JP3712444B2 - デジタル制御装置の異常評価装置と異常評価方法 - Google Patents
デジタル制御装置の異常評価装置と異常評価方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、原子力プラントなどにおいて用いられるマイクロプロセッサを利用したデジタル制御に係り、デジタル制御装置に異常が発生した場合にデジタル制御機器やプラントに与える影響の評価と予測をして、運転員による対処操作の支援をするデジタル制御装置の評価装置と評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電プラントなど多くのプラントにおいては、プラントの各部におけるプロセスパラメータの制御や、各種プラント機器の制御のために多数の制御装置が設備されている。
【0003】
この制御装置はプロセスパラメータの値を所定の値や、または他のプロセスパラメータや機器の動作状態から計算される目標値に追従するように制御を行ったり、プロセスパラメータの値やプラントの運転状態に応じて、当該プラント機器の動作を論理積(AND)、または論理和(OR)などの信号の組み合わせ論理より制御(以下シーケンス制御と呼ぶ)を行ったりするもので、通常プラントにおいては、目的に応じた複数の制御装置が設備されている。
【0004】
このような制御装置について、従来はリレーやアンプなどアナログ式の電気部品を用いて構成していたが、近年はマイクロプロセッサによりプロセスパラメータの制御目標値を計算したり、シーケンス制御のための信号の論理演算を行ったりするデジタル式の制御装置が用いられるようになってきた。
【0005】
このデジタル式の制御装置を用いた原子力発電所の計装制御システムは、例えば図8の構成図に示すように、複数のデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nは、それぞれの目的に応じて配置されたデジタル制御装置である。
【0006】
このデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nは、プラント2から、メタルケーブル3のみ、または現場多重伝送装置4a,4bおよび光多重伝送ライン5aを介して、プラント2のプロセスパラメータの値や各種機器の動作状態を入力する。
【0007】
ここで定められた信号演算を行ない、この演算結果である制御目標値や機器の制御信号を、プラント2からの入力の経路を逆にたどってプラント2内の当該各種機器に出力して所定の制御運転を行う。
【0008】
さらに、デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nの演算結果や、プラント2から出力したプロセスパラメータの値、およびプラント機器の動作状態は、光多重伝送ライン5bを介して、プロセス計算機6や中央制御盤7に伝送されて、運転員に提示されるようになっている。
【0009】
なお、例えばデジタル制御装置1aの演算結果、および入力したプロセスパラメータの値や機器の動作状態のうちで必要なものは、光多重伝送ライン5bを介して他のデジタル制御装置1b〜1nにも伝送され、デジタル制御装置1b〜1nにおける演算にも利用されている。
【0010】
このように構成される光多重伝送ライン5a,5bの採用は、一般には伝送する伝送信号量と伝送距離、ノイズなどの環境条件、および光多重伝送ライン5a,5bの布設コストなどを総合的に評価して選定され、場合によっては光多重伝送ライン5a,5bの代りに専用のメタルケーブル3を使用する場合もある。
【0011】
また、図9のブロック構成図に示すように、デジタル制御装置1aは、中央演算装置(CPU)8やメモリ9を備え、必要に応じて光多重伝送ボード10a,10b〜10n、およびプロセス入出力装置11a,11b〜11nを必要な入出力点数だけ備えている。
【0012】
なおこれらは、互いにバス12を介して接続されており、光多重伝送ボード10a,10b〜10nには光伝送ライン13が接続され、この光伝送ライン13は、信号伝送先である他のデジタル制御装置1b〜1nや、現場多重伝送装置4a,4bおよびプロセス計算機6、中央制御盤7などと接続している。
【0013】
一方、プロセス入出力装置11a,11b〜11nは、取り扱う信号によってデジタル入力ボード、デジタル出力ボード、アナログ出力ボード、アナログ入力ボードなど多種類のボードがあり、一枚のボードは通常複数の信号を取り扱うことができる。
【0014】
このプロセス入出力装置11a,11b〜11nの入出力信号は、信号1点毎にメタルケーブル3で伝送されるが、一旦信号端子台14に集められてから、再び信号1点毎にメタルケーブル3により伝送先に接続されるが通常である。このようなデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nの構成は、要求される信頼度により多重化される場合がある。
【0015】
