JP3713975B2 - 軸受用鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボール、コロ、ニードル、シャフト、レースなど軸受要素部品の素材として用いられる軸受用鋼に関し、特に、転動疲労寿命と耐摩耗特性に優れた低コスト型の軸受用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の産業機械や自動車などに使用される軸受には、高い面圧が繰り返し作用する。そのため、軸受要素部品であるボール、コロ、ニードル、シャフト、レースなどには、長い転動疲労寿命が要求される。更に、軸受要素部品には耐摩耗性も要求される。
【0003】
長い転動疲労寿命を確保するには、焼入れ焼戻し後にロックウェルC硬さ(HRC )で60以上の大きな硬さとすることが必要で、そのためにはマルテンサイト組織マトリックス(素地)中のC含有量を0.5重量%以上にする必要がある。一方、耐摩耗性を高めるためには、焼入れ焼戻し後に球状セメンタイトを残存させることが有効である。
【0004】
したがって、従来、前記の軸受要素部品の素材として用いられる軸受用鋼には、0.8重量%を超えるC(炭素)を含有する過共析鋼に、セメンタイトを安定化させるCrを添加した鋼を用いることが多く、その代表例は0.95〜1.10重量%のCと1.30〜1.60重量%のCrを含有する、JIS G 4805で規格化されているSUJ2鋼である。
【0005】
つまり、前記の各種軸受要素部品は、従来、上記の高炭素クロム軸受鋼を素材として、熱間圧延などの手段で熱間加工した後に球状化焼鈍し、次いで所望の形状に冷間鍛造や切削加工で粗成形し、その後焼入れと低温での焼戻しを行い、更に、仕上げ加工としての研削や研磨を施して製造されてきた。
【0006】
しかしながら、鋼が0.95重量%以上のCと1.3重量%以上のCrを含む場合には、その凝固時に巨大な共晶炭化物が生成し易い。このため、例えば、1250℃で20時間といった高温長時間の均質化熱処理が必要となるので、軸受要素部品の製造コストが嵩んでしまう。更に、熱間加工後の軟化のための球状化焼鈍に際し、鋼が1.3%以上のCrを含む場合には球状化した炭化物を粗大化させるのに長時間が必要となる。例えば、棒鋼や線材に熱間圧延した場合には、20〜25時間という長時間の球状化焼鈍を行う必要があり、コスト上昇の要因となっている。したがって、軸受用鋼としての性能を低下させることなく、CとCrの含有量を減らすことができれば、高温で長時間を要する均質化熱処理を省略したり、球状化焼鈍のための時間を短くすることが可能となって、軸受要素部品の製造コストを大幅に削減できると考えられる。
【0007】
これに関して、例えば、特開平9−302443号公報には、C含有量が0.70重量%以上で0.80重量%未満、Cr含有量が0.40〜0.95重量%である「軸受用鋼」が開示されている。この公報で提案された軸受用鋼に関しては、均質化熱処理の省略は可能である。しかし、前記SUJ2鋼に比べてCとCrの含有量が低いので、オーステナイト中でセメンタイトが不安定になることがあり、こうした場合には焼入れ・焼戻し処理後のセメンタイトの残存量が少なくなって、軸受要素部品の耐摩耗性が低下してしまう。又、球状化焼鈍の加熱に際しては適量のセメンタイトを残存させる必要があるが、セメンタイトがオーステナイトに固溶し易いと、鋼材自体の温度を狭い範囲で管理しなければならず、加熱保持時間、その後の徐冷に長時間を要し、球状化焼鈍時間を短縮することが困難である。
【0008】
特開平9−125202号公報には、C含有量が0.70〜0.93%、Cr含有量が0.30〜0.65%である「軸受用鋼」が開示されている。しかし、この公報で提案された軸受用鋼も、均質化熱処理の省略ができるものの、前記SUJ2鋼に比べてCとCrの含有量が低いので、オーステナイト中でセメンタイトが不安定になることがあり、こうした場合には耐摩耗性が低下し、球状化焼鈍の短時間化も困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、その目的は、均質化熱処理を省略できるとともに球状化焼鈍時間を短縮することが可能で、軸受要素部品の素材として好適な転動疲労寿命と耐摩耗性に優れた軸受用鋼を提供することである。なお、転動疲労寿命と耐摩耗性の目標は、後述の実施例における転動疲労試験での1×107 以上の寿命と、摩耗試験でSUJ2鋼に相当する鋼の摩耗量を下回ることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記に示す軸受用鋼にある。
