JP2017150066A - 転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材および浸炭鋼部品、並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材および浸炭鋼部品、並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の鋼材は、所定の鋼中成分を含有し、下記条件で測定して求められるCr偏析率が2.0以下を満足する。
(i)測定位置
・前記鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面において前記鋼材の外周部から中心までの線上で、90°ごとに合計4箇所
・前記鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面において前記鋼材の直径の1/4位置の線上で、前記鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所
(ii)測定方法
上記の各測定位置において、EPMAを用いてCr濃度の線分析を行なってCr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出し、合計8箇所の平均をCr偏析率とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の鋼材は、所定の鋼中成分を含有し、下記条件で測定して求められるCr偏析率が2.0以下を満足する。
(i)測定位置
・前記鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面において前記鋼材の外周部から中心までの線上で、90°ごとに合計4箇所
・前記鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面において前記鋼材の直径の1/4位置の線上で、前記鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所
(ii)測定方法
上記の各測定位置において、EPMAを用いてCr濃度の線分析を行なってCr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出し、合計8箇所の平均をCr偏析率とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材および浸炭鋼部品、ならびにそれらの製造方法に関する。
自動車および各種産業機械などに使用される軸受、シャフト、ギヤ等の軸受部品または機械構造用部品は、高炭素鋼材に焼入れ処理を施して十分な強度を得る方法、低炭素鋼の肌焼鋼材に浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面硬化処理を施して表面を硬化する方法などによって製造される。上記肌焼鋼材としては、例えばクロム鋼(JIS G4053規格のSCr鋼)、クロムモリブデン鋼(JIS G4053規格のSCM鋼)、ニッケルクロムモリブデン鋼(JIS G4053規格のSNCM鋼)などが、その後に浸炭処理または浸炭窒化処理を行なうことを前提として使用されている。
しかしながら、近年、機械類の高性能化や軽量化に伴い、上記部品は、接触面圧が高く、外力が変動するなどの過酷な環境で使用されている。そのため、非常に微細な欠陥(介在物や不完全焼入れ組織など)から疲労き裂が生じ易いという問題がある。しかも、上記欠陥の分布に偏りがあるため、転動疲労寿命が安定しないという問題がある。特に肌焼鋼材に表面硬化処理を施して製造された部品では、表面硬化層の組織のバラツキもあるため、転動疲労寿命が一層不安定になって部品間のバラツキが大きい。そのため、このような部品を用いる場合、安全性を重視して、バラツキが大きい寿命の平均値でなく下限値を採用して部品の交換や点検などを行なっており、無駄が大きい。
転動疲労寿命の向上を解決課題として掲げたものではないが、例えば特許文献1には、歯車成形体を浸炭処理や浸炭窒化処理後に焼入れした際に発生する歪を低減し、高精度な歯車の製造を可能とする肌焼鋼が開示されている。特許文献1では、最近の歯車に要求される寸法精度を得るためには鋳片におけるCの中心偏析度の測定では不十分で、鋳片の径方向断面内においてC、Mnのミクロ的な偏析状態を解消することが重要であるとの観点に立ち、CとMnのミクロ偏析度を所定範囲に制御している。
また、特許文献2には、表面から20μm深さにおける窒素濃度を所定範囲内に制御することにより歯車の耐焼付き性を向上させる技術が開示されている。
本発明の目的は、転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材および浸炭鋼部品、並びにそれらの製造方法を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明に係る転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.35〜0.75%、Mn:0.2〜1%、Cr:1.2〜1.7%、Mo:0.3〜0.6%、P:0%超0.05%以下、S:0%超0.05%以下、Al:0.005〜0.2%、N:0%超0.05%以下、O:0%超0.005%以下、およびTi:0%超0.014%以下を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、下記条件で測定して求められるCr偏析率が2.0以下であるところに要旨を有する。
(i)測定位置
・前記鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面において前記鋼材の外周部から中心までの線上で、90°ごとに合計4箇所
・前記鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面において前記鋼材の直径の1/4位置の線上で、前記鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所
(ii)測定方法
上記の各測定位置において、EPMAを用いてCr濃度の線分析を行なってCr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出し、合計8箇所の平均をCr偏析率とする。
(i)測定位置
・前記鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面において前記鋼材の外周部から中心までの線上で、90°ごとに合計4箇所
・前記鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面において前記鋼材の直径の1/4位置の線上で、前記鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所
(ii)測定方法
上記の各測定位置において、EPMAを用いてCr濃度の線分析を行なってCr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出し、合計8箇所の平均をCr偏析率とする。
本発明の好ましい実施形態において、上記鋼材は、更に、質量%で、Cu:0%超1%以下、Ni:0%超1%以下、およびB:0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する。
本発明の好ましい実施形態において、上記鋼材は、更に、質量%で、V:0%超1%以下、W:0%超0.5%以下、およびNb:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する。
上記課題を解決し得た本発明に係る転動疲労寿命およびその安定性に優れた浸炭鋼部品は、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.35〜0.75%、Mn:0.2〜1%、Cr:1.2〜1.7%、Mo:0.3〜0.6%、P:0%超0.05%以下、S:0%超0.05%以下、Al:0.005〜0.2%、N:0%超0.05%以下、O:0%超0.005%以下、およびTi:0%超0.014%以下を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、表面から50μm深さまでの表層に存在する円相当直径0.1〜1.0μmの炭化物、窒化物、および炭窒化物の個数密度の最小値に対する最大値の比が2.0以下であるところに要旨を有する。
本発明の好ましい実施形態において、上記部品は、前記個数密度の平均が0.5〜3.0個/μm2である。
本発明の好ましい実施形態において、上記部品は、更に、質量%で、Cu:0%超1%以下、Ni:0%超1%以下、およびB:0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する。
本発明の好ましい実施形態において、上記部品は、更に、質量%で、V:0%超1%以下、W:0%超0.5%以下、およびNb:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する。
上記課題を解決し得た本発明に係る上記鋼材の製造方法は、溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの温度域を150℃/時間以上の平均冷却速度で冷却した後、1100〜1300℃に加熱して1.0〜40時間均熱処理を行うところに要旨を有する。
上記課題を解決し得た本発明に係る上記部品の製造方法は、溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの温度域を150℃/時間以上の平均冷却速度で冷却し、1100〜1300℃に加熱して1.0〜40時間均熱処理を行って鋼材を製造した後、浸炭処理または浸炭窒化処理するところに要旨を有する。
本発明によれば、上記構成を採用することにより、転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材および浸炭鋼部品が得られる。
