JP3717315B2 - ディーゼルエンジン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、 噴射装置に付設される燃料供給システムを有し、燃料供給システムが、少なくとも一つの加熱装置及び付設されている噴射装置用の接続部を備えた少なくとも一つの循環装置を有し、循環装置に水と燃料とから成るエマルジョンを供給可能であり、エマルジョンが、正常作動時において、上流側に配置される供給ポンプ装置により発生可能な供給圧を有しているディーゼルエンジン、特に二サイクル大型ディーゼルエンジンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料に水を添加すると、重油を使用している場合も厳しいNOX制限値を容易に厳守できるが、粘性が高くなる。この粘性の増大は、温度が比較的急激に上昇することにより抑えられる。この場合蒸発を回避するためには、したがって噴射ポンプのキャビテーションを回避するためには、水と燃料から成るエマルジョンの温度がさらに上昇して100゜Cになったときにエマルジョンから水が蒸発しない程度の供給圧が必要である。この供給圧は、公知の装置の場合供給ポンプ装置が作動している限りは保証されている。しかしながらブラックアウト状態においては、供給ポンプ装置によって生じる供給圧が低下する。その結果、燃料エマルジョンから水が蒸発し、エマルジョンはその諸成分のなかに溶解する。その際比較的大きな水滴が発生し、粘性が高くなるので、エンジンを再始動しようとすると噴射が不可能になる。したがって、燃料供給システムを少なくとも部分的に空にする必要がある。これは面倒であり、望ましいものではない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の点を鑑みて、供給ポンプ装置が故障した場合でも燃料と水から成るエマルジョンの溶解が阻止されるように冒頭で述べた種類の装置を簡潔で低コストの手段を用いて改良することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この課題は、本発明によれば、 供給ポンプ装置が故障したときに、少なくとも、 噴射装置に連通している循環装置の往路枝管に、水が燃料・水エマルジョンから蒸発するのを阻止するような安全圧を生じさせる安全装置が循環装置に付設されていることにより解決される。
【0005】
この手段により、冒頭で述べた欠点が完全に解消される。燃料エマルジョンはブラックアウト状態においても加圧状態にあるので、蒸気は発生しない。むしろエマルジョンは不変に維持され、その結果ブラックアウト状態の終了後燃料供給システム内には所望の粘性が存在し、エンジンを迅速且つ確実に再始動させることができる。燃料システムを空にさせる必要がないので有利である。このため再始動過程が容易になり加速するので、経済性に有利に影響し、特に船舶の駆動装置として使用されるエンジンの場合には安全性の向上にも貢献する。
【0006】
上記の手段の有利な構成および合目的な構成は従属項に記載されている。即ち安全装置は、燃料供給システムに備えられ好ましくは循環装置の往路枝管に配置されている少なくとも一つの圧力補正容器を有しているのが有利である。ここで圧力補正容器は、正常に作動している間に供給圧により予圧を与えられ供給圧がなくなった場合に自動的に燃料供給システム内を所望の圧力に維持させるようなエネルギー蓄積部であるのが有利である。この場合安全装置をオンオフさせる切換え装置は必要でないので有利であり、安全性を向上させる。他の利点は、正常に作動している間の圧力変動も本発明による圧力補正容器により補償できる点にある。
【0007】
圧力補正容器が予圧を与えられる不活性ガス充填部を有しているのが合目的である。これにより、ガス充填部と燃料・水エマルジョンとの化学反応が起こらないよう保証されている。
【0008】
圧力補正容器が可動な壁を有しているのが有利である。この壁は、不活性ガスで充填されたチャンバを、エマルジョンが貫流するチャンバから仕切り、したがって両チャンバの相互接触を十分に阻止する。
【0009】
前記手段の有利な構成によれば、安全装置が少なくとも一つの安全ポンプを有し、安全ポンプが、正常作動時に負荷されるエネルギー蓄積部から取り出し可能な駆動エネルギーで駆動可能である。この実施の形態は、安全ポンプを供給ポンプ装置に対して並列に簡単に配置できるので、比較的簡単に追加装備でき有利である。
【0010】
安全ポンプが始動空気で駆動可能であるのが有利である。ここで述べているエンジンの場合始動空気蓄積部はもともと設けられているものであり、したがって付加的なエネルギー蓄積部を設ける必要がなく、経済性に特に有利に影響する。
【0011】
他の実施の形態によれば、安全ポンプには、バッテリーから給電可能な電気駆動装置が付設されている。電気駆動装置に蓄積されるエネルギーは、たとえば、ブラックアウト状態の場合に燃料・水エマルジョンを加熱するために設けられる加熱装置の温度を必要なレベルに保持するためにも使用することができる。したがってブラックアウト状態の終了後すぐに使用可能状態になり、予熱時間を必要としない。
【0012】
前記手段の他の有利な構成および合目的な構成は他の従属項に記載されており、また以下の図面を用いた実施の形態の説明から詳細に読み取れる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に描写された図面において、
