JP3715907B2 - 電気泳動表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電泳動粒子を移動させて表示を行う電気泳動表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタル技術の目覚しい進歩により、個人が扱うことのできる情報量は飛躍的に増大している。これにともない、情報の出力手段として、低消費電力かつ薄型の表示装置の開発が盛んに行われるようになった。中でも液晶表示装置は、こうしたニーズに対応できる表示装置として活発な開発が行われ商品化されている。しかしながら、現在の液晶表示装置には、画面を見る角度や、反射光により画面上の文字が見ずらく、また光源のちらつき・低輝度等から生じる視覚へ負担が重いという問題があり、この問題が未だ十分に解決されていない。このため、低消費電力、視覚への負担軽減などの観点から反射型表示装置が期待されている。
【0003】
その一つとして、Harold D. Lees等により電気泳動表示装置が提案されている(米国特許USP3612758公報)。
【0004】
図21(a) は、その電気泳動表示装置の構造の一例を示す図であるが、この種の電気泳動表示装置は、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板1a,1bと、これらの基板1a,1bの間に充填された絶縁性液体2と、該絶縁性液体2に分散された多数の着色帯電泳動粒子3と、それぞれの基板1a,1bに沿うように各画素に配置された表示電極15a,15bと、を備えている。なお、符号7は、画素Aと画素Aとの間に設けられた隔壁であって、着色帯電泳動粒子3の他の画素への移動を防止し、均一表示を維持するために設けられたものである。この装置において、着色帯電泳動粒子3は、正極性又は負極性に帯電されているため、表示電極15a,15bに印加される電圧の極性に応じていずれかの表示電極15a又は15bに吸着されるが、絶縁性液体2及び着色帯電泳動粒子3はそれぞれ異なる色に着色されているため、着色帯電泳動粒子3が観察者側の表示電極15aに吸着されている場合には該粒子3の色が視認され(図21(b) 参照)、着色帯電泳動粒子3が他側の表示電極15bに吸着されている場合には絶縁性液体2の色が視認されることとなる(図21(a) 参照)。したがって、印加電圧の極性を画素毎に制御することによって、様々な画像を表示することができる。以下、このタイプの装置を“上下移動型”とする。
【0005】
しかしながら、このような上下移動型の電気泳動装置では、絶縁性液体2に染料やイオンなどの発色材を混合しなくてはならず、このような発色材の存在は、新たな電荷の授受をもたらすために電気泳動動作において不安定要因として作用しやすく、表示装置としての性能や寿命、安定性を低下させる場合があった。
【0006】
かかる問題を解決するものとして、図22に示すタイプの電気泳動表示装置(以下“水平移動型電気泳動表示装置”とする)が特開昭49−5598号公報や特開昭49−024695号公報や特開平11−202804号公報に開示されている。かかる水平移動型電気泳動表示装置は、所定間隙を開けた状態に配置された一対の基板1a,1bと、これらの基板1a,1bの間に充填された絶縁性液体2と、該絶縁性液体2に分散された多数の着色帯電泳動粒子3と、各画素に配置された一対の表示電極25a,25bと、を備えているが、一対の表示電極25a,25bは、上述のタイプのように絶縁性液体2を挟み込むように配置されているのではなく、一方の基板1bに沿うように並べて配置されている。かかる水平移動型電気泳動表示装置の場合、絶縁性液体2は透明であれば良くて発色材を混入する必要が無いため、上述のような問題を回避できる。そして、該装置においては、一方の表示電極25aは帯電泳動粒子3と同じ色(例えば、黒色)の着色層で被覆されていて、他方の表示電極25bは他の色(例えば、白色)の着色層で被覆されている。着色帯電泳動粒子3は、それらの表示電極25a,25bへ印加する電圧の極性に応じて水平に(基板に沿う方向に)移動し、表示電極25a又は25bに吸着されるが、着色帯電泳動粒子3が表示電極25aに吸着されている場合には表示電極25bの色の方が視認され易くなり(図22(a) 参照)、着色帯電泳動粒子3が表示電極25bに吸着されている場合には画素全体が帯電泳動粒子3と同じ色に視認される(図22(b) 参照)。したがって、印加電圧の極性を画素毎に制御することにより、種々の画像を表示することができる。
【0007】
ところで、画素がマトリックス状に配置された表示装置を、電気的にアドレスする方式としては大別して、アクティブマトリックス方式と単純マトリックス方式の2つがある。
【0008】
アクティブマトリックス方式では、各画素それぞれに対して薄膜トランジスタ(TFT)などのスイッチング素子を形成し、各画素に印加する電圧を画素ごとに独立に制御する。この方式を用いれば、水平移動型電気泳動表示装置を、高い表示コントラストで駆動することが可能である。しかしながら一方で、
・ アクティブマトリックス方式はプロセスコストが高い
・ 薄膜トランジスタのプロセス温度が高くポリマー基板上への形成が困難である
といった問題を抱える。この問題は、低コストでフレキシブルなディスプレイを目指すペーパーライクディスプレイにおいては特に重要である。これらの問題を解決するために、印刷プロセスが適用可能なポリマー材料による薄膜トランジスタの形成プロセスや、基板加熱を要しないTFT転写方式によるプロセスが提案されているが、実用化の可能性は未だ未知数である。
【0009】
一方、単純マトリックス方式は、アドレスのために必要な構成要素がX−Y電極ラインのみであるから低コストであり、ポリマー基板上への形成も容易である。選択画素に対して書き込み電圧を印加する場合は、選択画素を交点とするX電極ラインとY電極ラインに対して、書き込み電圧に相当する電圧を印加すればよい。ところが、電気泳動表示装置を単純マトリックス方式により駆動しようとすると、選択された画素の周辺画素まで一部書き込まれてしまうという現象(いわゆるクロストーク現象)が発生し、表示コントラストが著しく劣化してしまう。これは電気泳動表示装置が、書き込み電圧に対して明確な閾値特性を持たないために必然的に発生する問題である。