【0011】
すなわち、「重量%で、C:0.6%以上で0.95%未満、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:1.3%未満、Ni:1%以下、Cu:0.3%以下、Nb:0.2%以下、B:0.0002%を超え0.01%以下、Al:0.021〜0.05%を含み、残部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中のNは0.006%以下、Tiは0.002%以下、Oは0.002%以下で、更に、式中の元素記号をその元素の重量%での含有量として下記(1)式で表されるfn1の値が0.001%以下である軸受用鋼。fn1=N−0.3Ti−1.4B・・・・・(1)」である。
【0012】
本発明者らは、セメンタイトをオーステナイト中で安定化させて球状化焼鈍の時間を短縮し、しかも、焼入れ・焼戻し処理を施した軸受要素部品に長い転動疲労寿命と優れた耐摩耗性とを確保させるために、軸受用鋼の化学組成について種々実験・研究を重ねた。その結果、下記の知見を得た。
【0013】
(a)CとCrの含有量を低減した場合、オーステナイト中でセメンタイトを安定化させるためにはBを添加すれば良い。
【0014】
(b)Bがオーステナイト中でのセメンタイトの安定化に寄与するためには、Bがセメンタイト中に固溶していることが重要である。
【0015】
(c)Bは、Nとの親和力が大きくBNを形成してしまう。このため、Bを有効に働かせるためには、Nの含有量を低く調整する必要がある。
【0016】
(d)Tiは、BよりもNと結合し易く容易にTiNを形成するので、Tiを添加すればNが固定されてBが有効に作用する。
【0017】
(e)一方、NとTiが結合したTiNは転動疲労寿命を低下させてしまう。
(f)上記(a)〜(e)から、オーステナイト中でのセメンタイトの安定化に有効なBを確保するためには、Bの含有量とともにNとTiの含有量を適正化すれば良い。
【0018】
(g)球状化焼鈍後の球状化率と耐摩耗性は、重量%での鋼のB含有量及びTiと結合しないNの含有量、つまり、N(%)−0.3Ti(%)の量で整理できる。図1はC、Si、Mn、Cr、Ni、Mo、Cu、Nb、V、W、B、Al、N、Ti及びOの含有量が異なる種々の鋼について、時間を変えて球状化焼鈍した場合の球状化率と耐摩耗性との関係を、重量%でのB含有量及びN(%)−0.3Ti(%)の量で整理した一例である。図中○印は8時間程度の短時間の球状化焼鈍でも80%以上の球状化率が得られ、しかも耐摩耗性も良好であることを示す。一方、×印は少なくとも(イ)8時間程度の短時間の球状化焼鈍では球状化率が80%に達しない、(ロ)耐摩耗性が低い、のいずれかに該当することを示す。
【0019】
ここで、上記の「球状化率」とは、顕微鏡観察した時、「その視野における炭化物(セメンタイト)に対しての(短径)/(長径)の比が0.5以上である炭化物の割合(%)」を意味する。
【0020】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「重量%」を意味する。
【0022】
C:0.6%以上で0.95%未満
Cは、焼入れ・焼戻し後の硬度を高めて転動疲労寿命を大きくする作用がある。しかし、その含有量が0.6%未満では添加効果に乏しく、所望の転動疲労寿命が得られない。一方、Cの含有量が0.95%以上になると鋼の凝固時に巨大な炭化物が生成し易くなるので、均質化熱処理を省略した場合には目標とする転動疲労寿命が得られない。したがって、Cの含有量を0.6%以上で0.95%未満とした。なお、Cの含有量は0.75%以上で0.95%未満とすることが好ましい。
【0023】
Si:0.1〜1.5%
Siは、転動疲労寿命を高めるとともに脱酸作用を有する。しかし、その含有量が0.1%未満では前記の効果が得難い。一方、1.5%を超えると冷間加工性が劣化し、冷間鍛造の際に割れが発生し易くなる。したがって、Siの含有量を0.1〜1.5%とした。
【0024】
Mn:0.2〜1.5%
Mnは、鋼の焼入れ性を高めるとともにSによる熱間脆性を防止する作用を有する。これらの効果を発揮させるためには、Mnを0.2%以上含有させる必要がある。一方、Mnの含有量が1.5%を超えると冷間加工性が劣化し、冷間鍛造の際に割れが発生し易くなる。したがって、Mn含有量を0.2〜1.5%とした。
