JP3716491B2 - 電子弦楽器 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
この発明は電子ギター等の電子弦楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子ギターにおいては、指盤(指板)部に、各弦及び各フレットの位置に対応して複数の音高スイッチが縦横に設けられており、演奏者の押下操作による押弦位置を各弦毎に検出して、その押弦位置に対応する音高データをメモリに記憶する。そして、押下操作されている音高スイッチに対応する弦の弾弦操作に応答してメモリからその音高データを読み出し、音源部に供給して発音させることにより演奏が行なわれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の電子弦楽器においては、指盤部には実際の弦が張られておらず、音高スイッチのオン又はオフにより音高の情報しか得られないため、左手すなわち押弦操作をする手ではミュート(消音)を行うことができず、またハンマリングオンやプリングオフのような弾弦操作を伴わずに発音を行う弦楽器特有の演奏ができないという問題があった。
この発明の課題は、指盤部に実際の弦をもたず、音高スイッチによって音高を決定して発音を行う場合でも、押弦操作及び離弦操作をする手でミュート、ハンマリングオン及びプリングオフ等の弦楽器特有の演奏ができるようにすることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、発音を指示するための弾弦部及び音高を指示するための指板部を有する電子弦楽器において、弾弦部への弾弦操作を検出する弾弦検出手段と、指板部に設けられ、押弦又は離弦の操作速度を検出する速度検出手段と、弾弦検出手段にて弾弦操作が検出されたときには、指板部の操作位置に応じた音高の楽音の発音を指示するとともに、速度検出手段にて検出された操作速度が所定値よりも速いときには、弾弦操作の有無に拘わらず、指板部の操作位置に応じた音高の楽音の発音を指示する制御手段と、を備えた構成になっている。
このような構成により、押弦又は離弦の操作速度が所定値よりも速いときには、弾弦操作の有無に拘わらず、指板部の操作位置に応じた音高の楽音の発音が指示される。したがって、指盤部に実際の弦をもたず音高スイッチのオン・オフによって音高を決定して発音を行う場合でも、素速く音高スイッチをオン又はオフ操作することによりハンマリングオン又はプリングオフを可能にして弦楽器特有の演奏ができるようになる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図10を参照してこの発明の電子弦楽器の実施形態を電子ギターを例に採り説明する。
実施形態における電子ギターには、図1(A)に示すように、本体1に指盤部2が取り付けられ、指盤部2の本体1側の端部3と本体1の中央部に設けられたテールピース4との間に6本の弦5が張られている。そして、本体1の内部にはスピーカ6が取り付けられ、本体1の操作面には音量を調整する音量ボリューム7及び演奏モードのオン・オフその他演奏種別を選択する演奏モード選択スイッチ8が設けられている。指盤部2の表面にはFRET(0)〜FRET(14)の15個(ただし、FRET(0)は開放弦)のフレット9が形成されている。指盤部2には実際の弦に似せた6本の線状部材10が弾性材によって形成され、実際の弦と同じように押圧によって撓む構造になっている。さらに、この線状部材10の下側の指盤部2内部には、各弦5の各フレット9ごとに音高スイッチ11が設けられている。
【0006】
各音高スイッチ11は、図1(B)に示すように、指盤部2の上面を形成する弾性板21と内部に埋設されたプリント基板22との間に、接点スイッチ1及び接点スイッチ2からなる2つの接点スイッチで構成されている。各接点スイッチは、プリント基板22側に形成された導電ゴム11a及び弾性板21側に形成された導電ゴム11bとで接点を構成する。ただし、一方の接点スイッチ1は導電ゴム11a及び11bの間隔が小さく、他方の接点スイッチ2は導電ゴム11a及び11bの間隔が大きく形成されている。したがって、任意のフレット9の任意の線状部材10を所定の変位量押圧すると弾性板21が撓み、まず接点スイッチ1の導電ゴム11a及び11bが先に接触して接点スイッチ1がオンとなる。線状部材10をさらに大きな変位量押圧すると弾性板21がさらに撓み、接点スイッチ2の導電ゴム11a及び11bが接触して接点スイッチ2がオンとなる。なお、指盤部2には実際の弦が張られていないが、実際の弦に相当する線状部材10の任意のフレット9を押下する操作を便宜上「押弦」と呼ぶことにする。