【0010】
このような問題を解決するものとして、原理的に閾値を持たない電気泳動表示において、一対の表示電極に加えて制御電極を付加し、それら3電極構造によって単純マトリックス駆動を実現する提案がなされている。
【0011】
このような3電極構造に関する提案はほとんどが上下移動型電気泳動表示装置に関してなされたものであり、例えば特公昭61−016074号公報(USP4203106)がある。
【0012】
水平移動型電気泳動表示装置における3電極構造の提案は唯一、特許公報第02740048号(USP5345251)においてなされている。但しその公報においては、絶縁性液体2は透明ではなく着色されていると考えられ、前述の特開昭49−5598号公報及び特開平11−202804号公報及び本発明が対象とする、絶縁性液体が透明であることを特徴とする水平移動型電気泳動表示装置とは異なるものである。
【0013】
特許公報第02740048号では制御電極の配置に関して2つの構成(第1の構成及び第2の構成)が開示されている。第1の構成では、制御電極(グリッドライン)は、図23(a) に符号26aで示すように、フェースプレート1bに対して25−116μmの間隔で対向配置された後方プレート1a上に形成される。なお、符号25aは陰極素子を示し、符号25bは陽極素子を示し、符号27は陽極素子上に形成されたクロム層、符号28はクロム層上に形成されたフォトレジストを示す。なお、これらのクロム層27及びフォトレジスト28によって、陰極素子25aと陽極素子25bの境界に約0.3μmの段差が形成されている。
【0014】
また、第2の構成では、制御電極(グリッドライン)は、図23(b) に符号26bで示すように、フェースプレート1b上の陰極素子25aと陽極素子25bとの間に配置されている。なお、第1構成、第2構成いずれのタイプにおいても、一画素内には、複数のライン電極が集合したフォーク状陰極素子25aと、この陰極素子25aの各ライン間に配置された複数のライン電極が集合したフォーク状陽極素子25bがフェースプレート1b上に配置される(図24参照)。図23においては説明の便宜上、陰極素子25a、陽極素子25bともに1ラインで構成される場合について示してある。
【0015】
次に、図23(a) に示す電気泳動表示装置(第1構成)の基本動作について、図25に沿って説明する。帯電泳動粒子3には、黄色で負極性に帯電されたものを用いた。
【0016】
いま、グリッドライン26aに0V、陽極素子25bに0V、陰極素子25aに約+12Vの電圧を印加すると、帯電泳動粒子3は陰極素子25aの表面に移動し、画素は黄色表示状態となる(図25(a) 参照)。
【0017】
次に、グリッドライン26aに0V、陽極素子25bに+15V、陰極素子25aに0Vの電圧を印加すると、帯電泳動粒子3は陽極素子25bを覆うように移動する(図25(b) 参照)。
【0018】
さらに、同図(a) の状態の後、グリッドライン26aに書き込み禁止電圧として負電圧を印加すると、帯電泳動粒子3の陽極素子25bへの移動は阻止される(同図(c) 参照)。
【0019】
一方、第2の構成においては、グリッドライン26bに書き込み禁止電圧を印加した画素では、陰極素子25aと陽極素子25bとの間における帯電泳動粒子3の移動(画素書き込み)が禁止され、そのような書き込み禁止電圧を印加しない画素では、陰極素子25a及び陽極素子25bに印加する電圧に従って帯電泳動粒子3が移動して画素書き込みがなされる。なお、この第2の構成においては、グリッドライン26bを含めた駆動に関係する全ての構成要素25a,25bが同一プレート1b上に配置されるため、両プレート1a,1bを貼り合わせる工程での位置合わせを簡素化できる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した第1及び第2の構成の水平移動型電気泳動装置は、主に次に述べるような問題点を抱えていた。
【0021】
第1の構成においては、互いに隣接するグリッドライン(制御電極)26a,26aに異なる電圧を印加すると、その隣接するグリッドライン26a,26aを含む空間で電界的な相互作用が生じる問題がある。この問題を詳しく説明すると、陰極素子25aと陽極素子25bとに表示用の電圧を印加しておいて、隣接する2本のグリッドライン26a,26aの一方には帯電泳動粒子3の移動を禁止する保持電圧を印加して、もう一方のグリッドライン26aでは保持電圧を解除しておくと、本来保持電圧が解除されている画素では帯電泳動粒子3の移動がスムーズに起きるはずなのだが、保持電圧を印加している方のグリッドライン26aの影響を受けてしまい、帯電泳動粒子3の移動が円滑になされなかった。このような問題を回避するためには制御電圧を低くする方法もあるが、保持電圧を印加している方の画素において保持効果(帯電泳動粒子3の移動を禁止する効果)が低下し、クロストーク現象が発生するという問題があった。
【0022】
また、プレート1a,1bをフレキシブルな材料にて構成する場合、電気泳動表示装置は折り曲げることができる反面、後方プレート1aとフェースプレート1bとの間隙を精度良く保つことが困難である。第1の構成では、グリッドライン(制御電極)26aと陰極素子25a等とは互いに異なるプレート1a,1bに形成されていて間隙が変動し易く、帯電泳動粒子3の制御性が悪くなるという問題があった。
【0023】
一方、第2の構成においては、グリッドライン(制御電極)26bと陰極素子25a等とは同じプレート1bに配置されていることから上述のような問題が発生せず、フレキシブルなプラスチック基板をプレートに用いることができるという特徴がある。しかし、帯電泳動粒子3は、陰極素子25aと陽極素子25bとの間の移動こそ禁止されるものの、図26(a) (b) に示すようにグリッドライン26bから遠ざかるように移動してしまって分布の偏りが発生し、陰極素子25a又は陽極素子25bの表面に均一に分散されるようには配置されず、表示コントラストが著しく低下してしまうという問題があった。また、図26(a) (b) に示すように、後方プレート1aの側にまで一旦移動してしまった帯電泳動粒子3は、グリッドライン26bや陰極素子25a等へ印加される電圧の極性を変えただけでは後方プレート1aからは遊離せず、制御不能になってしまうという問題があった。
