JP3715866B2 - 立体回路基板の製造方法及び立体回路基板 - Google Patents

立体回路基板の製造方法及び立体回路基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯電話の移動通信装置やGPS装置に使用される誘電体アンテナ等のような立体回路基板の製造方法及びこの製造方法により製造された立体回路基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から誘電体アンテナなどのような立体回路基板の製造方法として、誘電体材料から所定形状の誘電体基体を成形し、この基体の表面を粗化し、めっき用の触媒を付与し、この所定形状に成形された誘電体基体の表面のうち、この所定パターンの導電層が形成されるべき表面部分を露出させて、この部分以外の表面部分を覆うように、この誘電体基体にレジストを塗布し、最後に、無電解めっきし、レジストを除去して、この誘電体基体の表面上に所定パターンの導体層を形成するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、レジスト塗布後にレジストの硬化工程が必要であり、このレジストの除去に際して塩化メチレンなどの有機溶剤の使用が必要であり、この有機溶剤は、クロロフルオロカーボンと同様にオゾン層破壊の原因物質であり、その廃棄量が増加すれば皮膚ガンや白内障の増加、植物やプランクトンなどの生態系の破壊が懸念される。
【0004】
そこで、本発明の目的は無電解めっきのための触媒処理を不要にすることにより、製造工程を簡略化し、更に、環境問題の発生の懸念のない立体回路基板の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した本発明の特徴は、触媒が混入してある触媒入り合成樹脂材料により前記所定形状の誘電体基体を形成する第一の工程と、この誘電体基体の表面のうち、前記所定パターンの導体層が形成されるべき表面部分を露出させて、これ以外の表面部分を覆うようにこの誘電体基体に加水分解性高分子材料の樹脂マスクを形成する第2の工程と、この樹脂マスク及びこの樹脂マスクから露出している上記誘電体基体の全表面を粗面化処理する第3の工程と、上記誘電体基体から上記樹脂マスクを除去する第4の工程と、上記誘電体基体の表面に所定パターンの導電層を無電解めっきにより形成する第5の工程とを含むところにある。
【0006】
この発明の特徴は、第1の工程において形成する導電体基体の材料は無電解に対する触媒が混入してあり、第2の被覆工程の樹脂マスクは加水分解性高分子材料であり、第4の工程の樹脂マスクを除去した後で第5の導電層を形成するものである。
【0007】
誘電体基体の材料の合成樹脂は耐熱性と強度において優れ、例えば金型を閉じた状態でキャビティ内にめっきグレードの熱可塑性の液晶ポリマーを射出して成形するものである。この熱可塑性の液晶ポリマーは熱可塑性芳香族系ポリエステル樹脂であって、これは「ベクトラ」(ポリプラスチックス株式会社製の商品名)のめっきグレードC810を用いる。その他、この誘電体基体1の材料の合成樹脂としてポリフェニルサルファイド樹脂、ポリフェニンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が選択適用できる。そこで、このような合成樹脂にパラジウム、金などの触媒を混入し、この触媒入り合成樹脂材料を射出成形することにより所定形状の立方体の一次基体である誘電体基体を形成する。
【0008】
樹脂マスクの加水分解性高分子材料は、誘電体基体との界面密着性が高まり、寸法精度の高いめっきが可能となる。この加水分解性高分子材料として、ポリ乳酸の他、澱粉、微生物発酵脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステル−ジカルボン酸とジグリコールとの縮合物、脂肪族カプロラクトン系樹脂、セロースアセテート系樹脂などあり、特に、加水分解性のポリ乳酸、または、ポリ乳酸を主体とする脂肪族ポリエステルとの混合体または、共重合体である。
【0009】