本発明者らは、優れた転動疲労寿命を安定して確保できる鋼材および浸炭鋼部品(鋼材を浸炭処理、または浸炭窒化処理したもの)提供するため、検討を行なった。特に上記課題を解決するためには、鋼材を表面硬化処理したときに生成する析出物(炭化物、窒化物、炭窒化物)のバラツキを抑制する必要があり、当該析出物の分布(偏析)が転動疲労寿命の不安定さを招く原因になっているとの観点に立ち、鋭意検討を行なった。
その結果、転動疲労寿命を安定して確保できる鋼材を得るためには、上記析出物の形成元素であって、鋼材中に最も多く含まれるCrの分布状態(偏析)を改善する必要が有効であることが判明した。また、このような鋼材を得るためには、Crの含有量を適切に制御すると共に、鋳造時の冷却条件およびその後の均熱条件を適切に制御すれば良いことを見出した。
また、転動疲労寿命を安定して確保できる浸炭鋼部品を得るためには、鋼材レベルにおいて、上記析出物の形成元素であって鋼材中に最も多く含まれるCrの分布状態(偏析)を改善する必要があることが判明した。そして、Cr偏析率が適切に制御された鋼材を用いて、浸炭処理や浸炭窒化処理を行えば、表層の微細な析出物の個数密度の最大値と最小値の比を適切な範囲に制御でき、転動疲労寿命の安定性に優れた浸炭鋼部品が得られることを見出した。また、このような浸炭鋼部品を得るためには、Crの含有量を適切に制御すると共に、鋳造時の冷却条件およびその後の均熱条件を適切に制御して得られた鋼材を、浸炭または浸炭窒化処理すれば良いことを見出し、本発明を完成した。
また、転動疲労寿命を安定して確保できる浸炭鋼部品を得るためには、鋼材レベルにおいて、上記析出物の形成元素であって鋼材中に最も多く含まれるCrの分布状態(偏析)を改善する必要があることが判明した。そして、Cr偏析率が適切に制御された鋼材を用いて、浸炭処理や浸炭窒化処理を行えば、表層の微細な析出物の個数密度の最大値と最小値の比を適切な範囲に制御でき、転動疲労寿命の安定性に優れた浸炭鋼部品が得られることを見出した。また、このような浸炭鋼部品を得るためには、Crの含有量を適切に制御すると共に、鋳造時の冷却条件およびその後の均熱条件を適切に制御して得られた鋼材を、浸炭または浸炭窒化処理すれば良いことを見出し、本発明を完成した。
なお、前述した特許文献1にも、鋼材中のCとMnの偏析度を制御する技術が開示されているが、本発明のようにCrの偏析状態を何ら考慮していないため、優れた転動疲労寿命を安定して得ることはできないと考えられる。また、上記特許文献1では、CとMnの偏析度を測定するに当たり、特許文献1の図1に示すように鋳片の径方向断面を90°間隔で4等分する夫々の等分線上で、径方向に等間隔となる複数箇所についてC、Mnの含有量を測定しているが、この測定箇所は、本発明における、鋼材の圧延方向に垂直な切断面における測定箇所に相当する。これに対し、本発明では、鋼材の圧延方向に垂直な切断面のみならず、鋼材の圧延方向に平行な切断面におけるCr濃度も測定してCr偏析率を算出しており、鋼材中のCr分布状態をより厳密に制御しているため、転動疲労寿命特性のバラツキを顕著に抑制することができる。実際のところ、後記する実施例の表2のNo.4、および表3のNo.18に示すように鋼材の圧延方向に垂直な切断面のCr偏析率が制御されていても、鋼材の圧延方向に平行な切断面のCr偏析率が制御されていないと、転動疲労寿命特性のバラツキを抑制することはできない。
本明細書において浸炭部品とは、鋼材を浸炭処理、または浸炭窒化処理したものであり、例えば、軸受部品、摺動部品、機械構造用部品等が挙げられる。
以下、本発明に係る浸炭鋼部品の素材として用いることができる、本発明の鋼材について詳述する。
まず、本発明を最も特徴付けるCr偏析率について説明する。本発明では、下記条件で測定して算出されるCr偏析率が2.0以下である点に特徴がある。
(i)測定位置
・前記鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面において前記鋼材の外周部から中心までの線上で、90°ごとに合計4箇所
・前記鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面において前記鋼材の直径の1/4位置の線上で、前記鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所
(ii)測定方法
上記の各測定位置において、EPMAを用いてCr濃度の線分析を行なってCr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出し、合計8箇所の平均をCr偏析率とする。
(i)測定位置
・前記鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面において前記鋼材の外周部から中心までの線上で、90°ごとに合計4箇所
・前記鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面において前記鋼材の直径の1/4位置の線上で、前記鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所
(ii)測定方法
上記の各測定位置において、EPMAを用いてCr濃度の線分析を行なってCr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出し、合計8箇所の平均をCr偏析率とする。
以下、図1および図2を参照しながら、Cr偏析率の測定方法を詳述する。鋼材を切断して、Cr濃度測定用試験片を用意し、以下の手順に従ってCr偏析率を測定する。
まず鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面におけるCr濃度は、図1に示すように上記試験片の外周部から中心部までの線上で、90°ごとに合計4箇所(図1中、1〜4)を測定する。図1の1〜4は、Cr濃度測定用試験片の半径に相当する。すなわち、鋼材の圧延方向垂直断面では試験片の半径にわたってCr濃度を測定する。
一方、鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面におけるCr濃度は、図2に示すように鋼材の直径の1/4位置の線上で、鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所(図2中、5〜8)を測定する。
上記の各測定箇所(図1の1〜4、図2の5〜8)について、EPMAを用いてCr濃
度の線分析を行なう。EPMAの測定条件は以下のとおりである。
・日本電子データム製のJXA−8500F
・加速電圧:15kV
・測定ピッチ:10μm
度の線分析を行なう。EPMAの測定条件は以下のとおりである。
・日本電子データム製のJXA−8500F
・加速電圧:15kV
・測定ピッチ:10μm
それぞれの測定箇所1〜8におけるCr濃度を測定し、Cr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出する。本発明では、合計8箇所の[Cr]max/[Cr]minの平均相対濃度をCr偏析率とする。
上記のように算出される鋼材のCr偏析率は2.0以下である。Cr偏析率が上記範囲
に制御された鋼材に表面硬化処理を行なうと、浸炭鋼部品表層に生成する析出物の分布が
抑制されて、転動疲労寿命が高く、且つバラツキのない浸炭鋼部品を得ることができる。このような効果を有効に発揮させるためにはCr偏析率は小さい程よく、Cr偏析率の上限は、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.7以下である。一方、Cr偏析率の下限は、特に限定されないが製造性などを考慮すると、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上である。
に制御された鋼材に表面硬化処理を行なうと、浸炭鋼部品表層に生成する析出物の分布が
抑制されて、転動疲労寿命が高く、且つバラツキのない浸炭鋼部品を得ることができる。このような効果を有効に発揮させるためにはCr偏析率は小さい程よく、Cr偏析率の上限は、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.7以下である。一方、Cr偏析率の下限は、特に限定されないが製造性などを考慮すると、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.3以上である。
次に、鋼材の鋼中成分について説明する。なお、浸炭鋼部品の鋼中成分は鋼材と同じである。
以下の成分の説明で示す「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
以下の成分の説明で示す「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
C:0.15〜0.25%
Cは、軸受部品などの芯部硬さを確保するために有効な元素である。そのためにC量の下限を0.15%以上とする。C量の下限は、好ましくは0.16%以上、より好ましくは0.17%以上である。しかしながら、C量が0.25%を超えると鋼材の被削性や冷間鍛造性が悪化し、更に軸受部品などの靱性が劣化する。そのためにC量の上限を0.25%以下とする。C量の上限は、好ましくは0.24%以下、より好ましくは0.23%以下である。
Cは、軸受部品などの芯部硬さを確保するために有効な元素である。そのためにC量の下限を0.15%以上とする。C量の下限は、好ましくは0.16%以上、より好ましくは0.17%以上である。しかしながら、C量が0.25%を超えると鋼材の被削性や冷間鍛造性が悪化し、更に軸受部品などの靱性が劣化する。そのためにC量の上限を0.25%以下とする。C量の上限は、好ましくは0.24%以下、より好ましくは0.23%以下である。
Si:0.35〜0.75%
Siは、マトリックスの固溶強化、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性の向上に有効な元素である。そのためにSi量の下限を0.35%以上とする。Si量の下限は、好ましくは0.38%以上、より好ましくは0.40%以上である。しかしながら、Si量が多くなり過ぎると鋼材の被削性や冷間鍛造性が著しく低下する。そのためにSi量の上限を0.75%以下とする。Si量の上限は、好ましくは0.70%以下、より好ましくは0.60%以下である。
