JP3717783B2 - リチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、リチウムの吸蔵,放出が可能なリチウム含有金属酸化物を含む正極材料を有する正極と、リチウムの吸蔵,放出が可能な負極材料を有する負極と、非水電解液とを備えたリチウム二次電池に係り、特に、その正極及び非水電解液を改善して、リチウム二次電池における保存特性を向上させるようにした点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器等の様々な分野において二次電池が用いられており、特に、高出力,高エネルギー密度の新型電池の一つとして、リチウムの酸化,還元を利用した高起電力のリチウム二次電池が利用されるようになった。
【0003】
そして、このようなリチウム二次電池においては、その正極における正極材料に、従来よりリチウムの吸蔵,放出が可能な様々なリチウム含有金属酸化物が使用されていた。
【0004】
ここで、このようなリチウム二次電池を充放電させたり、充電状態で保存した場合において、正極におけるリチウム含有金属酸化物から溶出したアルカリが正極における結着剤等と反応して、正極材料と集電体との密着性等が低下し、リチウム二次電池における保存特性が悪くなるという問題があった。
【0005】
また、従来においては、上記のようなリチウム二次電池における充放電サイクル特性等を向上させるため、特許第2938430号公報に示されるように、正極と負極との少なくとも一方に不飽和カルボン酸のリチウム塩を含有させるようにしたリチウム二次電池や、特開平8−162154号公報に示されるように、非水電解液の溶媒にマロン酸ジメチルを用いるようにしたリチウム二次電池が提案されている。
【0006】
しかし、このように正極と負極との少なくとも一方に不飽和カルボン酸のリチウム塩を含有させたリチウム二次電池や、非水電解液の溶媒にマロン酸ジメチルを用いたリチウム二次電池においても、依然として、リチウム二次電池における保存特性を十分に向上させることはできなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、リチウムの吸蔵,放出が可能なリチウム含有金属酸化物を含む正極材料を有する正極と、リチウムの吸蔵,放出が可能な負極材料を有する負極と、非水電解液とを備えたリチウム二次電池における上記のような問題を解決することを課題とするものであり、リチウム二次電池を充放電させたり、充電状態で保存した場合において、正極におけるリチウム含有金属酸化物から溶出したアルカリが、正極における結着剤等と反応するのを抑制し、保存特性に優れたリチウム二次電池が得られるようにすることを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明におけるリチウム二次電池においては、上記のような課題を解決するため、リチウムの吸蔵,放出が可能なリチウム含有金属酸化物を含む正極材料を有する正極と、リチウムの吸蔵,放出が可能な負極材料を有する負極と、非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、上記の正極と非水電解液とに、それぞれ不飽和カルボン酸を添加させるようにしたのである。
【0009】
そして、この発明におけるリチウム二次電池のように、正極と非水電解液とにそれぞれ不飽和カルボン酸を添加させると、このリチウム二次電池を充放電させたり、充電状態で保存した場合において、正極におけるリチウム含有金属酸化物から溶出したアルカリが、正極と非水電解液とに添加された不飽和カルボン酸によって中和されるようになり、従来のように溶出したアルカリが正極における結着剤等と反応して正極材料と集電体との密着性等が低下するのが抑制され、リチウム二次電池における保存特性が向上する。
【0010】
ここで、上記の不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0011】
そして、上記のように不飽和カルボン酸を正極と非水電解液とにそれぞれ添加させるにあたり、不飽和カルボン酸の添加量が少ないと、正極におけるリチウム含有金属酸化物から溶出したアルカリが十分に中和されなくなり、溶出したアルカリが正極における結着剤等と反応して、リチウム二次電池における保存特性が低下する一方、不飽和カルボン酸の添加量が多くなり過ぎると、この不飽和カルボン酸が正極におけるリチウム含有金属酸化物と反応して、リチウム二次電池における保存特性が低下する。このため、正極に添加させる不飽和カルボン酸の量を、正極におけるリチウム含有金属酸化物の重量に対して0.01重量%〜2.0重量%の範囲、非水電解液に添加させる不飽和カルボン酸の量を、非水電解液の重量に対して0.02重量%〜0.5重量%の範囲にすることが好ましい。
【0012】
