてパターン31,32、冷接合部13、温接合部14、反射膜33、絶縁膜34、受光膜35を形成したので、従来に比して、片面薄膜構造となる上、工程数の低減、歩留り向上が可能になった。
【0034】
なお、この発明では、熱電材料11をフォトリソグラフィにてパターンニングして感温素子中央部の反射膜を第2熱電対パターン32と同時形成するようにしてもよい。
【0035】
また、受光膜形成のために使用するレジストもネガ型の他にポジ型のレジストでもよい。更に、熱電材料10,11として、アンチモン系の材料とビスマス系の材料を組み合わせたものを示したがその他の熱電対材料を用いてもよい。
【0036】
【発明の効果】
この発明は、以上のような形態で実施され、以下のような効果を奏する。
【0037】
この発明では、受光部の中央領域に反射部を設ける一方、受光部の中央領域を除く外縁領域に温接合部を設けることによって、パターンの間隔に余裕ができ、また、中央領域にまで熱電材料のパターンニングをしなくて良いため、パターンの接触や剥離が従来に比して大幅に減少して、歩留りを向上できる。
【0038】
パターンの間隔に余裕ができるので、従来に比して、略100%に近い反射面積を確保できる。よって、検出器の出力も大幅にアップする。
【0039】
反射膜をパターンと同時にパターンニングするパターンを用いることができ、これにより、工程数を低減でき、安価な熱型赤外線検出器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態によって得られる感温素子の全体構成説明図である。
【図2】 図1におけるA−A’線の切断面の側からみた感温素子の構成説明図である。
【図3】 この発明の一実施形態における感温素子の製造方法を説明するための図である。
【図4】 上記実施形態によって得られる感温素子を具備した熱型赤外線検出器の全体構成説明図である。
【図5】 上記実施形態によって得られる感温素子を具備した熱型赤外線検出器の分解斜視図である。
【符号の説明】
1…容器、2…キャン、3…ステム、4…赤外線透過性窓、9…感温素子、10,11…熱電材料、14…温接合部、12…絶縁基板、30…目印、31…第1熱電対パターン、32…第2熱電対パターン、33…反射膜、34…絶縁膜、35…受光膜、R1 …受光部の中央領域、R2 …受光部の外縁領域、A…受光部、B…反射部。
Claims (5)
- 二種の熱電材料を接続した複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルよりなり、熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法において、絶縁基板上に、反射膜が中央に位置する状態で一方の熱電材料で構成された第1熱電対パターンを前記反射膜と同時に形成するとともに、前記反射膜を前記一方の熱電材料と同じ材料で形成し、続いて、前記絶縁基板上に、他方の熱電材料で構成された第2熱電対パターンを、前記反射膜とは重ならずに前記反射膜の外周領域に温接合部が位置する状態で形成し、続いて、前記両パターンで構成された前記熱電対、前記反射膜および温接合部を含む前記絶縁基板上の全面に絶縁膜を形成し、続いて、前記絶縁膜上に受光膜を、その中央領域に前記反射膜が位置する状態で、かつ、前記中央領域を除く外縁領域に前記温接合部が位置する状態で形成することを特徴とする熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法。
- 二種の熱電材料としてアンチモン系の材料、ビスマス系の材料を用いている請求項1に記載の熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法。
- 前記受光膜が、前記絶縁膜上にカーボンを含有したネガレジスト膜を形成し、これを任意の形状にパターニングして形成されている請求項1または請求項2に記載の熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法。
- 前記反射膜には、前記第1熱電対パターンに対する前記第2熱電対パターンのマスク合わせのための目印が形成されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法。
- 二種の熱電材料を接続した複数の熱電対を直列に接続したサーモパイルよりなり、熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法において、絶縁基板上に一方の熱電材料で構成された第1熱電対パターンを形成し、続いて、前記絶縁基板上に他方の熱電材料で構成された第2熱電対パターンを、反射膜が中央に位置する状態で、かつ、温接合部が前記反射膜とは重ならずに前記反射膜の外周領域に位置する状態で、前記反射膜と同時に形成するとともに、前記反射膜を前記他方の熱電材料と同じ材料で形成し、続いて、前記両パターンで構成された前記熱電対、前記反射膜および温接合部を含む前記絶縁基板上の全面に絶縁膜を形成し、続いて、前記絶縁膜上に受光膜を、その中央領域に前記反射膜が位置する状態で、かつ、前記中央領域を除く外縁領域に前記温接合部が位置する状態で形成することを特徴とする熱型赤外線検出器に用いられる感温素子の製造方法。
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