以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、この発明に係る電子楽器の全体構成の一実施例を示したハード構成ブロック図である。この実施の形態においては、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータの制御の下に各種の処理が実行されるようになっている。CPU1は、この電子楽器全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、通信バス1D(例えば、データ及びアドレスバスなど)を介してリードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3、記憶装置4、設定操作子5、表示機6、発音指示センサ7、フレットセンサ8、音源9、DSP(Digital Signal Processorの略)10、外部インターフェース12がそれぞれ接続されている。更に、CPU1には、タイマ割込み処理(インタラプト処理)における割込み時間や各種時間を計時するタイマー1Aが接続されている。すなわち、タイマー1Aは時間間隔を計数したり、所定の自動演奏データに基づき自動的に演奏される自動伴奏の演奏テンポを設定したりするためのテンポクロックパルスを発生する。このテンポクロックパルスの周波数は、設定操作子5の中の例えばテンポ設定スイッチ等によって調整される。このようなタイマー1AからのテンポクロックパルスはCPU1に対して処理タイミング命令として与えられたり、あるいはCPU1に対してインタラプト命令として与えられる。CPU1は、これらの命令に従って後述するメイン処理(図5参照)等の各種処理を実行する。
ROM2は、CPU1により実行あるいは参照される各種プログラムや各種データ等を格納するものである。RAM3は、発生させる音色や演奏テンポなどの各種演奏条件やCPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データなどを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。記憶装置4は、演奏時に用いる演奏条件等の各種パラメータ、CPU1が実行する各種の制御プログラム等を記憶するものである。前記ROM2に制御プログラムが記憶されていない場合、この記憶装置4(例えばハードディスク)に制御プログラムを記憶させておき、それを前記RAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、記憶装置4はハードディスク(HD)に限られず、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD−ROM)、光磁気ディスク(MO)、あるいはDVD(Digital Versatile Diskの略)等の着脱自在な様々な形態の外部記録媒体を利用する記憶装置であってもよい。あるいは、半導体メモリなどであってもよい。
設定操作子5は自動伴奏有無の指定、使用する音色や演奏テンポなどの各種演奏条件の入力、などの各種の設定を行うための操作子である。勿論、音高、音色、効果等を選択・設定・制御するために用いる数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボード、あるいは操作量に応じたピッチベンド値を設定することのできるピッチベンドホイールやスライダーなどの各種操作子を含んでいてもよい。設定操作子5の各操作子の操作状態が検出されると、その操作状態に応じたスイッチ情報が通信バス1Dを介してCPU1に出力される。表示機6は例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成されるディスプレイであって、各種演奏条件の設定状態やCPU1の制御状態などを表示する。