ここで、この発明におけるリチウム二次電池において、その正極に用いる上記のリチウム含有金属酸化物としては、例えば、LiNiO2 、LiCoO2 、LiMn2 O4 、LiNix Coy O2 (但し、x+y=1、0<x<1の条件を満たす。)、LiNia Cob Mc O2 (式中、Mは、Mn,Fe,Zn,Ti,Cr,Mg,Al,Cu,Gaから選択される元素である。)等を用いることができる。
【0013】
また、この発明におけるリチウム二次電池において、上記の非水電解液としては、有機溶媒に溶質を溶解させた従来より一般に使用されているものを用いることができる。
【0014】
そして、非水電解液に用いる有機溶媒としては、従来より使用されている公知のものを用いることができ、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート等を用いることができ、特に、上記の環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を用いることが好ましい。
【0015】
また、この非水電解液において、上記の有機溶媒に溶解させる溶質としても、公知のものを用いることができ、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiSbF6 、LiCF3 SO3 、LiAsF6 、LiN(CF3 SO2 )2 、LiOSO2 (CF2 )3 CF3 等のリチウム化合物を使用することができる。
【0016】
また、この発明における非水電解質電池において、その負極に用いるリチウムの吸蔵,放出が可能な負極材料としても、従来より使用されている公知のものを用いることができ、例えば、金属リチウム、Li−Al,Li−In,Li−Sn,Li−Pb,Li−Bi,Li−Ga,Li−Sr,Li−Si,Li−Zn,Li−Cd,Li−Ca,Li−Ba等のリチウム合金、リチウムイオンの吸蔵,放出が可能な黒鉛,コークス,有機物焼成体等の炭素材料等を使用することができる。
【0017】
【実施例】
以下、この発明に係るリチウム二次電池を実施例を挙げて具体的に説明すると共に、この発明の実施例におけるリチウム二次電池においては、保存特性が向上することを比較例を挙げて明らかにする。なお、この発明に係るリチウム二次電池は、下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができるものである。
【0018】
(実施例1)
実施例1においては、正極1と負極2とを下記のようにして作製すると共に、非水電解液を下記のようにして調製し、図1に示すような扁平なコイン型のリチウム二次電池を作製した。
【0019】
[正極の作製]
正極を作製するにあたっては、正極活物質としてLiCoO2 粉末を用い、下記の表1に示すように、このLiCoO2 粉末に対して不飽和カルボン酸としてマレイン酸を0.05重量%加えると共に、導電剤である炭素粉末を加え、さらにN−メチル−2−ピロリドン液に結着剤であるポリフッ化ビニリデンを溶解させた溶液を加え、上記のLiCoO2 粉末と導電剤の炭素材料と結着剤のポリフッ化ビニリデンとが90:5:5の重量比になったスラリーを調製し、このスラリーを、アルミニウム箔からなる正極集電体の片面にドクターブレード法により塗布し、これを圧延させた後、直径20mmの円板状に打ち抜いて正極を作製した。
【0020】
[負極の作製]
負極を作製するにあたっては、負極活物質として天然黒鉛粉末を用い、この天然黒鉛粉末と結着剤であるポリフッ化ビニリデンとを90:10の重量比になるように混合し、この混合物にN−メチル−2−ピロリドン液を加えてスラリーを調製し、このスラリーを銅箔からなる負極集電体の片面にドクターブレード法により塗布し、これを圧延させた後、直径22mmの円板状に打ち抜いて負極を作製した。
【0021】
[非水電解液の調製]
非水電解液を調製するにあたっては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1の体積比で混合した混合溶媒にLiPF6 を1mol/lの割合で溶解させた非水電解液に対して、下記の表1に示すように、不飽和カルボン酸としてマレイン酸を0.2重量%の割合で添加させた。
【0022】
[電池の作製]
電池を作製するにあたっては、図1に示すように、上記のようにして作製した正極1と負極2との間に、上記の非水電解液を含浸させたポリプロピレン製の微多孔膜からなるセパレータ3を介在させ、これらを正極缶4aと負極缶4bとで形成される電池ケース4内に収容させ、上記の正極集電体5を介して正極1を正極缶4aに接続させる一方、上記の負極集電体6を介して負極2を負極缶4bに接続させ、この正極缶4aと負極缶4bとをポリプロピレン製の絶縁パッキン7によって電気的に絶縁させて、直径が24mm、厚さが3.0mmになった扁平なコイン型のリチウム二次電池を得た。
【0023】
(実施例2,3)