【0024】
そこで、本発明は、上述した問題を解決する電気泳動表示装置を提供することを目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、所定間隙を開けた状態に配置された第1及び第2基板と、これらの基板の間隙に配置された絶縁性液体と、該絶縁性液体に分散された複数の着色帯電泳動粒子と、を備えた電気泳動表示装置において、
前記基板の間隙に前記第2基板に沿って段部が配置されることに基づき、前記絶縁性液体の厚い部分に対向する下段面と、前記絶縁性液体の薄い部分に対向する上段面とが各画素に形成され、
該下段面に沿うように第1表示電極が配置され、前記上段面に沿うように第1制御電極と第2表示電極とが配置され、
前記第1制御電極は、印加電圧を変えることにより、前記第1表示電極と前記第2表示電極との間の前記帯電泳動粒子の移動を許可または禁止する電極であり、前記第2表示電極と比較して前記第1表示電極に近接する側に、かつ、前記基板にほぼ平行な方向に前記第2表示電極よりも突出するように配置され、
前記第1表示電極が占める領域と、前記第2表示電極が占める領域との境界部分に、前記第1制御電極が占める領域が形成されてなる、ことを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図12を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本発明に係る電気泳動表示装置は、例えば図1(a) に符号D1で示すように、所定間隙を開けた状態に配置された第1及び第2基板1a,1bと、これらの基板1a,1bの間隙に配置された絶縁性液体2と、該絶縁性液体2に分散された複数の着色帯電泳動粒子3と、を備えている。そして、これらの基板1a,1bの間隙に第2基板1bに沿って段部4が配置されることに基づき、絶縁性液体2の厚い部分に対向する下段面F1と、絶縁性液体2の薄い部分に対向する上段面F2とが各画素Pに形成されている。
【0028】
また、下段面F1に沿うように第1表示電極5aが配置され、上段面F2に沿うように第1制御電極6aと第2表示電極5bとが配置されている。ここで、前記第1制御電極6aは、前記第2表示電極5bと比較して前記第1表示電極5aに近接する側に配置されている。また、この電気泳動表示装置D1をz方向から眺める場合においては、各画素は、xy平面にて、
・ 第1表示電極5aが占める領域(図1(a) 及び図2の符号P1参照)と、
・ 第2表示電極5bが占める領域(図1(a) 及び図2の符号P2参照)と、
を有するが、該第1制御電極6aの端部は、前記第2表示電極5bの端部よりも、(xy平面内にて)基板1a,1bにほぼ平行な方向に突出されていて、これらの領域P1、P2の境界部分に“第1制御電極6aが占める領域P3”が形成されるようにしている。つまり、表示をつくる領域の中で、第2表示電極5bが第1制御電極6aを完全には被覆しない関係が成り立つようにしている。
【0029】
なお、図1(a) では、第1制御電極6aは第2表示電極5bに重なるように配置されているが、重ならないように配置しても良い。すなわち、領域P1、P2の境界部分にだけ環状に第1制御電極6aを配置しても良い。
【0030】
また、図1に示す電気泳動表示装置D1では、下段面F1(すなわち、凹部E)は画素Pのほぼ中央部に1つだけ配置され、かつ円形に形成されているが、配置位置・個数や配置形状はこれらのものに限定されるものではない。例えば、
・ 画素の中央部から偏心した位置に形成しても、
・ 円以外の形状であっても、
・ 図3に示すように、各画素に2つ以上ずつ形成しても、
良い。また、図1や図3に示す電気泳動表示装置では、“第1表示電極5aが占める領域P1”の方が“第2表示電極5bが占める領域P2”によって囲まれるように構成されているが、その関係が逆であっても良い。すなわち、“第1表示電極が占める領域”を画素周縁部に形成し“第2表示電極が占める領域”を画素中央部に配置すると良い。具体的には、“第2表示電極が占める領域”を環状に配置しても良い。
【0031】
ところで、画素サイズが125μm×125μmの場合には、帯電泳動粒子3の粒径を0.5〜10μmとし、第1基板1aと第2基板1bとの間隙を10〜100μmとし、段部4の段差寸法は5〜70μm程度にすれば良い。一般的には、段部4の段差寸法は、帯電泳動粒子3の粒径の数倍〜数百倍にすると良い。
【0032】
ところで、図15(a) に示すように、前記第1基板1aの側に第2制御電極6bを配置しても良い。この電極6bは第1基板1aのほぼ全面に形成しておくと良く、透明にすると良い。なお、このように配置した第2制御電極6bに適正な電圧を印加した場合には、段部4の高さ(段差)を泳動粒子径の数十倍程度に高くした場合であっても帯電泳動粒子3を第1表示電極5aから第2表示電極5bに円滑に移動させることができ、帯電泳動粒子3の凹部への残留や、該残留に伴うコントラストの低下を防止できる。
【0033】
また、これらの電極5a,5b,6a,6bにはそれぞれ引き回し配線(図示z方向に互いにずれる状態で互いに絶縁された状態に配置配置されたもの)を接続し、それらの引き回し配線を介して各電極5a,5b,6a,6bに電圧印加手段を接続して電圧を印加するようにすると良い。
【0034】
またさらに、第2表示電極面が、各電極の引き回し配線を覆うように径背されても良い。こうすることで、各電極の引き回し配線が第2表示電極面により完全に遮蔽され、帯電泳動粒子の駆動に対する配線からの漏れ電界の影響を防止することができる。電圧によって表示を行う方式である電気泳動表示装置の場合、配線からの漏れ電界によって、表示劣化が発生するという大きな問題があった。本発明では、このような配線からの漏れ電界の遮蔽のため、新たにシールド電極等を設けることなく、表示電極に遮蔽効果を持たせることができるため、構成のコンパクト化、製造容易化をおこなうことができる。
