JP3712120B2 - 超電導線材の製造方法 - Google Patents
超電導線材の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3712120B2 JP3712120B2 JP2002107055A JP2002107055A JP3712120B2 JP 3712120 B2 JP3712120 B2 JP 3712120B2 JP 2002107055 A JP2002107055 A JP 2002107055A JP 2002107055 A JP2002107055 A JP 2002107055A JP 3712120 B2 JP3712120 B2 JP 3712120B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- wire
- rolling
- superconducting
- clad
- core
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E40/00—Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
- Y02E40/60—Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment
Landscapes
- Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導線材の製造方法に関するものである。特に、臨界電流密度(Jc)を向上できる超電導線材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パイダーインチューブ法によりBi2223相などの酸化物超電導体を長尺のテープ状線材に形成する技術が知られている。この方法は、まず超電導相の原料粉末を金属パイプに充填する。次に、この金属パイプを伸線加工してクラッド線とする。複数のクラッド線を束ねて別の金属パイプに挿入し、伸線加工して多芯線とする。この多芯線を圧延加工してテープ状線材とする。テープ状線材に一次熱処理を施して目的の超電導相を生成させる。続いて、このテープ状線材を再度圧延してから二次熱処理を施して、超電導相の結晶粒同士を接合させる。これら2回の塑性加工と熱処理は、1回しか行わない場合もあるが、一般に大気雰囲気下にて行われる。そして、金属シース中に多数の超電導フィラメントが含まれるテープ状線材を得る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の製造方法で得られる超電導線材では、超電導コイルやケーブルなどの用途に適用する場合は、さらに高いJc(Ic:臨界電流、Je:実効臨界電流密度)が求められており、数%でもJcを向上することが重要かつ困難な課題であった。
【0004】
高温超電導線材は、酸化物セラミックスであるため、そのJcは原料粉末、フィラメント配置、加工プロセス、圧延条件、熱処理条件など、全ての製造条件の影響を受ける。そのため、さらに高いJcを実現するには、これらの各製造条件を最適化する必要がある。
【0005】
これらの製造条件のうち、多芯線の圧延する際、従来は伸線後の多芯線をそのまま圧延しており、特に圧延方向を規定することもなかった。そのため、Bi2223相の結晶粒の配向性も揃っておらず、Jc向上の阻害要因となっていた。
【0006】
従って、本発明の主目的は、超電導相の結晶粒の配向性を揃えてJc(Ic、Je)を向上させることができる超電導線材の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、多芯線を圧延するのに先立って、伸線により多芯線を扁平状に形成しておくことで上記の目的を達成する。
【0008】
すなわち、本発明超電導線材の製造方法は、安定化材中に超電導相の原料粉末が多芯に配置された多芯線を用意する工程と、前記多芯線を扁平状に伸線する工程と、扁平状に伸線された多芯線を圧延してテープ状線材とする工程とを有することを特徴とする。
【0009】
従来、多芯線を圧延する場合、断面が円形あるいは正六角形の多芯線をそのまま圧延しており、圧延方向も特に規定していない。本発明者らは、この圧延時の多芯線の挙動を詳細に検討した結果、次の知見を得た。
【0010】
▲1▼多芯線を一軸方向に圧延しようとしても、多芯線が圧延方向と交差する方向にずれて変形し、せん断が発生する。
▲2▼このせん断発生は圧延初期に生じやすい。
▲3▼ある程度まで多芯線を圧縮すると一軸圧縮に近い変形が行われる。
▲4▼このせん断は断面が円形の多芯線の場合のみならず、断面が六角形の多芯線を対角または対辺方向に圧延しようとした場合にも発生する。
【0011】
以上の知見から、伸線により予め多芯線を扁平状に加工しておいてから圧延を行えば、圧延の初期に発生しやすいせん断を回避することができ、超電導フィラメントの結晶の配向を揃えたテープ状線材を得ることができることを見出した。
【0012】