実施例2,3においては、上記の実施例1における正極の作製及び非水電解液の調製において、不飽和カルボン酸として用いたマレイン酸に代えて、下記の表1に示すように、実施例2では不飽和カルボン酸としてフマル酸を、実施例3では不飽和カルボン酸としてフタル酸を用いるようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例2,3の各リチウム二次電池を作製した。
【0024】
(比較例1)
比較例1においては、下記の表1に示すように、上記の実施例1における正極の作製において、LiCoO2 粉末に対して不飽和カルボン酸であるマレイン酸を加えないようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1のリチウム二次電池を作製した。
【0025】
(比較例2)
比較例2においては、下記の表1に示すように、上記の実施例1における非水電解液の調製において、上記の非水電解液に対して不飽和カルボン酸であるマレイン酸を加えないようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例2のリチウム二次電池を作製した。
【0026】
(比較例3)
比較例3においては、下記の表1に示すように、上記の実施例1における正極の作製において、LiCoO2 粉末に対して不飽和カルボン酸であるマレイン酸を加えないようにすると共に、非水電解液の調製においても、上記の非水電解液に対して不飽和カルボン酸であるマレイン酸を加えないようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例3のリチウム二次電池を作製した。
【0027】
(比較例4)
比較例4においては、下記の表1に示すように、上記の実施例1における正極の作製において、LiCoO2 粉末に対して不飽和カルボン酸のリチウム塩であるマレイン酸リチウムを1重量%加えるようにすると共に、非水電解液の調製において、上記の非水電解液に対して不飽和カルボン酸であるマレイン酸を加えないようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例4のリチウム二次電池を作製した。
【0028】
(比較例5)
比較例5においては、下記の表1に示すように、上記の実施例1における正極の作製において、LiCoO2 粉末に対して不飽和カルボン酸であるマレイン酸を加えないようにすると共に、非水電解液の調製において、不飽和カルボン酸であるマレイン酸を加えないようにし、その溶媒にマロン酸ジメチルを用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例5のリチウム二次電池を作製した。
【0029】
次に、上記のようにして作製した実施例1〜3及び比較例1〜5の各リチウム二次電池を、25℃の雰囲気中においてそれぞれ充電電流0.8mAで充電終止電圧4.2Vまで充電した後、放電電流0.8mAで放電終止電圧3.0Vまで放電させて、各リチウム二次電池における保存前の放電容量Q0を測定した。
【0030】
その後、上記の各リチウム二次電池を上記のように25℃の雰囲気中においてそれぞれ充電電流0.8mAで充電終止電圧4.2Vまで充電した後、60℃の雰囲気中において2週間保存し、その後、各リチウム二次電池を25℃の雰囲気中に戻し、放電電流0.8mAで放電終止電圧3.0Vまで放電させて、各リチウム二次電池における保存後の放電容量Q1を測定し、下記の式に基づいて、各リチウム二次電池における自己放電率(%)を求め、その結果を下記の表1に示した。
【0031】
自己放電率(%)=(1−Q1/Q0)×100
【0032】
【表1】
【0033】
この結果から明らかなように、正極と非水電解液とにそれぞれ不飽和カルボン酸を添加させた実施例1〜3の各リチウム二次電池は、正極と非水電解液との何れか一方にだけ不飽和カルボン酸を添加させた比較例1,2のリチウム二次電池や、正極と非水電解液との何れにも不飽和カルボン酸を添加させなかった比較例3のリチウム二次電池や、正極にだけ不飽和カルボン酸のリチウム塩であるマレイン酸リチウムを添加させた比較例4のリチウム二次電池や、正極や非水電解液に不飽和カルボン酸を添加させずに、非水電解液の溶媒にマロン酸ジメチルを用いた比較例5のリチウム二次電池に比べて、自己放電率が大きく低下しており、保存特性が向上していた。
【0034】
(実施例1・1〜1・9)
実施例1・1〜1・9においては、上記の実施例1における正極の作製において、上記のLiCoO2 粉末に対して添加させるマレイン酸の量だけを変更し、下記の表2に示すように、LiCoO2 粉末に対するマレイン酸の量を、実施例1・1では0.008重量%に、実施例1・2では0.01重量%に、実施例1・3では0.03重量%に、実施例1・4では0.1重量%に、実施例1・5では0.5重量%に、実施例1・6では1.0重量%に、実施例1・7では1.5重量%に、実施例1・8では2.0重量%に、実施例1・9では2.2重量%にし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例1・1〜1・9の各リチウム二次電池を作製した。
