JP4343356B2 - 高温用転がり軸受部品 - Google Patents

高温用転がり軸受部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、航空機、船舶、産業機械などの動力伝達装置やエンジン部などに用いられる転がり軸受部品に関し、より特定的には、粉塵、ゴミなどの異物が混入する環境下ならびに雰囲気の温度が常温〜300℃の環境下においても優れた転動疲労寿命を有する安価な高温用転がり軸受部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車、航空機、船舶、産業機械などの動力伝達部やエンジン部に使用される転がり軸受は、苛酷な環境下で使用されることになるが、このような環境下でも優れた転動疲労寿命と信頼性とを要求されている。特に、上記に用いられる転がり軸受では、粉塵、ゴミ、鉄粉などの異物が混入する場合があり、これらの環境下では清浄な環境での使用に比べて転動疲労寿命が大幅に低下することが知られている。この対策として、近年では、SUJ2などの高炭素クロム軸受鋼やSCM420、SNCM420、SNCM815などの肌焼き鋼に浸炭窒化処理を施し、転動面の直下に適量の残留オーステナイトを生成させる工法が適用されており、異物混入下での寿命改善が図られている。
【0003】
しかし、一般的な浸炭窒化処理は、SUJ2鋼などに適用されている焼入れ焼戻し処理に比べて長時間の処理である。このため、これらの浸炭窒化処理された転がり軸受では、通常の焼入れ焼戻し工程で製造される転がり軸受に比べて製造コストが大幅に増加するなどの問題がある。
【0004】
また、自動車や航空機などに用いられる転がり軸受は、高温環境下で使用されるため、異物混入環境でかつ高温環境という極めて苛酷な使用環境下で優れた転動疲労寿命特性を要求されている。一般に、高温下で使用される転がり軸受には、SUJ2などの高炭素クロム軸受に焼入れ処理を施した後、またはSCM420、SNCM815などの肌焼き鋼に浸炭焼入れ処理を施した後に、寸法安定性を得るために300℃以上の高温で焼戻し処理が実施されている。
【0005】
しかし、これらの材料を高温で焼戻し処理すると硬さが大幅に低下するため、転がり軸受に要求される所定の硬さを得ることができず、転動疲労寿命および耐摩耗性が低下する。このため、高温域で使用される軸受鋼にはM50のような析出硬化型の鋼材が使用されているが、このような鋼材では製造コストおよび材料コストが高く、使用範囲が限定されているために上記のようなニーズに対応することができなかった。
【0006】
また、浸炭窒化処理を施した転がり軸受では、熱処理後に転動部直下に残留オーステナイトが生成されるとともに鋼中に窒素が侵入する。この残留オーステナイトの作用で異物混入による応力集中が緩和されることによって、さらには鋼中に侵入した窒素の作用で焼戻し軟化抵抗が改善されて転動疲労の過程で発生する組織の変化が抑制されることによって、転動疲労寿命の向上が図られている。
【0007】
しかし、高温用の転がり軸受に適用するに際しては、先述したように寸法の安定性を確保するために高温焼戻しを行なう必要がある。この高温焼戻しを施した場合には、残留オーステナイトは分解し、その量が減少してしまうために、その効果を期待することができず、また窒素による焼戻し軟化防止にも限界があるため、異物が混入する高温環境下では十分な性能を得ることができない。
【0008】
近年では、自動車などの分野ではエンジンの高出力・小型化が急速に進行しているが、同時に、転がり軸受の使用環境はさらに苛酷な条件で使用されるケースが増加してきている。エンジン部に用いられる転がり軸受の使用温度域は、常用温度で130℃程度であるが、瞬間的には160℃まで温度上昇することが見込まれている。今日では、エンジンの高出力化に伴って、転がり軸受の使用温度域は常用温度で160℃程度まで上昇し、さらに瞬間的には200℃を超すことが予測されている。したがって、今後、エンジンの高出力化や軽量化が促進された場合に、異物混入環境下ならびに高温環境下での転動疲労寿命の向上が必要とされると予想される。
【0009】