【0007】
この電子ギターの内部には、図2に示すように、制御手段であるCPU12を中核とする回路ブロックが設けられている。すなわち、CPU12には弾弦検出部(弾弦検出手段)13、音高検出部(音高検出手段)14、記憶手段であるROM15及びRAM16、演奏モード選択スイッチ8、及び楽音発生回路17が接続されている。また、楽音発生回路17にはアンプ18を介してスピーカ6が接続され、アンプ18には音量制御部19が接続されている。
音高検出部14は、フレット番号ラインKC及び弦番号ラインKIによる2つのブロックのマトリックススイッチ、すなわち複数の接点スイッチ1からなるマトリックススイッチと、複数の接点スイッチ2からなるマトリックススイッチとで構成されている。押弦操作又は離弦操作によって接点スイッチ1及び接点スイッチ2がオン状態又はオフ状態になると、その状態変化をCPU12に入力する。
【0008】
CPU12は、ROM15に格納された動作プログラムに基づいて、弾弦検出部13及び音高検出部14等から入力されたデータにより、楽音発生回路17に出力する演奏情報を生成する。このとき、ROM15のデータエリア31にあらかじめ記憶されている基準音高テーブル、RAM16のレジスタ32〜37のハンマリングオンテーブル、プリングオフテーブル、フレットテーブル、ピッチテーブル、発音フラグ及びカウンタ値を用いて演算その他のデータ処理を行う。
【0009】
図3(A)〜(F)にROM15のデータエリア31、RAM16のレジスタ32〜36の各テーブル及び発音フラグ等のデータ構成を示す。ハンマリングオンテーブルは、弦番号i(i=0〜5;以下同じ)に対応するエリアに押弦に応じたデータa(i)が記憶される。プリングオフテーブルは、弦番号iに対応するエリアに押弦に応じたデータb(i)が記憶される。基準音高テーブルは、弦番号iに対応するエリアに開放弦の音高データc(i)が押弦の有無にかかわらず、あらかじめ固定データとして記憶されている。フレットテーブルは、弦番号iに対応するエリアにフレット番号(0〜14)のデータd(i)が記憶される。ピッチテーブルは、弦番号iに対応するエリアに、実際に楽音発生回路17に出力する音高データe(i)が記憶される。発音フラグは、弦番号iに対応するエリアに発音又は消音を示す「1」又は「0」のデータHF(i)がセットされる。なお、RAM16のレジスタ37におけるカウンタ値については後述する。
【0010】
図2に示す楽音発生回路17は、CPU12からの発音指示に応じて波形メモリ(図示せず)から波形データを読み出し、実際の音響信号を発生してアンプ18に入力する。また、CPU12からの消音指示に応じてアンプ18への音響信号の入力を停止する。アンプ18は音響信号を増幅してスピーカ6に供給する。スピーカはこの音響信号に応じて発音を行う。音量制御部19は、本体1の操作面に設けられた音量ボリューム7の操作に応じてアンプ18の増幅率を変化させ、スピーカ6から発生される音量を制御する。
【0011】
次に、図4〜図10に示すCPU12のフローチャートを参照してこの実施形態の動作について説明する。
図4において、電子ギターの電源がオンになるとイニシャライズ処理を行う(ステップS1)。この処理では、基準音高テーブルを除く他のテーブルのデータをクリアし、発音フラグを「0」にセットする。次に、弦番号iを「0」に指定して(ステップS2)、iをインクリメントしながら以下の処理を行う。すなわち、指定した弦番号iに対応するROM15の基準音高テーブルのc(i)をRAM16のレジスタ35に転送してe(i)とする(ステップS3)。すなわち、指定した弦の開放弦の音高データをピッチデータとする。そして、iをインクリメントして(ステップS4)、iが「6」になったか否か、すなわちすべての弦の基準音高データの転送が終了したか否かを判別する(ステップS5)。iが「6」未満である場合には、ステップS3に移行してステップS5までの処理をiをインクリメントしながら繰り返し行う。