Siは、マトリックスの固溶強化、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性の向上に有効な元素である。そのためにSi量の下限を0.35%以上とする。Si量の下限は、好ましくは0.38%以上、より好ましくは0.40%以上である。しかしながら、Si量が多くなり過ぎると鋼材の被削性や冷間鍛造性が著しく低下する。そのためにSi量の上限を0.75%以下とする。Si量の上限は、好ましくは0.70%以下、より好ましくは0.60%以下である。
Mn:0.2〜1%
Mnは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有効な元素である。そのためにMn量の下限を0.2%以上とする。Mn量の下限は、好ましくは0.25%以上、より好ましくは0.30%以上である。しかしながら、Mn量が多くなり過ぎると鋼材の被削性や冷間鍛造性が低下し、浸炭後に残留オーステナイトが多量に発生することで、部品の強度を低下させる。そのためにMn量の上限を1%以下とする。Mn量の上限は、好ましくは0.80%以下、より好ましくは0.60%以下である。
Mnは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有効な元素である。そのためにMn量の下限を0.2%以上とする。Mn量の下限は、好ましくは0.25%以上、より好ましくは0.30%以上である。しかしながら、Mn量が多くなり過ぎると鋼材の被削性や冷間鍛造性が低下し、浸炭後に残留オーステナイトが多量に発生することで、部品の強度を低下させる。そのためにMn量の上限を1%以下とする。Mn量の上限は、好ましくは0.80%以下、より好ましくは0.60%以下である。
Cr:1.2〜1.7%
Crは、本発明における重要な元素であり、焼入れ性を向上させ、表面硬化処理により表面硬化層内に炭化物、窒化物、炭窒化物などの析出物を形成し、転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。更にCrは、転動疲労寿命の安定性に大きく寄与する元素でもある。そのためにCr量の下限を1.2%以上とする。Cr量の下限は、好ましくは1.3%以上、より好ましくは1.35%以上である。しかしながら、Cr量が多くなり過ぎると、鋼材の被削性や冷間鍛造性が低下し、更に粗大な析出物が析出して転動疲労寿命、および転動疲労寿命の安定性を低下させる。そのためにCr量の上限を1.7%以下とする。Cr量の上限は、好ましくは1.6%以下、より好ましくは1.5%以下である。
Crは、本発明における重要な元素であり、焼入れ性を向上させ、表面硬化処理により表面硬化層内に炭化物、窒化物、炭窒化物などの析出物を形成し、転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。更にCrは、転動疲労寿命の安定性に大きく寄与する元素でもある。そのためにCr量の下限を1.2%以上とする。Cr量の下限は、好ましくは1.3%以上、より好ましくは1.35%以上である。しかしながら、Cr量が多くなり過ぎると、鋼材の被削性や冷間鍛造性が低下し、更に粗大な析出物が析出して転動疲労寿命、および転動疲労寿命の安定性を低下させる。そのためにCr量の上限を1.7%以下とする。Cr量の上限は、好ましくは1.6%以下、より好ましくは1.5%以下である。
Mo:0.3〜0.6%
Moは、焼入れ性を著しく向上し、衝撃強度の向上に有効な元素である。そのためにMo量の下限を0.3%以上とする。Mo量の下限は、好ましくは0.35%以上、より好ましくは0.40%以上である。しかしながら、Mo量が多くなり過ぎると被削性が低下し、コストが増加する。そのためにMo量の上限を0.6%以下とする。Mo量の上限は、好ましくは0.55%以下、より好ましくは0.50%以下である。
Moは、焼入れ性を著しく向上し、衝撃強度の向上に有効な元素である。そのためにMo量の下限を0.3%以上とする。Mo量の下限は、好ましくは0.35%以上、より好ましくは0.40%以上である。しかしながら、Mo量が多くなり過ぎると被削性が低下し、コストが増加する。そのためにMo量の上限を0.6%以下とする。Mo量の上限は、好ましくは0.55%以下、より好ましくは0.50%以下である。
P:0%超0.05%以下
Pは、不可避的に不純物として含有する元素であり、粒界に偏析し、加工性を低下させる。そのためにP量の上限を0.05%以下とする。P量の上限は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。しかしながら、P量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにP量の下限は、好ましくは0.001%以上である。
Pは、不可避的に不純物として含有する元素であり、粒界に偏析し、加工性を低下させる。そのためにP量の上限を0.05%以下とする。P量の上限は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。しかしながら、P量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにP量の下限は、好ましくは0.001%以上である。
S:0%超0.05%以下
Sは、不可避的に不純物として含有する元素であり、S量が多くなり過ぎるとMnSとして析出し、微細なクラックの起点となり耐磨耗性を低下させる。そのためにS量の上限を0.05%以下とする。S量の上限は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。しかしながら、S量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにS量の下限は、好ましくは0.001%以上である。
Sは、不可避的に不純物として含有する元素であり、S量が多くなり過ぎるとMnSとして析出し、微細なクラックの起点となり耐磨耗性を低下させる。そのためにS量の上限を0.05%以下とする。S量の上限は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。しかしながら、S量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにS量の下限は、好ましくは0.001%以上である。
Al:0.005〜0.2%
Alは、強度の脱酸作用を有すると共に、Nと結合して窒化物を形成して結晶粒を微細化して転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。そのためにAl量の下限を0.005%以上とする。Al量の下限は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.015%以上である。しかしながら、0.2%を超えてAlを添加してもこの効果は飽和するため、Al量の上限を0.2%以下とした。Al量の上限は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下である。
Alは、強度の脱酸作用を有すると共に、Nと結合して窒化物を形成して結晶粒を微細化して転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。そのためにAl量の下限を0.005%以上とする。Al量の下限は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.015%以上である。しかしながら、0.2%を超えてAlを添加してもこの効果は飽和するため、Al量の上限を0.2%以下とした。Al量の上限は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.05%以下である。
N:0%超0.05%以下
Nは、Alと窒化物を形成してオーステナイト結晶粒の成長を抑制して結晶粒を微細化し、転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。そのためにN量の下限を好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.0015%以上、更に好ましくは0.0020%以上とする。しかしながら、N量が多くなり過ぎると粗大なAlやTiの窒化物が生成し、微細なクラックの起点となる。そのためにN量の上限を0.05%以下とする。N量の上限は、好ましくは0.040%以下、より好ましくは0.020%以下とする。
Nは、Alと窒化物を形成してオーステナイト結晶粒の成長を抑制して結晶粒を微細化し、転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。そのためにN量の下限を好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.0015%以上、更に好ましくは0.0020%以上とする。しかしながら、N量が多くなり過ぎると粗大なAlやTiの窒化物が生成し、微細なクラックの起点となる。そのためにN量の上限を0.05%以下とする。N量の上限は、好ましくは0.040%以下、より好ましくは0.020%以下とする。
O:0%超0.005%以下
Oは、Al、Siと結合して酸化物系介在物を生成して、転動疲労寿命に悪影響を及ぼし、更に冷間加工性にも悪影響を及ぼす元素である。そのためにO量の上限を0.005%以下とする。O量の上限は、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下である。しかしながら、O量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにO量の下限は、好ましくは0.0001%以上である。