しかし、現状の高炭素クロム軸受鋼や浸炭または浸炭窒化処理を施した転がり軸受は、十分な耐熱性を有しておらず、予想される異物混入環境下、高温環境下では十分な転動疲労寿命を維持することができない。また、M50のような析出硬化型軸受鋼ではコストが高いなどの問題があり、安価で、かつ転動疲労寿命特性に優れる転がり軸受を提供することができない状況である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、異物混入環境下ならびに高温環境下においても優れた転動疲労寿命を有し、かつ従来例に比べて安価な高温用転がり軸受部品を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、鋭意検討した結果、異物混入環境下ならびに高温環境下において優れた転動疲労寿命を有する安価な高温用転がり軸受部品を得ることのできる組成元素の組合せ、その各含有量、焼戻し硬さおよび炭化物の最大寸法を見出した。
【0012】
それゆえ本発明の一の局面に従う高温用転がり軸受部品は、内輪、外輪および転動体を有する高温用転がり軸受の部品であって、内輪、外輪および転動体の少なくともいずれかが、合金元素の含有量が質量%で、C(炭素)を0.6%以上1.3%以下、Si(シリコン)を0.76%以上3.0%以下、Mn(マンガン)を0.2%以上1.5%以下、P(リン)を0.03%以下、S(硫黄)を0.03%以下、Cr(クロム)を0.5%以上3.0%以下、V(バナジウム)を0.05%以上1.0%以下、Al(アルミニウム)を0.050%以下、Ti(チタン)を0.003%以下、O(酸素)を0.0015%以下、N(窒素)を0.015%以下含み、残部がFe(鉄)および不可避不純物からなる鋼材よりなり、かつ焼入れ処理後または浸炭窒化処理後に焼戻し処理された構成を有し、かつ焼戻し処理後の硬さがHRC58以上であり、かつ最大の炭化物寸法が8μm以下である。
【0013】
また本発明の他の局面に従う高温用転がり軸受部品は、内輪、外輪および転動体を有する高温用転がり軸受の部品であって、内輪、外輪および転動体の少なくともいずれかが、合金元素の含有量が質量%で、C(炭素)を0.6%以上1.3%以下、Si(シリコン)を0.76%以上3.0%以下、Mn(マンガン)を0.2%以上1.5%以下、P(リン)を0.03%以下、S(硫黄)を0.03%以下、Cr(クロム)を0.5%以上3.0%以下、V(バナジウム)を0.05%以上1.0%以下、Al(アルミニウム)を0.050%以下、Ti(チタン)を0.003%以下、O(酸素)を0.0015%以下、N(窒素)を0.015%以下で各元素を少なくとも含み、残部がFe(鉄)からなる鋼材よりなり、かつ焼入れ処理後または浸炭窒化処理後に焼戻し処理された構成を有し、かつ焼戻し処理後の硬さがHRC58以上であり、かつ最大の炭化物寸法が8μm以下である。
【0014】
なお、本発明の他の局面においては、列挙した元素以外にB(ボロン)やW(タングステン)またはこれ以外の元素が含まれていてもよい。
【0015】
本発明の一および他の局面に従う高温用転がり軸受部品では、上記組成を有しているため、焼入れ焼戻し処理を施せば、浸炭窒化処理を施さずとも異物混入環境下において優れた転動疲労寿命が得られる。このため、浸炭窒化処理を省くことができるため、製造コストを低くすることができる。
【0016】
上記のように製造コスト削減の観点からは浸炭窒化処理を省くことが望ましいが、焼入れ処理に代えて浸炭窒化処理を施しても異物混入環境下において優れた転動疲労寿命を得ることができる。
【0017】
また、上記組成を有するため、高温(たとえば350℃)で焼戻し処理を施しても、HRC58以上と高い硬度を得ることができる。このように高温で焼戻し処理を施すことで残留オーステナイト量を少なくできるため高温環境下での寸法安定性を得ることができるとともに、HRC58以上と高い硬度を得ることができる。このため、高温環境下での転動疲労寿命および耐摩耗性を従来例より向上させることができる。
【0018】
また、上記組成の鋼はM50のような析出硬化型軸受鋼より安価である。
以上より、異物混入環境下ならびに高温環境下において優れた転動疲労寿命を有し、かつ安価な高温用転がり軸受部品を得ることができる。
【0019】
なお、焼戻し処理温度は180℃以上350℃以下であることが好ましい。転がり軸受は通常100℃程度の温度で使用されるため、焼戻し処理温度は180℃以上である必要がある。
【0020】
以下、本発明の高温用転がり軸受部品の化学成分の限定理由について説明する。