【0012】
なお、ステップS1からステップS5までの基準音高データ転送のルーチンは、電源がオンされたときの初期値設定のルーチンであってループは構成せず、次のステップS6以下のルーチンはループを構成する。したがって、ピッチテーブルの音高データe(i)の初期値は基準音高データc(i)であるが、ステップS6以下のループにおいてはピッチテーブルの音高データe(i)は押弦操作に応じた任意の音高データとなっている。
【0013】
ステップS5において、iが「6」になった場合には、再びiを「0」に指定して(ステップS6)、iをインクリメントしながら以下の処理を行う。すなわち、指定した弦が弾弦されているか否かを判別し(ステップS7)、弾弦されている場合には、その弦に対応する発音フラグHF(i)を「1」にセットする(ステップS8)。そして、音源(楽音発生回路17;以下同じ)に対しe(i)を送出して発音指示を行う(ステップS9)。この発音指示の後又はステップS7において指定した弦が弾弦されていない場合には、iをインクリメントして(ステップS10)、iが「6」になったか否か、すなわちすべての弦に対する処理が終了したか否かを判別する(ステップS11)。iが「6」未満である場合には、ステップS7に移行してステップS11までの各処理をiをインクリメントしながら繰り返し行う。
【0014】
次に、iを「0」に指定して(ステップS12)、iをインクリメントしながら以下の処理を行う。すなわち、発音フラグHF(i)が「1」であるか否かを判別し(ステップS13)、HF(i)が「1」である場合には、フレット番号jを「0」に指定する(ステップS14)。そして、指定した弦番号iの指定したフレット番号jにおける接点スイッチ1[i,j]がオフからオンに変化したか否かを判別する(ステップS15)。オフからオンへの変化がない場合には、jをインクリメントして(ステップS16)、jが「15」になったか否かを判別する(ステップS17)。jが「15」未満すなわち存在するフレット番号「0」〜「14」である場合には、ステップS15において各フレットに対応する接点スイッチ1の変化の有無を判別する。そして、指定した弦番号iの指定したフレット番号jにおける接点スイッチ1[i,j]がオフからオンに変化した場合には、そのフレット番号jに基準音高データc(i)を加算した値が、その時点におけるピッチデータe(i)より大きいか否かを判別する(ステップS18)。すなわち、ピッチデータより高いフレット位置において押弦がなされたか否かを判別する。
【0015】
j+c(i)がe(i)より大きい場合には、jをRAM16のレジスタ32に転送してハンマリングオンのデータa(i)とする(ステップS19)。次に、発音フラグHF(i)を「0」にセットし(ステップS20)、RAM16のカウンタ値37をクリアしてCONT(i)のカウントをスタートさせ、タイマインタラプトをイネーブルにする(ステップS21)。
タイマインタラプト処理は、図6に示すように、弦番号iを「0」に指定して(ステップS101)、iをインクリメントしながら以下の処理を行う。すなわち、タイマインタラプトごとにCONT(i)をインクリメントし(ステップS102)、CONT(i)が最大値に達したか否かを判別する(ステップS103)。最大値に達した場合には、CONT(i)を「0」にセットして(ステップS104)、iをインクリメントする(ステップS104)。
【0016】
ステップS103において、CONT(i)が最大値に達していない場合には、ステップS105に移行してiをインクリメントする。そして、iが「6」になったか否かを判別する(ステップS106)。iが「6」未満である場合には、ステップS102に移行してステップS106までの各処理をiをインクリメントしながら繰り返し行う。ステップS106においてiが「6」になった場合、すなわちすべての弦に対してタイマインタラプト処理が終了した場合には、図5のフローに戻る。この状態では、図7に示すように、RAM16のレジスタ37のカウンタ値には各弦番号iに対するCONT(i)が記憶される。したがって、例えば5msごとにタイマインタラプトが発生したとすると、CONT(i)は5ms、10ms、15ms…と増加し、図5のステップS15の接点スイッチ1の変化からの経過時間が計測される。