【0035】
図15、16は、本発明における電気泳動表示装置の平面図であるが、第2表示電極面が、複数の画素に及んで一体に形成されている。このことが、第2表示電極による遮蔽効果を生み、第1表示電極や第1制御電極の引き回し配線からの漏れ電界による、帯電泳動粒子の不必要な駆動(つまり、表示劣化)を防止することができる。このような遮蔽効果は、本発明の構成上の顕著な特徴である、階層的な電極配置に由来するものであり、特許公報第02740048号に開示されているような、2つの表示電極が嵌合して配置されてなる従来の構成では不可能であり、明らかにことなるものである(図24参照)。
【0036】
ところで、本発明に係る電気泳動表示装置は、第1表示電極5a又は第2表示電極5bを覆う位置に移動させた帯電泳動粒子3を、絶縁性液体2を介して視認するものであり、水平移動型である。このため、絶縁性液体2は、帯電泳動粒子3を視認できる程度に透明にすると良い。そして、いずれか一方の表示電極5a又は5bには着色帯電泳動粒子3と同じ色を付し、他方の表示電極5b又は5aには異なる色を付すと良い。例えば、着色帯電泳動粒子3を黒色、第1表示電極5aを黒色、第2表示電極5bを白色としても良いが、もちろんこれに限られるものではなく、配色の組み合せは自由である。また、カラー表示をしたい場合には、着色帯電泳動粒子3を黒色、一方の表示電極5a又は5bを黒色、他方の表示電極5b又は5aを適宜赤・緑・青色とすると良い。なお、電極に色を付す方法としては、
・ 電極自体を着色する方法
・ 電極とは別に着色層を設ける方法
・ 電極を覆うように形成した絶縁層を利用する方法(例えば、絶縁層自体の色を利用したり、絶縁層に着色材料を混ぜ込む方法)、
を挙げることができる。
【0037】
なお、一方の電極を黒色とし他方の電極を白色とする場合、それらの面積比は3:7程度にすると良い。例えば、第1表示電極5aを黒色とし、第2表示電極5bを白色とする場合、第1表示電極5aが占める領域P1は画素面積の10〜30%とし、第2表示電極5bが占める領域P2は画素面積の90〜70%程度にすると良い。
【0038】
その他の構成について説明する。
【0039】
画素と画素とは隔壁部材7にて仕切るようにしても良い。これにより、画素間における帯電泳動粒子3の移動を防止できる。
【0040】
また、電極5a,5b,…を覆うように絶縁層を形成すると良く、絶縁層を形成した場合には、各電極5a,5b,…から帯電泳動粒子3への電荷注入を防止できる。この絶縁層に用いる材料としては、薄膜でもピンホールが形成されにくく、低誘電率の材料、具体的には、アモルファスフッ素樹脂、高透明ポリイミド、PET等が好ましい。
【0041】
さらに、基板1a,1bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)等のポリマーフィルム或いはガラス、石英等の無機材料を使用することができる。
【0042】
またさらに、帯電泳動粒子3としては、絶縁性液体中で正極性又は負極性の良好な帯電特性を示す材料を用いると良い。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂を用いると良く、黒色に着色する場合にはそれらの樹脂にカーボンなどを混ぜると良い。
【0043】
また、絶縁性液体2には、シリコーンオイル、トルエン、キシレン、高純度石油等の無色透明液体を使用すると良い。
【0044】
なお、本実施の形態に係る電気泳動表示装置では、図4に示すように、図示x方向には複数の走査電極線X1,X2,X3,…が配置されており、各走査電極線X1,X2,X3,…は、該方向xに沿って配置される画素(例えば、P11,P12,P13,…)の各第1制御電極6aに電気的に接続されている。また、図示y方向には複数の第1信号電極線YA1,YA2,YA3,…や第2信号電極線YB1,YB2,YB3,…が配置されており、第1信号電極線YA1,YA2,YA3,…は、該方向yに沿って配置される画素(例えば、P11,P21,P31,…)の各第1表示電極5aに電気的に接続され、第2信号電極線YB1,YB2,YB3,…は、該方向yに沿って配置される画素(例えば、P11,P21,P31,…)の各第2表示電極5bに電気的に接続されている。なお、この図においては3×3個の画素のみが示されているが、もちろんこれに限られるものではない。
【0045】
以下、本発明における単純マトリックス駆動法ついて説明する。
【0046】
上述した第1制御電極6aの電圧を低くした状態で、第1表示電極5a及び第2表示電極5bの間に電圧を印加する。その印加電圧の極性を画素毎に制御すると、帯電泳動粒子3はいずれかの電極5a又は5bに吸着されるが、その作用を利用して画像を表示することができる。第1表示電極5aに印加される駆動電圧をVd1とし、第2表示電極5bに印加される駆動電圧をVd2とし、第1制御電極6aに印加される制御電圧をVcとした場合に、それらの電圧の大小関係が、
Vd1≧Vc≧Vd2、 又は、 Vd2≧Vc≧Vd1
となるようにすることによって書き込みを達成できる。
【0047】
そして、第1制御電極6aの電圧を高くすると、各画素の表示状態は保持される。
【0048】
書き込み方法については複数のバリエーションが考えられる。まず、各電極との配線方式に関しては、
・ 各画素の第1制御電極6aが走査電極線に、表示電極5a,5bが信号電極線に配線される場合と、
・ 各画素の第1制御電極6aが信号電極線に、表示電極5a,5bが走査電極線に配線される場合と
の2通りがある。また、書き込み方向については、
・ 最初に画面全体を一方の状態にリセットしたのち、各走査ラインに書き換えが必要な画素についてのみ一方向の書き込みをおこなう場合と、
・ 各走査ラインに白状態・黒状態の双方向に対して書き込みをおこなう場合、とがある。
【0049】