Oは、Al、Siと結合して酸化物系介在物を生成して、転動疲労寿命に悪影響を及ぼし、更に冷間加工性にも悪影響を及ぼす元素である。そのためにO量の上限を0.005%以下とする。O量の上限は、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下である。しかしながら、O量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにO量の下限は、好ましくは0.0001%以上である。
Ti:0%超0.014%以下
Tiは、不可避的に不純物として含有する元素であり、鋼中のNと結合して粗大なTiNを生成し易やすく、研磨時の表面性状への悪影響が大きい有害な元素である。そのためにTi量の上限を0.014%以下とする。Ti量の上限は、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.005%以下である。しかしながら、Ti量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにTi量の下限は、好ましくは0.0001%以上である。
Tiは、不可避的に不純物として含有する元素であり、鋼中のNと結合して粗大なTiNを生成し易やすく、研磨時の表面性状への悪影響が大きい有害な元素である。そのためにTi量の上限を0.014%以下とする。Ti量の上限は、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.005%以下である。しかしながら、Ti量を0%にすることは実質的に困難であり、過度に低減すると製鋼コストの増大を招く。そのためにTi量の下限は、好ましくは0.0001%以上である。
本発明に用いられる鋼中元素は上記の通りであり、残部は鉄および不可避的不純物である。上記不可避的不純物は、原料、資材、製造設備などによって混入され得るものであり、例えば、As、H等が挙げられる。
更に本発明の鋼材は、下記の選択元素を含有することもできる。
Cu:0%超1%以下、Ni:0%超1%以下、およびB:0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上
Cu、NiおよびBは、いずれも母相の焼入れ性向上元素として作用し、硬さを高めて転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
Cu、NiおよびBは、いずれも母相の焼入れ性向上元素として作用し、硬さを高めて転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
上記作用を有効に発揮させるために、Cu量、Ni量のそれぞれの下限を、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上とする。B量の下限は、好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0005%以上、更に好ましくは0.0010%以上とする。しかしながら、各元素の含有量が過剰になると鋼材の製造性が劣化することになる。そのために、Cu量、Ni量のそれぞれの上限を、好ましくは1%以下、より好ましくは0.20%以下、更に好ましくは0.15%以下とする。B量の上限は、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.0040%以下、更に好ましくは0.0030%以下とする。
V:0%超1%以下、W:0%超0.5%以下、およびNb:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上
V、W、Nbは、硬質な炭・窒化物を形成し、転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
V、W、Nbは、硬質な炭・窒化物を形成し、転動疲労寿命の向上に寄与する元素である。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を併用しても良い。
上記作用を有効に発揮させるために、V量の下限を、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上とする。W量の下限は、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.007%以上、更に好ましくは0.010%以上とする。Nb量の下限は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.03%以上とする。しかしながら、各元素の含有量が過剰になると鋼材の被削性や冷間鍛造性が低下する。そのためにV量の上限を、好ましくは1%以下、より好ましくは0.9%以下、更に好ましくは0.8%以下とする。W量の上限は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下、更に好ましくは0.3%以下とする。Nb量の上限は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.07%以下とする。
次に、本発明の浸炭鋼部品について説明する。
本発明の浸炭鋼部品は、表面から50μm深さまでの表層に存在する円相当直径0.1〜1.0μmの析出物の個数密度の最小値に対する最大値の比が2.0以下である点に特徴がある。これにより優れた転動疲労寿命の安定性を得ることができる。
また、好ましくは、表面から50μm深さまでの表層に存在する円相当直径0.1〜1.0μmの析出物の個数密度の平均が0.5〜3.0個/μm2である。これにより、優れた転動疲労寿命をえることができる。
また、好ましくは、表面から50μm深さまでの表層に存在する円相当直径0.1〜1.0μmの析出物の個数密度の平均が0.5〜3.0個/μm2である。これにより、優れた転動疲労寿命をえることができる。
本発明において、析出物とは、以下に示すような炭化物形成元素と炭素が結合した全ての炭化物や、窒化物形成元素と窒素が結合した全ての窒化物や、これらが複合した炭窒化物を意味する。
炭化物[(Fe,Cr)3C、(Fe,Cr)7C3、Mo2C、VC等]
窒化物[(Cr,V,Al)N,等]
炭窒化物[(Fe,Cr)3(C,N)、(Fe,Cr)7(C,N)3、Mo2(C,N)、V(C,N)等]
炭化物[(Fe,Cr)3C、(Fe,Cr)7C3、Mo2C、VC等]
窒化物[(Cr,V,Al)N,等]
炭窒化物[(Fe,Cr)3(C,N)、(Fe,Cr)7(C,N)3、Mo2(C,N)、V(C,N)等]
上記析出物の個数密度の平均が0.5個/μm2未満では、優れた転動疲労寿命が得られないため、下限は0.5個/μm2以上であることが好ましい。個数密度の平均の下限は、より好ましくは0.6個/μm2以上、さらにより好ましくは0.7個/μm2以上である。一方、上記析出物の個数密度の平均が3.0個/μm2を超えると、析出物にCr、Mo等が固溶して、母相の焼入れ向上元素の濃度が低くなって焼入れ性が低下し、転動疲労特性が劣化する。そのために、個数密度の平均の上限は好ましくは3.0個/μm2以下である。個数密度の平均の上限は、より好ましくは2.8個/μm2以下、さらにより好ましくは2.6個/μm2以下である。
一方、上記析出物の個数密度の、最小値に対する最大値の比を低減することが、優れた転動疲労寿命を安定して得るために重要である。上記比が2.0を超えると、転動疲労特性を安定して得ることができない。そのために上記比の上限を2.0以下とする。上記比の上限は、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下である。上記比の下限は、特に限定されないが製造性を考慮すると、好ましくは1.2以上である。
次に、本発明の鋼材を製造する方法について説明する。
本発明の製造方法は、上記成分組成を満足する溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの温度域を150℃/時間以上の平均冷却速度で冷却した後、1100〜1300℃に加熱して1.0〜40時間の均熱処理を行うところに特徴を有する。これにより、Crの偏析率を2.0以下に抑制することができる。
まず、溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの温度域の平均冷却速度を150℃/時間以上とする。本発明では、鋳造過程で生じるCrの偏析を抑制するため、溶鋼の冷却条件を適切に制御する必要がある。ここで「溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの温度域」とは、溶鋼の液相線温度から固相線温度までの温度域を意味し、上記温度域の平均冷却速度は、鋳片の平均凝固速度を意味する。上記平均冷却速度が遅いと、凝固が遅すぎるため、Crの濃化部が形成されてCr偏析率が高くなる。上記平均冷却速度が速い程、Cr偏析率は小さくなる。従来の鋼材における上記平均冷却速度は、50℃/時間程度であり、Cr偏析率が非常に高くなっていたと推測される。平均冷却速度の下限は、好ましくは160℃/時間以上、より好ましくは170℃/時間以上である。平均冷却速度の上限は特に限定されないが、製造性などを考慮すると、好ましくは300℃/時間以下、より好ましくは250℃/時間以下である。
ここで、上記平均冷却速度は、先端部に温度感知部を備える熱電対型温度測定器を用いて、以下のようにして測定する。溶鋼を鋳込む鋳型の高さhの1/2位置、直径Dの1/4位置に、上記温度感知部を設置し、溶鋼の温度を直接、測定し、溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの時間を測定して、平均冷却速度を算出する。溶鋼の凝固開始温度と凝固終了温度は、統合型熱力学計算システム(THREMO−CALC SOFTWARE Ver.R、伊藤忠テクノソリューションズ)を用いて、C量、Si量、Cr量、Mn量、Mo量、Al量を指定して算出する。なお、表1に示す成分組成の範囲では、凝固開始温度と凝固終了温度は大きく変化しないことから、後述する実施例では、鋼種Aの算出値である凝固開始温度:1507℃、凝固終了温度:1463℃に基づいて、平均冷却速度を算出した。
次に、上記のように溶鋼の凝固終了温度まで冷却して得られた鋳片を、1100〜1300℃に加熱して1.0〜40時間均熱する。
