JP3714912B2 - ドリップ抑制剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はドリップ抑制剤に関するものである。更に詳しくは、耐ドリップ性、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、及び流動性の付与可能な熱可塑性樹脂用ドリップ抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂は、ガラス等の無機物に比較して成形性に優れることに加え、耐衝撃性に優れていることから、自動車部品、家電部品、OA機器部品を始めとする多岐の分野で使用されているが、熱可塑性樹脂の易燃性のためにその用途が制限されている。
【0003】
熱可塑性樹脂の難燃化の方法としては、ハロゲン系、リン系、無機系の難燃剤を熱可塑性樹脂に添加することが知られており、それによりある程度難燃化が達成されている。しかしながら、近年火災に対する安全性の要求がとみにクローズアップされ、家電製品、OA機器等に対する米国UL(アンダーライターズ・ラボラトリー)垂直法燃焼試験の規制が年とともに厳しくなってきたことや、軽量化、経済性向上の為、製品、部品の肉厚が薄くなってきたことで、燃焼時に火種が滴下し、このため他の製品や部品を損傷するといったことが生じるようになり、この火種の落下を防止する技術、いわゆるドリップ防止技術の開発が強く望まれてきている。ドリップ防止技術としては難燃剤を増量する方法が知られているが、元来高価な難燃剤を大量に使用することは経済的でないだけでなく有毒ガスの発生や機械的性質の低下を助長するために好ましくない。
【0004】
また、特開昭64−4656号公報、英国特許2146033号明細書、及び米国特許4387176号明細書には、熱可塑性樹脂をシリコーン樹脂で難燃化する技術が開示されている。しかしながら、上記公報や明細書の樹脂組成物の難燃性及び耐衝撃性のレベルが低いだけでなく、非軟化性で、かつビニル基を含有したシリコーン樹脂により飛躍的に難燃性が向上することが開示されていない。
【0005】
更には、特開平4−154851号公報、特開平4−154852号公報には、ポリオレフィンと金属水酸化物とポリホスファゼンとの樹脂組成物が開示されているが、該公報の組成物は金属水酸化物が多量に用いられているので、耐衝撃性が劣る問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち燃焼時の溶融滴下を防止し、かつ、難燃性、耐熱性、耐衝撃性及び流動性の優れた熱可塑性樹脂用ドリップ抑制剤を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは熱可塑性樹脂の燃焼時のドリップ防止技術を鋭意検討した結果、従来の熱可塑性樹脂に対して、特殊なドリップ抑制剤を組み合わすことにより、驚くべきことに難燃性と流動性と耐衝撃性を保持しつつ、燃焼時の耐ドリップ性を飛躍的に向上させることが可能になることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち本発明は、0℃〜350℃の温度範囲で非軟化性であり、かつビニル基を含むシリコーン樹脂及び/またはポリフォスファゼンである熱可塑性樹脂用ドリップ抑制剤である。
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のドリップ抑制剤(A)は、熱可塑性樹脂(B)に配合することにより、燃焼時の溶融滴下を防止する。
【0010】
ここで、(A)ドリップ抑制剤の一つのシリコーン樹脂は、非軟化性であり、かつビニル基を含有することが必要である。0℃から350℃の温度範囲で軟化しない(非軟化性)だけ充分に高い架橋密度を持つことにより、燃焼時にSiO2または、SiCの生成を促進し、成形体のドリップを抑制する。また、燃焼初期に生成したラジカルがビニル基と反応し、架橋構造を形成させる。一方、もう一つのドリップ抑制樹脂のポリホスファゼンは、高分子であることが必須であり、単量体ホスファンゼでは効果はない。このように特殊な樹脂を用いることによって、燃焼時の耐ドリップ性を大幅に向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の(A)成分のドリップ抑制剤とは、シリコーン樹脂及び/又はポリフォスファゼンである。
上記シリコーン樹脂は、0℃〜350℃の温度範囲で軟化しないことと、ビニル基を含有するということが必須である。この条件を満足するシリコーン樹脂は、SiO2 、RSiO3/2 、(R)2 SiO、(R)3 SiO1/2 、RViSiO、(R)2 ViSiO1/2 の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造をとった共重合体である。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、またはフェニル基、ベンジル基等の芳香族基を示し、Viは下記式〔化1〕〔化2〕等の含ビニル基を示す。
【0012】
【化1】
Figure 0003714912
【0013】
【化2】
Figure 0003714912
【0014】