伸線加工であれば、圧延と異なって多芯線の外周から実質的に均等な圧力が作用するため、扁平状に加工する場合でも前述したせん断は生じない。そのため、多芯線内において隣接する超電導相の原料粉末同士がつながるフィラメントブリッジが生じにくい。そして、予め扁平状に伸線された多芯線は、そのままさらに扁平にする圧延加工を行ってもほぼ一軸方向に圧縮することができ、超電導相の結晶粒の配向性を揃えたテープ状線材を得ることができる。
【0013】
以下、本発明をより詳しく説明する。
(製造工程の概要)
本発明超電導線材の製造工程は、通常、「原料粉末の調整→クラッド線の作製→多芯線の作製→扁平伸線→圧延してテープ状線材の作製→熱処理」により行われる。必要に応じて、圧延と熱処理を複数回繰り返す。例えば、扁平伸線に続いて「一次圧延してテープ状線材の作製→一次熱処理→テープ状線材の二次圧延→二次熱処理」を行う。
【0014】
(原料粉末)
原料粉末には、最終的に77K以上の臨界温度を持ちうる超電導相が得られるように配合した粉末が好適である。この原料粉末には、複合酸化物を所定の組成比となるように混合した粉末のみならず、その混合粉末を焼結し、これを粉砕した粉末も含まれる。
【0015】
例えば、最終的にBi2223系超電導線材を得る場合、出発原料にはBi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3、CuOを用いる。これら粉末を700〜870℃、10〜40時間、大気雰囲気又は減圧雰囲気下にて少なくとも1回焼結する。このような焼結により、Bi2223相よりもBi2212相が主体となった原料粉末を得ることができる。
【0016】
具体的な組成比は、BiaPbbSrcCadCueでa+b:c:d:e=1.7〜2.8:1.7〜2.5:1.7〜2.8:3を満たすものが好ましい。中でもBiまたはBi+Pb:Sr:Ca:Cu=2:2:2:3を中心とする組成が好適である。特に、Biは1.8付近、Pbは0.3〜0.4、Srは2付近、Caは2.2付近、Cuは3.0付近が望ましい。
【0017】
この原料粉末は、最大粒径が2.0μm以下であり、平均粒径が1.0μm以下であることが好ましい。このような微粉末を用いることで、高温超電導相を生成しやすくなる。
【0018】
(クラッド線の作製)
クラッド線の作製は、前記原料粉末を安定化材となる金属パイプに充填し、この金属パイプを伸線することで行う。この伸線加工により、安定化材中に超電導相の原料粉末が単芯に配置されたクラッド線が形成される。クラッド線の断面形状は円形のものや多角形のものがある。
【0019】
ここで用いる金属パイプの材料としては、Ag、Cu、Fe、Ni、Cr、Ti、Mo、W、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osより選択される金属またはこれらの金属をベースとする合金が好ましい。特に、酸化物超電導体との反応性や加工性からAgまたはAg合金が好ましい。また、これら金属パイプの断面形状は、円形、多角形(特に正多角形)が挙げられる。中でも正六角形の金属パイプが好適である。
【0020】
(多芯線の作製)
多芯線の作製は、複数本のクラッド線を金属パイプ中に束ねて挿入し、この金属パイプを伸線することで行う。これにより、安定化材中に超電導相の原料粉末が多芯に配置された多芯線が形成される。
【0021】
この多芯線の作製に用いる金属パイプの材料、断面形状もクラッド線の作製に用いる金属パイプと同様である。クラッド線の配置の仕方は、断面が円形の金属パイプ中に複数のクラッド線を多角形に配置したり、断面が六角形の金属パイプ中に複数のクラッド線を配置することなどが挙げられる。
【0022】
扁平状に形成する前の多芯線の断面形状は特に限定されない。円形や正多角形が挙げられる。特に、平行な対辺を持つ形状が好ましい。製造容易性などを考慮すると、正六角形が好ましい。また、扁平状に形成後の断面形状は、扁平な多角形や楕円形などが挙げられる。
【0023】
(扁平伸線)
円形あるいは正多角形などの断面形状に伸線された多芯線を扁平状に伸線する。一般に、この伸線には異型ダイスを用いればよい。このとき、扁平状に伸線された多芯線のアスペクト比は2.0以上とすることが好ましい。アスペクト比は扁平状に加工された多芯線の幅/厚みで表される比である。前述したように、圧延初期においてせん断が生じやすく、ある程度以上圧延されれば実質的に一軸方向への圧縮が可能である。このことから、予め行う伸線加工もせん断が生じにくい程度の扁平状にすべく、多芯線のアスペクト比を2.0以上とした。アスペクト比の上限は、伸線時の断線を考慮すれば4.0程度である。
【0024】
複数のクラッド線を多角形に配置して多芯線を得た場合、クラッド線の対角方向または対辺方向を保持するように多芯線を扁平に伸線することが好ましい。扁平伸線に用いる異型ダイスの対辺方向または対角方向と、扁平伸線する多芯線におけるクラッド線の対辺方向または対角方向を合わせて伸線すれば、多角形に整列されたクラッド線を整列状態のまま圧縮することができる。
【0025】
(圧延加工)
