JP3714744B2 - 熱現像感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱現像感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年医療分野において環境保全、省スペースの観点から処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができ、高解像度および鮮明さを有する黒色画像を形成することができる医療診断用および写真技術用途の光感光性熱現像写真材料に関する技術が必要とされている。これら光感光性熱現像写真材料では、溶液系処理化学薬品の使用をなくし、より簡単で環境を損なわない熱現像処理システムを顧客に対して供給することができる。
【0003】
一方、近年急激な進歩をしているHe−Neガスレーザーや半導体レーザーの技術は医療用画像出力装置の小型化を可能としてきた。当然、He−Neガスレーザーや半導体レーザーを光源として利用できるパンクロもしくは感赤外線性光熱ハロゲン化銀写真材料の技術も開発され、分光増感技術として特公平3-10391 号、特公平6-52387 号、特開平5-341432号、特開平6-194781号、特開平6-301141号が開示されており、さらにハレーション防止技術として特開平7-13295 号、米国特許第5,380,635 号が開示されている。パンクロもしくは赤外線露光を前提とした感光材料では増感色素、ハレーション防止染料の可視吸収を大幅に少なくすることができ、実質的に色のない感光材料を容易に作ることができる。
【0004】
しかし、パンクロ光や赤外線、特に赤外線を吸収し分光増感する色素は一般的にHOMOが高いため強い還元能を有し、感光材料中の銀イオンを還元し感光材料のカブリを悪化させる傾向にある。特に、高温、高湿といった条件での保存や、長期間の保存では著しい性能変化が伴う問題がある。さらに保存性の劣化を防ぐためにHOMOの低い色素を用いると、相対的にLUMOも低くなり分光増感効率が低下し感度が低くなる。このような感度、保存性に対する問題は、湿式写真感光材料だけでなく本発明に関係する熱現像写真感光材料においてはさらに顕著となる。
【0005】
また、色素の還元能は当然のことながら色素量が多いほど強くなる傾向を示す。しかし、色素量が少ないと感光材料への入射光を十分に吸収することができないため感度が不足することになる。特に、親油性の高いバインダーを用いる熱現像感光材料においては、感光素子であるハロゲン化銀への色素の吸着が弱く十分な量を添加しないと感度が不足することとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、保存性が良好であり、低カブリでかつ高感度な熱現像感光材料、特に赤外線感光性の熱現像感光材料を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題は下記手段によって達成された。
(1)支持体上の少なくとも一方に、感光性ハロゲン化銀粒子、非感光性有機銀塩、銀イオン用還元剤およびバインダーを有する熱現像感光材料において、下記一般式(I)で表されるシアニン色素を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【0008】
【化2】
【0009】
[一般式(I)中、X 1 、X 2 は各々同一または異なっていてもよく、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R 9 )−、−C(CH 3 ) 2 −、または−CH=CH−を表す。
G 1 、G 2 、R 9 は、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基若しくはヘテロ環基、又は前記一般式(A)中の2価の連結基L若しくは単結合を表し、これらは各々同一または異なっていてもよく、かつ、G 1 およびG 2 のうち少なくとも1つは前記一般式(A)で表される基を有する。一般式(A)中、Lは炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子の少なくとも1種を含む原子または原子団を含む2価の連結基を表し、Hetは少なくとも1個の窒素原子を含む5〜7員のヘテロ環を有する基を表し、j 2 は0または1であり、j 3 は1、2または3である。
B 1 、B 2 、B 3 、B 4 、E 1 、E 2 、E 3 、E 4 は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、メチレンジオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、炭素数10以下の置換、無置換のアルキル基、炭素数10以下の置換、無置換のアリール基、炭素数10以下の置換、無置換のアルコキシ基、炭素数8以下のアルキルチオ基、炭素数8以下のアリールチオ基、炭素数8以下のアシルアミノ基、炭素数8以下のアルコキシカルボニル基または炭素数10以下のアシル基を表す。
G 3 は、水素原子、フッ素原子を表す他、n 2 が1以上の場合には置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルキル基およびG 1 とアルキレン架橋し、環構成原子中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい5員または6員環を形成してもよい。
G 4 、G 5 は水素原子、フッ素原子、置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルキル基、置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルコキシ基、置換されていてもよい炭素数10以下のアリール基を表す他、n 2 が2以上の場合、G 3 と最近接のG 5 、または異なったG 4 とG 4 もしくはG 5 とG 5 が連結して環構成原子に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい5員または6員環を形成してもよい。
n 1 およびn 3 は各々同一または異なっていてもよく、0または1である。n 2 は0、1、2、3または4である。
Y 1 はカチオン性基、W 1 はアニオン性基を表し、k 1 およびk 2 は0または1である。]
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明では、一般式(I)で表されるシアニン色素を用い、感光性ハロゲン化銀粒子を、露光波長(通常633nm、670nm、780nm、810〜830nm)に応じた波長域に分光増感しているので、特にこの波長域でのレーザー光による露光、とりわけ実用上有利な半導体レーザーを使用した露光に適し、高感度で低カブリであり、かつ保存性に優れた熱現像感光材料が得られる。また、ヒドラジン誘導体を含有させた場合には硬調な画像となる。
【0011】
最初に一般式(A)について説明する。
【0013】
Lは炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のうち、少なくとも1種を含む原子または原子団を含む2価の連結基を表す。
【0014】
Lとしては、好ましくは、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基など)、アリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフチレン基など)、アルケニレン基(例えば、エチレン基、プロペニレン基など)、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、−N−(R1 )−(ここでR1 は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基を表す。)、ヘテロ環2価基(例えば6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基など)を一つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素数20以下の2価の連結基である。
【0015】
j2は0または1であり、j3は1、2または3である。
【0016】
好ましくはj2は0または1であり、j3は1または2である。
【0017】
Hetは少なくとも1個の窒素原子を含む5〜7員のヘテロ環を有する基を表し、このようなヘテロ環は窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
窒素原子以外のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子等が挙げられる。またHetで表される基が有するヘテロ環は飽和のヘテロ環であっても、不飽和のヘテロ環であってもよい。
【0018】
Hetで表される基は、好ましくは下記一般式(II)〜(VI)で表される構造のヘテロ環から誘導される基を有するものである。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、V1 、V2 、V3 、V4 は水素原子、置換または無置換のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル、スルホプロピル、ジエチルアミノエチル、シアノプロピル、アダマンチル、p−クロロフェネチル、エトキシエチル、エチルチオエチル、フェノキシエチル、カルバモイルエチル、カルボキシエチル、エトキシカルボニルメチル、アセチルアミノエチルなど)、無置換または置換のアルケニル基(例えば、アリール、スチリルなど)、無置換または置換のアリール基(例えばフェニル、ナフチル、p−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、m−スルホフェニル、p−アセトアミドフェニル、3−カプリルアミドフェニル、p−スルファモイルフェニル、m−ヒドロキシフェニル、p−ニトロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、p−アニシル、o−アニシル、p−シアノフェニル、p−N’−メチルウレイドフェニル、m−フルオロフェニル、p−トリル、m−トリルなど)、置換されてもよいヘテロ環残基(例えばピリジル、5−メチル−2−ピリジル、チエニルなど)、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、フッ素)、メルカプト基、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アミノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−フェニルエトキシなど)、置換されていてもよいアリーロキシ基(例えばフェノキシ、p−メチルフェノキシ、p−クロロフェノキシなど)、アシル基(例えばアセチル、ベンゾイルなど)、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ、カプロイルアミノなど)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル、ベンゼンスルホニルなど)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなど)、置換アミノ基(例えばジエチルアミノ、ヒドロキシアミノなど)、アルキルまたはアリールチオ基(例えばメチルチオ、カルボキシエチルチオ、スルホブチルチオ、フェニルチオなど)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニルなど)、アリーロキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニルなど)を表し、V1 〜V4 で表される置換基がさらに置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、などが挙げられる。