以下、このような駆動方法の一例(一方向書き込み)を具体的数値を用いて図5及び図6に沿って詳述する。ここで、図5は、1つの画素を例にとって白状態保持の後に黒反転する場合の印加電圧や反射率の変化の様子を示すタイミングチャート図であり、同図(a) は、第1表示電極5aに印加される駆動電圧Vd1の変化の様子を示す図であり、同図(b) は、第2表示電極5bに印加される駆動電圧Vd2の変化の様子を示す図であり、同図(c) は、第1制御電極6aに印加される制御電圧Vcの変化の様子を示す図であり、同図(d) は反射率の変化を示す図である。また、図6は、図5のように駆動される場合における帯電泳動粒子3の移動や電界ベクトルの様子を模式的に示す図であり、同図(a) は期間0〜Taのときの様子を示す図であり、同図(b) は期間Ta〜Tbのときの様子を示す図であり、同図(c) は期間Tb以降のときの様子を示す図である。なお、ここでは、帯電泳動粒子3の帯電極性を正極性とし、第1表示電極5aを黒色とし、第2表示電極5bを白色としている。
【0050】
いま、図6(a) に示すように、帯電泳動粒子3を第1表示電極5aの方に吸着させて凹部E内に配置している状態で、期間0〜Taにおいて、
駆動電圧Vd1=0V(図5(a) 参照)
駆動電圧Vd2=0V(同図(b) 参照)
制御電圧Vc=+70V(同図(c) 参照)
とする。この制御電圧Vcによって、相対向する第1制御電極6a及び6aの間には電気的ゲートバリアが発生し、帯電泳動粒子3は、制御電圧Vcによって表示電極側に押し付けられ凹部Eに封じ込められた状態となる。このため、外部からは、帯電泳動粒子3よりも第2表示電極5bの方が明瞭に視認することができ、画素としては白(反射率70%程度の白表示状態)を表示することとなる。
【0051】
次に、期間Ta〜Tbにおいて、
駆動電圧Vd1=+40V(図5(a) 参照)
駆動電圧Vd2=0V(同図(b) 参照)
制御電圧Vc=+10V(同図(c) 参照)
とする。これによって、図6(b) に示すように、第1表示電極5a上にある泳動粒子3を引き上げる上向きの電界ベクトル(図中の矢印参照)が十分に形成され、全ての泳動粒子3は高い段差(段部4の段差)を乗り越えて第2表示電極5bへと移動する。そして、第2表示電極5bが、黒色の帯電泳動粒子3によって覆われるため、画素としては黒色(反射率5%程度の黒表示状態)を表示することとなる(図5(d) 参照)。またこの電界は、泳動粒子3の移動に効率よく利用されるように形成されるため、駆動電圧を低減することができている。このように本発明の特徴の一つである駆動方法によって、従来構造(特許公報第02740048号)において懸念された、段差が高くなることでおきる段差底部への泳動粒子2の残留はまったく観察されない。
【0052】
その後、Tb以降の期間においては、期間0〜Taと同じ電圧を印加するため、帯電泳動粒子3は、制御電圧Vc=+70Vによって第2表示電極側に押し付けられ第1表示電極5aへの移動が禁止されて、黒表示が保持されることとなる。
【0053】
では次に、単純マトリクス駆動の一例として、図7を用いて双方向書き込み動作について詳細な説明を行う。
【0054】
いま、図7(a) に示すように、第1制御電極6aに書き込み許可電圧として制御電圧Vc=0Vを印加している状態で、第1表示電極5aの電圧をVd1=+20Vとし、第2表示電極5bの電圧をVd2=−20Vとすると、正極性に帯電されている帯電泳動粒子3は、第2表示電極5bの側に移動する。
【0055】
これに対して、同図(b) に示すように、第1制御電極6aに書き込み許可電圧として制御電圧Vc=0Vを印加している状態で、第1表示電極5aの電圧をVd1=−20Vとし、第2表示電極5bの電圧をVd2=+20Vとすると、正極性に帯電されている帯電泳動粒子3は、第1表示電極5aの側に移動する。
【0056】
また、帯電泳動粒子3が第1表示電極5aを覆っている状態で、第1制御電極6aに書き込み禁止電圧(保持電圧)として制御電圧Vc=+70Vを印加する。これにより、第1制御電極間(6a,6a間)には電気的ゲートバリアが形成され、帯電泳動粒子3の第2表示電極5bへの移動が禁止される(同図(c) (d) 参照)。さらに、帯電泳動粒子3が第2表示電極5bを覆っている状態で、第1制御電極6aに書き込み禁止電圧(保持電圧)として制御電圧Vc=+70Vを印加する。これにより、第1制御電極間(6a,6a間)には電気的ゲートバリアが形成され、帯電泳動粒子3の第1表示電極5aへの移動が禁止される(同図(e) (f) 参照)。
【0057】
以上説明したように、単純マトリクス駆動を実現させるには、表示素子内に配置された第1表示電極5a、第2表示電極5b及び第1制御電極6aに適切な電圧値を印加し、表示素子中に生じる電界を用いて、泳動粒子の移動をコントロールすることにより、「黒書き込み状態」、「白書き込み状態」、「黒表示保持状態」、「白表示保持状態」の4つの状態を形成することが要求される。本発明による表示装置では、これら4状態を形成することが出来ることを、シミュレーションにより以下で説明する(図8〜12)。表示素子中に発生する電界は有限要素法により計算した。電界ベクトルを矢印で示し、等電位線を実線で示した。なお、このシミュレーションモデルは、周期性をもつ電気泳動表示装置の最小周期構造である。
【0058】
まず図8には、シミュレーションモデルの概要を示した。図8は、図1(a) の半周期分に相当し、ここで記載しているように、第2表示電極の貫通孔の外周は、第1制御電極の貫通孔の外周よりも短く設定した(寸法は同図参照)。そして、図9は、黒書き込み状態としたときのシミュレーション結果を示す図であり、図10は、白書き込み状態としたときのシミュレーション結果を示す図であり、図11は、黒保持状態としたときのシミュレーション結果を示す図であり、図12は、白保持状態としたときのシミュレーション結果を示す図である。各電極に印加した電圧は下表の通りとした。
【0059】
【表1】
【0060】
以下で、この結果を簡単に説明する。ここでは泳動粒子が正に帯電している場合を考えるとする。すると、帯電粒子は高電位から低電位に向かって伸びるベクトルの矢印方向に向かって移動することになる。
【0061】