【0021】
(1) Cの含有量(0.6%以上1.3%以下)について
Cは転がり軸受として強度を確保するために必須の元素であり、所定の熱処理後の硬さを維持するためには0.6%以上含有する必要があるため、C含有量の下限を0.6%に限定した。また本発明においては、後述するように炭化物が転動疲労寿命に重要な役割を与えるが、C含有量が1.3%を超えて含有された場合、大型の炭化物が生成し、転動疲労寿命の低下を生じることが判明したため、C含有量の上限を1.3%に限定した。
【0022】
(2) Siの含有量(0.3%以上3.0%以下)について
Siは高温域での軟化を抑制し、転がり軸受の耐熱性を改善する作用があるため添加することが望ましい。しかし、Si含有量が0.30%未満ではその効果が得られないため、Si含有量の下限を0.30%に限定した。また、Si含有量の増加に伴って耐熱性は向上するが、3.0%を超えて多量に含有させてもその効果が飽和するとともに、熱間加工性や被削性の低下が生じるため、Si含有量の上限を3.0%に限定した。
【0023】
(3) Mnの含有量(0.2%以上1.5%以下)について
Mnは鋼を製造する際の脱酸に用いられる元素であるとともに、焼入れ性を改善する元素であり、この効果を得るために0.2%以上添加する必要があるため、Mn含有量の下限を0.2%に限定した。しかし、1.5%を超えて多量にMnを含有すると被削性が大幅に低下するため、Mn含有量の上限を1.5%に限定した。
【0024】
(4) Pの含有量(0.03%以下)について
Pは鋼のオーステナイト粒界に偏析し、靱性や転動疲労寿命の低下を招くため、0.03%をP含有量の上限とした。
【0025】
(5) Sの含有量(0.03%以下)について
Sは鋼の熱間加工性を害し、鋼中で非金属介在物を形成して靱性や転動疲労寿命を低下させるため、0.03%をS含有量の上限とした。また、Sは前記のような有害な面を持つ反面、切削加工性を向上させる効果も有しているため、可及的に少なくすることが望ましいが、0.005%までの含有量であれば許容される。
【0026】
(6) Crの含有量(0.5%以上3.0%以下)について
Crは本発明において重要な作用を果たす元素であり、焼入れ性の改善と炭化物による硬さ確保と寿命改善とのために添加される。所定の炭化物を得るためには0.5%以上の添加が必要であるため、Cr含有量の下限を0.5%に限定した。しかし、3.0%を超えて多量にCrを含有すると、大型の炭化物が生成し転動疲労寿命の低下が生じるため、Cr含有量の上限を3.0%に限定した。
【0027】
(7) Alの含有量(0.050%以下)について
Alは鋼の製造時の脱酸剤として使用されるが、硬質の酸化物系介在物を生成し転動疲労寿命を低下させるため低減することが望ましい。また、0.050%を超えてAlが多量に含有されると顕著な転動疲労寿命の低下が認められたため、Al含有量の上限を0.050%に限定した。
【0028】
なお、Al含有量を0.005%未満とするためには鋼の製造コストの上昇が生じるため、Al含有量の下限を0.005%に限定することが好ましい。
【0029】
(8) Tiの含有量(0.003%以下)、Oの含有量(0.0015%以下)、Nの含有量(0.015%以下)について
Ti、OおよびNは鋼中に酸化物、窒化物を形成し非金属介在物として疲労破壊の起点となり転動疲労寿命を低下させるため、Ti:0.003%、O:0.0015%、N:0.015%を各元素の上限とした。
【0030】
(9) Vの含有量(0.05%以上1.0%以下)について
Vは炭素と結合して微細な炭化物を析出し、結晶粒の微細化を促進し強度・靱性を改善する効果を有するとともに、Vの含有によって鋼材の耐熱性を改善し、高温焼戻し後の軟化を抑制し、転動疲労寿命を改善し、寿命のばらつきを減少させる作用を示す。この効果が得られるVの含有量が0.05%以上であるため、V含有量の下限を0.05%に限定した。しかし、1.0%を超えて多量にVを含有すると、被削性、熱間加工性が低下するため、V含有量の上限を1.0%に限定した。
【0031】
次に、本発明の高温用転がり軸受部品の焼戻し硬さおよび炭化物について言及する。
【0032】
(10) 焼戻し硬さ
