JP3610300B2 - 電気泳動表示装置およびその駆動方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電泳動粒子を移動させて表示を行う電気泳動表示装置およびその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報機器の発達に伴い、各種情報のデータ量は拡大の一途をたどり、情報の出力も様々な形態を用いてなされている。一般に、情報の出力は、ブラウン管や液晶などを用いたディスプレイ表示とプリンタなどによる紙へのハードコピー表示とに大別できる。ディスプレイ表示においては、低消費電力且つ薄型の表示装置のニーズが増しており、中でも液晶表示装置は、こうしたニーズに対応できる表示装置として活発な開発が行われ商品化さてれいる。しかしながら、現在の液晶表示装置には、画面を見る角度や、反射光により、画面上の文字が見ずらく、また光源のちらつき・低輝度等から生じる視覚への負担が、未だ十分に解決されていない。またブラウン管を用いたディスプレイ表示では、コントラストや輝度は液晶表示と比較して十分あるものの、ちらつきが発生するなど後述するハードコピー表示と比較して十分な表示品位があるとはいえない。また装置が大きく重いため携帯性が極めて低い。
【0003】
一方、ハードコピー表示は情報の電子化により不要になるものと考えられていたが、実際には依然膨大な量のハードコピー出力が行われている。その理由として、情報をディスプレイ表示した場合、前述した表示品位に係わる問題点に加えて、その解像度も一般的には最大でも120dpi程度と紙へのプリント・アウト(通常300dpi以上)と比較して相当に低い。従って、ディスプレイ表示ではハードコピー表示と比較して視覚への負担が大きくなる。その結果、ディスプレイ上で確認可能であっても、一旦ハードコピー出力することがしばしば行われることになる。また、ハードコピーされた情報は、ディスプレイ表示のように表示領域がディスプレイのサイズに制限されることなく多数並べたり、また複雑な機器操作を行わずに並べ替えたり、順に確認していくことができることも、ディスプレイ表示可能であってもハードコピー表示が併用される大きな理由である。さらには、ハードコピー表示は、表示を保持するためのエネルギーは不要であり、情報量が極端に大きくない限り、何時でもどこでも情報を確認することが可能であるという優れた携帯性を有する。
【0004】
このように動画表示や頻繁な書き換えなどが要求されない限り、ハードコピー表示はディスプレイ表示と異なる様々な利点を有するが、紙を大量に消費するという欠点がある。そこで、近年においては、リライタブル記録媒体(視認性の高い画像の記録・消去サイクルが多数回可能で、表示の保持にエネルギーを必要としない記録媒体)の開発が盛んに進められている。こうしたハードコピーの持つ特性を継承した書き換え可能な第3の表示方式をペーパーライクディスプレイと呼ぶことにする。
【0005】
ペーパーライクディスプレイの必要条件は、書き換え可能であること、表示の保持にエネルギーを要さないか若しくは十分に小さいこと(メモリー性)、携帯性に優れること、表示品位が優れていることなどである。現在、ペーパーライクディスプレイとみなせる表示方式としては、例えば、サーマルプリンターヘッドで記録・消去する有機低分子・高分子樹脂マトリックス系(例えば、特開昭55−154198号公報、特開昭57−82086号公報)を用いた可逆表示媒体を挙げることができる。この系は一部プリペイドカードの表示部分として利用されているが、コントラストが余り高くないことや、記録・消去の繰り返し回数が150〜500回程度と比較的少ないなどの課題を有している。
【0006】
また、別のペーパーライクディスプレイとして利用可能な表示方式として、Harold D.Lees等により発明された電気泳動表示装置(米国特許第3612758号明細書)が知られている。他にも、特開平9−185087号公報に電気泳動表示装置が開示されている。
【0007】
この表示装置は、絶縁性液体中に着色帯電泳動粒子を分散させてなる分散系と、この分散系を挟んで対峙する一対の電極からなっている。電極を介して分散系に電圧を印加することにより、着色帯電泳動粒子の電気泳動性を利用して、該着色帯電泳動粒子を粒子自身が持つ電荷と反対極性の電極側にクーロン力により吸着させるものである。表示は、この着色帯電泳動粒子の色と染色された絶縁性液体の色の違いを利用して行われる。つまり、着色帯電泳動粒子が観測者に近い光透過性の第1の電極表面に吸着させた場合には着色帯電泳動粒子の色が観察され、逆に観測者から遠い第2の電極表面に吸着させた場合には、着色帯電泳動粒子と光学的特性が異なるように染色された絶縁性液体の色が観察される。
【0008】
しかしながら、このような電気泳動装置では、絶縁性液体に染料やイオンなどの発色材を混合しなくてはならず、このような発色材の存在は、新たな電荷の授受をもたらすために電気泳動動作において不安定要因として作用しやすく、表示装置としての性能や寿命、安定性を低下させる場合があった。
【0009】
係る問題を解決するために、第1表示電極及び第2表示電極からなる電極対を同一基板上に配置し、観察者から見て着色帯電泳動粒子を水平に移動させる表示装置が、特開昭49−5598号公報及び特願平10−005727号公報において提案された。電気泳動特性を利用して、透明な絶縁性液体中で着色帯電泳動粒子を電圧印加により、第1表示電極面及び第2電極面間を、基板面と水平に移動させることによって表示を行うものである。
【0010】
水平移動型電気泳動表示装置においては、絶縁性液体は透明であって、観察者側から見て、第1表示電極と第2表示電極が異なる着色を呈し、いずれか一方の色を泳動粒子の色と一致させてある。例えば第1表示電極の色を黒色、第2表示電極の色を白色、泳動粒子の色を黒色とすると、泳動粒子が第1電極上に分布する場合には、第2表示電極が露出し白色を呈し、泳動粒子が第2表示電極上に分布する場合には泳動粒子色である黒色を呈す。
【0011】
ところで、画素がマトリックス状に配置された表示装置を、電気的にアドレスする方式としては大別して、アクティブマトリックス方式と単純マトリックス方式の2つがある。
【0012】
アクティブマトリックス方式では、各画素それぞれに対して薄膜トランジスタ(TFT)などのスイッチング素子を形成し、各画素に印加する電圧を画素ごとに独立に制御する。この方式を用いれば、水平移動型電気泳動表示装置を、高い表示コントラストで駆動することが可能である。しかしながら一方で、アクティブマトリックス方式はプロセスコストが高い、薄膜トランジスタのプロセス温度が高くポリマー基板上への形成が困難である、といった問題を抱える。この問題は、低コストでフレキシブルなディスプレイを目指すペーパーライクディスプレイにおいては特に重要である。これらの問題を解決するために、印刷プロセスが適用可能なポリマー材料による薄膜トランジスタの形成プロセスが提案されているが、実用化の可能性は未だ未知数である。
【0013】
単純マトリックス方式は、アドレスのために必要な構成要素がX−Y電極ラインのみであるから低コストであリポリマー基板上への形成も容易である。選択画素に対して書き込み電圧を印加する場合は、選択画素を交点とするX電極ラインとY電極ラインに対して、書き込み電圧に相当する電圧を印加すればよい。ところが、水平移動型電気泳動表示装置を単純マトリックス方式により駆動しようとすると、選択された画素の周辺画素まで一部書き込まれてしまう、いわゆるクロストーク現象が発生し、表示コントラストが著しく劣化してしまう。これは水平移動型電気泳動表示装置が、書き込み電圧に対して明確な閾値特性を持たないために必然的に発生する問題である。
【0014】
係る問題に対して、原理的に閾値を持たない電気泳動表示において、表示電極に加えて制御電極を導入し、3電極構造によって単純マトリックス駆動を実現する提案がなされている。3電極構造に関する提案は殆どが上下電極型電気泳動表示に関してなされたものであり、例えば特開昭54−085699号公報(米国特許第4203106号明細書)がある。
【0015】
水平移動型電気泳動表示装置における3電極構造の提案は唯一、特表平8−507154号公報(米国特許第5345251号明細書)においてなされている。但し特表平8−507154号公報においては、分散液は透明ではなく着色されていると考えられ、前述の特開昭49−5598号公報及び特願平10−005727号公報及び本発明が対象とする、分散液が透明であることを特徴とする水平移動型電気泳動表示装置とは異なるものである。
【0016】
特表平8−507154号公報では2つの構成が開示されている。図19にその2つの構成の表示装置の断面図を示す。第1の構成は水平移動型電気泳動装置の第2基板2側に第3の電極として制御電極5が配置されるタイプであり(図19(a)参照)、第2の構成は第1基板1側の第1表示電極4と第2表示電極3との間に第3の電極として制御電極5が配置されるタイプである。(図19(b)参照)
【0017】
第1構成、第2構成のいずれのタイプにおいても、一画素内には、複数のライン電極が集合したフォーク状第1表示電極と、第1表示電極の各ライン間に配置された複数のライン電極が集合したフォーク状第2表示電極が第1基板上に配置される。第2表示電極3上にはクロム厚膜が付与され、その結果第1表示電極4と第2表示電極3の境界に約0.3μmの段差22が形成されている。第1構成においては制御電極5は、第1基板1に対して25〜116μmの間隔で対向配置された第2基板2上の画素内全面に形成され、第2構成においては制御電極5は、第1基板上の、第1表示電極4と第2表示電極3の各ライン間に配置される。図19においては説明の便宜上、第1表示電極、第2表示電極ともに1ラインで構成される場合について示してある。
【0018】
次に、図20および図21を用いて特表平8−507154号公報における書き込み動作について説明する。図20に泳動粒子の動作状態、図21に印加パルス及び反射率変化について示す。セル構成は図19(a)と同じ(但し1画素)である。
【0019】
尚、以下の説明で述べる印加電圧値は本発明者が実際に行なった実験によって求められた条件であり、必ずしも特表平8−507154号公報記載の条件とは一致していない。これは主に使用する泳動粒子の帯電極性、帯電量などの物性値によるところが大きい。以下の説明では、後に述べる本発明の動作説明との比較を容易にするため、本発明者が使用した泳動粒子での実験結果における印加電圧値を記載する。
【0020】
また特表平8−507154号公報においては、絶縁性液体として着色液体を使用していると考えられるが、以下の説明では後に述べる本発明の動作説明との比較を容易にするため、本発明者らが独自に透明な絶縁液体を用い、また表示コントラストの発現方法についても、本発明者らが独自に泳動粒子を黒色、第1表示電極を黒色、第2表示電極を白色とする本発明の実施形態と同様の方式の構成について行なったのでその説明を行なう。
【0021】
泳動粒子6の帯電極性を正、第2表示電極3をコモン電極とし、第2表示電極3の接地電位を基準にして第1表示電極4に駆動電圧Vd、制御電極5に制御電圧Vcを印加するものとする。
【0022】
期間Taは白表示保持状態である。図20中、矢印はセル内の電界ベクトルの概要を示す。第1表示電極4上に集められた泳動粒子6は、第1表示電極4と第2表示電極3間に設けられた段差22によって第2表示電極3側への移動を抑制され、かつ第1表示電極4と制御電極5間に印加される保持電圧Vc=+250Vによって表示電極側に押え込まれることによって安定し、反射率(R)70%程度の白表示状態が保持される。保持状態において印加されるVd=5Vは、黒表示状態において、段差近傍の泳動粒子が第1表示電極側へ移動しやすくなる傾向を抑制する役割を果たしている。
【0023】
書き込み期間Tbにおいては、Vd=+50v、Vc=+50Vを印加する。第1表示電極4と制御電極5とは同電位に設定されるため制御電圧による押え込みは解除され、全ての泳動粒子6は表示電極面に沿って段差を乗り越えて第2表示電極側に水平移動し、反射率Rは急激に減少する。
【0024】
黒表示保持状態である期間Tcでは、保持電圧Vc=+250Vによって表示電極側に押し付けられ、反射率5%程度の黒表示状態が保持される。
【0025】
続いて、特表平8−507154号公報において開示された単純マトリックス駆動方法について図22および図23を用いながら説明する。X方向にm列、Y方向にn行の画素が配列したm×nマトリックスを有する水平移動型電気泳動表示装置を考える。画素配列に沿って、m本の信号電極線が列方向に、n本の信号電極線が行方向に、互いに直交するように配列されており、各交点において信号電極線は各画素の制御電極5に、走査電極線は各画素内の第1表示電極4に配線されている。第2表示電極3はコモン電極とし接地電位に固定する。
【0026】
まず全ての走査ラインにVd=−50V、全ての信号ラインにVc=0Vを印加し、全ての泳動粒子6を第1表示電極上に集める(図22(a)、全面消去)。次にY方向に上から順番に走査ラインを選択し書き込みを行なう。選択期間(書き込み期間)では、走査ラインにVd=+50Vを印加し、選択画素に相当する信号ラインにVc=+50V、非選択画素に相当するラインにVc=+250Vを印加する。選択画素では表示電極間に印加される駆動電圧Vd=+50Vによって、泳動粒子が段差を乗り越え第2表示電極側に移動し書き込みが行なわれる(図22(b))。非選択画素においても駆動電圧Vd=+50Vが印加されているが、第1の構成においては、泳動粒子はVc=+250Vの制御電圧によって第1表示電極に押し付けられ移動(書き込み)が阻止される(図22(c))。
【0027】
一方、非選択期間においては走査ラインにVd=+5Vが印加され、信号ラインにはVc=+50Vまたは+250Vが印加される(図23(d)〜(g))。いずれの場合も、泳動粒子は制御電圧によって表示電極面に押し付けられており表示状態は変化しない。
このようにして、閾値特性を持たない水平移動型電気泳動装置において、単純マトリックス駆動法を用いた表示書き込みが実現される。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特表平8−507154号公報で開示された水平移動型電気泳動装置は次のような問題点を抱えていた。以下にその問題点を図24を参照しながら説明する。