上記の扁平伸線により扁平状に伸線された多芯線を圧延してテープ状線材とする。多芯線からテープ状線材に加工するのは、最終的に形成される超電導導体の結晶の向きを揃えるためである。一般に、酸化物系の超電導導体は結晶の方向により流すことができる電流密度に大きな違いがあり、結晶方向を揃えることでより大きな電流密度を得ることができる。二次圧延まで行う場合、二次圧延は一次熱処理による反応で形成された空隙を押し潰し、後に行う二次熱処理で超電導体の結晶同士を強固に結合させるために行われる。
【0026】
クラッド線を多角形に配置して製造した多芯線を圧延する際、圧延方向を多角形に配置されたクラッド線の対角方向または対辺方向とすることが望ましい。
【0027】
対角方向に圧延した場合、超電導フィラメントはテープ状線材の厚さ方向に整列して並ぶ。その結果、テープ状線材の幅方向中央部に最も多数のフィラメントが積層され、両端部にフィラメントの積層数が少なくなる配列となる。中でも、中央部のフィラメントが最も大きく圧縮されているため、中央部の特性が良いテープ状線材を得ることができる。
【0028】
一方、対辺方向に圧延した場合、超電導フィラメントはテープ状線材の厚さ方向に交互に整列して並ぶ。その結果、テープ状線材の幅方向の大半にわたってほぼ均等にフィラメントが配列されて、Jc特性に優れたテープ状線材を得ることができる。特に、対辺方向への圧延は、圧縮が行いやすく、より小さい力で圧延を行うことができる。
【0029】
また、多芯線作製時にクラッド線を多角形に配置した場合、これら複数のクラッド線のうち、多角形の頂点に位置するクラッド線を、超電導相を含まないフィラー線に置換することが好ましい。フィラー線としては、クラッド線よりも圧縮変形しやすい材料で構成されたものが好ましい。一般的には、金属線が利用できる。より具体的には、Ag線またはAg合金線などが挙げられる。その他、Cu、Fe、Ni、Cr、Ti、Mo、W、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Osより選択される金属線またはこれらの金属をベースとする合金線の利用も考えられる。
【0030】
このフィラー線の存在により、多角形に配置したクラッド線の対辺方向および対角方向を容易に目視にて確認することができる。多芯線を形成する場合、複数のクラッド線を多角形に配置して金属パイプに挿入する。しかし、その後の伸線により、いずれのクラッド線もほぼ円形に配置されるため、多角形に配置されたクラッド線のうち頂点に位置するクラッド線とそれ以外のクラッド線とを区別することが困難なことがある。そのため、多角形の頂点に位置するクラッド線を、超電導相を含まないフィラー線とすることで容易に頂点の位置がわかり、対辺方向および対角方向を識別することができる。
【0031】
また、フィラー線を用いることで、圧延時、多角形に配置したクラッド線の対角方向、対辺方向を意識することなく圧延しても、ほぼ対角方向から圧延することができる。これは、フィラー線がクラッド線よりも変形し易いため、多芯線をどのような方向から圧延しても、まず多角形の対角線のうち、最も圧縮方向軸に沿った対角線上に位置する一対のフィラー線から圧縮されることになり、その結果、多芯線は回転するなどして、ほぼ対角方向から圧延されることになると考えられる。ただし、圧延方向を意識しなくても、偶然対辺方向に圧延した場合は、最初に対角位置のフィラー線から圧縮されるわけではなく、対辺方向に圧縮が行われると考えられる。
【0032】
(熱処理)
熱処理は、代表的には一次熱処理と二次熱処理の2回行われる。一次熱処理は、主としてBi2223相などの超電導相を生成させることを目的として行われる。二次熱処理は、主としてBi2223相などの結晶粒同士を強固に結合させるために行う。
【0033】
処理温度は、一次熱処理・二次熱処理共に815℃超860℃以下とすることが好ましい。より好ましくは830℃〜850℃程度である。特に、一次熱処理を840℃以上850℃以下とし、二次熱処理を830℃以上840℃以下とすることが好適である。さらに、二次熱処理を上記温度内の異なる温度で多段階(特に2段階)に行っても良い。
【0034】
処理時間は、一次熱処理・二次熱処理共に50時間以上250時間以下とすることが好ましい。特に、二次熱処理を100時間以上とすることが好適である。
【0035】
雰囲気は、一次熱処理・二次熱処理共に大気雰囲気にて行えば良い。より好ましくは、大気と同成分からなる気流中で熱処理を施すことである。その際、熱処理雰囲気における水分の含有率を低下させることが好ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
「原料粉末の調整→クラッド線の作製→多芯線の作製→扁平伸線→一次圧延加工→一次熱処理→二次圧延加工→二次熱処理」の製造工程によりBi2223テープ状線材を製造する。そして、扁平伸線を行わない比較例方法によるテープ状線材も作製して、得られたテープ状線材のIcおよびJeを確認する。
【0037】
Bi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3、CuOの各粉末を1.81:0.40:1.98:2.20:3.01の割合で混合する。混合粉末を大気中にて700℃×8時間、800℃×10時間、133Pa(1Torr)の減圧雰囲気において760℃×8時間の熱処理を順次行う。各熱処理後にはそれぞれ粉砕を行う。このようにして得られた粉末をさらに845℃×12時間の熱処理して原料粉末を調整する。この原料粉末を外径25mm、内径22mmの銀パイプに充填し、直径2.4mmまで伸線して断面が円形のクラッド線を作製する。