ここで、上記加熱温度(均熱処理温度)が1100℃を下回る場合、Crの拡散が不十分となるため、Cr偏析率を低減させることができない。そのために上記加熱温度の下限を1100℃以上とする。上記加熱温度の下限は、好ましくは1150℃以上、より好ましくは1170℃以上である。Cr偏析率低減の観点からは上記加熱温度は高い程良いが、高くなり過ぎると製造性などが低下するため、その上限は1300℃以下である。上記加熱温度の上限は、好ましくは1280℃以下、より好ましくは1270℃以下とする。
また、均熱処理時間が1.0時間を下回る場合、Crの拡散が不十分となるためCr偏析率を低減させることができない。そのために均熱処理時間の下限は1.0時間以上とする。従来の鋼材では、加熱後、直ちに冷却を行っていた(均熱処理時間ゼロ)ため、従来の鋼材のCr偏析率は2.0を大きく上回っていたと予想される。均熱処理時間の下限は、好ましくは5時間以上、より好ましくは8時間以上である。Cr偏析率低減の観点からは上記均熱処理時間は長い程良いが、長くなり過ぎると製造性などが低下するため、その上限は40時間以下である。上記均熱処理時間の上限は、好ましくは25時間以下、より好ましくは20時間以下とする。
以上、本発明の製造方法を最も特徴付ける工程について説明した。本発明の製造方法は、上記工程に特徴があり、それ以外の工程は特に限定されず、通常の方法を採用することができる。
本発明の鋼材には線状や棒状のものが含まれるが、このような形状に制御するためには、上記の均熱処理を施した後、常法に従って熱間鍛造し、次いで熱間圧延などの熱間加工を行う。必要に応じて、更に溶体化処理、焼ならし処理を行っても良い。
これらのうち熱間鍛造は、例えば、1100〜1300℃の範囲で行うことが好ましい。熱間鍛造温度が低過ぎると鋳片が変形しにくくなり製造性が低下する。より好ましくは1150℃以上である。一方、熱間鍛造温度が高過ぎると、高温まで加熱するための時間、燃料等が必要になり製造性が低下する。より好ましくは1250℃以下である。
熱間圧延は、例えば、850〜1300℃の範囲に加熱して行うことが好ましい。熱間圧延の加熱温度が低過ぎると、鋼片が変形しにくくなり製造性が低下する。より好ましくは900℃以上である。一方、加熱温度が高過ぎると、高温まで加熱するための時間、燃料等が必要になり製造性が低下する。より好ましくは1200℃以下である。
熱間圧延後、室温まで0.01〜10℃/秒の平均冷却速度で冷却することが好ましい。平均冷却速度が遅過ぎると製造性が低下する。より好ましくは0.05℃/秒以上である。一方、平均冷却速度が速過ぎると割れや疵が発生する。より好ましくは8℃/秒以下である。
溶体化処理は熱間鍛造や熱間圧延の際に生成した粗大な析出物を固溶させる目的で行なわれる。具体的には、1100〜1300℃に加熱し、1〜5時間保持してから0.5〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却することが好ましい。
溶体化処理の加熱温度が低過ぎると析出物が固溶しない。より好ましくは1150℃以上である。一方、加熱温度が高過ぎると製造性が低下する。より好ましくは1250℃以下である。
また、溶体化処理の保持時間が短過ぎると析出物が固溶しない。より好ましくは2時間以上である。一方、保持時間が長過ぎると製造性が低下する。より好ましくは4時間以下である。
溶体化処理後の平均冷却速度は0.5〜20℃/秒であることが好ましい。上記平均冷却速度が遅過ぎると粗大な析出物が生成し、固溶させることができない。より好ましくは1.0℃/秒以上である。一方、平均冷却速度が速過ぎると割れや疵が発生する。より好ましくは10℃/秒以下である。
焼ならし処理は、フェライト単相、パーライト単相、フェライトとパーライトの複相組織、または初析セメンタイトとパーライトの複相組織からなる均一な組織を得る目的で行われる。具体的には、焼ならし処理は、750〜1100℃に加熱し、10分以上5時間以下保持してから、0.01〜10℃/秒の平均冷却速度で室温まで冷却すればよい。
焼ならし処理の加熱温度が低過ぎると加熱が不十分となり、上述した焼きならし効果が得られない。より好ましくは760℃以上である。一方、加熱温度が高過ぎると製造性が低下する。より好ましくは1050℃以下である。
また、焼ならし処理の保持時間が短過ぎると加熱が不十分となり、上述した焼きならし効果が得られない。より好ましくは20分以上である。一方、保持時間が長過ぎると製造性が低下する。より好ましくは4時間以下である。
焼ならし処理の平均冷却速度は0.01〜10℃/秒であることが好ましい。上記平均冷却速度が遅過ぎると製造性が低下する。より好ましくは0.02℃/秒以上である。一方、平均冷却速度が速過ぎると割れや疵が発生する。より好ましくは8℃/秒以下である。
このようにして得られた本発明の鋼材は、Cr偏析率が2.0以下に制御されているため、転動疲労寿命の安定性に優れている。
本発明の鋼材は、自動車や各種産業の機械等に使用される軸受部品、摺動部品、機械構造用部品などの素材として好適に用いられる。上記部品としては、例えば、ころ軸受、玉軸受等の転がり軸受;転がり軸受の内・外輪;転がり軸受の転動体;シャフト、ギヤ等の転がり接触部品が挙げられる。
次に本発明に係る浸炭鋼部品の製造方法を説明する。
本発明の浸炭鋼部品は、上記のようにして得られた鋼材を、常法に従って被削や冷間鍛造等の冷間加工を行い、所定の部品形状とした後、浸炭処理または浸炭窒化処理することによって得られる。
本発明の浸炭鋼部品は、上記のようにして得られた鋼材を、常法に従って被削や冷間鍛造等の冷間加工を行い、所定の部品形状とした後、浸炭処理または浸炭窒化処理することによって得られる。
表面硬化処理のうち浸炭処理としては、例えば850〜950℃で1時間以上6時間以下、Cp(Carbon Potential):0.6〜1.4%で浸炭した後、油や水等の冷媒を用いて焼入れを行う方法が挙げられる。この時の冷却は、好ましくは680℃まで、より好ましくは650℃まで、好ましくは50℃/秒以上150℃/秒以下、より好ましくは70℃/秒以上130℃/秒以下の平均冷却速度で行う。
例えば以下のように2段階の浸炭処理を行う方法、浸炭後に窒化を行う浸炭窒化を行う方法が好ましく用いられる。
(1)2段階の浸炭処理
上記2段階の浸炭処理は、900〜950℃にてCp(Carbon Potential):1.0〜1.4%の雰囲気で2〜6時間保持した後、680℃まで50℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する第1浸炭工程と、800〜880℃まで25℃/分以上の平均昇温速度で加熱し、上記温度にてCp:0.8〜1.2%の雰囲気で0.5〜8時間保持した後、焼入れを行う第2浸炭工程と、を含むことが好ましい。
(1)2段階の浸炭処理
上記2段階の浸炭処理は、900〜950℃にてCp(Carbon Potential):1.0〜1.4%の雰囲気で2〜6時間保持した後、680℃まで50℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する第1浸炭工程と、800〜880℃まで25℃/分以上の平均昇温速度で加熱し、上記温度にてCp:0.8〜1.2%の雰囲気で0.5〜8時間保持した後、焼入れを行う第2浸炭工程と、を含むことが好ましい。
第1浸炭工程における保持温度が900℃を下回ると、表層の浸炭量が不足し、第2浸炭工程を実施しても微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのために保持温度の下限は、好ましくは900℃以上、より好ましくは930℃以上である。一方、950℃を超えると、表層の炭素量が過剰となり、第2浸炭工程で析出物量が過剰となる。析出物量が多くなると、析出物のバラツキは低減されるが、母相の焼入れ向上元素の濃度が低くなって焼入れ性が低下し、転動疲労特性が劣化する。そのために保持温度の上限は、好ましくは950℃以下、より好ましくは940℃以下である。
第1浸炭工程におけるCpが1.0%を下回ると、表層の浸炭量が不足し、第2浸炭工程を実施しても微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのためにCpの下限は、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.1%以上である。一方、Cpが1.4%を超えると、表層の炭素量が過剰となる。そのためにCpの上限は、好ましくは1.4%以下、より好ましくは1.3%以下である。
第1浸炭工程における保持時間が2時間を下回ると、表層の浸炭量が不足し、第2浸炭工程を実施しても微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのために保持時間の下限は、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上である。一方、保持時間が6時間を超えると、表層の炭素量が過剰となる。そのために保持時間の上限は、好ましくは6時間以下、より好ましくは5時間以下である。
第1浸炭工程における平均冷却速度が遅いと、冷却過程で粗大な析出物が生成し、所望の微細な析出物の量が不足する。そのために、好ましくは680℃まで、より好ましくは650℃まで、好ましくは50℃/秒以上、より好ましくは70℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する。平均冷却速度の上限は、特に限定されないが、製造性を考慮すると、好ましくは150℃/秒以下、より好ましくは130℃/秒以下である。
第1浸炭工程における冷却方法は、油や水等の冷媒へ焼入れを行ってもよいし、ガス冷却を行ってもよい。
第2浸炭工程における平均昇温速度が遅いと、加熱過程で粗大な析出物が生成し、所望の微細な析出物の量が不足する。そのために、好ましくは800〜880℃まで、より好ましくは820〜860℃まで、好ましくは25℃/分以上、より好ましくは30℃/分以上の昇温速度で加熱する。平均昇温速度の上限は、特に限定されないが製造性などを考慮すると、100℃/分以下である。