【0017】
図5のステップS21の後は、音源に対して現在発音中のe(i)の消音処理を行う(ステップS22)。そして、ステップS23に移行してiをインクリメントする。ところで、ステップS17においてフレット番号jが「15」になった場合には、指定した弦においてオフからオンに状態変化した接点スイッチ1[i,j]が存在しないので、ステップS23に移行してiをインクリメントして次の弦を指定する。次に、iが「6」になったか否かを判別する(ステップS24)。iが「6」未満である場合には、ステップS13に移行してステップS24までの各処理をiをインクリメントしながら繰り返し行う。ステップS24においてiが「6」に達した場合には、図8のステップS25に移行する。
【0018】
ステップS25では、弦番号iを「0」に指定し、iをインクリメントしながら以下の処理を行う。すなわち、ハンマリングオンのデータa(i)が「0」であるか否か、すなわち開放弦であるか否かを判別し(ステップS26A)、「0」でない場合にはそのデータa(i)をフレット番号jに指定し(ステップS26B)、その指定した弦番号iのフレット番号jに対応する接点スイッチ2[i,j]がオフからオンに変化したか否かを判別する(ステップS27)。接点スイッチ2[i,j]がオフからオンに変化した場合には、フレット番号jをRAM16のレジスタ34に転送してjをd(i)とする(ステップS28)。
【0019】
次に、指定した弦のd(i)及びc(i)を加算した値を新たなe(i)とする(ステップS29)。すなわち、押弦操作によって接点スイッチ1及び接点スイッチ2がともにオフからオンになったフレット番号に対応する音高データを実際の発音すべき音高データとする。次に、RAM16のレジスタ37を参照して、CONT(i)の値を読み出す。このときのCONT(i)の値は、接点スイッチ1がオフからオンに変化した時点から、接点スイッチ2がオフからオンに変化した時点までの経過時間を表している。この経過時間であるCONT(i)が所定値Cよりも小さいが否かを判別する(ステップS30)。すなわち押弦速度が所定値より速いか否かを判別する。CONT(i)が所定値Cよりも小さい(速い)場合には、ハンマリングオンの演奏とみなし、発音フラグHF(i)を「1」にセットし(ステップS31)、音源に対してハンマリングオンの奏法でe(i)の発音指示を行う(ステップS32)。すなわち、押弦速度が所定値より速い押弦操作の態様のときの発音はハンマリングオンの発音となる。
【0020】
発音指示の後は、レジスタ32のa(i)を「0」にセットし(ステップS33)、iをインクリメントする(ステップS34)。また、ステップS30においてCONT(i)が所定値C以上である場合には、ハンマリングオンの奏法の発音指示をすることなくステップS33に移行してa(i)を「0」にセットする。なおこの場合には、通常の演奏であるので、図4のステップS9において通常奏法の発音指示をすることになる。ステップS26Aにおいてa(i)が「0」である場合、及びステップS27において接点スイッチ2[i,j]がオフからオンへの変化をしない場合には、ステップS34に移行してiをインクリメントする。そして、iが「6」に達したか否かを判別する(ステップS35)。iが「6」未満である場合には、ステップS26Aに移行してステップS35までの各処理をiをインクリメントしながら繰り返し行う。ステップS35において、iが「6」に達した場合には、図9のステップS36に移行する。
【0021】
ステップS36では弦番号iを「0」に指定し、iをインクリメントしながら以下の処理を行う。すなわち、発音フラグHF(i)が「1」であるか否かを判別し(ステップS37)、HF(i)が「1」である場合には、フレット番号jを「0」に指定する(ステップS38)。そして、指定した弦番号iの指定したフレット番号jにおける接点スイッチ2[i,j]がオンからオフに変化したか否かを判別する(ステップS39)。オンからオフへの変化がない場合には、jをインクリメントして(ステップS40)、jが「15」になったか否かを判別する(ステップS41)。jが「15」未満すなわち存在するフレット番号「0」〜「14」である場合には、ステップS39において各フレットに対応する接点スイッチ1の変化の有無を判別する。そして、指定した弦番号iの指定したフレット番号jにおける接点スイッチ2[i,j]がオンからオフに変化した場合には、フレット番号kを「0」に指定して(ステップS42)、指定した弦番号iの指定したフレット番号kに対応する接点スイッチ1[i,k]及び接点スイッチ2[i,k]がともにオンであるか否かを判別する(ステップS43)。すなわち、接点スイッチ2[i,j]がオンからオフになった時点で、同じ弦の他のフレット位置が押弦された状態になっているか否かを判別する。