以上のようなデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nを構成する各ボードは、例えば図10の斜視図に示す制御盤15に収納される。すなわち、制御盤15内にはいくつかのユニット16a〜16cを設け、このユニット16a〜16c内に設けられたスロット17a〜17cに図示しない前記各ボードが、縦置きで制御盤14の前面より挿入する形態で収納される。
【0016】
なお、デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nへの光伝送ライン13や、メタルケーブル3の接続は制御盤15の背面で行われると共に、前記信号端子台14は制御盤15の背面に設置されることが多い。
【0017】
この制御盤15と、ユニット16a〜16cおよびスロット17a〜17cには、それぞれ固有の番号がついており、それぞれが同定できるようになっている。また信号端子台14や光伝送ライン13、およびメタルケーブル3にも同様に番号が付されており、それぞれの識別が行えるようになっている。
【0018】
なお、一つのデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nは、その構成により、複数のユニット16a〜16cおよび制御盤15を使用することもある。
図11のシーケンス図に、デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nで行われる信号演算の例を示す。
【0019】
この図11においては、4つの水位信号と、4つの圧力信号が入力され、これらを各々の予め定められた設定値と比較して、設定値の条件を満足するものが4つのうち2つ以上かどうかを2/4論理により判定する(2/4論理)。
【0020】
この際に前記圧力および水位のどちらか、または双方が2/4論理を満たし、または手動起動信号が存在する場合においては、ポンプ起動の信号が出力されるというものである。
なお、デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nにおいては、以上のような信号演算をマイクロプロセッサを用いて行っている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
プラント内の各種機器の運転制御を行うデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nにおいて、何らかの異常が発生した場合には、その制御機器を含めたプラントの運転を適切に維持するために、次のような対処が必要である。
【0022】
(1) 異常がどこで発生し、どのような内容のものかを把握する。すなわち、現状のデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nには、自己診断機能が付加されており、したがって、この自己診断機能により図9に示した構成の、どのボードでどのような異常が発生しているかを検知して、これを中央制御盤7上に報知させて運転員は容易に知ることができる。
【0023】
(2) 発生した異常が他の制御装置やプラントに対してどのような影響を及ぼすかを評価する。具体的には図11に示したデジタル制御装置1a,1b,1c〜1n内での演算のうち、どの部分が異常か、あるいは他のデジタル制御装置に信号を渡している場合には、異常が発生したデジタル制御装置と、他のデジタル制御装置などとの信号接続関係を把握し、異常が他のデジタル制御装置にどのように影響するかを知る。
【0024】
(3) 当該デジタル制御装置で発生した異常が、プラントや他のデジタル制御装置に拡大しないように必要措置をとる。例えば異常の発生したデジタル制御装置を手動に切り替えたり、他のデジタル制御装置に誤った信号が伝送されないように、当該デジタル制御装置からの信号伝送を阻止して、健全な動作をする方向に必要な信号を相手先のデジタル制御装置側で強制的に発生させる措置をとる必要がある場合がある。
【0025】
以上(1) 〜(3) のうちで、(2) および(3) を行うためには、デジタル制御装置相互間およびデジタル制御装置とプラント間などの信号接続を追跡し、さらにデジタル制御装置内での信号演算の詳細を迅速に把握する必要がある。
【0026】
しかしながら、この作業について従来は、予め作成しておいた信号の接続や、演算内容を記した作業支援のための図書を運転員が人手により検索し調べることで行われているが、プラント全体ではこの図書は膨大な頁数となっており、これを調べる労力と手間がかかる。
【0027】
もしも調査のために多くの時間を有したり、記号や番号の読み間違いなどの人的過誤を誘発した場合には、プラントの正常運転のために迅速で適切な処置をとることに支障をきたす場合が想定され、異常発生時のプラントへの影響を最小限に抑えることが阻害される支障があった。
【0028】