【0025】
Cr:1.3%未満
Crは添加しなくても良い。添加すれば、オーステナイト中におけるセメンタイトの安定性を増大させて、球状化焼鈍時間を短縮するとともに耐摩耗性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Crは0.2%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1.3%以上になると、鋼の凝固時に巨大な炭化物が生成し易くなるので、均質化熱処理を省略した場合には目標とする転動疲労寿命が得られない。したがって、Crの含有量を1.3%未満とした。
【0026】
Ni:1%以下
Niは添加しなくても良い。添加すれば、焼入れ性を高めて転動疲労寿命を向上させる作用を有する。この効果を確実に発揮させるためには、Niは0.1%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が1%を超えると、焼入れしても未変態のままであるオーステナイト(所謂「残留オーステナイト」)の量が増えて硬度が低くなるので、所望の転動疲労寿命が得られない。したがって、Niの含有量を1%以下とした。
【0028】
Cu:0.3%以下
Cuは添加しなくても良い。添加すれば、焼入れ性を高めて転動疲労寿命を向上させる作用を有する。この効果を確実に得るには、Cuは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.3%を超えると、熱間延性が低下し、熱間での加工の際に割れが発生する場合がある。したがって、Cuの含有量を0.3%以下とした。
【0029】
Nb:0.2%以下
Nbは添加しなくても良い。添加すれば、Cと結合して微細なNbCを形成し、オーステナイト粒を微細化して転動疲労寿命を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Nbは0.03%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.2%を超えると、凝固時に粗大なNbCを生成するので、却って転動疲労寿命が低下してしまう。したがって、Nbの含有量を0.2%以下とした。
【0032】
B:0.0002%を超え0.01%以下
Bは、本発明において極めて重要な元素である。すなわち、Bはセメンタイト中に固溶してオーステナイト中におけるセメンタイトを安定化し、球状化焼鈍時間の短縮を可能にするとともに耐摩耗性を高める。しかしながら、その含有量が0.0002%以下では前記の効果が得られない。一方、0.01%を超えると粗大なBNが生成して転動疲労寿命が低下したり、耐摩耗性が低下する場合がある。したがって、Bの含有量を0.0002%を超え0.01%以下とした。
【0033】
Al:0.021〜0.05%
Alは、鋼を脱酸して転動疲労寿命を高める作用を有する。この効果を確実に得るために、Alは0.021%以上の含有量とする。しかし、その含有量が0.05%を超えると、粗大な非金属系介在物が生成し易くなり、却って転動疲労寿命が低下する。したがって、Alの含有量を0.021〜0.05%とした。
【0034】
本発明においては、不純物元素としてのN、Ti及びOの含有量を下記のとおりに制限する。
【0035】
N:0.006%以下
Nは、TiやBと結合してTiNやBNを形成し、転動疲労寿命を低下させてしまう。特にその含有量が0.006%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しい。したがって、Nの含有量を0.006%以下とした。なお、Nの含有量が0.004%以下であれば、切削加工時の工具摩耗量が減少するので、Nの含有量は0.004%以下とすることが好ましい。
【0036】
Ti:0.002%以下
Tiは、Nと結合してTiNを形成し、転動疲労寿命を低下させてしまう。特にその含有量が0.002%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しい。したがって、Tiの含有量を0.002%以下とした。
【0037】
O:0.002%以下