【0022】
接点スイッチ1[i,k]及び接点スイッチ2[i,k]がともにオンでない場合には、kをインクリメントして(ステップS44)、kが「15」になったか否かを判別する(ステップS45)。kが「0」〜「14」である場合にはステップS43に移行する。そして、接点スイッチ1[i,k]及び接点スイッチ2[i,k]がともにオンであるフレット番号kがあった場合には、kがjより小さいか否かを判別する(ステップS46)。すなわち、押弦したフレット番号kが離弦したフレット番号jより低い音高であるか否かを判別する。kがjより小さい場合には、RAM16のレジスタ33のプリングオフのデータb(i)にkを転送する(ステップS47)。次に、発音フラグHF(i)を「0」にセットして(ステップS48)、RAM16のカウンタ値37をクリアしてそのデータCONT(i)のカウントをスタートさせ、タイマインタラプトをイネーブルにする(ステップS49)。
【0023】
次に、音源に対して現在発音中のe(i)すなわち離弦したフレット番号jに対応するe(i)の消音処理を行う(ステップS50)。そして、ステップS51に移行してiをインクリメントする。ステップS41においてフレット番号jが「15」になった場合には、指定した弦においてオンからオフに変化した接点スイッチ2[i,j]が存在しないので、ステップS51に移行してiをインクリメントして次の弦を指定する。また、ステップS45においてフレット番号kが「15」になった場合には、指定した弦において他に押弦されたフレットがないので、ステップS51に移行してiをインクリメントして次の弦を指定する。また、ステップS46において、kがj以上である場合には、プリングオフの演奏形態ではないとして、ステップS51に移行してiをインクリメントして次の弦を指定する。次に、iが「6」になったか否かを判別する(ステップS52)。iが「6」未満である場合には、ステップS37に移行してステップS52までの各処理をiをインクリメントしながら繰り返し行う。
【0024】
ステップS52においてiが「6」に達した場合には、図10のステップS53に移行して、弦番号iを「0」に指定し、iをインクリメントしながら以下の処理を行う。すなわち、プリングオフのデータb(i)をフレット番号kに指定し(ステップS54)、先に指定した弦番号iのフレット番号jに対応する接点スイッチ1[i,j]がオンからオフに変化したか否かを判別する(ステップS55)。接点スイッチ1[i,j]がオンからオフに変化した場合には、フレット番号kをRAM16のレジスタ34に転送してkをd(i)とする(ステップS56)。
【0025】
次に、指定した弦のd(i)及びc(i)を加算した値を新たなe(i)とする(ステップS57)。すなわち、押弦操作によって接点スイッチ1及び接点スイッチ2がともにオンとなっているフレット番号kに対応する音高データを実際の発音すべき音高データとする。次に、RAM16のレジスタ37を参照して、CONT(i)の値を読み出す。このときのCONT(i)の値は、接点スイッチ2がオンからオフに変化した時点から、接点スイッチ1がオンからオフに変化した時点までの経過時間を表している。この経過時間であるCONT(i)が所定値Cよりも小さいが否かを判別する(ステップS58)。すなわち離弦速度が所定値より速いか否かを判別する。CONT(i)が所定値Cよりも小さい(速い)場合には、プリングオフの奏法とみなし、発音フラグHF(i)を「1」にセットし(ステップS59)、音源に対してe(i)の発音指示を行う(ステップS60)。すなわち、離弦速度が所定値より速い離弦操作の態様のときの発音はプリングオフの発音となる。
【0026】