第2浸炭工程における保持温度が800℃を下回ると、表層の浸炭量が不足し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのために保持温度の下限は、好ましくは800℃以上、より好ましくは820℃以上である。一方、880℃を超えると、炭素が母相に固溶し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのために保持温度の上限は、好ましくは880℃以下、より好ましくは860℃以下である。
第2浸炭工程におけるCpが0.8%を下回ると、表層の浸炭量が不足し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのためにCpの下限は、好ましくは0.8%以上、より好ましくは0.9%以上である。一方、Cpが1.2%を超えると、析出物量が過剰となる。そのためにCpの上限は、好ましくは1.2%以下、より好ましくは1.1%以下である。
第2浸炭工程における保持時間が0.5時間を下回ると、表層の浸炭量が不足し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのために保持時間の下限は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは2時間以上である。一方、保持時間が8時間を超えると、析出物量が過剰となる。そのために保持時間の上限は、好ましくは8時間以下、より好ましくは7時間以下である。
上記保持後に、油や水等の冷媒へ焼入れを行うことにより、微細な析出物を分散させることができる。
なお、Cpの測定は、O2センサ法や赤外線分析計によるCO2法、露点測定法、鉄線を用いたカーボンポテンションメータなど一般に用いられる方法によって測定可能である。そのうちCpコイルと呼ばれる鉄線を炉内雰囲気に放置し、このCpコイルを用いて赤外線吸収法などによって定量分析する方法が、測定精度の点で最も優れている。
(2)浸炭窒化処理
上記浸炭窒化処理は、900〜950℃にてCp:0.7〜1.2%の雰囲気で2〜6時間保持した後、800〜880℃まで冷却する浸炭工程と、冷却温度にてCp:0.5
〜0.9%、NH3量:6〜12体積%の雰囲気で2〜8時間保持した後、焼入れを行う窒化工程と、を含むことが好ましい。
上記浸炭窒化処理は、900〜950℃にてCp:0.7〜1.2%の雰囲気で2〜6時間保持した後、800〜880℃まで冷却する浸炭工程と、冷却温度にてCp:0.5
〜0.9%、NH3量:6〜12体積%の雰囲気で2〜8時間保持した後、焼入れを行う窒化工程と、を含むことが好ましい。
このうち浸炭工程の好ましい条件は、Cpが0.7〜1.2%であることと、800〜880℃まで冷却することを除いて、前述した2段階の浸炭処理における第1浸炭工程の条件と同じである。
浸炭工程におけるCpが0.7%を下回ると、表層の浸炭量が不足し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのためにCpの下限は、好ましくは0.7%以上、より好ましくは0.8%以上である。一方、Cpが1.2%を超えると、表層の炭素量が過剰となり、析出物量が過剰となる。そのためにCpの上限は、好ましくは1.2%以下、より好ましくは1.1%以下である。
900〜950℃から800〜880℃の冷却は、炉冷すればよい。
窒化工程における保持温度が800℃を下回ると、表層の浸炭、浸窒量が不足し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのために保持温度の下限は、好ましくは800℃以上、より好ましくは820℃以上である。一方、880℃を超えると、炭素、窒素が母相に固溶し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのために保持温度の上限は、好ましくは880℃以下、より好ましくは860℃以下である。
窒化工程におけるCpが0.5%を下回ると、表層の浸炭、浸窒量が不足し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのためにCpの下限は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.6%以上である。一方、Cpが0.9%を超えると、析出物量が過剰となる。そのためにCpの上限は、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。
窒化工程におけるNH3量が6体積%を下回ると、表層の浸炭、浸窒量が不足し、微細な析出物の量を十分に確保することができない。そのためにNH3量の下限は、好ましくは6体積%以上、より好ましくは7体積%以上である。一方、NH3量が12体積%を超えると、析出物量が過剰となる。そのためにNH3量の上限は、好ましくは12体積%以下、より好ましくは10体積%以下である。
上記保持後に、油や水等の冷媒へ焼入れを行うことにより、微細な析出物を分散させることができる。
上記の表面硬化処理の後、必要に応じて焼戻し処理を行ってもよい。焼戻し処理は、例えば80〜250℃で30〜240分間行うことが好ましい。
このようにして得られた本発明の浸炭鋼部品は、自動車や各種産業の機械等に使用される軸受部品、摺動部品、機械構造用部品等の素材として好適に用いられる。上記部品としては、例えば、ころ軸受、玉軸受等の転がり軸受;転がり軸受の内・外輪;転がり軸受の転動体;シャフト、ギヤ等の転がり接触部品が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
実施例1では、鋼材を浸炭処理した後の転動疲労寿命を測定した。
実施例1では、鋼材を浸炭処理した後の転動疲労寿命を測定した。
試験片の作製
容量150kg/1chの小型溶解炉を用いて、表1に示す各種化学成分組成の供試鋼を溶製し、表2に示す平均冷却速度で冷却した後、表2に示す条件で均熱処理して鋳片を作製した。このようにして得られた鋳片を1250℃に加熱した後、1200℃で熱間鍛造し、室温まで冷却した。次いで1100℃に加熱して熱間圧延を行い、室温まで0.5℃/秒の平均冷却速度で冷却することにより直径D70mmの丸棒鋼を製造した。なお、上記平均冷却速度は、前述した方法により算出した。
容量150kg/1chの小型溶解炉を用いて、表1に示す各種化学成分組成の供試鋼を溶製し、表2に示す平均冷却速度で冷却した後、表2に示す条件で均熱処理して鋳片を作製した。このようにして得られた鋳片を1250℃に加熱した後、1200℃で熱間鍛造し、室温まで冷却した。次いで1100℃に加熱して熱間圧延を行い、室温まで0.5℃/秒の平均冷却速度で冷却することにより直径D70mmの丸棒鋼を製造した。なお、上記平均冷却速度は、前述した方法により算出した。
次に、このようにして得られた丸棒鋼より、下記の測定箇所が観察できるように直径D70mmの試験片を切り出して前述した方法によりCr偏析率を算出した。表2には、上記Cr偏析率(合計8箇所の平均)と共に、参考のため、鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面におけるCr偏析率(測定箇所1〜4の平均)、および鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面におけるCr偏析率(測定箇所5〜8の平均)も算出して併記した。
浸炭処理後の転動疲労寿命の測定
上記丸棒鋼から、直径:60mm、厚さ:5mmの円盤状の試験片を切り出した。次いで、940℃で3時間、Cp:0.85%で浸炭し、油焼入れを行った。その後、160℃で120分間、焼戻しを行った。なお、浸炭後の冷却における平均冷却速度は、680℃まで70℃/秒であった。また、浸炭処理のベースガスとしてRXガス、Cpを制御する浸炭ガスとしてプロパンガスを用いた。Cpは、Cpコイルを用いて測定した。
上記丸棒鋼から、直径:60mm、厚さ:5mmの円盤状の試験片を切り出した。次いで、940℃で3時間、Cp:0.85%で浸炭し、油焼入れを行った。その後、160℃で120分間、焼戻しを行った。なお、浸炭後の冷却における平均冷却速度は、680℃まで70℃/秒であった。また、浸炭処理のベースガスとしてRXガス、Cpを制御する浸炭ガスとしてプロパンガスを用いた。Cpは、Cpコイルを用いて測定した。
各試験No.毎に16個の焼戻し後の試験片を用いて、スラスト型転動疲労試験機にて、繰り返し数:1500rpm、面圧:5.3GPa、中止回数:2×108回の条件で転動疲労寿命を測定した。転動疲労寿命の安定性の指標として、ワイブル係数mを用いた。ワイブル係数mは、転動疲労寿命の試験結果をワイブル確率紙にプロットして求められる近似曲線の傾きである。ワイブル係数mが大きいほど転動疲労寿命の安定性に優れていることを示す。本実施例では、ワイブル係数mが0.6以上のとき転動疲労寿命の安定性に優れていると評価した。また、参考のためにワイブル係数mを算出する際に求められるL10寿命、すなわち累積破損確率10%における疲労破壊までの応力繰り返し数も表2に示す。
これらの結果から、次のように考察することができる。
表2の試験No.1、2、6〜13は、本発明で規定する成分組成を満足する表1の鋼種A〜F、L、Oを用いて、本発明で規定する要件を満足する表2の試験No.1、2、6〜13の製造条件で製造した例である。これらは、ワイブル係数mが0.6以上であり、浸炭処理後の転動疲労寿命の安定性に優れていることが分かる。
これに対して、以下の試験No.は、本発明で規定する要件のいずれかを満足しないものである。
表2の試験No.3は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、平均冷却速度が遅いためにCr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表2の試験No.4は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理温度が低いためにCr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。詳細には、表2に示す通り試験No.4は、圧延方向垂直のCr偏析率は小さかったが、圧延方向平行のCr偏析率が大きかったため、平均のCr偏析率が大きくなり転動疲労寿命の安定性が低くなった。このように、圧延方向垂直のCr偏析率を低減させるだけでは転動疲労寿命の安定性を向上させることはできないことが分かる。