Oは、酸化物系介在物を形成し、転動疲労寿命を低下させてしまう。特にその含有量が0.002%を超えると、転動疲労寿命の低下が著しい。したがって、Oの含有量を0.002%以下とした。
【0038】
既に述べた図1から明らかなように、球状化焼鈍後の球状化率と耐摩耗性は、鋼のB含有量及びN(%)−0.3Ti(%)の量で整理でき、N(%)−0.3Ti(%)≦1.4B(%)+0.001を満たす場合、8時間程度の短時間の球状化焼鈍でも良好な球状化率が得られ、しかも、耐摩耗性も良好である。つまり、N(%)−0.3Ti(%)≦1.4B(%)+0.001を満たす場合、従来16時間以上要していた球状化焼鈍時間を短縮することができ、しかも耐摩耗性も良好である。したがって、(1)式で表されるfn1の値を0.001%以下の値とした。
【0039】
本発明が対象とする軸受用鋼において、上記以外の他の化学成分の組成に関しては、特別な限定を加える必要はない。軸受要素部品及びそれらから構成される最終製品、つまり軸受に要求される特性の付与が可能であり、均質化熱処理の省略と球状化焼鈍時間の短縮が可能な成分範囲でありさえすれば良い。
【0040】
具体的には、例えば前記以外の元素として、S:0.10%以下、Pb:0.30%以下、希土類元素の合計:0.10%以下、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下を含有し、残部がFeと不可避不純物からなり、不純物としてのPが0.05%以下のものであれば良い。
【0041】
なお、熱間加工された鋼材、軸受要素部品や最終製品である軸受の特性向上などを目的に、上記した元素を追加含有させる場合には、S:0.005〜0.10%、Pb:0.02〜0.30%、希土類元素の合計:0.002〜0.10%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%の含有量とすることが好ましい。更に不純物としてのPは0.02%以下とすることが好ましい。
【0042】
上記の化学組成を有する軸受用鋼は、例えば、通常の方法で溶製、鋼片とされた後、熱間での圧延又は鍛造を受け、例えば8時間程度の短時間の球状化焼鈍を受け、冷間鍛造や切削加工によって所望の形状に粗成形され、次いで、焼入れと焼戻しを受け、更に、研削や研磨など機械加工されて所望の精密な要素部品形状に仕上げられてから、精密機械部品である最終製品としての軸受に組み立てられる。
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0044】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する鋼A〜E、G、H、J〜P及びR〜Xを通常の方法で転炉溶製した後、連続鋳造して連鋳鋼片を得た。なお、表1における鋼B、C、E、G、J、M、O、W及びXは、化学組成が本発明で規定する含有量の範囲内にある本発明例である。一方、鋼A、D、H、K、L、N、P及びR〜Vは成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例である。比較例のうち鋼UはJIS規格のSUJ2に相当するものである。
【0045】
【表1】
【0046】
これらの鋼の連鋳鋼片の断面マクロ組織を通常の方法で目視観察し、巨大炭化物の有無を調査した。なお、目視によって炭化物の凝集部分が確認できた場合、巨大炭化物が有ると判断した。
【0047】
次いで、前記の連鋳鋼片を通常の方法により直径65mmの棒鋼に熱間圧延し、下記の条件で球状化焼鈍を行った。なお下記の温度はいずれも炉温を指す。
【0048】
・SA1:770℃で2時間保持後、660℃まで20℃/時間で冷却(在炉時間は合計7.5時間)
・SA2:770℃で6時間保持後、660℃まで10℃/時間で冷却(在炉時間は合計17時間)
上記の各条件で球状化焼鈍した後、直径65mmの棒鋼のD/4とD/2の部位(Dは棒鋼の直径)での球状化率を測定した。すなわち、上記各部位を含む試料を切り出して通常の方法でピクラールで腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率5000倍で10視野観察して球状化率を調査し、球状化率が80%未満の場合に球状化が不十分であると判定した。
【0049】
なお、既に述べたように、「球状化率」とは、「その視野における炭化物(セメンタイト)に対しての(短径)/(長径)の比が0.5以上である炭化物の割合(%)」を意味する。