【0029】
第1の構成においては、段差をあまり高く設定できない、という制限がある。段差を高くしすぎると、選択期間における帯電泳動粒子の移動において、一部の泳動粒子が段差を越えられずに段差底部に残留してしまい、表示コントラストが低下する(図24(a))。段差底部への残留を引き起こさないためには、段差の高さを泳動粒子径前後に制限する必要がある。
【0030】
段差の高さが制限されるため、段差による泳動粒子の移動抑制効果は不十分である。このため、選択期間に駆動電圧Vdが印加された状態で、非選択画素において制御電圧Vcを印加し泳動粒子の移動を押え込む場合(図22(c))において、段差が低いために一部の泳動粒子が段差を越えて移動していまい、結果としてクロストーク現象を引き起こし表示コントラストが劣化するという重要な問題が発生する(図24(b))。
【0031】
制御電圧Vcを十分に大きくすれば、ある程度泳動粒子を押え込むことは可能であるが、この場合は印加電圧が上昇してしまうという弊害とともに、素子内の絶縁部材中に高電圧によって注入された電荷が電圧解除後も残留し、この残留電荷のもたらす意図せぬ電界によって泳動粒子の動作状態が不安定になる、という新たな問題が発生する。
【0032】
段差の高さが制限される弊害は他にもある。段差の高さが十分でないため、第1表示電極と第2表示電極との間の面積差をあまり大きく設定できない。面積差を大きく設定すると、面積の小さい電極面上に泳動粒子を集めようとしても泳動粒子が溢れ出てしまうからである(図24(c))。表示コントラストは、第1表示電極と第2表示電極の面積比で決定されるため、結果として表示コントラストが制限されてしまう。
【0033】
さらに、第1の構成においては、段差による移動抑制効果は下段側から上段側への方向に限定され、上段側から下段側への移動はむしろ加速される。従って、書き込み方向は一方向のみに限られ、まず最初に全画面の泳動粒子を下段側に集め全面リセットしたのち、一方向への書き込みを行なうという駆動法に限定されてしまう。書き込みを双方向に対して行なうことはできず、画面の一部のみを選択的に書き換えるような駆動はできない。
【0034】
一方、第2の構成においては、選択期間においては、非選択画素に対しては表示電極と制御電極間に電圧を印加することによって泳動粒子の移動を双方向に対して阻止することが可能であり、また選択画素に対しては表示電極と制御電極間の電圧を0Vにすることによって泳動粒子の移動をスムーズに行なうことができる。この場合は段差は必ずしも必須な構成要素ではないと考えられる。
【0035】
しかしながら、第2の構成において、制御電極が阻止することができるのは、あくまで表示電極間の移動のみであって、表示電極面内での移動については制御不能である。このため非選択期間において表示電極と制御電極間に印加される制御電圧によって、表示電極面内に均一に分散していた泳動粒子は制御電極から反発する方向に移動し、表示電極面内において図25(a),(b)に示すような分布の偏りが発生し表示コントラストが著しく低下してしまう、という問題がある。
【0036】
本発明は、この様な従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、クロストークの発生を抑え、良好な表示コントラストが得られる単純マトリックス駆動が可能な水平移動型電気泳動表示装置およびその駆動方法を提供することを目的とするものである。
【0037】
また、本発明は、第1表示電極と第2表示電極との面積比を従来より大きく設定でき、コントラストの向上を実現した電気泳動表示装置およびその駆動方法を提供することを目的とするものである。
【0038】
また、本発明は、双方向の書き込み駆動ができ、また表示画面の一部分のみを書き換える部分書き換えが可能な電気泳動表示装置およびその駆動方法を提供することを目的とするものである。
【0039】
【課題を解決するための手段】
以上述べた問題点を解決するために、本発明においては以下に記載する新規な構成の電気泳動表示装置及びその駆動方法を提案する。
【0040】
本発明の第一の発明は、第1基板と、該第1基板上に配置される第1表示電極及び第2表示電極と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、該第2基板上に配置された制御電極と、各電極に所望の電圧を印加する手段と、前記第1基板及び第2基板間に充填された透明絶縁性液体と、該透明絶縁性液体中に分散された複数の着色帯電泳動微粒子とを備え、マトリクスに配列した画素の各々の前記制御電極を信号電極とし、前記第1表示電極と前記第2表示電極をそれぞれ第1走査電極と第2走査電極として、単純マトリクス駆動により該着色帯電泳動粒子を第1および第2表示電極間で水平移動させることによって表示の切り換えを行なう電気泳動表示装置において、
前記第1表示電極と第2表示電極間における前記帯電泳動粒子の直接的な水平移動を少なくとも一方向に対してほぼ禁止する機能を有する障壁を第1表示電極と第2表示電極との間に備え、選択期間に、前記所望の電圧を印加する手段が、帯電泳動粒子を一方の表示電極から前記制御電極側に移動させた後、帯電泳動粒子を制御電極側から前記障壁を越えて他方の表示電極側に移動する電圧を各電極に印加することを特徴とする電気泳動表示装置である。
【0041】
前記障壁は、第1表示電極面及び第2表示電極面のうちの少なくとも一方の面より突出し、前記帯電泳動粒子径の数倍〜数十倍の高さを有する幾何学的な段差によって構成されることが好ましい。
前記障壁は、前記帯電泳動粒子に対して静電的な反発力を及ぼすバリア電極であることが好ましい。
前記障壁は、前記帯電泳動粒子に対して静電的な反発力を及ぼす帯電構造体であることが好ましい。
【0042】
前記障壁の段差の、第1表示電極及び第2表示電極の一方の上段側に位置する表示電極面の下側に、前記帯電泳動粒子が入出可能であって、表示面観察者からは視認不可能な遮蔽空間が形成されてなることが好ましい。
【0043】
本発明の第二の発明は、第1基板と、該第1基板上に配置される第1表示電極及び第2表示電極と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、該第2基板上に配置された制御電極と、各電極に所望の電圧を印加する手段と、前記第1基板及び第2基板間に充填された透明絶縁性液体と、該透明絶縁液体中に分散された複数の着色帯電泳動微粒子及び前記第1表示電極と第2表示電極との間に配置され、第1表示電極と第2表示電極間における前記帯電泳動粒子の直接的な水平移動を、少なくとも一方向に対してほぼ禁止する機能を有する障壁とを備え、マトリクスに配列した画素の各々の前記制御電極を信号電極とし、前記第1表示電極と前記第2表示電極をそれぞれ第1走査電極と第2走査電極として、単純マトリクス駆動により該着色帯電泳動粒子を第1および第2表示電極間で移動させることによって表示の切り換えを行なう電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記障壁によってほぼ禁止された方向への帯電泳動粒子の移動方法が、帯電泳動粒子を一方の表示電極から前記制御電極側に移動する第1の過程と、第1の過程に続いて帯電泳動粒子を制御電極側から前記障壁を越えて他方の表示電極側に移動する第2の過程とからなる間接的な移動によることを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法である。
【0044】
前記帯電泳動粒子の間接的な移動を引き起こすために、(A)正帯電の帯電泳動粒子の場合には、
「移動先でない表示電極の電位≧制御電極の電位>移動先である表示電極の電位」
の関係を満たし、(B)負帯電の帯電泳動粒子の場合には、
「移動先でない表示電極の電位≦制御電極の電位<移動先である表示電極の電位」
の関係を満たす期間が含まれるように、前記第1表示電極、第2表示電極及び制御電極に電圧を印加することが好ましい。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電気泳動表示装置(以下、表示装置と記す)の実施態様について順に説明する。
【0046】
(基本的な構成と動作)
図1は本発明の表示装置の代表的な一例を示す断面図である。図1では説明の便宜上2画素からなる構成を示している。第1基板1上に形成された第1表示電極4と第2表示電極3との間に本発明の特徴である障壁11が配置されている。隔壁10を介して第2基板2が対向配置されており、第2基板2上には、制御電極5が形成されている。両基板と隔壁によって形成される空間内には、透明な絶縁性液体7が充填され、透明絶縁液体中には着色された帯電泳動粒子6が分散されている。20は駆動ドライバーを示す。なお、本実施態様において、透明な絶縁性液体とは、例えば無色透明な絶縁性液体を用いることが好ましい。
【0047】
表示電極の平面形状は特に限定はなく、代表的なストライプ形状(図2(a))のほか、方形(図2(b))、円形などの閉ループ形状など、任意の形状が適用可能である。いずれの形状においても、障壁11は第1表示電極4と第2表示電極3との境界領域に形成される。
【0048】
本発明の構成上の顕著な特徴は、この障壁11が泳動粒子径の数倍から数十倍程度、好ましくは3〜10倍の高さを有することにある。十分に高い障壁を設けることによって、泳動粒子6が電極面に沿って両表示電極間を直接的に水平移動することをほぼ禁止することができる。また高い障壁によって、表示電極の面積が小さい場合でも泳動粒子を溢れ出ることなく保持することができるため、第1表示電極と第2表示電極間に大きな面積差を設定でき、表示コントラストを大幅に向上できる。
【0049】
着色された帯電泳動粒子6の粒子径は、0.1〜20μm、好ましくは0.5〜10μmが望ましい。
【0050】
本発明における障壁は、幾何学的な段差によって構成されるが、具体的には幾何学的な段差とは例えば図1に示すような障壁11、又は図9に示すような段差12である。
【0051】
第1表示電極4と第2表示電極3の面積比は大きいほど望ましいが、面積が小さい方の表示電極(図1の場合、第1表示電極4)と障壁11、隔壁10(または障壁)で囲まれる空間に画素内の全泳動粒子が収納されることが必要である。従って、障壁11を高くするほど面積比を大きく、表示コントラストを大きくすることができる。
【0052】
図1の構成の具体的なサイズとしては、例えば画素サイズ100μm×100μmに対して、泳動粒子径5μm、第1基板と第2基板の間隔80μm,障壁の高さ40μm、全画素面積に対する面積比として、第1表示電極15%、第2表示面積80%、障壁5%程度が好適である。
【0053】
セル構成部材の配色は任意の組み合わせが可能であり、例えば泳動動粒子6を黒、第1表示電極4を黒、第2表示電極3を白、障壁11を透明、制御電極5を透明に組み合わせた場合、白表示と黒表示の切り換えが行なえる。第2表示電極3の着色がRGBである画素を並べることによってカラー化表示を行なうことも可能である。
【0054】
次に、図3および図4を用いて本発明の駆動方法における顕著な特徴である、書き込み動作について説明する。図3に各過程における泳動粒子の動作状態、図4に各過程ごとの印加パルス及び反射率変化について示す。セル構成は図1と同じ(但し1画素)である。
【0055】
以下の説明では泳動粒子6の帯電極性を正とし、第1表示電極4に駆動電圧Vd1、第2表示電極3に駆動電圧Vd2、制御電極5に制御電圧Vcを印加するものとする。
【0056】
期間Taは白表示保持状態である。図3中、矢印はセル内の電界ベクトルの概要を示す。全ての泳動粒子6は第1表示電極4と障壁11及び隔壁10で囲まれた空間内に収納されており、かつ第1表示電極4と制御電極5の間に印加される保持電圧によって表示電極側に押し付けられ、反射率80%程度の白表示状態が安定に保持される。
【0057】
本発明においては、障壁11によって、泳動粒子の第2表示電極3側への直接的な水平移動をほぼ完全に禁止しているため、特表平8−507154号公報の構成に比べて、泳動粒子の移動を禁止し保持するための制御電圧を大幅に小さくすることが可能であり、本発明の利点の一つである。図3では制御電圧をVc=+50Vとした。
【0058】
書き込みは期間Tb1、Tb2において行なわれる。まず期間Tb1において、Vd1=Vd2=0V、Vc=−50Vを印加し、泳動粒子6を制御電極側に移動する。尚、図3−Tb1では泳動粒子6が制御電極5上に吸着しているが、重要なのは泳動粒子6を障壁先端よりも制御電極5側に移動することであって、必ずしも制御電極上にまで移動する必要はない。
【0059】
次に、期間Tb2においてVd1=+50V、Vd2=−50V、Vc=0Vを印加し、泳動粒子6の移動方向を制御電極方向から第2表示電極側へと反転させる。この時、第1表示電極4には制御電極5に対して+50Vのバイアスが印加されているため、全ての泳動粒子6は、第1表示電極側には戻ることなく、障壁11を越え第2表示電極側へと移動し、反射率Rは急激に減少する。
【0060】
期間Tcは黒表示保持状態であり、第2表示電極側に移動した泳動粒子6が、制御電圧Vc=+50Vによって表示電極側に押し付けられ、反射率10%程度の黒表示状態が安定に保持される。
【0061】
図5および図6に、本発明における他の駆動方法を示す。図3および図4と共通する説明は省略する。図5および図6においては、図3および図4における期間Tb1が省略されており、書き込み期間Tb(図3および図4のTb2に相当)において、Vd1=+50V、Vd2=−50V、Vc=0Vを印加した状態で発生する電界プロファィルに従って泳動粒子6を移動する。
【0062】
第1表示電極4上の泳動粒子6は、図5−Tb中に示した電界ベクトル分布に従って、まず制御電極側に向かって移動し、次に障壁11を乗り越え第2表示電極側へと移動する。図5および図6の駆動法は、駆動波形が単純であり応答速度についても改善が期待できるという長所があるが、図3および図4の方法に比べて障壁の高さ等、構成の自由度が制限されるという面がある。
【0063】
(単純マトリックス駆動方法)