本発明の目的とするところは、デジタル制御装置に発生した異常により影響されるデジタル制御装置内での演算処理の範囲や、デジタル制御装置相互間およびデジタル制御装置とプラントとの間の接続信号のうちで、どの信号が影響を受けるかを検索する。
【0029】
これにより得た情報を運転員に理解し易い形で提示して、異常発生時に運転員が、その異常によって影響をうける他のデジタル制御装置やプラント機器を迅速に把握することができるデジタル制御装置の評価装置と評価方法を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明に係るデジタル制御装置の評価装置は、プラントのプロセス量や各種機器の制御を行うとともに、自己診断を行うデジタル制御装置に異常が発生した場合、その異常がプラントに及ぼす影響を評価するようにしたデジタル制御装置の異常評価装置において、前記デジタル制御装置の制御演算内容と同様の制御演算内容を記憶する演算内容記憶装置と、前記異常の発生したデジタル制御装置から送出された情報を受信し、他の装置に伝送する情報通信装置と、前記デジタル制御装置の入出力信号の伝送経路を記憶する伝送経路記憶装置と、前記情報通信装置を介して前記異常の発生したデジタル制御装置の情報を受信し、この受信した情報から前記演算内容記憶装置に記憶されている各デジタル制御装置の制御演算内容を検索して読み込み、さらに前記伝送経路記憶装置に格納されている情報を検索することにより、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける入出力信号とその接続経路を検索し抽出するデジタル制御装置模擬装置と、このデジタル制御装置模擬装置の処理結果に基づき、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける範囲を表示する表示装置と、この表示装置の表示制御を行う対話装置と、 からなることを特徴とする。
【0031】
請求項2記載の発明に係るデジタル制御装置の評価装置は、プラントのプロセス量や各種機器の制御を行うとともに、自己診断を行うデジタル制御装置に異常が発生した場合、その異常がプラントに及ぼす影響を評価するようにしたデジタル制御装置の異常評価装置において、前記デジタル制御装置の制御演算内容と同様の制御演算内容を記憶する演算内容記憶装置と、前記デジタル制御装置の入出力信号の伝送経路を記憶する伝送経路記憶装置と、前記異常の発生したデジタル制御装置の情報を入力し、この受信した情報から前記演算内容記憶装置に記憶されている各デジタル制御装置の制御演算内容を検索して読み込み、さらに前記伝送経路記憶装置に格納されている情報を検索することにより、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける入出力信号とその接続経路を検索し抽出するデジタル制御装置模擬装置と、このデジタル制御装置模擬装置の処理結果に基づき、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける範囲を表示する表示装置と、この表示装置の表示制御を行う対話装置と、からなることを特徴とする。
【0032】
請求項3記載の発明に係るデジタル制御装置の評価装置における伝送経路記憶装置は、前記デジタル制御装置の構成と収納場所、入出力信号および入出力装置と伝送媒体、伝送経路および入出力信号の信号伝送経路と接続先が記憶されていることを特徴とする。
【0033】
請求項4記載の発明に係るデジタル制御装置の評価装置におけるデジタル制御装置模擬装置は、前記デジタル制御装置模擬装置は、前記デジタル制御装置の異常発生により影響を受ける範囲とその他の部分と区別するよう前記表示装置に表示させることを特徴とする。
【0034】
請求項5記載の発明に係るデジタル制御装置の評価装置における対話装置は、前記表示装置に示された数値を強制的に変更可能であることを特徴とする。
請求項6記載の発明に係るデジタル制御装置の評価方法は、プラントのプロセス量や各種機器の制御を行うとともに、自己診断を行うデジタル制御装置に異常が発生した場合、その異常がプラントに及ぼす影響を評価するようにしたデジタル制御装置の異常評価方法において、前記デジタル制御装置の制御演算内容と同様の制御演算内容を予め演算内容記憶装置に記憶させておき、前記デジタル制御装置の入出力信号の伝送経路を予め伝送経路記憶装置に記憶させておき、異常の発生したデジタル制御装置から送出された情報を情報通信装置を介してデジタル制御装置模擬装置で受信することにより、前記演算内容記憶装置に記憶されている各デジタル制御装置の制御演算内容を検索して読み込み、さらに前記伝送経路記憶装置に格納されている情報を検索することにより、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける入出力信号とその接続経路を検索し抽出し、このデジタル制御装置模擬装置の処理結果に基づき、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける範囲を表示装置で表示することを特徴とする。
【0036】