ポリ乳酸は単独で使用してもよく、またはポリ乳酸を主成分とし、これに脂肪族ポリエステル(ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価塩基酸とからなる脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸や脂肪族多価アルコールから選ばれた2種以上のモノマー成分と、脂肪族多価塩基酸から選ばれた2種以上のモノマー成分とからなるランダム共重合体やブロックとも重合体など)の単独又は2種以上のものを混合したもの、ランダム共重合またはブロック共重合させたものである。また、必要に応じてアルカリ分解促進剤、有機及び無機充填剤、可塑剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤等の汎用の合成樹脂に使用できる添加剤を混合してもよい。この脂肪族ポリエステルの混合量または共重合量は、混合体または共重合体の全量に対して1〜10wt%程度、アルカリ分解促進剤の混合量は混合体全量に対して1〜100wt%程度、好ましくは10〜60wt%であり、その他の添加剤の混合量は混合体全量に対して1〜5%程度である。更に、前記したポリ乳酸の重量平均分子量は、1万〜40万程度であり、脂肪族ポリエステルは、ボリ乳酸と混合させる場合の重量平均分子量は、1万〜50万程度、好ましくは5万〜30万程度である。また、ポリ乳酸と共重合させる場合は、その共重合体の重量平均分子量は1万〜50万程度、好ましくは5万〜30万程度である。また、ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、L-乳酸、D-乳酸、D/L-乳酸、3−ヒドロキシブチリックアシッド、4−ヒドロキシブチリックアシッド、5−ヒドロキシバレリックアシッド、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられ、これらの一種以上が使用できる。脂肪族多価アルコールとは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられ、これらの一種以上が使用できる。脂肪族多価塩基酸としては、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニレンジ酢酸などが挙げられ、これらの一種以上が使用できる。アルカリ分解促進剤としては、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリアミノ酸等の親水性高分子化合物、無水コハク酸、ポリコハク酸イミド等のアルカリ加水分解性化合物等が挙げられ、これらの一種以上のものが使用できる。特に、ポリ乳酸や脂肪族ポリエステルへの分散性や相溶性、あるいはブリードアウトのし難さなどから、ポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコールが好ましい。
【0010】
樹脂マスク2用の加水分解性高分子材料には、寸法精度や硬度を調整するためタルク、ベントナイト、マイカ、ワラストナイト、ガラスフィラーなどの無機フィラーなどを複合させるように添加してもよい。さらに、接着性改良剤を添加してもよい。
【0011】
請求項2に記載した本発明の特徴は、無電解めっきに対する触媒が混入してある触媒入り合成樹脂材料により前記所定形状の誘電体基体を形成する第1の工程と、この誘電体基体の表面のうち、前記所定パターンの導体層が形成されるべき表面部分を露出させて、これ以外の表面部分を覆うようにこの誘電体基体に加水分解性高分子材料の樹脂マスクを形成する第2の工程と、上記樹脂マスク及びこの樹脂マスクから露出している上記誘電体基体の全表面を粗面化処理する第3の工程と、上記誘電体基体の粗面化処理された面と上記樹脂マスクの全表面に導電層を無電解めっきにより形成する第4の工程と、上記誘電体基体からアルカリ水溶液や酸液を用いて上記樹脂マスクを除去する第5の工程とを含むところにある。
【0012】