続いて、図7および図8を見ながら本発明における単純マトリックス駆動方法について説明する。X方向にm列、Y方向にn行の画素が配列したm×nマトリックスを有する水平移動型電気泳動表示装置を考える。画素配列に沿って、m本の信号電極線が列方向に、n本の信号電極線が行方向に、互いに直交するように配列されており、各交点において信号電極線は各画素の制御電極に、第1走査電極線は各画素内の第1表示電極に、第2走査電極線は各画素内の第2表示電極に配線されている。
【0064】
まず図3および図4において説明した書き込み方法によって、全ての泳動粒子6を第1表示電極4上に集め全面白表示状態とする。但し、白表示書き込みの場合、期間Tb2においては全ての第1走査ラインにVd1=−50V、全ての第2走査ラインにVd2=+50V、全ての信号ラインにVc=0Vを印加する(図7(a)、全面消去)。
【0065】
次にY方向に上から順番に走査ラインを選択し書き込みを行なう。選択期間においては、第1走査ラインにVd1=0V(期間Tb1)/+50V(期間Tb2)、第2走査ラインにVd2=0V/−50V、選択画素(図7(b))に相当する信号ラインにVc=−50V/0Vを、非選択画素(図7(c))に相当する信号ラインにはVc=+50V/+100Vを印加する。選択画素(図7(b))においては図3および図4で説明した動作によって黒表示書き込みが行なわれ、非選択画素(図7(c))では、泳動粒子は期間Tb1、Tb2をとうして常に制御電圧によって第1表示電極側に押し付けられ白表示が安定に保持される。
【0066】
一方、非選択期間においては、第1走査ラインにVd1=−100V/−50V、第2走査ラインにVd2=−100V/−50Vが印加され、信号ラインにはVc=−50V/0V(図8(d),(f))または+50V/+100V(図8(e),(g))が印加される。いずれの場合も、泳動粒子は表示電極と制御電極間の電圧によって表示電極面に押し付けられており表示状態は変化しない。
【0067】
このようにして、本発明による水平移動型電気泳動装置において、単純マトリックス駆動を行なうことによって、クロストークすることなくコントラストの高い表示を形成することができる。
【0068】
(構成のバリエーション)
本発明の特徴である障壁の構成は、図1のタイプに限定されるものではない。
以下本発明において有効な構成について図を用いながら順に説明する。
【0069】
図9に、障壁が段差であるタイプを示す。第2表示電極3が段差12上に形成されるタイプ(図9(a))と、段差12の下に形成されるタイプ(図9(b))が挙げられる。いずれの場合も、形成される段差12の高さは、泳動粒子径の数倍〜数十倍、好ましくは3〜10倍と大きく、泳動粒子の水平移動をほぼ禁止する機能を有していることが特徴であり、特表平8−507154号公報において提案された段差とは、高さ及び機能が異なるものである。
【0070】
図10に、図1の変形として、面積の大きい第2表示電極面3を第1表示電極面4よりも高い位置に配置する構成を示す。図1の構成において表示電極面を斜めから観察する場合、障壁11が視界を遮る領域が表示電極面上に発生する。これは障壁11の先端部と泳動粒子6の充填面上端との距離が大きい第2表示電極面3において特に顕著であり、障壁11を透明部材で構成してもやや表示視野角特性に影響を与える場合がある。面積の大きい第2表示電極面3を第1表示電極面4よりも高い位置に配置することによって、第2表示電極面3における充填面上端と障壁先端間の距離を第1表示電極と同程度に揃えることが可能となる。この構成ではさらに、第1表示電極面4と第2表示電極面3の最表面にある泳動粒子6の、水平方向への移動しにくさの程度を等しくするという効果もある。
【0071】
第2基板上の制御電極は必ずしも、画素全面に形成する必要はない。例えば図11に、図1の構成において制御電極5を障壁上方の近傍にのみ配置する構成を示す。この配置においては、図5および図6で示した駆動方法における書き込み動作において、泳動粒子6の移動がよりスムーズに行なわれるという利点がある。
【0072】
図12に、図9で示した段差タイプのバリエーションを示す。上段側に位置する第2表示電極面3の下側の段差壁面部に、表示面観察者からは視認不可能な、遮蔽空間15を形成することによって、第1表示電極面上の泳動粒子充填体積を増やすと同時に、第1表示電極4と第2表示電極3との実効的な面積比を、見かけ上大きくして表示コントラストを向上させることができる。例えば段差断面を逆テーパ形状にする構成(図12(a))、オーバーハング形状にする構成(図12(b))によって、遮蔽空間15を形成することができる。
【0073】
本発明における障壁は、幾何学的な障壁に限定されるものではなく、表示電極間における泳動粒子の直接的な水平移動をほぼ禁止する機能を有するものであればよく、例えば電気的な障壁であってもよい。図13(a)に、電気的な障壁としてバリア電極13を配置する構成を示す。書き込み動作及びホールド状態において、バリア電極の電位を、泳動粒子に対して常に反発力を及ぼすように制御することによって幾何学的な障壁と同等の機能を果たすことが可能である。
【0074】
また、図13(b)に、電気的な障壁として帯電構造体14を用いる構成を示す。帯電構造体には、強誘電体やエレクトレットなど半永久的に電荷を保持可能な材料を用いる。帯電構造体に対して、泳動粒子と同極性の帯電電荷を形成することによって幾何学的な障壁と同等の機能を果たすことが可能である。
【0075】
以上の記述においては説明の便宜上、第1表示電極と第2表示電極が一画素内に一対配置された構成について示してきたが、本発明においては、一画素内の電極数について特に限定はなく、複数の表示電極対が配置される構成が可能であることはいうまでもない。図14に一画素内に電極対が2組配置される構成について示す。図14(a)は図1のタイプ、図14(b)は図12(a)のタイプに相当する。
【0076】
(構成部材の材料・製造方法)
以下、本実施態様の表示装置の製造方法について、図1を用いて説明する。
まず第1基板1上に、第1表示電極4及び第2表示電極3を形成しパターンニングする。同様に、第2基板2上に制御電極5を形成しパターンニングする。基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)等のポリマーフィルム或いはガラス、石英等の無機材料を使用することができる。表示電極材料は、パターニング可能な導電性材料ならどのようなものを用いてもよく、制御電極材料としては、酸化インジウムすず(ITO)などの透明電極を用いる。
【0077】
表示電極面の着色は、電極材料、あるいは電極材料の上に形成される絶縁層材料そのものの色を利用してもよく、又は所望の色の材料層を電極上、絶縁層上、基板面上に形成してもよい。また、絶縁層などに着色材料を混ぜ込んでもよい。
【0078】
次に、表示電極上及び制御電極上に絶縁層8、9を形成する。絶縁層の材料としては薄膜でピンホールが形成されにくい、低誘電率の材料が好ましく、例えば、アモルファスフッ素樹脂、高透明ポリイミド、PET等を使用できる。絶縁層の膜厚としては、100nm〜1μm程度が好適である。
【0079】
次に、第1基板1上に障壁11を形成する。障壁材料としてはポリマー樹脂を使用する。障壁の形成はどのような方法を用いてもよい。例えば、光感光性樹脂層を塗布した後、露光及びウエット現像を行う方法、又は別に作製した障壁を接着する方法、印刷法によって形成する方法、或いは光透過性の第1基板表面にモールドによって形成しておく方法等を用いることができる。
【0080】
次に第2基板上に隔壁10を形成する。隔壁10の配置に制限はないが、画素間で泳動粒子6が移動しないように、各画素の周囲を取り囲むように配置するのが好ましい。隔壁10の形成は、障壁11の材料及び形成方法と同様にして行なう。次に、隔壁で囲まれた各画素空間に透明な絶緑性液体7及び着色帯電泳動粒子6を充填する。透明絶縁性液体7としては、シリコーンオイル、トルエン、キシレン、高純度石油等の無色透明液体を使用する。黒色帯電泳動粒子6としては、絶縁性液体中で良好な帯電特性を示す材料を用いる。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂にカーボンなどを混ぜたものを使用する。泳動粒子6の粒径に制限はないが、通常は0.1μm〜20μm、好ましくは0.5〜10μm位のものを使用する。
【0081】
次に、第1基板1の第2基板2との接合面に接着層を形成した後、第1基板及び第2基板の位置合わせを行い、熱をかけて接着する。これに、電圧印加手段を接続して表示装置が完成する。
【0082】
尚、図9、図10、図12に示すような段差形状についても、段差を障壁形成と同様の材料及び形成方法によって形成することができる。但し、図9(b)を除いて、第2表示電極3は段差上面に形成する必要がある。この場合、例えば段差用厚膜、第2表示電極膜、レジスト膜を順次全面に形成した後、最上面のレジスト膜をパターンニングし、第2表示電極膜、段差用厚膜を順次ドライエッチングまたはウエットエッチングすればよい。第2表示電極膜は、マグネトロンスパッタ法によってITOを低温成膜してもいいし、ポリアニリンなどの有機導電性材料を印刷法によって形成してもよい。また、エッチング方式及び条件を調整することによって、図12に示すような、逆テーパー形状(図12(a))、或いはオーバーハング形状(図12(b))の断面を持つ段差を形成することができる。
【0083】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を更に詳しく説明する。
【0084】
実施例1
本実施例では、図9(a)に示す段差を有するセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、一方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。
【0085】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図15に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の面積比20:80である。
以下、図15及び図9(a)を見ながら、セルの製造方法について簡単に説明する。
【0086】
厚さ200μmのPETフィルムからなる第1基板1上に、まずアルミナなどの白色顔料を分散させたアクリル樹脂からなる絶縁着色層を全面に形成した。次に第1表示電極4として暗黒色の炭化チタン膜を成膜し、フォトリソグラフィー及びドライエッチングにより図15に示す形状にパターニングした。
【0087】
次にエポキシ樹脂を30μmの膜厚で塗布し、続いて第2表示電極としてITO薄膜をマグネトロンスパッタ法よって低温成膜した。続いてレジスト膜を塗布し、図15に示すような形状にパターンニング、最後にCF4 及びO2 ガスによる反応性ドライエッテングを行ない、高さ30μmのステップ上にITOからなる第2表示電極が配置された構造体を形成した。次に、全面にアモルファスフッ素樹脂からなる絶縁層8を200nm形成した。
【0088】
続いて、PETフィルムからなる第2基板2上に制御電極5としてITOを低温成膜したのち、図15に示す形状にパターニングし、次に全面にアモルファスフッ素樹脂からなる絶縁層9を200nm形成した。この上に、隔壁10を形成した。隔壁10は、光感光性エポキシ樹脂を塗布した後、露光及びウエット現像を行うことによって形成し、70μmの高さとした。形成された隔壁内に透明絶縁性液体7及び黒色帯電泳動粒子6を充填した。
【0089】
透明絶縁性液体1としては、シリコーンオイルを使用した。黒色帯電泳動粒子6としては、ポリスチレンとカーボンの混合物で、平均粒径5μm位のものを使用した。シリコーンオイル中での泳動粒子6は正帯電極性を示した。次に、第1基板1の第2基板2との接着面に熱融着性の接着層パターンを形成し、第2基板2の隔壁上に、位置合わせを行ないながら第1基板1を置き、熱をかけて貼り合わせた。これに不図示の電圧印加回路を接続して表示装置とした。
【0090】
以下、本実施例における駆動方法の説明を行なう。
第1表示電極を第1走査ライン(S11〜S13)、第2表示電極を第2走査ライン(S21〜S23)、制御電極を信号ライン(I1〜I3)とした。
【0091】
図16(a)に、各走査ライン及び信号ラインに印加した駆動パルスのタイムチャート図を、図16(b)に各期間における表示状態の変化を示した。期間前半(TR1,T11,T21,T31)を30msec、期間後半(TR2,T12,T22,T32)を30msecに設定した。
【0092】
駆動は、まず最初に全面を白表示にリセットし、次に走査ライン毎に、設定した表示パターンに対応する選択画素(1,2),(2,1),(2,3),(3,2)に対して、一方向(白表示→黒表示)への書き込みを行なった。尚、本実施例においては図3、図4および図7、図8で説明した駆動方法によって書き込みを行なった。書き込み時の泳動粒子の詳しい動作については、図3、図4および図7、図8と同様であるので説明を省略する。
【0093】
以下、タイムチャート図に従って駆動方法を順に説明する。期間TRにおいては、全ての第1走査ラインS11〜S13に対してVd1=0V(前半期間TR1以下略)/−50V(後半期間TR2、以下略)、全ての第2走査ラインS21〜S23に対してVd2=0V/0V、全ての信号ライン11〜13に対してVc=−50V/0Vを印加し、全画素を白表示にリセットした。
【0094】
次に期間T1において選択走査ラインであるS11、S21に対してVd1=0v/+50V、Vd2=0V/−50V、非選択走査ラインであるS12、S22、S13、S23に対してVd1=−100V/−50V、Vd2=0V/−50Vを印加し、選択画素(1,2)に相当する信号ラインI2にVc=−50V/0Vを、非選択画素(1,1),(1,3)に相当する信号ラインI1,I3にはVc=+50V/+100Vを印加した。その結果、選択走査ライン上の選択画素(1,2)のみが黒表示に書き換えられ、非選択画素(1,1),(1,3)、及び非選択走査ライン上の各画素では白表示が保持された。
【0095】