図1は、圧力補正容器を備える燃料供給システムを付設した二サイクル大型ディーゼルエンジンを示し、
図2は、安全ポンプを備える燃料供給システムを付設した二サイクル大型ディーゼルエンジンを示す。
【0014】
ディーゼルエンジン、特に大型ディーゼルエンジンの構成と作用はそれ自体知られているものであり、よってこれに関して詳細に説明する必要はない。本発明の両実施の形態の基本となるのはそれぞれ二サイクル大型ディーゼルエンジン1である。エンジンの各シリンダ2には、噴射ポンプ3と噴射ノズル4から成る噴射装置が付設されている。すべての噴射ポンプ3には共通の燃料供給システムを介して燃料が供給される。
【0015】
燃料供給システムは、往路枝管5aと復路枝管5bを有する循環管5を有し、循環管5には接続部6a,6bによって示すようにすべての噴射装置が往路側および復路側において接続されている。往路枝管5aには循環ポンプ装置7が設けられている。循環ポンプ装置7は、本実施の形態では、並列に接続されている二つのポンプを有している。これら二つのポンプはどちらか一方を作動中に取り出し可能であり、保守を容易にしている。往路枝管5aの出口にはフィルタ装置8が設けられている。復路枝管5bの領域には過圧容器9が設けられ、過圧容器9は、燃料タンクに接続されている逃がし弁10を備えている。
【0016】
循環管5は、供給装置11により、個々の噴射装置に供給されるべき媒体の供給を受ける。ここで媒体とは、燃料と水から成るエマルジョンである。燃料に水を添加すると、特に重油を燃焼させる際に厳しいNOX制限値が厳守される。燃料・水エマルジョンを発生させるため、循環管5の供給入口12に出口を接続した均質化装置13が設けられている。均質化装置13には、水管14を介して水を供給可能であり、且つ供給ポンプ装置15を介して重油および(または)軽油を選択的に供給可能である。均質化装置13は混合器として形成してよい。供給ポンプ装置15も並列に接続された2つのポンプから成り、これらのポンプは選択的に作動中に取り出し可能であり、保守を容易にしている。供給ポンプ装置15の吸い込み用接続部材は重油タンク16または軽油タンク17に選択的に接続可能である。
【0017】
燃料への水の添加は粘性を高める。それにもかかわらず確実な噴射能を保証するため、噴射装置に供給される燃料・水エマルジョンが加熱される。このため、循環管5の往路枝管5aには、体積流の全部もしくは一部を誘導することができる加熱装置18が付設されている。もちろん複数の加熱装置を設けてもよい。これら複数の加熱装置を直列に配置し、段階的な温度上昇が得られるようにするのが有利である。
【0018】
水の成分が約50%の場合にたかだか20cStの許容粘性を達成するためには、燃料・水エマルジョンを150゜C以上に加熱し、したがって水の通常の蒸発温度以上に加熱する必要がある。供給ポンプ装置15はほぼ9バール(bar)という高いΔpで作動する。これにより、100゜Cという通常の蒸発温度よりもはるかに高い温度であるにもかかわらず、循環管5内での水蒸気の発生が阻止される。
【0019】
供給ポンプ装置15が故障した場合、たとえばブラックアウト状態の場合、すなわち供給ポンプ装置15によって発生する供給圧がなくなった場合でも、燃料・水エマルジョンの水がエマルジョンの固有熱のために蒸発せず、エマルジョンが溶解しないようにするため、循環管5に付設される安全装置が設けられている。この安全装置により、少なくとも循環管5の往路枝管5a内に、燃料・水エマルジョンから水が蒸発しないようにする安全圧を発生させることができる。
【0020】
図1の実施の形態では、前記安全装置は、往路枝管5aに配置され供給入口12に隣接している圧力補正容器21により形成される。この圧力補正容器21は、ダイヤフラムまたはピストンにより形成される可動な壁22を有している。この可動な壁22により、エマルジョンが貫流するチャンバ23は、不活性ガスで充填されたチャンバ24から仕切られている。正常作動時には、チャンバ24に充填された不活性ガスは、供給ポンプ装置15により発生する供給圧によって圧縮される。供給ポンプ装置15が故障した場合、圧縮された不活性ガスは壁22を介してエマルジョンを加圧し、エマルジョンを加圧状態に保持する。このようにして発生した安全圧は実質的に供給圧に対応しており、その結果水が確実にエマルジョン内で保持される。
【0021】
図2の配置構成は、安全装置の構成を除いて図1の配置構成に対応している。図2の実施の形態では、安全装置を形成するため、供給ポンプ装置15に並列に配置される安全ポンプ25が設けられている。安全ポンプ25には、正常作動時に負荷されるエネルギー蓄積部から駆動エネルギーを供給可能な別個の駆動装置26が付設されている。駆動装置26は空気圧モータであり、供給管27で示唆したように始動空気室から始動空気を供給することができる。この場合供給管27がスライド弁28を備えているのが合目的であり、スライド弁28は、供給ポンプ装置15が故障した場合に供給管27を開き、それ以外の場合は供給管27を閉じたままにしておく。このためには、循環管5内の圧力により閉弁位置に保持されるようなスライド弁を設けるのが簡単でよい。
【0022】