【0050】
次に、前記のSA1の条件で球状化焼鈍した直径65mmの棒鋼から、直径60mmで厚さ6mmの試験片を切り出し、840℃に加熱して30分保持してから油焼入れし、その後160℃で1時間の焼戻しを行い、表面スケール、脱炭層を研磨によって除去した後、硬さ(HRC )測定を行った。
【0051】
又、研磨した試験片を用いて転動疲労試験と摩耗試験を行った。
【0052】
転動疲労試験は、スラスト型の転動疲労試験機を用いて、潤滑油に#60スピンドル油を使用して、ヘルツ最大接触応力が500kgf/mm2 、回転数が1200rpmの負荷条件で行った。各鋼について試験片は10個ずつとし、10個の試験片の中で最初に表面剥離をおこしたときの回転数を「転動疲労寿命」とした。なお、転動疲労寿命の目標は1×107 以上とした。
【0053】
摩耗試験は、大越式摩耗試験機を用いて、硬さをHRB で87に調整したSCM420を相手材とし、摩擦速度1m/秒、摩擦距離400m、最終荷重6kgf、無潤滑の条件で行った。各鋼について試験片は5個ずつとし、5個の試験片の摩耗量の平均値を摩耗量とした。なお、耐摩耗性の目標は試験番号21におけるSUJ2鋼に相当する鋼Uの摩耗量を1とした場合の1以下の摩耗量とした。
【0054】
表2に、各種の試験結果をまとめて示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2から、本発明例の鋼を用いた試験番号2、3、5、7、10、13、15、23及び24の場合には、連鋳鋼片に巨大炭化物がないので均質化熱処理を省略でき、しかも、球状化焼鈍時間を8時間に短縮しても80%以上の球状化率が得られ、耐摩耗性が良好で転動疲労寿命も1×107以上と長いことが明らかである。
【0057】
これに対して、比較例の鋼を用いた場合には、連鋳鋼片に巨大炭化物が認められたり、7.5時間の短時間焼鈍では、球状化率が80%を下回ったり、耐摩耗性が低かったり、転動疲労寿命が短かったりする。
【0058】
すなわち、試験番号1は、鋼のC含有量が本発明で規定する量を下回るため、摩耗量が多く、転動疲労寿命も2×106 と短い。
【0059】
試験番号4は、鋼のC含有量が本発明で規定する量を上回るため、試験番号8は、Cr含有量が本発明で規定する量を上回るため、試験番号21は、鋼のC含有量及びCr含有量が本発明で規定する量を上回るため、いずれも連鋳鋼片中に巨大炭化物が存在し、転動疲労寿命も1×107 を下回っている。なお、既に述べたように、試験番号21で用いた鋼UはJIS規格のSUJ2に相当するものである。
【0060】
試験番号11、14、18〜20は、それぞれAl、N、B、Ti及びOの含有量が本発明で規定する量を上回るため、転動疲労寿命はいずれも1×107 に達せず短いものである。
【0061】
試験番号12、16、22は、fn1の値が0.001%を上回るため、7.5時間の短時間焼鈍では、球状化率が80%を下回るし、耐摩耗性も不十分である。
【0062】
【発明の効果】
本発明の軸受用鋼は、均質化熱処理を省略できるとともに球状化焼鈍時間を短縮することが可能で、転動疲労寿命が長く耐摩耗性に優れていることから、各種の産業機械や自動車などに使用される軸受の要素部品として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼のB含有量及びN(%)−0.3Ti(%)の量が、時間を変えて球状化焼鈍した場合の球状化率と耐摩耗性とに及ぼす影響の一例を示す図である。
Claims (1)
- 重量%で、C:0.6%以上で0.95%未満、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、Cr:1.3%未満、Ni:1%以下、Cu:0.3%以下、Nb:0.2%以下、B:0.0002%を超え0.01%以下、Al:0.021〜0.05%を含み、残部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中のNは0.006%以下、Tiは0.002%以下、Oは0.002%以下で、更に下記(1)式で表されるfn1の値が0.001%以下である軸受用鋼。
fn1=N−0.3Ti−1.4B・・・・・(1)
なお、(1)式中の元素記号はその元素の重量%での含有量を示す。
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