本発明のシリコーン樹脂が0℃〜350℃の温度範囲で非軟化性を示すためには、ケイ素原子に直接結合する有機基が平均2.0以下、好ましくは、1.5以下であることが必要である。
このようなシリコーン樹脂は、上記の構造単位に対応するオルガノハロシランを共加水分解して重合することにより得られる。
【0015】
本発明の(A)ドリップ抑制剤のもう一つのポリホスファゼンとは、リン原子と窒素原子の結合を主鎖に有する重合体であり、下記一般式〔化3〕で表される。
【0016】
【化3】
Figure 0003714912
【0017】
ここで、式中R1 、R2 はそれぞれアルコキシ基、アリロキシ基、またはアミノ基を示す。アルコキシ基、アリロキシ基は、ハロゲン原子、アリル基、アミノ基、ヒドロキシル基等で置換されてもよい。また、アミノ基は、アルキル基、アリル基等で置換されてもよい。nは整数である。
本発明で用いるポリホスファゼンの具体例は、ポリプロポキシホスファゼン、ポリフェノキシホスファゼン、ポリアミノホスファゼン、ポリフロロアルキルホスファゼン等である。
【0018】
本発明においてドリップ抑制剤を配合する(B)熱可塑性樹脂とは、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニール系、ポリフェニレンエーテル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリフェニレンスルフィルド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリレート系等の熱可塑性樹脂である。ここで、特に熱可塑性樹脂としてポリスチレン系熱可塑性樹脂が好ましく、更にはゴム変性スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とのポリマーブレンド体がより好ましい。
【0019】
本発明の上記(B)成分のゴム変性スチレン系樹脂とは、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及び必要に応じ、これと共重合可能なビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、または乳化重合することにより得られる。
【0020】
このような樹脂の例としては、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等が挙げられる。
ここで、前記ゴム状重合体は、ガラス転移温度(Tg)が−30℃以下であることが必要であり、−30℃を越えると耐衝撃性が低下する。
【0021】
このようなゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0022】
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体とは、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5−トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニル単量体を共重合してもよい。
【0023】
また、ゴム変性スチレン系樹脂の成分として必要に応じ、芳香族ビニル単量体に共重合可能な単量体成分を一種以上導入することができる。耐油性を高める必要のある場合は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体を用いることができる。
そして、ブレンド時の溶融粘度を低下させる必要のある場合は、炭素数が1〜8のアルキル基からなるアクリル酸エステルを用いることができる。また更に、樹脂組成物の耐熱性を更に高める必要のある場合は、α−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等の単量体を共重合してもよい。単量体混合物中に占める上記ビニル芳香族単量体と共重合可能なビニル単量体の含量は0〜40重量%である。
【0024】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂におけるゴム状重合体は、好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%、グラフト重合可能な単量体混合物は、好ましくは95〜20重量%、更に好ましくは90〜50重量%の範囲にある。この範囲外では、目的とする樹脂組成物の耐衝撃性と剛性のバランスが取れなくなる。更には、スチレン系重合体のゴム粒子径は、0.1〜5.0μmが好ましく、特に0.2〜3.0μmが好適である。上記範囲外では、耐衝撃性が低下する傾向を生ずる。
【0025】
本発明の(B)成分のポリフェニレンエーテル(以下PPEと略称する。)とは、下記式〔化4〕で示される結合単位からなる単独重合体及び/又は共重合体である。
【0026】
【化4】
Figure 0003714912
【0027】
但し、R1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ水素、炭化水素、または置換炭化水素基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい。
このPPEの具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。かかるPPEの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば、2,6キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3,306,875号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許第3,257,358号明細書、及び特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記PPEの還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。PPEの還元粘度に関する上記要件を満たすための手段としては、前記PPEの製造の際の触媒量の調整などを挙げることができる。
【0028】
本発明において必要に応じてドリップ抑制剤とともに難燃剤を配合することができる。上記難燃剤として例えば(C)有機リン化合物及び/又は赤リンである含リン難燃剤は有効である。上記有機リン化合物とは、例えば、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ビホスフィン、ホスホニウム塩、ホスフィン酸塩、リン酸エステル、亜リン酸エステル等を挙げることができる。より具体的には、トリフェニルフォスフェート、メチルネオペンチルフォスファイト、ペンタエリスリトールジエチルジフォスファイト、メチルネオペンチルフォスフォネート、フェニルネオペンチルフォスフェート、ペンタエリスリトールジフェニルジフォスフェート、ジシクロペンチルハイポジフォスフェート、ジネオペンチルハイポフォスファイト、フェニルピロカテコールフォスファイト、エチルピロカテコールフォスフェート、ジピロカテコールハイポジフォスフェートなどを挙げることができる。
【0029】
ここで特にヒドロキシル基含有芳香族系リン酸エステルが流動性、耐熱性、耐衝撃性のバランス上好ましく、上記ヒドロキシル基を含有していない有機リン化合物と併用してもよい。
上記、ヒドロキシル基含有芳香族系リン酸エステルとは、トリクレジルフォスフェートやトリフェニルフォスフェートやそれらの縮合リン酸エステル等に1個または2個以上のフェノール性水酸基を含有したリン酸エステルであり、例えば下記〔化5〕〔化6〕の化合物である。
【0030】
【化5】
Figure 0003714912
【0031】
【化6】
Figure 0003714912
【0032】
(但し、Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 、Ar5 、Ar6 はフェニル基、キシレニル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基から選ばれる芳香族基であり、リン酸エステル中に少なくとも1個のヒドロキシル基が上記芳香族基に置換されている。また、nは0〜3の整数を表わし、mは1以上の整数を表わす。)
本発明の(C)ヒドロキシル基含有芳香族系リン酸エステルの中でも特に、下記式〔化7〕ジフェニルレゾルシニルフォスフェートまたは〔化8〕ジフェニルハイドロキノニルフォスフェートが好ましく、その製造方法は、例えば特開平1−223158号公報に開示されており、フェノール、ヒドロキシフェノール、塩化アルミニウム及びオキシ塩化リンの反応により得られる。
【0033】
【化7】
Figure 0003714912
【0034】
【化8】
Figure 0003714912
【0035】
また、本発明の(C)成分中の赤リンとは、一般の赤リンの他に、その表面をあらかじめ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンよりえらばれる金属水酸化物の被膜で被覆処理されたもの、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンより選ばれる金属水酸化物及び熱硬化性樹脂よりなる被膜で被覆処理されたもの、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化チタンより選ばれる金属水酸化物の被膜の上に熱硬化性樹脂の被膜で二重に被覆処理されたものなども好適に用いることができる。
【0036】
次に、本発明の樹脂組成物に必要に応じてドリップ剤とともに配合できる他の難燃剤として、(D)トリアジン骨格含有化合物、(E)フッ素系樹脂、及び(F)高級脂肪酸アミド化合物を配合することができる。
上記(D)トリアジン骨格含有化合物は、(C)含リン難燃剤の難燃助剤として一層の難燃性を向上させるための成分である。その具体例としては、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、メチルグルタログアナミン、リン酸メラミン、メラミン樹脂、BTレジン等を挙げることができるが、この中で特にメラミンシアヌレートが好ましい。
【0037】
上記(E)フッ素系樹脂は、更に一層、耐ドリップ性を向上させるための成分であり、樹脂中にフッ素原子を含有する樹脂である。その具体例として、ポリモノフルオロエチレン、ポリジフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を挙げることができる。また、耐ドリップ性を損わない程度に必要に応じて上記含フッ素モノマーと共重合可能なモノマーとを併用してもよい。
【0038】
これらのフッ素系樹脂の製造方法は、米国特許第2,393,697号明細書及び米国特許第2,534,058号明細書に開示され、例えばテトラフルオロエチレンを水性媒体中で過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等のラジカル開始剤を用いて、7〜70kg/cm2 の加圧下、0〜200℃の温度で重合し、次いで懸濁液、分散液または乳濁液から凝析により、または沈澱によりポリテトラフルオロエチレン粉末が得られる。
【0039】
そして、上記(F)高級脂肪酸アミド化合物は、流動性向上のための成分であり、高級脂肪酸と、(イ)ジアミン類または(ロ)アミノアルコール類との反応物である。
ここで、高級脂肪酸とは炭素数11〜21のアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪酸であり、特にステアリン酸が好ましい。
【0040】
また、上記ジアミン類とは炭素数2〜10の炭化水素のジアミン類であり、特にエチレンジアミンが好ましい。
更には、上記アミノアルコール類とは炭素数2〜10の炭化水素のアミノアルコール類であり、例えばモノエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール等が挙げられる。
【0041】
本発明の(F)成分の高級脂肪酸アミド化合物としては特に、エチレン・ビス・ステアリルアミド(Ethylenebisstearamide)が好ましく、難燃性と耐熱性と耐衝撃性を保持しつつ、流動性を向上させる。
本発明のドリップ抑制剤を配合した熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、ドリップ抑制剤が0.1〜20重量部、含リン難燃剤が1〜40重量部、(D)トリアジン骨格含有化合物が0〜30重量部、(E)フッ素系樹脂が0〜10重量部、(F)高級脂肪酸アミド化合物が0〜10重量部の範囲にあることが好ましい。ここで上記範囲を逸脱すると、耐ドリップ性、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、流動性のバランスが取れなくなる傾向にある。
【0042】
上記樹脂組成物は、上記各成分を市販の単軸押出機あるいは、二軸押出機などで例えば溶融混練することにより得られるが、その際にヒンダードフェノール等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールやヒンダードアミン等の紫外線吸収剤、錫系熱安定剤、その他の無機系やハロゲン系難燃剤、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の滑剤、充填剤、ガラス繊維等の補強剤、染料や顔料等の着色剤等を必要に応じて添加することができる。
【0043】
このようにして得られた本発明の組成物を例えば、射出成形または押出成形することにより、耐ドリップ性、難燃性、流動性、耐熱性及び耐衝撃性の優れた成形品が得られる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
尚、実施例、比較例における測定は、以下の方法もしくは測定機を用いて行なった。
(1)ゴム重量平均粒子径
ゴム変性スチレン系樹脂の重量平均粒子径は、射出組成物の超薄切片法により撮影した透過型電子顕微鏡写真中のブタジエン系重合体粒子径を求め、次式により算出する。
【0045】
重量平均粒子径=ΣNi・Di4 /ΣNi・Di3
(ここでNiは、粒子がDiであるブタジエン系重合体粒子の個数である。)
(2)還元粘度ηSP/C
ゴム変性スチレン系樹脂1gにメチルエチルケトン18mlとメタノール2mlの混合溶媒を加え、25℃で2時間振盪し、5℃、18000rpmで30分間遠心分離する。上澄み液を取り出しメタノールで樹脂分を析出させた後、乾燥した。
【0046】
このようにして得られた樹脂0.1gをトルエンに溶解し、濃度0.5g/dlの溶液とし、この溶液10mlをキャノン−フェンスケ型粘度計に入れ、30℃でこの溶液流下秒数t1 を測定した。一方、別に同じ粘度計で純トルエンの流下秒数t0 を測定し、以下の数式により算出した。
ηSP/C={(t1/t0−1)〕/C(C:ポリマー濃度 g/dl)
一方、(A)成分のPPEの還元粘度ηSP/Cについては、0.1gをクロロホルムに溶解し、濃度0.5g/dlの溶液とし、上記と同様に測定した。
(3)シリコーン樹脂の軟化温度
示差走査熱量測定法(DSC)によって行なった。具体的には、島津熱分析装置DT−40を用いて、5mgの試料を窒素気流下、10℃/分で昇温し、吸熱ピークを軟化温度とした。
(4)シリコーン樹脂の構造(ビニル基の測定)
赤外吸収スペクトル法によって行なった。具体的には、島津赤外分光高度計IR−470を用いて、ビニル基の特性吸収(1595、1000、960 カイザー 1/cm-1)の有無で測定した。
(5)アイゾット衝撃強さ
ASTM−D256に準拠した方法で23℃で測定した(Vノッチ、1/8インチ試験片)。
(6)ビカット軟化温度
ASTM−D1525に準拠した方法で測定し、耐熱性の尺度とした。
(7)メルトフローレート(MFR)
流動性の指標手ASTM−D1238に準拠した方法で測定した。荷重5kg、溶融温度200℃の条件で10分間あたりの押出量(g/10分)から求めた。
(8)難燃性及び耐ドリップ性
UL−94に準拠したVB(Vertical Burning)法により評価した(1/8インチ試験片)。
【0047】
【実施例1〜3、比較例1〜5】
(イ)熱可塑性樹脂の製造
▲1▼ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS)の製造
ポリブタジエン〔(シス1,4結合/トランス1,4結合/ビニル1,2結合=95/2/3(重量比))(日本ゼオン(株)製、商品名Nipol 1220SL)〕を、以下の混合液に溶解し、均一な溶液とした。
【0048】
ポリブタジエン 10.5重量%
スチレン 72.2重量%
エチルベンゼン 15.0重量%
ミネラルオイル 2.0重量%
α−メチルスチレン2量体 0.27重量%
1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)
−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン 0.03重量%
次いで、上記混合液を撹拌機付の直列4段式反応機に連続的に送液して、第1段は撹拌数190rpm、126℃、第2段は50rpm、133℃、第3段は20rpm、140℃、第4段は20rpm、155℃で重合を行なった。引き続きこの固形分73%の重合液を脱気装置に導き、未反応単量体及び溶媒を除去し、ゴム変性スチレン系樹脂を得た(HIPSと称する。)。得られたゴム変性スチレン系樹脂を分析した結果、ゴム含量は14重量%、ゴムの重量平均粒子径は2.4μm、還元粘度ηSP/Cは0.53dl/gであった。
【0049】
▲2▼ポリフェニレンエーテル(PPE)の製造
酸素吹き込み口を反応機底部に有し、内部に冷却用コイル、撹拌羽根を有するステンレス製反応機の内部を窒素で充分に置換した後、臭化第2銅54.8g、ジ−n−ブチルアミン1110g、及びトルエン20リットル、n−ブタノール16リットル、メタノール4リットルの混合溶媒に2,6−オキシレノール8.75kgを溶解して反応機に仕込んだ、撹拌しながら反応機内部に酸素を吹き込み続け、内温を30℃に制御しながら180分間重合を行なった。重合終了後、析出したポリマーを濾別した。これにメタノール/塩酸混合液を添加し、ポリマー中の残存触媒を分解し、さらにメタノールを用いて充分洗浄した後乾燥し、粉末状のポリフェニレンエーテルを得た(PPEと称する。)。還元粘度ηSP/Cは0.55dl/gであった。
【0050】
次いで、上記PPEとポリスチレン(旭化成工業(株)製 商品名 スタイロン685)を重量比で70/30で混合し、二軸押出機で350℃で溶融押出を行なった。得られたペレットをPPE−MBと称する。
(ロ)含リン難燃剤
▲1▼ヒドロキシル基含有芳香族系リン酸エステルを含有した有機リン化合物の製造
フェノール122.7重量部(モル比2.0)、塩化アルミニウム0.87重量部(モル比0.01)をフラスコに取り90℃でオキシ塩化リン100重量部(モル比1.0)を1時間かけて滴下した。生成した中間体にレゾルシン71.7重量部(モル比1.0)を加え更に反応させた。反応を完結させるために、徐々に昇温し最終的には180℃まで温度を上げエステル化を完了させた。次いで反応生成物を冷却し、水洗して触媒及び塩素分を除去してリン酸エステル混合物(以下、FRと称する)を得た。この混合物をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により分析したところ、下記式〔化9〕ジフェニルレゾルシニルホスフェート(以下、TPP−OHと称する)と、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)と、下記式〔化10〕芳香族縮合リン酸エステル(以下、TPPダイマーと称する)とからなり、重量比がそれぞれ54.2/18.3/27.5であった。
【0051】
【化9】
Figure 0003714912
【0052】
【化10】
Figure 0003714912
【0053】
▲2▼ヒドロキシル基非含有芳香族系リン酸エステル
市販の芳香族縮合リン酸エステル〔大八化学工業(株)製、商品名 CR733S(poly−FRと称する)〕を用いた。
また、上記芳香族縮合リン酸エステルは、GPC分析によると、下記式〔化11〕で表されるTPPダイマーとTPPオリゴマーからなり、重量比でそれぞれ65/35であった。
【0054】
【化11】
Figure 0003714912
【0055】
但し、n=1 TPPダイマー
n≧2 TPPオリゴマーと称する。
(ハ)ドリップ抑制剤
▲1▼シリコーン樹脂
市販のシリコーン樹脂(信越化学工業(株)製)を用いた。
A)商品名 多機能シリコーンレジン X−40−2135
(以後、Si−1と称する)、下記の〔化12〕〔化13〕〔化14〕の構造単位を含有する。
【0056】
また、赤外吸収スペクトルによりビニル基の吸収が検出された。(1595,1000,960 l/cm-1)(図1参照)。
DSC測定により、0℃〜350℃の間に軟化点は検出されなかった。
【0057】
【化12】
Figure 0003714912
【0058】
【化13】
Figure 0003714912
【0059】
【化14】
Figure 0003714912
【0060】
B)商品名 多機能シリコーンレジン X−40−2134
(以後、Si−2と称する)、下記の〔化15〕〔化16〕の構造単位を含有する。
また、赤外吸収スペクトルによりビニル基の吸収が検出されなかった。(図1参照)。
【0061】
DSC測定により、0℃〜350℃の間に軟化点は検出されなかった。
【0062】
【化15】
Figure 0003714912
【0063】
【化16】
Figure 0003714912
【0064】
C)商品名 シリコーンレジン X−21−5861
(以後、Si−3と称する)
また、赤外吸収スペクトルによりビニル基の吸収が検出されなかった。
DSC測定により、軟化温度は、49.7℃であった。
D)商品名 シリコーンレジン X−21−5862
(以後、Si−4と称する)
【0065】
また、赤外吸収スペクトルによりビニル基の吸収が検出されなかった。
DSC測定により、軟化温度は、63.9℃であった。
▲2▼ポリホスファゼン
市販のポリホスファゼンを用いた。
A)ポリ(フロロアルキルホスファゼン)
ダイキン工業(株)製、商品名 アイペル−F404NC〔製造元:エチルコーポレーション(米国)〕(以後、PN−1と称する)
B)ホスファゼン単量体
〔化17〕の構造のホスファゼン単量体〔出光石油化学(株)製、商品名出光PPZ−U−1000〕(以後、PN−2と称する)
【0066】
【化17】
Figure 0003714912
【0067】
(ニ)トリアジン骨格含有化合物
市販のメラミンシアヌレート〔日産化学工業(株)製、商品名MC−610(以後、MCと称する)〕を用いた。
(ホ)高級脂肪酸アミド
市販のエチレン・ビスステアリルアミド(花王(株)製、商品名 花王ワックスEB FF)を用いた。(以後、EBSと称する)
(ヘ)組成物の調整及び評価
HIPS(B)/PPE−MB(B)/FR(C)/poly−FR(C)/ドリップ抑制剤(A)/MC(D)/EBS(F)を71/29/12/8/X/16/2の配合比率で機械的に混合し、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用いて、溶融温度250℃、回転数50rpmで5分間溶融した。このようにして得られた樹脂組成物から加熱プレスにより1/8インチ厚の試験片を作製し、難燃性、ビカット軟化温度、アイゾット衝撃強さ及びMFRの評価を行なった。表1にその結果を示す。
【0068】
表1によると、非軟化性、含ビニル基シリコーン樹脂、またはポリホスファゼンを含有する樹脂組成物は、耐ドリップ性、難燃性、流動性、耐衝撃性、耐熱性を兼備していることが分かる。
【0069】
【表1】
Figure 0003714912
【0070】
【実施例4〜7】
(イ)熱可塑性樹脂
前記のHIPS、PPE−MBを用いた。
(ロ)含リン難燃剤
▲1▼有機リン化合物
前記のFR、poly−FR 及びトリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製、商品名 TPP)(以後、TPPと称する)を用いた。
【0071】
▲2▼赤リン
市販の樹脂被覆赤リン粉末〔燐化学工業(株)製、商品名 ノーバエクセル150(以後、RPと称する)〕を用いた。
(ハ)ドリップ抑制剤
前記のシリコーン樹脂Si−1を用いた。
(ニ)トリアジン骨格含有化合物
前記のMCを用いた。
(ホ)高級脂肪酸アミド
前記のEBSを用いた。
(ヘ)組成物の調整及び評価
表2に記載した配合比率に変更すること以外、実施例1〜3 比較例1〜5と同一の実験を繰り返した。表2にその結果を実施例1とともに示す。
【0072】
表2によると、ヒドロキシル基含有芳香族リン酸エステルを含有した組成物は、耐ドリップ性、難燃性、流動性、耐衝撃性、及び耐熱性のバランス特性が極めて優れていることが分かる。
【0073】
【表2】
Figure 0003714912
【0074】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物用ドリップ抑制剤は、燃焼時における火種の滴下が著しく少なく、かつ難燃性、耐衝撃性、耐熱性、及び流動性の優れた熱可塑性樹脂組成物用ドリップ抑制剤である。
この組成物用ドリップ抑制剤は、家電部品、OA機器部品等に好適であり、これら産業界に果たす役割は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビニル基を含有したシリコーン樹脂(Si−1)と、ビニル基を含有しないシリコーン樹脂(Si−2)の赤外吸収スペクトルを示した図である。

Claims (1)

  1. 0℃〜350℃の温度範囲で非軟化性であり、かつビニル基を含むシリコーン樹脂及び/またはポリフォスファゼンである熱可塑性樹脂用ドリップ抑制剤。
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