JP3717312B2 - 高熱伝導性シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピューター、ワードプロセッサーなどの情報処理機器におけるIC、LSI、CPU、MPU等の半導体素子より発生する熱を効率よく放出するのに有用な高熱伝導性シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューターやワードプロセッサー等の情報処理機器は、携帯用使用の薄型サイズのものが好まれるようになっている。それに伴い、半導体素子も高密度化・小型化され、そこから発生する熱も増加の一途をたどり、それを効率良く除去することが重要な課題となっている。従来、この放熱は、電子機器と放熱部品との間に熱伝導性シートを挟むことによって行われており、この場合、熱伝導性シートと電子機器との密着性を高めれば効率的になることも知られている。
【0003】
この密着性を高めるため、従来よりいくつかの提案がある。例えば、特開平9−17923号公報では、熱伝導率1×10-4cal/cm・sec・℃以上(0.04W/m・K以上)の支持体両面に、熱伝導率が1×10-3〜5×10-3cal/cm・sec・℃(0.4〜2.1W/m・K)、稠度が10〜80、厚みが0.05〜1.0mmのシリコーンゲル層を設けてなる熱伝導性シートが記載されている。しかしながら、電子機器との密着性を確保するには、ゲル層自体を柔軟にする必要があるので、先行技術のように熱伝導性フィラーを高充填する方法では密着性を十分に高めることができず、熱伝導性のあまり高くないゲル層の厚みを厚くすると熱伝導性シートの熱抵抗は高いものとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、高熱伝導性を有し、しかも電子機器との密着性に優れた高熱伝導性シートの製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
(請求項1)次の(a)〜(d)工程を含んでなることを特徴とする高熱伝導性シートの製造方法。
(a)シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーを含むスラリーを、ベースフィルム上に塗布・乾燥して未加硫基体シートを成形する工程(b)上記未加硫基体シートをベースフイルム上に存在させたままでプレス加硫する工程(c)得られた基体シートをベースフィルムから取り外し、再プレスする工程(d)熱伝導性フィラーと液状付加反応型シリコーン樹脂を含むシリコーンゲルを、上記再プレスされた基体シートの少なくとも片面に塗布した後、加熱加硫し、ゲル層を形成する工程
(請求項2)(b)工程における未加硫基体シートが、複数枚の未加硫基体シートの積層体であり、しかもその積層体の少なくとも一つの基体シート間に補強材が配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性シートの製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0007】
まず、本発明の高熱伝導性シートを構成する基体シートについて説明すると、基体シートのマトリックスであるシリコーン樹脂としては、過酸化物を用いた熱加硫型シリコーン樹脂、縮合反応により加硫する室温加硫型シリコーン樹脂、付加反応により加硫する液状シリコーン樹脂等が使用される。
【0008】
また、基体シートを構成する熱伝導性フィラーとしては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の非酸化物セラミックス粉末、アルミナ等の酸化物セラミックス、銀、銅、アルミニウム等の金属粉末の一種又は二種以上が使用される。熱伝導性フィラーの最大粒子径は、60μm以下が好ましい。最大粒子径が60μmを越えると、基体シートの最大表面粗さが30μmをこえてしまい、ゲル層を設けない側のシート表面の密着性が低下し、より効率的な放熱を行うことが困難となる。
【0009】