以下、期間T2、T3において選択画素パターンに従って同様の駆動を行なった結果、目的の表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは12:1程度の高い値を示した。
【0096】
比較例1
比較例1として、特表平8−507154号公報において開示された図19(a)に示すセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、一方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。
【0097】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図26に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の面積比35:65、第1基板と第2基板間の間隔70μm、段差高さ5μmとし、平均粒子径5μmの正帯電泳動粒子を用いた。表示電極と泳動粒子の配色は図1と同様である。製造プロセスは実施例1と全く同様であるので説明を省略する。
【0098】
以下駆動方法について説明する。
第1表示電極を走査ライン(S1〜S3)、制御電極を信号ライン(I1〜I3)とし、第2表示電極をコモン電極として接地電位に固定した。
【0099】
図27(a)に、各走査ライン及び信号ラインに印加した駆動パルスのタイムチャート図を、図27(b)に各期間における表示状態の変化を示した。各期間は50msecである。
【0100】
駆動は、まず最初に全面を白表示にリセットし、次に走査ライン毎に、設定した表示パターンに対応する選択画素(1,2),(2,1),(2,3),(3,2)対して、一方向(白表示→黒表示)への書き込みを行なった。尚、本実施例においては、図20、図21および図22で説明した駆動方法によって書き込みを行なった。書き込み時の泳動粒子の詳しい動作については、図20、図21および図22と同様であるので説明を省略する。
【0101】
以下、タイムチャート図に従って駆動方法を順に説明する。期間TRにおいては、全走査ラインS1〜S3に対してVd=−50V、全信号ラインI1〜I3に対してVc=0Vを印加し、全画素を白表示にリセットした。
【0102】
次に期間T1において選択走査ラインであるS1に対してVd=+50V、非選択走査ラインであるS2、S3に対してVd=+5Vを印加し、選択画素(1,2)に相当する信号ラインI2にVc=+50Vを、非選択画素(1,1),(1,3)に相当する信号ラインI1,I3にはVc=+250Vを印加した。その結果、選択走査ラインS1の選択画素(1,2)のみが黒表示に書き換えられ、非選択画素(1,1),(1,3)、及び非選択走査ラインS2,S3における各画素では白表示が保持された。但し、非選択画素(1,1),(1,3)においては制御電圧Vc=+250Vによる泳動粒子の押え込みは不十分であり、図24(c)に示したように一部の泳動粒子が第2表示電極側に移動してしまい、図27(b)に示すような灰色がかった表示になってしまった。
【0103】
以下、期間T2、T3において選択画素パターンに従って同様の駆動を行なった結果、目的の表示パターンが得られたが、白表示が全体的に灰色がかっており表示コントラストは劣悪であった。白表示と黒表示の平均的なコントラストは3:1程度であった。
【0104】
実施例2
本実施例では、図1に示したセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、双方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。図1の構成を用いるため、泳動粒子の水平方向への移動を双方向に対して禁止することができ、従って黒表示→白表示及び白表示→黒表示の双方向に対して書き込みを行なうことができる。双方向書き込み駆動は、特表平8−507154号公報で開示された構成では困難であって、本発明ならではの特徴の一つである。
【0105】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図17に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の面積比18:72である。
【0106】
以下、図17及び図1を見ながら、セルの製造方法について簡単に説明する。厚さ200μmのPETフィルムからなる第1基板1上に、まずアルミナなどの白色顔料を分散させたアクリル樹脂からなる絶縁着色層を全面に形成した。次に第2表示電極3としてITOを低温成膜し、フォトリソグラフィー及びドライエッチングにより図17に示す形状にパターニングした。次に第1表示電極4として暗黒色の炭化チタン膜を成膜し、同様にしてパターニングした。次に、全面にアモルファスフッ素樹脂からなる絶縁層8を200nmの厚さに形成した。次に感光性エボキシ樹脂を塗布・露光・現像し、高さ30μmの障壁11を形成した。
【0107】
以下のプロセスは実施例1と全く同様であるので説明を省略する。
以下、本実施例における駆動方法の説明を行なう。
制御電極を走査ライン(S1〜S3)、第1表示電極を第1信号ライン(I11〜I13)、第2表示電極を第2信号ライン(I21〜I23)とした。
【0108】
図18(a)に、各走査ライン及び信号ラインに印加した駆動パルスのタイムチャート図を、図18(b)に各期間における表示状態の変化を示した。各期間は50msecである。
【0109】
双方向への書き込みが可能であるので、本実施例においては初期動作として全面リセットをする必要はない。本実施例では初期表示パターンとして期間T0に示すパターンを与え、全画素を各走査ライン(S1〜S3)ごとに反転表示することとする。尚、本実施例においては図5及び図6で説明した駆動方法によって書き込みを行なった。書き込み時の泳動粒子の詳しい動作については、図5及び図6と同様であるので説明を省略する。
【0110】
以下、タイムチャート図に従って駆動方法を順に説明する。期間T1おいて選択走査ラインであるS1に対してVc=0V、非選択走査ラインであるS2、S3に対してVc=+100Vを印加し、画素(1,1),(1,3)に相当する第1信号ラインI11,I13及び第2信号ラインI21,I23にそれぞれに白表示書き込みパルスとして、Vd1=−50V、Vd2=+50Vを印加し、また画素(1,2)に相当する第1信号ラインI12及び第2信号ラインI22にそれぞれに黒表示書き込みパルスとして、Vd1=+50V、Vd2=−50Vを印加した。その結果、選択走査ラインS1の全ての画素が書き換えられ反転表示され、また非選択走査ラインS2,S3における各画素では初期表示状態が保持された。
【0111】
以下、期間T2、T3において同様の駆動を行なった結果、目的の反転表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは10:1程度の高い値を示した。
【0112】
実施例3
本実施例では、段差断面がオーバーハング形状である図12(b)に示したセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、一方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。
【0113】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図15に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の(表示面観察者からの)実効的な面積比10:90、第1基板と第2基板間の間隔70μm、段差高30μmとし、平均粒子径5μmの正帯電泳動粒子を用いた。
【0114】
製造プロセスは実施例1とほぼ同様であるので説明を省略する。但し、第2表示電極及び段差のパターン形成時に行なう酸素プラズマよるドライエッチングを通常より長めに行ない、図12(b)に示すようなオーバーハング形状の断面を持つ段差を形成した。
【0115】
実施例1と全く同様な駆動を行なった結果、目的の表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは15:1程度の高い値を示した。
【0116】
【発明の効果】
以上、詳細に述べたように、本発明によって次のような効果が得られた。
第1に、水平移動型電気泳動装置においてクロストーク現象の見られない、良好な表示コントラストが得られる単純マトリックス駆動が実現された。これは新規な構成と駆動方法によって、従来問題であった、非選択画素内の泳動粒子のホールド不良によるクロストークの発生を、ほぼ完全に抑えこめたことによる。
【0117】
第2に、高い障壁を導入することによって第1表示電極と第2表示電極との面積比を従来より大きく設定できるようになった。これによって、クロストーク抑制とは別の理由による、更なるコントラストの向上が実現された。
【0118】
第3に、双方向の書き込み駆動ができるようになった。このため、初期全面リセットの必要がなく、また表示画面の一部分のみを書き換える部分書き換え駆動ができるようになった。
【0119】
第4に、障壁または段差の高さを十分に高くし、制御電圧がなくとも泳動粒子の水平方向移動をほぼ禁止できるようになったことにより、制御電圧が従来に比べて大幅に低減できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示装置の代表的な一例を示す断面図である。
【図2】本発明の表示装置の代表的な一例を示す平面図である。
【図3】本発明の表示装置の駆動方法及び動作状態の一例を示す図である。
【図4】図3の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の部分を示す図である。
【図5】本発明の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の例を示す図である。
【図6】図5の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の部分を示す図である。
【図7】本発明の表示装置の単純マトリックス駆動法の一例を示す図である。
【図8】図7の表示装置の単純マトリックス駆動法の他の部分を示す図である。
【図9】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図10】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図12】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図13】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図14】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図15】本発明の実施例1において作成した3×3マトリックスを示す平面構成図である。
【図16】本発明の実施例1で行なった駆動のタイムチャート及び表示パターンを示す図である。
【図17】本発明の実施例2において作成した3×3マトリックスを示す平面構成図である。
【図18】本発明の実施例2で行なった駆動のタイムチャート及び表示パターンを示す図である。
【図19】従来例における表示装置を示す断面図である。
【図20】従来例における表示装置の駆動方法及び動作状態を示す図である。
【図21】図21の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の部分を示す図である。
【図22】従来例における表示装置の単純マトリックス駆動法を示す図である。
【図23】図22の表示装置の単純マトリックス駆動法の他の部分を示す図である。
【図24】従来例における表示装置の問題点を示す説明図である。
【図25】従来例における表示装置の他の問題点を示す説明図である。
【図26】比較例1で作成した3×3マトリックスを示す平面構成図である。
【図27】比較例1で行なった駆動のタイムチャート及び表示パターンを示す図である。
【符号の説明】
1 第1基板
2 第2基板
3 第2表示電極
4 第1表示電極
5 制御電極
6 泳動粒子
7 透明絶縁性液体
8、9 絶縁膜
10 隔壁
11 障壁
12 段差
13 バリア電極
14 帯電構造体
15 遮蔽空間
20 駆動ドライバー
22 段差
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電泳動粒子を移動させて表示を行う電気泳動表示装置およびその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報機器の発達に伴い、各種情報のデータ量は拡大の一途をたどり、情報の出力も様々な形態を用いてなされている。一般に、情報の出力は、ブラウン管や液晶などを用いたディスプレイ表示とプリンタなどによる紙へのハードコピー表示とに大別できる。ディスプレイ表示においては、低消費電力且つ薄型の表示装置のニーズが増しており、中でも液晶表示装置は、こうしたニーズに対応できる表示装置として活発な開発が行われ商品化さてれいる。しかしながら、現在の液晶表示装置には、画面を見る角度や、反射光により、画面上の文字が見ずらく、また光源のちらつき・低輝度等から生じる視覚への負担が、未だ十分に解決されていない。またブラウン管を用いたディスプレイ表示では、コントラストや輝度は液晶表示と比較して十分あるものの、ちらつきが発生するなど後述するハードコピー表示と比較して十分な表示品位があるとはいえない。また装置が大きく重いため携帯性が極めて低い。
【0003】
一方、ハードコピー表示は情報の電子化により不要になるものと考えられていたが、実際には依然膨大な量のハードコピー出力が行われている。その理由として、情報をディスプレイ表示した場合、前述した表示品位に係わる問題点に加えて、その解像度も一般的には最大でも120dpi程度と紙へのプリント・アウト(通常300dpi以上)と比較して相当に低い。従って、ディスプレイ表示ではハードコピー表示と比較して視覚への負担が大きくなる。その結果、ディスプレイ上で確認可能であっても、一旦ハードコピー出力することがしばしば行われることになる。また、ハードコピーされた情報は、ディスプレイ表示のように表示領域がディスプレイのサイズに制限されることなく多数並べたり、また複雑な機器操作を行わずに並べ替えたり、順に確認していくことができることも、ディスプレイ表示可能であってもハードコピー表示が併用される大きな理由である。さらには、ハードコピー表示は、表示を保持するためのエネルギーは不要であり、情報量が極端に大きくない限り、何時でもどこでも情報を確認することが可能であるという優れた携帯性を有する。