高温域で使用される軸受は使用環境下での寸法を安定させるために、環境温度以上の温度で焼戻し処理を施されることが一般的である。本願発明者らは、焼戻し硬さと温度環境200℃における転動疲労寿命に関する詳細な調査を行なった結果、焼戻し硬さと転動疲労寿命とに相関が認められ、焼戻し硬さが高いほど転動疲労寿命が長寿命を示す傾向にあることを確認した。特に、焼戻し硬さが同一の場合には、焼戻し処理が高い温度で実施された軸受ほど長寿命であり、高温で焼戻しを施しても焼戻し硬さが高い軸受ほど長寿命であることが見出された。さらには、焼戻し処理後の硬さがHRC58未満になると、急激に寿命が低下する傾向にあり、また寿命ばらつきが大きくなることが判明した。高温での寿命を改善し、ばらつきを低減するためには、HCR58以上の硬さを維持することが必要であり、かつこの際の焼戻し温度は高いほど好ましい。
【0033】
(11) 炭化物
炭化物は焼戻し処理時の硬さを維持させるとともに、転動疲労中の組織変化を抑制し、転動疲労寿命の改善に効果を有することが判明した。この際、軸受の表層から0.1mm深さにおける炭化物の最大寸法と転動疲労寿命とを調査した結果、大型の炭化物が存在すると寿命が低下する傾向が認められ、最大寸法が8μmを超える大きな炭化物が残存すると急激に寿命低下が発生することが明らかになったため、炭化物の最大寸法を8μmに規定した。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0035】
表1に示した化学組成を有する鋼材を、真空誘導炉によって溶解し、重量150kgの鋼塊に鋳造した後、1200℃の温度で3時間加熱保持して熱間鍛造を実施し、直径50mmの丸棒を製造した。丸棒素材に焼ならし処理として850℃で1時間保持した後、空冷する処理を施し、さらに切削加工を容易にするための軟化処理として790℃で6時間保持した後650℃までを10℃/時間の冷却速度で冷却し、常温までを大気放冷する軟化処理を施し、各種調査の素材とした。
【0036】
【表1】
Figure 0004343356
【0037】
<硬さ調査>
焼入れ後の焼戻し硬さおよび浸炭窒化処理後の焼戻し硬さを測定するために、直径50mmの素材から直径20mm、長さ100mmの円柱状の試験片を機械加工によって作製した。
【0038】
焼入れ処理は、ソルト炉による加熱を行ない、850℃に30分均熱した後、80℃の油中に焼入れることで行なった。この後に、焼戻し処理として同じくソルト炉で加熱を行ない、350℃で2時間保持した後に空冷する焼戻し処理を行なった。
【0039】
また浸炭窒化処理は通常の生産工程で使用されているガス雰囲気炉を用い、RXガス雰囲気中で炭素ポテンシャルを1.0〜1.2%、NH3の添加量を5〜10%として850℃に60分保持した後、油中に焼入れた。その後、350℃で120分の焼戻しを行なった。
【0040】
この焼入れ焼戻し処理を施した試験片または浸炭窒化処理後に焼戻し処理を施した試験片の中央部から厚さ10mmの円盤型の試験片を切断し、両面を湿式の研磨加工によって研磨し、硬さ測定用の試験片を作製した。
【0041】
硬さはロックウェル硬さ計を使用し、試験片の断面において表面から2mm深さの位置の硬さ測定を行ない、7点の平均値を焼戻し硬さとして求めた。
【0042】
<転動疲労寿命試験>
軸受部品として性能を確認するために、スラスト型の転動疲労寿命試験機によって疲労試験を行ない、各材料の寿命評価を実施した。
【0043】
寿命評価に用いた試験片は、直径50mmの丸棒素材から機械加工によって外径47mm、内径29mmおよび厚さ7mmのリング状のスラスト型転動疲労寿命試験片を粗加工した。
【0044】
粗加工を完了した試験片の熱処理として、焼入れ焼戻し処理および浸炭窒化処理を施した。処理は、通常の生産工程で使用されている実炉を用いた。
【0045】
焼入れ焼戻し処理については、ガス雰囲気炉を用い、RXガス雰囲気中で各鋼の炭素量をベースに脱炭や浸炭が起こらないように炭素ポテンシャルを制御しながら850℃に30分保持した後、油中に焼入れた。その後、350℃で120分の焼戻しを行なった。
【0046】
浸炭窒化処理は上記の硬さ試験片と同条件で熱処理を行なった。
熱処理完了の後に、試験片の両面を研磨加工し鏡面状態に仕上げた。なお、浸炭窒化処理した試験片では、研磨加工時の加工代を両面とも0.1mmとした。
【0047】
転動疲労寿命試験は、スラスト型転動疲労寿命試験機によって実施した。なお、表2にその試験の諸条件を示す。試験は、常温環境下および200℃環境下で実施し、さらに異物の混入環境を再現した環境下でも試験を行なった。