熱伝導性フィラーの使用量は、その種類により異なるが、シート全体の熱伝導率2.0W/m・K以上を達成するために、基体シートは少なくとも50体積%の熱伝導性フィラー含有していることが好ましい。その上限はシートの柔軟性を考慮し、85体積%程度である。
【0010】
本発明においては、基体シートそれ自体の硬さは全く任意であり、本発明の高熱伝導性シートの使用目的に応じて、適切な硬さが選択される。例えば、ショアー硬度で80〜100程度のものが使用される。基体シートの硬さの調整は、シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーの種類・量、硬化程度などをコントロールすることによって行うことができる。
【0011】
本発明の高熱伝導性シートは、上記基体シートの一方の面に後記のゲル層が形成されてなるものであるが、その反対面にはゲル層は形成させない。そのかわり、その反対面の最大表面粗さを30μm以下とし、電子機器に組み込んだときの密着性を高める。
【0012】
次に、基体シート表面に形成されるゲル層について説明する。本発明でいう「ゲル層」とは、シートをトルエンに浸漬し5 分間振とうしたときに溶けだした部分をいう。ゲル層の厚みは、上記トルエン処理を行った後、温度80℃で乾燥してから重量減少を測定し、シート面積、ゲル層密度定数:1.52g/cm3 から算出された高さ値とする。
【0013】
ゲル層を形成するのに使用されるシリコーン樹脂と熱伝導性フィラーは、上記基体シートの説明で例示したものが用いられるが、好適なシリコーン樹脂は液状付加反応型シリコーン樹脂であり、好適な熱伝導性フィラーは窒化ホウ素である。
【0014】
ゲル層におけるシリコーン樹脂と熱伝導性フィラーの割合は、熱伝導性フイラーが20〜45体積%程度を含有していることが好ましい。
【0015】
ゲル層の厚みは、0.05mm未満、特に0.01〜0.03mm程度であることが望ましい。ゲル層の厚みが0.05mm以上では、ゲル層での放熱が律速となり、基体シート自体が高熱伝導性を有していても、より効率的な放熱を行うことができない。なお、ゲル層自体の熱伝導率としては、0.5W/m・K以上であることが望ましい。また、本発明の高熱伝導性シートそれ自体の厚みは、0.1〜1mmであることが好ましい。
【0016】
本発明の高熱伝導性シートには、最大表面粗さ30μm以下及び熱伝導率2.0W/m・K以上の条件を逸脱させない範囲で、補強材を含有させることができる。
【0017】
本発明で使用される補強材としては、ガラスファイバークロス等の網目状絶縁物や金属箔等をあげることができる。その使用量は上記最大表面粗さと熱伝導率の条件を外さない範囲であるが、具体的には、最終製品のシート中、15%程度以下の含有率である。
【0018】
補強材の存在位置についても特に制約はないが、基体シートの中央部付近とすることによって、最大表面粗さと熱伝導率に及ぼす影響が最も小さくなるので、本発明では好適な位置といえる。
【0019】
次に、本発明の高熱伝導性シートの製造方法について説明する。本発明の製造方法は、上記の高熱伝導性シートの製造に適合するものである。
【0020】
まず、(a)工程では、未加硫の基体シートを成形する。そのために、まず、シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーを含むスラリー粘度20,000〜60,000cp程度のスラリーを調製する。その際の有機溶剤としては、トルエン、キシレン等が使用される。
【0021】
次いで、上記スラリーをベースフィルム上に所望厚みに塗布・乾燥する。ベースフイルムは連続的に移動していることが生産性と均一なシートを製造する点で好ましく、またスラリーの塗布はドクターブレード法によることが望ましい。使用されるベースフイルムには特に限定を受けないが、乾燥及び加硫工程を経た後でも、基体シートとの剥離性が良好なものがよく、例えばフッ素樹脂製、ポリエチレンテレフタレート製等が好適である。
【0022】
スラリー塗布後の乾燥は、大気雰囲気下、室温から80℃程度の温度で行われる。80℃よりも高温であると、加硫が促進され、また有機溶剤の揮発も急速になるので基体シートに気孔が生じ、熱伝導性を低下させる。
【0023】