まず、黒書き込み表示を目的に各電極に印加した電圧によって形成される電界を示した図9について見てみると、泳動粒子の動きを示す電界ベクトルの矢印の向きは、第1表示電極5aから上方に向かって発生し、その終点は第2表示電極5b上に至っていることがわかる。すなわち、泳動粒子は第2表示電極5b上に移動することが可能であることを示している。これにより、黒書き込みに必要な電界が形成されていると言える。
【0062】
次に、白書き込み表示を目的としている図10では、第1表示電極5aに向かってベクトルが発生していることから、泳動粒子が第1表示電極5a上に集められることが示されている。これにより、白書き込みに必要な電界が形成されていると言える。
【0063】
また、白表示状態あるいは黒表示状態を保持した表示を目的とする図11,12では、どちらの場合も、段部4の中段に形成されている第1制御電極6aの高さを境に、電気的なバリアとして働く上方に向かうベクトルと下方に向かうベクトルが発生していることがわかる。これにより、白保持及び黒保持に必要な電界が形成されていると言える。
【0064】
以上、シミュレーション結果から、本発明による新規な構成が、単純マトリクス駆動を実現するために必要な、「黒書き込み」、「白書き込み」、「黒保持」、「白保持」が可能な電界を形成していることがわかる。
【0065】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
【0066】
本実施の形態によれば、第1制御電極6aや各表示電極5a,5bはいずれも第2基板1bの側に配置されていることから、上述した第1構成の電気泳動表示装置(図23(a) 参照)と違い、基板間隙が多少変動しても表示品質が悪くなることはない。したがって、基板1a,1bにフレキシブルな材料を用いることができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、第1表示電極5aが下段面F1に沿うように配置されると共に、第2表示電極5bが上段面F2に沿うように配置されており、それらの電極の間に、第1制御電極6aが、前記第2表示電極5bの端部よりも突出するように配置されている。このため、上述した第1構成の電気泳動表示装置(図23(a) 参照)と違い、ある画素の第1制御電極6aに印加した電圧が、隣接する画素における帯電泳動粒子3に影響を与えてしまうことを回避でき(すなわち、帯電泳動粒子の移動を阻止する制御と、帯電泳動粒子の移動を許容する制御とを、互いに影響を与え合うことなく画素毎に独立して行うことができ)、クロストーク現象の発生を防止し、表示品質を良好にすることができる。また、図26に示したような帯電泳動粒子3の偏りを防止できる。
【0068】
さらに、本実施の形態によれば、従来構成と比較して、帯電泳動粒子移動を禁止するための電圧を大幅に低減することができる。
【0069】
本発明によれば、第2表示電極面が、段差構造の形成する凹部以外の表示部を覆うように形成されてなるため、第2表示電極による遮蔽効果により、引き回し配線からの漏れ電界による表示劣化を防止することができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例に沿って本発明を更に詳細に説明する。
【0071】
(実施例1)
本実施例では、図1及び図4に示す構成の電気泳動表示装置を作製し、双方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。なお、図3では3×3の画素のみを示すが、実際に作製した表示装置の画素数は20×20とした。また、一画素サイズは120μm×120μmとし、第1表示電極5aが占める領域P1は画素面積の30%とし、第2表示電極5bが占める領域P2は画素面積の70%とした(面積比は3:7)。
【0072】
次に、本実施例に係る電気泳動表示装置の製造方法について説明する。
【0073】
第2基板としての厚さ200μmのPETフィルム1bに、Alを成膜しフォトリソグラフィーおよびウエットエッチングによりパターニングして第1表示電極5aを形成した。その電極の表面には暗黒色の着色層を形成した。
【0074】
次に、20μmの厚さのエポキシ樹脂にて段部4を形成し、その上面には、Alを成膜しフォトリソグラフィーおよびウエットエッチングによりパターニングして第1制御電極6aを形成した。なお、貫通孔の直径は50μmとした。この第1制御電極6aを覆うように4μmの膜厚のエポキシ樹脂を塗布して段部を形成し、その表面には、Alを成膜しフォトリソグラフィーおよびウエットエッチングによりパターニングして第2表示電極5bを形成した。なお貫通孔の直径は56μmとした。
【0075】
最後に、第2表示電極5bをマスクとして、O2ガスによる反応性ドライエッチングにより段部材料であるエポキシ樹脂をエッチングし、段部4を形成した。この結果、高さ24μmの段部4に第2表示電極5bが配置され、さらにその4μm下の層に、第1制御電極6aが配置され、そのさらに20μm下の層に第1表示電極5aが配置された構造体が形成された。次に、アルミナなどの白色顔料を分散させたアクリル樹脂からなる絶縁着色層を全面に形成した。
【0076】
また、第1基板としての厚さ200μmのPETフィルム1aには、光感光性エポキシ樹脂を塗布した後、露光及びウエット現像を行うことによって50μm高さの隔壁7を各画素の境界部分に形成した。そして、形成された隔壁内に絶縁性液体2及び黒色帯電泳動粒子3を充填した。絶縁性液体2としては、シリコーンオイルを使用した。黒色帯電泳動粒子3としては、ポリスチレンとカーボンの混合物で、平均粒径2μmのものを使用した。シリコーンオイル中での泳動粒子3の極性は正帯電を示した。次に、第1基板1aと第2基板1bとの接着面に熱融着性の接着層パターンを形成し、第2基板1bの隔壁上に、位置合わせを行ないながら第1基板1aを置き、熱をかけて張り合わせシート状の表示パネルを完成した。この表示パネルに不図示の電圧印加回路を接続して駆動特性を評価した。
【0077】
以下、本実施例における駆動方法の説明を行なう。
【0078】