【0021】
V1 〜V4 としては水素原子、メチル基等のアルキル基、ヒドロキシ基等が好ましい。
【0022】
また、V1 〜V4 で表される置換基には、さらに2価の連結基Lまたは単結合によりHetが置換していてもよい。
【0023】
また、V1 、V2 、V3 、V4 のうち、少なくとも1つが2価の連結基Lまたは単結合であってもよく、このようなものも好ましい。
【0024】
【化4】
【0025】
式中、X3 は酸素原子、硫黄原子、N−R2 を表す。ここでR2 は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロ環基を表す。この場合の置換基としてはV1 〜V4 のところのものと同様のものを挙げることができる。
【0026】
V5 、V6 およびV7 は前記一般式(II)におけるV1 〜V4 と各々同意義のものを表す他、前に述べた2価の連結基Lまたは単結合を表す。
【0027】
V7 は水素原子、アルキルチオ基、アリールチオ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基であることが好ましく、特に好ましくはメルカプト基またはヒドロキシ基である。
【0028】
またV5 とV6 が結合して、ベンゾまたはナフト縮合環を形成してもよい。
【0029】
これらのベンゾおよびナフト縮合環上およびR2 (水素原子の場合を除く)にはさらに置換基として前記一般式(II)においてV1 〜V4 で示した置換基または連結基Lもしくは単結合が置換していてもよい。
【0030】
V5 、V6 としては水素原子、または連結基Lもしくは単結合が好ましく、V5 とV6 が結合してベンゾ縮合環を形成し、この縮合環に連結基Lまたは単結合が置換したものであることも好ましい。
【0031】
【化5】
【0032】
式中、X4 は酸素原子、硫黄原子、N−R3 を表す。
【0033】
R3 は前記一般式(III) で示したR2 と同意義のものを表す。
【0034】
また、V8 、V9 は前記一般式(II)におけるV1 〜V4 と各々同意義のものを表す他、前に述べた2価の連結基Lまたは単結合を表す。V8 、V9 で表される置換基としてはメルカプト基、メチル基等のアルキル基などが好ましく、また2価の連結基Lまたは単結合であることも好ましい。
【0035】
【化6】
【0036】
式中、X5 は窒素原子またはC−R5 を表す。
【0037】
R4 、R5 は各々前記前記一般式(III) におけるR2 と同意義のものを表し、また、V10、V11、V12、V13は前記一般式(II)におけるV1 〜V4 と各々同意義のものを表す。
【0038】
V10〜V13としては水素原子が好ましい。
【0039】
また、V10〜V13は連結基Lまたは単結合であってもよい。
【0040】
【化7】
【0041】
式中、V14、V15は前記一般式(II)で示したV1 〜V4 と各々同意義のものを表す。
【0042】
また、V14、V15は連結基Lまたは単結合であってもよい。Tは窒素原子またはC−V16を表し、V16は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基を表し、特に好ましくは炭素数は1〜4のアルキル基、またはフェニル基である。この場合の置換基としてはV1 〜V4 のところのものと同様のものを挙げることができる。
【0043】
V14としてはメルカプト基等が好ましく、V15としては連結基Lまたは単結合が好ましく、V16としてはメチル基等のアルキル基が好ましい。
【0046】
式中、X1 、X2 は各々同一または異なっていてもよく、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、−N(R9 )−、−C(CH3 )2 −、−CH=CH−を表す。
【0047】
G1、G2、R9は各々同一または異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基を表し、これらは無置換でも、置換されていてもよい。また、2価の連結基Lまたは単結合であってもよい。G 1 、G 2 のうちの少なくとも1つは置換基として前記一般式(A)で表される基を有する。
【0048】
G1 、G2 、R9 で表されるアルキル基、アリール基、アルケニル基、ヘテロ環基について述べる。
【0049】
アルキル基およびアルケニル基としては、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは炭素数1〜8の無置換のアルキル基、アルケニル基があり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、アリル基、2−ブテニル基などが挙げられる。また、好ましくは炭素数1〜18、より好ましくは1〜10の置換アルキル基、置換アルケニル基があり、例えばベンジル基、フェネチル基、p−スルホ−2−フェネチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、2−メトキシエチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−スルホエチル基、3−スルホプロピル基、3−スルホブチル基、4−スルホブチル基、2−(3−スルホプロポキシ)エチル基、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル基、3−スルファトプロピル基、2−(ピロリジン−2−オン−1−イル)−エチル基、テトラフルフリル基、3−アセトキシプロピル基、エトキシカルボニルエチル基、3−シアノプロピル基、2−メタンスルホニルアミノエチル基、2−カルバモイルエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2−エチルチオエチル基、2−クロロ−2−ブテニル基などが挙げられる。置換および無置換のアリール基としては、好ましくは炭素数18以下、より好ましくは、10以下の置換および無置換のアリール基があり、例えばフェニル基、ナフチル基、トリル基、アニシル基、4−クロロフェニル基、スルホフェニル基、カルボキシフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、3−クロロ−p−トリル基などが挙げられる。また、好ましくは炭素数18以下、より好ましくは炭素数10以下の置換および無置換のヘテロ環基があり、例えばピリジル基、3−クロロ−2−ピリジル基、6−クロロ−4−メトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル基などが挙げられる。これらG1 、G2 、R9 で表される置換基が置換基を有する場合の置換基としては、V1 〜V4 のところと同様のものが挙げられる。
【0050】
B1、B2、B3、B4、E1、E2、E3、E4は水素原子、ハロゲン原子(例えば塩素原子、フッ素原子、臭素原子など)、ヒドロキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、メチレンジオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、炭素数10以下の置換、無置換のアルキル基、炭素数10以下の置換、無置換のアリール基、炭素数10以下の置換、無置換のアルコキシ基、炭素数8以下のアルキルチオ基、炭素数8以下のアリールチオ基、炭素数8以下のアシルアミノ基、炭素数8以下のアルコキシカルボニル基、炭素数10以下のアシル基を表す。なお、B1〜B4、E1〜E4で表される置換基が置換基を有する場合の置換基としてはV1 〜V4のところの置換基と同様のものを挙げることができる。
【0051】
G3は水素原子、フッ素原子を表す他、n2が1以上の場合には置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルキル基およびG1とアルキレン架橋し、環構成原子中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい5員または6員環を形成してもよい。
【0052】
G4、G5は水素原子、フッ素原子、置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルキル基、置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルコキシ基、置換されていてもよい炭素数10以下のアリール基を表す他、n2が2以上の場合、G3と最近接G5、または異なったG4とG4もしくはG5とG5が連結して環構成原子に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい5員または6員環を形成してもよい。
【0053】
n1 およびn3 は各々同一または異なっていてもよく、0または1である。
【0054】
n2 は0、1、2、3または4である。好ましくは0、1、2または3である。
【0055】
Y1 はカチオン性基、W1 はアニオン性基を表し、k1 およびk2 は0または1であり、これらはイオン性基の存否に依存する。
【0056】
カチオン性基としては、例えばアルカリ金属カチオン(例えばNa+ 、K+ など)、四級アンモニウム塩(例えばトリエチルアンモニウム、ピリジニウムなど)などがある。
【0057】
また、アニオン性基としては例えばハロゲンアニオン(例えばクロリド、ヨージド)、スルホナート(例えばメタンスルホナート、p−トルエンスルホナートなど)、スルファート(例えばメチルスルファートなど)、ボラート(例えばテトラフルオロボラートなど)、ホスファート(例えばヘキサフルオロホスファートなど)などである。
【0070】
本発明の一般式(I)で表される化合物の具体例を次に示す。
【0071】
【化11】
【0072】
【化12】
【0073】
【化13】
【0074】
【化14】
【0075】
【化15】
【0076】
【化16】
【0077】
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
【化19】
【0080】
【化20】
【0081】
【化21】
【0082】
【化22】
【0083】
【化23】
【0084】
【化24】
【0085】
【化25】
【0086】
【化26】
【0087】
【化27】
【0088】
【化28】
【0089】
【化29】
【0090】
【化30】
【0091】