【0035】
次いで、このようにして作製した実施例1・1〜1・9の各リチウム二次電池についても、上記の実施例1のリチウム二次電池の場合と同様にして、自己放電率(%)を求め、その結果を下記の表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
この結果から明らかなように、正極の作製において、LiCoO2 粉末に対して添加させるマレイン酸の量を0.01重量%〜2.0重量%の範囲にした実施例1,1・2〜1・8の各リチウム二次電池は、LiCoO2 粉末に対して添加させるマレイン酸の量が0.008重量%になった実施例1・1のリチウム二次電池や、LiCoO2 粉末に対して添加させるマレイン酸の量が2.2重量%になった実施例1・9のリチウム二次電池に比べて自己放電率が低く、保存特性がさらに向上していた。
【0038】
(実施例1・10〜1・15)
実施例1・10〜1・15においては、上記の実施例1における非水電解液の調製において、非水電解液に対して添加させるマレイン酸の量だけを変更し、下記の表3に示すように、非水電解液に対するマレイン酸の量を、実施例1・10では0.01重量%に、実施例1・11では0.02重量%に、実施例1・12では0.05重量%に、実施例1・13では0.1重量%に、実施例1・14では0.5重量%に、実施例1・15では0.8重量%にし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例1・10〜1・15の各リチウム二次電池を作製した。
【0039】
次いで、このようにして作製した実施例1・10〜1・15の各リチウム二次電池についても、上記の実施例1のリチウム二次電池の場合と同様にして、自己放電率(%)を求め、その結果を下記の表3に示した。
【0040】
【表3】
【0041】
この結果から明らかなように、非水電解液の調製において、非水電解液に対して添加させるマレイン酸の量を0.02重量%〜0.5重量%の範囲にした実施例1,1・11〜1・14の各リチウム二次電池は、非水電解液に対して添加させるマレイン酸の量が0.01重量%になった実施例1・10のリチウム二次電池や、非水電解液に対して添加させるマレイン酸の量が0.8重量%になった実施例1・15のリチウム二次電池に比べて自己放電率が低く、保存特性がさらに向上していた。
【0042】
なお、上記の実施例1・1〜1・15においては、不飽和カルボン酸としてマレイン酸を用いた場合を示したが、不飽和カルボン酸として、実施例2に示すフマル酸や、実施例3に示すフタル酸を用いた場合においても、同様の結果が得られる。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明におけるリチウム二次電池においては、正極と非水電解液とにそれぞれ不飽和カルボン酸を添加させるようにしたため、このリチウム二次電池を充放電させたり、充電状態で保存した場合において、正極におけるリチウム含有金属酸化物から溶出したアルカリが、正極と非水電解液とに添加された不飽和カルボン酸によって中和されるようになり、アルカリが正極における結着剤等と反応して、正極材料と集電体との密着性等が低下するのが抑制され、リチウム二次電池における保存特性が大きく向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例及び比較例において作製したリチウム二次電池の内部構造を示した断面説明図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
Claims (4)
- リチウムの吸蔵,放出が可能なリチウム含有金属酸化物を含む正極材料を有する正極と、リチウムの吸蔵,放出が可能な負極材料を有する負極と、非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、上記の正極と非水電解液とに、それぞれ不飽和カルボン酸を添加させたことを特徴とするリチウム二次電池。
- 請求項1に記載したリチウム二次電池において、上記の不飽和カルボン酸が、マレイン酸、フマル酸、フタル酸から選択される少なくとも1種であることを特徴とするリチウム二次電池。
- 請求項1又は2に記載したリチウム二次電池において、上記の正極に添加させる不飽和カルボン酸の量が、正極におけるリチウム含有金属酸化物の重量に対して0.01重量%〜2.0重量%の範囲であることを特徴とするリチウム二次電池。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載したリチウム二次電池において、上記の非水電解液に添加させる不飽和カルボン酸の量が、非水電解液の重量に対して0.02重量%〜0.5重量%の範囲であることを特徴とするリチウム二次電池。
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