【0038】
このクラッド線を61本束ねて六角形となるように配置し、外径25mm、内径22mmの銀パイプに挿入して、これを直径6.0mmにまで伸線して断面が円形の多芯線を得る。61芯のクラッド線は銀パイプに挿入した際、銀パイプに内接する六角形に配列される。この六角形の頂点に位置する6本のクラッド線を銀からなるフィラー線に置き換えた多芯線も同様に製造した。フィラー線を用いた場合、多芯線の断面を拡大して見れば、六角形の頂点がどこであるかは一目瞭然である。
【0039】
次に、得られた多芯線を正六角形のダイスを用いて断面が正六角形になるように伸線する。ここでは、対辺距離が1.15mmにまで伸線を行った。正六角形に伸線後の多芯線の模式図を図1(A)、図2(A)に示す。ここでは、図1(A)に示すように、六角形に配置されたクラッド線11の対角方向が多芯線10の対辺方向となるような多芯線と、図2(A)に示すように、六角形に配置されたクラッド線11の対辺方向が多芯線の対辺方向となるような多芯線の両方を用意した。各クラッド線11の外周を覆っているのは銀シース12である。
【0040】
次に、実施例方法については、アスペクト比2.5の異型ダイスを用いて扁平伸線を行った。ここでは、多芯線の対辺方向(六角配置されたクラッド線の対角方向)に圧縮する扁平伸線を行った。扁平伸線後の多芯線の模式断面図を図1(B)、図2(B)に示す。図1(B)に示す扁平伸線後の多芯線は、最小対辺距離が0.6mm、最大対角距離が1.5mmである。図2(B)に示す扁平伸線後の多芯線は、最小対角距離が0.6mm、最大対辺距離が1.5mmである。
【0041】
一方、比較例方法については、この扁平伸線を行うことなく次述する圧延工程を行っている。
【0042】
次に、得られた多芯線を一次圧延してテープ状線材にする。その際、フィラー線を用いたものは六角配置されたクラッド線の対角方向または六角配置されたクラッド線の対辺方向に圧延を行い、フィラー線を用いないものは、この対角または対辺以外の方向に圧延を行った。
【0043】
一次圧延により得られたテープ状線材に、大気雰囲気にて840℃〜850℃×50時間の一次熱処理を施す。一次熱処理後のテープ状線材を幅3.9mm×厚さ0.24mmになるように再圧延(二次圧延)する。そして、再圧延後のテープ状線材に大気雰囲気にて840℃〜850℃×50時間〜150時間の二次熱処理を施す。実施例方法により得られた二次圧延後のテープ状線材の模式断面図を図1(C)、図2(C)に示す。この模式図に示すように、せん断が生じることなく各クラッド線の配置がほぼ維持されたまま多芯線の圧延が行われている。
【0044】
比較例方法における圧延状態を図3、4の説明図に示す。ここでは、多芯線の対角方向と対辺方向の各々について圧延を行った場合を示す。まず、対角方向の圧延では、図3(B)に示すように、せん断が生じることなく対角方向に圧縮されることを期待して圧延を行ったが、実際には同(C)に示すように、せん断が生じてうまく一軸圧縮を行うことができなかった。ただし、厚さが初期の1/2程度になると一軸圧縮に近い変形が行えた。また、対辺方向の圧縮も、図4(B)に示すように、せん断が生じることなく対角方向に圧縮されることを期待して圧延を行ったが、実際には同(C)に示すように、せん断が生じてうまく一軸圧縮を行うことができなかった。ただし、厚さが初期の1/2程度になると一軸圧縮に近い変形が行えた。
【0045】
得られたテープ状の超電導線材について外部磁場を印加しない状態での77KにおけるIcおよび線材全断面積当りの実効臨界電流密度Je(Je=Ic/(線幅×線厚み))を調べた。その結果を表1に示す。表1の結果から明らかなように、扁平伸線を行った多芯線はせん断が生じることなくほぼ一軸方向に圧縮されて高Ic(Je)のテープ状超電導線材が得られることが確認された。中でも、六角配置されたクラッド線の対角または対辺方向に圧延した場合は一層高いIcが得られている。一方、扁平伸線を行わなかった場合は、いずれも実施例方法で得られた線材に比べて低いIc(Je)であることがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明超電導線材の製造方法によれば、前記多芯線を直ちに圧延するのではなく、一旦扁平状に伸線してから圧延することで、圧延初期に生じやすいせん断を抑制して、超電導相の結晶方向が揃いやすい一軸方向への圧縮を行うことができる。
【0048】
特に、複数のクラッド線を多角形に配置した多芯線を圧延する際、この多角形の対角方向または対辺方向に圧延を行うことで、超電導相の結晶の配向が揃ったテープ状線材を得ることができる。それにより、超電導線材のIc、Jc、Jeを一層向上させることができる。
【0049】