この発明の特徴は、第1の工程において形成する導電体基体の材料は無電解に対する触媒が混入してあり、第2の被覆工程の樹脂マスクは加水分解性高分子材料であり、第4の導電層を形成した後で、第5の工程の樹脂マスクを除去するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明に係る立体回路基板の製造方法の実施の形態を説明すると、まず第1の形態は図1(A)〜(E)に示すものである。第1の工程は図1(A)に示すように、第1の成形物である誘電体基1を成形するもので、この誘電体基体の材料の合成樹脂は耐熱性と強度において優れ、例えば金型を閉じた状態でキャビティ内にめっきグレードの熱可塑性の液晶ポリマーを射出して成形するものである。この熱可塑性の液晶ポリマーは熱可塑性芳香族系ポリエステル樹脂であって、これは「ベクトラ」(ポリプラスチックス株式会社製の商品名)のめっきグレードC810を用い、これは熱可塑性でありながら半田実装耐熱性があり成形回路部品としての性能を有している。そこで、この合成樹脂に無電解めっきに対する触媒のパラジウムを混入し、この触媒入り合成樹脂材料を射出成形することにより所定形状の立方体の一次基体である誘電体基体1を形成する。
【0014】
次に、第2の工程は図1(B)に示すように、第1の工程の後、誘電体基体1の表面のうち、所定パターンの導体層4(図1(E)参照)が形成されるべき表面部分を露出させて、これ以外の表面部分を覆うようにこの誘電体基体に樹脂マスク2を形成するものである。この樹脂マスク2の材料としては、加水分解性高分子材料のポリ乳酸樹脂である「LACEA」(三井化学社の商品名)を使用した。樹脂マスク2の成形条件としては、成形機(東洋機械金属(株)の型式:TI30G2)において、シリンダ温度:230℃、射出圧力:717kg/cm、成形サイクル:25秒、金型温度:40℃に設定したものである。
【0015】
次に、第3の工程の化学エッチング工程を図1(C)を参照して説明すると、このエッチング処理面3は、樹脂マスク2及びこの樹脂マスクから露出している誘電体基体1の全表面を粗面化処理するものである。
【0016】
次に、図1(D)により第4の工程を説明すると、これはエッチングされた誘電体基板1や樹脂マスク2を乾燥させた後、この誘電体基体1から樹脂マスク2を除去する工程であって、これは手作業で行うことができるが、この除去作業を容易にするため、樹脂マスク2除去用の機器を使用してもよく、また、化学的に、例えばキシレン系の有機溶剤を用いてこの樹脂マスクのみを溶解することにより除去してもよい。そして、エッチング処理面3の表面には基体1に混入されている触媒が露出して無電解めっきが析出可能となる。しかし、エッチングされていない面には、基体1の成形時に樹脂スキン層が形成されているので、この基体の表面に触媒の露出が無く、そのため無電解めっきが析出しない。このように、エッチング処理されていない面、即ち、絶縁面には触媒が露出しないので表面固有抵抗が高く、信頼性の高い製品を得ることができる。
【0017】
最後に、図1(E)により第5の工程を説明すると、誘電体基体1の表面に所定パターンのエッチング処理面3の上に導電層4を無電解めっきにより形成するものである。
【0018】
次に、本発明の他の実施の形態を、図2(A)〜(E)を参照して説明すると、第1の工程は図2(A)に示すように、第1の成形物である誘電体基板1を成形するもので、この誘電体基体の材料の合成樹脂は、第1の実施例と同じめっきグレードの熱可塑性の液晶ポリマーを射出して成形するもので、この熱可塑性の液晶ポリマーは熱可塑性芳香族系ポリエステル樹脂である「ベクトラ」(ポリプラスチックス株式会社製の商品名)のめっきグレードC810を用いる。この液晶ポリマーは熱可塑性でありながら半田実装耐熱性があることは前述した。そこで、この合成樹脂に無電解めっきに対する触媒のパラジウムを混入し、この触媒入り合成樹脂材料を射出成形することにより所定形状の立方体の一次基体である誘電体基体1を形成する。
【0019】
次に、第2の工程は図2(B)に示すように、第1の工程の後、誘電体基体1の表面のうち、所定パターンの導体層41(図2(E)参照)が形成されるべき表面部分を露出させて、これ以外の表面部分を覆うようにこの誘電体基体に樹脂マスク2を形成するものである。この樹脂マスク2の加水分解性高分子材料については、既に説明した。
【0020】
次に、第3の工程の化学エッチング工程を図2(C)を参照して説明すると、このエッチング処理面3は、樹脂マスク2及びこの樹脂マスクから露出している誘電体基体1の全表面を粗面化処理するものである。このエッチング処理の例として、前記した実施例と同様に、苛性ソーダ又は苛性カリを所定濃度、例えば、45wt%に溶解したアルカリ性水溶液を所定温度、例えば50〜90℃に加熱し、一次成形品の誘電体基体1、二次成形品の樹脂マスク2を所定時間、例えば30分浸漬して行う。このエッチング処理により全表面が粗面化となる。