本実施例においては、図13に示すように信号を印加し、図14に示すような表示をした。ここで、図13は、市松模様を表示している3×3の画素を順次反転させていく場合の印加電圧を示すタイミングチャート図であり、符号X1,X2,X3は、各走査ライン(走査電極線)X1,X2,X3を介して第1制御電極6aに印加される信号を示し、符号YA1,YA2,YA3は、各第1信号ライン(第1信号電極線)YA1,YA2,YA3を介して各第1表示電極5aに印加される信号を示し、符号YB1,YB2,YB3は、各第2信号ライン(第2信号電極線)YB1,YB2,YB3を介して各第2表示電極5bに印加される信号を示す。本実施例では、1走査ライン選択期間(0〜T0、T0〜T1、T1〜T2、 T2〜T3)を50msecに設定した。また、図14は、図13のように駆動される場合における表示状態を示す図であり、同図(a) は期間T0のもの、同図(b) は期間T1のもの、同図(c) は期間T2のもの、同図(d) は期間T3のものを示す図である。本実施例においては双方向への書き込みが可能であるので、実施例2と異なり、初期動作として全面リセットをする必要はない。初期表示パターンとして図14(a) に示すパターンを与えたとする。
【0079】
期間T0〜T1おいて、選択走査ラインであるX1に対しては書き込み許可信号VC=0Vを印加し、非選択走査ラインであるX2、X3に対しては書き込み禁止信号VC=70Vを印加する。そして、画素P11,P13に相当する第1信号ラインYA1、YA3および第2信号ラインYB1、YB3にそれぞれに白表示書き込みパルスとしてVd1=−20V、Vd2=+20Vを印加し、画素P12に相当する第1信号ラインYA2および第2信号ラインYB2にそれぞれに黒表示書き込みパルスとして、Vd1=+20V、Vd2=−20Vを印加した。その結果、選択走査ラインX1の全ての画素が書き換えられ反転表示され、また非選択走査ラインX2、X3における各画素では初期表示状態が保持された(図14(b) 参照)。
【0080】
以下、期間T1〜T2、T2〜T3において同様の駆動を行なった結果、目的の反転表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは10:1程度の高い値を示した。
【0081】
(実施例2)
本実施例では、図15及び図16に示す構成の電気泳動表示装置を作製し、一方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。
【0082】
なお、図16では3×3の画素のみを示すが、実際に作製した表示装置の画素数は20×20とした。また、一画素サイズは120μm×120μmとし、第1表示電極5aが占める領域P1は画素面積の30%とし、第2表示電極5bが占める領域P2は画素面積の70%とした(面積比は3:7)。
【0083】
ところで、本実施例における第2表示電極5bは、実施例1のように各画素毎に別体で形成するのではなくて、基板1a,1bのほぼ全面に沿うように形成し、各画素共通とした(図16参照)。また、図15に示すように第1基板1aの下面には、全ての画素に配置されるように第2制御電極6bを形成した。なお、この第2制御電極6bは、PET1a上にITO(インジウム・ティン・オキサイド)をスパッタ法を用いて成膜し、レジスト法及びエッチング法を用いて形成した。その他の構成や製造方法は実施例1と同様とした。
【0084】
以下、本実施例で実施した駆動方法を、図17乃至図20に沿って説明する。
【0085】
ここで、図17は、1つの画素を例にとって白状態保持の後に黒反転する場合の印加電圧や反射率の変化の様子を示すタイミングチャート図であり、同図(a) は第1表示電極5aに印加される駆動電圧Vd1の変化の様子を示す図であり、同図(b) は、第2表示電極5bに印加される駆動電圧Vd2の変化の様子を示す図であり、同図(c) は、第1制御電極6aに印加される制御電圧Vc1の変化の様子を示す図であり、同図(d) は、第2制御電極6bに印加される制御電圧Vc2の変化の様子を示す図であり、同図(e) は反射率の変化を示す図である。また、図18は、図17のように駆動される場合における帯電泳動粒子3の移動や電界ベクトルの様子を模式的に示す図であり、同図(a) は期間0〜Taのときの様子を示す図であり、同図(b) は期間Ta〜Tbのときの様子を示す図であり、同図(c) は期間Tb以降のときの様子を示す図である。さらに、図19は、白保持状態にある3×3の画素を適宜黒反転させていく場合の印加電圧を示すタイミングチャート図であり、符号XA1,XA2,XA3は、各走査ライン(走査電極線)XA1,XA2,XA3を介して第1制御電極6aに印加される信号を示し、符号YA1,YA2,YA3は、各信号ラインYA1,YA2,YA3を介して各第1表示電極5aに印加される信号を示し、符号YBは第2表示電極5bに印加される信号を示し、符号XBは、第2制御電極6bに印加される信号を示す。またさらに、図20は、図19のように駆動される場合における表示状態を示す図であり、同図(a) は期間T0のもの、同図(b) は期間T1のもの、同図(c) は期間T2のもの、同図(d) は期間T3のものを示す図である。本実施例においては、全期間において、第2表示電極5bは接地し(すなわち、図17(b) においてVd2=0V、図19においてYB=0)、第2制御電極6bにはVc2=+10Vを印加した(図17(d) 及び図19XB参照)。
【0086】
本実施例では一方向書き込みを行うため、初期動作として全面リセットを行った。具体的には、図19の期間0〜T0に示すように、第1制御電極6aの電圧を小さくした状態で(XA1,XA2,XA3参照)、第1表示電極5aには−40Vの電圧を印加した。これにより、全画素は白リセットされて、その表示状態は図20(a) に示すようになる。
【0087】
次の期間T0〜T1では、1行目の真中の画素P12だけを黒反転させた。具体的には、1本目の選択走査ラインXA1にはVc1=+10Vの電圧を印加し、他の非選択走査ラインXA2,XA3にはVc1=+80Vの電圧を印加した。そして、真中の信号ラインYA2にはVd1=+40Vの電圧を印加し、他の信号ラインYA1、YA3の電圧はVd1=0Vとした。これにより、1行目の真中の画素P12だけが黒反転されて、その表示状態は図20(b) に示すようになる。つまり、黒反転される画素では、第1表示電極5aの電圧Vd1=+40V、第1制御電極6aの電圧Vc1=+10Vとされ、第2表示電極5bの電圧Vd2=0V、第2制御電極6bの電圧Vc2=+10Vとされる(図18(b) 参照)。つまり、Vd1≧Vc1≧Vd2と、Vd1≧Vc2≧Vd2の条件を満たす書き込み電圧を印加する。