表2の試験No.5は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理時間が短いためにCr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表2の試験No.14は、Cr量が少ない表1の鋼種Pを用いた例であり、Cr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表2の試験No.15は、Cr量が多い表1の鋼種Qを用いた例であり、Cr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
実施例2
実施例2では、鋼材を浸炭窒化処理した後の転動疲労寿命を測定した。
実施例2では、鋼材を浸炭窒化処理した後の転動疲労寿命を測定した。
上記実施例1において、表3に示す平均冷却速度で凝固終了温度まで冷却を行ったこと、および表3に示す条件で均熱処理を行ったこと以外は上記実施例1と同様の方法により丸棒鋼を製造してCr偏析率を測定した。
次に、上記丸棒鋼に対して上記実施例1と同様の方法により浸炭処理を行った後、860℃まで冷却して、当該温度で2時間、Cp:0.7%、NH3量4体積%で窒化し、油焼入れを行った。その後、160℃で120分間、焼戻しを行った。なお、窒化ガスは、NH3ガスを用い、ベースガス(RXガス)に対して4体積%の割合とした。Cpは、Cpコイルを用いて測定した。
得られた試験片を用いて、実施例1と同様の方法にて転動疲労寿命を測定し、ワイブル係数mが0.6以上のときを転動疲労寿命の安定性に優れていると評価した。
これらの結果を表3に記載する。
これらの結果から、次のように考察することができる。
表3の試験No.16、19、20、22〜28は、本発明で規定する成分組成を満足する表1の鋼種A、G〜K、M、Nを用いて、本発明で規定する要件を満足する表3の試験No.16、19、20、22〜28の製造条件で製造した例である。これらは、ワイブル係数mが0.6以上であり、浸炭窒化処理後の転動疲労寿命の安定性に優れていることが分かる。
これに対して、以下の試験No.は、本発明で規定する要件のいずれかを満足しないものである。
表3の試験No.17は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、平均冷却速度が遅いためにCr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表3の試験No.18は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理温度が低いためにCr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。詳細には、表3に示す通り試験No.18は、圧延方向垂直のCr偏析率は小さかったが圧延方向平行のCr偏析率が大きかったため、平均のCr偏析率が大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。このように圧延方向垂直のCr偏析率を低減させるだけでは転動疲労寿命の安定性を向上させることはできないことが分かる。
表3の試験No.21は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理時間が短いためにCr偏析率が大きくなって、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
上記実施例1および2の結果より、本発明の鋼材を用いれば、浸炭処理後および浸炭窒化処理後の部品について、安定して優れた転動疲労寿命を確保できることが分かる。
実施例3
実施例3では、鋼材に2段階の浸炭処理を施した後の転動疲労寿命を測定した。
実施例3では、鋼材に2段階の浸炭処理を施した後の転動疲労寿命を測定した。
試験片の作製
容量150kg/1chの小型溶解炉を用いて、表4に示す各種化学成分組成の供試鋼を溶製し、表5に示す平均冷却速度で冷却した後、表5に示す条件で均熱処理して鋳片を作製した。このようにして得られた鋳片を1250℃に加熱した後、1200℃で熱間鍛造し、室温まで冷却した。次いで1100℃に加熱して熱間圧延を行い、室温まで0.5℃/秒の平均冷却速度で冷却することにより直径D70mmの丸棒鋼を製造した。なお、上記平均冷却速度は、前述した方法により算出した。
容量150kg/1chの小型溶解炉を用いて、表4に示す各種化学成分組成の供試鋼を溶製し、表5に示す平均冷却速度で冷却した後、表5に示す条件で均熱処理して鋳片を作製した。このようにして得られた鋳片を1250℃に加熱した後、1200℃で熱間鍛造し、室温まで冷却した。次いで1100℃に加熱して熱間圧延を行い、室温まで0.5℃/秒の平均冷却速度で冷却することにより直径D70mmの丸棒鋼を製造した。なお、上記平均冷却速度は、前述した方法により算出した。
上記丸棒鋼から、直径:60mm、厚さ:5mmの円盤状の試験片を切り出した。次いで、表5に示す条件で2段階の浸炭処理を行った。その後、160℃で120分間、焼戻しを行った。なお、第1浸炭工程と第2浸炭工程の冷却は、油焼入れを行った。第1浸炭工程における650℃までの冷却は、平均冷却速度:70℃/秒で行った。また、第2浸炭工程における820〜860℃までの昇温は、平均昇温速度:30℃/分で行った。また、浸炭処理のベースガスとしてRXガス、Cpを制御する浸炭ガスとしてプロパンガスを用いた。Cpは、Cpコイルを用いて測定した。
表層の円相当直径0.1〜1.0μmの炭化物、窒化物、および炭窒化物の測定
上記焼戻し後の試験片を用いて、表面から50μm位置までの表層に存在する円相当直径0.1〜1.0μmの析出物を次の手順で測定した。試験片の表面から50μm位置までの領域が観察できるように切断し、切断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて、8000倍で観察し、析出物を同定した。上記析出物のうち本発明で対象とする炭化物、窒化物、および炭窒化物の同定は、日本電子データム社製の電子線マイクロプローブX線分析装置を用いて当該析出物中の成分(C、N、Cr、Mo、V、Al)を分析することにより行った。上記のようにして同定した炭化物、窒化物、および炭窒化物について、粒子解析ソフト[粒子解析III for Windows. Version3.00 SUMITOMO METAL TECHNOLOGY(商品名)]を用い、観察視野数は10視野(1視野の面積:108μm2)とし、円相当直径を測定した。このうち円相当直径が0.1〜1.0μmの炭化物、窒化物、および炭窒化物の個数を計測し、1μm2に換算した個数密度の平均値を表6に示す。また、視野毎にも個数密度を算出した。下記表6には、10視野中に観察された個数密度(すなわち、10視野おいて視野毎に求めた個数密度)の、最小値に対する最大値の比を併せて示す。
上記焼戻し後の試験片を用いて、表面から50μm位置までの表層に存在する円相当直径0.1〜1.0μmの析出物を次の手順で測定した。試験片の表面から50μm位置までの領域が観察できるように切断し、切断面を研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて、8000倍で観察し、析出物を同定した。上記析出物のうち本発明で対象とする炭化物、窒化物、および炭窒化物の同定は、日本電子データム社製の電子線マイクロプローブX線分析装置を用いて当該析出物中の成分(C、N、Cr、Mo、V、Al)を分析することにより行った。上記のようにして同定した炭化物、窒化物、および炭窒化物について、粒子解析ソフト[粒子解析III for Windows. Version3.00 SUMITOMO METAL TECHNOLOGY(商品名)]を用い、観察視野数は10視野(1視野の面積:108μm2)とし、円相当直径を測定した。このうち円相当直径が0.1〜1.0μmの炭化物、窒化物、および炭窒化物の個数を計測し、1μm2に換算した個数密度の平均値を表6に示す。また、視野毎にも個数密度を算出した。下記表6には、10視野中に観察された個数密度(すなわち、10視野おいて視野毎に求めた個数密度)の、最小値に対する最大値の比を併せて示す。
浸炭処理後の転動疲労寿命の測定
各試験No.毎に16個の焼戻し後の試験片を用いて、スラスト型転動疲労試験機にて、繰り返し数:1500rpm、面圧:5.3GPa、中止回数:2×108回の条件で転動疲労寿命を測定した。累積破損確率10%における疲労破壊までの応力繰り返し数、すなわち転動疲労寿命L10(L10寿命)が1.0×107回以上を転動疲労寿命に優れており好ましいと評価した。転動疲労寿命の安定性の指標として、ワイブル係数mを用いた。ワイブル係数mは、転動疲労寿命の試験結果をワイブル確率紙にプロットして求められる近似曲線の傾きである。ワイブル係数mが大きいほど転動疲労寿命の安定性に優れていることを示す。本実施例では、ワイブル係数mが0.6以上のとき転動疲労寿命の安定性に優れていると評価した。
各試験No.毎に16個の焼戻し後の試験片を用いて、スラスト型転動疲労試験機にて、繰り返し数:1500rpm、面圧:5.3GPa、中止回数:2×108回の条件で転動疲労寿命を測定した。累積破損確率10%における疲労破壊までの応力繰り返し数、すなわち転動疲労寿命L10(L10寿命)が1.0×107回以上を転動疲労寿命に優れており好ましいと評価した。転動疲労寿命の安定性の指標として、ワイブル係数mを用いた。ワイブル係数mは、転動疲労寿命の試験結果をワイブル確率紙にプロットして求められる近似曲線の傾きである。ワイブル係数mが大きいほど転動疲労寿命の安定性に優れていることを示す。本実施例では、ワイブル係数mが0.6以上のとき転動疲労寿命の安定性に優れていると評価した。
これらの結果から、次のように考察することができる。