本発明の一般式(I)で表されるメチン化合物の合成は有機化学において、よく知られている種々のアミド結合形成反応、エステル結合形成反応をはじめとする結合形成反応を利用して、増感色素部分とHetにより示される含窒素ヘテロ環部分を連結させる方法、増感色素の合成原料および中間体にHetにより示される含窒素ヘテロ環部分を連結させてから色素化反応を行う方法、逆にHetにより示される含窒素ヘテロ環部分の合成原料および中間体を増感色素部分に連結させた後にHetにより示される含窒素ヘテロ環部分を合成する方法などいずれの方法でもよく、適宜選択して合成できる。これらの連結のための合成反応については、例えば日本化学会編、新実験化学講座14、有機化合物の合成と反応、I〜V巻、丸善、東京(1977年)、小方芳郎著、有機反応論、丸善、東京(1962年)、L. F. Flaser and M. Flaser, Advanced Organic Chemistry, 丸善、東京(1962年)など、多くの有機合成反応に関する成書を参考にすることができる。また本発明の一般式(I)で表される化合物の合成法の具体例は特開平2−225476号に記載されている。
【0092】
本発明の一般式(I)で表されるシアニン色素は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよく、ハロゲン化銀1モル当たり10-6モル〜1モルの量で使用することが好ましい。さらに好ましくは、10-5モル〜10-2モルである。
【0093】
また、本発明のシアニン色素の添加法としてはハロゲン化銀形成時から塗布直前までのいかなる工程でもよいが、塗布直前が好ましい。
【0094】
本発明の増感色素は、一般式(I)で表されるシアニン色素をはじめとして、一般に、ハロゲン化銀1モル当たり1μモル〜1モルの量で使用することが好ましい。さらに、好ましくは10μモル〜10m モルである。また、増感色素の添加法としてはハロゲン化銀形成時から塗布直前までのいかなる工程でもよいが、塗布直前が好ましい。
【0095】
本発明における増感色素は複数混用し、所望の分光増感スペクトルを得ることもできる。
【0096】
本発明における増感色素としては一般式(I)以外の構造のものを併用してもよい。併用する色素としてはハロゲン化銀粒子に吸着した際、露光波長の範囲のいずれかの波長領域でハロゲン化銀粒子を分光増感するものが好ましい。具体的には、感光性ハロゲン化銀を、シアニン、メロシアニン、スチリル、ヘミシアニン、オキソノール、ヘミオキソノールおよびキサンテン色素を含む種々の既知の色素により、スペクトル的に有利に増感させることができる。有用なシアニン色素は、例えば、チアゾリン核、オキサゾリン核、ピロリン核、ピリジン核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核およびイミダゾール核などの塩基性核を有するシアニン色素である。有用なメロシアニン染料で好ましいものは、上記の塩基性核に加えて、チオヒダントイン核、ローダニン核、オキサゾリジンジオン核、チアゾリンジオン核、バルビツール酸核、チアゾリノン核、マロノニトリル核およびピラゾロン核などの酸性核も含む。上記のシアニンおよびメロシアニン色素において、イミノ基またはカルボキシル基を有するものが特に効果的である。特に、米国特許第3,761,279 号、同第3,719,495 号、同第3,877,943 号、英国特許第1,466,201 号、同第1,469,117 号、同第1,422,057 号、特公平3-10391 号、特公平6-52387 号、特開平5-341432号、特開平6-194781号、特開平6-301141号に記載されたような既知の色素から適当に選択してよい。併用する色素は、一般にハロゲン化銀1モル当たり約10μモル〜約1モルの量で使用することができる。また、併用する色素において、複数の色素を混用し所望の分光増感スペクトルを得ることもできる。
【0097】
このように、本発明では増感色素を複数混用し所望の分光増感スペクトルを得ることもできる。
【0098】
本発明の熱現像用の感光性ハロゲン化銀乳剤を含む層は、支持体上に一またはそれ以上の層で構成される。少なくとも一層の構成はハロゲン化銀を含まなければならず、有機銀塩、銀イオン用還元剤である現像剤およびバインダー、ならびに色調剤、被覆助剤および他の補助剤などの所望による追加の材料を含むことが好ましい。二層の構成は、第1乳剤層(通常は支持体に隣接した層)中に有機銀塩およびハロゲン化銀を含み、第2層または両層中にいくつかの他の成分を含まなければならない。しかし、全ての成分を含む単一乳剤層および保護トップコートを含んでなる二層の構成も考えられる。多色感光性熱現像写真材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また、米国特許第4,708,928 号に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。多染料多色感光性熱現像写真材料の場合、各乳剤層は、一般に、米国特許第4,460,681 号に記載されているように、各感光層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより、互いに区別されて保持される。
【0099】
本発明における熱現像感光材料は、支持体の一方の側に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤を含む感光層(乳剤層)を有し、他方の側にバッキング層(バック層)を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0100】
本発明の感光性ハロゲン化銀の形成方法は当業界ではよく知られており例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029 号、および米国特許第3,700,458 号に記載されている方法を用いることができる。本発明で用いることのできる具体的な方法としては、調製された有機銀塩中にハロゲン含有化合物を添加することにより有機銀塩の銀の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する方法、ゼラチンあるいは他のポリマー溶液の中に銀供給化合物およびハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀粒子を調製し有機銀塩と混合する方法を用いることができる。本発明において好ましくは後者の方法を用いることができる。感光性ハロゲン化銀の粒子サイズは、画像形成後の白濁を低く抑える目的のために小さいことが好ましく具体的には0.20μm以下、より好ましくは0.01μm 以上0.15μm 以下、更に好ましくは0.02μm以上0.12μm以下がよい。ここでいう粒子サイズとは、ハロゲン化銀粒子が立方体あるいは八面体のいわゆる正常晶である場合にはハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。また、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径をいう。
【0101】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、八面体、平板状粒子、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては特に立方体状粒子、平板状粒子が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比は好ましくは100:1 〜2:1 、より好ましくは50:1〜3:1 がよい。更に、ハロゲン化銀粒子のコーナーが丸まった粒子も好ましく用いることができる。感光性ハロゲン化銀粒子の外表面の面指数(ミラー指数)については特に制限はないが、分光増感色素が吸着した場合の分光増感効率が高い〔100 〕面の占める割合が高いことが好ましい。その割合としては50%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。ミラー指数〔100 〕面の比率は増感色素の吸着における〔111 〕面と〔100 〕面との吸着依存性を利用したT.Tani;J.Imaging Sci.,29、 165(1985年) に記載の方法により求めることができる。感光性ハロゲン化銀のハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀、ヨウ化銀のいずれであっても良いが、本発明においては臭化銀、あるいはヨウ臭化銀を好ましく用いることができる。特に好ましくはヨウ臭化銀であり、ヨウ化銀含有率は0.1 モル%以上40モル%以下が好ましく、0.1 モル%以上20モル%以下がより好ましい。粒子内におけるハロゲン組成の分布は均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、あるいは連続的に変化したものでもよいが、好ましい例として粒子内部のヨウ化銀含有率の高いヨウ臭化銀粒子を使用することができる。また、好ましくはコア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を用いることができる。構造としては好ましくは2〜5重構造、より好ましくは2〜4重構造のコア/シェル粒子を用いることができる。
【0102】
本発明の感光性ハロゲン化銀粒子は、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウム、コバルトまたは鉄から選ばれる金属の錯体を少なくとも一種含有することが好ましい。これら金属錯体は1種類でもよいし、同種金属および異種金属の錯体を二種以上併用してもよい。好ましい含有率は銀1モルに対し1nモルから10m モルの範囲が好ましく、10n モルから100μモルの範囲がより好ましい。具体的な金属錯体の構造としては特開平7-225449号等に記載された構造の金属錯体を用いることができる。コバルト、鉄の化合物については六シアノ金属錯体を好ましく用いることができる。具体例としては、フェリシアン酸イオン、フェロシアン酸イオン、ヘキサシアノコバルト酸イオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハロゲン化銀中の金属錯体の含有相は均一でも、コア部に高濃度に含有させてもよく、あるいはシェル部に高濃度に含有させてもよく特に制限はない。
【0103】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができるが本発明においては脱塩してもしなくてもよい。
【0104】
本発明における感光性ハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法を用いることができる。また金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物を用いることができるが、特開平7-128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル) テルリド類、ビス(カルバモイル) テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル) ジテルリド類、ビス(カルバモイル) ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te−オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ) テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P-Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060 号、英国特許第618,061 号などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7 以上またはpAg を8.3 以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0105】
本発明の感光性ハロゲン化銀の使用量としては有機銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル0.5 モル以下が好ましく、0.02モル以上0.3 モル以下がより好ましく、0.03モル以上0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法および混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0106】
本発明に用いることのできる有機銀塩は、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)および還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩である。有機銀塩は銀イオンを還元できる源を含む任意の有機物質であってよい。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の) 長鎖脂肪カルボン酸の銀塩が好ましい。配位子が4.0 〜10.0の範囲の錯安定度定数を有する有機または無機銀塩の錯体も好ましい。銀供給物質は、好ましくは画像形成層の約5 〜30重量%を構成することができる。好ましい有機銀塩はカルボキシル基を有する有機化合物の銀塩を含む。これらの例は、脂肪族カルボン酸の銀塩および芳香族カルボン酸の銀塩を含むがこれらに限定されることはない。脂肪族カルボン酸の銀塩の好ましい例としては、ベヘン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、酒石酸銀、リノール酸銀、酪酸銀および樟脳酸銀、これらの混合物などを含む。
【0107】
メルカプト基またはチオン基を含む化合物の銀塩およびこれらの誘導体を使用することもできる。これらの化合物の好ましい例としては、3-メルカプト-4- フェニル-1,2,4- トリアゾールの銀塩、2-メルカプトベンズイミダゾールの銀塩、2-メルカプト-5- アミノチアジアゾールの銀塩、2-(エチルグリコールアミド)ベンゾチアゾールの銀塩、S-アルキルチオグリコール酸(ここでアルキル基の炭素数は12〜22である) の銀塩などのチオグリコール酸の銀塩、ジチオ酢酸の銀塩などのジチオカルボン酸の銀塩、チオアミドの銀塩、5-カルボキシル-1- メチル-2- フェニル-4- チオピリジンの銀塩、メルカプトトリアジンの銀塩、2-メルカプトベンズオキサゾールの銀塩、米国特許第4,123,274 号に記載の銀塩、例えば3-アミノ-5- ベンジルチオ-1,2,4- チアゾールの銀塩などの1,2,4-メルカプトチアゾール誘導体の銀塩、米国特許第3,301,678 号に記載の3-(3- カルボキシエチル)-4-メチル-4- チアゾリン-2- チオンの銀塩などのチオン化合物の銀塩を含む。さらに、イミノ基を含む化合物を使用することができる。これらの化合物の好ましい例としては、ベンゾトリアゾールの銀塩およびそれらの誘導体、例えばメチルベンゾトリアゾール銀などのベンゾトリアゾールの銀塩、5-クロロベンゾトリアゾール銀などのハロゲン置換ベンゾトリアゾールの銀塩、米国特許第4,220,709 号に記載のような1,2,4-トリアゾールまたは1-H-テトラゾールの銀塩、イミダゾールおよびイミダゾール誘導体の銀塩などを含む。例えば、米国特許第4,761,361 号および同第4,775,613 号に記載のような種々の銀アセチリド化合物を使用することもできる。
【0108】
本発明に用いることができる有機銀塩の形状としては特に制限はないが、短軸と長軸を有する針状結晶が好ましい。感光性ハロゲン化銀感光材料でよく知られているように銀塩結晶粒子のサイズとその被覆力の間の反比例の関係は本発明における熱現像感光材料においても成立するため、即ち熱現像感光材料の画像形成部である有機銀塩粒子が大きいと被覆力が小さく画像濃度が低くなることを意味することから有機銀塩のサイズを小さくすることが必要である。本発明においては短軸0.01μm 以上0.20μm 以下、長軸0.10μm 以上5.0 μm 以下が好ましく、短軸0.01μm 以上0.15μm 以下、長軸0.10μm 以上4.0 μm 以下がより好ましい。有機銀塩の粒子サイズ分布は単分散であることが好ましい。単分散とは短軸、長軸それぞれの長さの標準偏差を短軸、長軸それぞれで割った値の百分率が好ましくは100 %以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。有機銀塩の形状の測定方法としては有機銀塩分散物の透過型電子顕微鏡像より求めることができる。単分散性を測定する別の方法として、有機銀塩の体積荷重平均直径の標準偏差を求める方法があり、体積荷重平均直径で割った値の百分率(変動係数) が好ましくは100 %以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは50%以下である。測定方法としては例えば液中に分散した有機銀塩にレーザー光を照射し、その散乱光のゆらぎの時間変化に対する自己相関関数を求めることにより得られた粒子サイズ(体積荷重平均直径) から求めることができる。
【0109】
本発明の有機銀塩は所望の量で使用できるが、0.1 〜5g/m2が好ましく、さらに好ましくは1 〜3g/m2である。
【0110】
有機銀塩のための還元剤は、銀イオンを金属銀に還元する任意の物質、好ましくは有機物質であってよい。フェニドン、ハイドロキノンおよびカテコールなどの従来の写真現像剤は有用であるが、ヒンダードフェノール還元剤が好ましい。還元剤は、画像形成層の1〜10重量%として存在すべきである。多層構成において、還元剤をエマルジョン層以外の層に加える場合は、わずかに高い割合である約2〜15重量%がより望ましい傾向がある。
【0111】
有機銀塩を利用した熱現像感光材料においては広範囲の還元剤が開示されている。例えば、フェニルアミドオキシム、2-チエニルアミドオキシムおよびp-フェノキシフェニルアミドオキシムなどのアミドオキシム;例えば4-ヒドロキシ-3,5- ジメトキシベンズアルデヒドアジンなどのアジン;2,2-ビス(ヒドロキシメチル) プロピオニル- β- フェニルヒドラジンとアスコルビン酸との組合せのような脂肪族カルボン酸アリールヒドラジドとアスコルビン酸との組合せ;ポリヒドロキシベンゼンと、ヒドロキシルアミン、レダクトンおよび/またはヒドラジンの組合せ(例えばハイドロキノンと、ビス(エトキシエチル) ヒドロキシルアミン、ピペリジノヘキソースレダクトンまたはホルミル-4- メチルフェニルヒドラジンの組合せなど) ;フェニルヒドロキサム酸、p-ヒドロキシフェニルヒドロキサム酸およびβ- アリニンヒドロキサム酸などのヒドロキサム酸;アジンとスルホンアミドフェノールとの組合せ(例えば、フェノチアジンと2,6-ジクロロ-4- ベンゼンスルホンアミドフェノールなど) ;エチル- α- シアノ-2- メチルフェニルアセテート、エチル- α- シアノフェニルアセテートなどのα- シアノフェニル酢酸誘導体;2,2-ジヒドロキシ-1,1- ビナフチル、6,6-ジブロモ-2,2- ジヒドロキシ-1,1- ビナフチルおよびビス(2- ヒドロキシ-1- ナフチル) メタンに例示されるようなビス- β- ナフトール;ビス- β- ナフトールと1,3-ジヒドロキシベンゼン誘導体(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノンまたは2,4-ジヒドロキシアセトフェノンなど) の組合せ;3-メチル-1- フェニル-5- ピラゾロンなどの、5-ピラゾロン;ジメチルアミノヘキソースレダクトン、アンヒドロジヒドロアミノヘキソースレダクトンおよびアンヒドロジヒドロピペリドンヘキソースレダクトンに例示されるようなレダクトン;2,6-ジクロロ-4- ベンゼンスルホンアミドフェノールおよびp-ベンゼンスルホンアミドフェノールなどのスルホンアミドフェノール還元剤;2-フェニルインダン-1,3- ジオンなど; 2,2- ジメチル-7-t- ブチル-6- ヒドロキシクロマンなどのクロマン;2,6-ジメトキシ-3,5- ジカルボエトキシ-1,4- ジヒドロピリジンなどの1,4-ジヒドロピリジン;ビスフェノール(例えば、ビス(2- ヒドロキシ-3-t- ブチル-5- メチルフェニル) メタン、2,2-ビス(4- ヒドロキシ-3- メチルフェニル) プロパン、4,4-エチリデン- ビス(2-t- ブチル-6- メチルフェノール) 、1,1,- ビス(2- ヒドロキシ-3,5- ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサンおよび2,2-ビス(3,5- ジメチル-4- ヒドロキシフェニル) プロパンなど) ;アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸1-アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルなど) ;ならびにベンジルおよびビアセチルなどのアルデヒドおよびケトン;3-ピラゾリドンおよびある種のインダン-1,3- ジオン;クロマノール(トコフェロールなど) などがある。特に好ましい還元剤としては、ビスフェノール、クロマノールである。
【0112】
前述の成分に加えて、画像を向上させる「色調剤」として知られる添加剤を含むと有利になることがある。例えば、色調剤材料は全銀保持成分の0.1 〜10重量%の量で存在してよい。色調剤は、米国特許第3,080,254 号、同第3,847,612 号および同第4,123,282 号に示されるように、写真技術において周知の材料である。
【0113】
色調剤の例は、フタルイミドおよびN-ヒドロキシフタルイミド;スクシンイミド、ピラゾリン-5- オン、ならびにキナゾリノン、3-フェニル-2- ピラゾリン-5- オン、1-フェニルウラゾール、キナゾリンおよび2,4-チアゾリジンジオンのような環状イミド;ナフタルイミド(例えば、N-ヒドロキシ-1,8- ナフタルイミド) ;コバルト錯体(例えば、コバルトヘキサミントリフルオロアセテート) ;3-メルカプト-1,2,4- トリアゾール、2,4-ジメルカプトピリミジン、3-メルカプト-4,5--ジフェニル-1,2,4- トリアゾールおよび2,5-ジメルカプト-1,3,4- チアジアゾールに例示されるメルカプタン;N-(アミノメチル) アリールジカルボキシイミド、(例えば、(N,N- ジメチルアミノメチル) フタルイミドおよびN,N-(ジメチルアミノメチル)-ナフタレン-2,3- ジカルボキシイミド) ;ならびにブロック化ピラゾール、イソチウロニウム誘導体およびある種の光退色剤(例えば、N,N-ヘキサメチレンビス(1- カルバモイル-3,5- ジメチルピラゾール) 、1,8-(3,6- ジアザオクタン) ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート) および2-トリブロモメチルスルホニル)-(ベンゾチアゾール));ならびに3-エチル-5〔(3- エチル-2- ベンゾチアゾリニリデン)-1-メチルエチリデン〕-2- チオ-2,4- オキサゾリジンジオン;フタラジノン、フタラジノン誘導体もしくは金属塩、または4-(1- ナフチル) フタラジノン、6-クロロフタラジノン、5,7-ジメトキシフタラジノンおよび2,3-ジヒドロ-1,4- フタラジンジオンなどの誘導体;フタラジノンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など) との組合せ;フタラジン、フタラジン誘導体もしくは金属塩、または4-(1- ナフチル) フタラジン、6-クロロフタラジン、5,7-ジメトキシフタラジンおよび2,3-ジヒドロフタラジンなどの誘導体;フタラジンとフタル酸誘導体(例えば、フタル酸、4-メチルフタル酸、4-ニトロフタル酸およびテトラクロロ無水フタル酸など) との組合せ;キナゾリンジオン、ベンズオキサジンまたはナフトオキサジン誘導体;色調調節剤としてだけでなくその場でハロゲン化銀生成のためのハライドイオンの源としても機能するロジウム錯体、例えばヘキサクロロロジウム(III) 酸アンモニウム、臭化ロジウム、硝酸ロジウムおよびヘキサクロロロジウム(III) 酸カリウムなど;無機過酸化物および過硫酸塩、例えば、過酸化二硫化アンモニウムおよび過酸化水素;1,3-ベンズオキサジン-2,4- ジオン、8- メチル-1,3- ベンズオキサジン-2,4- ジオンおよび6-ニトロ-1,3- ベンズオキサジン-2,4- ジオンなどのベンズオキサジン-2,4- ジオン;ピリミジンおよび不斉- トリアジン(例えば、2,4-ジヒドロキシピリミジン、2-ヒドロキシ-4- アミノピリミジンなど) 、アザウラシル、およびテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6-ジメルカプト-1,4- ジフェニル-1H,4H-2,3a,5,6a- テトラアザペンタレン、および1,4-ジ(o- クロロフェニル)-3,6-ジメルカプト-1H,4H-2,3a,5,6a- テトラアザペンタレン) などがある。
【0114】
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
【0115】
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでも良いが、Ar-SM 、Ar-S-S-Ar で表されるものが好ましい。式中、M は水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレニウムまたはテルリウム原子を有する芳香環または縮合芳香環である。好ましくは、複素芳香環はベンズイミダゾール、ナフスイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンズオキサゾール、ナフスオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香環は、例えば、ハロゲン(例えば、BrおよびCl) 、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルキル(例えば、1 個以上の炭素原子、好ましくは1 〜4 個の炭素原子を有するもの) およびアルコキシ(例えば、1 個以上の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの) からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物をとしては、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプト-5- メチルベンズイミダゾール、6-エトキシ-2- メルカプトベンゾチアゾール、2,2'- ジチオビス-(ベンゾチアゾール、3-メルカプト-1,2,4- トリアゾール、4,5-ジフェニル-2- イミダゾールチオール、2-メルカプトイミダゾール、1-エチル-2- メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトキノリン、8-メルカプトプリン、2-メルカプト-4(3H)- キナゾリノン、7-トリフルオロメチル-4- キノリンチオール、2,3,5,6-テトラクロロ-4- ピリジンチオール、4-アミノ-6- ヒドロキシ-2- メルカプトピリミジンモノヒドレート、2-アミノ-5- メルカプト-1,3,4- チアジアゾール、3-アミノ-5- メルカプト-1,2,4- トリアゾール、4-ヒドキロシ-2- メルカプトピリミジン、2-メルカプトピリミジン、4,6-ジアミノ-2- メルカプトピリミジン、2-メルカプト-4- メチルピリミジンヒドロクロリド、3-メルカプト-5- フェニル-1,2,4- トリアゾール、2-メルカプト-4- フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0116】
これらのメルカプト化合物の添加量としては乳剤層中に銀1 モル当たり0.001 〜1.0 モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは、銀の1 モル当たり0.01〜0.3 モルの量である。
【0117】
本発明における感光材料は画像形成層の付着防止などの目的で表面保護層を設けることができる。表面保護層としては、いかなる付着防止材料を使用してもよい。付着防止材料の例としては、ワックス、シリカ粒子、スチレン含有エラストマー性ブロックコポリマー(例えば、スチレン- ブタジエン- スチレン、スチレン- イソプレン- スチレン) 、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネートやこれらの混合物などがある。
【0118】
本発明における乳剤層もしくは乳剤層の保護層には、米国特許第3,253,921 号、同第2,274,782 号、同第2,527,583 号および同第2,956,879 号に記載されているような光吸収物質およびフィルター染料を使用することができる。また、例えば米国特許第3,282,699 号に記載のように染料を媒染することができる。フィルター染料の使用量としては露光波長での吸光度が0.1 〜3 が好ましく、0.2 〜1.5 が特に好ましい。
【0119】
本発明における乳剤層もしくは乳剤層の保護層には、艶消剤、例えばデンプン、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、米国特許第2,992,101 号および同第2,701,245 号に記載された種類のビーズを含むポリマービーズなどを含有させることができる。また、乳剤面のマット度は星屑故障が生じなければいかようでも良いが、ベック平滑度が100 秒以上10000 秒以下が好ましく、特に1000秒以上10000 秒以下が好ましい。
【0120】
本発明における乳剤層のバインダーとしては、よく知られている天然または合成樹脂、例えば、ゼラチン、ポリビニルアセタール、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートなどから任意のものを選択することができる。当然ながら、コポリマーおよびターポリマーも含まれる。好ましいポリマーは、ポリビニルブチラール、ブチルエチルセルロース、メタクリレートコポリマー、無水マレイン酸エステルコポリマー、ポリスチレンおよびブタジエン- スチレンコポリマーである。必要に応じて、これらのポリマーを2種またはそれ以上組合せて使用することができる。そのようなポリマーは、成分をその中に保持するのに十分な量で使用される。すなわち、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で使用される。効果的な範囲は、当業者が適切に決定することができる。少なくとも有機銀塩を保持する場合の目安として、バインダー対有機銀塩の割合は、15:1 〜1 :2 、特に8 :1 〜1 :1 の範囲が好ましい。
【0121】
本発明における熱現像感光材料は、前述のように、支持体の一方の側に少なくとも1 層のハロゲン化銀乳剤を含む感光層を有し、他方の側にバッキング層を有する、いわゆる片面感光材料であることが好ましい。
【0122】
本発明において片面感光材料は、搬送性改良のためにマット剤を添加しても良い。マット剤は、一般に水に不溶性の有機または無機化合物の微粒子である。マット剤としては任意のものを使用でき、例えば米国特許第1,939,213 号、同第2,701,245 号、同第2,322,037 号、同第3,262,782 号、同第3,539,344 号、同第3,767,448 号等の各明細書に記載の有機マット剤、同第1,260,772 号、同第2,192,241 号、同第3,257,206 号、同第3,370,951 号、同第3,523,022 号、同第3,769,020 号等の各明細書に記載の無機マット剤など当業界で良く知られたものを用いることができる。例えば具体的にはマット剤として用いることのできる有機化合物の例としては、水分散性ビニル重合体の例としてポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル- α- メチルスチレン共重合体、ポリスチレン、スチレン- ジビニルベンゼン共重合体、ポリビニルアセテート、ポリエチレンカーボネート、ポリテトラフルオロエチレンなど、セルロース誘導体の例としてはメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなど、澱粉誘導体の例としてカルボキシ澱粉、カルボキシニトロフェニル澱粉、尿素- ホルムアルデヒド- 澱粉反応物など、公知の硬化剤で硬化したゼラチンおよびコアセルベート硬化して微少カプセル中空粒体とした硬化ゼラチンなど好ましく用いることができる。無機化合物の例としては二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、公知の方法で減感した塩化銀、同じく臭化銀、ガラス、珪藻土などを好ましく用いることができる。上記のマット剤は必要に応じて異なる種類の物質を混合して用いることができる。マット剤の大きさ、形状に特に限定はなく、任意の粒径のものを用いることができる。本発明の実施に際しては0.1 μm 〜30μm の粒径のものを用いるのが好ましい。また、マット剤の粒径分布は狭くても広くても良い。一方、マット剤は感光材料のヘイズ、表面光沢に大きく影響することから、マット剤作製時あるいは複数のマット剤の混合により、粒径、形状および粒径分布を必要に応じた状態にすることが好ましい。
【0123】
本発明においてバッキング層のマット度としてはベック平滑度が250 秒以下10秒以上が好ましく、さらに好ましくは180 秒以下50秒以上である。
【0124】
本発明において、マット剤は感光材料の最外表面層もしくは最外表面層として機能する層、あるいは外表面に近い層に含有されるのが好ましく、またいわゆる保護層として作用する層に含有されることが好ましい。
【0125】
本発明においてバッキング層の好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマーおよびコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール) 、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン) 、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸) 、ポリ(メチルメタクリル酸) 、ポリ(塩化ビニル) 、ポリ(メタクリル酸) 、コポリ(スチレン- 無水マレイン酸) 、コポリ(スチレン- アクリロニトリル) 、コポリ(スチレン- ブタジエン) 、ポリ(ビニルアセタール) 類(例えば、ポリ(ビニルホルマール) およびポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル) 類、ポリ(ウレタン) 類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン) 、ポリ(エポキシド) 類、ポリ(カーボネート) 類、ポリ(ビニルアセテート) 、セルロースエステル類、ポリ(アミド) 類がある。バインダーは水または有機溶媒またはエマルションから被覆形成してもよい。
【0126】
本発明においてバッキング層は、露光波長での最大吸収が0.3 以上2 以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5 以上2 以下の吸収であり、かつ処理後の可視領域においての吸収が0.001 以上0.5 未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.001 以上0.3 未満の光学濃度を有するハレーション防止層であることが好ましい。
【0127】
本発明でハレーション防止染料を使用する場合、このような染料は露光波長の範囲で目的の吸収を有し、処理後の可視領域での吸収が充分少なく、上記バッキング層の好ましい吸光度スペクトルの形状が得られればいかなる化合物でも良い。例えば、特開平7-13295 号、米国特許第5,380,635 号記載の化合物、特開平2-68539 号公報第13頁左下欄1 行目から同第14頁左下欄9 行目、同3-24539 号公報第14頁左下欄から同第16頁右下欄記載の化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0128】
米国特許第4,460,681 号および同第4,374,921 号に示されるような裏面抵抗性加熱層(backside resistive heating layer)を本発明のような感光性熱現像写真画像系に使用することもできる。
【0129】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤または有機銀塩は、カブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体によって、付加的なカブリの生成に対して更に保護され、在庫貯蔵中における感度の低下に対して安定化することができる。単独または組合せて使用することができる適当なカブリ防止剤、安定剤および安定剤前駆体は、米国特許第2,131,038 号および同第2,694,716 号に記載のチアゾニウム塩、米国特許第2,886,437 号および同第2,444,605 号に記載のアザインデン、米国特許第2,728,663 号に記載の水銀塩、米国特許第3,287,135 号に記載のウラゾール、米国特許第3,235,652 号に記載のスルホカテコール、英国特許第623,448 号に記載のオキシム、ニトロン、ニトロインダゾール、米国特許第2,839,405 号に記載の多価金属塩、米国特許第3,220,839 号に記載のチウロニウム塩、ならびに米国特許第2,566,263 号および同第2,597,915 号に記載のパラジウム、白金および金塩、米国特許第4,108,665 号および同第4,442,202 号に記載のハロゲン置換有機化合物、米国特許第4,128,557 号および同第4,137,079 号、第4,138,365 号および同第4,459,350 号に記載のトリアジンならびに米国特許第4,411,985 号に記載のリン化合物などがある。
【0130】
本発明における感光層には、可塑剤および潤滑剤として多価アルコール(例えば、米国特許第2,960,404 号に記載された種類のグリセリンおよびジオール) 、米国特許第2,588,765 号および同第3,121,060 号に記載の脂肪酸またはエステル、英国特許第955,061 号に記載のシリコーン樹脂などを用いることができる。
【0131】
本発明の感光層、保護層、バック層など各層には硬膜剤を用いても良い。硬膜剤の例としては、米国特許第4,281,060 号、特開平6-208193号などに記載されているポリイソシアネート類、米国特許第4,791,042 号などに記載されているエポキシ化合物類、特開昭62-89048号などに記載されているビニルスルホン系化合物類などが用いられる。
【0132】
本発明には塗布性、帯電改良などを目的として界面活性剤を用いても良い。界面活性剤の例としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、フッ素系などいかなるものも適宜用いられる。具体的には、特開昭62-170950 号、米国特許第5,382,504 号などに記載のフッ素系高分子界面活性剤、特開昭60-244945 号、特開昭63-188135 号などに記載のフッ素系界面活性剤、米国特許第3,885,965 号などに記載のポリシロキ酸系界面活性剤、特開平6-301140号などに記載のポリアルキレンオキサイドやアニオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0133】
本発明にはヒドラジン誘導体を使用しても良い。本発明にヒドラジン誘導体を使用する場合は、特願平6-47961 号に記載の一般式(I) の化合物が用いられる。具体的には、同明細書に記載のI-1 〜I-53で表される化合物が用いられる。
【0134】
また下記のヒドラジン誘導体も好ましく用いられる。
特公平6-77138 号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3 頁、4 頁に記載の化合物。特公平6-93082 号に記載の一般式(I) で表される化合物で、 具体的には同公報8 頁〜18頁に記載の1 〜38の化合物。特開平6-230497号に記載の一般式(4) 、 一般式(5) および一般式(6) で表される化合物で、 具体的には同公報25頁、 26頁に記載の化合物4-1 〜化合物4-10、 28頁〜36頁に記載の化合物5-1 〜5-42、 および39頁、 40頁に記載の化合物6-1 〜化合物6-7 。特開平6-289520号に記載の一般式(1) および一般式(2) で表される化合物で、 具体的には同公報5 頁〜7 頁に記載の化合物1-1)〜1-17) および2-1) 。特開平6-313936号に記載の(化2)および(化3)で表される化合物で、具体的には同公報6 頁〜19頁に記載の化合物。特開平6-313951号に記載の(化1)で表される化合物で、具体的には同公報3 頁〜5 頁に記載の化合物。特開平7-5610号に記載の一般式(I) で表される化合物で、具体的には同公報5 頁〜10頁に記載の化合物I-1 〜I-38。特開平7-77783 号に記載の一般式(II)で表される化合物で、具体的には同公報10頁〜27頁に記載の化合物II-1〜II-102。特開平7-104426号に記載の一般式(H) および一般式(Ha)で表される化合物で、具体的には同公報8 頁〜15頁に記載の化合物H-1 〜H-44。特願平7ー191007号に記載のヒドラジン基の近傍にアニオン性基またはヒドラジンの水素原子と分子内水素結合を形成するノニオン性基を有することを特徴とする化合物で、特に一般式(A) 、一般式(B) 、一般式(C) 、一般式(D) 、一般式(E) 、一般式(F) で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物N-1 〜N-30。特願平7ー191007号に記載の一般式(1) で表される化合物で、具体的には同公報に記載の化合物D-1 〜D-55。
【0135】
本発明にヒドラジン系造核剤を使用する場合は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール) 、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン) 、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブなどに溶解して用いることができる。
【0136】
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。あるいは固体分散法として知られている方法によって、ヒドラジン誘導体の粉末を水の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることができる。
【0137】
本発明にヒドラジン系造核剤を使用する場合は、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層(感光層)側の層、すなわちハロゲン化銀乳剤層あるいは他の親水性コロイド層のどの層に添加してもよいが、ハロゲン化銀乳剤層あるいはそれに隣接する親水性コロイド層に添加することが好ましい。
【0138】
本発明の造核剤添加量はハロゲン化銀1 モルに対し1 μモル〜10m モルが好ましく、10μモル〜5mモルがより好ましく、20μモル〜5mモルが最も好ましい。
【0139】
本発明を実施するために必要ではないが、乳剤層にカブリ防止剤として水銀(II)塩を加えることが有利なことがある。この目的に好ましい水銀(II)塩は、酢酸水銀および臭化水銀である。
【0140】
本発明における熱現像用写真乳剤は、種々の支持体上に被覆させることができる。典型的な支持体は、ポリエステルフィルム、下塗りポリエステルフィルム、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、硝酸セルロースフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリ(ビニルアセタール)フィルム、ポリカーボネートフィルムおよび関連するまたは樹脂状の材料、ならびにガラス、紙、金属などを含む。可撓性基材、特に、部分的にアセチル化された、もしくはバライタおよび/またはα- オレフィンポリマー、特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ブテンコポリマーなどの炭素数2 〜10のα- オレフィンのポリマーによりコートされた紙支持体が、典型的に用いられる。支持体は透明であっても不透明であってもよいが、透明であることが好ましい。
【0141】
本発明における感光材料は、帯電防止または導電性層、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩など) 、蒸着金属層、米国特許第2,861,056 号および同第3,206,312 号に記載のようなイオン性ポリマーまたは米国特許第3,428,451 号に記載のような不溶性無機塩などを含む層などを有してもよい。
【0142】
本発明における熱現像感光材料を用いてカラー画像を得る方法としては特開平7-13295 号10頁左欄43行目から11左欄40行目に記載の方法がある。また、カラー染料画像の安定剤としては英国特許第1,326,889 号、米国特許第3,432,300 号、同第3,698,909 号、同第3,574,627 号、同第3,573,050 号、同第3,764,337 号および同第4,042,394 号に例示されている。
【0143】
本発明における熱現像写真乳剤は、浸漬コーティング、エアナイフコーティング、フローコーティングまたは、米国特許第2,681,294 号に記載の種類のホッパーを用いる押出コーティングを含む種々のコーティング操作により被覆することができる。所望により、米国特許第2,761,791 号および英国特許第837,095 号に記載の方法により2層またはそれ以上の層を同時に被覆することができる。
【0144】
本発明における熱現像感光材料の中に追加の層、例えば移動染料画像を受容するための染料受容層、反射印刷が望まれる場合の不透明化層、保護トップコート層および光熱写真技術において既知のプライマー層などを含むことができる。本発明の感光材料はその感材一枚のみで画像形成できることが好ましく、受像層等の画像形成に必要な機能性層が別の感材とならないことが好ましい。
【0145】
本発明の感光材料はいかなる方法で現像されても良いが、通常イメージワイズに露光した感光材料を昇温して現像される。好ましい現像温度としては80〜250 ℃であり、さらに好ましくは100 〜140 ℃である。現像時間としては1 〜180 秒が好ましく、10〜90秒がさらに好ましい。
【0146】
本発明の感光材料はいかなる方法で露光されても良いが、露光光源としてレーザー光が好ましい。本発明によるレーザー光としては、ガスレーザー、YAG レーザー、色素レーザー、半導体レーザーなどが好ましい。また、半導体レーザーと第2高調波発生素子などを用いることもできる。
【0147】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【0148】
実施例1
《ハロゲン化銀粒子の調製》
水700ml にフタル化ゼラチン22g および臭化カリウム30mgを溶解して温度35℃にてpHを5.0 に合わせた後、硝酸銀18.6g および硝酸アンモニウム0.9g を含む水溶液159ml と臭化カリウムおよび沃化カリウムを92:8のモル比で含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で10分間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.4g および硝酸アンモニウム2g を含む水溶液476ml および六塩化イリジウム酸二カリウムを8μモル/ リットルと臭化カリウムを1モル/ リットルで含む水溶液pAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で30分間かけて添加した後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン1g を添加し、さらにpHを下げて凝集沈降させ脱塩処理をした。その後、フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9 、pAg8.2に調整し沃臭化銀粒子(沃素含量コア8 モル%、平均2 モル%、平均サイズ0.05μm 、投影面積変動係数8 %、[100] 面比率86%の立方体粒子) の調製を終えた。
【0149】
こうして得たハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1 モル当たりチオ硫酸ナトリウム85μモルと2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニルジフェニルフォスフィンセレニドを11μモル、15μモルのテルル化合物1 、塩化金酸3.5 μモル、チオシアン酸270 μモルを添加し、120 分間熟成した後30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤を得た。
【0150】
《有機酸銀乳剤の調製》
ステアリン酸7g、アラキジン酸4g、ベヘン酸36g 、蒸留水850ml を90℃で激しく攪拌しながら1N-NaOH 水溶液187ml を添加し60分反応させ、1N−硝酸65mlを添加した後、50℃に降温した。次いで、より激しく攪拌しながらN-ブロモスクシンイミド0.7gを添加し、10分後にあらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をハロゲン化銀量が6.2mモルとなるように添加した。さらに、硝酸銀21g の水溶液125ml を100 秒かけて添加し、そのまま10分間攪拌し続け、N-ブロモスクシンイミド0.6gを添加しさらに10分放置した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS /cmになるまで水洗した。こうして得た固形分にポリ酢酸ビニルの0.6 重量%の酢酸ブチル溶液150gを加え攪拌し、攪拌を止めて放置し油層と水層に分離させ含まれる塩と共に水層を除去し油層を得た。次に、この油層にポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000-K)の2.5 wt%2-ブタノン溶液80g を添加し攪拌した。さらに、過臭化臭化ピリジニウム0.1mモルと臭化カルシウム二水和物0.16m モルを0.7gメタノールとともに添加した後、2-ブタノン200gとポリビニルブチラール(モンサント社製BUTVARTMB-76) の59g を添加しホモジナイザーで分散し、有機酸銀塩乳剤(平均短径0.04μm 、平均長径1 μm 、変動係数30%の針状粒子) を得た。
【0151】
《乳剤層塗布液の調製》
上記で得た有機酸銀乳剤に銀1 モル当たり以下の量となるように各薬品を添加した。25℃でフェニルチオスルホン酸ナトリウム10mg、80mgの比較色素1、2-メルカプト-5- メチルベンゾイミダゾール2g、4-クロロベンゾフェノン-2- カルボン酸21.5g と2-ブタノン580g、ジメチルホルムアミド220gを攪拌しながら添加し3 時間放置した。ついで、5-トリブロモメチルスルフォニル-2- メチルチアジアゾール8g、2-トリブロモメチルスルフォニルベンゾチアゾール6g、4,6-ジトリクロロメチル-2- フェニルトリアジン5g、ジスルフィド化合物1 を2g、1,1-ビス(2- ヒドロキシ-3,5- ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン155g、赤外染料1g 、メガファックスF-176P(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤)1.1g 、2-ブタノン590g、メチルイソブチルケトン10g を攪拌しながら添加した。
【0152】
《乳剤面保護層塗布液》
CAB171-15S(イーストマンケミカル(株)製酢酸酪酸セルロース)75g、4'- メチルフタル酸5.7g、テトラクロロフタル酸無水物1.5g、フタラジン12.5g 、テトラクロロフタル酸5.1g、0.3gのメガファックスF-176P、シルデックスH31(洞海化学社製真球状シリカ平均サイズ3 μm)2g、sumidur N3500(住友バイエルウレタン社製ポリイソシアネート) 6gを2-ブタノン3070g と酢酸エチル30g に溶解したものを調製した。
【0153】
《バック面塗布液》
カルシウム化合物1を以下のように合成した。0.08モルの3,5−ジ−tert−ブチルカテコールを含有するエタノール溶液1リットルに0.019モルの塩化カルシウムを含有する水溶液167mlと25%のアンモニア水125mlを添加し室温で3時間空気を吹き込んでビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−o−ベンゾキノンモノイミン)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノラト]カルシウム(II)の結晶(カルシウム化合物1)を析出させた。
【0154】
ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製デンカブチラール#4000−2)12g 、CAB381−20(イーストマンケミカル(株)製酢酸酪酸セルロース)12g 、120mgの染料1、292mgのカルシウム化合物1、342mgの染料2、5mgの染料3、シルデックスH121(洞海化学社製真球状シリカ平均サイズ12μm )0.4g 、シルデックスH51(洞海化学社製真球状シリカ平均サイズ5μm )0.4g 、2g のX−22−2809(信越シリコーン(株)製シリコーン化合物)、0.1g のメガファックスF−176P、2g のsumidur N3500 を酢酸エチル500g 、2−プロパノール500g に攪拌しながら添加し、溶解および混合させた。
【0155】
上記のように調製した乳剤層塗布液を青色染料で色味づけした175μm ポリエチレンテレフタレート支持体上に銀が2.3g/m2となるように塗布した後、乳剤層と反対の面上にバック面塗布液を810nmの光学濃度0.7となるように塗布した。さらに、乳剤面上に乳剤面保護層塗布液を乾燥厚さ2μm となるように塗布し感光材料1を得た。こうして得られた感光材料1の平滑度(J.TAPPI紙パルプ試験法No. 5記載の王研式平滑度測定を用いベック平滑度を調べた)は乳剤面1000秒、バック面80秒であった。
【0156】
なお、上記において用いた化合物は以下に示すものである。
【0157】
【化31】
【0158】
感光材料1用の乳剤層塗布液において、比較色素1の代わりに表1に示す色素を等モル量添加した各塗布液を調製し、これらの塗布液を各々用いる他は感光材料1と同様にして感光材料2、4、5を得た。
【0159】
これらの感光材料1、2、4、5に対し、以下の評価を行った。
【0160】
(写真性能の評価)
820nm ダイオードを備えたレーザー感光計で感光材料を露光した後、感光材料を120 ℃で15秒間処理(現像) し、得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、Dmin、感度(Dmin より1.0 高い濃度を与える露光量の比の逆数) で評価した(フレッシュ(fresh) 性能)。ただし、感度については感光材料1の感度を100とした。
【0161】
(経時保存性の評価)
各感光材料を25℃-50%RHの条件下1日放置し、感光材料それぞれ10枚ずつを防湿材料でできた袋の中に密閉し、さらに35.1cm×26.9cm×3.0cm の化粧箱に入れ、50℃で5日間経時した(強制経時) 。この感光材料と比較用に保存温度を4 ℃とした以外は強制経時と同様にした感光材料とを写真性能の評価と同様にしてDmin 、感度を評価した。ただし、感度は強制経時していない、感光材料1を100とした相対値で示した。
【0162】
結果を表1に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
表1から明らかなように、本発明の領域で高感度、低Dmin 、かつ経時保存性に優れることがわかる。
【0165】
実施例2
実施例1の感光材料1、3、5の乳剤層塗布液に2.5g の下記のヒドラジン化合物を添加した以外は、実施例1と全く同様に調製したものを感光材料6、7、8とし、このような硬調感光材料に対し、以下のような評価を行った。
【0166】
【化32】
【0167】
(硬調感光材料の写真性能の評価)
820nm半導体レーザー感光計で感光材料を露光した後、感光材料を112 ℃で25秒間処理(現像) し、さらに現像後の感光材料をハロゲンランプで15秒照射しバック染料を消色させた。こうして得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、Dmin、感度(Dmin より3.0 高い濃度を与える露光量の比の逆数) で評価した。また、特性曲線で濃度0.3 と3.0 の点を結ぶ直線の傾きを階調γとして示した。
【0168】
ここで感度は感光材料6を100としたときの相対値で示した。
【0169】
結果を表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
表2から明らかなように、本発明の領域で硬調、高感度、低Dmin であることがわかる。
【0172】
なお、感光材料6、7、8について、実施例1と同様にして保存性を評価したところ、用いた増感色素に応じ、実施例1の感光材料3、5と同様の傾向を示し、本発明の感光材料7、8は保存性に優れることがわかった。
【0173】
実施例3
《ハロゲン化銀粒子の調製》
水700ml にフタル化ゼラチン22g および臭化カリウム30mgを溶解して温度35℃にてpHを5.0 に合わせた後、硝酸銀18.6g および硝酸アンモニウム0.9g を含む水溶液159ml と臭化カリウムと沃化カリウムを92:8のモル比で含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で10分間かけて添加した。ついで、硝酸銀55.4g および硝酸アンモニウム2g を含む水溶液476ml と六塩化イリジウム酸二カリウムを11μモル/ リットルと臭化カリウムを1モル/ リットルで含む水溶液をpAg7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で30分間かけて添加した後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン1g を添加し、さらにpHを下げて凝集沈降させ脱塩処理をした。その後、フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9 、pAg8.2に調整し沃臭化銀粒子(沃素含量コア8 モル%、平均2 モル%、平均サイズ0.05μm 、投影面積変動係数8 %、[100] 面比率88%の立方体粒子) の調製を終えた。
【0174】
こうして得たハロゲン化銀粒子を60℃に昇温して銀1 モル当たりチオ硫酸ナトリウム85μモルと2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニルジフェニルフォスフィンセレニドを11μモル、15μモルのテルル化合物、塩化金酸3μモル、チオシアン酸200 μモルを添加し、120 分間熟成した後30℃に急冷してハロゲン化銀乳剤を得た。
【0175】
《有機酸銀乳剤の調製》
ステアリン酸7g、アラキジン酸4g、ベヘン酸36g 、蒸留水850ml を90℃で激しく攪拌しながら1N-NaOH 水溶液187ml を添加し60分反応させ、1N−硝酸65mlを添加した後、50℃に降温した。次いで、より激しく攪拌しながらN-ブロモスクシンイミド0.6gを添加し、10分後にあらかじめ調製したハロゲン化銀粒子をハロゲン化銀量が6.2mモルとなるように添加した。さらに、硝酸銀21g の水溶液125ml を100 秒かけて添加し、そのまま10分間攪拌し続け、N-ブロモスクシンイミド0.4gを添加しさらに10分放置した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を濾水の伝導度が30μS /cmになるまで水洗した。こうして得た固形分にポリ酢酸ビニルの0.6 重量%の酢酸ブチル溶液150gを加え攪拌し、攪拌を止めて放置し油層と水層に分離させ含まれる塩と共に水層を除去し油層を得た。次に、この油層にポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製デンカブチラール#3000-K)の2.5 wt%2-ブタノン溶液80g を添加し攪拌した。さらに、過臭化臭化ピリジニウム0.1mモルと臭化カルシウム二水和物0.16m モルを0.7gメタノールとともに添加した後、2-ブタノン200gとポリビニルブチラール(モンサント社製BUTVARTMB-76) の56g を添加しホモジナイザーで分散し、有機酸銀塩乳剤(平均短径0.04μm 、平均長径1 μm 、変動係数30%の針状粒子) を得た。
【0176】
《乳剤層塗布液の調製》
上記で得た有機酸銀乳剤に銀1 モル当たり以下の量となるように各薬品を添加した。25℃でフェニルチオスルホン酸ナトリウム10mg、75mgの比較色素2、2-メルカプト-5- メチルベンゾイミダゾール2g、4-クロロベンゾフェノン-2- カルボン酸21.5g と2-ブタノン580g、ジメチルホルムアミド220gを攪拌しながら添加した。ついで、5-トリブロモメチルスルフォニル-2- メチルチアジアゾール8g、2-トリブロモメチルスルフォニルベンゾチアゾール6g、4,6-ジトリクロロメチル-2- フェニルトリアジン5g、ジスルフィド化合物を2g、1,1-ビス(2- ヒドロキシ-3,5- ジメチルフェニル)-3,5,5-トリメチルヘキサン150g、メガファックスF-176P(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤)1.1g 、2-ブタノン590g、メチルイソブチルケトン10g を攪拌しながら添加した。
【0177】
《乳剤面保護層塗布液》
CAB171-15S(イーストマンケミカル(株)製酢酸酪酸セルロース)75g、4'- メチルフタル酸5.7g、テトラクロロフタル酸無水物1.5g、フタラジン12.8g 、テトラクロロフタル酸5.1g、0.3gのメガファックスF-176P、シルデックスH31(洞海化学社製真球状シリカ平均サイズ3 μm)2g、sumidur N3500(住友バイエルウレタン社製ポリイソシアネート) 5.9gを2-ブタノン3070g と酢酸エチル30g に溶解したものを調製した。
【0178】
《バック面塗布液》
固体塩基であるトリシクロヘキシルグアニジン12g 、ポリビニルアルコール1.6g 、水27g を1/16Gサンドグラインダーミル(アイメックス(株)製)で分散し塩基液を得た。
【0179】
塩基性染料前駆体2g 、酸性物質2g 、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの3:1付加物18g 、フタル酸ジブチル24g 、20mgの染料2、酢酸エチル5g を混合溶解した有機溶媒相をポリビニルアルコール5.2g および水58g からなる水溶液相に混合し、常温で乳化分散した(平均粒径2.5μm )。この乳化液に水100g を加え、攪拌しながら60℃まで昇温し、2時間放置して着色マイクロカプセル液を得た。
【0180】
塩基液20g 、着色マイクロカプセル液20g 、ゼラチン21g 、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8g 、1,3−ジビニルスルホン−2−プロパノール0.6g を混合しバック面塗布液を得た。
【0181】
ゼラチン10g 、ポリメチルメタクリレート(平均粒径7μm )0.6g 、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4g 、0.2g のX−22−2809(信越シリコーン(株)製シリコーン化合物)を水500g に溶解しバック面保護層塗布液を得た。
【0182】
《熱現像感光材料の調製》
片面が塩化ビニリデンを含む防湿下塗りであり、他方の面がゼラチン下塗りである175μm のポリエチレンテレフタレート支持体の塩化ビニリデン下塗り側に上記のように調製した乳剤層塗布液を銀が2.3g/m2となるように塗布した後、乳剤層と反対の面上に650nmの光学濃度0.5となる塗布量のバック面塗布液と乾燥厚さが0.9μm となる流量のバック面保護層塗布液を同時重層塗布した。さらに、乳剤面上に乳剤面保護層塗布液を乾燥厚さ2μm となるように塗布して感光材料9を得た。こうして得られた感光材料9の平滑度(J.TAPPI紙パルプ試験法No. 5記載の王研式平滑度測定を用いベック平滑度を調べた)は乳剤面1000秒、バック面80秒であった。また、塗布試料中乳剤層塗布面の溶剤残存量をガスクロマトグラフィーで測定したところ、塗布物重量基準で40〜200ppm の2−ブタノンと40〜120ppm の酢酸ブチルが検出された。
【0183】
なお、上記において用いた化合物は以下に示すとおりである。
【0184】
【化33】
【0185】
感光材料9の調製において、比較色素2の代わりに表3に示すものを各々等モル量添加した塗布液を用いる他は同様にして感光材料10〜12を得た。
【0186】
こうして得られた感光材料9〜12を633nmHe-Ne レーザー感光計を用いた以外は実施例1と同様の評価をした。なお、感度は強制経時していない感光材料9を100とした相対値で示した。
【0187】
結果を表3に示す。
【0188】
【表3】
【0189】
表3から明らかなように、本発明の領域で高感度、低Dmin 、かつ経時保存性に優れることがわかる。
【0190】
【発明の効果】
本発明によれば、高感度で低カブリであり、保存性に優れた熱現像感光材料が得られる。
Claims (1)
- 支持体上の少なくとも一方に、感光性ハロゲン化銀粒子、非感光性有機銀塩、銀イオン用還元剤およびバインダーを有する熱現像感光材料において、下記一般式(I)で表されるシアニン色素を含有することを特徴とする熱現像感光材料。
G 1 、G 2 、R 9 は、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アルケニル基若しくはヘテロ環基、又は前記一般式(A)中の2価の連結基L若しくは単結合を表し、これらは各々同一または異なっていてもよく、かつ、G 1 およびG 2 のうち少なくとも1つは前記一般式(A)で表される基を有する。一般式(A)中、Lは炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子の少なくとも1種を含む原子または原子団を含む2価の連結基を表し、Hetは少なくとも1個の窒素原子を含む5〜7員のヘテロ環を有する基を表し、j 2 は0または1であり、j 3 は1、2または3である。
B 1 、B 2 、B 3 、B 4 、E 1 、E 2 、E 3 、E 4 は水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、メチレンジオキシ基、カルボキシル基、スルホ基、炭素数10以下の置換、無置換のアルキル基、炭素数10以下の置換、無置換のアリール基、炭素数10以下の置換、無置換のアルコキシ基、炭素数8以下のアルキルチオ基、炭素数8以下のアリールチオ基、炭素数8以下のアシルアミノ基、炭素数8以下のアルコキシカルボニル基または炭素数10以下のアシル基を表す。
G 3 は、水素原子、フッ素原子を表す他、n 2 が1以上の場合には置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルキル基およびG 1 とアルキレン架橋し、環構成原子中に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい5員または6員環を形成してもよい。
G 4 、G 5 は水素原子、フッ素原子、置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルキル基、置換されていてもよい炭素数8以下の低級アルコキシ基、置換されていてもよい炭素数10以下のアリール基を表す他、n 2 が2以上の場合、G 3 と最近接のG 5 、または異なったG 4 とG 4 もしくはG 5 とG 5 が連結して環構成原子に酸素原子、硫黄原子または窒素原子を含んでいてもよい5員または6員環を形成してもよい。
n 1 およびn 3 は各々同一または異なっていてもよく、0または1である。n 2 は0、1、2、3または4である。
Y 1 はカチオン性基、W 1 はアニオン性基を表し、k 1 およびk 2 は0または1である。]
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