(b)工程におけるプレス加硫温度は、40〜200℃であることが望ましい。40℃未満では基体シートが十分に加硫されず、逆に200℃をこえると基体シートの一部が劣化する恐れがある。
【0024】
プレス加硫は、大気雰囲気下で行われ、また、プレスは、例えば平滑な金属板の間に基体シートを挟み、通常の平板プレス機を用い、50〜150kgf/cm2 の圧力で行う。
【0025】
本発明の高熱伝導性シートが補強材を更に含むものである場合には、この(b)工程の段階でそれを混入するのが望ましい。その方法としては、複数枚の未加硫基体シートの間に介在させることが好ましく、その場合の補強材としては、グラスファイバークロス等の網目状絶縁物や金属箔等が好適である。本発明で使用される補強材は、粉末、ウイスカー等のものでもよいが、そのような場合には、未加硫基体シート間に散布してもよく、また基体シートもしくはゲル層を形成するスラリーの中にあらかじめ混合しておくこともできる。更にはこれらの方法の複合も可能である。
【0026】
本発明の(c)工程は、加硫された基体シートをベースフィルムから取り外した後、再度プレスする工程である。この再プレスの際には、必要に応じ、温度40〜150℃程度の加熱処理が伴っていてもよい。
【0027】
(c)工程おけるプレスは、室温の大気雰囲気下、100〜500kgf/cm2 の圧力で行い、基体シートの最大表面粗さを例えば30μm以下の平滑なものとする。プレス処理のみでは、所望する最大表面粗さに到達させることができないときには、ロールプレス等の補助手段を加えてもよい。
【0028】
本発明の(d)工程では、最大表面粗さの調整された基体シートの少なくとも片面にゲル層を形成させる。ここで使用されるスラリーは、液状付加反応型シリコーンと熱伝導性フィラーを含む混合物であり、スラリー粘度100,000〜200,000cp程度のものが使用される。その調整は、主に液状付加反応型シリコーンの粘度調整によって行う。スラリー粘度は、熱伝導性フィラーの配合量によっても調整することができる。この場合は、ゲル層におけるその含有割合を20〜45体積%とし、微調整は上記有機溶剤の添加によって行うことが望ましい。ゲル層における熱伝導性フィラーの含有量が20体積%未満では、シート全体の熱伝導率を2.0W/m・K以上にすることが困難となり、また45体積%をこえると、ゲル層の硬さが増し電子機器との密着性が損なわれてしまう。
【0029】
ゲル層を形成させるためのスラリーの塗工は、スクリーン印刷、ロールコーター等により行うことができる。また、加熱加硫は、一般的な熱風乾燥機、遠赤外乾燥機、マイクロ波乾燥機等を用い、温度100〜200℃、5〜120分間で行うことが望ましい。
【0030】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0031】
実施例1
ミラブル型シリコーンゴム(東芝シリコーン社製商品名「TSE221」)に最大粒子径32μmの窒化ホウ素粉末を表1に示す充填量と、トルエンを2体積%を配合し、粘度10,000cpのスラリーを調製した。このスラリーをドクターブレードを用い、ポリエチレンテレフタレート製フイルム上に厚さ0.3mmに塗工した後、温度70℃に保持された熱風乾燥機に10分間静置し、未加硫基体シートを成形した。[(a)工程]。
【0032】
得られた未加硫基体シートを二枚重ねてステンレス製平板で挟み、温度150℃、圧力100kgf/cm2 の条件下、45分間プレス加硫を行い基体シートを製造した。[(b)工程]。
【0033】
次いで、基体シートをポリエチレンテレフタレート製フイルムから剥がし、今度はその一枚づつをステンレス製平板で挟み、室温、圧力300kgf/cm2 の条件下、2分間プレスを行った。[(c)工程]。
【0034】
この再プレスされた基体シートの表面粗さを非接触式表面粗さ計(キーエンス社製商品名「VF−L50」により測定した後、以下に従い、その片面にゲル層を形成させ、本発明の高熱伝導性シートとした。[(d)工程]。
【0035】