表6の試験No.1〜3、8〜17、20、21は、本発明で規定する成分組成を満足する表4の鋼種A、B、D、F〜H、Q、Tを用いて、本発明で規定する要件を満足する表5の試験No.1〜3、8〜17、20、21の製造条件で製造した例である。これらは、鋼材のCr偏析率が抑制された結果、浸炭鋼部品表層の上記析出物の個数密度の最小値に対する最大値の比が適切に制御されているため、ワイブル係数mが0.6以上であり、浸炭処理後の転動疲労寿命の安定性に優れていることが分かる。
これらのうち、試験No.1、3、9、10、12、14〜16、20、21は、表5に示す浸炭処理が本発明の好ましい浸炭処理条件で行われていることから、L10寿命が1.0×107回以上と転動疲労寿命に優れており好ましいことが分かる。
これに対して、以下の試験No.は、本発明で規定する要件のいずれかを満足しないものである。
表6の試験No.4は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、鋳造時の平均冷却速度が遅いために微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表6の試験No.5は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理温度が低いために微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表6の試験No.6は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理時間が短いために微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表6の試験No.7は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、鋳造時の平均冷却速度が遅く、均熱処理温度が低く、均熱処理時間が短いために、微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。
表6の試験No.18は、Cr量が少ない表4の鋼種Uを用いた例であり、微細な析出物の個数密度が小さくなってL10寿命が低くなった。
表6の試験No.19は、Cr量が多い表4の鋼種Vを用いた例であり、微細な析出物の個数密度が大きくなってL10寿命が低くなった。
実施例4
実施例4では、鋼材に浸炭窒化処理を施した後の転動疲労寿命を測定した。
実施例4では、鋼材に浸炭窒化処理を施した後の転動疲労寿命を測定した。
具体的には、前述した実施例3において、表7に示す平均冷却速度で冷却した後、表7に示す条件で均熱処理したこと以外は上記実施例3と同様の方法により丸棒鋼を製造した。
次に、上記実施例3と同様の方法により、上記丸棒鋼より円盤状の試験片を切り出し、表7に示す条件で、浸炭処理、および窒化処理を行った後、160℃で120分間、焼戻しを行った。なお、浸炭工程と窒化工程の冷却は、油焼入れを行った。また、浸炭処理のベースガスとしてRXガス、Cpを制御する浸炭ガスとしてプロパンガスを用い、Cpは、Cpコイルを用いて測定した。窒化ガスは、NH3ガスを用い、ベースガス(RXガス)に対して4体積%の割合とした。
得られた試験片を用いて、実施例3と同様の方法にて転動疲労寿命を測定し、L10寿命が1.0×107回以上を転動疲労寿命に優れており好ましいと評価し、ワイブル係数mが0.6以上のときを転動疲労寿命の安定性に優れていると評価した。
これらの結果を表8に記載する。
これらの結果から、次のように考察することができる。
表8の試験No.22、26、27、29〜38は、本発明で規定する成分組成を満足する表4の鋼種A、K、M〜O、Rを用いて、本発明で規定する要件を満足する表7の試験No.22、26、27、29〜38の製造条件で製造した例である。これらは、鋼材のCr偏析率が抑制された結果、浸炭鋼部品表層の上記析出物の個数密度の最小値に対する最大値の比が適切に制御されているため、ワイブル係数mが0.6以上であり、浸炭窒化処理後の転動疲労寿命およびその安定性に優れていることが分かる。
これのうち、試験No.22、26、27、31、33〜35、37は、表7に示す浸窒化炭処理が本発明の好ましい浸炭窒化処理条件で行われていることから、L10寿命が1.0×107回以上と転動疲労寿命に優れており好ましいことが分かる。
これに対して、以下の試験No.は、本発明で規定する要件のいずれかを満足しないものである。
表8の試験No.23は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、鋳造時の平均冷却速度が遅いために、微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表8の試験No.24は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理温度が低いために微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
表8の試験No.25は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、鋳造時の平均冷却速度が遅く、均熱処理温度が低く、均熱処理時間が短いために、微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。
表8の試験No.28は、成分組成は本発明の要件を満足しているが、均熱処理時間が短いために、微細な析出物の個数密度のバラツキが大きくなり、転動疲労寿命の安定性が低くなった。更に、L10寿命も低くなった。
なお、表中には記載していないが、これらの実施例3、4で用いた丸棒鋼のCr偏析率を測定すると、本発明の成分組成と鋳造時の冷却条件およびその後の均熱条件を満足するものは、Cr偏析率:2.0以下であったことを確認している。
1、2、3、4 圧延方向に垂直な任意の断面のCr濃度の測定箇所
5、6、7、8 圧延方向に平行な任意の断面のCr濃度の測定箇所
5、6、7、8 圧延方向に平行な任意の断面のCr濃度の測定箇所
Claims (9)
- 質量%で
C :0.15〜0.25%、
Si:0.35〜0.75%、
Mn:0.2〜1%、
Cr:1.2〜1.7%、
Mo:0.3〜0.6%、
P :0%超0.05%以下、
S :0%超0.05%以下、
Al:0.005〜0.2%、
N :0%超0.05%以下、
O :0%超0.005%以下、および
Ti:0%超0.014%以下を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、
下記条件で測定して求められるCr偏析率が2.0以下であることを特徴とする転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材。
(i)測定位置
・前記鋼材の圧延方向に垂直な任意の切断面において前記鋼材の外周部から中心までの線上で、90°ごとに合計4箇所
・前記鋼材の圧延方向に平行な任意の切断面において前記鋼材の直径の1/4位置の線上で、前記鋼材の中心を起点として90°ごとに長さ5mmに渡って合計4箇所
(ii)測定方法
上記の各測定位置において、EPMAを用いてCr濃度の線分析を行なってCr濃度の最低値[Cr]min、最大値[Cr]maxを求めて[Cr]max/[Cr]minを算出し、合計8箇所の平均をCr偏析率とする。 - 更に、質量%で、
Cu:0%超1%以下、
Ni:0%超1%以下、および
B :0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する請求項1に記載の鋼材。 - 更に、質量%で、
V :0%超1%以下、
W :0%超0.5%以下、および
Nb:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する請求項1または2に記載の鋼材。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材を製造する方法であって、
溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの温度域を150℃/時間以上の平均冷却速度で冷却した後、1100〜1300℃に加熱して1.0〜40時間均熱処理を行うことを特徴とする転動疲労寿命の安定性に優れた鋼材の製造方法。 - 質量%で、
C :0.15〜0.25%、
Si:0.35〜0.75%、
Mn:0.2〜1%、
Cr:1.2〜1.7%、
Mo:0.3〜0.6%、
P :0%超0.05%以下、
S :0%超0.05%以下、
Al:0.005〜0.2%、
N :0%超0.05%以下、
O :0%超0.005%以下、および
Ti:0%超0.014%以下を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、
表面から50μm深さまでの表層に存在する円相当直径0.1〜1.0μmの炭化物、窒化物、および炭窒化物の個数密度の最小値に対する最大値の比が2.0以下であることを特徴とする転動疲労寿命およびその安定性に優れた浸炭鋼部品。 - 前記個数密度の平均が0.5〜3.0個/μm2である請求項5に記載の浸炭鋼部品。
- 更に、質量%で、
Cu:0%超1%以下、
Ni:0%超1%以下、および
B :0%超0.005%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する請求項5または6に記載の浸炭鋼部品。 - 更に、質量%で、
V :0%超1%以下、
W :0%超0.5%以下、および
Nb:0%超0.1%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する請求項5〜7のいずれか1項に記載の浸炭鋼部品。 - 請求項5〜8のいずれか1項に記載の浸炭鋼部品を製造する方法であって、
溶鋼の凝固開始温度から凝固終了温度までの温度域を150℃/時間以上の平均冷却速度で冷却し、1100〜1300℃に加熱して1.0〜40時間均熱処理を行って鋼材を製造した後、浸炭処理または浸炭窒化処理することを特徴とする転動疲労寿命およびその安定性に優れた浸炭鋼部品の製造方法。
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