発音指示の後は、iをインクリメントする(ステップS61)。また、ステップS55において接点スイッチ1[i,j]がオンからオフへの変化がなかった場合、及びステップS58においてCONT(i)が所定値C以上である場合には、発音指示をすることなくステップS61に移行してiをインクリメントする。そして、iが「6」に達したか否かを判別する(ステップS62)。iが「6」未満である場合には、ステップS54に移行してステップS62までの各処理をiをインクリメントしながら繰り返し行う。ステップS62において、iが「6」に達した場合には、図4のステップS6に移行して、図10のステップS62までのループにおける各処理を繰り返し実行する。
【0027】
このように上記実施形態によれば、接点スイッチ1及び接点スイッチ2の状態変化によって押弦操作又は離弦操作の態様を検出し、その態様に応じてミュート処理の指令を発する。したがって、指盤部に音高を決定するための実際の弦をもたず、音高スイッチによって発音を行う場合でも、押弦操作や離弦操作をする手でミュート処理を可能とすることにより、ハンマリングオンやプリングオフ等のような弦楽器特有の演奏ができる。
【0028】
なお、上記各実施形態では、電子ギターの本体1の弾弦部に弦5を設け、指盤部2には実際の弦を設けず、弦に似た線状部材10を設けたが、弾弦部及び指盤部2に亘って弦を張ってもよい。ただし、この場合でもその弦の振動によっては音高は決定されず、指盤部内部に設けられた音高スイッチによって音高が決定する。そして、実施形態と同様に、この音高スイッチは、異なる押弦の変位量によってオンとなる2つの接点スイッチで構成され、押弦又は離弦によって2つの接点スイッチが時間的にずれてオン又はオフとなることは変わりない。
【0029】
また、押弦速度及び離弦速度を検出する速度検出手段としては、接点スイッチ1及び接点スイッチ2からなる音高スイッチに限定するものではない。例えば、速度検出手段として指盤部2に押弦の圧力を検出する圧力センサーを設け、圧力変化の速度を検出することにより、押弦速度及び離弦速度を検出する構成にしてもよい。
【0030】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、押弦又は離弦の操作速度が所定値よりも速いときには、弾弦操作の有無に拘わらず、指板部の操作位置に応じた音高の楽音の発音が指示される。したがって、指盤部に実際の弦をもたず音高スイッチのオン・オフによって音高を決定して発音を行う場合でも、素速く音高スイッチをオン又はオフ操作することによりハンマリングオン又はプリングオフを可能にして弦楽器特有の演奏ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態における電子ギターの図で、(A)はその平面図、(B)は指盤部の音高スイッチの構造を示す断面図。
【図2】図1における電子ギターの内部のシステム構成を示すブロック図。
【図3】図2におけるROM及びRAMのデータエリアを示す図。
【図4】実施形態におけるCPUの動作を示すフローチャート。
【図5】図4に続くCPUの動作を示すフローチャート。
【図6】タイマインタラプト処理のフローチャート。
【図7】RAMのレジスタにおけるカウンタ値のデータを示す図。
【図8】図5に続くCPUの動作を示すフローチャート。
【図9】図8に続くCPUの動作を示すフローチャート。
【図10】図9に続くCPUの動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
12 CPU
13 弾弦検出部
14 音高検出部
15 ROM
16 RAM
17 楽音発生回路
Claims (1)
- 発音を指示するための弾弦部及び音高を指示するための指板部を有する電子弦楽器において、
前記弾弦部への弾弦操作を検出する弾弦検出手段と、
前記指板部に設けられ、押弦又は離弦の操作速度を検出する速度検出手段と、
前記弾弦検出手段にて弾弦操作が検出されたときには、指板部の操作位置に応じた音高の楽音の発音を指示するとともに、前記速度検出手段にて検出された操作速度が所定値よりも速いときには、弾弦操作の有無に拘わらず、指板部の操作位置に応じた音高の楽音の発音を指示する制御手段と、
を備えたことを特徴とする電子弦楽器。
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