付加反応型シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製商品名「SE1886」)70体積%と窒化ホウ素粉末(電気化学工業社製商品名「デンカボロンナイトライド」GPグレード 平均粒径2μm)30体積%を混合してスラリーを調合し、その粘度を120,000cpに調整してから、開き目75μmのスクリーンを取り付けたスクリーン印刷機を用いて基体シートの片面のみに厚み0.04mmに印刷し、温度100℃の熱風乾燥機中で30分間加硫した。
【0036】
実施例2〜5
基体シート及びゲル層のそれぞれに充填される熱伝導性フィラーを表1に示す種類・充填量としたこと以外は、実施例1に準じて高熱伝導性シートを作製した。ただし、実施例2では、(c)工程後の再プレスされた基体シートの最大表面粗さは40μmであったので、再度ロールプレス成形機でプレスを行い、最大表面粗さを20μmとした。また、実施例3では、ゲル層形成のスラリーの塗工はロールコーターにより行った。
【0037】
実施例6
表1に示す熱伝導性フィラーを含むスラリーを用い、カレンダーロールにより厚み0.1mmの未加硫基体シートを成形した[(a)工程]。この未加硫基体シートの二枚の間に、厚み0.04mmのアルミニウム箔を介在させて、温度150℃、圧力80kgf/cm2 の条件下、45分間のプレス加硫を行い基体シートを製造した[(b)工程]。得られた基体シートをポリエチレンテレフタレート製フイルムから剥がし、それをステンレス製平板で挟み、室温、圧力300kgf/cm2 の条件下、2分間プレスを行った[(c)工程]。次いで、この基体シートの片面に実施例1に準じてゲル層を形成した。ただし、スラリーの印刷はロールコーターによって行った[(d)工程]。
【0038】
比較例1〜5
基体シート及びゲル層のそれぞれに充填される熱伝導性フィラーを表1に示す種類・充填量としたこと以外は、実施例1に準じてシートを作製した。ただし、比較例2では、基体シートはカレンダーロールにより成形した。
【0039】
上記で得られた熱伝導性シートについて、(1)シート厚み、(2)ゲル層厚み、(3)熱伝導率、及び(4)ゲル層を形成させた反対面の基体シートの表面粗さを以下に従い測定した。それらの結果を表2に示す。
【0040】
(1)シート厚み:マイクロメーターにより測定した。
(2)ゲル層厚み:シートをトルエンに浸漬して5 分間振とう後、温度80℃で乾燥してから重量減少を測定し、シート面積、ゲル層密度定数:1.52g/cm3 )から高さを算出し、それをゲル層厚みとした。
(3)熱伝導率:シートをTO−3型ヒーターケースと銅板との間に挟み、シート厚みの10%を圧縮した後、銅製ヒーターケースに電力5Wかけて4分間保持し、銅製ヒーターケースと銅板との温度差を測定し、熱伝導率(W/m・K)={電力(W)×厚み(m)}/{温度差(K)×測定面積(m2 )}、にて熱伝導率を算出した。
(4)基体シートの表面最大粗さ:非接触式表面粗さ計(キーエンス社製商品名「VF−L50」により測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明の高熱伝導性シートの製造方法は、電子機器との密着性が良好であるので熱伝導性が極めて高く、放熱特性に優れたシートの製造に適合するものである。
Claims (2)
- 次の(a)〜(d)工程を含んでなることを特徴とする高熱伝導性シートの製造方法。
(a)シリコーン樹脂と熱伝導性フィラーを含むスラリーを、ベースフィルム上に塗布・乾燥して未加硫基体シートを成形する工程(b)上記未加硫基体シートをベースフイルム上に存在させたままでプレス加硫する工程(c)得られた基体シートをベースフィルムから取り外し、再プレスする工程(d)熱伝導性フィラーと液状付加反応型シリコーン樹脂を含むシリコーンゲルを、上記再プレスされた基体シートの少なくとも片面に塗布した後、加熱加硫し、ゲル層を形成する工程 - (b)工程における未加硫基体シートが、複数枚の未加硫基体シートの積層体であり、しかもその積層体の少なくとも一つの基体シート間に補強材が配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性シートの製造方法。
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