また、前記多角形の頂点に相当するクラッド線を、超電導相を含まないフィラー線に置換することで、容易に対角方向・対辺方向を目視確認できる。さらに、圧延方向を規定しなくても、実質的に対角方向への圧延を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法によるテープ状線材を得る際の各段階における断面図を示すもので、(A)は多芯線の対辺方向とクラッド線の対角配置方向とを一致させた多芯線の断面図、(B)は扁平伸線後の多芯線の断面図、(C)は圧延後のテープ状線材の断面図である。
【図2】本発明方法によるテープ状線材を得る際の各段階における断面図を示すもので、(A)は多芯線の対辺方向とクラッド線の対辺配置方向とを一致させた多芯線の断面図、(B)は扁平伸線後の多芯線の断面図、(C)は圧延後のテープ状線材の断面図である。
【図3】従来方法による多芯線の対角方向への圧延状況を示す説明図で、(A)は圧縮前の状態、(B)は理想的な圧縮状態、(C)は実際の圧縮状態を示している。
【図4】従来方法による多芯線の対辺方向への圧延状況を示す説明図で、(A)は圧縮前の状態、(B)は理想的な圧縮状態、(C)は実際の圧縮状態を示している。
【符号の説明】
10 多芯線
11 クラッド線
12 銀シース
Claims (6)
- 安定化材中に結晶粒を有する超電導相の原料粉末が多芯に配置された多芯線を用意する工程と、
前記多芯線を扁平状に伸線する工程と、
扁平状に伸線された多芯線を圧延してテープ状線材とする工程とを有し、
前記扁平状に伸線する前の多芯線の断面形状が正多角形であることを特徴とする超電導線材の製造方法。 - 前記扁平状に伸線された多芯線のアスペクト比が2.0以上であることを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の製造方法。
- 前記多芯線を用意する工程は、安定化材中に超電導相の原料粉末が単芯に配置されたクラッド線を複数束ねて金属パイプ内に多角形に配置されるよう挿入し、この金属パイプを伸線加工することで行われ、
前記多芯線を扁平に伸線する工程は、前記複数のクラッド線にて形成された多角形の対角方向または対辺方向を保持するように行うことを特徴とする請求項1に記載の超電導線材の製造方法。 - 扁平状に伸線された多芯線を圧延する工程は、圧延方向を多角形に配置された複数のクラッド線にて形成された多角形の対辺方向とすることを特徴とする請求項3に記載の超電導線材の製造方法。
- 扁平状に伸線された多芯線を圧延する工程は、圧延方向を多角形に配置された複数のクラッド線にて形成された多角形の対角方向とすることを特徴とする請求項3に記載の超電導線材の製造方法。
- 前記多角形に配置された複数のクラッド線のうち、多角形の頂点に位置するクラッド線を、超電導相を含まないフィラー線に置換することを特徴とする請求項3に記載の超電導線材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002107055A JP3712120B2 (ja) | 2002-04-09 | 2002-04-09 | 超電導線材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002107055A JP3712120B2 (ja) | 2002-04-09 | 2002-04-09 | 超電導線材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003303519A JP2003303519A (ja) | 2003-10-24 |
JP3712120B2 true JP3712120B2 (ja) | 2005-11-02 |
Family
ID=29391196
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002107055A Expired - Fee Related JP3712120B2 (ja) | 2002-04-09 | 2002-04-09 | 超電導線材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3712120B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4701631B2 (ja) * | 2004-05-13 | 2011-06-15 | 住友電気工業株式会社 | 超電導線材の製造方法 |
JP2006012537A (ja) * | 2004-06-24 | 2006-01-12 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 超電導線材の製造方法 |
JP5343526B2 (ja) * | 2008-11-20 | 2013-11-13 | 住友電気工業株式会社 | 超電導線材の製造方法 |
-
2002
- 2002-04-09 JP JP2002107055A patent/JP3712120B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003303519A (ja) | 2003-10-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3658844B2 (ja) | 酸化物超電導線材およびその製造方法ならびにそれを用いた酸化物超電導撚線および導体 | |