【0088】
次の期間T1〜T2では2行目の両端の画素P21,P23を黒反転させ、期間T2〜T3では3行目の真中の画素P32を黒反転させた。
【0089】
なお、表示状態を保持するには、図17(Tb〜以降)のように、第1制御電極6aの電圧をVc1=+80V(第2制御電極6bの電圧はVc2=+10V)にすれば良い。
【0090】
本実施例によれば、目的の反転表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは10:1程度の高い値を示した。
【0091】
また、本実施例によれば第2制御電極6bは第1基板1aのほぼ全面に形成したものであるため、各画素にドット状に形成するような場合と違って、基板貼り合わせの際の位置合わせを短時間で行うことができる。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、第1制御電極や各表示電極はいずれも第2基板の側に配置されていることから、基板間隙が多少変動しても表示品質が悪くなることはない。したがって、基板にフレキシブルな材料を用いることができる。
【0093】
また、本発明によれば、第1表示電極が下段面に沿うように配置されると共に、第2表示電極が上段面に沿うように配置されており、それらの電極の間に、第1制御電極が、前記第2表示電極の端部よりも突出するように配置されている。このため、ある画素の第1制御電極に印加した電圧が、隣接する画素における帯電泳動粒子に影響を与えてしまうことを回避でき(すなわち、帯電泳動粒子の移動を阻止する制御と、帯電泳動粒子の移動を許容する制御とを、互いに影響を与え合うことなく画素毎に独立して行うことができ)、クロストーク現象の発生を防止し、表示品質を良好にすることができる。また、帯電泳動粒子の偏りを防止できる。
【0094】
さらに、本発明によれば、従来構成と比較して、帯電泳動粒子移動を禁止するための電圧を大幅に低減することができる。
【0095】
本発明によれば、引き回し配線からの漏れ電界による表示劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気泳動表示装置の構造の一例を示す図。
【図2】各電極の配置形状を説明するための図。
【図3】本発明に係る電気泳動表示装置の構造の他の例を示す図。
【図4】本発明に係る電気泳動表示装置の配線の一例を示す回路図。
【図5】1つの画素を例にとって白状態保持の後に黒反転する場合の印加電圧や反射率の変化の様子を示すタイミングチャート図。
【図6】図5のように駆動される場合における帯電泳動粒子3の移動や電界ベクトルの様子を模式的に示す図。
【図7】双方向書き込み時における帯電泳動粒子3の移動や電界ベクトルの様子を模式的に示す図。
【図8】電気泳動表示装置の詳細断面図。
【図9】黒書き込み状態としたときのシミュレーション結果を示す図。
【図10】白書き込み状態としたときのシミュレーション結果を示す図。
【図11】黒保持状態としたときのシミュレーション結果を示す図。
【図12】白保持状態としたときのシミュレーション結果を示す図。
【図13】市松模様を表示している3×3の画素を順次反転させていく場合の印加電圧を示すタイミングチャート図。
【図14】図13のように駆動される場合における表示状態を示す図。
【図15】本発明に係る電気泳動表示装置の構造の他の例を示す図。
【図16】本発明に係る電気泳動表示装置の配線の他の例を示す回路図。
【図17】1つの画素を例にとって白状態保持の後に黒反転する場合の印加電圧や反射率の変化の様子を示すタイミングチャート図。
【図18】図17のように駆動される場合における帯電泳動粒子3の移動や電界ベクトルの様子を模式的に示す図。
【図19】白保持状態にある3×3の画素を適宜黒反転させていく場合の印加電圧を示すタイミングチャート図。
【図20】図19のように駆動される場合における表示状態を示す図。
【図21】電気泳動表示装置の従来構造の一例を示す図。
【図22】電気泳動表示装置の従来構造の他の例を示す図。
【図23】電気泳動表示装置の従来構造の他の例を示す図。
【図24】陰極素子や陽極素子の配置形状を示す図。
【図25】従来の電気泳動表示装置の作用を説明するための図。
【図26】従来の電気泳動表示装置における問題点を説明するための図。
【符号の説明】
1a,1b 第1及び第2基板
2 絶縁性液体
3 着色帯電泳動粒子
4 段部
5a 第1表示電極
5b 第2表示電極
6a 第1制御電極
6b 第2制御電極
D1 電気泳動表示装置
D2 電気泳動表示装置
D3 電気泳動表示装置
F1 下段面
F2 上段面
P11,P12,… 画素
Claims (1)
- 所定間隙を開けた状態に配置された第1及び第2基板と、これらの基板の間隙に配置された絶縁性液体と、該絶縁性液体に分散された複数の着色帯電泳動粒子と、を備えた電気泳動表示装置において、
前記基板の間隙に前記第2基板に沿って段部が配置されることに基づき、前記絶縁性液体の厚い部分に対向する下段面と、前記絶縁性液体の薄い部分に対向する上段面とが各画素に形成され、
該下段面に沿うように第1表示電極が配置され、前記上段面に沿うように第1制御電極と第2表示電極とが配置され、
前記第1制御電極は、印加電圧を変えることにより、前記第1表示電極と前記第2表示電極との間の前記帯電泳動粒子の移動を許可または禁止する電極であり、前記第2表示電極と比較して前記第1表示電極に近接する側に、かつ、前記基板にほぼ平行な方向に前記第2表示電極よりも突出するように配置され、
前記第1表示電極が占める領域と、前記第2表示電極が占める領域との境界部分に、前記第1制御電極が占める領域が形成されてなる、
ことを特徴とする電気泳動表示装置。
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