【作用】
請求項1記載の発明は、デジタル制御装置から情報通信装置により伝達される異常情報などのうち、演算内容記憶装置に記憶されたデジタル制御装置の制御演算内容に基づき、デジタル制御装置の制御演算内容を模擬し、伝送経路記憶装置に記憶されたデジタル制御装置の入出力信号およびその伝送経路から、その情報をデジタル制御装置模擬装置により検索する。
【0037】
このデジタル制御装置模擬装置の処理結果は、表示装置で表示されるので、運転員はこれを確認すると共に、対話装置により表示内容を制御して異常対応の検討が容易にできる。
【0038】
請求項2記載の発明は、デジタル制御装置に評価装置の機能を備えたことにより、デジタル制御装置に発生した異常に係る各種情報と、当該異常に対応した処置の評価が迅速に運転員に提供されると共に、情報通信装置が不要となる。
【0039】
請求項3記載の発明は、伝送経路記憶装置においてデジタル制御装置の構成と収納場所、デジタル制御装置の入出力信号および入出力装置と伝送媒体および伝送経路、入出力信号の信号伝送経路と接続先などを記憶しているため、この情報によりデジタル制御装置模擬装置において模擬して、デジタル制御装置で発生した異常による影響を受ける伝送経路の情報を検索する。
【0040】
請求項4記載の発明は、デジタル制御装置模擬装置において演算内容記憶装置からのデジタル制御装置が機器の制御を行うプロセス量や制御の演算内容と、伝送経路記憶装置からのデジタル制御装置の入出力信号および伝送経路の情報を入力する。
【0041】
これにより、デジタル制御装置の異常発生により影響を受けるデジタル制御装置の入出力信号名とこれを使用する演算範囲および異常の影響を除外するために想定した入出力信号を模擬し、それによる信号演算の予測値と入出力信号の接続経路および接続先を表示装置に表示させて、異常の影響範囲を常に把握する。
【0042】
請求項5記載の発明は、運転員が表示装置に出力されたデジタル制御装置の異常発生に係る各種情報を確認しながら、キーボードにより入力信号の値を強制的に変化させて対話することで、どの値が異常の影響範囲を最小限とするかの判断などをすることができる。
【0043】
請求項6記載の発明は、デジタル制御装置における異常発生に伴う異常情報により、デジタル制御装置の制御演算内容と入出力信号および伝送経路に基づいて模擬することにより、当該デジタル制御装置の異常によってプラントが影響を受ける入出力信号および信号演算の範囲と伝送経路の検索と評価をしてこの評価結果を表示するので、これにより運転員に対する異常対策の支援が行われる。
【0045】
【実施例】
本発明の一実施例について図面を参照して説明する。なお、上記した従来技術と同じ構成部分については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第1実施例として図1のブロック構成図に示すように、デジタル制御装置の評価装置18は、前記デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nの演算内容を模擬するデジタル制御装置模擬装置19と、同じく前記デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nの演算内容を記憶する演算内容記憶装置20と、デジタル制御装置の入出力信号の接続経路を記憶する伝送経路記憶装置21を備える。
【0046】
さらに、評価装置18における評価結果を画面で運転員に提供するCRTなどの表示装置22と、これに付随して表示内容を制御する対話装置の一例であるキーボード23と、前記デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nと光伝送ライン13を介して情報の授受をする情報通信装置である光多重伝送装置24と、これらを互いに接続するバス12とから構成される。
【0047】
前記演算内容記憶装置20には、デジタル制御装置1a,1b,1c〜1n毎に図11に示したような信号演算の内容が実際のデジタル制御装置と同様に記憶されており、デジタル制御装置模擬装置19はこの信号演算を用いて、実際のデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nと同じ信号演算を行う。
【0048】
またデジタル制御装置模擬装置19は、伝送経路記憶装置21に記憶してある入出力信号の接続経路に基づき、異常の影響を受ける信号および、その接続経路を検索する。さらに光多重伝送装置24は、光伝送ライン13により図8に示された光多重伝送ライン5bに接続されている。
【0049】
また、伝送経路記憶装置21にはデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nの入出力信号の接続経路などが記憶されており、図2の情報一覧図は、信号伝送経路記憶装置21に記憶されたデジタル制御装置がポンプ制御装置の場合を例として示している。
【0050】
ここでは、制御装置名(制御盤の盤番号)25、入出力信号として入出力信号名26、その伝送媒体として信号形態27および伝送種別の伝送28、入出力装置としてのボードのユニット番号/スロット番号29およびボード名称30、接続先情報として接続先種別31、接続先機器番号(端子番号)32および接続先名称33、さらにケーブル番号(自らの端子番号)34が記憶されている。
【0051】
この図2において、制御装置名(盤番号)25はポンプ制御装置(H13−P607 )であり、入出力信号名26として前記ポンプ制御装置(H13−P607 )に入力される4つの水位信号と4つの圧力信号、手動起動信号や、ポンプ制御装置から出力されるポンプ起動信号などがある。
【0052】
これらの信号の種類は信号形態27で示され、DIはデジタル(ON/OFF)入力、DOはデジタル(ON/OFF)出力、AIはアナログ入力、AOはアナログ出力のように区別されている。また、各信号の伝送の種類は伝送28により示され、Oは光多重伝送、Mはメタルケーブルであることを表す。
【0053】
ユニット番号/スロット番号29は、信号の入出力を行うボードが格納されている U0001/S0001 などの、ユニット番号およびスロット番号で、ボード名称30は信号の入出力を行う光多重伝送ボードなどのボードの名称である。
【0054】
また、接続先種別31には接続相手の種別が示され、Cは制御装置、Sはセンサ、Aはアクチュエータを表す。
さらに接続先機器番号32は、信号が接続されている先の制御盤番号、ユニット番号(端子番号)、スロット番号、センサ番号、アクチュエータ番号などであり、端子番号とは、メタルケーブルの場合の端子台および端子の番号である。
【0055】
接続先名称33は、信号が接続されている先方の機器のボード名などであり、例えば水位信号1の場合は、水位現場伝送盤/多重伝送ボードである。なお、ケーブル番号34には、信号を接続するケーブルの番号、またメタルケーブルの場合の自分の端子番号(自らの端子番号)といった情報が含まれている。
【0056】
次に上記構成による作用について説明する。なお、図3および図4のフロー図は本来一つのもので、両図は(a)にてつながっているが、内容を詳細に明示するために紙面サイズの関係で2つに分けている。
【0057】
デジタル制御装置の評価装置18は、光伝送ライン13により光多重伝送ライン5bに接続されている。ここで、前記ポンプ制御装置であるデジタル制御装置1aにおいて異常が発生した場合を例にする。
【0058】
図3のフロー図に示すように、先ず当該デジタル制御装置1aが備えた自己診断機能が動作し、この異常が発生したデジタル制御装置名(盤番号)、ボードのユニット番号/スロット番号など、多くの情報を中央制御盤7において表示するために多重伝送ライン5bに送出する。
【0059】
この時にデジタル制御装置の評価装置18における光多重伝送装置24は、前記多重伝送ライン5bに接続されている光伝送ライン13を介して、デジタル制御装置1aの自己診断機能が送出した情報を受け取る。
【0060】
さらに、光多重伝送装置24は受信した情報をバス12を介して、デジタル制御装置模擬装置19に伝送する(ステップS1 )。
次にデジタル制御装置模擬装置19は、受信した情報のうちで制御装置名(盤番号)を手掛かりに、演算内容記憶装置20に記憶されている各デジタル制御装置1a,1b,1c〜1nの演算内容のうち、受信したデジタル制御装置1aの演算内容を検索して読み込む(ステップS2 )。
【0061】
さらにデジタル制御装置模擬装置19は、受信したデジタル制御装置1aの制御装置名(盤番号)を手掛かりに、伝送経路記憶装置21(図3,図4中でDBと略記する)に格納してある情報を検索し、先ず当該デジタル制御装置1aの入出力信号に関連する項目をすべて入力する(ステップS3 )。
【0062】
ここで、スロット番号を手掛かりに伝送経路記憶装置21から読み込んだ情報のうちで、ボードのユニット番号/スロット番号の欄29を検索し、異常な入出力ボードが取り扱っている信号に関連する項目を抽出する。
【0063】
この抽出した入出力信号は、ボード異常により影響を受ける信号である。もし該当するスロット番号がない場合には、中央演算装置8またはメモリ9などの異常として該デジタル制御装置1a、ユニットの演算に関わる信号の全てを異常により影響を受ける入出力信号の想定をする(ステップS4 ,S5 )。
【0064】
ここで、前記デジタル制御装置1aの中央演算装置8またはメモリ9の故障として全入出力信号が影響を受けるものと想定すると、デジタル制御装置模擬装置19は、次に当該デジタル制御装置1aに、その装置が取り扱っている入出力信号および演算結果(信号の種別はステップS3 の動作によりすでに分っている)の現在値を送るように指示して、現在の信号値を受信する(ステップS6 )。
【0065】
この段階でデジタル制御装置模擬装置19は、ステップS2 で演算内容記憶装置20より入力した当該デジタル制御装置1aの演算内容、およびステップS5 で伝送経路記憶装置21より入力したボード異常によって影響を受ける入出力信号と関連情報、さらに、ステップS6 で当該デジタル制御装置1aより入力したデジタル制御装置1aの入出力信号の現在値の少なくとも3つの情報を把握する。
【0066】
次にこれらの情報に基づいて引き続き図4に示すように、デジタル制御装置模擬装置19は表示装置22の画面に、当該デジタル制御装置1aのうちで、異常なボードにより影響を受ける範囲(影響を受ける入出力信号と演算内容が分っているので、入出力信号から演算内容の論理をたどることにより上記の範囲を出力する)と、当該入出力信号の現在値および、そのうち異常の影響を受ける信号名と数値、さらに信号演算結果を表示装置22において表示する(ステップS7 )。
【0067】
なお、上記異常の影響を受ける範囲を区別するための表示は、図5の表示画面のシーケンス図で示すように該当部分の文字太さ、書体変更、照度変更による強調や、網掛け、色彩変更、あるいはフリッカなどの表示手法を用いて行う。なお、図5においては網掛けを行うと図面が不明瞭となるため便宜上(括弧)にて表示している。
【0068】
この図5においては、デジタル制御装置1aのポンプ制御装置における水位信号を取り扱う光多重伝送ボード(図2における U0001/S0001 光多重伝送ボード1)の異常を想定している。
【0069】
すなわち、水位信号を取り扱う多重伝送ボードに異常が生じた場合には、水位信号1〜4の値が影響を受け、その各設定値との比較結果や2/4論理演算結果、およびポンプ起動信号も影響を受けることとなる。
【0070】
これらの影響を受ける範囲を、その他の部分と区別できるように図5に示すように、網掛けなどで(ここでは括弧で囲う)強調し、これを表示装置22にて表示する。したがって、この強調表示により、ボードの異常によりどの信号が、また、どの範囲の演算に影響を受けるのかを容易に知ることができる。
【0071】
また、表示装置22に付随している対話装置であるキーボード23により、図5に示された入出力信号のうちのいずれかを指定すると、デジタル制御装置模擬装置19は伝送経路記憶装置20に記憶している図2に示した情報のうちで、指定した入出力信号に関連する情報を検索すると共に抽出して表示する。
【0072】
この一例を図6の表示画面図に示す。なお、図6は図5において水位信号1を指定した場合を示し、入力信号名26における水位信号1の情報として、信号形態27はAI、伝送28はO、ボードのユニット番号/スロット番号29は U0001/S0001 、ボード名称30は光多重伝送ボード1、接続先機器番号(端子番号)31はCなどが表示される。
【0073】
この表示により、ボードの異常によりどの信号が影響を受けて、さらに、どのような伝送経路を通り、他のプラントや制御機器に信号が伝送されるのかを容易に知ることができる(ステップS8 ,S9 )。
【0074】
また、運転員は表示装置22との対話装置であるキーボード23により、表示装置22に示された図5における入力信号を指定し、その数値の強制変更要求指示を与えることにより、デジタル制御装置模擬装置19においては、この指定された入力信号の数値を変更要求の値に強制的に変更される。
【0075】
これにより、デジタル制御装置模擬装置19は、変更要求値に基づき信号演算を行って、その演算結果を表示装置22に表示する。
この表示例として図5にて斜体文字で表示したものが、強制的に入力した値とそれに基づく演算結果であり、この場合は水位信号1および水位信号2の信号でそれぞれ1500mmのものを強制的に0mm(斜体文字)としている。なお、本一実施例では演算の結果は、入力による異なる値となったもののみを示している(ステップS10,S11)。
【0076】
さらに、キーボード23により信号伝送経路の表示要求コマンドを入力すると、デジタル制御装置模擬装置19は、すでに検索済みの異常が発生したボードの入出力信号の信号伝送経路に関する情報を表示する。
【0077】
また、信号演算論理を追跡することで、異常が発生したボードにより影響を受ける入力信号が、他の出力信号に影響を及ぼしていないかを判定し、影響を及ぼす場合には、その出力信号の伝送経路も併せて表示する。
【0078】
この表示例を図7の表示画面図に示す。これは上記図6の例と同様に水位信号を取り扱う光多重伝送ボード1の異常を想定した場合で、水位信号が影響を受けるためにその伝送経路が表示される。
【0079】
また、水位信号から演算されるポンプ起動信号も影響を受けることが演算論理を行うことにより把握できるので、この信号の伝送経路も併せて表示される。
この表示内容によって、光多重伝送ボード1の異常により、どの信号が影響を受け、さらにどのような伝送経路を通って他のプラントや制御機器に信号が伝送されるかを容易に知ることができる(ステップS12,S13)。
【0080】
以上説明したように本発明においては、プラントに設置された各種機器の運転制御を行うデジタル制御装置について異常が生じた際に、従来は運転員により膨大な作業支援の図書を多くの労力をかけて調べることで、異常の特定とプラント内に及ぼす影響の調査、さらに、その対策を行っていた負担が低減され、次のような効果が得られる。
【0081】
(a) 多数のデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nのうちに発生した異常により影響を受ける信号や演算の範囲が、画面表示で運転員に提供されるので、発生した異常によりデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nのどの部分の信号や演算が影響され、その結果どのような出力と、プラントにどのような影響があるかが迅速に把握できる。
【0082】
(b) 異常の影響を受けた信号の入出力の経路が具体的に運転員に提供されるので、異常の信号の伝送経路を調べる必要がなくなり、どのように他のデジタル制御装置やプラントに伝送されて、どの範囲の制御装置やプラント機器が影響を受け、どのような対応処置を取る必要があるかが迅速に把握できる。
【0083】
(c) 強制的に入力信号の値を変更して、それに基づく演算結果が容易に提供されるので、従来の作業支援の図書を用いた想定演算を行う必要がなく、入出力信号を強制的に変更して、どのような数値にしたらプラントへの影響を最小限にすることができるかなどを迅速に評価することができる。
【0084】
すなわち、運転員は異常に対する影響と、予め対処した場合の結果を迅速に把握できるので、デジタル制御装置における異常発生時の異常影響の評価と予測および対応措置の実施を、より迅速かつ誤りなく行うことができるので、プラントへの影響を最小限に止めることができる。
【0085】
なお上記一実施例では、入力信号の指定や強制的な入力信号の変更に対話装置としてキーボード23を使用したが、このキーボード23の代わりに表示装置22のCRTの画面に設けたタッチスクリーンや、別途マウス、トラックボールなどの入力装置を用いても同様の作用と効果が得られる。
【0086】
また、デジタル制御装置の構成を、中央演算装置、メモリ、光多重伝送ボード、プロセス入出力装置に限定して説明したが、他のボードがある場合にはその異常により、どのような入出力信号や、どのような信号演算に影響を受けるかを予め分析しておき、演算内容記憶装置や伝送経路記憶装置に記憶させておけば、これらのボードの異常についても、上記一実施例と同様の機能をさせることは容易に可能である。
【0087】
第2実施例として、上記第1実施例においては、デジタル制御装置の評価装置の機能をデジタル制御装置1a,1b,1c〜1nとは独立した専用装置として説明したが、デジタル制御装置自体に信号伝送経路の記憶装置や表示装置をキーボードあるいは、それら相当する装置などを付加させるように構成することにより、デジタル制御装置において上記の評価を機能させることも可能である。
【0088】
なお、デジタル制御装置は自らの取り扱う入出力信号、および演算結果についてのみ上記機能を果たすようにするのが合理的であり、この場合に上記した第1実施例に比較して、新たに必要となるハードウエアは少ない。
【0089】
また、デジタル制御装置との情報通信装置である伝送ラインも不要となるために経済的であり、伝送ラインがないデジタル制御装置や、単独設置のデジタル制御装置にも適用できる効果がある。
【0090】
【発明の効果】
以上本発明によれば、従来運転員が膨大な作業支援の図書を調査することで実施していた、プラントおけるデジタル制御装置で発生した異常の影響と処置および評価が、迅速かつ正確で容易に提供されるので、この支援により運転員における対応の負担が軽減されると共に、プラント運転の信頼性と安全性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例のデジタル制御装置の評価装置のブロック構成図。
【図2】本発明に係る一実施例の伝送経路記憶装置の情報一覧図。
【図3】本発明に係る一実施例の評価装置のフロー図。
【図4】本発明に係る一実施例の評価装置のフロー図。
【図5】本発明に係る一実施例の評価装置の表示画面シーケンス図。
【図6】本発明に係る一実施例の評価装置の表示画面図。
【図7】本発明に係る一実施例の評価装置の他の表示画面図。
【図8】デジタル制御装置によるプラントの計装制御システムの一例を示す構成図。
【図9】デジタル制御装置の一例を示すブロック構成図。
【図10】デジタル制御装置を収納した制御盤の一例を示す斜視図。
【図11】デジタル制御装置で行われる演算例を示すシーケンス図。
【符号の説明】
1a,1b,1c〜1n…デジタル制御装置、2…プラント、3…メタルケーブル、4a,4b…現場多重伝送装置、5a,5b…光多重伝送ライン、6…プロセス計算機、7…中央制御盤、8…中央演算装置(CPU)、9…メモリ、10a,10b〜10n…光多重伝送ボード、11a,11b〜11n…プロセス入出力装置、12…バス、13…光伝送ライン、14…信号端子台、15…制御盤、16a〜16c…ユニット、17a〜17c…スロット、18…デジタル制御装置の評価装置、19…デジタル制御装置模擬装置、20…演算内容記憶装置、21…伝送経路記憶装置、22…表示装置、23…キーボード、24…光多重伝送装置、25…制御装置名、26…入出力信号名、27…信号形態、28…伝送種別、29…ユニット番号/スロット番号、30…ボード名称、31…接続先種別、32…接続先機器番号、33…接続先名称、34…ケーブル番号、S1 〜S13…ステップ。