【0004】
このように動画表示や頻繁な書き換えなどが要求されない限り、ハードコピー表示はディスプレイ表示と異なる様々な利点を有するが、紙を大量に消費するという欠点がある。そこで、近年においては、リライタブル記録媒体(視認性の高い画像の記録・消去サイクルが多数回可能で、表示の保持にエネルギーを必要としない記録媒体)の開発が盛んに進められている。こうしたハードコピーの持つ特性を継承した書き換え可能な第3の表示方式をペーパーライクディスプレイと呼ぶことにする。
【0005】
ペーパーライクディスプレイの必要条件は、書き換え可能であること、表示の保持にエネルギーを要さないか若しくは十分に小さいこと(メモリー性)、携帯性に優れること、表示品位が優れていることなどである。現在、ペーパーライクディスプレイとみなせる表示方式としては、例えば、サーマルプリンターヘッドで記録・消去する有機低分子・高分子樹脂マトリックス系(例えば、特開昭55−154198号公報、特開昭57−82086号公報)を用いた可逆表示媒体を挙げることができる。この系は一部プリペイドカードの表示部分として利用されているが、コントラストが余り高くないことや、記録・消去の繰り返し回数が150〜500回程度と比較的少ないなどの課題を有している。
【0006】
また、別のペーパーライクディスプレイとして利用可能な表示方式として、Harold D.Lees等により発明された電気泳動表示装置(米国特許第3612758号明細書)が知られている。他にも、特開平9−185087号公報に電気泳動表示装置が開示されている。
【0007】
この表示装置は、絶縁性液体中に着色帯電泳動粒子を分散させてなる分散系と、この分散系を挟んで対峙する一対の電極からなっている。電極を介して分散系に電圧を印加することにより、着色帯電泳動粒子の電気泳動性を利用して、該着色帯電泳動粒子を粒子自身が持つ電荷と反対極性の電極側にクーロン力により吸着させるものである。表示は、この着色帯電泳動粒子の色と染色された絶縁性液体の色の違いを利用して行われる。つまり、着色帯電泳動粒子が観測者に近い光透過性の第1の電極表面に吸着させた場合には着色帯電泳動粒子の色が観察され、逆に観測者から遠い第2の電極表面に吸着させた場合には、着色帯電泳動粒子と光学的特性が異なるように染色された絶縁性液体の色が観察される。
【0008】
しかしながら、このような電気泳動装置では、絶縁性液体に染料やイオンなどの発色材を混合しなくてはならず、このような発色材の存在は、新たな電荷の授受をもたらすために電気泳動動作において不安定要因として作用しやすく、表示装置としての性能や寿命、安定性を低下させる場合があった。
【0009】
係る問題を解決するために、第1表示電極及び第2表示電極からなる電極対を同一基板上に配置し、観察者から見て着色帯電泳動粒子を水平に移動させる表示装置が、特開昭49−5598号公報及び特願平10−005727号公報において提案された。電気泳動特性を利用して、透明な絶縁性液体中で着色帯電泳動粒子を電圧印加により、第1表示電極面及び第2電極面間を、基板面と水平に移動させることによって表示を行うものである。
【0010】
水平移動型電気泳動表示装置においては、絶縁性液体は透明であって、観察者側から見て、第1表示電極と第2表示電極が異なる着色を呈し、いずれか一方の色を泳動粒子の色と一致させてある。例えば第1表示電極の色を黒色、第2表示電極の色を白色、泳動粒子の色を黒色とすると、泳動粒子が第1電極上に分布する場合には、第2表示電極が露出し白色を呈し、泳動粒子が第2表示電極上に分布する場合には泳動粒子色である黒色を呈す。
【0011】
ところで、画素がマトリックス状に配置された表示装置を、電気的にアドレスする方式としては大別して、アクティブマトリックス方式と単純マトリックス方式の2つがある。
【0012】
アクティブマトリックス方式では、各画素それぞれに対して薄膜トランジスタ(TFT)などのスイッチング素子を形成し、各画素に印加する電圧を画素ごとに独立に制御する。この方式を用いれば、水平移動型電気泳動表示装置を、高い表示コントラストで駆動することが可能である。しかしながら一方で、アクティブマトリックス方式はプロセスコストが高い、薄膜トランジスタのプロセス温度が高くポリマー基板上への形成が困難である、といった問題を抱える。この問題は、低コストでフレキシブルなディスプレイを目指すペーパーライクディスプレイにおいては特に重要である。これらの問題を解決するために、印刷プロセスが適用可能なポリマー材料による薄膜トランジスタの形成プロセスが提案されているが、実用化の可能性は未だ未知数である。
【0013】
単純マトリックス方式は、アドレスのために必要な構成要素がX−Y電極ラインのみであるから低コストであリポリマー基板上への形成も容易である。選択画素に対して書き込み電圧を印加する場合は、選択画素を交点とするX電極ラインとY電極ラインに対して、書き込み電圧に相当する電圧を印加すればよい。ところが、水平移動型電気泳動表示装置を単純マトリックス方式により駆動しようとすると、選択された画素の周辺画素まで一部書き込まれてしまう、いわゆるクロストーク現象が発生し、表示コントラストが著しく劣化してしまう。これは水平移動型電気泳動表示装置が、書き込み電圧に対して明確な閾値特性を持たないために必然的に発生する問題である。
【0014】
係る問題に対して、原理的に閾値を持たない電気泳動表示において、表示電極に加えて制御電極を導入し、3電極構造によって単純マトリックス駆動を実現する提案がなされている。3電極構造に関する提案は殆どが上下電極型電気泳動表示に関してなされたものであり、例えば特開昭54−085699号公報(米国特許第4203106号明細書)がある。
【0015】
水平移動型電気泳動表示装置における3電極構造の提案は唯一、特表平8−507154号公報(米国特許第5345251号明細書)においてなされている。但し特表平8−507154号公報においては、分散液は透明ではなく着色されていると考えられ、前述の特開昭49−5598号公報及び特願平10−005727号公報及び本発明が対象とする、分散液が透明であることを特徴とする水平移動型電気泳動表示装置とは異なるものである。
【0016】
特表平8−507154号公報では2つの構成が開示されている。図19にその2つの構成の表示装置の断面図を示す。第1の構成は水平移動型電気泳動装置の第2基板2側に第3の電極として制御電極5が配置されるタイプであり(図19(a)参照)、第2の構成は第1基板1側の第1表示電極4と第2表示電極3との間に第3の電極として制御電極5が配置されるタイプである。(図19(b)参照)
【0017】
第1構成、第2構成のいずれのタイプにおいても、一画素内には、複数のライン電極が集合したフォーク状第1表示電極と、第1表示電極の各ライン間に配置された複数のライン電極が集合したフォーク状第2表示電極が第1基板上に配置される。第2表示電極3上にはクロム厚膜が付与され、その結果第1表示電極4と第2表示電極3の境界に約0.3μmの段差22が形成されている。第1構成においては制御電極5は、第1基板1に対して25〜116μmの間隔で対向配置された第2基板2上の画素内全面に形成され、第2構成においては制御電極5は、第1基板上の、第1表示電極4と第2表示電極3の各ライン間に配置される。図19においては説明の便宜上、第1表示電極、第2表示電極ともに1ラインで構成される場合について示してある。
【0018】
次に、図20および図21を用いて特表平8−507154号公報における書き込み動作について説明する。図20に泳動粒子の動作状態、図21に印加パルス及び反射率変化について示す。セル構成は図19(a)と同じ(但し1画素)である。
【0019】
尚、以下の説明で述べる印加電圧値は本発明者が実際に行なった実験によって求められた条件であり、必ずしも特表平8−507154号公報記載の条件とは一致していない。これは主に使用する泳動粒子の帯電極性、帯電量などの物性値によるところが大きい。以下の説明では、後に述べる本発明の動作説明との比較を容易にするため、本発明者が使用した泳動粒子での実験結果における印加電圧値を記載する。
【0020】
また特表平8−507154号公報においては、絶縁性液体として着色液体を使用していると考えられるが、以下の説明では後に述べる本発明の動作説明との比較を容易にするため、本発明者らが独自に透明な絶縁液体を用い、また表示コントラストの発現方法についても、本発明者らが独自に泳動粒子を黒色、第1表示電極を黒色、第2表示電極を白色とする本発明の実施形態と同様の方式の構成について行なったのでその説明を行なう。
【0021】
泳動粒子6の帯電極性を正、第2表示電極3をコモン電極とし、第2表示電極3の接地電位を基準にして第1表示電極4に駆動電圧Vd、制御電極5に制御電圧Vcを印加するものとする。
【0022】
期間Taは白表示保持状態である。図20中、矢印はセル内の電界ベクトルの概要を示す。第1表示電極4上に集められた泳動粒子6は、第1表示電極4と第2表示電極3間に設けられた段差22によって第2表示電極3側への移動を抑制され、かつ第1表示電極4と制御電極5間に印加される保持電圧Vc=+250Vによって表示電極側に押え込まれることによって安定し、反射率(R)70%程度の白表示状態が保持される。保持状態において印加されるVd=5Vは、黒表示状態において、段差近傍の泳動粒子が第1表示電極側へ移動しやすくなる傾向を抑制する役割を果たしている。
【0023】
書き込み期間Tbにおいては、Vd=+50v、Vc=+50Vを印加する。第1表示電極4と制御電極5とは同電位に設定されるため制御電圧による押え込みは解除され、全ての泳動粒子6は表示電極面に沿って段差を乗り越えて第2表示電極側に水平移動し、反射率Rは急激に減少する。
【0024】
黒表示保持状態である期間Tcでは、保持電圧Vc=+250Vによって表示電極側に押し付けられ、反射率5%程度の黒表示状態が保持される。
【0025】
続いて、特表平8−507154号公報において開示された単純マトリックス駆動方法について図22および図23を用いながら説明する。X方向にm列、Y方向にn行の画素が配列したm×nマトリックスを有する水平移動型電気泳動表示装置を考える。画素配列に沿って、m本の信号電極線が列方向に、n本の信号電極線が行方向に、互いに直交するように配列されており、各交点において信号電極線は各画素の制御電極5に、走査電極線は各画素内の第1表示電極4に配線されている。第2表示電極3はコモン電極とし接地電位に固定する。
【0026】
まず全ての走査ラインにVd=−50V、全ての信号ラインにVc=0Vを印加し、全ての泳動粒子6を第1表示電極上に集める(図22(a)、全面消去)。次にY方向に上から順番に走査ラインを選択し書き込みを行なう。選択期間(書き込み期間)では、走査ラインにVd=+50Vを印加し、選択画素に相当する信号ラインにVc=+50V、非選択画素に相当するラインにVc=+250Vを印加する。選択画素では表示電極間に印加される駆動電圧Vd=+50Vによって、泳動粒子が段差を乗り越え第2表示電極側に移動し書き込みが行なわれる(図22(b))。非選択画素においても駆動電圧Vd=+50Vが印加されているが、第1の構成においては、泳動粒子はVc=+250Vの制御電圧によって第1表示電極に押し付けられ移動(書き込み)が阻止される(図22(c))。
【0027】
一方、非選択期間においては走査ラインにVd=+5Vが印加され、信号ラインにはVc=+50Vまたは+250Vが印加される(図23(d)〜(g))。いずれの場合も、泳動粒子は制御電圧によって表示電極面に押し付けられており表示状態は変化しない。
このようにして、閾値特性を持たない水平移動型電気泳動装置において、単純マトリックス駆動法を用いた表示書き込みが実現される。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特表平8−507154号公報で開示された水平移動型電気泳動装置は次のような問題点を抱えていた。以下にその問題点を図24を参照しながら説明する。
【0029】
第1の構成においては、段差をあまり高く設定できない、という制限がある。段差を高くしすぎると、選択期間における帯電泳動粒子の移動において、一部の泳動粒子が段差を越えられずに段差底部に残留してしまい、表示コントラストが低下する(図24(a))。段差底部への残留を引き起こさないためには、段差の高さを泳動粒子径前後に制限する必要がある。
【0030】
段差の高さが制限されるため、段差による泳動粒子の移動抑制効果は不十分である。このため、選択期間に駆動電圧Vdが印加された状態で、非選択画素において制御電圧Vcを印加し泳動粒子の移動を押え込む場合(図22(c))において、段差が低いために一部の泳動粒子が段差を越えて移動していまい、結果としてクロストーク現象を引き起こし表示コントラストが劣化するという重要な問題が発生する(図24(b))。
【0031】
制御電圧Vcを十分に大きくすれば、ある程度泳動粒子を押え込むことは可能であるが、この場合は印加電圧が上昇してしまうという弊害とともに、素子内の絶縁部材中に高電圧によって注入された電荷が電圧解除後も残留し、この残留電荷のもたらす意図せぬ電界によって泳動粒子の動作状態が不安定になる、という新たな問題が発生する。
【0032】
段差の高さが制限される弊害は他にもある。段差の高さが十分でないため、第1表示電極と第2表示電極との間の面積差をあまり大きく設定できない。面積差を大きく設定すると、面積の小さい電極面上に泳動粒子を集めようとしても泳動粒子が溢れ出てしまうからである(図24(c))。表示コントラストは、第1表示電極と第2表示電極の面積比で決定されるため、結果として表示コントラストが制限されてしまう。
【0033】