JPWO2010016302A1 (ja) | 酸化物超電導線材の前駆体線とその製造方法、および前記前駆体線を用いた酸化物超電導線材 | |
JP3712120B2 (ja) | 超電導線材の製造方法 | |
JP4038813B2 (ja) | 超電導線材の製造方法 | |
JP4011358B2 (ja) | 超電導線材の製造方法 | |
JP3587128B2 (ja) | 酸化物超電導多芯線およびその製造方法ならびに酸化物超電導撚線およびその製造方法 | |
TWI296415B (en) | Bismuth based oxide superconductor and method of manufacturing the same | |
JP5343526B2 (ja) | 超電導線材の製造方法 | |
JP4016324B2 (ja) | 超電導線材の製造方法 | |
JP3657367B2 (ja) | ビスマス系酸化物多芯超電導線およびその製造方法 | |
US20070184984A2 (en) | Superconducting wire, superconducting mutifilamentary wire using the superconducting wire, and method of manufacturing the same | |
JPH09167530A (ja) | 酸化物多芯超電導導体およびその製造方法 | |
JP4720211B2 (ja) | ビスマス系酸化物超電導線材の製造方法 | |
JP2002075091A (ja) | 酸化物超電導線材の製造方法 | |
JP3884222B2 (ja) | 酸化物超電導複合多芯線材の製造方法 | |
JP3692657B2 (ja) | 酸化物超電導線材 | |
JP3757617B2 (ja) | 酸化物超電導ビレット、酸化物超電導線材、及びその製造方法 | |
JP2003331668A (ja) | 超電導線材の製造方法 | |
AU742588B2 (en) | Cryogenic deformation of ceramic superconductors | |
JP4174890B2 (ja) | 酸化物多芯超電導線材の製造方法 | |
JPH1139963A (ja) | 酸化物超電導線材、撚線およびそれらの製造方法ならびに酸化物超電導導体 | |
JP4893117B2 (ja) | 酸化物超電導線材の製造方法および超電導機器 | |
JP5131063B2 (ja) | 酸化物超電導線材の前駆体線とその製造方法、および前記前駆体線を用いた酸化物超電導線材 | |
JP2000348553A (ja) | 酸化物超電導線の製造方法 | |
JPH09115357A (ja) | テープ状酸化物超電導撚線およびそれを用いた超電導導体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040914 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040922 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041117 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050201 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050329 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050728 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050810 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080826 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090826 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090826 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100826 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110826 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120826 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130826 Year of fee payment: 8 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |