JP3714725B2 - 免震装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般住宅を含む地上構造物の免震装置に関し、特に、強風によって上記地上構造物が揺動するのを防止する免震装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
地盤側に設置した固定側部材の上面に外周に向って登り勾配となる円錐状凹部を形成し、この円錐状凹部上にスチールボールを介して、免震対象となる地上構造物を載せた可動側部材を載置した、例えば、実開昭62―204055号公報に提案される転がり支承のもの、あるいは、滑り支承のもの、さらには、積層ゴム支承のものなど、種々の免震装置が従来から提案されている。
【0003】
この従来の免震装置にあっては、地震が発生した際に、この地震によって惹起される上記スチールボールの円錐状凹部内の周辺部への転動によって、地盤の揺れが地上構造物に直接伝達されるのを防止するように機能し、地震が停止したときは上記スチールボールは上記円錐状凹部の中心に戻る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来の免震装置を一般住宅などの軽量で小形の地上構造物に採用した場合には、台風などのように大きなエネルギを持った風が吹く環境下では、その地上構造物が過大な風圧を受け、たとえば、転がり支承のものにあっては、摩擦抵抗の小さいスチールボールの上記円錐状凹部内の周辺部への転動で揺動することとなって居心地を悪くするなどの課題があった。
【0005】
一方、これに対して、地上構造物と地盤との間に、ある設定荷重を受けるまでは変形しないが、その設定荷重を超えると塑性変形する鋼棒ダンパーを介在して上記風圧による揺動を回避するものが提案されている。
【0006】
しかし、この場合には、鋼棒ダンパーが塑性変形するに至る段階までの小地震には、例えば震動4程度までは動きを一律に規制してしまい、免震効果を期待することができないという不都合があった。
【0007】
この発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、地上構造物が風に煽られて揺動するのを回避できるとともに、強風下であっても地震発生時には効果的に免震機能を果すことができる免震装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、請求項1の発明にかかる免震装置は、地盤と地上構造物との間に介装されて、地震動に対し上記地上構造物の応答の伝達を抑制する免震手段と、地盤と地上構造物との間に介装され地盤に対する地上構造物の動的結合のロックおよび該ロックの解除が可能なダンパー装置と、を有し、コントローラに上記地上構造物に作用する風速が設定値を超えた場合に上記ダンパー装置により動的結合のロックを行わせ、上記風速が設定値を超えた場合でも地震が発生したときに、上記ロックを解除させるようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明にかかる免震装置は、ダンパー装置が、シリンダ内にピストンにより隔成された2つの油室と、タンクと、ピストンに設けられ一方の油室と他方の油室とを連通する油路と、一方の油室と他方の油室とを連通する油路の途中に設けられ一方の油室から他方の油室への流れを阻止するとともに他方の油室から一方の油室への流れを許容するチェック弁と、一方の油室とタンクとを連通する油路と、一方の油室とタンクとを連通する油路の途中に設けられ該油路を開閉するソレノイドバルブと、一方の油室とタンクとを連通する油路の途中に設けられたオリフィスと、他方の油室とタンクとを連通する油路と、他方の油室とタンクとを連通する油路の途中に設けた他方の油室からタンクへの流れを阻止するとともにタンクから他方の油室への流れを許容する逆止弁と、一方の油室とタンクとを連通する油路の途中であってオリフィスより一方の油室側と他方の油室とタンクとを連通する油路と結ぶ油路の途中に設けたリリーフ弁とを備えてなることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を図面について説明すると、図1は、この発明の免震装置を示す概念図であり、同図において、1は、一般住宅などの地上構造物であり、この地上構造物1の下部には複数箇所に亘ってこの地上構造物1を平衡状態にて安定支持する可動側部材2が取り付けられている。
【0011】
これらの可動側部材2は、図示しない小径のスチールボールを介して大径のスチールボール3を転動自在に支承する球面保持具(図示しない)を有し、そのスチールボール3の一部が可動側部材2に対して下方に突出している。
【0012】
また、4は、地上構造物1が設置される地盤5上に一部が埋設施工された複数の固定側部材であり、この固定側部材4は、その上面に周辺部に向って登り勾配となる円錐状凹部6を有し、中心部が最も低くされている。
【0013】
なお、この固定側部材4は、上記可動側部材2に対応する数だけ設けられ、上記可動側部材2,スチールボール3および固定側部材4は、免震手段Mを構成している。
【0014】
また、図示しないが、上記可動側部材2には、必要に応じ可動側部材2および固定側部材4間に生じる上下方向の振動を吸収するように構成された周知の弾性機構が設けられる。
【0015】
さらに、7は、ダンパー装置であり、上記地上構造物1と地盤5との間に介装され相互間の動的結合のロックおよびそのロックの解除を行うように動作して、地上構造物1の揺動を阻止したり、この阻止の解除を行ったりするロック手段として機能し、このダンパー装置7には減衰力特性を切換制御するソレノイドバルブ8が連設されている。
【0016】
そして、9は、コントローラで、10は、地上構造物1の屋根上に設置されて風を受けたプロペラの回転により発生した発電電力を風速データとして計測する風速計であり、この風速計10が計測した風速データおよび後述の地震センサの出力データにもとづいて、上記コントローラ9が上記ソレノイドバルブ8を切換制御し、ダンパー装置7の後述のオリフィス回路を開閉制御するように構成されている。
【0017】
11は、少なくとも一つの固定側部材4に取り付けられて、地震を検出する加速度センサなどの上記の地震センサであり、この地震センサ11の出力および上記風速計10の出力が上記コントローラ9に入力可能とされている。
【0018】
図2は、上記ダンパー装置7の具体例を示す構成図であるが、このダンパー装置7は、密閉されたシリンダ15内に2つの油室18,19を隔成するピストン16を摺動自在に設け、このピストン16に一体のピストンロッド17を、シリンダ15の一端部で油密的に出入自在に突出させたものからなる。
【0019】
また、上記ピストン16にはこれを貫通する油路の途中に接続されるチェック弁20が埋設されており、油室18は、オリフィス21および上記ソレノイドバルブ8を介してタンク22に配管接続され、油室19は、チェック弁23を介してタンク22に配管接続されている。24は、油室18とタンク22との間を結ぶ配管の途中に接続されたリリーフ弁である。
【0020】
図3は、上記コントローラ9の信号処理部を示す論理回路図であり、Aは、上記風速計10の出力を一方の入力端子に受けるアンドゲートで、Iは、上記地震センサ11の出力を受けてこれを反転処理して、上記アンドゲートAの他方の入力端子に入力するインバータである。
【0021】
次に、動作について、図4のフローチャートに基づいて説明するが、まず、図示しない電源スイッチを投入する(S1)と、これにより図示しない直流あるいは交流電源部からの電力がコントローラ9に供給される。
【0022】
このため、コントローラ9は、電力を電源部に受けて動作の立ち上げが行われ、これまでの風速データおよび地震データなどの各種データのメモリをクリアする初期リセット動作を実行する(S2)。
【0023】
一方、このとき、コントローラ9は、上記風速計10および地震センサ11が出力する風速データおよび地震データを常時監視する。
【0024】
すなわち、この実施の形態では、まず、地震センサ11の出力をコントローラ9に監視させて、いま地震が発生しているか否かを判定し(S3)、地震が発生していると判定された場合には、その出力を受けて、コントローラ9がソレノイドバルブ8にその地震にもとづく信号を出力し、このソレノイドバルブ8を図2に示す連通ポジションに維持する。
【0025】
このため、オリフィス21およびタンク22を結ぶ油路がこのソレノイドバルブ8を介して互いに連通し、従って、シリンダ15の二つの油室18,19は、互いに連通し、シリンダ15におけるピストン16およびピストンロッド17の動きが自由となり、地盤5に対する地上構造物1の動的結合のロックが解除される(S4)。
【0026】
一方、コントローラ9において、地震センサ11が地震の発生を検知していないと判定された場合は、続いて、コントローラ9では上記風速計10の出力を監視して、風速が設定レベルを超える強風であるか否かを判定する(S5)。
【0027】
この判定により、風速が設定レベルを超えない無風状態や弱風状態とされた場合には、コントローラ9は、ソレノイドバルブ8に信号を出力し、これを図2に示す状態に維持して、シリンダ15の二つの油室18,19を上記同様に連通状態にする。
【0028】
このため、シリンダ15におけるピストン16およびピストンロッド17の動きが自由となり、地盤5に対する地上構造物1の動作結合のロックが引き続き解除された状態となる(S4)。
【0029】
一方、上記風速が設定レベルを超える強風と判定された場合には(S5)、コントローラ9は、ソレノイドバルブ8に信号を出力して、オリフィス21およびタンク22を結ぶ油路を遮断するようにしてこのソレノイドバルブ8を切換させる。
【0030】
このため、シリンダ15の油室18内の作動流の流入,流出および油室19内の作動油の流出がそれぞれ略停止され、シリンダ15におけるピストン16の出入動作がロックされることになる。
【0031】
この結果、強風下での地盤5に対する地上構造物の揺動を阻止することができ(S6)、すなわち、地震の発生がない場合に、地上構造物1が強風を受けたときは、上記ロックによってその地上構造物1の揺動が阻止されることになる。
【0032】
ここで、リリーフ弁24は、油室18の圧力上昇が過大になるのを阻止するように機能し、所定の減衰力を発生させて、油圧系統が過大な圧力負荷を受けて損傷するのを未然に防止することができる。
【0033】
図5は、上記のような制御動作を実行するコントローラ9における論理回路の入出力信号状態を示す真理値表図であり、ここでは、地震入力および強風入力があったとき「1」、ないとき「0」の各信号をそれぞれ入力として、ソレノイドバルブ8によるダンパー装置7をロック状態にする信号「1」あるいはアンロック状態にする信号「0」をそれぞれ出力する。
【0034】
従って、図4のフローチャートおよび図5の真理値表図に見るように、地震入力および強風入力がともにない場合には、ダンパー装置7は、アンロック状態となり、地震入力があり、このとき強風入力がない場合には、ダンパー装置7は、アンロック状態となる。
【0035】
また、地震入力がない場合であって、強風入力があった場合には、ダンパー装置7は、ロック状態となるため、強風による地上構造物の揺動を防止することができ、地震入力があった場合には、強風入力があってもダンパー装置7をアンロック状態にして、強風時における免震動作を実現可能にしている。
【0036】
前記したところは、この発明に係る免震装置が所謂ボールアイソレータと称される転がり支承構造に設定されてなる場合を例にして説明したが、この発明が意図するところからすれば、これが転がり支承構造に設定されたものに限定されずに、例えば、その他の滑り支承構造のもの、さらには、積層ゴム支承構造のものなど、種々の所謂免震装置において実施可能で有ること勿論である
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、地盤と地上構造物との間に介装されて地震動に対し上記地上構造物の応答を抑制する免震手段と、地盤と地上構造物との間に介装され上記地盤に対する上記構造物の動的結合のロックおよび該ロックの解除が可能なダンパー装置と、を有し、コントローラに、上記地上構造物に作用する風速が設定値を超えた場合に上記ダンパー装置により動的結合のロックを行わせ、上記風速が設定値を超えた場合でも地震が発生したときには、上記ロックを解除させるように構成したので、強風にもとづく信号に対して地震にもとづく信号を優先させて、強風時における免震機能を、簡単かつローコストな構成にて十分に果させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の一形態による免震装置を示す概念図である
【図2】 図1におけるダンパー装置の一形態を示す油圧回路図である。
【図3】 図1におけるコントローラの信号処理部を示す論理回路図である。
【図4】 この発明におけるコントローラによる免震処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】 図3における論理回路の入出力信号を示す真理値表図である。
【符号の説明】
1 地上構造物
5 地盤
7 ダンパー装置(ロック手段)
9 コントローラ
M 免震手段

Claims (2)

  1. 地盤と地上構造物との間に介装されて、地震動に対し上記地上構造物の応答の伝達を抑制する免震手段と、地盤と地上構造物との間に介装され地盤に対する地上構造物の動的結合のロックおよび該ロックの解除が可能なダンパー装置と、上記地上構造物に作用する風速が設定値を超えた場合に上記動的結合のロックを行わせ上記風速が設定値を超えた場合でも地震が発生したときに上記ロックを解除させるように上記ダンパー装置を制御するコントローラと、を備えた免震装置。
  2. ダンパー装置が、シリンダ内にピストンにより隔成された2つの油室と、タンクと、ピストンに設けられ一方の油室と他方の油室とを連通する油路と、一方の油室と他方の油室とを連通する油路の途中に設けられ一方の油室から他方の油室への流れを阻止するとともに他方の油室から一方の油室への流れを許容するチェック弁と、一方の油室とタンクとを連通する油路と、一方の油室とタンクとを連通する油路の途中に設けられ該油路を開閉するソレノイドバルブと、一方の油室とタンクとを連通する油路の途中に設けられたオリフィスと、他方の油室とタンクとを連通する油路と、他方の油室とタンクとを連通する油路の途中に設けた他方の油室からタンクへの流れを阻止するとともにタンクから他方の油室への流れを許容する逆止弁と、一方の油室とタンクとを連通する油路の途中であってオリフィスより一方の油室側と他方の油室とタンクとを連通する油路と結ぶ油路の途中に設けたリリーフ弁とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
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