さらに、第1の構成においては、段差による移動抑制効果は下段側から上段側への方向に限定され、上段側から下段側への移動はむしろ加速される。従って、書き込み方向は一方向のみに限られ、まず最初に全画面の泳動粒子を下段側に集め全面リセットしたのち、一方向への書き込みを行なうという駆動法に限定されてしまう。書き込みを双方向に対して行なうことはできず、画面の一部のみを選択的に書き換えるような駆動はできない。
【0034】
一方、第2の構成においては、選択期間においては、非選択画素に対しては表示電極と制御電極間に電圧を印加することによって泳動粒子の移動を双方向に対して阻止することが可能であり、また選択画素に対しては表示電極と制御電極間の電圧を0Vにすることによって泳動粒子の移動をスムーズに行なうことができる。この場合は段差は必ずしも必須な構成要素ではないと考えられる。
【0035】
しかしながら、第2の構成において、制御電極が阻止することができるのは、あくまで表示電極間の移動のみであって、表示電極面内での移動については制御不能である。このため非選択期間において表示電極と制御電極間に印加される制御電圧によって、表示電極面内に均一に分散していた泳動粒子は制御電極から反発する方向に移動し、表示電極面内において図25(a),(b)に示すような分布の偏りが発生し表示コントラストが著しく低下してしまう、という問題がある。
【0036】
本発明は、この様な従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、クロストークの発生を抑え、良好な表示コントラストが得られる単純マトリックス駆動が可能な水平移動型電気泳動表示装置およびその駆動方法を提供することを目的とするものである。
【0037】
また、本発明は、第1表示電極と第2表示電極との面積比を従来より大きく設定でき、コントラストの向上を実現した電気泳動表示装置およびその駆動方法を提供することを目的とするものである。
【0038】
また、本発明は、双方向の書き込み駆動ができ、また表示画面の一部分のみを書き換える部分書き換えが可能な電気泳動表示装置およびその駆動方法を提供することを目的とするものである。
【0039】
【課題を解決するための手段】
以上述べた問題点を解決するために、本発明においては以下に記載する新規な構成の電気泳動表示装置及びその駆動方法を提案する。
【0040】
本発明の第一の発明は、第1基板と、該第1基板上に配置される第1表示電極及び第2表示電極と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、該第2基板上に配置された制御電極と、各電極に所望の電圧を印加する手段と、前記第1基板及び第2基板間に充填された透明絶縁性液体と、該透明絶縁性液体中に分散された複数の着色帯電泳動微粒子とを備え、マトリクスに配列した画素の各々の前記制御電極を信号電極とし、前記第1表示電極と前記第2表示電極をそれぞれ第1走査電極と第2走査電極として、単純マトリクス駆動により該着色帯電泳動粒子を第1および第2表示電極間で水平移動させることによって表示の切り換えを行なう電気泳動表示装置において、
前記第1表示電極と第2表示電極間における前記帯電泳動粒子の直接的な水平移動を少なくとも一方向に対してほぼ禁止する機能を有する障壁を第1表示電極と第2表示電極との間に備え、選択期間に、前記所望の電圧を印加する手段が、帯電泳動粒子を一方の表示電極から前記制御電極側に移動させた後、帯電泳動粒子を制御電極側から前記障壁を越えて他方の表示電極側に移動する電圧を各電極に印加することを特徴とする電気泳動表示装置である。
【0041】
前記障壁は、第1表示電極面及び第2表示電極面のうちの少なくとも一方の面より突出し、前記帯電泳動粒子径の数倍〜数十倍の高さを有する幾何学的な段差によって構成されることが好ましい。
前記障壁は、前記帯電泳動粒子に対して静電的な反発力を及ぼすバリア電極であることが好ましい。
前記障壁は、前記帯電泳動粒子に対して静電的な反発力を及ぼす帯電構造体であることが好ましい。
【0042】
前記障壁の段差の、第1表示電極及び第2表示電極の一方の上段側に位置する表示電極面の下側に、前記帯電泳動粒子が入出可能であって、表示面観察者からは視認不可能な遮蔽空間が形成されてなることが好ましい。
【0043】
本発明の第二の発明は、第1基板と、該第1基板上に配置される第1表示電極及び第2表示電極と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、該第2基板上に配置された制御電極と、各電極に所望の電圧を印加する手段と、前記第1基板及び第2基板間に充填された透明絶縁性液体と、該透明絶縁液体中に分散された複数の着色帯電泳動微粒子及び前記第1表示電極と第2表示電極との間に配置され、第1表示電極と第2表示電極間における前記帯電泳動粒子の直接的な水平移動を、少なくとも一方向に対してほぼ禁止する機能を有する障壁とを備え、マトリクスに配列した画素の各々の前記制御電極を信号電極とし、前記第1表示電極と前記第2表示電極をそれぞれ第1走査電極と第2走査電極として、単純マトリクス駆動により該着色帯電泳動粒子を第1および第2表示電極間で移動させることによって表示の切り換えを行なう電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記障壁によってほぼ禁止された方向への帯電泳動粒子の移動方法が、帯電泳動粒子を一方の表示電極から前記制御電極側に移動する第1の過程と、第1の過程に続いて帯電泳動粒子を制御電極側から前記障壁を越えて他方の表示電極側に移動する第2の過程とからなる間接的な移動によることを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法である。
【0044】
前記帯電泳動粒子の間接的な移動を引き起こすために、(A)正帯電の帯電泳動粒子の場合には、
「移動先でない表示電極の電位≧制御電極の電位>移動先である表示電極の電位」
の関係を満たし、(B)負帯電の帯電泳動粒子の場合には、
「移動先でない表示電極の電位≦制御電極の電位<移動先である表示電極の電位」
の関係を満たす期間が含まれるように、前記第1表示電極、第2表示電極及び制御電極に電圧を印加することが好ましい。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電気泳動表示装置(以下、表示装置と記す)の実施態様について順に説明する。
【0046】
(基本的な構成と動作)
図1は本発明の表示装置の代表的な一例を示す断面図である。図1では説明の便宜上2画素からなる構成を示している。第1基板1上に形成された第1表示電極4と第2表示電極3との間に本発明の特徴である障壁11が配置されている。隔壁10を介して第2基板2が対向配置されており、第2基板2上には、制御電極5が形成されている。両基板と隔壁によって形成される空間内には、透明な絶縁性液体7が充填され、透明絶縁液体中には着色された帯電泳動粒子6が分散されている。20は駆動ドライバーを示す。なお、本実施態様において、透明な絶縁性液体とは、例えば無色透明な絶縁性液体を用いることが好ましい。
【0047】
表示電極の平面形状は特に限定はなく、代表的なストライプ形状(図2(a))のほか、方形(図2(b))、円形などの閉ループ形状など、任意の形状が適用可能である。いずれの形状においても、障壁11は第1表示電極4と第2表示電極3との境界領域に形成される。
【0048】
本発明の構成上の顕著な特徴は、この障壁11が泳動粒子径の数倍から数十倍程度、好ましくは3〜10倍の高さを有することにある。十分に高い障壁を設けることによって、泳動粒子6が電極面に沿って両表示電極間を直接的に水平移動することをほぼ禁止することができる。また高い障壁によって、表示電極の面積が小さい場合でも泳動粒子を溢れ出ることなく保持することができるため、第1表示電極と第2表示電極間に大きな面積差を設定でき、表示コントラストを大幅に向上できる。
【0049】
着色された帯電泳動粒子6の粒子径は、0.1〜20μm、好ましくは0.5〜10μmが望ましい。
【0050】
本発明における障壁は、幾何学的な段差によって構成されるが、具体的には幾何学的な段差とは例えば図1に示すような障壁11、又は図9に示すような段差12である。
【0051】
第1表示電極4と第2表示電極3の面積比は大きいほど望ましいが、面積が小さい方の表示電極(図1の場合、第1表示電極4)と障壁11、隔壁10(または障壁)で囲まれる空間に画素内の全泳動粒子が収納されることが必要である。従って、障壁11を高くするほど面積比を大きく、表示コントラストを大きくすることができる。
【0052】
図1の構成の具体的なサイズとしては、例えば画素サイズ100μm×100μmに対して、泳動粒子径5μm、第1基板と第2基板の間隔80μm,障壁の高さ40μm、全画素面積に対する面積比として、第1表示電極15%、第2表示面積80%、障壁5%程度が好適である。
【0053】
セル構成部材の配色は任意の組み合わせが可能であり、例えば泳動動粒子6を黒、第1表示電極4を黒、第2表示電極3を白、障壁11を透明、制御電極5を透明に組み合わせた場合、白表示と黒表示の切り換えが行なえる。第2表示電極3の着色がRGBである画素を並べることによってカラー化表示を行なうことも可能である。
【0054】
次に、図3および図4を用いて本発明の駆動方法における顕著な特徴である、書き込み動作について説明する。図3に各過程における泳動粒子の動作状態、図4に各過程ごとの印加パルス及び反射率変化について示す。セル構成は図1と同じ(但し1画素)である。
【0055】
以下の説明では泳動粒子6の帯電極性を正とし、第1表示電極4に駆動電圧Vd1、第2表示電極3に駆動電圧Vd2、制御電極5に制御電圧Vcを印加するものとする。
【0056】
期間Taは白表示保持状態である。図3中、矢印はセル内の電界ベクトルの概要を示す。全ての泳動粒子6は第1表示電極4と障壁11及び隔壁10で囲まれた空間内に収納されており、かつ第1表示電極4と制御電極5の間に印加される保持電圧によって表示電極側に押し付けられ、反射率80%程度の白表示状態が安定に保持される。
【0057】
本発明においては、障壁11によって、泳動粒子の第2表示電極3側への直接的な水平移動をほぼ完全に禁止しているため、特表平8−507154号公報の構成に比べて、泳動粒子の移動を禁止し保持するための制御電圧を大幅に小さくすることが可能であり、本発明の利点の一つである。図3では制御電圧をVc=+50Vとした。
【0058】
書き込みは期間Tb1、Tb2において行なわれる。まず期間Tb1において、Vd1=Vd2=0V、Vc=−50Vを印加し、泳動粒子6を制御電極側に移動する。尚、図3−Tb1では泳動粒子6が制御電極5上に吸着しているが、重要なのは泳動粒子6を障壁先端よりも制御電極5側に移動することであって、必ずしも制御電極上にまで移動する必要はない。
【0059】
次に、期間Tb2においてVd1=+50V、Vd2=−50V、Vc=0Vを印加し、泳動粒子6の移動方向を制御電極方向から第2表示電極側へと反転させる。この時、第1表示電極4には制御電極5に対して+50Vのバイアスが印加されているため、全ての泳動粒子6は、第1表示電極側には戻ることなく、障壁11を越え第2表示電極側へと移動し、反射率Rは急激に減少する。
【0060】
期間Tcは黒表示保持状態であり、第2表示電極側に移動した泳動粒子6が、制御電圧Vc=+50Vによって表示電極側に押し付けられ、反射率10%程度の黒表示状態が安定に保持される。
【0061】
図5および図6に、本発明における他の駆動方法を示す。図3および図4と共通する説明は省略する。図5および図6においては、図3および図4における期間Tb1が省略されており、書き込み期間Tb(図3および図4のTb2に相当)において、Vd1=+50V、Vd2=−50V、Vc=0Vを印加した状態で発生する電界プロファィルに従って泳動粒子6を移動する。
【0062】
第1表示電極4上の泳動粒子6は、図5−Tb中に示した電界ベクトル分布に従って、まず制御電極側に向かって移動し、次に障壁11を乗り越え第2表示電極側へと移動する。図5および図6の駆動法は、駆動波形が単純であり応答速度についても改善が期待できるという長所があるが、図3および図4の方法に比べて障壁の高さ等、構成の自由度が制限されるという面がある。
【0063】
(単純マトリックス駆動方法)
続いて、図7および図8を見ながら本発明における単純マトリックス駆動方法について説明する。X方向にm列、Y方向にn行の画素が配列したm×nマトリックスを有する水平移動型電気泳動表示装置を考える。画素配列に沿って、m本の信号電極線が列方向に、n本の信号電極線が行方向に、互いに直交するように配列されており、各交点において信号電極線は各画素の制御電極に、第1走査電極線は各画素内の第1表示電極に、第2走査電極線は各画素内の第2表示電極に配線されている。
【0064】
まず図3および図4において説明した書き込み方法によって、全ての泳動粒子6を第1表示電極4上に集め全面白表示状態とする。但し、白表示書き込みの場合、期間Tb2においては全ての第1走査ラインにVd1=−50V、全ての第2走査ラインにVd2=+50V、全ての信号ラインにVc=0Vを印加する(図7(a)、全面消去)。
【0065】
次にY方向に上から順番に走査ラインを選択し書き込みを行なう。選択期間においては、第1走査ラインにVd1=0V(期間Tb1)/+50V(期間Tb2)、第2走査ラインにVd2=0V/−50V、選択画素(図7(b))に相当する信号ラインにVc=−50V/0Vを、非選択画素(図7(c))に相当する信号ラインにはVc=+50V/+100Vを印加する。選択画素(図7(b))においては図3および図4で説明した動作によって黒表示書き込みが行なわれ、非選択画素(図7(c))では、泳動粒子は期間Tb1、Tb2をとうして常に制御電圧によって第1表示電極側に押し付けられ白表示が安定に保持される。
【0066】
一方、非選択期間においては、第1走査ラインにVd1=−100V/−50V、第2走査ラインにVd2=−100V/−50Vが印加され、信号ラインにはVc=−50V/0V(図8(d),(f))または+50V/+100V(図8(e),(g))が印加される。いずれの場合も、泳動粒子は表示電極と制御電極間の電圧によって表示電極面に押し付けられており表示状態は変化しない。
【0067】
このようにして、本発明による水平移動型電気泳動装置において、単純マトリックス駆動を行なうことによって、クロストークすることなくコントラストの高い表示を形成することができる。
【0068】
(構成のバリエーション)
本発明の特徴である障壁の構成は、図1のタイプに限定されるものではない。
以下本発明において有効な構成について図を用いながら順に説明する。
【0069】
図9に、障壁が段差であるタイプを示す。第2表示電極3が段差12上に形成されるタイプ(図9(a))と、段差12の下に形成されるタイプ(図9(b))が挙げられる。いずれの場合も、形成される段差12の高さは、泳動粒子径の数倍〜数十倍、好ましくは3〜10倍と大きく、泳動粒子の水平移動をほぼ禁止する機能を有していることが特徴であり、特表平8−507154号公報において提案された段差とは、高さ及び機能が異なるものである。
【0070】
図10に、図1の変形として、面積の大きい第2表示電極面3を第1表示電極面4よりも高い位置に配置する構成を示す。図1の構成において表示電極面を斜めから観察する場合、障壁11が視界を遮る領域が表示電極面上に発生する。これは障壁11の先端部と泳動粒子6の充填面上端との距離が大きい第2表示電極面3において特に顕著であり、障壁11を透明部材で構成してもやや表示視野角特性に影響を与える場合がある。面積の大きい第2表示電極面3を第1表示電極面4よりも高い位置に配置することによって、第2表示電極面3における充填面上端と障壁先端間の距離を第1表示電極と同程度に揃えることが可能となる。この構成ではさらに、第1表示電極面4と第2表示電極面3の最表面にある泳動粒子6の、水平方向への移動しにくさの程度を等しくするという効果もある。
【0071】
第2基板上の制御電極は必ずしも、画素全面に形成する必要はない。例えば図11に、図1の構成において制御電極5を障壁上方の近傍にのみ配置する構成を示す。この配置においては、図5および図6で示した駆動方法における書き込み動作において、泳動粒子6の移動がよりスムーズに行なわれるという利点がある。
【0072】
図12に、図9で示した段差タイプのバリエーションを示す。上段側に位置する第2表示電極面3の下側の段差壁面部に、表示面観察者からは視認不可能な、遮蔽空間15を形成することによって、第1表示電極面上の泳動粒子充填体積を増やすと同時に、第1表示電極4と第2表示電極3との実効的な面積比を、見かけ上大きくして表示コントラストを向上させることができる。例えば段差断面を逆テーパ形状にする構成(図12(a))、オーバーハング形状にする構成(図12(b))によって、遮蔽空間15を形成することができる。
【0073】
本発明における障壁は、幾何学的な障壁に限定されるものではなく、表示電極間における泳動粒子の直接的な水平移動をほぼ禁止する機能を有するものであればよく、例えば電気的な障壁であってもよい。図13(a)に、電気的な障壁としてバリア電極13を配置する構成を示す。書き込み動作及びホールド状態において、バリア電極の電位を、泳動粒子に対して常に反発力を及ぼすように制御することによって幾何学的な障壁と同等の機能を果たすことが可能である。
【0074】
また、図13(b)に、電気的な障壁として帯電構造体14を用いる構成を示す。帯電構造体には、強誘電体やエレクトレットなど半永久的に電荷を保持可能な材料を用いる。帯電構造体に対して、泳動粒子と同極性の帯電電荷を形成することによって幾何学的な障壁と同等の機能を果たすことが可能である。
【0075】
以上の記述においては説明の便宜上、第1表示電極と第2表示電極が一画素内に一対配置された構成について示してきたが、本発明においては、一画素内の電極数について特に限定はなく、複数の表示電極対が配置される構成が可能であることはいうまでもない。図14に一画素内に電極対が2組配置される構成について示す。図14(a)は図1のタイプ、図14(b)は図12(a)のタイプに相当する。
【0076】
(構成部材の材料・製造方法)
以下、本実施態様の表示装置の製造方法について、図1を用いて説明する。
まず第1基板1上に、第1表示電極4及び第2表示電極3を形成しパターンニングする。同様に、第2基板2上に制御電極5を形成しパターンニングする。基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)等のポリマーフィルム或いはガラス、石英等の無機材料を使用することができる。表示電極材料は、パターニング可能な導電性材料ならどのようなものを用いてもよく、制御電極材料としては、酸化インジウムすず(ITO)などの透明電極を用いる。
【0077】
表示電極面の着色は、電極材料、あるいは電極材料の上に形成される絶縁層材料そのものの色を利用してもよく、又は所望の色の材料層を電極上、絶縁層上、基板面上に形成してもよい。また、絶縁層などに着色材料を混ぜ込んでもよい。
【0078】
次に、表示電極上及び制御電極上に絶縁層8、9を形成する。絶縁層の材料としては薄膜でピンホールが形成されにくい、低誘電率の材料が好ましく、例えば、アモルファスフッ素樹脂、高透明ポリイミド、PET等を使用できる。絶縁層の膜厚としては、100nm〜1μm程度が好適である。
【0079】
次に、第1基板1上に障壁11を形成する。障壁材料としてはポリマー樹脂を使用する。障壁の形成はどのような方法を用いてもよい。例えば、光感光性樹脂層を塗布した後、露光及びウエット現像を行う方法、又は別に作製した障壁を接着する方法、印刷法によって形成する方法、或いは光透過性の第1基板表面にモールドによって形成しておく方法等を用いることができる。
【0080】
次に第2基板上に隔壁10を形成する。隔壁10の配置に制限はないが、画素間で泳動粒子6が移動しないように、各画素の周囲を取り囲むように配置するのが好ましい。隔壁10の形成は、障壁11の材料及び形成方法と同様にして行なう。次に、隔壁で囲まれた各画素空間に透明な絶緑性液体7及び着色帯電泳動粒子6を充填する。透明絶縁性液体7としては、シリコーンオイル、トルエン、キシレン、高純度石油等の無色透明液体を使用する。黒色帯電泳動粒子6としては、絶縁性液体中で良好な帯電特性を示す材料を用いる。例えば、ポリエチレン、ポリスチレン等の樹脂にカーボンなどを混ぜたものを使用する。泳動粒子6の粒径に制限はないが、通常は0.1μm〜20μm、好ましくは0.5〜10μm位のものを使用する。
【0081】
次に、第1基板1の第2基板2との接合面に接着層を形成した後、第1基板及び第2基板の位置合わせを行い、熱をかけて接着する。これに、電圧印加手段を接続して表示装置が完成する。
【0082】
尚、図9、図10、図12に示すような段差形状についても、段差を障壁形成と同様の材料及び形成方法によって形成することができる。但し、図9(b)を除いて、第2表示電極3は段差上面に形成する必要がある。この場合、例えば段差用厚膜、第2表示電極膜、レジスト膜を順次全面に形成した後、最上面のレジスト膜をパターンニングし、第2表示電極膜、段差用厚膜を順次ドライエッチングまたはウエットエッチングすればよい。第2表示電極膜は、マグネトロンスパッタ法によってITOを低温成膜してもいいし、ポリアニリンなどの有機導電性材料を印刷法によって形成してもよい。また、エッチング方式及び条件を調整することによって、図12に示すような、逆テーパー形状(図12(a))、或いはオーバーハング形状(図12(b))の断面を持つ段差を形成することができる。
【0083】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を更に詳しく説明する。
【0084】
実施例1
本実施例では、図9(a)に示す段差を有するセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、一方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。
【0085】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図15に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の面積比20:80である。
以下、図15及び図9(a)を見ながら、セルの製造方法について簡単に説明する。
【0086】
厚さ200μmのPETフィルムからなる第1基板1上に、まずアルミナなどの白色顔料を分散させたアクリル樹脂からなる絶縁着色層を全面に形成した。次に第1表示電極4として暗黒色の炭化チタン膜を成膜し、フォトリソグラフィー及びドライエッチングにより図15に示す形状にパターニングした。
【0087】
次にエポキシ樹脂を30μmの膜厚で塗布し、続いて第2表示電極としてITO薄膜をマグネトロンスパッタ法よって低温成膜した。続いてレジスト膜を塗布し、図15に示すような形状にパターンニング、最後にCF4 及びO2 ガスによる反応性ドライエッテングを行ない、高さ30μmのステップ上にITOからなる第2表示電極が配置された構造体を形成した。次に、全面にアモルファスフッ素樹脂からなる絶縁層8を200nm形成した。
【0088】
続いて、PETフィルムからなる第2基板2上に制御電極5としてITOを低温成膜したのち、図15に示す形状にパターニングし、次に全面にアモルファスフッ素樹脂からなる絶縁層9を200nm形成した。この上に、隔壁10を形成した。隔壁10は、光感光性エポキシ樹脂を塗布した後、露光及びウエット現像を行うことによって形成し、70μmの高さとした。形成された隔壁内に透明絶縁性液体7及び黒色帯電泳動粒子6を充填した。
【0089】
透明絶縁性液体1としては、シリコーンオイルを使用した。黒色帯電泳動粒子6としては、ポリスチレンとカーボンの混合物で、平均粒径5μm位のものを使用した。シリコーンオイル中での泳動粒子6は正帯電極性を示した。次に、第1基板1の第2基板2との接着面に熱融着性の接着層パターンを形成し、第2基板2の隔壁上に、位置合わせを行ないながら第1基板1を置き、熱をかけて貼り合わせた。これに不図示の電圧印加回路を接続して表示装置とした。
【0090】
以下、本実施例における駆動方法の説明を行なう。
第1表示電極を第1走査ライン(S11〜S13)、第2表示電極を第2走査ライン(S21〜S23)、制御電極を信号ライン(I1〜I3)とした。
【0091】
図16(a)に、各走査ライン及び信号ラインに印加した駆動パルスのタイムチャート図を、図16(b)に各期間における表示状態の変化を示した。期間前半(TR1,T11,T21,T31)を30msec、期間後半(TR2,T12,T22,T32)を30msecに設定した。
【0092】
駆動は、まず最初に全面を白表示にリセットし、次に走査ライン毎に、設定した表示パターンに対応する選択画素(1,2),(2,1),(2,3),(3,2)に対して、一方向(白表示→黒表示)への書き込みを行なった。尚、本実施例においては図3、図4および図7、図8で説明した駆動方法によって書き込みを行なった。書き込み時の泳動粒子の詳しい動作については、図3、図4および図7、図8と同様であるので説明を省略する。
【0093】
以下、タイムチャート図に従って駆動方法を順に説明する。期間TRにおいては、全ての第1走査ラインS11〜S13に対してVd1=0V(前半期間TR1以下略)/−50V(後半期間TR2、以下略)、全ての第2走査ラインS21〜S23に対してVd2=0V/0V、全ての信号ライン11〜13に対してVc=−50V/0Vを印加し、全画素を白表示にリセットした。
【0094】
次に期間T1において選択走査ラインであるS11、S21に対してVd1=0v/+50V、Vd2=0V/−50V、非選択走査ラインであるS12、S22、S13、S23に対してVd1=−100V/−50V、Vd2=0V/−50Vを印加し、選択画素(1,2)に相当する信号ラインI2にVc=−50V/0Vを、非選択画素(1,1),(1,3)に相当する信号ラインI1,I3にはVc=+50V/+100Vを印加した。その結果、選択走査ライン上の選択画素(1,2)のみが黒表示に書き換えられ、非選択画素(1,1),(1,3)、及び非選択走査ライン上の各画素では白表示が保持された。
【0095】
以下、期間T2、T3において選択画素パターンに従って同様の駆動を行なった結果、目的の表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは12:1程度の高い値を示した。
【0096】
比較例1
比較例1として、特表平8−507154号公報において開示された図19(a)に示すセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、一方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。
【0097】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図26に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の面積比35:65、第1基板と第2基板間の間隔70μm、段差高さ5μmとし、平均粒子径5μmの正帯電泳動粒子を用いた。表示電極と泳動粒子の配色は図1と同様である。製造プロセスは実施例1と全く同様であるので説明を省略する。
【0098】
以下駆動方法について説明する。
第1表示電極を走査ライン(S1〜S3)、制御電極を信号ライン(I1〜I3)とし、第2表示電極をコモン電極として接地電位に固定した。
【0099】
図27(a)に、各走査ライン及び信号ラインに印加した駆動パルスのタイムチャート図を、図27(b)に各期間における表示状態の変化を示した。各期間は50msecである。
【0100】
駆動は、まず最初に全面を白表示にリセットし、次に走査ライン毎に、設定した表示パターンに対応する選択画素(1,2),(2,1),(2,3),(3,2)対して、一方向(白表示→黒表示)への書き込みを行なった。尚、本実施例においては、図20、図21および図22で説明した駆動方法によって書き込みを行なった。書き込み時の泳動粒子の詳しい動作については、図20、図21および図22と同様であるので説明を省略する。
【0101】