Claims (6)
- プラントのプロセス量や各種機器の制御を行うとともに、自己診断を行うデジタル制御装置に異常が発生した場合、その異常がプラントに及ぼす影響を評価するようにしたデジタル制御装置の異常評価装置において、
前記デジタル制御装置の制御演算内容と同様の制御演算内容を記憶する演算内容記憶装置と、
前記異常の発生したデジタル制御装置から送出された情報を受信し、他の装置に伝送する情報通信装置と、
前記デジタル制御装置の入出力信号の伝送経路を記憶する伝送経路記憶装置と、
前記情報通信装置を介して前記異常の発生したデジタル制御装置の情報を受信し、この受信した情報から前記演算内容記憶装置に記憶されている各デジタル制御装置の制御演算内容を検索して読み込み、さらに前記伝送経路記憶装置に格納されている情報を検索することにより、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける入出力信号とその接続経路を検索し抽出するデジタル制御装置模擬装置と、
このデジタル制御装置模擬装置の処理結果に基づき、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける範囲を表示する表示装置と、
この表示装置の表示制御を行う対話装置と、
からなることを特徴とするデジタル制御装置の異常評価装置。 - プラントのプロセス量や各種機器の制御を行うとともに、自己診断を行うデジタル制御装置に異常が発生した場合、その異常がプラントに及ぼす影響を評価するようにしたデジタル制御装置の異常評価装置において、
前記デジタル制御装置の制御演算内容と同様の制御演算内容を記憶する演算内容記憶装置と、
前記デジタル制御装置の入出力信号の伝送経路を記憶する伝送経路記憶装置と、
前記異常の発生したデジタル制御装置の情報を入力し、この受信した情報から前記演算内容記憶装置に記憶されている各デジタル制御装置の制御演算内容を検索して読み込み、さらに前記伝送経路記憶装置に格納されている情報を検索することにより、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける入出力信号とその接続経路を検索し抽出するデジタル制御装置模擬装置と、
このデジタル制御装置模擬装置の処理結果に基づき、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける範囲を表示する表示装置と、
この表示装置の表示制御を行う対話装置と、
からなることを特徴とするデジタル制御装置の異常評価装置。 - 前記伝送経路記憶装置は、前記デジタル制御装置の構成と収納場所、入出力信号および入出力装置と伝送媒体、伝送経路および入出力信号の信号伝送経路と接続先が記憶されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のデジタル制御装置の異常評価装置。
- 前記デジタル制御装置模擬装置は、前記デジタル制御装置の異常発生により影響を受ける範囲とその他の部分と区別するよう前記表示装置に表示させることを特徴とする請求項1または請求項3記載のデジタル制御装置の異常評価装置。
- 前記対話装置は、前記表示装置に示された数値を強制的に変更可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項2記載のデジタル制御装置の異常評価装置。
- プラントのプロセス量や各種機器の制御を行うとともに、自己診断を行うデジタル制御装置に異常が発生した場合、その異常がプラントに及ぼす影響を評価するようにしたデジタル制御装置の異常評価方法において、
前記デジタル制御装置の制御演算内容と同様の制御演算内容を予め演算内容記憶装置に記憶させておき、
前記デジタル制御装置の入出力信号の伝送経路を予め伝送経路記憶装置に記憶させておき、
異常の発生したデジタル制御装置から送出された情報を情報通信装置を介してデジタル 制御装置模擬装置で受信することにより、前記演算内容記憶装置に記憶されている各デジタル制御装置の制御演算内容を検索して読み込み、さらに前記伝送経路記憶装置に格納されている情報を検索することにより、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける入出力信号とその接続経路を検索し抽出し、
このデジタル制御装置模擬装置の処理結果に基づき、前記デジタル制御装置の異常時に影響を受ける範囲を表示装置で表示することを特徴とするデジタル制御装置の異常評価方法。
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