発音指示センサ7は、例えば弦楽器における弾弦位置に相当する位置に配設された線状部材などからなる複数の擬似弦(発音指示操作子7A)に対応して配設されるピエゾセンサ(圧電素子)等のセンサであって、演奏者による演奏操作に応じて擬似弦の振動(演奏操作に伴う擬似弦の移動動作)を検知することにより楽音演奏時における楽音の発音タイミングや楽音の強弱などを決定するためのものである(詳しくは後述する)。ミュート制御回路7´は、演奏者による上記発音指示操作子7Aに対する所定のタッチ状態を検知し、該タッチ状態に応じて演奏者による演奏操作のうちの1つであるミュート操作を検知するためのものである(詳しくは後述する)。フレットセンサ8は、楽音の音高を選択する複数のフレットスイッチ(音高指定操作子8A)の操作を検出するためのセンサであって、例えばウクレレなどの弦楽器におけるネック部に構成される各フレット毎に配設された各フレットスイッチに対応するようにして配設される。なお、音高指定操作子8Aは楽音演奏時における音高指定のために使用できるのは勿論のこと、演奏を行う際に用いるピッチやリズムなどを入力するための入力手段として使用することもできる。また、楽音の音高を選択するための音高指定操作子8Aは、ウクレレなどの弦楽器におけるネック形状をしたフレットスイッチの形態に限らない。
音源9は複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であり、通信バス1Dを経由して与えられた演奏者による音高指定操作子8A及び発音指示操作子7Aの操作に応じて発生された音高指定情報や発音指示情報などの演奏情報を入力し、これらの演奏情報に基づいて楽音信号を発生する。音源9から発生された楽音信号はDSP10により所定のディジタル信号処理が施され、該信号処理された楽音信号はアンプやスピーカなどを含むサウンドシステム11に与えられて発音される。スピーカは自然楽器におけるウクレレのサウンドホールに相当する位置にサウンドホールと同じような形状で設けられており、自然楽器と同様の音響発生位置から楽音を発生することによって、自然楽器と電子楽器との間に生ずる違和感を和らげるようにしている。
なお、上記した音源9とDSP10とサウンドシステム11の構成には、従来のいかなる構成を用いてもよい。例えば、音源9はFM、PCM、物理モデル、フォルマント合成等の各種楽音合成方式のいずれを採用してもよく、また専用のハードウェアで構成してもよいし、CPU1によるソフトウェア処理で構成してもよい。また、効果回路(図示せず)を音源9とサウンドシステム11との間に配置して前記音源9から発生された楽音信号に対して各種効果を与えるようにしてもよい。
外部インターフェース12は当該電子楽器と外部機器(図示せず)などとの間で自動演奏データなどの各種情報を送受信するための、例えばMIDIインターフェースや通信インターフェースなどである。MIDIインターフェースは、外部機器(この場合には、MIDI機器等)からMIDI規格の制御情報(MIDIデータ)を当該電子楽器へ入力したり、あるいは当該電子楽器からMIDI規格の制御情報を他のMIDI機器等へ出力するためのインターフェースである。他のMIDI機器はユーザによる操作に応じてMIDI形式のデータを発生する機器であればよく、鍵盤型、ギター型、管楽器型、打楽器型、身振り型等どのようなタイプの操作子を具えた(若しくは、操作形態からなる)機器であってもよい。通信インターフェースは、例えばLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークに接続されており、該通信ネットワークを介して外部機器(この場合には、パーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等)と接続され、当該外部機器で発生させた自動演奏データを電子楽器側に取り込むための通信インターフェースである。また、通信インターフェースは、通信ネットワークを介して接続されたサーバコンピュータから各種プログラムや各種データ等を当該電子楽器本体にダウンロードするためにも用いられる。なお、通信インターフェースは、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
なお、上記外部インターフェース12をMIDIインターフェースで構成した場合、該MIDIインターフェースは専用のMIDIインターフェースを用いるものに限らず、RS232−C、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、IEEE1394(アイトリプルイー1394)等の汎用のインターフェースを用いてMIDIインターフェースを構成するようにしてもよい。この場合、MIDIイベントデータ以外のデータをも同時に送受信するようにしてもよい。MIDIインターフェースとして上記したような汎用のインターフェースを用いる場合には、他のMIDI機器はMIDIイベントデータ以外のデータも送受信できるようにしてよい。勿論、データフォーマットはMIDI形式のデータに限らず他のデータ形式であってもよく、その場合はMIDIインターフェースと他のMIDI機器はそれにあった構成とする。