【0048】
【表2】
Figure 0004343356
【0049】
疲労試験は、同一条件で15回の繰返し試験を行ない、ワイブル確率における累積損傷確率が10%となる寿命を各材料の寿命として判定した。なお、表1における比較例No.12は汎用のSUJ2であり、この焼入れ焼戻し処理材の寿命を1.0とした場合の比率で各材料の寿命値を記述した。
【0050】
<炭化物>
鋼中に存在する炭化物の測定には、スラスト型転動疲労寿命試験片を使用した。各種の熱処理を実施してスラスト型転動疲労寿命試験片に加工された試験片において、リング横断面を切断し、組織観察用のミクロ試験片を製造した。この試験片を鏡面仕上げし、さらに炭化物の観察を行なうために、ピクラル腐食液によって腐食した。このミクロ試料において、転動面の表層から0.1mm深さにおける炭化物の観察を光学顕微鏡で実施し、視野面積50mm2における最大の炭化物を測定した。
【0051】
上記の350℃焼戻し硬さ、常温および200℃での転動疲労寿命、異物混入条件下での転動疲労寿命および最大炭化物寸法の結果を表3および表4に示す。
【0052】
【表3】
Figure 0004343356
【0053】
【表4】
Figure 0004343356
【0054】
上記の表3および表4の結果より、本発明の組成範囲を有する本発明例では、350℃の焼戻し処理を施しても、硬さがHRC58以上となることが判明した。また、本発明例では、単なる焼入れ焼戻し処理(HT)を施した場合でも、比較例に比べて常温および200℃での転動疲労寿命と異物条件下における転動疲労寿命とが高くなることが判明した。また、焼入れ処理に代えて浸炭窒化処理を施した場合でも、優れた転動疲労寿命が得られることも判明した。また、本発明例では、転動面の表層から0.1mm深さにおける炭化物の最大寸法が8.0μm以下になることが判明した。
【0055】
今回開示された実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0056】
【発明の効果】
以上に説明したように本願発明者らが最適な組成元素およびその含有量を見出したことにより、焼入れ焼戻し処理をすることで、浸炭窒化処理を施さなくとも異物混入条件下で優れた転動疲労寿命が得られるとともに、高温(たとえば350℃)で焼戻し処理を施しても高い硬度を得られる安価な高温用転がり軸受部品を得ることができた。

Claims (2)

  1. 内輪、外輪および転動体を有する高温用転がり軸受の部品であって、
    前記内輪、前記外輪および前記転動体の少なくともいずれかが、合金元素の含有量が質量%で、Cを0.6%以上1.3%以下、Siを0.76%以上3.0%以下、Mnを0.2%以上1.5%以下、Pを0.03%以下、Sを0.03%以下、Crを0.5%以上3.0%以下、Vを0.05%以上1.0%以下、Alを0.050%以下、Tiを0.003%以下、Oを0.0015%以下、Nを0.015%以下含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材よりなり、かつ焼入れ処理後または浸炭窒化処理後に焼戻し処理された構成を有し、かつ前記焼戻し処理後の硬さがHRC58以上であり、かつ最大の炭化物寸法が8μm以下であることを特徴とする、高温用転がり軸受部品。
  2. 内輪、外輪および転動体を有する高温用転がり軸受の部品であって、
    前記内輪、前記外輪および前記転動体の少なくともいずれかが、合金元素の含有量が質量%で、Cを0.6%以上1.3%以下、Siを0.76%以上3.0%以下、Mnを0.2%以上1.5%以下、Pを0.03%以下、Sを0.03%以下、Crを0.5%以上3.0%以下、Vを0.05%以上1.0%以下、Alを0.050%以下、Tiを0.003%以下、Oを0.0015%以下、Nを0.015%以下で各元素を少なくとも含み、残部がFeからなる鋼材よりなり、かつ焼入れ処理後または浸炭窒化処理後に焼戻し処理された構成を有し、かつ前記焼戻し処理後の硬さがHRC58以上であり、かつ最大の炭化物寸法が8μm以下であることを特徴とする、高温用転がり軸受部品。
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