以下、タイムチャート図に従って駆動方法を順に説明する。期間TRにおいては、全走査ラインS1〜S3に対してVd=−50V、全信号ラインI1〜I3に対してVc=0Vを印加し、全画素を白表示にリセットした。
【0102】
次に期間T1において選択走査ラインであるS1に対してVd=+50V、非選択走査ラインであるS2、S3に対してVd=+5Vを印加し、選択画素(1,2)に相当する信号ラインI2にVc=+50Vを、非選択画素(1,1),(1,3)に相当する信号ラインI1,I3にはVc=+250Vを印加した。その結果、選択走査ラインS1の選択画素(1,2)のみが黒表示に書き換えられ、非選択画素(1,1),(1,3)、及び非選択走査ラインS2,S3における各画素では白表示が保持された。但し、非選択画素(1,1),(1,3)においては制御電圧Vc=+250Vによる泳動粒子の押え込みは不十分であり、図24(c)に示したように一部の泳動粒子が第2表示電極側に移動してしまい、図27(b)に示すような灰色がかった表示になってしまった。
【0103】
以下、期間T2、T3において選択画素パターンに従って同様の駆動を行なった結果、目的の表示パターンが得られたが、白表示が全体的に灰色がかっており表示コントラストは劣悪であった。白表示と黒表示の平均的なコントラストは3:1程度であった。
【0104】
実施例2
本実施例では、図1に示したセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、双方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。図1の構成を用いるため、泳動粒子の水平方向への移動を双方向に対して禁止することができ、従って黒表示→白表示及び白表示→黒表示の双方向に対して書き込みを行なうことができる。双方向書き込み駆動は、特表平8−507154号公報で開示された構成では困難であって、本発明ならではの特徴の一つである。
【0105】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図17に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の面積比18:72である。
【0106】
以下、図17及び図1を見ながら、セルの製造方法について簡単に説明する。厚さ200μmのPETフィルムからなる第1基板1上に、まずアルミナなどの白色顔料を分散させたアクリル樹脂からなる絶縁着色層を全面に形成した。次に第2表示電極3としてITOを低温成膜し、フォトリソグラフィー及びドライエッチングにより図17に示す形状にパターニングした。次に第1表示電極4として暗黒色の炭化チタン膜を成膜し、同様にしてパターニングした。次に、全面にアモルファスフッ素樹脂からなる絶縁層8を200nmの厚さに形成した。次に感光性エボキシ樹脂を塗布・露光・現像し、高さ30μmの障壁11を形成した。
【0107】
以下のプロセスは実施例1と全く同様であるので説明を省略する。
以下、本実施例における駆動方法の説明を行なう。
制御電極を走査ライン(S1〜S3)、第1表示電極を第1信号ライン(I11〜I13)、第2表示電極を第2信号ライン(I21〜I23)とした。
【0108】
図18(a)に、各走査ライン及び信号ラインに印加した駆動パルスのタイムチャート図を、図18(b)に各期間における表示状態の変化を示した。各期間は50msecである。
【0109】
双方向への書き込みが可能であるので、本実施例においては初期動作として全面リセットをする必要はない。本実施例では初期表示パターンとして期間T0に示すパターンを与え、全画素を各走査ライン(S1〜S3)ごとに反転表示することとする。尚、本実施例においては図5及び図6で説明した駆動方法によって書き込みを行なった。書き込み時の泳動粒子の詳しい動作については、図5及び図6と同様であるので説明を省略する。
【0110】
以下、タイムチャート図に従って駆動方法を順に説明する。期間T1おいて選択走査ラインであるS1に対してVc=0V、非選択走査ラインであるS2、S3に対してVc=+100Vを印加し、画素(1,1),(1,3)に相当する第1信号ラインI11,I13及び第2信号ラインI21,I23にそれぞれに白表示書き込みパルスとして、Vd1=−50V、Vd2=+50Vを印加し、また画素(1,2)に相当する第1信号ラインI12及び第2信号ラインI22にそれぞれに黒表示書き込みパルスとして、Vd1=+50V、Vd2=−50Vを印加した。その結果、選択走査ラインS1の全ての画素が書き換えられ反転表示され、また非選択走査ラインS2,S3における各画素では初期表示状態が保持された。
【0111】
以下、期間T2、T3において同様の駆動を行なった結果、目的の反転表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは10:1程度の高い値を示した。
【0112】
実施例3
本実施例では、段差断面がオーバーハング形状である図12(b)に示したセル構成で、3×3マトリックス表示セルを作成し、一方向書き込みによる単純マトリックス駆動を行なった。
【0113】
作成した3×3マトリックス表示セルの平面図を図15に示す。一画素サイズは1mm×1mm、第1表示電極と第2表示電極の(表示面観察者からの)実効的な面積比10:90、第1基板と第2基板間の間隔70μm、段差高30μmとし、平均粒子径5μmの正帯電泳動粒子を用いた。
【0114】
製造プロセスは実施例1とほぼ同様であるので説明を省略する。但し、第2表示電極及び段差のパターン形成時に行なう酸素プラズマよるドライエッチングを通常より長めに行ない、図12(b)に示すようなオーバーハング形状の断面を持つ段差を形成した。
【0115】
実施例1と全く同様な駆動を行なった結果、目的の表示パターンが良好なコントラストで得られた。得られた表示には、クロストーク現象、及び泳動粒子の移動不良、保持不良によるコントラストの劣化は一切認められず、白表示と黒表示の平均的なコントラストは15:1程度の高い値を示した。
【0116】
【発明の効果】
以上、詳細に述べたように、本発明によって次のような効果が得られた。
第1に、水平移動型電気泳動装置においてクロストーク現象の見られない、良好な表示コントラストが得られる単純マトリックス駆動が実現された。これは新規な構成と駆動方法によって、従来問題であった、非選択画素内の泳動粒子のホールド不良によるクロストークの発生を、ほぼ完全に抑えこめたことによる。
【0117】
第2に、高い障壁を導入することによって第1表示電極と第2表示電極との面積比を従来より大きく設定できるようになった。これによって、クロストーク抑制とは別の理由による、更なるコントラストの向上が実現された。
【0118】
第3に、双方向の書き込み駆動ができるようになった。このため、初期全面リセットの必要がなく、また表示画面の一部分のみを書き換える部分書き換え駆動ができるようになった。
【0119】
第4に、障壁または段差の高さを十分に高くし、制御電圧がなくとも泳動粒子の水平方向移動をほぼ禁止できるようになったことにより、制御電圧が従来に比べて大幅に低減できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示装置の代表的な一例を示す断面図である。
【図2】本発明の表示装置の代表的な一例を示す平面図である。
【図3】本発明の表示装置の駆動方法及び動作状態の一例を示す図である。
【図4】図3の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の部分を示す図である。
【図5】本発明の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の例を示す図である。
【図6】図5の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の部分を示す図である。
【図7】本発明の表示装置の単純マトリックス駆動法の一例を示す図である。
【図8】図7の表示装置の単純マトリックス駆動法の他の部分を示す図である。
【図9】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図10】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図12】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図13】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図14】本発明の表示装置の他の例を示す断面図である。
【図15】本発明の実施例1において作成した3×3マトリックスを示す平面構成図である。
【図16】本発明の実施例1で行なった駆動のタイムチャート及び表示パターンを示す図である。
【図17】本発明の実施例2において作成した3×3マトリックスを示す平面構成図である。
【図18】本発明の実施例2で行なった駆動のタイムチャート及び表示パターンを示す図である。
【図19】従来例における表示装置を示す断面図である。
【図20】従来例における表示装置の駆動方法及び動作状態を示す図である。
【図21】図21の表示装置の駆動方法及び動作状態の他の部分を示す図である。
【図22】従来例における表示装置の単純マトリックス駆動法を示す図である。
【図23】図22の表示装置の単純マトリックス駆動法の他の部分を示す図である。
【図24】従来例における表示装置の問題点を示す説明図である。
【図25】従来例における表示装置の他の問題点を示す説明図である。
【図26】比較例1で作成した3×3マトリックスを示す平面構成図である。
【図27】比較例1で行なった駆動のタイムチャート及び表示パターンを示す図である。
【符号の説明】
1 第1基板
2 第2基板
3 第2表示電極
4 第1表示電極
5 制御電極
6 泳動粒子
7 透明絶縁性液体
8、9 絶縁膜
10 隔壁
11 障壁
12 段差
13 バリア電極
14 帯電構造体
15 遮蔽空間
20 駆動ドライバー
22 段差
Claims (7)
- 第1基板と、該第1基板上に配置される第1表示電極及び第2表示電極と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、該第2基板上に配置された制御電極と、各電極に所望の電圧を印加する手段と、前記第1基板及び第2基板間に充填された透明絶縁性液体と、該透明絶縁性液体中に分散された複数の着色帯電泳動微粒子とを備え、マトリクスに配列した画素の各々の前記制御電極を信号電極とし、前記第1表示電極と前記第2表示電極をそれぞれ第1走査電極と第2走査電極として、単純マトリクス駆動により該着色帯電泳動粒子を第1および第2表示電極間で水平移動させることによって表示の切り換えを行なう電気泳動表示装置において、
前記第1表示電極と第2表示電極間における前記帯電泳動粒子の直接的な水平移動を少なくとも一方向に対してほぼ禁止する機能を有する障壁を第1表示電極と第2表示電極との間に備え、選択期間に、前記所望の電圧を印加する手段が、帯電泳動粒子を一方の表示電極から前記制御電極側に移動させた後、帯電泳動粒子を制御電極側から前記障壁を越えて他方の表示電極側に移動する電圧を各電極に印加することを特徴とする電気泳動表示装置。 - 前記障壁は、第1表示電極面及び第2表示電極面のうちの少なくとも一方の面より突出し、前記帯電泳動粒子径の数倍〜数十倍の高さを有する幾何学的な段差によって構成されることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置。
- 前記障壁は、前記帯電泳動粒子に対して静電的な反発力を及ぼすバリア電極であることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置。
- 前記障壁は、前記帯電泳動粒子に対して静電的な反発力を及ぼす帯電構造体であることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置。
- 前記障壁の段差の、第1表示電極及び第2表示電極の一方の上段側に位置する表示電極面の下側に、前記帯電泳動粒子が入出可能であって、表示面観察者からは視認不可能な遮蔽空間が形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の電気泳動表示装置。
- 第1基板と、該第1基板上に配置される第1表示電極及び第2表示電極と、前記第1基板に対向して配置される第2基板と、該第2基板上に配置された制御電極と、各電極に所望の電圧を印加する手段と、前記第1基板及び第2基板間に充填された透明絶縁性液体と、該透明絶縁液体中に分散された複数の着色帯電泳動微粒子及び前記第1表示電極と第2表示電極との間に配置され、第1表示電極と第2表示電極間における前記帯電泳動粒子の直接的な水平移動を、少なくとも一方向に対してほぼ禁止する機能を有する障壁とを備え、マトリクスに配列した画素の各々の前記制御電極を信号電極とし、前記第1表示電極と前記第2表示電極をそれぞれ第1走査電極と第2走査電極として、単純マトリクス駆動により該着色帯電泳動粒子を第1および第2表示電極間で移動させることによって表示の切り換えを行なう電気泳動表示装置の駆動方法において、
前記障壁によってほぼ禁止された方向への帯電泳動粒子の移動方法が、帯電泳動粒子を一方の表示電極から前記制御電極側に移動する第1の過程と、第1の過程に続いて帯電泳動粒子を制御電極側から前記障壁を越えて他方の表示電極側に移動する第2の過程とからなる間接的な移動によることを特徴とする電気泳動表示装置の駆動方法。 - 前記帯電泳動粒子の間接的な移動を引き起こすために、(A)正帯電の帯電泳動粒子の場合には、「移動先でない表示電極の電位≧制御電極の電位>移動先である表示電極の電位」の関係を満たし、(B)負帯電の帯電泳動粒子の場合には、「移動先でない表示電極の電位≦制御電極の電位<移動先である表示電極の電位」の関係を満たす期間が含まれるように、前記第1表示電極、第2表示電極及び制御電極に電圧を印加することを特徴とする請求項6記載の電気泳動表示装置の駆動方法。
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