なお、本発明に係る電子楽器は設定操作子5や表示機6あるいは音源9等を1つの電子楽器本体に内蔵したものに限らず、それぞれが別々に構成され、外部インターフェースや各種ネットワーク等の通信手段を用いて各装置を接続するように構成されたものにも同様に適用できることは言うまでもない。
次に、本発明に係る電子楽器の具体的な外観構成について、図2を用いて説明する。図2は、この発明に係る電子楽器の外観構成の一実施例を示す上面概略図である。ただし、この実施例では自然楽器である4弦12フレット構成のウクレレを模擬した形状に全体を構成したウクレレ型の電子楽器(電子ウクレレ)を例に説明する。なお、ここでは図示を省略したが、図1に示した外部インターフェース12などが本体部Xの上面あるいは側面等に配設されていてよいことは言うまでもない。
本実施例に示すウクレレ型の電子楽器は、ボディ部Xとネック部Nとヘッド部Hとから構成されてなる。ボディ部Xにはウクレレの奏法で弾かれる擬似弦(発音指示操作子7A)が各弦支持部C1,C2にその両端が支持されるように配設されており、ネック部Nにはフレット部材F及びフレットスイッチ(音高指定操作子8A)が多数配設されている。この電子楽器は、自然楽器において左手でウクレレのフレット間にある弦を押さえるときのようにしてネック部Nの各フレット毎に擬似弦7Aの数に対応するだけ設けられたフレットスイッチ8Aを押下することによって発生させる楽音の音高を設定すると共に、自然楽器において右手でウクレレの弦を撥弦するようにしてボディ部Xに配設された擬似弦7Aを撥くことによって発生させる楽音の発音タイミングを指定することができるようになっている。すなわち、当該電子楽器は自然楽器であるウクレレの演奏操作や発音を擬似的に実現した電子ウクレレである。
図2に示した外観図から理解できるように、ヘッド部Hには設定操作子5や表示機6などが配設される。勿論、設定操作子5や表示機6などはヘッド部Hの上面だけに配設されていることに限らず、本体部Xの上面、あるいはヘッド部H又はネック部Nの側面に配設されていてもよい。このネック部Nの詳細な構成を説明すると、ネック部Nにはフレット部材F及びフレットスイッチ(音高指定操作子8A)が多数配設され、各フレットスイッチ8Aの操作に応じて音高が入力される。本実施例に示すウクレレ型の電子楽器において、フレット部材Fは振動する弦の長さを規定するという自然楽器におけるウクレレのフレットとしての機能を果たすものではなく、異なる音高を指定するフレットスイッチ8Aの位置のめやすとするものである。本体部X上に配設される擬似弦7Aとしては、自然楽器のウクレレに配設されている弦の太さに倣って太さを異ならせることで弦のフィーリングを模した金属ワイヤーなどの導電性を有する線状部材で構成されたものが複数(ここでは4本)設けられる。
本体部Xには、楽音を発生するためのスピーカSが楽器外部に向けて収容されている。このスピーカSは自然楽器におけるウクレレのサウンドホールに相当する位置に自然楽器と同様のサウンドホールを模擬した形状で本体部Xに設けられる。本体部Xの内部には、この楽器全体の動作を制御するための制御回路やミュート制御回路、あるいは記憶装置4や音源9やDSP10などが収容されている。制御回路は図1に示したCPU1、ROM2、RAM3などを含むコンピュータで構成されてなり、そこにおいて演奏者による演奏操作に応じて楽音を制御する処理などの各種処理は、コンピュータがこれらの各種処理を実現する所定の制御プログラムを含むソフトウエアを実行することにより実施される。勿論、こうした各種処理はコンピュータソフトウエアの形態に限らず、DSP(Digital Signal Processor)によって処理されるマイクロプログラムの形態でも実施可能であり、また、この種のプログラムの形態に限らず、ディスクリート回路又は集積回路若しくは大規模集積回路等を含んで構成された専用ハードウエア装置の形態で実施してもよい。なお、ミュート制御回路については後述することから(後述する図4参照)、ここでの説明を省略する。
なお、上記した電子楽器において、所定の自動演奏データに従って演奏者が次に操作すべきフレットスイッチ(音高指定操作子8A)を前もって指示する演奏ガイドを行うために、演奏タイミングの微少時間前あるいは演奏タイミングと同時に点灯する例えばLEDのような発光体を、複数のフレットスイッチ8Aの近部あるいはフレット毎の個々のフレットスイッチ8Aそのものを点灯するような位置に配置してもよい。また、自動演奏データに従って演奏者が操作すべき擬似弦(発音指示操作子7A)の操作タイミングを指示する演奏ガイドを行うために、自動演奏のテンポに応じて点滅する例えばLEDのような発光体を擬似弦7Aの近部に設置するようにしてもよい。こうすると、ユーザはこれらの発光体の点灯を見て操作すべきフレットスイッチ8Aの位置、又は擬似弦7Aの操作タイミングを容易に理解することができるようになり便利である。
図3は、本体部Xの内部構造の一部を拡大して示した部分断面拡大図である。この図3に示すように、導電性を有した金属などの線状部材からなる擬似弦(発音指示操作子7A)は、その一方の端が弦支持部C2側においてゴムブッシュ21,22と台座23とにより保持されている。上方側に配置されたゴムブッシュ21は擬似弦7Aの一端を保持するものであって、その有する弾力性を用いて擬似弦7Aが振動した場合であっても、振動が終息するに伴い所定の初期位置に擬似弦7Aを戻すように設定される。すなわち、演奏者による擬似弦7Aを撥く操作に対して戻す方向に力がかかるようにしている。下方側に配置されたゴムブッシュ22は擬似弦7Aの押し込み方向に対して位置規制を行うものであり、擬似弦7Aが押し込まれて変形させられた場合であっても元の状態に戻るようになっている。ブッシュ押さえ板23は上記ゴムブッシュ21,22を本体部Xとの間に挟持するためのものであり、ネジ24により本体部Xに固定されている。
擬似弦7Aのもう一方の端は、弦支持部C1側において本体部Xに取り付けられたゴムブッシュ31の開口部内を貫通するようにしてから台座32に取り付けられている。ゴムブッシュ31の開口部は擬似弦7Aが所定範囲内において自由に動作することのできるように、つまり擬似弦7Aの振動を妨げない程度に余裕を持った大きさの孔で形成されている。図3(b)に示す図3(a)を矢印Y方向から見た場合において、台座32は導電性を有する金属製の薄い板(例えば銅板など)で図示のような形状に形成されており、その上部の一端に対して擬似弦7Aをかしめて固定することができるようになっている。そして、台座32はその下部において、ネジ34により本体部Xに垂直方向に起立した状態となるようにして固定される。したがって、演奏者の操作に応じて擬似弦7Aが振動した場合には、その振動にあわせて当該台座32も随時に変形する。台座32の表面上にはピエゾセンサ(圧電素子)33が固定されており、該ピエゾセンサ33は擬似弦7Aの振動に伴って台座32が変形した場合に信号を発生する。すなわち、台座32の変位量に応じた加速度が擬似弦7Aを撥じいたときに生じ、この加速度をピエゾセンサ33が検知することにより撥弦の強さに応じた出力が得られる。該発生した信号は、第1の配線35を介して制御回路へと出力される。図示しない制御回路では当該信号によって操作された擬似弦7Aを特定し、該特定した擬似弦7Aに従う楽音を発生するよう制御が行われる。
この実施例に示した本体部Xの内部構造では、台座32を本体部Xに対して起立した状態に固定していることから、従来の片持ち構造と比較してより擬似弦7Aの振動の強弱を的確に捉えることができ、より正確に擬似弦7Aの振動の強さに応じた出力を得ることができるようになる。また、擬似弦7Aの数が多い場合であっても、従来と比べて小さなスペース内に収納することができる、という利点もある。勿論、組み立ても簡単である。なお、台座32の寸法、形状、厚み等の設定、あるいは台座32に対するピエゾセンサ33の配置位置などを適宜に変えることにより、演奏者の感覚にあった出力を得るように調整することができるようになっていてよいことは言うまでもない。
また、台座32には上記第1の配線35とは別の第2の配線36が台座32本体と電気的に接続されており、この第2の配線は本台座32に接続されている擬似弦7Aに流れている電流をミュート制御回路(後述する図4参照)に出力するためのものである。詳しくは後述するが、複数の擬似弦7Aのうち1本の擬似弦7Aは接地されており、その他の擬似弦7Aに対しては電流が流されている。ミュート制御回路では各擬似弦7Aから入力された電流の状況(つまり導電状況)に従ってミュート操作の検知を行い、演奏者によるミュート操作が検知された場合には発音中の楽音に対してミュート制御つまり強制的に楽音を消音する制御を行う。以上のような台座32を含む部分はカバーZにより全体が覆われており、外部の衝撃や埃などから保護されている。
次に、演奏者によるミュート操作の検知を行うためのミュート制御回路7´について、図4を用いて簡単に説明する。図4は、ミュート制御回路の一実施例を示す回路図である。この図4に示すように、複数の擬似弦7Aのうち1本の擬似弦7Aは接地されており(ここでは最上段に示した一番太い第1弦を接地している)、その他の擬似弦7Aに対しては図示しない電流源により電流Iが常に流されている。接地されている擬似弦7A以外の擬似弦7Aは、論理回路Kへと電気的に接続されている。論理回路Kは各擬似弦7Aの導電状況を検出するための回路であって、この実施例に示すNOR回路においては例えば各擬似弦7Aからの電流入力がある場合を「1」、無い場合を「0」として、接地されている擬似弦7A以外の3つの擬似弦7Aからの電流入力有無の組み合わせに応じた導電状況に従って、ミュート制御のための信号(ミュート制御信号)を制御回路に対して出力する。ここでは、3つの擬似弦7Aの全てから入力がない場合に「1(ミュート操作である)」を、少なくとも1つの擬似弦7Aから入力がある場合に「0(ミュート操作以外の操作である)」を出力する。
この図4では各擬似弦7Aにスイッチング素子SWを配置した図を示しているが、このスイッチング素子SWは演奏者の手などによりスイッチングされる様子を便宜的に示したものである。すなわち、演奏者はミュート操作を行う際には全ての擬似弦7Aを同時に演奏者自身の掌や手の腹部分などで触れる。そうした操作が行われた場合、擬似的に各スイッチング素子SWはスイッチングオン状態となって各擬似弦7Aを流れている電流は接地されている擬似弦7A側へと流れていくことになり、論理回路Kへの入力は全て「0」となる。したがって、論理回路Kは制御回路に対してミュート制御信号「1」を出力する。他方、ミュート操作でなく通常の演奏操作により各擬似弦7Aが触れられた場合には、各スイッチング素子SWはスイッチングオン状態とならずにスイッチングオフ状態のままであることから、論理回路Kへの入力は触れられた擬似弦7Aに関する入力のみが「0」となる。したがって、論理回路Kは制御回路に対してミュート制御信号「0」を出力する。制御回路では、論理回路Kから取得したミュート制御信号が「1」である場合を「ミュート操作」として、ミュート制御信号が「0」である場合を「ミュート操作以外の操作」として判定する。このようにして、全ての擬似弦7Aを同時に触れた場合には演奏者の手を介したスイッチング操作がなされ、これにより演奏者がミュート操作をしたことを検知することができるようになっている。この実施例では、演奏者が4弦全てを同時に触れた操作をした場合をミュート操作として判断する。
以上のように、この発明に係る弦楽器型の電子楽器においては、各擬似弦7Aを導電性部材からなる台座32を介してミュート制御回路に電気的に接続し、ミュート制御回路で各擬似弦7Aの導電状況に応じて演奏者による演奏操作のうちの1つの演奏操作態様としてのミュート操作を検知させ、該検知した結果に基づき演奏者によるミュート操作に応じた楽音の制御を行うようにしている。これによると、演奏者は擬似弦7Aを触れるだけでミュート操作を行うことができ、自然楽器と同様の操作態様でミュート操作を行うことができ操作性が向上する。
図1に示した電子楽器では、演奏者による演奏操作に従って、つまりフレットスイッチ(音高指示操作子8A)及び擬似弦(発音指示操作子7A)の操作状況を検知して、該操作状況に応じて楽音の制御を行う。そこで、こうした処理を実行する「メイン処理」について、図5を用いて説明する。図5は、「メイン処理」の一実施例を示すフローチャートである。以下、図5に示したフローチャートに従って、当該処理の詳細な動作を説明する。この「メイン処理」は当該電子楽器本体の電源がオンされるのと同時に処理が開始されて、当該電子楽器本体の電源がオフされるまで繰り返し処理が続けられるものである。
まず、ステップS1では初期化を実行する。初期化としては、例えばRAM3に記憶されている各種データを消去する、あるいは当該電子楽器に設定済みの演奏条件等の機器設定をクリアするなどの処理がある。ステップS2では、「設定処理」を実行する。当該「設定処理」では設定操作子5の操作状況を取得し、該取得した操作状況に応じて当該電子楽器に対する機器設定などの各種設定処理を実行する。自動伴奏有無の指定、使用する音色や演奏テンポなどの各種演奏条件の入力、などの演奏条件等の設定もここに含まれる。ステップS3では、「楽音信号の生成処理」を実行する。詳しくは後述するが(後述する図6参照)、当該「楽音信号の生成処理」では演奏者による擬似弦7A及びフレットスイッチ8Aの操作に応じた楽音信号を順次に生成する処理を実行する。この際に、演奏者による擬似弦7A及びフレットスイッチ8Aの操作の検知はピエゾセンサ(圧電素子)33やミュート制御回路からの出力信号に従って行われる。ステップS4では、前記生成した楽音信号に従って楽音を生成しスピーカ等のサウンドシステム11から発音する発音処理を実行する。
上述した「メイン処理」において実行される「楽音信号の生成処理」(図5のステップS3参照)について、図6を用いて説明する。図6は、「楽音信号の生成処理」の一実施例を示すフローチャートである。この「楽音信号の生成処理」は、演奏者により操作された演奏操作子を検出して、該検出した演奏操作子に応じて発生させる楽音信号を制御する処理である。
ステップS11では、ピエゾセンサ33(圧電素子)からの出力があるか否かを判定する。すなわち、演奏操作子のうち擬似弦7Aが演奏者により操作され、それに応じて各擬似弦7Aに対応して配置されている各ピエゾセンサ33から出力信号を取得したか否かを判定する。演奏者による擬似弦7Aの操作がなくピエゾセンサ33からの出力信号を取得していない場合には(ステップS11のNO)、ステップS15の処理へジャンプする。一方、演奏者による擬似弦7Aの操作が行われ、それに伴うピエゾセンサ33からの出力信号を取得している場合には(ステップS11のYES)、ノートオン指示のフレットスイッチ8Aから列を特定し(ステップS12)、音高を決定して(ステップS13)、楽音信号を生成する(ステップS14)。すなわち、擬似弦7Aに対応するようにして配置されている複数のフレットスイッチ8Aの列から操作された擬似弦7Aに対応する列を特定し、該特定した列のうち操作されているフレットスイッチ8Aに応じて決定された音高の楽音信号を生成する。
ステップS15では、現在発音中であるか否かを判定する。現在発音中でないと判定した場合には(ステップS15のNO)、当該処理を終了する。他方、現在発音中であると判定した場合には(ステップS15のYES)、フレットスイッチ8Aの操作変更が行われたか否かの判定を行う(ステップS16)。フレットスイッチ8Aの操作変更が行われていないと判定した場合には(ステップS16のNO)、ステップS20の処理へジャンプする。一方、フレットスイッチ8Aの操作変更が行われたと判定した場合には(ステップS16のYES)、発音中のフレットスイッチ8Aから列を特定し(ステップS17)、音高を決定して(ステップS18)、音高を変更するように楽音信号を生成し直し出力する(ステップS19)。すなわち、複数のフレットスイッチ8Aの列から新たに操作された擬似弦7Aに対応する列を特定し、現在発音中の楽音の音高から該特定した列のうち新たに操作されたフレットスイッチ8Aに応じて決定される音高へと音高を変更した楽音信号を生成する。
ステップS20では、各擬似弦7Aを導通している電流が台座32を介して導電しているか否かを判定する。導電していないと判定した場合には(ステップS20のNO)、発音中の楽音全てに対してミュート、つまり強制的な消音を行うように制御する。上述したように、ミュート操作された場合には各擬似弦7Aを導通している電流が導電しないことから、ミュート制御回路(図4参照)ではミュート制御信号として「1」を出力する。そこで、ミュート制御回路から取得したミュート制御信号が「1(導電していない)」であるか「0(導電している)」であるかを判定し、取得したミュート制御信号が「1」である場合を「ミュート操作」として、取得したミュート制御信号が「0」である場合を「ミュート操作以外の操作」として、それぞれの演奏操作に応じた楽音信号を生成するように制御する。
なお、上述した実施例では演奏者が本体部Xに配置されている4本の擬似弦7Aの全てを同時に触れた操作を行った場合をミュート操作として判断するようにしたがこれに限らず、少なくとも基準とする1本の擬似弦7A(つまり、接地されている擬似弦7A)を含む複数の擬似弦7Aを同時に触れた場合に、触れられた擬似弦7Aの操作に応じて発生した楽音のみをミュート制御するようにしてもよい。
1…CPU、1A…タイマー、2…ROM、3…RAM、4…記憶装置、5…設定操作子、6…表示機、7…発音指示センサ、7A…発音指示操作子(擬似弦)、8…フレットセンサ、8A…音高指定操作子(フレットスイッチ)、9…音源、10…DSP、11…サウンドシステム、12…外部インターフェース、21(22、31)…ゴムブッシュ、23…ブッシュ押さえ板、24(34)…ネジ、32…台座、33…圧電素子、35…第1の配線、36…第2の配線、1D…通信バス、S…スピーカ、F…フレット部材、X…本体部、N…ネック部、H…ヘッド部、C1(C2)…弦支持部