駆動装置26を、バッテリーから給電される電動機として構成してもよい。この種のバッテリーは通常補助駆動装置用に設けられているものである。この場合も、供給ポンプ装置により生じる供給圧がなくなった場合に安全ポンプ25を作動させるようなスイッチをエネルギー管内に設ける必要がある。加熱装置18は有利には電気的に作動可能な緊急加熱部を備えていてよく、この緊急加熱部は加熱装置18を所望の温度に保持し、ブラックアウト状態が終了した後に加熱装置18を速やかに再度使用可能な状態にさせる。
【0023】
以上本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、安全装置の上記個々の構成を互いに組み合わせて使用することも難なく可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 圧力補正容器を備える燃料供給システムを付設した二サイクル大型ディーゼルエンジンを示す図である。
【図2】 安全ポンプを備える燃料供給システムを付設した二サイクル大型ディーゼルエンジンを示す図である。
【符号の説明】
1 大型ディーゼルエンジン
2 シリンダ
3 噴射ポンプ
4 噴射ノズル
5 循環管
5a 往路枝管
5b 復路枝管
6a,6b 噴射装置用の接続部
7 循環ポンプ装置
12 循環管の供給入口
13 均質化装置
14 水管
15 供給ポンプ装置
16 重油タンク
17 軽油タンク
18 加熱装置
21 圧力補正容器
22 可動な壁
25 安全ポンプ

Claims (13)

  1. 噴射装置(3,4)に付設され、かつ少なくとも一つの加熱装置(18)及び付設された前記噴射装置用の接続部(6a,6b)を備えた少なくとも一つの循環装置(5,7)を有する燃料供給システムを備えて成り、正常作動時において上流側に配置される供給ポンプ装置(15)により発生可能な供給圧を有しかつ燃料と水とから成るエマルジョンを前記循環装置(5,7)に向けて供給可能である大型のディーゼルエンジンにおいて、
    前記供給ポンプ装置(15)の故障の際に、少なくとも、前記噴射装置(3,4)に連通している前記循環装置(5,7)の往路枝管(5a)に、水が燃料・水エマルジョンから蒸発するのを阻止するような安全圧を生じさせる安全装置が前記循環装置(5,7)に付設されていることを特徴とするディーゼルエンジン。
  2. 前記安全装置により発生可能な前記安全圧が、前記供給ポンプ装置(15)により発生可能な前記供給圧に対応していることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン。
  3. 前記安全装置が、前記燃料供給システムに備えられた少なくとも一つの圧力補正容器(21)を有していることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のディーゼルエンジン。
  4. 前記圧力補正容器(21)が循環管(5)の前記往路枝管(5a)に配置されていることを特徴とする請求項3記載のディーゼルエンジン。
  5. 前記圧力補正容器(21)が、与圧を与えられる不活性ガス充填部を有していることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載のディーゼルエンジン。
  6. 前記圧力補正容器(21)が、可動な壁(22)を備えていることを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載のディーゼルエンジン。
  7. 前記安全装置が、正常作動時に負荷されるエネルギー蓄積部から取り出し可能な駆動エネルギーで駆動可能な少なくとも一つの安全ポンプ(25)を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載のディーゼルエンジン。
  8. 前記安全ポンプ(25)が始動空気で駆動可能であることを特徴とする請求項7に記載のディーゼルエンジン。
  9. 前記安全ポンプ(25)には、バッテリーから給電可能な電気駆動装置が付設されていることを特徴とする請求項7記載のディーゼルエンジン。
  10. 前記加熱装置がバッテリーから給電可能な電気緊急加熱装置を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載のディーゼルエンジン。
  11. 好ましくは直列に配置される複数の加熱装置(18)が設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載のディーゼルエンジン。
  12. 前記安全ポンプ(25)が前記供給ポンプ装置(15)に並列に配置され、該供給ポンプ装置(15)が吸い込み側で少なくとも一つの燃料タンク(16,17)に結合され且つ圧力側で均質化装置(13)に結合され、該均質化装置(13)には水管(14)を介して水を供給可能であり且つ該均質化装置(13)の出口は循環管(5)の供給入口(12)に連通していることを特徴とする請求項7から11までのいずれか一つに記載のディーゼルエンジン
  13. 該ディーゼルエンジンが二サイクル型のものであることを特徴とする請求項1から12の何れか一項に記載のディーゼルエンジン。
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