【0021】
このように、この実施の形態における第1の工程から第3の工程までは、前記した実施の形態における第1の工程から第3の工程と実質的に同じで、同一図面に同一符号を付している。しかし、前記した実施例では、第3の工程の樹脂マスク2及びこの樹脂マスクから露出している誘電体基体1の全表面を粗面化処理した後、樹脂マスクの除去を行うが、この実施例では、第4の工程として誘電体基体1のエッチングされた面3と樹脂マスク2の全表面に導電層41,42を無電解めっきで形成してからこの樹脂マスクを除去するものである。
【0022】
最後に、第5の工程は誘電体基体1から樹脂マスク2を除去するが、この除去作業はアルカリ水溶液や酸液(無機酸の液)を用いる。特に、樹脂マスク2がポリ乳酸の場合には濃度2〜15wt%程度で、温度25〜75℃程度の苛性アルカリ水溶液中に1〜120分程度浸漬すればよい。このようにして、樹脂マスクを除去するためにこの樹脂マスクの界面を剥離させる場合、この剥離作業が容易かつ敏速に行うことができ、さらに、誘電体基体1の表面に使用上支障となる残査や疵が残らない。
【0023】
【発明の効果】
本発明によると、従来のように触媒付与工程が不要であり、環境問題の発生の懸念がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)は、それぞれ本発明の第1の実施の形態による製造の各工程を段階的に示す概略図である。
【図2】(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)は、それぞれ本発明の第2の実施の形態による製造の各工程を段階的に示す概略図である。
【符号の説明】
1 誘電体基体
2 樹脂マスク
3 エッチング処理面
4 導電層
41,42 導電層

Claims (5)

  1. 合成樹脂材料からなる所定形状の誘電体基体の表面上に、導電性材料からなる所定パターンの導体層が形成されている立体回路基板の製造方法において、
    無電解めっきに対する触媒が混入してある触媒入り合成樹脂材料により前記所定形状の誘電体基体を形成する工程、
    この誘電体基体の表面のうち、前記所定パターンの導体層が形成されるべき表面部分を露出させて、これ以外の表面部分を覆うようにこの誘電体基体に加水分解性高分子材料樹脂マスクを形成する工程、
    この樹脂マスク及びこの樹脂マスクから露出している上記誘電体基体の全表面を粗面化処理する工程、
    上記誘電体基体から上記樹脂マスクを除去する工程、
    上記誘電体基体の表面に所定パターンの導電層を無電解めっきにより形成する工程を含む
    ことを特徴とする立体回路基板の製造方法。
  2. 合成樹脂材料からなる所定形状の誘電体基体の表面上に、導電性材料からなる所定パターンの導体層が形成されている立体回路基板の製造方法において、
    無電解めっきに対する触媒が混入してある触媒入り合成樹脂材料により前記所定形状の誘電体基体を形成する工程、
    この誘電体基体の表面のうち、前記所定パターンの導体層が形成されるべき表面部分を露出させて、これ以外の表面部分を覆うようにこの誘電体基体に加水分解性高分子材料の樹脂マスクを形成する工程、
    上記樹脂マスク及びこの樹脂マスクから露出している上記誘電体基体の全表面を粗面化処理する工程、
    上記誘電体基体の粗面化処理された面と上記樹脂マスクの全表面に導電層を無電解めっきにより形成する工程、
    上記誘電体基体から上記樹脂マスクをアルカリ水溶液や酸液を用いて除去する工程を含むものである
    ことを特徴とする立体回路基板の製造方法。
  3. 請求項1または2において、誘電体基体は熱可塑性材料または熱硬化性材料から選択されたものであることを特徴とする立体回路基板の製造方法。
  4. 請求項1〜3において、樹脂マスクの加水分解性高分子材料はポリ乳酸またはポリ乳酸を主体とする脂肪族ポリエステルとの混合体又は共重合体であることことを特徴とする立体回路基板の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つの製造方法により製造された立体回路基板。
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